説明

光ディスク

【課題】 光入射面又はレーベル面に油性ペンなど油性のインク・塗料を用いて描いた文字や絵などを有機溶剤によって消して書き換えが可能な光ディスクを提供する。
【解決手段】 レーザー光が入射される面とは反対の面側の最も外側に位置する層の耐有機溶剤試験前後におけるヘイズ値の増加が5%未満であることを特徴とする光ディスクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに関し、特に該光ディスク表面の耐有機溶剤性に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザー光により一回限りの情報の記録が可能な光ディスクが知られている。この光ディスクは、追記型CD(所謂CD−R)とも称され、その代表的な構造は、透明な円盤状基板上に有機色素からなる記録層、金等の金属からなる光反射層、更に樹脂製の保護層がこの順に積層状態で設けられている。そしてこのCD−Rへの情報の記録は、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)をCD−Rに照射することにより行われ、記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的或いは化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより、情報が記録される。一方、情報の読み取り(再生)もまた記録用のレーザー光と同じ波長のレーザー光を照射することにより行われ、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより情報が再生される。
【0003】
近年、記録密度のより高い光ディスクが求められている。このような要望に対して、追記型デジタル・ヴァサタイル・ディスク(所謂DVD−R)と称される光ディスクが提案されている。このDVD−Rは、照射されるレーザー光のトラッキングのための案内溝(プレグルーブ)がCD−Rに比べて半分以下(0.74〜0.8μm)と狭く形成された透明な円盤状基板上に、色素からなる記録層、そして通常は該記録層の上に光反射層、そして更に必要により保護層を設けてなるディスクを二枚、或いは該ディスクと同じ形状の円盤状保護基板とを該記録層を内側にして接着剤で貼り合わせた構造を有している。DVD−Rへの情報の記録再生は、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)を照射することにより行われ、CD−Rより高密度の記録が可能であるとされている。
【0004】
通常、光ディスクの高密度化は、記録及び再生用レーザの短波長化、対物レンズの高NA化によりビームスポットを小さくすることで達成することができる。最近では、波長680nm、650nm及び635nmの赤色半導体レーザから、更に超高密度の記録が可能となる波長400nm〜500nmの青紫色半導体レーザ(以下、青紫色レーザと称する。)まで開発が急速に進んでおり、それに対応した光ディスクの開発も行われている。特に、青紫色レーザの発売以来、該青紫色レーザと高NAピックアップを利用した光記録システムの開発が検討されており、相変化する記録層を有する書換型光ディスク及び光記録システムは、既に、DVR−Blueシステムとして発表されている(例えば、非特許文献1参照。)。また、有機色素を用いた追記型光ディスクであって、青紫レーザーにより記録・再生を行うDVR−Blueディスクも発表されている(例えば、非特許文献2参照。)。これらの光ディスクにより、高密度化という課題に対しては、一定の成果が得られた。
【0005】
ところで、前記の種々の光ディスクに対し、ユーザーは、音楽データ等が記録される記録面とは反対側の面(レーベル面)に、記録面に記録した音楽データの楽曲タイトルや、記録したデータを識別するためのタイトル等の情報を種々の筆記具により書き込むことを日常的に行っており、書き込みを行いやすくするためレーベル面を無地とした光ディスクも市販されている。
【0006】
ところで、光ディスクの記録光入出射側の表面はハードコートを施すことで耐傷性を付与すると同時に耐有機溶剤性が得られ、誤ってマジック等の油性ペンで描いてしまっても有機溶剤によって拭き取ることで消すことができる。これに対し、レーベル面は一般には耐有機溶剤性がないため、油性ペンで書いた文字などを有機溶剤によって消すときに跡が残ったり変色したりする。これでは、情報などを誤記した場合や、書き換え可能な光ディスクにおいて記録内容の書き換えによりタイトルなどを書き直す必要が生じた場合などにおいて不便である。
【非特許文献1】“ISOM2000”210〜211頁
【非特許文献2】“ISOM2001”218〜219頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の如き問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、
レーベル面に油性ペンなど油性のインク・塗料を用いて描いた文字や絵などを有機溶剤によって消して書き換えが可能な光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、下記に示す本発明により解決される。
すなわち、レーザー光が入射される面とは反対の面側の最も外側に位置する層の耐有機溶剤試験前後におけるヘイズ値の増加が5%未満であることを特徴とする光ディスクである。
【0009】
前記ヘイズ値の増加が5%未満である層の材質としては、三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、又は放射線硬化性樹脂であることが好ましいである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーベル面に油性ペンなど油性のインク・塗料を用いて描いた文字や絵などを有機溶剤によって消して書き換えが可能な光ディスクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の光ディスクは、レーザー光が入射される面とは反対の面側の最も外側に位置する層の耐有機溶剤試験前後におけるヘイズ値の増加が5%未満であることを特徴としている。
ここで、有機溶剤試験は、エタノール、ベンジン、トルエン、シクロヘキサンの各種溶剤を評価する面に垂らし、3秒後にティッシュで拭き取るという試験である。
【0012】
本発明は、レーザー光が入射される面とは反対側がレーベル面として使用されるものであれば、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルヴァーサタイルディスク)、波長450nm以下のレーザー光で情報を記録再生するHD DVD、ブルーレイディスクなど、その規格を問わず適用可能である。さらに、読み出し専用型、追記型、書き換え可能型など、いずれの形態でも適用可能である。
CD型の構成(CDの他、CD−RやCD−RW等を含む)としては、基板上に、少なくとも情報(デジタル情報などの符号情報(コード化情報))を記録する情報記録層と反射層と保護層とがこの順に形成されてなる構成である。また、DVD型(DVDの他、DVD−RやDVD−RW等を含む)の構成としては、記録層(情報記録層)と反射層とを少なくとも有する基板と、少なくとも保護基板(ダミー基板ともいう)とを貼りあわせた構成である。
光ディスクに使用される基板や反射層、情報記録層、保護層、接着層等の材質や構成は、一般的に使用されているものが適用される。
【0013】
一方、レーベル面は、文字、図形、絵柄など、ユーザーが所望する可視画像(可視情報)が描かれる層であり、当該可視画像としては、例えば、ディスクのタイトル、内容情報、内容のサムネール、関連した絵柄、デザイン的な絵柄、著作権情報、記録日時、記録方法、記録フォーマット、バーコード等が挙げられる。可視画像を描く手法としては、特に限定はなく、手書き、プリンターによる印刷、スタンプなどが挙げられる。
【0014】
本発明においては、レーザー光が入射される面とは反対の面側の最も外側に位置する層の耐有機溶剤試験前後におけるヘイズ値の増加が5%未満である。該試験結果は、各層が有機溶剤の影響を受けても所定の透明度を保てるか否かを示す指標であり、前記試験前後におけるヘイズ値の増加が前記範囲内であることにより、例えば、油性のマジックなどで描かれた文字などを有機溶剤で拭き取った場合、一定以上の視認性が保たれた状態で再度文字などを描くことができる。即ち、既に描かれた可視情報を有機溶剤で拭き取り、書き直すことができる。
耐有機溶剤試験前後におけるヘイズ値の増加が5%以上では、溶剤で拭き取ったときに透明度が悪くなったり、前に描かれた文字が完全に消えない状態となったりする。ヘイズ値の増加は0%以上3%以下がより好ましい。
【0015】
本発明の光ディスクの層構成の一例を模式的に図1に示す。図1に示す光ディスク10は、ブルーレイディスクの構成の光ディスクであり、基板12の一方の面側(図1において上側)に、情報記録層14と、接着層16と、カバーシート18と、がこの順に積層され、他方の面側(図1において下側)に、カバー層22が積層されてなる。なお、カバーシート18上にはハードコート層が形成されていてもよい。
図1に示す光ディスク10においては、レーザー光が入射される面とは反対の面側の最も外側に位置する層がコート層22である。つまり、本発明においては、コート層22が既述の耐溶剤性試験におけるヘイズ値の条件を満足する。
【0016】
コート層の材質としては、三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、放射線硬化性樹脂、などが挙げられる。なお、放射線硬化性樹脂としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレートなどに代表される脂肪族ジオールにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたものを用いることができる。
【0017】
またポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールにアクリル酸、メタクリル酸を付加したポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレートや公知の二塩基酸、グリコールから得られたポリエステルポリオールにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレートも用いることができる。
【0018】
公知のポリオール、ジオールとポリイソシアネートを反応させたポリウレタンにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレートを用いてもよい。ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFやこれらのアルキレンオキサイド付加物にアクリル酸、メタクリル酸を付加させたものやイソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジメタアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートなどの環状構造を有するものも用いることができる。
【0019】
以下、本発明の光ディスクについて、各層及びその形成方法を通じて順に説明する。ここでは、ブルーレイディスクを例に説明する。なお、以下の説明において、各層は一般的な積層位置について示すが、各層が最も外側に位置する場合においては、本発明における耐溶剤性を有する層となり得る。
【0020】
〔基板〕
本発明おける基板としては、従来の光ディスクの基板材料として用いられている各種の材料を任意に選択して使用することができる。
具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
これらの樹脂を用いた場合、射出成型を用いて基板を作製することができる。
また、基板の厚さは、0.7〜2mmの範囲であることを要し、0.9〜1.6mmの範囲であることが好ましく、1.0〜1.3mmとすることがより好ましい。
【0021】
また、基板には、情報記録層が設けられる側の面に、トラッキング用の案内溝又はアドレス信号等の情報を表わす凹凸(プリグルーブ)が形成されている。より高い記録密度を達成するためにはCD−RやDVD−Rに比べて、より狭いトラックピッチのプリグルーブが必要となる。例えば、本発明の光ディスクを、好適な、青紫色レーザに対応する媒体として使用する場合には、形成されるプリグルーブは以下に示す範囲のものであることが好ましい。
【0022】
プリグルーブのトラックピッチは、上限値が500nm以下であることが好ましく、420nm以下であることがより好ましく、370nm以下であることが更に好ましく、330nm以下であることが特に好ましい。また、下限値は、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることが更に好ましく、260nm以上であることが特に好ましい。
プリグルーブの幅(半値幅)は、上限値が250nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、170nm以下であることが更に好ましく、150nm以下であることが特に好ましい。また、下限値は、23nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、80nm以上であることが更に好ましく、100nm以上であることが特に好ましい。
【0023】
プリグルーブの(溝)深さは、上限値が150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、70nm以下であることが更に好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。また、下限値は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが更に好ましく、28nm以上であることが特に好ましい。
プリグルーブの角度は、上限値が80°以下であることが好ましく、70°以下であることがより好ましく、60°以下であることが更に好ましく、50°以下であることが特に好ましい。また、下限値は、20°以上であることが好ましく、30°以上であることがより好ましく、40°以上であることが更に好ましい。
なお、上記のプリグルーブに関する上限値及び下限値は、それぞれが任意で組み合わせることができる。
【0024】
これらのプリグルーブの値は、AFM(原子間力顕微鏡)により測定することができる。なお、上記プリグルーブの角度とは、グルーブの溝深さをDとした時、溝形成前の基板の表面を基準とし、その表面からD/10の深さの傾斜部と、溝の最も深い個所からD/10の高さの傾斜部と、を結ぶ直線と、基板面(溝部底面)と、が成す角度である。
また、本発明の光ディスクが、再生専用の光情報媒体である場合、上記のプリグルーブを形成するのと同時に、所定の情報を示すピットが形成される。
【0025】
このような溝形状を有するプリグルーブ(及びピット)を有する基板を作製するには、射出成型時に用いるスタンパが、高精度なマスタリングにより形成されることが必要である。このマスタリングには、上述の溝形状を達成するために、DUV(波長330nm以下、深紫外線)レーザーや、EB(電子ビーム)によるカッティングが用いられることが好ましい。
一方、UVレーザーや可視光レーザーでは、本発明の光ディスクのような溝形状を形成するための、良好なマスタリングを行うことが困難である。
【0026】
なお、基板の表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することが好ましい。
該下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;シランカップリング剤等の表面改質剤;を挙げることができる。
下塗層は、上記材料を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は、一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0027】
〔情報記録層〕
本発明における情報記録層は、レーザー光で読み取ることができる情報が記録された層、又はそのような情報を記録することができる層を包括する概念であり、より具体的には、ピット、色素記録層、相変化型記録層などを含む概念である。なお、ピットは基板に形成された窪みであり、実際に層を構成しているわけではないが、本明細書においては情報記録層はピットをも含むこととする。つまり、ROM構成の場合、基板内におけるピットが位置する領域を情報記録層とみなす。
【0028】
本発明における情報記録層は、色素を記録物質として含有する色素型とすることが好ましいが、これに限定されず、無機追記型(ライトワンス型)、相変化型、光磁気型、再生専用型等とすることもできる。
従って、情報記録層に含有される記録物質としては、色素等の有機化合物や相変化金属化合物等が挙げられる。
中でも、レーザー光により一回限りの情報の記録が可能な、色素型の情報記録層であることが好ましい。かかる色素型の情報記録層は、記録波長領域に吸収を有する色素を含有していることが好ましい。当該色素としては、シアニン色素、オキソノール色素、金属錯体系色素、アゾ色素、フタロシアニン色素等が挙げられ、中でも、オキソノール色素が好ましい。
【0029】
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、及び同2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0030】
このような情報記録層は、色素を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を、基板上又は後述する反射層上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成される。その際、塗布液を塗布する面の温度は、10〜40℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、下限値が、15℃以上であり、20℃以上であることが更に好ましく、23℃以上であることが特に好ましい。また、下限値としては、35℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、27℃以下であることが特に好ましい。このように被塗布面温度が上記範囲にあると、塗布ムラや塗布故障の発生を防止し、塗膜の厚さを均一とすることができる。
なお、上記の上限値及び下限値は、それぞれが任意で組み合わせることができる。
ここで、情報記録層は、単層でも重層でもよく、重層構造の場合、塗布工程を複数回行うことによって形成される。
塗布液中の色素の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0031】
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中には、更に、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0032】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。
塗布の際、塗布液の温度は、23〜50℃の範囲であることが好ましく、24〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、23〜50℃の範囲であることが特に好ましい。
【0033】
このようにして形成された情報記録層の厚さは、グルーブ(前記基板において凸部)上で、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましく、180nm以下であることが特に好ましい。下限値としては、30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、70nm以上であることが更に好ましく、90nm以上であることが特に好ましい。
また、情報記録層の厚さは、ランド上(前記基板において凹部)で、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることが更に好ましい。下限値としては、70nm以上であることが好ましく、90nm以上であることがより好ましく、110nm以上であることが更に好ましい。
更に、グルーブ上の情報記録層の厚さ/ランド上の情報記録層の厚さの比は、0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.6以上であることが更に好ましく、0.7以上であることが特に好ましい。上限値としては、1未満であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.85以下であることが更に好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。
なお、上記の上限値及び下限値は、それぞれ任意に組み合わせることができる。
【0034】
塗布液が結合剤を含有する場合、該結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;を挙げることができる。情報記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に色素に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量(質量比)の範囲にある。
【0035】
また、情報記録層には、該情報記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、及び同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0036】
以上、情報記録層が色素型記録層である場合の溶剤塗布法について述べたが、情報記録層は記録物質の物性に合わせ、蒸着、スパッタリング、CVD等の成膜法によって形成することもできる。
例えば、記録物質として相変化金属化合物を用いた場合には、このような成膜法を用いて情報記録層を形成することがで好ましい。ここで、相変化金属化合物としては、SbTe、AgSbTe、InAgSbTe等のいずれを用いてもよい。
【0037】
〔カバーシート〕
本発明におけるカバーシートは上述した情報記録層又は後述するバリア層上に接着層を介して貼り合わされる。
本発明において用いられるカバーシートに用いられるシート材料としては、透明な材質のフィルムであれば、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;三酢酸セルロース等を使用することが好ましく、中でも、ポリカーボネート又は三酢酸セルロースを使用することがより好ましい。
なお、カバーシートは透明であってもよく、この場合「透明」とは、記録及び再生に用いられる光に対して、透過率80%以上であることを意味する。
【0038】
また、カバーシートは、本発明の効果を妨げない範囲において、種々の添加剤が含有されていてもよい。例えば、波長400nm以下の光をカットするためのUV吸収剤及び/又は500nm以上の光をカットするための色素が含有されていてもよい。
更に、カバーシートの表面物性としては、表面粗さが2次元粗さパラメータ及び3次元粗さパラメータのいずれも5nm以下であることが好ましい。
また、記録及び再生に用いられる光の集光度の観点から、カバーシートの複屈折は10nm以下であることが好ましい。
【0039】
カバーシートの厚さは、記録及び再生のために照射されるレーザー光の波長やNAにより、適宜、規定されるが、カバーシートは、0.01〜0.6mmの範囲内であることが好ましく、0.05〜0.2mmの範囲であることがより好ましい。
【0040】
〔接着層〕
カバーシートは、既述のように、接着層を介して貼り合わされる。接着層、粘着層の材質としては、それぞれ、接着剤又は粘着剤とすることができる。以下、それぞれについて順に説明する。
【0041】
カバーシートを貼り合せるために用いられる接着剤は、例えば、UV硬化樹脂、EB硬化樹脂、熱硬化樹脂等を使用することが好ましく、特に、UV硬化樹脂を使用することが好ましい。
接着剤としてUV硬化樹脂を使用する場合は、該UV硬化樹脂をそのまま、若しくはメチルエチルケトン、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、ディスペンサからバリア層表面に供給してもよい。また、作製される光ディスクの反りを防止するため、接着層を構成するUV硬化樹脂は硬化収縮率の小さいものが好ましい。このようなUV硬化樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)社製の「SD−640」等のUV硬化樹脂を挙げることができる。
【0042】
接着剤は、例えば、バリア層からなる被貼り合わせ面上に、所定量塗布し、その上に、カバーシートを載置した後、スピンコートにより接着剤を、被貼り合わせ面とカバーシートとの間に均一になるように広げた後、硬化させることが好ましい。
このような接着剤からなる接着層の厚さは、0.1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜50μmの範囲、更に好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0043】
また、粘着層に用いられる粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコン系の粘着剤を使用することができるが、透明性、耐久性の観点から、アクリル系の粘着剤が好ましい。かかるアクリル系の粘着剤としては、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレートなどを主成分とし、凝集力を向上させるために、短鎖のアルキルアクリレートやメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートと、架橋剤との架橋点となりうるアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなどと、を共重合したものを用いることが好ましい。主成分と、短鎖成分と、架橋点を付加するための成分と、の混合比率、種類を、適宜、調節することにより、ガラス転移温度(Tg)や架橋密度を変えることができる。
【0044】
上記粘着剤と併用される架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤が挙げられる。かかるイソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート類を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品としては、日本ポリウレタン社製のコロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートHTL;武田薬品社製のタケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202;住友バイエル社製のデスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL;等を挙げることができる。
【0045】
粘着剤は、バリア層からなる被貼り合わせ面上に、所定量、均一に塗布し、その上に、カバーシートを載置した後、硬化させてもよいし、予め、カバーシートの片面に、所定量を均一に塗布して粘着剤塗膜を形成しておき、該塗膜を被貼り合わせ面に貼り合わせ、その後、硬化させてもよい。
また、カバーシートに、予め、粘着剤層が設けられた市販の粘着フィルムを用いてもよい。
このような粘着剤からなる粘着剤層の厚さは、0.1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜50μmの範囲、更に好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0046】
〔反射層〕
本発明において、レーザー光に対する反射率を高めたり、記録再生特性を改良する機能を付与したりするために、基板と情報記録層との間に、反射層を形成することが好ましい。反射層は、レーザー光に対する反射率が高い光反射性物質を、真空蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティングすることにより基板上に形成することができる。
反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、50〜200nmの範囲とすることが好ましい。
なお、前記反射率は、70%以上であることが好ましい。
【0047】
反射率が高い光反射性物質としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属及び半金属或いはステンレス鋼を挙げることができる。これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、或いは二種以上の組合せで、又は合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。特に好ましくは、Au、Ag、Al或いはこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Ag或いはこれらの合金である。
【0048】
〔ハードコート層〕
ハードコート層は、傷の発生を防止するための層であり、その材料としては、放射線硬化樹脂を用いることが好ましい。ハードコート層に使用される放射線硬化樹脂としては、放射線照射により硬化可能な樹脂であればよく、より詳細には、分子中に、2個以上の放射線官能性の2重結合を有する樹脂であることが好ましい。
例えば、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等が挙げられる。中でも、好ましくは、2官能以上のアクリレート化合物、メタクリレート化合物である。
【0049】
〔その他の層〕
本発明の光ディスクは、本発明の効果を損なわない範囲においては、上述の必須の層に加え、他の任意の層を有していてもよい。かかる他の任意の層としては、例えば、情報記録層とカバーシートとの間に設けられるバリア層(後述)、反射層と情報記録層との間に設けられる界面層などが挙げられる。
なお、これら必須及び任意の層は、いずれも、単層でもよいし、多層構造を有してもよい。
【0050】
〔バリア層(中間層)〕
本発明においては、情報記録層とカバーシートとの間にバリア層を形成することが好ましい。
該バリア層は、情報記録層の保存性を高める、情報記録層とカバーシートとの接着性を向上させる、反射率を調整する、熱伝導率を調整する、等のために設けられる。
バリア層に用いられる材料としては、記録及び再生に用いられる光を透過する材料であり、上記の機能を発現し得るものであれば、特に、制限されるものではないが、例えば、一般的には、ガスや水分の透過性の低い材料であり、誘電体であることが好ましい。
具体的には、Zn、Si、Ti、Te、Sn、Mo、Ge等の窒化物、酸化物、炭化物、硫化物からなる材料が好ましく、ZnS、MoO2、GeO2、TeO、SiO2、TiO2、ZuO、ZnS−SiO2、SnO2、ZnO−Ga23が好ましく、ZnS−SiO2、SnO2、ZnO−Ga23がより好ましい。
【0051】
また、バリア層は、真空蒸着、DCスパッタリング、RFスパッタリング、イオンプレーティングなどの真空成膜法により形成することができる。中でも、スパッタリングを用いることがより好ましく、RFスパッタリングを用いることが更に好ましい。
本発明におけるバリア層の厚さは、1〜200nmの範囲であることが好ましく、2〜100nmの範囲であることがより好ましく、3〜50nmの範囲であることが更に好ましい。
【0052】
〔コート層〕
コート層は、光ディスクの情報記録層とは反対の面側に形成される層である。コート層は、既述のように、例えば、光ディスクのコンテンツ等を可視情報をユーザーが自由に書き込むことができる層である。コート層は、その材料に応じて、例えば、塗布・硬化によって形成しても、シート状に加工したものを貼付して形成してもよい。また、コート層の素材はカバーシートの素材と同様のものを使用することができる。
【0053】
以上の本発明の光ディスクにおいて、コート層の素材及びカバーシートの素材がいずれも三酢酸セルロースである構成が最も好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0055】
[実施例1]
1)ハードコート層塗布液の調製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセル・ユーシービー(株)製)93質量部に、R−3833(ダイキンファインケミカル研究所製)5質量部、X−22−164C(信越化学(株)製)2質量部、光ラジカル重合開始剤(イルガキュア907、チバガイキー社製)3質量部をメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン(1:1質量比)混合液に溶解混合し、ハードコート層塗布液を調製した。
【0056】
2)粘着剤塗布液の調製
アクリル系共重合体(溶剤:酢酸エチル/トルエン=1/1、以下同様)とイソシアネート系架橋剤(溶剤:酢酸エチル/トルエン=1/1、以下、同様)とを、アクリル系共重合体:イソシアネート系架橋剤が100:1(質量比)となるように混合し、粘着剤塗布液を調製した。
用いたアクリル系共重合体の組成を下記に示す。
主モノマー n−ブチルアクリレート 40質量部
2−エチルヘキシルアクリレート 30質量部
コモノマー メチルアクリレート 25質量部
官能性モノマー アクリル酸 5質量部
【0057】
3)ハードコート層塗布液の塗布・乾燥・巻取り:
ロール状に巻かれたベースフイルム(ポリカーボネート(PC)、帝人社製ピュアエース、厚さ90μm)にハードコート層塗布液を連続的に塗布し、塗膜を形成した後、熱乾燥及び紫外線を連続照射しハードコート層を形成しロール状に巻き取った。形成された塗膜の厚みは5μmであった。
【0058】
4)粘着剤の塗布
次に、ロール状に巻かれたポリエチレン性の離型フィルムを搬送しながら、前記粘着剤塗布液を連続的に、乾燥厚15μmになるように離型フィルムに塗布した。乾燥ゾーン(100℃)中で乾燥させた直後、前記ハードコート層を形成したベースフィルムのハードコート層と反対の面に離型フィルム上の粘着剤面とが貼り合わされるようにロール状に共巻した。共巻された状態で23℃50%RHの条件で72時間保持した。
【0059】
5)打ち抜き
作製する光ディスクの基板と同一形状になるように、離型フィルムが貼り合わされたベースフィルムを打ち抜いて、第1のシートを作製した。このとき、粘着層離型フイルムの途中まで刃を入れることで、ディスク基板と同一形状に半抜き状態でとどめ、これを巻き取りロール状にした。
【0060】
<光ディスクの作製>
スパイラル状のグルーブ(深さ100nm、幅120nm、トラックピッチ320nm)を有し、厚さ1.1mm、直径120mmの射出成形ポリカーボネート樹脂(帝人社製ポリカーボネート、商品名:パンライトAD5503)基板のグルーブを有する面上に、Agをスパッタリングして100nmの膜厚の反射層を形成した。
【0061】
その後、フタロシアニン系色素A(商品名:オラゾールブルーGN、cibaスペシャリティケミカル社製)を2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに添加し、2時間超音波処理を行って溶解し、色素塗布液を調製した。この色素塗布液を、スピンコート法により回転数を300rpmから4000rpmまで変化させながら23℃50%RHの条件で反射層上に塗布し、情報記録層(厚さ80nm)を形成した。
【0062】
23℃50%RHで1時間保存後、ZnS−SiO2を情報記録層上にスパッタリングして厚さ5nmの中間層を形成した。
中間層を形成した後、上記作製したハードコート層と粘着剤とが着いたカバーシートの剥離シートを剥がして、ローラによる押圧手段を使用し、中間層上にカバーシートを貼り合わせた。
【0063】
最後に、光ディスクのレーベル面側にUV硬化性樹脂( 大日本インキ化学工業(株)製、ダイキュリアSD−661)をスピンコートで2μm厚となるように成膜し、UV照射により硬化させた。
以上の工程により、実施例1の光ディスクを作製した。
【0064】
[実施例2]
実施例1のカバーシートで使用したポリカーボネートフィルムをTAC(三酢酸セルロース)フィルム(富士写真フイルム(株)製、フジタック)に変更したこと、及び実施例1において、光ディスクのレーベル面側に塗布したUV硬化性樹脂による成膜をせず、該光ディスクのレーベル面側に、光ディスクの基板と同じ形状に切り抜いたTACフィルム(富士写真フイルム(株)製、フジタック)を貼付したこと以外は実施例1と同様にして光ディスクを作製した。
【0065】
[実施例3]
実施例1において、光ディスクのレーベル面側に塗布したUV硬化性樹脂による成膜をせず、該光ディスクのレーベル面側に、光ディスクの基板と同じ形状に切り抜いたPETフィルムを貼付したこと以外は実施例1と同様にして光ディスクを作製した。なお、使用したPETフィルムは以下のようにして作製した。
エチレングリコール(以下、EGと略称する。)85質量部に、500℃における減量率が1.0質量%の炭酸カルシウム(平均粒径0.5μm)15質量部を添加した後、混合攪拌を行いスラリーを得た。該スラリーのフィルターによる上物は800ppmであった。次に、ジメチルテレフタレート100質量部とEG70質量部を酢酸カルシウム・4水和物0.035質量部を触媒として常法通りエステル交換をせしめた後、上記で得られた炭酸カルシウム(濃度:0.1質量%対ポリマー)を攪拌しながら滴下した。続いて、リン酸トリメチル0.03質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を添加した後、高温真空下で常法通り重縮合反応を行い、極限粘度0.620のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する。)ペレットを170℃、3時間乾燥後押出機ホッパーに供給し溶融温度280〜300℃で溶融し、この溶融ポリマーを1mmのスリット状ダイを通して表面仕上げ0.3S程度、表面温度20℃の回転冷却ドラム上に成形押出し厚さ300μmの末延伸フィルムを得た。このようにして得られた末延伸フィルムを75℃にて予熱し更に低速、高速のロール間で15mm上方より900℃の表面温度のIRヒーター1本にて加熱し、低、高速のロール表面速度により1.5倍延伸し、急冷し、再度1.5倍延伸を繰り返し、更にステンターに供給し、105℃にて横方向に2.5倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを205℃の温度で5秒間熱固定を実施し、更に二軸延伸熱固定フィルムを120℃に再加熱し、0.5%の弛緩率(加熱ロールと冷却ロール間の速度差)にて縦方向に弛緩せしめ、得られたフィルムの特性測定を実施した。得られたPETフィルムの厚みは60μmであった。
【0066】
[比較例1]
実施例1において、光ディスクのレーベル面側に塗布したUV硬化性樹脂による成膜をしなかったこと以外は実施例1と同様にして光ディスクを作製した。
【0067】
<光ディスクの評価>
[耐有機溶剤性評価]
得られた実施例1〜3、及び比較例1の光ディスクに対し、先ず、本評価試験の前にヘイズ値を測定した。有機溶剤として、エタノール、ベンジン、トルエン、シクロヘキサンの4種類を用い、これらの有機溶剤を1滴ずつ各光ディスクの表面に滴下しティッシュで拭き取り、拭き取った後のヘイズ値を測定した。結果を表1に示す。表1においては、本試験前後におけるヘイズ値の増加が5%未満のものを○とし、5%以上のものを×とした。なお、ヘイズ値の測定は、スガ試験機株式会社製ヘイズメーターHGM−2を用いた。
【0068】
【表1】

【0069】
表1においては、ハードコート層を「HC層」、ポリカーボネートシートを「PC」、三酢酸セルロースフィルムを「TAC」、ポリエチレンテレフタレートを「PET」と表記した。
【0070】
表1の結果から、実施例1〜3の光ディスクは、比較例1の光ディスクと比較して、耐有機溶剤性が高いことが分かる。これは、油性ペンなどで描かれた文字や絵を有機溶剤を用いて消しても透明度が劣化せず視認性に優れていることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の光ディスクの層構成の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10 光ディスク
12 基板
14 情報記録層
16 接着層
18 カバーシート
20 ハードコート層
22 コート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光が入射される面とは反対の面側の最も外側に位置する層の耐有機溶剤試験前後におけるヘイズ値の増加が5%未満であることを特徴とする光ディスク。
【請求項2】
前記ヘイズ値の増加が5%未満である層の材質が三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、又は放射線硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク。

【図1】
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【公開番号】特開2006−331569(P2006−331569A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155455(P2005−155455)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】