説明

光ピックアップ支持装置の製造方法

【課題】光ピックアップ装置の調整工程を削除する。
【解決手段】支持基板にガイド材が固定され光ピックアップ装置を前記ガイド材に沿って駆動する光ピックアップ支持装置の製造方法であって、光ピックアップ装置のハウジングに光学部品を収納する工程S2と、ガイド材に沿って移動可能にハウジングを支持基板に取り付ける工程S3と、ハウジングに載置されて対物レンズを保持するアクチュエータの位置および姿勢をガイド材を基準にして調整し、固定する工程S4と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置を所定方向に移動させる光ピックアップ支持装置の製造方法に係り、特に、合理化による製造工程数の削除と、装置の信頼性の向上が可能な光ピックアップ支持装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置に組み込まれる光ピックアップ支持装置は、光ディスクの径方向へ光ピックアップ送り用モータの回転駆動力によって光ピックアップ装置を移動するものである。そして、斯かる光ピックアップ装置は、一般には光ピックアップ支持装置のシャーシ(固定基板)に固定されている一対のガイド軸によって光ピックアップ装置の移動動作がガイドされる。つまり、光ピックアップ支持装置は、組み立てられた光ピックアップ装置のハウジングにガイド軸を取り付け、当該ガイド軸を光ピックアップ支持装置の支持基板に固定することにより組み立てられる(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
光ピックアップ装置は、対物レンズ等の各種の光学部品がハウジングに取り付けまたは収納された1つの組立部品であり、従来では光ピックアップ装置の組み立て工程において(光ピックアップ装置単体で)、これらの光学部品の姿勢(傾き)や位置を調整していた。例えば、特許文献2においては光ピックアップ装置の組立工程において、対物レンズを保持するアクチュエータをハウジングにねじ止めした後、アクチュエータの傾き調整を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−63631号公報
【特許文献2】特開2007−311006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ピックアップ装置を組み込んだ光ピックアップ支持装置(以下、トラバースメカとも称する。)の製造方法において、従来では光ピックアップ装置単体で各種光学部品の調整をした後、トラバースメカとして組み立てた状態で(トラバースメカのシャーシまたはガイド軸を基準として)光ピックアップ装置の各種光学部品の再調整を行っていた。
【0006】
光学部品は例えば、アクチュエータに保持される対物レンズ、受光素子および回折格子であり、これらの位置及び姿勢(例えば対物レンズであれば光ディスクに対するレーザー光の垂直度など)が適切となるように調整される。
【0007】
これらの調整項目(調整工程)は光ピックアップ装置の組立工程とトラバースメカの組立工程で重複している。つまり、光ピックアップ装置単体の組立とトラバースメカの組立とが同一メーカーで行われる場合、作業者が(人手によって)個々の装置についてそれぞれ調整することは作業工数としての無駄が多くなる。
【0008】
また、ジッター値測定などの電気的性能検査についても、光ピックアップ装置単体と、トラバースメカは検査項目(検査工程)が重複しているため、両者を行うと作業が重複する。そのため、光ピックアップ装置単体で電気的特性の検査を行っている場合、トラバースメカに組み込んだ後には電気的特性の検査を行わない場合もあるが、トラバースメカとしての製品出荷時の最終的な電気的特性が確認できない問題もあった。
【0009】
また、光ピックアップ装置単体で調整する場合は、調整器(治具)に調整用ディスクを固定し、すなわちこれを着脱することなく、光ピックアップ装置を調整器に載置して調整を行う。つまり光ピックアップ装置に対する調整用ディスクの位置は固定されており、複数の光ピックアップ装置に対して同じ状態で調整用ディスクのピット列の検出が行える。
【0010】
しかし、トラバースメカでの調整は、それぞれのターンテーブルに調整用ディスクを取り付けて行うため、複数のトラバースメカの間で、支持基板(ターンテーブル)に対する調整用ディスクの状態を常に同条件にすることはほとんど不可能である。
【0011】
例えば、ターンテーブルに調整用ディスクを取り付けると、ターンテーブルはそれぞれのトラバースメカごとに異なるため調整用ディスクを取り付けた状態も同じ状態にはならない。
【0012】
また、調整用ディスクのピット列は一般にらせん状に設けられており、光ピックアップ装置はこれを検出しながら例えばディスクの内周から外周に向かって移動する。
【0013】
このため、同じディスクを使用した場合であっても、測定時の光ピックアップ装置の移動は避けられないため、その位置は一定とならない。光ピックアップ装置の位置によって、光学部品の位置及び姿勢の調整量が異なるため、複数のトラバースメカ間の調整ばらつきが大きくなる。
【0014】
また、これらのことは個別に検査用ディスクを取り付けて行うトラバースメカとしての電気的特性を検査する場合も同様であり、検査用ディスクの読み取り時の条件が異なると、検査データ(検査値)の再現性が悪く、検査値のばらつきが大きくなる。
【0015】
さらに、調整用ディスクと検査用ディスクは異なるディスクであり、また調整用ディスクでも規格の相違する光ディスク種別ごとに相違する複数の光ディスク例えばBD用、DVD用、CD用で異なる場合もある。つまり、調整工程や検査工程の都度、異なるディスクを作業者が着脱するため、着脱の繰り返しによって調整または検査用ディスクの取り付け部が破損したりデータ記録面に傷が生じたりする問題がある。
【0016】
ディスクの取り付け部の破損は、ディスクの保持が不安定となり調整または検査データの再現性が悪くなるほか、ディスクの割れを引き起こす問題もある。調整または検査用ディスクは高価であり、頻繁な消費(買い替え)は、トラバースメカのコストにも影響するなど合理的でない。また、データ記録面の傷もデータの再現性に悪影響を及ぼしたり、データエラーを引き起こすなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明はかかる課題に鑑みてなされ、支持基板にガイド材が固定され光ピックアップ装置を前記ガイド材に沿って駆動する光ピックアップ支持装置の製造方法であって、前記光ピックアップ装置のハウジングに光学部品を収納する工程と、前記ガイド材に沿って移動可能に前記ハウジングを前記支持基板に取り付ける工程と、前記ハウジングに載置されて対物レンズを保持するアクチュエータの位置および姿勢を前記ガイド材を基準にして調整し、固定する工程と、を具備することにより解決するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば以下の効果が得られる。
【0019】
第1に、光ピックアップ支持装置(トラバースメカ)に組立後、第1ガイド材(または支持基板)を基準に、光ピックアップ装置の光学部品の位置及び姿勢を調整するので、光ピックアップ装置(単体)の調整工程を削除できる。具体的には、対物レンズ、受光素子、および回折格子のそれぞれの位置調整工程、対物レンズの法線位置調整工程、アクチュエータ(対物レンズ)のスキュー調整工程、光ピックアップ装置全体のスキュー調整工程、を削除できる。
【0020】
第2に、光ピックアップ装置の上記の各調整をトラバースメカと一体的に調整できるので、調整時の累積誤差などを排除でき光ピックアップ支持装置の信頼性が向上する。
【0021】
第3に光ピックアップ装置(単体)の電気的性能検査工程を削除できる。
【0022】
第4に、光ピックアップ装置の電気的性能検査をトラバースメカの状態で一体的に検査できるのでトラバースメカの出荷時の最終性能を確認できる。
【0023】
第5に、トラバースメカの調整または検査用媒体を、調整器(治具)側に取り付けることにより、ディスクとトラバースメカの位置関係がほぼ一定に維持できるので、複数のトラバースメカについて一定条件下で調整及び検査が行える。従って、複数のトラバースメカ間の調整ばらつきや、検査データ(検査値)のばらつきを抑えることができる。
【0024】
第6に、トラバースメカの位置調整工程または検査工程においても、個々のトラバースメカ毎に調整または検査用媒体を着脱する必要がないので、当該媒体ディスクの損傷を大幅に低減できる。
【0025】
これにより、それぞれのディスクのデータの再現性が良好となる。
【0026】
また、調整または検査用媒体の消費が減り、合理化によって最終的なトラバースメカのコスト低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態の光ピックアップ支持装置を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の光ピックアップ支持装置を説明するための(A)分解斜視図、(B)断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の光ピックアップ装置を説明する平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の光ピックアップ支持装置の製造方法を説明するフロー図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の光ピックアップ支持装置の製造方法を説明する(A)平面図、(B)断面図、(C)断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の光ピックアップ支持装置の製造方法を説明する(A)側面図、(B)斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の光ピックアップ支持装置の製造方法を説明する側面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の光ピックアップ支持装置の製造方法を説明する平面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の光ピックアップ支持装置の製造方法を説明する(A)平面図、(B)断面図、(C)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を図1から図9を参照して、詳細に説明する。まず図1から図8を参照して第1の実施形態の光ピックアップ支持装置10について説明する。図1は光ピックアップ支持装置10の概略を示す平面図である。
【0029】
光ピックアップ支持装置(以下トラバースメカとも称する)10は、支持基板12と、光ピックアップ装置30と、第1ガイド材14および第2ガイド材16と、スピンドルモータ50を有する。
【0030】
光ピックアップ支持装置10は、スピンドルモータ50により回転される不図示の光記録媒体(光ディスク)に対して、光ピックアップ装置30の対物レンズ32からレーザー光を照射する。そして、光ディスクの情報記録層で反射したレーザー光を、光ピックアップ装置30に内蔵された受光素子(Photo Diode IC:PDIC)83で検出する。ここで、光ピックアップ装置30から放射されるレーザー光としては、BD(Blu-ray Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)またはCD(Compact Disc)規格のレーザー光が採用される。同様に、スピンドルモータ50により回転される光ディスクの規格としても、これらのいずれかが採用される。
【0031】
このような構成の光ピックアップ支持装置10が所定形状の筐体に収納されることで、光ディスク装置が構成される。
【0032】
支持基板(以下、シャーシと称する)12は、例えば金属材料のプレス加工などによって枠形状あるいは額縁形状に成形され、光ピックアップ装置30をはじめ、光ピックアップ支持装置10の各構成要素を一体的に支持する。尚、ここでは金属材料によるシャーシ12を例に説明するが、樹脂材料の成形によるシャーシ12であってもよい。樹脂材料としては、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE:modified-Polyphenyleneether−m-PPE、denaturated-Polyphenyleneether)、ABS樹脂(アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合
合成樹脂)が採用される。また、ガラス繊維が充填された樹脂材料がシャーシ12の材料として採用されても良い。シャーシ12の端部(矩形状の一の短辺)には、スピンドルモータ50が直接、固定される。
【0033】
第1固定部51、第2固定部52、第3固定部53、第4固定部54(第1固定部51等)はいずれも、シャーシ12と一体的に設けられる。第1固定部51等は、例えばシャーシ12が金属材料の場合には、プレス加工などによってシャーシ12の主面と第1固定部51等の側面が例えば凹状またはL字形状を形成するように、シャーシ12の主面に対して垂直方向に突出させてなる。また、シャーシ12が樹脂材料からなる場合には、射出成型などによって、同様の形状に形成される。
【0034】
第1ガイド材14および第2ガイド材16は、例えばそれぞれ円柱形状のステンレス等の金属材料から成るガイド軸であり、シャーシ12に直接固定され、光ピックアップ装置30を、光ディスクの径方向(ラジアル方向:Dr方向)に対して移動可能に支持する。従って、第1ガイド材14および第2ガイド材16は、光ディスクの径方向に対して平面視で平行に配置されると共に、光ディスクの情報記録面に対しても平行に配置される。ここで、第1ガイド材14は主(ガイド)軸と称され、第2ガイド材16は副(ガイド)軸と称される場合もある。更には、ガイド軸はシャフトと称される場合がある。
【0035】
第1ガイド材14のスピンドルモータ50側の一端は、第1固定部51と当接して固定部材13aにて固定される。固定部材13aはここでは例えば板バネであるが、線状のバネやねじであってもよい。同様に、第2ガイド材16のスピンドルモータ50側の一端は、第2固定部52に当接し、固定部材13b(例えば線状のバネ)にて固定される。また第1ガイド材14の他端および第2ガイド材16の他端は、それぞれ、第3固定部53および第4固定部54にそれぞれ当接し、固定部材13bによって固定される。
【0036】
本実施形態の光ピックアップ支持装置10は、光ディスクの径方向(Dr方向)および、この径方向に直交する光ディスクの接線方向(タンジェンシャル方向:Dt方向)のスキュー調整用の部品が不要である。スキュー調整用の部品は具体的には、第1ガイド材14および第2ガイド材16に当接・押圧してこれらの位置を微量に調整する例えばネジやバネなどである。すなわち、第1ガイド材14の両端は、シャーシ12の第1固定部51および第2固定部52に直接当接して固定され、第2ガイド材16も両端が、シャーシ12の第3固定部53および第4固定部54に直接当接して固定されている。
【0037】
光ピックアップ支持装置10は、光ピックアップ装置30を光ディスクの径方向に駆動する駆動ユニット40を備える。駆動ユニット40は、シャーシ12に固定され、例えば、駆動モータ(スレッドモータまたはステッピングモータ)41と、これと接続し、駆動モータ41の駆動力を伝達するリードスクリュー42を有する。尚、ここでは駆動モータの駆動力を伝達する原動側としてリードスクリューを例に説明するが、歯車であってもよい。
【0038】
受動側となるラック21は、光ピックアップ装置30のハウジング36に固定されている。ラック21はリードスクリュー42と噛合する歯部214を有する。トラッキング信号が駆動モータ41に印加されるとリードスクリュー42が回転し、これと噛合するラック21がDr方向に移動する。これに伴い、ラック21に固定された光ピックアップ装置30が、第1ガイド材14および第2ガイド材16により支持された状態で、Dr方向に所定量移動する。
【0039】
更に、シャーシ12の主面には、スピンドルモータ50を駆動する駆動回路や駆動電流が通過する配線が設けられたモータ配線基板55と、このモータ配線基板55の配線と接続されたフレキシブル配線基板56が配置される。
【0040】
図2を参照してスピンドルモータ50について説明する。図2(A)はスピンドルモータ50を分解した斜視図であり、光ピックアップ装置の図示は省略した。図2(B)はシャーシ12に取り付けられたスピンドルモータ50を示す図であり、図1のa−a線断面図である。
【0041】
図2(A)を参照して、スピンドルモータ50は、モータ支持体75とモータ組立体61を有し、円筒形状のモータ支持体75の先端がシャーシ12に設けられた圧入孔121に圧入されることにより、モータ組立体61の回転軸63を中心に回転自在な状態でシャーシ12に固定される。
【0042】
図2(B)を参照して、モータ支持体75は、軸受72が内蔵されている。モータ支持体75は、その先端(底部)がシャーシ12に設けられた圧入孔121に圧入されて固定され、外周部分に複数個の駆動コイル68が固定されている。すなわち、モータ支持体75は、例えばモータ支持基板等を介さず、更にネジ等の固定部材を用いず、直接シャーシ12に支持・固定される。これにより、モータ支持基板やこれをシャーシ12に固定するための固定部材(例えばネジなど)の部品を省略でき、低コスト化が実現する。
【0043】
このスピンドルモータ50において、シャーシ12等に取り付けられているモータ駆動回路から駆動コイル68に駆動信号が供給されると、駆動コイル68から誘起される磁力とマグネット66から発生する磁力とによってロータ64に対する回転力が生成される。このことにより、ロータ64は回転軸63を中心として回転する。
【0044】
ロータ64に発生する回転駆動力によって回転軸63が回転すると、回転軸63に嵌合固定されているターンテーブル62が回転するので、ターンテーブル62に載置されている光ディスクを回転させることが出来る。そして、駆動コイル68に供給される駆動信号の大きさや駆動パルスの間隔等を制御することによって、光ディスクの回転速度を所望の回転速度になるように制御することができる。
【0045】
既述の如く、第1ガイド材14と第2ガイド材16は、固定部材13によって、第1固定部51および第2固定部52とに当接して固定される(第3固定部、第4固定部側も同様)。そして、スピンドルモータ50は、第1ガイド材14と第2ガイド材16とで決定される光ピックアップ装置の走行面R(一点鎖線)に対して、モータ組立体61(ターンテーブル62)の回転軸63が略垂直に調整されている。
【0046】
ここで略垂直とは、回転軸63が光ピックアップ装置30の走行面Rに対して垂直な状態と、垂直な場合から0.15度までの範囲内で角度ずれが発生している状態をいう。また、略垂直とは、光ディスクの接線方向(Dt方向)、および光ディスクの径方向(Dr方向)のいずれにおいても略垂直であることをいう。
【0047】
これにより、モータ組立体61をモータ支持体75に取り付けるだけで、接線方向(Dt方向)および径方向(Dr方向)のいずれにおいても光ピックアップ装置30の走行面Rを、ターンテーブル62の主面62sに対して水平に、すなわち光ディスクの情報記録面に対して水平にすることができる。
【0048】
光ピックアップ装置30の走行面Rは、光ピックアップ装置30が、スピンドルモータ50に最も近接した場合(図1参照)の、第1ガイド材14と第2ガイド材16のそれぞれの円柱の中心点14c、16cと、スピンドルモータ50から最も離間した場合の、第1ガイド材14の円柱の中心点14cとの3点を含んで一意に決定される面をいう。第1ガイド材14および第2ガイド材16は同一直径の円柱状であるので、走行面Rは、第1固定部51、第2固定部52および第3固定部53におけるそれぞれの中心点14c、16c(3点)を含んで一意に決定される面といってもよい(図2(A)参照)。そしてスピンドルモータ50は、径方向においても接線方向においても、この走行面Rに平行(水平)な面を基準として回転軸63(軸受72)が略垂直になるように調整されている。
【0049】
また、本実施形態では第1固定部51に固定されるべき第1ガイド材14と回転軸63の位置関係(水平方向の距離:法線距離L)も正確に位置決めされる。つまり第1固定部51の側面に第1ガイド材14を当接させて固定することにより、回転軸63から第1ガイド材14までの法線距離Lを正確に確保することができる。
【0050】
尚、図示した構成に限らず、スピンドルモータ50、モータ配線基板55およびフレキシブル配線基板56をシャーシ12と別体のモータ支持基板に取り付け、当該モータ支持基板をシャーシ12に固定する構成であってもよい。この場合も、スピンドルモータ50の回転軸は、シャーシに取り付けられる第1ガイド材14および第2ガイド材16で決定される光ピックアップ装置の走行面Rに対して略垂直になるように調整する。
【0051】
このように調整することで、光ピックアップ支持装置10の製造工程においては、第1ガイド材14および第2ガイド材16が挿通された光ピックアップ装置30のハウジングをシャーシ12に取り付けるだけで、そのハウジングの基準面(例えばアクチュエータが搭載される主面)は、回転軸63に対してほぼ垂直となる。そして光ピックアップ装置30の走行面Rは光ディスクに対して平行となる。
【0052】
図3を参照して、光ピックアップ装置30について説明する。図3(A)が光ピックアップ装置30のアクチュエータ37側を示す平面図であり、図3(B)が図3(A)の裏面側であり、ハウジングの収納部35側を示す平面図である。
【0053】
光ピックアップ装置30は、ハウジング36と、対物レンズ32を支持・駆動するアクチュエータ37と、ハウジング36の左右両端に設けられた第1ガイド部38および第2ガイド部39とを備えている。
【0054】
図3(A)を参照して、ハウジング36は一例として、樹脂材料を射出成形するなどして平面視において略長方形状に設けられた箱状体である。
【0055】
アクチュエータ37は、対物レンズ32を保持するレンズホルダー33を、光ディスクの信号面方向(Df方向)への変位動作及び光ディスクの径方向(Dr方向)への変位動作を可能に支持する。ここでは、BD用およびDVD/CD用の2つの対物レンズ32を保持する場合を例に説明するが、対物レンズ32は1つであってもよい。
【0056】
アクチュエータ37は、アクチュエータ37自身の位置および姿勢を調整するための第1位置調整機構91、第2調整機構92および第3調整機構93を備える。アクチュエータ37の位置および姿勢を適正に調整することで、これに保持される対物レンズ32の基準の位置およびの姿勢(光ディスクの信号面に対する傾き)を調整する。
【0057】
またハウジング36の上面側には例えばアクチュエータ37を囲むように配線基板31が設けられ、配線基板31上に光ピックアップ装置30の入出力端子となるコネクタ34が設けられる。配線基板31は一部が破線で示すハウジング36上面の一部を覆い、他の部分がそれよりひさし状に突出して設けられている。配線基板31は、ネジや接着材などによってハウジング36と一体的に固定・固着される。
【0058】
第1ガイド部38はハウジング36と一体的に樹脂材料を射出成形して設けられた例えば孔部であり、第1ガイド材14が挿通される。第2ガイド部39はハウジング36の第1ガイド部38に対向する端部に設けられており、例えば外側に向かって開口するU字形状またはコの字形状を呈している溝であり、第2ガイド材16が係合あるいは挿通される。これにより光ピックアップ装置30は、第1ガイド材14および第2ガイド材16に沿って光ディスクの径方向(Dr方向)に移動可能に支持される。
【0059】
図3(B)を参照して、ハウジング36の内部は、複数の区画壁(不図示)で仕切られた収納部35が設けられ、各収納部35に発光素子81、受光素子83、回折格子82、立ち上げミラー84などの光学部品が収納される。尚、光学部品は図示したものに限らず、発光素子81から出射されるレーザー光を対物レンズ32で集光し、光ディスクに照射してそのピット列を検出する既知の光学系に必要な光学部品が含まれる。
【0060】
また、ここではBD用およびDVD/CD用の2つの光学系を備えた光ピックアップ装置30を示しており、2つの光学系に対応して発光素子81、回折格子82、受光素子83および立ち上げミラー84がそれぞれ2つずつ設けられている。
【0061】
尚、ハウジング36の形状は図示したものに限らず、例えばアクチュエータ37も箱状体の内側に収納されるような構造であってもよい。
【0062】
既述の如く、スピンドルモータの回転軸は光ピックアップ装置30の走行面Rに対して略垂直になるように調整されており、ハウジング36のアクチュエータ37が載置される主面に対しても略垂直となっている。
【0063】
一方、ハウジング36に取り付けられるアクチュエータ37はハウジング36と別体であるため、対物レンズ32を通過するレーザー光の光軸を、スピンドルモータの回転軸と略平行(ターンテーブルに載置される光ディスクの信号記録面に略垂直)となるように、対物レンズ32の基準の位置及び姿勢を調整する必要がある。
【0064】
本実施形態では、ハウジング36を第1ガイド材14(シャーシ12)に固定した後、ハウジング36に載置または収納されたアクチュエータ37を第1ガイド材14を基準に調整し、対物レンズ32の位置及び姿勢を調整した後、固定する。これにより対物レンズ32の光軸は走行面Rに略垂直になり、ここを通る光軸がスピンドルモータの回転軸と略平行になる。
【0065】
以下、本実施形態の光ピックアップ支持装置の製造方法について説明する。
【0066】
図4は光ピックアップ支持装置の製造方法を説明するフロー図である。図5から図8は製造方法の一部を説明するための図であるが、必要に応じて他の図も参照する。
【0067】
ステップS1:圧入孔121が設けられたシャーシ12を準備し、モータ支持体75を圧入孔121に圧入する(図2(A))。モータ支持体75に内蔵された軸受72の中心線が、第1ガイド材14および第2ガイド材16により決定される光ピックアップ装置の走行面に対してほぼ垂直となるように、軸受72を調整する。軸受72は一例として、第1ガイド材14および第2ガイド材16の一部と一致する形状の当接部を備えた治具に、シャーシ12の第1固定部51、第2固定部52、第3固定部53を当接するなどし、調整する。その後、モータ支持体75にモータ組立体61を取り付け、回転軸63を軸受72で保持する(図2(B))。
【0068】
ステップS2:別工程で、光ピックアップ装置のハウジング36の収納部35に発光素子81、回折格子82、受光素子83、および立ち上げミラー84等の各種光学部品を収納する(図3)。
【0069】
また、回折格子82および受光素子83に対して、第1の固定工程が行われる。回折格子82は例えばホルダーに取り付けられてハウジング36の所定部分に収納されることにより、光軸方向を中心に回転可能に仮に固定(第1の固定)される。
【0070】
受光素子83はその一部がハウジング36に固定(第1の固定)される。受光素子83は、図3(B)の如く配線部83wと受光部83rを有しており、ここでは配線部83wのみが半田などの導電性接着材によって配線基板31に固着される。配線基板31はハウジング36に固定されているので、これによって配線部83wはハウジング36に対して変位不可に固定される。これに対し、受光部83rはハウジング36に固定されず、その姿勢や位置は変位可能である。
【0071】
尚、その他の光学部品(例えば発光素子、コリメートレンズ、ビームススプリッター、立ち上げミラー等)は接着材にてハウジング36内で変位不可に固定される。
【0072】
また、アクチュエータ37がハウジング36にネジ止めなどにより仮止め可能な構成の場合、ハウジング36の上面外側にアクチュエータ37を載置する(図3(A))。そして、アクチュエータ37に対して、第1の固定工程が行われる。第1の固定工程は、後の工程で変位可能となるようにハウジング36に仮に固定する工程である。
【0073】
具体的には、アクチュエータ37は、第1調整機構91(ネジ)などによってハウジング36に仮に固定(第1の固定)される。
【0074】
一方、アクチュエータ37がハウジング36に仮止め可能な構成でない場合、以下のステップS3の工程の後に、仮止めなしにアクチュエータ37の位置調整及び姿勢調整が行われてアクチュエータ37がハウジング36に固定される。
【0075】
ステップS3:第1ガイド材14および第2ガイド材16に沿ってハウジング36が移動可能となるように、シャーシ12にハウジング36を取り付ける。
【0076】
光学部品を取り付けたハウジング36の第1ガイド部38および第2ガイド部39にそれぞれ第1ガイド材14および第2ガイド材16を挿通したのち、両ガイド材14、16をシャーシ12に固定する。
【0077】
すなわち第1ガイド材14の端部をそれぞれ第1固定部51および第3固定部53に当接して、不図示の固定部材(例えば板バネや線状バネ)によって固定する。また、第2ガイド材16の端部をそれぞれ第2固定部52および第4固定部54に当接して、固定部材(不図示)によって固定する。これによって、ハウジング36がシャーシ12に取り付けられ、Dr方向の移動を可能にしつつ、第1ガイド材14および第2ガイド材16に支持される(図1参照)。
【0078】
ハウジング36(光ピックアップ装置30)がシャーシ12に取り付けられたこの状態でも、既述の如く回折格子82および受光素子83、場合によってはアクチュエータ37はハウジング36の所定位置に仮にあるいは部分的に固定(第1の固定)をされるのみであり、変位可能となっている。またこの状態で(光ピックアップ装置30単体として)、受光素子83および回折格子82の位置および姿勢の調整は行われていない。
【0079】
ステップS4:その後、第1ガイド材14(シャーシ12)を基準にアクチュエータ37の位置および姿勢を調整し、アクチュエータ37をハウジング36に固定する。
【0080】
まず、図5を参照してアクチュエータ37の調整について説明する。図5は光ピックアップ支持装置10の平面図であり、概略のみ示している。図5(B)がターンテーブルの回転軸63側のDr方向からみた断面図、図5(C)が第1ガイド材14側のDt方向からみた断面図である。
【0081】
アクチュエータ37の姿勢および位置調整の基準は、シャーシ12に固定部材(不図示)により固定された第1ガイド材14である。
【0082】
すなわち、調整器(治具)に光ピックアップ装置30を取り付けたシャーシ12(トラバースメカ10)を載置し、アクチュエータ37(対物レンズ32)のトラバースメカ10としての基準位置(第1ガイド材14)からの距離、およびトラバースメカ10としての基準面(光ピックアップ装置30の走行面R)に対する傾きを調整する。
【0083】
対物レンズ32の位置は、法線距離L2(第1ガイド材14から対物レンズ32の中心までのDt方向の距離X)、光ピックアップ装置30を第1ガイド材14のある位置に固定した場合の、そこから対物レンズ32までのDr方向の距離Y、第1ガイド材14から対物レンズ32までのDf方向の高さZ、についてアクチュエータ37を可変させることで調整する。
【0084】
アクチュエータ37がハウジング36に仮止め可能な構成の場合、アクチュエータ37の位置調整は、第1調整機構91、第2調整機構92により行う。第1調整機構91はアクチュエータ37の上面に設けられた例えばネジであり、第2調整機構92はアクチュエータ37の下方に設けられた、例えばバネである。第1調整機構91の締め付け量により、アクチュエータ37の位置が変位する。第1、第2位置調整機構91、92により対物レンズ32の、ターンテーブルの回転軸63を基準とした径方向の位置(以下Dr方向の距離Y)、接線方向の位置(以下Dt方向の距離X)および光ディスクの信号面を基準面としたフォーカシング方向の位置(以下、Df方向の高さZ)が適切な位置になるようにアクチュエータ37が微調整される。
【0085】
また、対物レンズ32の、Dt方向、Dr方向の走行面Rに対する傾き(スキュー)をアクチュエータ37を可変させることで調整する。
【0086】
一例として、調整器はオートコリメータを利用した治具を用いる。シャーシ12のスピンドルモータ50のターンテーブル62上に反射板を載置し、この反射面に調整器から出射されるレーザー光を反射させてオートコリメータで垂直度を確認する。アクチュエータ37で保持される対物レンズ32は、レンズホルダー33への搭載部となるレンズ周辺部(コバ面)が鏡面研磨されている。当該コバ面に調整器の別の発光点から出射されるレーザー光を反射させ、ターンテーブル上の反射板で反射したレーザー光と平行になるように、対物レンズ32(すなわちアクチュエータ37)の位置と傾きを調整する。
【0087】
アクチュエータ37の傾きは、第1調整機構91から第3調整機構93により調整する。
【0088】
図5(B)を参照して、第1調整機構91の締め付け具合を調整することにより、アクチュエータ37は矢印の如く光ディスクの接線方向(Dt方向)のスキュー支点を中心として回転し、Dt方向の傾きが変位する。これにより対物レンズ37の光ディスクの接線方向の傾きが適切な姿勢となるよう、アクチュエータ37を微調整する。
【0089】
図5(C)を参照して、第3調整機構93はアクチュエータ37の側面に設けられた例えばネジであり、光ディスクの径方向(Dr方向)のスキュー支点を中心とする回転方向に応じて、アクチュエータ37は矢印の如くDr方向に変位する。これにより、対物レンズ37の光ディスクの径方向の傾きが適切な姿勢となるよう、アクチュエータ37を微調整する。
【0090】
上記の位置および姿勢調整を行った後、第1から第3調整機構91〜93を接着材で固定する。すなわちそれぞれのネジの頭に緩み止め接着材を塗付してアクチュエータ37(外形)をハウジング36に対して変位不可に固定(第2の固定)する。
【0091】
一方、アクチュエータ37がハウジング36に仮止め可能な構成でない場合、オートコリメータを利用した治具を用いて対物レンズ32(すなわちアクチュエータ37)の位置と傾きを3次元調整し、この調整状態を治具により保持してアクチュエータ37をUV硬化性接着剤などの接着材により、ハウジング36に固定(第2の固定)する。
【0092】
このように本実施形態では、アクチュエータ37の位置および姿勢を、シャーシ12に固定された第1ガイド材14を基準として直接調整することにより、第1ガイド材14および第2ガイド材16で決定される光ピックアップ装置30の走行面に対して、対物レンズ32を適切な位置および姿勢に調整できる。
【0093】
光ピックアップ装置30の走行面R(アクチュエータ37が搭載されるハウジング36の主面)とスピンドルモータの回転軸63はすでに略垂直に調整されている。ハウジング36と対物レンズ32(アクチュエータ37)は別体のため、アクチュエータ37を仮に固定した光ピックアップ装置30をトラバースメカとして組み立てた後、アクチュエータ37を第1ガイド材14を基準に調整する。これにより対物レンズ32は走行面Rに対して水平となり、これを通過る光軸がスピンドルモータの回転軸63と略平行となる。
【0094】
光ピックアップ装置30単体として、アクチュエータ37、受光素子83および回折格子82の位置および姿勢の調整は行わず、第1ガイド材14を基準にしてトラバースメカ10として一括でこれらを調整することにより、光ピックアップ装置30単体での調整工程が不要となり、作業工数を大幅に低減できる。また、第1ガイド材14を基準に直接調整することで、アクチュエータ37、光ピックアップ装置30(ハウジング36)、シャーシ12の間の取り付け誤差を小さくでき、調整の精度が向上する。
【0095】
特に本実施形態では、スピンドルモータ50がシャーシ12に直接圧入され、その回転軸が光ピックアップ装置30の走行面に対して略垂直に調整されているので、ハウジング36(またはシャーシ12)を基準としてアクチュエータ37の変位による調整を行うことにより、第1ガイド材14の位置を微調整するスキュー調整機構によらなくても、光ディスクの信号面に対して、光ピックアップ装置30を適切な位置および姿勢に調整できる。
【0096】
つまりアクチュエータ37を調整用としての、第1ガイド材14(および第2ガイド材16)の位置を微調整する光ディスクの径方向のスキュー調整工程およびスキュー調整部品についても削減が可能となる。スキュー調整部品によって第1ガイド材を押圧して位置を調整するスキュー調整は、押圧するネジやバネが緩むなどして時間経過に伴うスキューずれや、衝撃試験によるスキューずれが生じる場合があり、信頼性が劣化する問題がある。しかし本実施形態では、当該スキュー調整部品を用いないため、これらの問題を回避できる。
【0097】
このようにして対物レンズ32の位置及び姿勢が調整されたのち、受光素子81および回折格子82の位置および姿勢を調整する。
【0098】
これらの調整は、光ピックアップ装置30に収納された発光素子からレーザー光を出射し、これを調整済みの対物レンズ32で集光し、調整用媒体に照射してピット列を検出しながら行う。
【0099】
図6から図8は、受光素子81の調整を行うための調整器(治具)150を示す一例である。図6(A)および図7は調整器150にトラバースメカ10を載置して調整を行う様子を示す図であり、図6(A)がDt方向から見た側面図、図7がDr方向(ターンテーブル側)から見た側面図である。また図6(B)は調整用媒体100の斜視図である。
【0100】
調整器150には、調整用のピット列が設けられた調整用媒体100が取り付けられている。従って、調整器150にトラバースメカ10(シャーシ12)を載置するだけで調整が可能であり、それぞれ個別にターンテーブル62に調整用媒体を取り付ける必要はない。
【0101】
図6(A)(B)を参照して、調整用媒体100は一例としてドラムであり円筒形状の円周に沿ってBD調整用ピット列101、DVD調整用ピット列102、CD調整用ピット列103が設けられている。ピット列はBD用、DVD用、CD用のそれぞれについて、少なくとも1本ずつ、閉ループ状(環状)に設けられる。調整用媒体100の直径rは、例えば従来の調整用ディスクの直径と同等(120mm)とする。
【0102】
調整器150に取り付けられた調整用媒体100は、対物レンズ32の直上で、ターンテーブル62の面に対して調整用媒体100の円周面が水平となり、円周面端部(外周部)から対物レンズ32までの距離が実際の光ディスクのそれと同じ距離に設定されている(図6(A))。また、対物レンズ32から出射されるレーザー光がドラムの回転中心を通過するように配置される(図7)。
【0103】
この調整器150にトラバースメカ10を載置し、ターンテーブル62上に反射板151を載置する。反射板151に調整器150からレーザー光を照射してオートコリメータで垂直度を確認しつつ、調整用媒体100に設けられたピット列101〜103がそれぞれ対物レンズ32の直上を(直径に沿って)横切るように調整用媒体100を回転させる(図6(A))。ドラムが回転することで光ピックアップ装置30には変調されたデジタル信号が入力され、実際の光ディスクと同様の信号として処理される。
【0104】
そして受光素子83は、調整用媒体100のピット列101〜103で反射した光が最も効率よく受光されるようその位置と姿勢(傾き)が調整される。受光素子83は、図3(B)の如く、例えばハウジング36の外周部分に設けられた凹部付近において配線部83wが配線基板31を介してハウジング36に固着(第1の固定)されている。そして凹部に受光部83rを嵌合させて、上記の如く適切な位置と姿勢に調整した後、接着材にてハウジング36に変位不可に固定(第2の固定)される。
【0105】
受光素子83の調整時には、BD、DVDおよびCD規格毎に対物レンズ32上の一列のピット列が検出できればよく、ピット列101〜103は、BD、DVDおよびCD用にそれぞれ1本あればよい。
【0106】
また検出エラーを防ぐために、ピット列101〜103は、好適にはBD、DVDおよびCD用にそれぞれ複数本(例えば3本〜100本程度)ずつ設けられてもよいが、その場合もらせん状ではなくそれぞれが独立した閉ループ状とするとよい。
【0107】
例えば、ピット列がらせん状に設けられた場合、調整時に光ピックアップ装置30はこれを検出しながらDr方向に移動する。このため、同じ調整用媒体100を使用した場合であっても、測定時の光ピックアップ装置30の移動は避けられないため、その位置は一定とならない。光ピックアップ装置30の位置によって、光学部品の位置及び姿勢の調整量が異なるため、複数のトラバースメカ間の調整ばらつきが大きくなる。
【0108】
本実施形態の如く、調整用のピット列101〜103をそれぞれ閉ループ状とすることで、検出時の光ピックアップ装置30の移動が少なくなるので、略一定条件下での調整が可能となる。
【0109】
尚、調整用媒体100は単に回転するだけでもよいし、回転しながら回転軸105の延在方向に移動が可能であってもよい。しかし、調整用媒体100が移動すると、ピット列がらせん状に設けられた場合と同様に複数のトラバースメカ間の調整ばらつきが大きくなる問題があるので、移動せずに回転する構造の方が望ましい。
【0110】
次に、回折格子82の調整について説明する。回折格子82も受光素子83と同じ調整器150を用いて調整する。
【0111】
回折格子82は、1本のレーザー光から、信号ピックアップ用のメインビームとトラッキング用の2つのサブビームとを作り出す素子である。このため、発光素子81からレーザー光を出射し、調整用媒体100のピット列100〜103を検出しながら、3つのビームがそれぞれ所定のピット列(信号トラック)に照射されるべく回折格子82の回転方向の傾きが調整される。
【0112】
このとき、本実施形態では円筒状ドラムの円周にピット列が設けられているので3ビームのいずれのスポットについてもその中心をピット列が通過し、ピット列(信号トラック)に対するオフセット角がなくなる。
【0113】
例えば円盤状の媒体(ディスク)の場合、ピット列は3ビームの平面視の並びに対して曲率(円弧)を有している。このため同一信号トラック上に3ビームを一直線に配置する、いわゆる3ビームのインライン配置により差動プッシュプル法によってトラッキング制御が行われる光ピックアップの場合、3ビーム全てを信号トラック上に配置する必要があるが、ディスクの場合、信号トラックの曲率により3ビーム全てをピット列(信号トラック)に対してオフセットなしに配置することができないので、回折格子82の調整がし難いという欠点がある。
【0114】
すなわち、サブビームについては円弧の接線上に位置するように光ピックアップ装置を移動させてピット列を検出する必要があった。光ピックアップ装置の位置を移動させると、上記の如く調整誤差が大きくなる問題がある。
【0115】
3ビームのスポット径に対してディスクの曲率は相対的に大きいものであるが、ディスクの回転中心と対物レンズ32の位置の若干のずれは避けられず、ずれが生じた場合に曲率の影響を受けてしまう場合がある。
【0116】
本実施形態では円筒状ドラムの円周にピット列が設けられるので、光ピックアップ装置を移動させることなく3ビームのいずれのスポットも調整が可能となる。
【0117】
回折格子82の調整は、ターンテーブル62の回転軸63と対物レンズ32の位置がずれると法線ずれになり、トラッキングエラー(Tracking Error:TE)レベルが低下する。つまり、光ピックアップ装置30単体で調整しても、トラバースメカ10での調整が必須である。本実施形態では、先の工程で、第1ガイド材14を基準に対物レンズ32が調整され、すなわちターンテーブル62の回転軸63と対物レンズ32の位置関係が適切となっている。この状態で(トラバースメカ10として)回折格子82を調整することで光ピックアップ装置30での回折格子の調整工程を削除できる。また、光ピックアップ装置30をシャーシ12に取り付けることによる累積誤差が生じないため、精度よく調整ができる。
【0118】
このように受光素子83および回折格子82についても、光ピックアップ装置30単体での位置および姿勢調整は行わず、トラバースメカ10として一括でこれらの調整を行う。
【0119】
以上、本実施形態では調整用媒体100がドラムの場合を例に説明したが、ピット列がレンズの直径に沿って横切るようにピット列が設けられていればよく、従来と同様の円盤状の調整用ディスクが治具に取り付けられていてもよい。
【0120】
図8は、不図示の調整器に円盤状の調整用媒体100を取り付けた場合の上面図である。調整用媒体100の回転中心は光ピックアップ装置30を基準としてトラバースメカ10のスピンドルモータ50の位置とは180度反対側に位置する。各ピット列101〜103は同心円の閉ループ状に形成される。尚、調整時には対物レンズ32は、各ピット列101〜103の直下に移動する。
【0121】
調整用媒体100が円盤状の場合、ピット列101〜103は既述の如く対物レンズ32上をできる限り直線状に横切ることが望ましく、その直径が大きいほうが好適である。円盤状の場合でも、ピット列はらせん状でなく、閉ループ状に設けるとよい。
【0122】
尚、3ビーム方式の場合、サブビームは時間差を設けて検出している。つまり、先行のサブビームは先に検出する必要がある。また、調整用媒体100は光ピックアップ装置30を挟んでスピンドルモータ50の逆側に位置するため、通常の(ターンテーブル)の回転と逆回転とする。
【0123】
また、対物レンズ32の姿勢および位置調整が、上記の方法以外の方法で調整された場合であっても、受光素子83および回折格子82の調整は本実施形態の方法が採用できる。
【0124】
調整器(治具)150側に調整用媒体100を取り付けて調整を行うことで、調整用媒体100と光ピックアップ装置30の位置関係をほぼ一定に維持できる。ターンテーブル62に直接調整用媒体を取り付けると、例えば最内周の位置(Dr方向でターンテーブルに最も近づく位置)であっても、光ピックアップ装置30の位置は複数のトラバースメカ10間で一定になるとは言えない。しかし本実施形態では、複数の光ピックアップ支持装置10について光ピックアップ装置30の位置が略一定の条件下で調整が行える。従って、複数の光ピックアップ支持装置10間の調整ばらつきを抑えることができる。
【0125】
また、ピット列がらせん状でなく閉ループ状なので検出中の光ピックアップ装置30が移動することなく(スレッド送りが不要となり)、所定位置(例えば、対物レンズ32が内周側(Dr方向でターンテーブルに近い側)から所定距離の位置)のピット列を検出するなど、略一定の状態でピット列を検出できる。
【0126】
尚、BD用、DVD用、CD用のピット列を検出する際には光ピックアップ装置の移動が必要であるが、例えばピット列をそれぞれ100本設けても0.3mm程度である。この移動量は、らせん状のピット列を追従する移動量に比べて、十分小さい。またこれらの間の移動距離を0.3mm以下(好適には0.1mm以下)に抑えれば、アクチュエータ37のトラッキング方向の移動でほぼ対応できるので、光ピックアップ装置が移動することによる調整ばらつきにはほとんど影響がない。
【0127】
尚、検出する際の光ピックアップ装置30の位置は、所定の1か所でもよいし、たとえば最内周側と最外周側の2か所などとしてもよい。
【0128】
また個々の光ピックアップ支持装置10毎に調整用媒体100を着脱する必要がないので、当該媒体の傷を大幅に低減できる。これにより、それぞれの調整用データの再現性が良好となる。
【0129】
また、調整用媒体の消費が減り、合理化によって最終的な光ピックアップ支持装置10のコスト低減も可能となる。
【0130】
ステップS5:次に、光ピックアップ支持装置10としてBD、DVD、CD用のそれぞれについて電気的性能を検査する。電気的性能の検査項目は既知のものであり例えば、ジッター値、RFレベル、TEレベルなどである。
【0131】
従来では、光ピックアップ装置30の検査と重複して検査を行っていた。あるいは光ピックアップ装置30単体のみで検査を行っていたため、出荷する光ピックアップ支持装置10としての検査を行わない場合があった。本実施形態では光ピックアップ装置30での検査工程を省略し、出荷製品の状態での検査が可能となる。
【0132】
電気的性能の検査方法は上記の受光素子83および回折格子82の調整方法と同様である。すなわち、図6および図7の如く、検査用治具に検査用媒体(調整用媒体と同様の形状)を取り付ける。そしてトラバースメカ10には検査用媒体を取り付けることなく、各主の電気的性能を検査する。
【0133】
この場合も個々の光ピックアップ支持装置10毎に検査用媒体を着脱する必要がないので、検査データ(検査値)の再現性が良好となり、検査用媒体の消費が減るため、合理化によって最終的な光ピックアップ支持装置10のコスト低減も可能となる。
【0134】
次に、図9を参照して第2の実施形態としてアクチュエータ37の他の調整方法について説明する。図9は図5に対応する図であり図9(A)がアクチュエータ37の平面図、図9(B)がターンテーブルの回転軸63側のDr方向からみた側面図、図9(C)が第1ガイド材14側のDt方向からみた側面図である。
【0135】
対物レンズ32は、ステップS4の調整工程において、アクチュエータ37を3次元的に変位させて適切な位置および姿勢になるように調整してもよい。以下、主に第1の実施形態と異なる工程について説明する。
【0136】
ステップS2:光ピックアップ装置のハウジング36の収納部35に発光素子81、回折格子82、受光素子83、および立ち上げミラー84等の各種光学部品を収納する(図3(B))。
【0137】
回折格子82は例えばホルダーに取り付けられてハウジング36の所定部分に収納されることにより、光軸方向を中心に回転可能にハウジング36に仮に固定(第1の固定)される。
【0138】
受光素子83は配線部83wのみが半田などの導電性接着材によって配線基板31に固着(第1の固定)される。これに対し、受光部83rはハウジング36に固定されず、その姿勢や位置は変位可能である。
【0139】
他の光学部品(例えば発光素子、コリメートレンズ、ビームススプリッター、立ち上げミラー等)は接着材にてハウジング36内で変位不可に固定される。
【0140】
ステップS3:第1ガイド材14および第2ガイド材16に沿ってハウジング36が移動可能となるように、シャーシ12にハウジング36を取り付ける。
【0141】
上記の光学部品が収納されたハウジング36にアクチュエータ37を取り付ける以前に、第1ガイド材14の端部をそれぞれ第1固定部51および第3固定部53に当接して、不図示の固定部材(例えば板バネや線状バネ)によって固定する。また、第2ガイド材16の端部をそれぞれ第2固定部52および第4固定部54に当接して、固定部材(不図示)によって固定する。これによって、ハウジング36がシャーシ12に取り付けられ、Dr方向の移動を可能にしつつ、第1ガイド材14および第2ガイド材16に支持される(図1参照)。
【0142】
ステップS4:第1ガイド材14(シャーシ12)を基準にアクチュエータ37の位置及び姿勢を調整し、アクチュエータ37をハウジング37に固定する。
【0143】
シャーシ12に取り付けられたハウジング37にアクチュエータ37を取り付ける。一例を挙げて具体的に説明すると、外部から吸着しつつアクチュエータ37を移動可能に支持するアーム(不図示)を、アクチュエータ37に取り付ける。アームの先端には例えば真空や磁石などによって吸引して保持するチャック(不図示)が設けられている。この状態で、ハウジング37の所定位置にアクチュエータ37を載置又は収納する。そして光ピックアップ支持装置10の第1ガイド材14に対するアクチュエータ37の位置および姿勢(対物レンズ32のDt方向の位置、Dr方向の位置、Df方向の位置、Dr方向のスキュー、Dt方向のスキュー)を3次元的に同時に変位させ、適切な状態に調整する。このときの調整器は第1の実施形態と同様のものが使用できる。
【0144】
そしてその状態を保持したまま、アクチュエータ37の例えば下面の4コーナーに接着材45を供給するなどし、アクチュエータ37をハウジング36に対して変位不可に固定し、アームの支持を解除する(図8参照)。
【0145】
この場合、アクチュエータ37の第1調整機構91、第2調整機構92、第3調整機構93が不要となり、更に部品点数を削減できる。また調整器に載置した状態でアームにより3次元的に位置および姿勢を調整できるので、Dt方向の調整、Dr方向の調整などを個別に調整するよりも作業が容易となる。
【0146】
また、回折格子82、受光素子83の位置および姿勢を第1の実施形態と同様に調整し、本固定(第2の固定)する。これ以外の構造は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0147】
尚、第2ガイド材16は上記の円柱形状のものにかぎらず、シャーシ12の一部を第2ガイド材16とする光ピックアップ支持装置10であっても同様に実施できる。
【0148】
また、スピンドルモータがモーター支持基板に取り付けれ、当該モーター支持基板をシャーシに取り付ける構造であっても同様に実施できる。この場合スピンドルモーターの回転軸が光ピックアップ装置の走行面Rに対してほぼ垂直に調整されていれば、その後の光ピックアップ装置をシャーシ12に取り付けたのちの、光学部品の調整・検査工程は、上記の方法が採用できる。
【0149】
尚、BD用、DVD用およびCD用の3波長に対応した1つの対物レンズ32の場合でも同様に実施でき、この場合調整用(または検査用)媒体にはBD用、DVD用およびCD用の3本のピット列があれば対物レンズは殆ど移動せずに3波長を検出できるため、好適である。
【符号の説明】
【0150】
10 光ピックアップ支持装置
12 シャーシ
13 固定部材
14 第1ガイド材
16 第2ガイド材
38 第1ガイド部
39 第2ガイド部
30 光ピックアップ装置
32 対物レンズ
36 ハウジング
37 アクチュエータ
50 スピンドルモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板にガイド材が固定され光ピックアップ装置を前記ガイド材に沿って駆動する光ピックアップ支持装置の製造方法であって、
前記光ピックアップ装置のハウジングに光学部品を収納する工程と、
前記ガイド材に沿って移動可能に前記ハウジングを前記支持基板に取り付ける工程と、
前記ハウジングに載置されて対物レンズを保持するアクチュエータの位置および姿勢を前記ガイド材を基準にして調整し、固定する工程と、
を具備することを特徴とする光ピックアップ支持装置の製造方法。
【請求項2】
前記ハウジングに前記アクチュエータを変位可能に載置した後、前記ハウジングを前記支持基板に取り付け、アクチュエータの位置及び姿勢を調整し、前記ハウジングに対して変位不可に固定することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ支持装置の製造方法。
【請求項3】
前記ハウジングを前記支持基板に取り付けた後、前記アクチュエータの位置及び姿勢を調整しつつ前記ハウジングに載置し、該ハウジングに対して変位不可に固定することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ支持装置の製造方法。
【請求項4】
前記光学部品は前記ハウジングに変位可能に固定され、前記アクチュエータが変位不可に固定された後前記対物レンズにレーザー光を通過させて前記光学部品の位置及び姿勢が調整され、前記光学部品が前記ハウジングに変位不可に固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ピックアップ支持装置の製造方法。
【請求項5】
前記光学部品は配線部と受光部を有する受光素子であり、
前記配線部が前記ハウジングに固着され、前記受光素子の位置及び姿勢を調整したのち前記受光部が前記ハウジングに固着されることを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ支持装置の製造方法。
【請求項6】
前記光学部品は回折格子であることを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の光ピックアップ支持装置の製造方法。
【請求項7】
調整用媒体が取り付けられた治具に前記支持基板を載置し、
前記調整用媒体のピット列にレーザー光を照射しながら前記光学部品を調整することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の光ピックアップ支持装置の製造方法。
【請求項8】
前記ハウジングの両端に設けたガイド部に円柱形状の前記第1ガイド材および前記第2ガイド材を挿通したのち、該両ガイド材を前記支持基板に固定することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の光ピックアップ支持装置の製造方法。
【請求項9】
調整用媒体が取り付けられた治具に前記支持基板を載置し、
前記調整用媒体のピット列にレーザー光を照射しながら電気的性能検査を行うことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の光ピックアップ支持装置の製造方法。
【請求項10】
前記光ピックアップ装置は、相違する複数の規格の光ディスクに対応し、前記調整用媒体には、複数の光ディスクの規格にそれぞれ対応する調整用信号のピット列が混在して設けられていることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載の光ピックアップ支持装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−12269(P2013−12269A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143971(P2011−143971)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】