説明

光パワーメータ及び光強度測定方法

【課題】低い強度から高い強度まで幅広く且つ簡単に被測定光の強度を測定できる光パワーメータを提供する。
【解決手段】被測定光Lを、分配光L1,L2とに分配し、分配光L2が分配光L1より大きい分配強度比を持つよう分配光L1,L2を出射するビームスプリッタ2、ビームスプリッタ2から出射された分配光L1を受光する受光素子3、ビームスプリッタ2から出射された分配光L2を受光する受光素子4、受光素子4で分配光L2が受光され又はされないように調整可能なシャッタ装置5、受光素子3,4で受光された分配光L1,L2の強度に基づいてシャッタ装置5を制御する制御部6を備え、制御部6は、分配光L1の強度と分配強度比とに基づいて分配光L2の強度を算出し、その算出強度が受光素子4の許容限界強度以上である場合と、算出強度が受光素子4の許容限界強度未満である場合とに分けて、被測定光Lの強度を算出して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パワーメータ及び光強度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークが利用可能な場所においては、性能試験等の種々の場面で、光ファイバによって伝送される光の強度測定が行われ、その測定には光パワーメータが用いられる。
【0003】
このような光パワーメータとして、例えば被測定光ファイバから出射された光を、減衰用ガラス板で反射させた後、減衰フィルタを経て受光素子に入射させることにより高い強度の光を測定できる光パワーセンサが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−188957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載の光パワーセンサは、高い強度の入射光は測定できても、低い強度の入射光を測定することは困難であった。即ち、光ファイバから出射された光の強度が低い場合、その光は、減衰用ガラス板で反射された後、減衰フィルタを経てから受光素子に入射される。このため、入射光は、受光素子に到達する時にはその強度がかなり低下しており、上記特許文献に記載の光パワーメータでは、そのような強度の低い光を測定することは困難であった。
【0005】
ここで、低強度光測定用の光パワーセンサを、高強度光測定用の光パワーセンサとは別に用いることも考えられる。しかし、その場合、光強度を測定するために、2種類の光パワーセンサを準備する必要が生じ、準備に手間がかかる。また準備が終わって、実際に光強度を測定する際には、被測定ファイバから出射される光強度がどの程度か分からない。このため、例えば被測定光ファイバから出射される光が大きいにも関わらず、低強度光測定用の光パワーセンサで光強度を測定した場合には、高強度光測定用の光パワーセンサで光強度を測定し直す作業が生じ、光強度の測定作業が面倒になる。特に、被測定光ファイバから測定される光強度が過大な場合には、低い強度用の光パワーメータの受光素子が損傷するおそれもあり、受光素子が損傷した場合にはもはやその光パワーメータでは光強度の測定はできなくなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低い強度から高い強度まで幅広く且つ簡単に被測定光の強度を測定できる光パワーメータ及び光強度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の光パワーメータは、被測定光を、第1分配光と第2分配光とに分配し、前記第2分配光が前記第1分配光に対して大きい分配強度比を持つように前記第1分配光及び前記第2分配光を出射するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタから出射された前記第1分配光を直接受光する第1受光素子と、前記ビームスプリッタから出射された前記第2分配光を直接受光する第2受光素子と、前記第2受光素子で前記第2分配光が受光され又は受光されないように調整可能なシャッタ装置と、前記第1受光素子又は前記第2受光素子で受光された前記第1又は第2分配光の強度に基づいて前記シャッタ装置を制御する制御部とを備えており、前記制御部は、前記第1受光素子で受光された前記第1分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記第2分配光の強度を算出し、その算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度以上である場合には、前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されないように前記シャッタ装置を制御し、前記第1受光素子で受光された第1分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記被測定光の強度を算出して出力し、前記算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度未満である場合には、前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されるように前記シャッタ装置を制御し、前記第2受光素子で受光された前記第2分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記被測定光の強度を算出して出力するものであることを特徴とする。
【0008】
この光パワーメータによれば、被測定光がビームスプリッタに入射されると、その被測定光が第1分配光と第2分配光とに分配され、ビームスプリッタから出射された第1分配光は第1受光素子で受光される。そして、制御部で、第1分配光の強度と上記分配強度比とに基づいて第2分配光の強度が算出され、その算出光強度が第2受光素子の許容限界強度以上であるかどうかが判断される。
【0009】
そして、上記算出光強度が第2受光素子の許容限界強度以上である場合には、制御部により、第2受光素子で第2分配光が受光されないようにシャッタ装置が制御され、第1分配光の強度と上記分配強度比とに基づいて被測定光の強度が算出されて出力される。このとき、第1受光素子で受光された第1分配光は、第2分配光より小さい強度を有しているとはいえ、上記算出強度が第2受光素子の許容限界強度以上であるほど被測定光の強度が大きいため、第1分配光の強度も比較的大きくなりうる。このため、第1受光素子でも容易に第1分配光の強度を測定することが可能であり、高い強度の被測定光についてもその強度の測定が可能となる。
【0010】
一方、上記算出光強度が第2受光素子の許容限界強度未満である場合には、制御部によって、第2受光素子で第2分配光が受光されるようにシャッタ装置が制御され、その第2受光素子で受光された第2分配光の強度と上記分配強度比とに基づいて被測定光の強度が算出されて出力される。このとき、第2分配光は、第1分配光に比べると、被測定光に対する強度の減衰量が小さい。このため、第2受光素子で容易に第2分配光の強度を測定することが可能となり、低い強度の被測定光についてもその強度の測定が可能となる。
【0011】
また上記光パワーメータにおいて、前記シャッタ装置は、遮光性のシャッタ部材と、前記シャッタ部材を収容するシャッタ収容部とを備えており、前記シャッタ部材を前記シャッタ収容部から抜き出すことによって前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されない状態とされ、前記シャッタ部材を前記シャッタ収容部に収容することによって前記第2受光素子で前記第2分配光が受光される状態になっていることが好ましい。
【0012】
この場合、シャッタ装置において、遮光性のシャッタ部材をシャッタ収容部に収容することによって第2分配光が第2受光素子で受光される状態になっていると、ビームスプリッタから出射された第2分配光はほとんど減衰されずに第2受光素子で受光されることが可能となる。このため、第2分配光の強度がかなり小さい場合でも、第2分配光の強度を測定することが可能となり、より広い強度範囲にわたって被測定光の強度を測定することが可能となる。
【0013】
また上記光パワーメータにおいて、シャッタ装置は液晶シャッタであってもよい。この液晶シャッタは、シャッタ機能を実現させる場合にそれ自体移動するものではない。このため、シャッタ機能を実現させるために、可動部分の可動スペースが必要な可動式シャッタとは異なり、可動スペースを考慮する必要がない。このため、シャッタ装置として液晶シャッタを用いた光パワーメータは、シャッタ装置として可動式シャッタを用いた光パワーメータに比べて、より小型化を図ることが可能となる。
【0014】
上記光りパワーメータは、上記シャッタ装置を、前記第2分配光が前記第2受光素子で受光されないように調整可能な調整手段をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この場合、被測定光の強度測定開始前に、調整手段により、シャッタ装置を、第2分配光が第2受光素子で受光されないように調整することが可能となる。このため、第2受光素子の許容限界強度以上の過大な強度を有する第2分配光が第2受光素子で受光されることを容易に回避することができる。
【0016】
また本発明は、被測定光を、第1分配光と第2分配光とに、前記第2分配光が前記第1分配光に対して大きい分配強度比を持つように分配する光分配工程と、前記光分配工程で分配された前記第1分配光を第1受光素子で受光する第1分配光受光工程と、前記第1受光素子で受光された前記第1分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて、第2受光素子で受光される前記第2分配光の強度を算出する第2分配光強度算出工程と、算出された前記第2分配光の算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度以上であるかどうかを判断する判断工程と、前記判断工程で、算出された前記第2分配光の算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度以上であると判断された場合には、前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されないようにシャッタ装置を閉じた状態に制御するとともに前記第1受光素子で受光された第1分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記被測定光の強度を算出して出力し、前記第2分配光の算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度未満であると判断された場合には、前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されるように前記シャッタ装置を開いた状態に制御するとともに前記第2受光素子で受光された前記第2分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記被測定光の強度を算出して出力する制御工程と、を含むことを特徴とする光強度測定方法である。
【0017】
この光強度測定方法によれば、低い強度から高い強度まで幅広く且つ簡単に被測定光の強度を測定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低い強度から高い強度まで幅広く且つ簡単に被測定光の強度を測定できる光パワーメータ及び光強度測定方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る光パワーメータの実施形態について詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る光パワーメータの第1実施形態を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の光パワーメータ100は、光ファイバFの先端部を挿入するための挿入口1aを有するハウジング1を備えている。光ファイバFの先端部が例えば光コネクタ(図示せず)に固定されている場合には、挿入口1aは光コネクタを挿入可能となるように構成される。ハウジング1は、好ましくは外部からの光を遮断するために遮光性の部材で構成される。
【0021】
ハウジング1には、挿入口1aに対向する位置に、光ファイバFから出射される被測定光Lを第1分配光L1と第2分配光L2とに分配して第1分配光L1及び第2分配光L2を出射するビームスプリッタ2と、ビームスプリッタ2から出射される第1分配光L1を直接受光する第1受光素子3と、ビームスプリッタ2から出射される第2分配光L2を直接受光する第2受光素子4と、第2受光素子4で第2分配光L2が受光され又は受光されないように調整可能なシャッタ装置5と、第1受光素子3、第2受光素子4及びシャッタ装置5に電気的に接続され、第1受光素子3又は第2受光素子4で受光された第1分配光L1又は第2分配光L2の強度に基づいてシャッタ装置5を制御する制御回路(制御部)6とが内蔵されている。
【0022】
ここで、ビームスプリッタ2、第1受光素子3、第2受光素子4、シャッタ装置5及び制御回路6のそれぞれについて詳細に説明する。
【0023】
ビームスプリッタ2は被測定光Lを第1分配光L1と第2分配光L2とに分配する光分配面2aを有する。光分配面2aは、被測定光Lの一部を反射し残部を透過するものであり、反射光が第1分配光とされ、透過光が第2分配光L2とされる。ビームスプリッタ2は、シャッタ装置5が第2分配光L2側に挿入される場合は、第2分配光L2が第1分配光L1に対して大きい分配強度比を持つように第1分配光L1及び第2分配光L2を出射する。第1受光素子3、第2受光素子4共に−20dBm〜0dBmの範囲で測定可能なセンサを用いる場合、第1分配光L1、第2分配光L2の強度比を1:100とした時、−20dBm〜+20dBmの強度範囲の光を連続して測定可能となる。
【0024】
第1受光素子1及び第2受光素子4としては、例えば光電変換素子が用いられる。第2受光素子4の許容限界強度とは、第2受光素子4で受光された第2分配光L2の強度と、その強度に応じて得られる電気信号との間で線形性が保持されるような強度の範囲の上限値を意味する。
【0025】
シャッタ装置5は、本実施形態では可動式シャッタ装置で構成されている。即ち、可動式シャッタ装置5は、平板状のシャッタ部材5aと、シャッタ部材5aを収容するシャッタ収容部5bとを備える。シャッタ部材5aは、第2分配光L2が第2受光素子4に到達することを防止するため、遮光性を有する。このような遮光性のシャッタ部材5aとしては、全体が遮光性材料からなる遮光性部材で構成されたもの、全体が透明材料で構成され、ビームスプリッタ2側の表面に凹凸構造が形成されたもの、透明材料で構成される透明部材とそのビームスプリッタ2側に設けられる遮光性部材とを積層したものなどが挙げられる。ここで、遮光性を有するシャッタ部材5aは、ビームスプリッタ2側の表面が第2分配光L2の入射方向に対して垂直とならないように配置されることが好ましい。この場合、シャッタ部材5aによる反射光が光ファイバFに戻ることを十分に抑制できる。なお、上記遮光性材料は、被測定光Lに対して遮光性を有する材料であれば特に限定されず、上記遮光性材料としては、例えばポリプロピレン等の遮光性樹脂や各種金属が用いられる。また上記透明材料は、被測定光Lに対して透明な材料であれば特に制限されず、上記透明材料としては、例えば石英ガラス等の透明ガラスやポリカーボネート等の透明樹脂が用いられる。
【0026】
シャッタ装置5は次のように機能する。即ち、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bに収容されると、図2に示すように、シャッタ部材5aが第2分配光L2の光路を遮断しないため、第2分配光L2が第2受光素子4で受光される。シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bから抜き出されていると、図1に示すように、シャッタ部材5aが第2分配光L2の光路を遮断するため、第2分配光L2が第2受光素子4で受光されなくなる。シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bに収容されるかどうかは、制御回路6からの制御信号によって制御される。
【0027】
制御回路6は、第1受光素子3で受光された第1分配光L1の強度と上記分配強度比とに基づいて第2分配光L2の強度を算出し、その算出強度が第2受光素子L2の許容限界強度以上であるかどうかを判断するものである。そして、制御回路6は、上記算出強度が第2受光素子L2の許容限界強度以上である場合には、シャッタ装置5によって、第2受光素子4で第2分配光L2が受光されなくなるようにシャッタ装置5に制御信号を送信した後、第1受光素子3で受光された第1分配光L1の強度と上記分配強度比とに基づいて被測定光Lの強度を算出し、表示部(図示せず)に出力信号を出力する。上記算出強度が第2受光素子4の許容限界強度未満である場合には、シャッタ装置5によって、第2受光素子4で第2分配光L2が受光されるようにシャッタ装置5に制御信号を送信した後、第2受光素子4で受光された第2分配光L2の強度と上記分配強度比とに基づいて被測定光Lの強度を算出し、表示部(図示せず)に出力信号を出力する。
【0028】
このような制御回路6は、具体的には、メモリ、CPU、DA変換部及びAD変換部を備えており、これらによって上記制御動作を行うことができる。
【0029】
なお、光パワーメータ100においては、被測定光Lの強度が過大であり、第2分配光L2が第2受光素子4の許容電界強度以上である場合には、第2受光素子4の損傷を防ぐため、被測定光Lから分配された第2分配光L2が第2受光素子4に到達しないことが必要である。そのためには、光分配面2aで分配された第2分配光L2がシャッタ部材5aに到達するまでの時間をt2とし、第2分配光L2と同一時点において光分配面2aで分配された第1分配光L1が第1受光素子3で受光され、制御回路6からシャッタ装置5に制御信号が送信された後、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bから完全に抜き出されるまでの時間をt1とした場合、t1及びt2が下記式:
t1<t2
を満たすことが必要である。上記のような式を満足するためには、例えばシャッタ装置5の性能やシャッタ装置5の配置を適宜選択すればよい。即ち、シャッタ装置5として、シャッタ部材5aの抜出しスピードが速いものを用いたり、ビームスプリッタ2とシャッタ部材5aとの間の光路長を適宜調整したりすればよい。
【0030】
次に、上述した光パワーメータ100を用いた被測定光Lの強度の測定方法について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは、説明を容易にするため、第1分配光L1の強度:第2分配光L2の強度=1:99である場合を例にして説明する。
【0031】
まず光パワーメータ100において、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bに収容された状態にしておく。次に、光ファイバFの先端部を、ハウジング1の挿入口1aに挿入し、光ファイバFの先端面をビームスプリッタ2に対向させる。光ファイバFから被測定光Lが出射されると、被測定光Lの一部は、ビームスプリッタ2の光分配面2aで第1分配光L1として反射され、被測定光Lの残部は光分配面2aを第2分配光L2として透過する。こうして被測定光が第1分配光L1と第2分配光L2とに分配される(光分配工程)。そして、第1分配光L1は第1受光素子3で受光される(第1分配光受光工程)。第1受光素子3で受光された第1分配光L1の強度は電気信号に変換され、制御回路6に入力される。この電気信号は、AD変換部でAD変換されて第1分配光の強度としてメモリに格納される。こうして第1受光素子3で受光された第1分配光L1の強度が測定される(S100)。
【0032】
続いて、このメモリに格納された第1分配光L1の強度と上記分配強度比とに基づいて第2受光素子4で受光されるべき第2分配光L2の強度が算出される(第2分配光強度算出工程:S101)。この第2分配光L2の強度は以下のようにして算出される。即ち、第2分配光L2の強度は、第1分配光L1の強度:第2分配光L2の強度=1:99であるため、下記式:
第2分配光L2の強度=第1分配光L1の強度×99
に基づいて算出される。
【0033】
こうして算出された第2分配光L2の算出強度は、CPUによって、予めメモリに格納された第2受光素子4の許容限界強度以上かどうかが比較判断される(判断工程:S102)。
【0034】
そして、CPUで第2分配光L2の算出強度が、第2受光素子4の許容限界強度以上であると判断されると、メモリから、シャッタ部材5aをシャッタ収納部5bから抜き出すように指示する制御信号が送出され、その制御信号がDA変換部でDA変換されてシャッタ装置5に送信される。そして、その制御信号によりシャッタ部材5aが閉じた状態、即ち、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bから抜き出された状態とされる。これにより、第2受光素子4で第2分配光L2が受光されない状態とされる(制御工程:S105)。このため、過大な強度を有する第2分配光L2によって第2受光素子4が損傷を受けることが回避される。
【0035】
そして、第1受光素子3で受光された第1分配光L1の強度の測定値と上記分配強度比とに基づいて被測定光Lの強度が算出されて表示部(図示せず)に出力される(制御工程:S106)。このとき、被測定光Lの強度は以下のようにして算出される。即ち、被測定光Lの強度は、下記式:
被測定光Lの強度=第1分配光L1の強度×100
に基づいて算出される。
【0036】
このとき、第1受光素子3で受光された第1分配光L1は、第2分配光L2より小さい強度を有しているとはいえ、上記算出強度が第2受光素子4の許容限界強度以上であるほど被測定光Lの強度は大きいため、第1受光素子3で受光される第1分配光L1の強度は比較的大きくなりうる。また第1分配光L1は第1受光素子3で直接受光されるため、第1受光素子3に到達するまでの間ほとんど減衰されない。このため、第1受光素子3でも容易に第1分配光L1の強度を測定することが可能であり、高い強度の被測定光Lについてもその強度の測定が可能となる。
【0037】
一方、CPUで第2分配光L2の算出強度が、第2受光素子4の許容限界強度未満であると判断されると、メモリから、シャッタ部材5aをシャッタ収納部5bに収納されるように指示する制御信号が送出され、その制御信号がDA変換部でDA変換されてシャッタ装置5に送信され、シャッタ部材5aが開いた状態、即ち、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bに収容された状態とされる(制御工程:S103)。
【0038】
これにより第2受光素子4で第2分配光L2が直接受光可能な状態とされる。そして、第2受光素子4で受光された第2分配光L2の強度の測定値と上記分配強度比とに基づいて被測定光Lの強度が算出されて表示部(図示せず)に出力される(制御工程:S104)。このとき、被測定光Lの強度は以下のようにして算出される。即ち、被測定光Lの強度は、下記式:
被測定光Lの強度=第2分配光L2の強度×(100/99)
に基づいて算出される。
【0039】
このとき、第2受光素子4で受光された第2分配光L2は、第1分配光L1に比べると、被測定光Lに対する強度の減衰量がずっと小さい。このため、第2受光素子4で容易に第2分配光L2の強度を測定することが可能であり、低い強度の被測定光Lについてもその強度の測定が可能となる。特に本実施形態では第2分配光L2が第2受光素子4で受光される場合、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bに収容されているため、ビームスプリッタ2から出射された第2分配光L2を遮るものが何もなく、第2分配光L2は第2受光素子4で直接受光される。即ち、ビームスプリッタ2から出射された後、ほとんど減衰されずに第2受光素子4で受光される。このため、第2分配光L2の強度がかなり小さい場合でも、第2分配光L2の強度を測定することが可能となり、より広い強度範囲にわたって被測定光Lの強度を測定することが可能となる。
【0040】
こうして被測定光Lの強度の測定が終了する。
【0041】
以上述べたように、光パワーメータ100によれば、高い強度の被測定光Lが入射されたときは、第2受光素子4で第2分配光L2が受光されないようにするとともに被測定光Lに対して十分に減衰された第1分配光L1の強度を測定することで、被測定光Lの強度が測定され、低い強度の被測定光Lが入射されたときは、被測定光Lに対してほとんど減衰されない第2分岐光L2の強度を測定することで、被測定光Lの強度が測定される。このため、光パワーメータ100によれば、低い強度の光から高い強度の光まで1台で光強度の測定が可能となる。
【0042】
また低い強度の光から高い強度の光まで1台で光強度の測定が可能となるため、低強度光測定用の光パワーメータと高強度光測定要の光パワーメータを準備する必要がなくなり、光強度測定準備の手間が省ける。さらに、光パワーメータの準備が終了して実際に光強度の測定作業を行う場合、光強度が高いか低いかが事前に分からなくても、光パワーメータ100は、低い強度の光も高い強度の光も1台で測定することが可能である。このため、被測定光Lの強度を簡単に測定することができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る光パワーメータの第2実施形態について図4を参照して説明する。なお、図4中、第1実施形態と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
図4は、本発明に係る光パワーメータの第2実施形態を示す概略図である。図4に示すように、本実施形態の光パワーメータ200は、シャッタ装置205が液晶シャッタであり、ビームスプリッタ2から出射された第2分配光L2が第2受光素子4で直接受光されないようになっている点で第1実施形態の光パワーメータ100と相違する。ここで、シャッタ装置205は、例えば液晶セルと、この液晶セルを挟み光透過軸が互いに直交する一対の偏光部材とを備えている。液晶セルは、一対の透明電極間に液晶を配向状態で挟んで構成され、一対の透明電極間に印加される電圧のオン・オフによって、光を透過させたり、透過させたりしないようにする。このため、一対の透明電極間に電圧を印加し、液晶の配向状態を制御することによって、第2受光素子4での第2分配光L2の受光及び非受光を調整することができる。
【0045】
本実施形態の光パワーメータ200によっても、第1実施形態と同様、低い強度から高い強度まで幅広く且つ簡単に被測定光Lを測定することができる。加えて、液晶シャッタ205は、シャッタ機能を実現させる場合にそれ自体移動するものではない。このため、シャッタ機能を実現させるために、シャッタ部材5aのような可動部分のスペースが必要な可動式シャッタと異なり、可動スペースを考慮する必要がない。このため、シャッタ装置として液晶シャッタを用いた光パワーメータ200は、シャッタ装置として可動式シャッタを用いた光パワーメータ100に比べて、より小型化を図ることが可能となる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1実施形態では、被測定光Lの強度を測定する前に、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bに収容された状態に調整され、第1分配光L1の強度と上記分配強度比とに基づいて算出した第2分配光L2の強度が第2受光素子4の許容限界強度以上である場合にはじめてシャッタ部材5aがシャッタ収容部5bから抜き出され、第2分配光L2が第2受光素子4で受光されない状態となるようにされているが、被測定光Lの強度の測定開始前に、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bから抜き出された状態に調整されていてもよい。そのために、上記光パワーメータ100は、制御回路6とは独立して、シャッタ装置5を第2分配光L2が第2受光素子4で受光されないように調整可能な調整手段をさらに備える必要がある。このような調整手段は、例えばハウジング1に設けられた操作ボタン(図示せず)と、操作ボタンの操作に連動してシャッタ装置5に制御信号を送信することが可能な回路(図示せず)とで構成することができる。
【0047】
この場合、上記調整手段により、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bから抜き出されているため、第2受光素子4の許容限界強度以上の過大な強度を持った第2分配光L2が第2受光素子4で受光されることを容易に回避することができる。即ち、被測定光Lの強度の測定開始前に、シャッタ部材5aがシャッタ収容部5bから抜き出された状態となっていれば、上記第1実施形態の場合と異なり、t1<t2の関係を考慮しなくて済む。従って、シャッタ収容部5bからのシャッタ部材5aの抜出しスピードが低いシャッタ装置を使用することも可能となる。
【0048】
またシャッタ装置が液晶シャッタである場合にも、上記のような調整手段により、被測定光Lの強度の測定開始前に、液晶シャッタが第2分配光L2を透過させない状態に調整されているとよい。この場合、電界印加に対して応答速度の低い液晶を用いても、過大な強度を有する第2分配光L2が第2受光素子4で受光されることを容易に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る光パワーメータの第1実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係る光パワーメータの第1実施形態を示す概略図である。
【図3】図1の光パワーメータを用いて被測定光の光強度を測定する方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る光パワーメータの第2実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0050】
2…ビームスプリッタ、3…第1受光素子、4…第2受光素子、5…シャッタ装置、6…制御回路(制御部)、100,200…光パワーメータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光を、第1分配光と第2分配光とに分配し、前記第2分配光が前記第1分配光に対して大きい分配強度比を持つように前記第1分配光及び前記第2分配光を出射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタから出射された前記第1分配光を受光する第1受光素子と、
前記ビームスプリッタから出射された前記第2分配光を受光する第2受光素子と、
前記第2受光素子で前記第2分配光が受光され又は受光されないように調整可能なシャッタ装置と、
前記第1受光素子又は前記第2受光素子で受光された前記第1又は第2分配光の強度に基づいて前記シャッタ装置を制御する制御部とを備えており、
前記制御部は、
前記第1受光素子で受光された前記第1分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記第2分配光の強度を算出し、その算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度以上である場合には、前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されないように前記シャッタ装置を制御し、前記第1受光素子で受光された第1分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記被測定光の強度を算出して出力し、前記算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度未満である場合には、前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されるように前記シャッタ装置を制御し、前記第2受光素子で受光された前記第2分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記被測定光の強度を算出して出力するものである、
ことを特徴とする光パワーメータ。
【請求項2】
前記シャッタ装置が、遮光性のシャッタ部材と、前記シャッタ部材を収容するシャッタ収容部とを備えており、前記シャッタ部材を前記シャッタ収容部から抜き出すことによって前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されない状態とされ、前記シャッタ部材を前記シャッタ収容部に収容することによって前記第2受光素子で前記第2分配光が受光される状態になっていることを特徴とする請求項1に記載の光パワーメータ。
【請求項3】
前記シャッタ装置が、液晶シャッタであることを特徴とする請求項1に記載の光パワーメータ。
【請求項4】
前記シャッタ装置を、前記第2分配光が前記第2受光素子で受光されないように調整可能な調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の光パワーメータ。
【請求項5】
被測定光を、第1分配光と第2分配光とに、前記第2分配光が前記第1分配光に対して大きい分配強度比を持つように分配する光分配工程と、
前記光分配工程で分配された前記第1分配光を第1受光素子で受光する第1分配光受光工程と、
前記第1受光素子で受光された前記第1分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて、第2受光素子で受光される前記第2分配光の強度を算出する第2分配光強度算出工程と、
算出された前記第2分配光の算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度以上であるかどうかを判断する判断工程と、
前記判断工程で、算出された前記第2分配光の算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度以上であると判断された場合には、前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されないようにシャッタ装置を閉じた状態に制御するとともに前記第1受光素子で受光された第1分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記被測定光の強度を算出して出力し、前記第2分配光の算出強度が前記第2受光素子の許容限界強度未満であると判断された場合には、前記第2受光素子で前記第2分配光が受光されるように前記シャッタ装置を開いた状態に制御するとともに前記第2受光素子で受光された前記第2分配光の強度と前記分配強度比とに基づいて前記被測定光の強度を算出して出力する制御工程と、
を含むことを特徴とする光強度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−139250(P2010−139250A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313162(P2008−313162)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】