説明

光バンドパスフィルタのための複合体粒子

【課題】高い透過率を有し、様々な形状および形態に容易に加工され、丈夫で、耐衝撃性で、かつ柔軟である赤外線反射用光バンドパスフィルタを提供する。
【解決手段】特定の波長の光が最小限の吸収で透過することを可能にする一方で、多の特定の波長の光を最小限の吸収で反射または後方散乱させるため、コアおよびシェルを含む100nm〜3.5ミクロンの直径を有するポリマーの表面上に1nmから500nmの直径を有する高屈折率物質が配置された複合体粒子を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光バンドパス用途における赤外線反射材として使用するための複合体ポリマー粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
光バンドパスフィルタは、あらかじめ決定された波長の幅にわたって光を透過させ、一方で、他の全ての波長を吸収、放射または散乱によって退ける。このようなフィルタは、例えば、ソーラーパネル、レーザーキャビティーまたは光通信システムにおいて有用である。例えば、このフィルタは、レーザーキャビティーの内側または外側に配備される場合に、レーザーの操作波長を制約するために使用されうる。光通信システムにおいては、このフィルタは、光受信機の入力で、信号の波長バンドの外側の自然放出ノイズのような望まれない光を分離するために使用されうる。D.M.シャムーン(Shamoon)、J.M.H.エルミラーニ(Elmirghani)、R.A.クリアン(Cryan)「Characterisation of optically preamplified receivers with fibre Bragg grating optical fibers(ファイバーブラッググレーティング光ファイバーを備えた光前置増幅受信機の特徴付け)」IEEE Colloquium on Optical Fiber Gratings,1996年3月を参照。
【0003】
特定の用途においては、望まれない放射線を吸収するのではなく、反射または後方散乱することが望ましい。例えば、赤外線が退けられるべき場合には、赤外線を吸収することはそのフィルタおよび近くの他の部品の加熱をもたらしうるが、反射または後方散乱はそうではないであろう。先行技術においては、可視スペクトルの全てまたは一部分を透過し、赤外線を反射するフィルタを提供するための様々なアプローチが好まれてきた。これら基本的なアプローチは当業者に周知であり、よって、これらは以下で簡単にのみ論じられる。
【0004】
第1のアプローチは全体的に誘電体層を含む複数層干渉バンドパスフィルタを堆積させることを伴う。
【0005】
複数層バンドパスフィルタは複数キャビティまたは複数半波バンドパスフィルタの形態で存在することができ、これは交互の高および低屈折率誘電体層の組み合わせを含み、そのいくつかは特定の波長において約1/4波長の光学厚さを有し、そのいくつかはその波長の1/2の光学厚さを有する。層が1/4または1/2波長の厚さである波長は、一般的に望まれる中心波長であり、そして概してそのフィルタを透過する波長範囲の周波数中心に対応する。
【0006】
複数層バンドパスフィルタは、多くの場合エッジフィルタと称される、長および短波長パスフィルタの組み合わせの形態であることもできる。この組み合わせは、概して、短波長エッジを特定し、その短波長エッジよりも長い波長を透過させるように設計された少なくとも1つのフィルタと、長波長エッジを特定し、より短い全ての波長を透過させるように設計された1つのフィルタとを含む。
【0007】
全ての誘電体フィルタの利点は、誘電体層において可能な非常に低い吸収のために、透過率が非常に高い場合があることである。フィルタを透過する波長範囲において反射が低減されうる程度によって、透過率は本質的に限定されうる。
【0008】
全ての誘電体フィルタの欠点は、反射領域またはストップ領域から透過領域への、適切に急な推移を提供するために20もの層が必要とされうることである。ストップ領域を広いバンドの波長にわたって延ばすために、50以上の層が必要とされる場合がある。次第に長くなる波長をブロックするために、層は次第に厚くされなければならないので、延ばされたストップ領域は、透過する波長領域よりも長い波長について特に問題である。さらに、長波長ブロッキング層の高次の反射バンドが、透過されるべき波長範囲内に表れるのを妨げるために、複合層構造が必要とされる。
【0009】
複数層バンドパスフィルタの堆積についての第2のアプローチが、論文「Induced Transmission in Absorbing Films Applied to Band Pass Filter Design(バンドパスフィルタ設計に適用される吸収膜における誘導透過)」、Berning(バーニング)およびTurner(ターナー)、J.Opt.Soc.Am.74、3、230−239に提案された。このアプローチにおいて、金属層、好ましくは銀層は、透過される波長範囲のほぼ中心においてそれぞれ約1/4波長光学厚さの高および低屈折率層の交互の積層物を含む複数層誘電体反射層システムによって、いずれかの側に結合される。この範囲の長波長側においては、金属層は所望のブロッキング反射を提供する。このようなフィルタは、概して、誘起透過フィルタと称される。透過は、1/4波複数層積層物によって金属層を通って本質的に「誘起」され、これは透過される波長範囲内で金属層からの反射を低減させる。
【0010】
このようなフィルタは、元々は、限定された波長範囲を透過させるのに好適であるとして提案され、そして、例えば、電気光学システムにおけるカラーフィルタとして使用されていた。それらは、今日では、建築用ガラスのための低放射率(熱保持性)コーティングのような非常に単純な形態で使用されている。この単純な形態において、金属層は相対的に薄く、例えば、約10ナノメートル(nm)であり、そして誘電体積層物は、1つだけの比較的高い屈折率層に減らされる。
【0011】
この単純な形態は、(可視スペクトルを収容するのに充分広い透過領域を提供するには)銀層が比較的薄いので、そのフィルタが太陽スペクトルの大きな割合を占める近赤外波長をブロックするには有効ではないという欠点を有する。
【0012】
バンドパスフィルタは導体物質または半導体物質、例えば、インジウムスズ酸化物から製造されることもでき、これらの物質は国際公開第2005072947号に教示されるような、いわゆるプラズマ波長を有する。この場合、プラズマ波長より長い全ての波長は反射される。このようなフィルタは、製造するのに高価である場合があり、かつ相対的に狭い領域の同調性を有する場合がある。
【0013】
コレステリック液晶を用いて波長選択的なフィルタも製造されてきた。米国特許第4,725,460A号は、2層のコレステリック液晶含有膜から構成されるノッチフィルタを記載する。これらのフィルタは、特定の波長の範囲内の光をブロックし、他の波長を通し、よって、これらのフィルタはバンドパスフィルタではなくより適切にノッチフィルタと称される。これらはコレステリック液晶の非常に高コスト、および比較的狭い操作温度範囲に悩まされる。
【0014】
最後に、米国特許第2009/0015908A1号に教示されるような、より低いインデックスのマトリックス中での、規則的に間隔の空いた配置の高インデックスコロイド粒子を使用して、バンドパスフィルタが構築されてきた。このシステムは規則的に間隔の空いた配置のコロイド粒子の作成および維持における困難性に悩まされる。
【0015】
赤外線反射光バンドパスフィルタについての様々な用途が存在する。このような例の1つは太陽電池である。入射太陽放射線の一部分を電気エネルギーに変換する太陽電池は電力の重要なソースである。しかし、その変換プロセスの効率は高温で、例えば、結晶性シリコン太陽電池については約0.45%/℃で低減される。現在最新式の結晶性シリコン太陽電池は約25%の効率であり、よって0.45%/℃の減少はかなり有意である。
【0016】
赤外線反射光バンドパスフィルタの使用の第2の非限定的な例は、建物、車および他の構造物に適用される熱を低減させるための窓ガラスにおいてである。窓ガラスを処理して熱拒絶を増大させる多くの既存の方法、例えば、複数層誘電体、薄い金属膜、および染色ポリマー膜の適用が存在する。これらのアプローチは、可視光の透過を有意に低減させ、これは望ましくない場合がある。
【0017】
さらに、赤外線反射光バンドパスフィルタが屋根材に組み込まれることができたか、設置後に屋根上を覆うことができた場合には、赤外線反射光バンドパスフィルタは有利であろう。住宅所有者の多くは、美観または地方の条例の理由のために、白色または明るい色の屋根を有さないのを好む。赤外線を反射する暗い色の屋根は有意なエネルギー節約および環境上利点をもたらすであろう。この問題に対する既存のアプローチは特別な赤外線反射顔料の使用を伴う。これらの物質は、非常に限定された色の幅でしか入手できず、コスト高であり、かつある場合には高度に毒性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2005072947号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,725,460A号明細書
【特許文献3】米国特許第2009/0015908A1号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】D.M.シャムーン(Shamoon)、J.M.H.エルミラーニ(Elmirghani)、R.A.クリアン(Cryan)「Characterisation of optically preamplified receivers with fibre Bragg grating optical fibers(ファイバーブラッググレーティング光ファイバーを備えた光前置増幅受信機の特徴付け)」IEEE Colloquium on Optical Fiber Gratings,1996年3月
【非特許文献2】「Induced Transmission in Absorbing Films Applied to Band Pass Filter Design(バンドパスフィルタ設計に適用される吸収膜における誘導透過)」、Berning(バーニング)およびTurner(ターナー)、J.Opt.Soc.Am.74、3、230−239
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、光バンドパスフィルタの構成における先行技術の多数の制限を克服する。第1に、他の従来のバンドパスフィルタと比較して、本発明のバンドパスフィルタはバンドパス領域において相対的により高い透過率を有する。第2に、複合体ポリマー粒子はそれら自体内部で構造化されており、それらは異なる屈折率の物質の複数層積層物の形成を必要としないだけでなく、構造化されたコロイドまたは液晶の作成および維持も必要としないので、それらは様々な形状および形態に容易に加工されることができる。特に、この粒子は、バインダー物質に添加されることができ、かつ様々な基体上のコーティングとして容易に適用されることができる。第3に、本発明のバンドパスフィルタは、先行技術のあるフィルタよりも丈夫で、耐衝撃性で、かつ柔軟である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、複合体粒子を含む光バンドパスフィルタであって、複合体粒子がポリマーおよび高屈折率物質を含む、光バンドパスフィルタを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は比較例1を示すグラフである。
【図2】図2は比較例2を示すグラフである。
【図3】図3は比較例3を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において使用される場合、「光バンドパスフィルタ」は、特定の波長の光が最小限の吸収で透過することを可能にする一方で、他の特定の波長の光を最小限の吸収で反射または後方散乱させるデバイスを意味する。光バンドパスフィルタの非限定的な用途には、建物および乗り物を涼しく維持するための窓、天窓および他の種類のガラス面において;望まれないスペクトル応答を妨げるためのCMOSおよびCCDカメラ像形成センサーのための赤外線フィルタとして;夏に家屋を涼しく維持するための屋根システムにおける赤外線反射材として;および有用な光をブロックすることなく太陽電池モジュールを涼しく維持することによりその性能を向上させるための太陽電池モジュールにおける赤外線反射材として;赤外放射線をブロックすることが挙げられる。
本明細書において使用される場合、「高屈折率」は、少なくとも2.3の屈折率を有することを意味する。
本明細書において使用される場合、「赤外線」は750nm〜25,000nmの波長を有する光を意味する。
本明細書において使用される場合、「可視光」は380nm〜700nmの波長を有する光を意味する。
【0024】
本発明は、光バンドパスフィルタとして有用な複合体粒子に関する。本発明の複合体ポリマー粒子は、100nm〜3.5ミクロン、あるいは500nm〜2ミクロン、さらには900nm〜1.5ミクロンの範囲の直径を有するポリマー粒子を含んでなる。このポリマー粒子は、50℃を超える;あるいは75℃を超える;さらにあるいは90℃を超える計算ガラス転移温度(T)を有する。このポリマー粒子は固体ビーズ粒子であることができる。
【0025】
ある実施形態においては、このポリマー粒子はコアおよびシェルを含むことができる。場合によっては、コアは、乾燥時には、少なくとも1つのボイドを含むことができる。本明細書において使用される場合、「ボイド」は、屈折率がシェルの屈折率から少なくともXだけ異なっており、Xが少なくとも0.3であり、あるいは少なくともシェルポリマーが50℃を超える計算Tを有する領域を意味する。
【0026】
高屈折率を有する少なくとも1種の物質がポリマー粒子の表面上に配置されている。本明細書において使用される場合、「ポリマー粒子の表面上に配置されている」とは、高屈折率粒子がポリマー粒子の表面領域に結合されていること、すなわち、ポリマー粒子の表面に近接する、例えば、表面に触れて、表面上に広がる、または表面に埋め込まれるなどのポリマー粒子の表面との接触における力によって保持されていることを意味する。あるいは、高屈折率シェルは別々になった粒子の層でなくて良く、ポリマー粒子を封入する固体シェルであることができた。
【0027】
好適な高屈折率物質の非限定的な例には、二酸化チタン、酸化セリウム、チタン酸鉛、ケイ素、炭化ケイ素、硫化鉛;窒化ケイ素;または窒化アルミニウムが挙げられる。封入用物質のポリマーと高屈折率物質との屈折率は少なくとも0.75、あるいは少なくとも1.0、さらにあるいは少なくとも1.1異なることが望ましい。
【0028】
本発明の形態においては、ポリマー粒子に結合した高屈折率物質を含む複合体ポリマー粒子を形成する方法が提供される。1つのサインの電荷を有するポリマー粒子を含む第1の分散物が調製される。このポリマー粒子の直径は100nm〜3.5ミクロン、あるいは500nm〜2ミクロン、さらにあるいは900nm〜1.5ミクロンの範囲である。ポリマー粒子はコアおよびシェルを含むことができる。ポリマーがコア/シェル型のものである場合には、このポリマーのコアは、乾燥時に、少なくとも1つのボイドを含むことができる。ポリマーシェルは5nm〜1.75ミクロン、あるいは25nm〜1ミクロン;さらにあるいは50nm〜500nmの壁厚さを有し;かつ50℃を超える計算Tを有する。高屈折率物質を含む第2の分散物が形成される。高屈折率物質はポリマー粒子の電荷と反対の電荷を有する。典型的には、本発明の高屈折率物質は1nm〜500nm、あるいは10nm〜350nm、さらにあるいは30〜150nmの直径を有する。次いで、この分散物は当該技術分野の従来の方法で混合される。ポリマー粒子および高屈折率物質は静電相互作用によって一緒に結合されて、複合体ポリマー粒子を生じさせる。
【0029】
本発明の別の形態においては、ポリマー粒子と高屈折率物質と間に高分子電解質(polyelectrolyte)が存在する、ポリマー粒子に結合した高屈折率物質を含む複合体ポリマー粒子を形成する方法が提供される。高分子電解質はポリマー粒子および高屈折率物質の電荷と反対の電荷を有する。ポリマー粒子の直径は100nm〜3.5ミクロン、あるいは500nm〜2ミクロン、さらにあるいは900nm〜1.5ミクロンの範囲である。ポリマー粒子はコアおよびシェルを含むことができる。ポリマーがコア/シェル型のものである場合には、ポリマーのコアは、乾燥時には、場合によっては少なくとも1つのボイドを含むことができる。ポリマーシェルは5nm〜1.75ミクロン、あるいは25nm〜1ミクロン;さらにあるいは50nm〜500nmの壁厚さを有し;かつ50℃を超える計算Tを有する。本発明の高屈折率物質は1nm〜500nm、あるいは10nm〜350nm、さらにあるいは30〜150nmの直径を有する。ある場合には、ポリマー粒子の分散物、高屈折率物質の分散物、および高分子電解質が、当該技術分野の従来の方法で混合される。別の場合には、高分子電解質およびポリマー粒子を含む第1の分散物が製造される。第2の分散物は高屈折率物質からなる。次いで、これらの分散物が、当該技術分野の従来の方法によって混合される。さらに別の場合には、高分子電解質および高屈折率物質を含む第1の分散物が製造される。第2の分散物はポリマー粒子からなる。次いで、これらの分散物が、当該技術分野の従来の方法によって混合される。ポリマー粒子および高屈折率物質は静電相互作用によって一緒に結合されて、複合体ポリマー粒子を生じさせる。
【0030】
本発明の別の形態においては、高屈折率物質で封入されたポリマー粒子からなる複合体ポリマー粒子を形成する方法が提供される。このポリマー粒子の直径は100nm〜3.5ミクロン、あるいは500nm〜2ミクロン、さらにあるいは900nm〜1.5ミクロンの範囲である。このポリマー粒子はコアおよびシェルを含むことができる。ポリマーがコア/シェル型のものである場合には、このポリマーのコアは、乾燥時に、少なくとも1つのボイドを場合によって含むことができる。ポリマーシェルは5nm〜1.75ミクロン、あるいは25nm〜1ミクロン;さらにあるいは50nm〜500nmの壁厚さを有し;かつ50℃を超える計算Tを有する。本発明の高屈折率物質は1nm〜500nm、あるいは10nm〜350nm、さらにあるいは30〜150nmの直径を有する。封入プロセスは可溶性金属前駆体の溶液へのポリマー粒子の添加、次いで沈殿および、ポリマー粒子の表面上での高屈折率物質への変換を伴う。この方法に従って、金属アルキルオキシド、例えば、チタンテトラブトキシドが好適な溶媒(アルコール)に添加され、混合され、そしてその溶液に熱が加えられうる。ポリマー粒子がこの溶液に添加され、酸が場合によって添加される。得られた粒子はろ過され、室温で空気中に置かれる。次いで、この粒子はオーブン内で乾燥させられる。
【0031】
複合体ポリマー粒子は、当該技術分野においてよく知られているあらゆる手段によって、機械的ミリング、分散、共押出、および/または、この複合体ポリマー粒子を第2の物質に均一に分散させる他の手段によって別の物質に組み込まれうる。このように分散させられた後で、複合体ポリマー粒子は、光バンドパスフィルタとして、液体、コーティング、膜として、またはバルク固体物質として、もしくは当該技術分野の従来の何らかの他の形態として使用されうる。
【実施例】
【0032】
実施例1.キメン(Kymene商標)G3Xcelポリマーを使用する複合体ポリマー粒子の製造:
ローパック(Ropaque商標)AF−1055エマルションポリマー(1ミクロンの直径を有するポリマー粒子、このポリマー粒子は、乾燥時に少なくとも1つのボイドを含むコアと、50℃を超える計算Tを有するシェルポリマーとを有する)と水との混合物に、キメンG3Xcel(カチオン性官能性ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、全固形分=16%)を1分間にわたって添加し、5分間一定の混合を行った。キメンG3Xcelの添加は、ローパックAF−1055エマルションポリマーの増粘をもたらした。継続的に攪拌しつつ、上記混合物に、S5−300B二酸化チタンスラリーがゆっくりと添加された。混合の約10分後、粒子は空気循環オーブン中で80℃で乾燥させられ、水を除去した。実施例1の走査型電子顕微鏡写真(SEM)は、より大きな中央の球状粒子とその上に配置された複数のより小さな粒子とからなる複合体ポリマー粒子を示した。
【0033】
実施例2.キメン(Kymene商標)G3Xcelポリマーを使用しない、複合体ポリマー粒子の製造:
実施例1において使用されたキメンG3Xcelのようなカチオン性ポリマーを使用せずに、複合体粒子が製造されることもできることが予想される。ローパック(Ropaque商標)AF−1055エマルションポリマーの混合物に、0.5MのHClが添加されて、2以下のpHを達成する。別の容器で、S5−300B二酸化チタンスラリーに0.5MのHClが添加されて、2以下のpHを達成する。次いで、連続的に混合しつつ、酸性ローパックAF−1055エマルションが酸性X5−300Bスラリーに滴下添加される。完全に組み込まれたら、次いで粒子は、80℃の空気循環オーブン内で乾燥させられる。
【0034】
実施例3.金属アルコキシド前駆体を使用する複合体ポリマー粒子の製造:
容器内に配置された空気循環オーブン中80℃でローパック(Ropaque商標)AF−1055エマルションポリマーが完全に乾燥させられ、そしてあらゆる凝集体を崩壊させるために24時間回転させられる。別に、チタンテトラブトキシドのエタノール中溶液が一定の攪拌下で製造される。乾燥したローパックAF−1055ポリマー粒子はこの溶液中に分散される。得られる複合体ポリマー粒子はろ過され、室温で空気中に配置され、次いで80℃で空気循環オーブン内で乾燥させられる。
【0035】
実施例4.光起電力モジュールのための複合体粒子充填液体封入材の製造:
反応性液体ポリマー(25℃未満の計算Tを有する)と、固体ポリマーを形成できる架橋剤との混合物に、一定の混合を行いつつ、場合によっては真空下で、複合体粒子が5重量%で添加される。完全に分散した後で、混合が停止され、混合物は、前面ガラスとシリコン太陽電池との間の封入材として光起電力モジュールに適用される。
【0036】
実施例5.屋根用膜のための複合体粒子充填コーティングの製造:
【表1】

【0037】
ローパック(Ropaque商標)AF−1055はダウケミカルカンパニーの製品である。キメン(Kymene商標)G3 Xcelは、米国、デラウエア州のヘラクレスインコーポレーティド(Hercules,Inc.)から得られた。S5−300B(二酸化チタンスラリー)は、フランス国、タンのミレニアムインオーガニックケミカルズ,ア クリスタルカンパニー(Millenium Inorganic Chemicals,A Cristal Company)から得られた。
【0038】
比較例1:様々なビーズタイプ−TiO粒子直径=100nmの後方散乱の理論的計算。
プロット前提:
1)全てのTiOはn=2.737の屈折率を有すると仮定された。
2)粒子が懸濁された連続媒体はn=1.482を有すると仮定された。
3)固体ビーズは1100nmの直径およびn=1.482を有すると仮定された。
4)中空球状ポリマー(HSP)は1100nmの全体直径を有すると仮定された。ボイドは1000nmの直径を有すると仮定された。シェルはn=1.59のポリスチレンであると仮定された。
5)粒子が分散されている膜の厚みは25ミクロンである。
6)TiOでコーティングされたHSPおよび固体ビーズ濃度は、膜中で5体積%である。
7)TiO−固体ビーズ混合物において、TiO濃度は変動するが、コーティングされたHSPまたは固体ビーズからもたらされる量に等しい。よって、200nmコーティングについては、これは5%×(1−((1100/1500)))=3.03体積%ということになる。(1500=コーティングされたビーズの全直径)
【0039】
計算方法:
1)ミー理論(Mie Theory)を用いて、単一の単離粒子についての散乱パターンを計算する。
2)ミー理論からの光散乱の角度分布および散乱の強度を使用し、複数粒子のシステムに適用して、どのように光が散乱するかの確率および方向を決定する。
3)バイリー(Bailey)A.E.;キャネル(Cannell)D.S.Phys.Rev.E,1994,50,4853−4864およびシペレッティ(Cipelletti)L.Phys.Rev.E,1997,55,7733−7740によって記載されるモンテカルロ複数散乱手順を適用する:ここでは、
a)光子が法線方向から膜の前面に衝突する。
b)膜の内側に入ったら、光子は粒子に衝突するまで移動する。次の散乱事象の前に光子が移動する距離、並びに散乱方向が、粒子特性および濃度に基づいて選択される。
c)光子が膜の裏面に衝突する、または反転するまで、この移動−散乱シークエンスが繰り返される。
d)反転した光子は後方散乱としてカウントされる。裏面に到達した光子は前方散乱としてカウントされる。
【0040】
比較例2:様々なビーズタイプ−TiO粒子=160nmの後方散乱の理論的計算。
比較例1と同じプロット前提および計算方法がここで使用された。
【0041】
比較例3:様々なビーズタイプ−TiO粒子=200nmの後方散乱の理論的計算。
比較例1と同じプロット前提および計算方法がここで使用された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体粒子を含む光バンドパスフィルタであって、複合体粒子がポリマーおよび高屈折率物質を含む、光バンドパスフィルタ。
【請求項2】
高屈折率物質がポリマーの表面上に配置されている、請求項1に記載の光バンドパスフィルタ。
【請求項3】
ポリマーがコアおよびシェルを含む、請求項2に記載の光バンドパスフィルタ。
【請求項4】
コアが、乾燥時に、少なくとも1つのボイドを含む、請求項3に記載の光バンドパスフィルタ。
【請求項5】
ポリマーが100nm〜3.5ミクロンの直径を有する、請求項2に記載の光バンドパスフィルタ。
【請求項6】
高屈折率物質が1nm〜500nmの直径を有する、請求項2に記載の光バンドパスフィルタ。
【請求項7】
請求項2の光バンドパスフィルタを含む太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項2の光バンドパスフィルタを含む窓。
【請求項9】
請求項2の光バンドパスフィルタを含む屋根。
【請求項10】
請求項2の光バンドパスフィルタを含む膜またはコーティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−145654(P2011−145654A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−253405(P2010−253405)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】