説明

光ピックアップ装置、光情報再生装置、光情報記録再生装置、光ピックアップ装置用光学素子及び光ピックアップ装置用集光光学系

【課題】波長380nm〜420nmのレーザ光源を用いて、高い光強度で記録/再生を行った場合においても、高精度に記録/再生を行うことを可能とする。
【解決手段】光ピックアップ装置100は、波長380nm〜420nmの半導体レーザ発振器2と、光束を光ディスクDの情報記録面D2に集光させる対物レンズ7を含む集光光学系とを有し、前記光束が前記光学系を透過する際、対物レンズ7の光出射面において前記光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる。対物レンズ7の光出射面には、Ti元素、Zr元素、La元素、Ta元素、Ce元素、Hf元素、In元素、或いはSn元素を含有する機能膜が設けられていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップ装置、光情報再生装置、光情報記録再生装置、光ピックアップ装置用光学素子及び光ピックアップ装置用集光光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の記録/再生用記録媒体として、CDやDVD等が知られている。これらの記録媒体の記録/再生を行う装置には、通常レーザ光源と集光光学系を有する光ピックアップ装置が用いられる。CD用の光ピックアップ装置としては、780nm程度の波長を出射する光源が用いられ、対物レンズの像側開口数(NA)はおよそ0.45程度とされており、DVD用の光ピックアップ装置としては、650nm程度の波長を出射する光源が用いられ、対物レンズの像側開口数(NA)はおよそ0.60程度とされている。
【0003】
近年、記録媒体の高密度化の要望に伴い、従来の記録媒体よりも高密度の記録媒体及び当該記録媒体の記録/再生装置の研究・開発が急速に進められている。例えば、Blu−Ray Discと呼ばれる記録媒体は、DVDと同じ12cmの記録媒体に対して、4〜5倍程度の情報が記録できる記録媒体として提案されており、光ピックアップ装置としては、波長380nm〜420nm程度の青紫色レーザを用い、対物レンズの像側開口数(NA)はおよそ0.85とされている。また、従来のDVDと互換性の高い高密度記録媒体として、HD DVDと呼ばれる記録媒体も提案されており、Blu−Ray Discと同様に波長380nm〜420nm程度の青紫色レーザを用い、対物レンズの像側開口数(NA)を0.65程度とすることで、DVDの約3倍程度の情報が記録可能とされている。
【0004】
ところで、光ピックアップ装置に用いられる集光光学系を構成する光学素子、例えば、対物レンズやカップリングレンズ等としては、ガラス製の光学素子やプラスチック製の光学素子が用いられている。特に、製造コストが非常に低いプラスチック製の光学素子が好ましく用いられる。また、プラスチック製の光学素子は、ガラス製の光学素子に比べて比重が小さい為、トラッキングやフォーカシングの為の駆動電圧が小さくて済む為、省電力化の観点でも好ましく用いられる。
【0005】
光学素子用の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂等が一般的に用いられている。しかし、上述のような高密度記録媒体用の光ピックアップ装置用の光学素子としては、従来の光ピックアップ装置よりも更なる精密性が求められ、低吸湿、低複屈折であり、400nm前後の光に対する透過性に優れ、更には精密加工がし易い成形性に優れる樹脂が求められていた。
【0006】
このような樹脂として、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体が、低吸湿、低複屈折性を示し、透過性、成形性に優れる樹脂として提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。本発明者らの検討により、これらのブロック共重合体を基材として用いた場合、波長380nm〜420nmのレーザ光源を用いる高密度記録媒体用の光ピックアップ装置用の光学素子として優れた光学特性を示すことがわかった。
【0007】
また、高密度記録媒体用の光ピックアップ装置用の光学素子としては、使用される波長380nm〜420nmのレーザ光に対して、長期間にわたり優れた耐光性を示すことが求められる。更に、光ピックアップ装置において、更なる記録/再生の精度を向上させる為には、レーザ光源の出力、すなわち光強度を上げる必要があり、光学素子の光学面における反射による光ロスや、収差補正用に光学面に設けられる微細構造による光ロスが発生する為、更なる光強度の向上が求められており、少なくとも光学素子の光学面における光束の最大ピーク強度が100mW/mmとなる場合でも長期間の耐光性を示す必要がある。
【0008】
一方、光ピックアップ装置用の光学素子においては、通常、高精度の記録/再生を行う為、光学面における光の反射や散乱を防止する為の反射防止膜や、ほこりの付着を抑制する為の帯電防止膜等の機能性膜が光学面上に設けられる。反射防止層としては、金属酸化物からなる低屈折率層、高屈折率層の積層膜が一般的に用いられており、帯電防止膜としては、ITO膜(酸化スズと酸化インジウムとの混合膜)等の導電性膜を設けることが知られている。特に、高密度記録媒体用の光ピックアップ装置においては、更なる高精度化が要求されており、これらの機能性層が必要と考えられている。
【特許文献1】特開2002−148401号公報
【特許文献2】特開2001−48924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、本発明者らが、上記のブロック共重合体からなる基材に機能膜を付与した光学素子を用い、少なくとも1つの光学面における光束の最大ピーク強度が100mW/mm以上となる高密度記録媒体用の光ピックアップ装置を作製して評価したところ、長期間使用した際に、記録媒体の情報記録面に集光されたスポットに大きな収差が発生し、光情報の記録/再生に支障をきたす場合があることが判明した。
【0010】
この収差の原因(要因)を分析した結果、最大ピーク強度が100mW/mm以上となる光学面において微細な変形が発生しており、この変形がスポットにおける収差の発生の原因となっていることが判明した。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストが低く、省電力が可能なプラスチック製の光学素子を用いながら、複屈折、成形性、透過性に優れた光ピックアップ装置であり、特に、波長380nm〜420nmのレーザ光源を用いて、高い光強度で記録/再生を行った場合においても、高精度に記録/再生を行うことが可能であり、光学性能の劣化を抑制できる高密度記録媒体用の光ピックアップ装置、光情報再生装置、光情報記録再生装置、光ピックアップ装置用光学素子及び光ピックアップ装置用集光光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らの鋭意検討の結果、上記の変形は、最大ピーク強度が100mW/mm以上であり、且つ反射防止膜や帯電防止膜等の機能膜が設けられた光学面で発生していることが判明した。更に検討したところ、特定の金属元素を含有する機能膜を最大ピーク強度が100mW/mm以上となる光学面に設けた場合に、変形が顕著に現れていることが判明した。
【0013】
そこで、下記の構成により上記の課題が達成された。
【0014】
1.波長380nm〜420nmのレーザ光源と、前記レーザ光源から出射される光束を記録媒体の情報記録面に集光させる少なくとも一つの光学素子を含む集光光学系とを有し、前記光束が前記光学系を透過する際、前記光学素子の少なくとも一つの光学面において前記光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光ピックアップ装置において、
前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、Ti元素、Zr元素、La元素、Ta元素、Ce元素、Hf元素、In元素、或いはSn元素を含有する機能膜を設けず、
前記光学素子の基材が、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(2)で表される繰り返し単位〔2〕または/および下記式(3)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有するブロック共重合体からなることを特徴とする光ピックアップ装置。
【0015】
【化1】

【0016】
(式(1)中、R1は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2−R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。)
【0017】
【化2】

【0018】
(式(2)中、R13は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0019】
【化3】

【0020】
(式(3)中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0021】
上述の変形が生じるメカニズムは定かではないが、従来の光ピックアップ装置で用いられていた光源よりも高エネルギーである波長380nm〜420nmの光束が高い強度で照射された場合、基材となる上記のブロック共重合体と上記機能膜との界面で何らかの作用を誘発するものと推測される。上記第1項の光ピックアップ装置のように、光学素子の光学面のうち、最大ピーク強度が100mW/mm以上となる光学面に特定金属元素を含む機能膜を設けないことにより、安定した光学性能が維持できた。最大ピーク強度が2000mW/mmより大きくなった場合、たとえ機能膜を設けない場合でも、基材樹脂に変形が生じ、安定した光学性能の維持が困難となることがわかった。
【0022】
2.前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、Si元素、Mg元素、或いはAl元素を含有する機能膜を設けないことを特徴とする前記第1項に記載の光ピックアップ装置。
【0023】
100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面に、従来の反射防止膜の低屈折率層に用いられるSi元素、Mg元素、或いはAl元素を含む機能膜を設けない場合、更に安定した光学性能が維持できた。
【0024】
3.前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、金属元素を含有する機能膜を設けないことを特徴とする前記第2項に記載の光ピックアップ装置。
100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面に、如何なる金属元素を含有する機能膜も設けないことで、更に安定した光学性能が維持できた。
【0025】
4.前記光学素子が対物レンズであり、前記透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面が、該対物レンズの前記記録媒体側の光学面であることを特徴とする前記第1〜3項の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
【0026】
本発明において、対物レンズとは集光光学系における最も記録媒体側に設けられた光学素子を意味する。従って、対物レンズの記録媒体側の光学面は光源から出射された光束が記録媒体に集光される間に透過する最後の光学面であり、その光学面において、光束の最大ピーク強度を100mW/mm〜2000mW/mmとすることで高精度な記録/再生を行うことができる。
【0027】
5.前記対物レンズの光源側の光学面は、前記透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm未満であり、金属元素を有する機能膜を設けることを特徴とする前記第4項に記載の光ピックアップ装置。
【0028】
対物レンズの光源側の光学面は、光束の最大ピーク強度を100mW/mm未満として、金属元素を有する機能膜を設けることで、より安定した光学性能を達成することができる。
【0029】
6.前記金属元素を有する機能膜が反射防止膜であることを特徴とする前記第5項に記載の光ピックアップ装置。
【0030】
対物レンズの光源側の光学面に反射防止膜を設けることで、光束の反射、散乱を抑制することが可能となり、より安定した光学性能を達成することができる。
【0031】
7.前記金属元素を有する機能膜が帯電防止膜であることを特徴とする前記第5項に記載の光ピックアップ装置。
【0032】
対物レンズの光源側の光学面に帯電防止膜を設けることで、ほこり等の付着を抑制することが可能となり、より安定した光学性能を達成することができる。
【0033】
8.前記光源の出射時の出力が60mW〜320mWであることを特徴とする前記第1〜7項の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
【0034】
光源の出射時の出力が60mW〜320mWとすることで、より安定した記録/再生が可能となる。
【0035】
9.少なくとも、前記第1〜8項の何れか1項に記載の光ピックアップ装置、前記記録媒体を回転駆動する駆動装置、前記記録媒体の情報記録面で反射された光束を受光する光検出器とを有することを特徴とする光情報再生装置。
【0036】
10.少なくとも、前記第1〜8項の何れか1項に記載の光ピックアップ装置、前記記録媒体を回転駆動する駆動装置、前記記録媒体の情報記録面で反射された光束を受光する光検出器とを有することを特徴とする光情報記録再生装置。
【0037】
11.波長380nm〜420nmのレーザ光源から出射される光束を記録媒体の情報記録面に集光させる光ピックアップ装置に用いられ、前記光束が透過する際に少なくとも一つの光学面において前記光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光ピックアップ装置用の光学素子において、
前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、Ti元素、Zr元素、La元素、Ta元素、Ce元素、Hf元素、In元素、或いはSn元素を含む機能膜を設けず、
前記光学素子の基材が、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(2)で表される繰り返し単位〔2〕または/および下記式(3)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有するブロック共重合体からなることを特徴とする光ピックアップ装置用光学素子。
【0038】
【化4】

【0039】
(式(1)中、R1は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2−R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。)
【0040】
【化5】

【0041】
(式(2)中、R13は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0042】
【化6】

【0043】
(式(3)中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0044】
本構成の光学素子によれば、前記第1項と同様の効果が得られる。
【0045】
12.前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、Si元素、Mg元素、或いはAl元素を含む機能膜を設けないことを特徴とする前記第11項に記載の光ピックアップ装置用光学素子。
【0046】
本構成によれば、前記第2項と同様の効果が得られる。
【0047】
13.前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、金属元素を含む機能膜を設けないことを特徴とする前記第12項に記載の光ピックアップ装置用光学素子。
【0048】
本構成によれば、前記第3項と同様の効果が得られる。
【0049】
14.前記第11〜13項の何れか1項に記載の光学素子を含む光ピックアップ装置用集光光学系。
【0050】
本構成の集光光学系によれば、前記第1〜3項と同様の効果が得られる。
【0051】
15.前記光学素子が対物レンズであり、前記透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面が、該対物レンズの前記記録媒体側の光学面であることを特徴とする前記第14項に記載の光ピックアップ装置用集光光学系。
【0052】
本構成によれば、前記第4項と同様の効果が得られる。
【0053】
16.前記対物レンズの光源側の光学面は、前記透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm未満であり、金属元素を有する機能膜を設けることを特徴とする前記第15項に記載の光ピックアップ装置用集光光学系。
【0054】
本構成によれば、前記第5項と同様の効果が得られる。
【0055】
17.前記金属元素を有する機能膜が反射防止膜であることを特徴とする前記第16項に記載の光ピックアップ装置用集光光学系。
【0056】
本構成によれば、前記第6項と同様の効果が得られる。
【0057】
18.前記金属元素を有する膜が帯電防止膜であることを特徴とする前記第16項に記載の光ピックアップ装置用集光光学系。
【0058】
本構成によれば、前記第7項と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0059】
製造コストが低く、省電力が可能なプラスチック製の光学素子を用いながら、複屈折、成形性、透過性に優れた光ピックアップ装置であり、特に、波長380nm〜420nmのレーザ光源を用いて、高い光強度で記録/再生を行った場合においても、高精度に記録/再生を行うことが可能であり、光学性能の劣化を抑制できる高密度記録媒体用の光ピックアップ装置、光情報再生装置、光情報記録再生装置、光ピックアップ装置用光学素子及び光ピックアップ装置用集光光学系を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
図1は、本発明の好ましい実施形態で使用される光情報記録再生装置100の内部構造を示す模式図である。
【0061】
本実施形態における光情報記録再生装置100は主に、光ピックアップ装置1、記録媒体の一例である光ディスクDを回転駆動させる駆動装置10、光ディスクDの情報記録面(D)で反射された光束を受光する光検出器20などを内蔵している。
【0062】
光ピックアップ装置1には、図1に示すように、光源の一例である半導体レーザ発振器2が具備されている。半導体レーザ発振器2は波長380〜420nmの青紫色光を光束として発する光源である。半導体レーザ発振器2から出射される青紫色光の光軸上には、半導体レーザ発振器2から離間する方向に向かって、コリメータ3、ビームスプリッタ4、1/4波長板5、絞り6、対物レンズ7が順次配設されており、対物レンズ7に対し光ディスクDが対向配置される。光ディスクDは保護基板Dを有しており、光ディスクDには保護基板Dを介して情報記録面Dが形成されている。
【0063】
本実施形態では、少なくともコリメータ3、対物レンズ7により集光光学系が形成されており、特に、対物レンズ7が半導体レーザ発振器2から出射される光束を光ディスクDの情報記録面D2に集光する光学素子となっている。
【0064】
このような対物レンズ7には、2次元アクチュエータ9が具備されており、2次元アクチュエータ9の動作により、対物レンズ7は、光軸上を移動自在となっている。
【0065】
ビームスプリッタ4と近接した位置であって、上述した青紫色光の光軸と直交する方向には、2組のレンズからなるセンサーレンズ群8が設けられており、センサーレンズ群8に対し光検出器20が対向配置されている。
【0066】
次に、光情報記録再生装置100の作用について説明する。
【0067】
光ディスクDへの情報の記録動作時や、光ディスクDに記録された情報の再生動作時において、駆動装置10が光ディスクDを回転させた状態で半導体レーザ発振器2が青紫色光を光束として出射する。出射された青紫色光は、図1に示すように、光線Lとなって、コリメータ3を透過して無限平行光にコリメートされた後、ビームスプリッタ4を透過して、1/4波長板5を透過する。さらに、青紫色光は絞り6及び対物レンズ7を透過した後、光ディスクDの保護基板Dを介して情報記録面Dに集光され集光スポットを形成する。
【0068】
集光スポットを形成した光は、光ディスクDの情報記録面Dで情報ピットによって変調され、情報記録面Dによって反射される。そして、この反射光は、光線Lとなって、対物レンズ7及び絞り6を順次透過した後、1/4波長板5によって偏光方向が変更され、ビームスプリッタ4で反射する。その後、当該反射光は、センサーレンズ群8を透過して非点収差が抑えられ、光検出器20で受光される。光検出器20で受光された光はその後光電変換され、電気的な信号となる。
【0069】
以後、このような動作が繰り返し行われ、光ディスクDに対する情報の記録動作や、光ディスクDに記録された情報の再生動作が完了する。
【0070】
なお、光ディスクDにおける保護基板Dの厚さ寸法及び情報ピットの大きさにより、対物レンズ7に要求される開口数NAも異なる。本実施形態においては、高密度な光ディスクDであり、その開口数は0.85に設定されている。また本実施形態では、光情報記録再生装置100を光ディスクDの情報の記録と再生とを行う装置の一例として説明したが、光情報記録再生装置100は上記と同様の構成で情報の再生のみを行う光情報再生装置としても機能することができる。
【0071】
次に、対物レンズ7についてより詳細に説明する。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において光学素子として用いられる対物レンズ7の基材は、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(2)で表される繰り返し単位〔2〕または/および下記式(3)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有するブロック共重合体からなる。
【0073】
【化7】

【0074】
上記式(1)中、「R1」は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、「R2−R12」はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。
【0075】
【化8】

【0076】
上記式(2)中、R13は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0077】
【化9】

【0078】
上記式(3)中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0079】
前記ブロック重合体においては、前記ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率a(モル%)と、前記ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率b(モル%)との関係がa>bであることが好ましい。
【0080】
重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕の含有量は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0081】
上記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕の好ましい構造は、R1が水素またはメチル基で、R2−R12がすべて水素のものである。重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕の含有量が上記範囲にあると、透明性および機械的強度に優れる。重合体ブロック〔A〕における、前記繰り返し単位〔1〕以外の残部は、鎖状共役ジエンや鎖状ビニル化合物由来の繰り返し単位を水素化したものである。
【0082】
重合体ブロック〔B〕は、前記繰り返し単位〔1〕ならびに上記式(2)で表される繰り返し単位〔2〕または/および上記式(3)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する。重合体ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕の含有量は、好ましくは40〜95モル%、より好ましくは50〜90モル%である。繰り返し単位〔1〕の含有量が上記範囲にあると、透明性および機械的強度に優れる。ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔2〕のモル分率をm2(モル%)および、繰り返し単位〔3〕のモル分率をm3(モル%)としたときに、2×m2+m3が、好ましくは2モル%以上、より好ましくは5〜60モル%、最も好ましくは10〜50モル%である。
【0083】
上記式(2)で表される繰り返し単位〔2〕の好ましい構造は、R13が水素またはメチル基のものである。
【0084】
上記式(3)で表される繰り返し単位〔3〕の好ましい構造は、R14が水素で、R15がメチル基またはエチル基のものである。
【0085】
重合体ブロック〔B〕中の、前記繰り返し単位〔2〕または繰り返し単位〔3〕の含有量が少なすぎると、機械的強度が低下する。したがって、繰り返し単位〔2〕および繰り返し単位〔3〕の含有量が上記範囲にあると、透明性および機械的強度に優れる。重合体ブロック〔B〕は、さらに、下記式(X)で表される繰り返し単位〔X〕を含有していてもよい。繰り返し単位〔X〕の含有量は、本発明の好ましい実施形態で使用されるブロック共重合体の特性を損なわない範囲の量であり、好ましくはブロック共重合体全体に対し、30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0086】
【化10】

【0087】
上記式(X)中、R25は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R26はニトリル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、もしくはハロゲン基を表し、R27は水素原子を表す。または、R26とR27とは相互に結合して、酸無水物基、もしくはイミド基を形成してもよい。
【0088】
また、本発明の好ましい実施形態に用いるブロック共重合体は、重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率をa、重合体ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率をbとした場合に、a>bの関係があることが好ましい。これにより、透明性、および機械的強度に優れる。
【0089】
さらに、本発明の好ましい実施形態に用いるブロック共重合体は、ブロック〔A〕を構成する全繰り返し単位のモル数をma、ブロック〔B〕を構成する全繰り返し単位のモル数をmbとした場合に、その比(ma:mb)が、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは40:60〜90:10である。(ma:mb)が上記範囲にある場合に、機械的強度および耐熱性に優れる。
【0090】
本発明の好ましい実施形態に用いるブロック共重合体の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)により測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(以下、Mwと記す。)で、好ましくは10,000〜300,000、より好ましくは15,000〜250,000、特に好ましくは20,000〜200,000の範囲である。ブロック共重合体のMwが上記範囲にあると、機械的強度、耐熱性、成形性のバランスに優れる。
【0091】
ブロック共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算のMwと数平均分子量(以下、Mnと記す。)との比(Mw/Mn)で、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械的強度や耐熱性に優れる。
【0092】
ブロック共重合体のガラス転移温度(以下、Tgと記す。)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、示差走査型熱量計(以下、DSCと記す。)による、高温側の測定値で、好ましくは70℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃、特に好ましくは90℃〜160℃である。
【0093】
本発明の好ましい実施形態に用いる上記ブロック共重合体は、重合体ブロック〔A〕および重合体ブロック〔B〕を有し、(〔A〕−〔B〕)型のジブロック共重合体であっても、(〔A〕−〔B〕−〔A〕)型や(〔B〕−〔A〕−〔B〕)型のトリブロック共重合体であっても、重合体ブロック〔A〕と重合体ブロック〔B〕とが、交互に合計4個以上つながったブロック共重合体であってもよい。また、これらのブロックがラジアル型に結合したブロック共重合体であってもよい。
【0094】
本発明の好ましい実施形態に用いるブロック共重合体は、以下の方法により得ることができる。その方法としては、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物を含有するモノマー混合物、および、ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く)を含有するモノマー混合物を重合して、芳香族ビニル化合物または/および脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック、および、ビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロックを有するブロック共重合体を得る。そして該ブロック共重合体の芳香環または/および脂肪族環を水素化する方法や、飽和脂環族ビニル化合物を含有するモノマー混合物、および、ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く)を含有するモノマー混合物を重合して、脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック、および、ビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロックを有するブロック共重合体を得る方法などが挙げられる。中でも、本発明の好ましい実施形態に用いるブロック共重合体としてより好ましいものは、例えば、以下の方法により得ることができる。
【0095】
(1)第一の方法としては、まず、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物を50モル%以上含有するモノマー混合物〔a’〕を重合して、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔A’〕を得る。ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く)を2モル%以上含有し、且つ、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物をモノマー混合物〔a’〕中の割合よりも少ない割合の量で含有するモノマー混合物〔b’〕を重合して、芳香族ビニル化合物または/および前記脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位とビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔B’〕を得る。これらの工程を少なくとも経て、前記重合体ブロック〔A’〕および重合体ブロック〔B’〕を有するブロック共重合体を得た後、該ブロック共重合体の芳香環または/および脂肪族環を水素化する。
【0096】
(2)第二の方法としては、まず、飽和脂環族ビニル化合物を50モル%以上含有するモノマー混合物〔a〕を重合して、飽和脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔A〕を得る。ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く)を2モル%以上含有し、且つ、飽和脂環族ビニル化合物をモノマー混合物〔a〕中の割合よりも少ない割合の量で含有するモノマー混合物〔b〕を重合して、飽和脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位とビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔B〕を得る。これらの工程を少なくとも経て、前記重合体ブロック〔A〕および重合体ブロック〔B〕を有するブロック共重合体を得る。
【0097】
上記方法の中で、モノマーの入手容易性、重合収率、重合体ブロック〔B’〕への繰り返し単位〔1〕の導入のし易さ等の観点から、上記(1)の方法がより好ましい。
【0098】
上記(1)の方法における芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等や、これらにヒドロキシル基、アルコキシ基などの置換基を有するもの等が挙げられる。中でもスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
【0099】
上記(1)方法における不飽和脂環族ビニル系化合物の具体例としては、シクロヘキセニルエチレン、α−メチルシクロヘキセニルエチレン、およびα−t−ブチルシクロヘキセニルエチレン等や、これらにハロゲン基、アルコキシ基、またはヒドロキシル基等の置換基を有するもの等が挙げられる。
【0100】
これらの芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできるが、本発明の好ましい実施形態においては、モノマー混合物〔a’〕および〔b’〕のいずれにも、芳香族ビニル化合物を用いるのが好ましく、中でも、スチレンまたはα−メチルスチレンを用いるのがより好ましい。
【0101】
上記方法で使用するビニル系モノマーには、鎖状ビニル化合物および鎖状共役ジエン化合物が含まれる。
【0102】
鎖状ビニル化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
【0103】
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、および1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物および鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物および鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0104】
上記のモノマーを含有するモノマー混合物を重合する場合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等のいずれの方法で重合反応を行ってもよいが、アニオン重合によるのが好ましく、不活性溶媒の存在下にリビングアニオン重合を行うのが最も好ましい。
【0105】
アニオン重合は、重合開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜80℃の温度範囲において行う。開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
【0106】
使用する不活性溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂肪族炭化水素類や脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用モノマー100重量部に対して200〜10,000重量部となるような割合で用いられる。
【0107】
それぞれの重合体ブロックを重合する際には、各ブロック内で、或る1成分の連鎖が長くなるのを防止するために、重合促進剤やランダマイザーなどを使用することができる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物などをランダマイザーとして使用できる。ルイス塩基化合物の具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0108】
リビングアニオン重合によりブロック共重合体を得る方法は、従来公知の、逐次付加重合反応法およびカップリング法などが挙げられるが、本発明の好ましい実施形態においては、逐次付加重合反応法を用いるのが好ましい。
【0109】
逐次付加重合反応法により、重合体ブロック〔A’〕および重合体ブロック〔B’〕を有する上記ブロック共重合体を得る場合には、重合体ブロック〔A’〕を得る工程と、重合体ブロック〔B’〕を得る工程は、順次連続して行われる。具体的には、不活性溶媒中で、上記リビングアニオン重合触媒存在下、モノマー混合物〔a’〕を重合して重合体ブロック〔A’〕を得、引き続きその反応系にモノマー混合物〔b’〕を添加して重合を続け、重合体ブロック〔A’〕とつながった重合体ブロック〔B’〕を得る。さらに所望に応じて、再びモノマー混合物〔a’〕を添加して重合し、重合体ブロック〔A’〕をつなげてトリブロック体とし、さらには再びモノマー混合物〔b’〕を添加して重合し、重合体ブロック〔B’〕をつなげたテトラブロック体を得る。
【0110】
得られたブロック共重合体は、例えばスチームストリッピング法、直接脱溶媒法、アルコール凝固法等の公知の方法によって回収する。重合反応において、水素化反応で不活性な溶媒を用いた場合には、重合溶液そのままを水素化反応工程にも使用することができるので、重合溶液からブロック共重合体を回収しなくてもよい。
【0111】
上記(1)の方法において得られる、重合体ブロック〔A’〕および重合体ブロック〔B’〕を有するブロック共重合体(以下、水素化前ブロック共重合体という。)のうち下記の構造の繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0112】
好ましい水素化前ブロック共重合体を構成する重合体ブロック〔A’〕は、下記式(4)で表される繰り返し単位〔4〕を50モル%以上含有する重合体ブロックである。
【0113】
【化11】

【0114】
上記式(4)中、R16は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R17−R21は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基またはハロゲン基である。尚、上記〔R17−R21〕は、R17、R18、・・およびR21を表す。
【0115】
また、好ましい重合体ブロック〔B’〕は、前記繰り返し単位〔4〕を必ず含み、下記式(5)で表される繰り返し単位〔5〕および下記式(6)で表される繰り返し単位〔6〕のいずれかを少なくとも1つ含む重合体ブロックである。また、重合体ブロック〔A’〕中の繰り返し単位〔4〕のモル分率をa’、ブロック〔B’〕中の繰り返し単位〔4〕のモル分率をb’とした場合、a’>b’である。
【0116】
【化12】

【0117】
上記式(5)中、R22は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0118】
【化13】

【0119】
上記式(6)中、R23は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R24は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基を表す。
【0120】
さらに、ブロック〔B’〕中には、下記式(Y)で示される繰り返し単位〔Y〕を含有していてもよい。
【0121】
【化14】

【0122】
上記式(Y)中、R28は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R29はニトリル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、またはハロゲン基を表し、R30は水素原子を表す。または、R29とR30とは相互に結合して、酸無水物基、またはイミド基を形成してもよい。
【0123】
さらに、好ましい水素化前ブロック共重合体は、ブロック〔A’〕を構成する全繰り返し単位のモル数をma’、ブロック〔B’〕を構成する全繰り返し単位のモル数をmb’とした場合に、その比(ma’:mb’)が、5:95〜95:5、より好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは40:60〜90:10である。(ma’:mb’)が上記範囲にある場合に、機械的強度や耐熱性に優れる。
【0124】
好ましい水素化前ブロック共重合体の分子量は、THFを溶媒としてGPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算Mwで、12,000〜400,000、より好ましくは19,000〜350,000、特に好ましくは25,000〜300,000の範囲である。ブロック共重合体のMwが過度に小さいと、機械的強度が低下し、過度に大きいと、水素添加率が低下する。
好ましい水素化前のブロック共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算のMwとMnとの比(Mw/Mn)で、5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、水素添加率が向上する。
【0125】
好ましい水素化前のブロック共重合体のTgは、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、DSCによる高温側の測定値で、70℃〜150℃、より好ましくは80℃〜140℃、特に好ましくは90℃〜130℃である。
【0126】
上記の、水素化前のブロック共重合体の、芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素不飽和結合、および主鎖や側鎖の不飽和結合等を水素化する方法および反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、およびレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能である。
【0127】
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、または適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素等が挙げられ、触媒の担持量は、好ましくは0.01〜80重量%、より好ましくは0.05〜60重量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトン塩、ナフテン酸塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が好適に用いられる。
【0128】
有機金属錯体触媒の例としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン錯体等の金属錯体が使用される。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜100重量部、より好ましくは0.05〜50重量部、特に好ましくは0.1〜30重量部である。
水素化反応は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。また水素圧力は、好ましくは0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、より好ましくは1MPa〜20MPa、特に好ましくは2MPa〜10MPaである。
【0129】
このようにして得られた、ブロック共重合体の水素化率は、 1H−NMRによる測定において、主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環やシクロアルケン環の炭素−炭素不飽和結合のいずれも、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
【0130】
水素化反応終了後、ブロック共重合体は、例えば濾過、遠心分離等の方法により反応溶液から水素化触媒を除去した後、溶媒を直接乾燥により除去する方法、反応溶液を、ブロック共重合体にとっての貧溶媒中に注ぎ、凝固させる方法等によって回収できる。
【0131】
以上の方法により得られた本実施形態に係るブロック共重合体には、必要に応じて各種配合剤を配合することができる。ブロック共重合体に配合することができる配合剤は格別限定はないが、酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラーなどが挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明の好ましい実施形態の効果を損なわない範囲で適宜選択される。
【0132】
本発明の好ましい実施形態においては、ブロック共重合体に、上記配合剤の中でも、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および耐光安定剤を配合するのが好ましい。
【0133】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の好ましい実施形態の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本実施形態に係るブロック共重合体100重量部に対して好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部である。
【0134】
紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミディルメチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中でも、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミディルメチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールなどが耐熱性、低揮発性などの観点から好ましい。
【0135】
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本実施形態においては、レンズの透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALSと記す。)の中でも、THFを溶媒として用いたGPCにより測定したポリスチレン換算のMnが1000〜10000であるものが好ましく、2000〜5000であるものがより好ましく、2800〜3800であるものが特に好ましい。Mnが小さすぎると、該HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できなかったり、射出成形等の加熱溶融成形時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下する。また、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合に、レンズから揮発性成分がガスとなって発生する。逆にMnが大き過ぎると、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下し、耐光性改良の効果が低減する。したがって、本発明の好ましい実施形態においては、HALSのMnを上記範囲とすることにより加工安定性、低ガス発生性、透明性に優れたレンズが得られる。
【0136】
このようなHALSの具体例としては、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−〔4,6−ビス− {ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALSなどが挙げられる。
【0137】
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などのMnが2,000〜5,000のものが好ましい。
【0138】
本実施形態に係るブロック共重合体に対する上記紫外線吸収剤およびHALSの配合量は、重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.02〜15重量部、特に好ましくは0.05〜10重量部である。添加量が少なすぎると耐光性の改良効果が十分に得られず、屋外で長時間使用する場合等に着色が生じる。一方、HALSの配合量が多すぎると、その一部がガスとなって発生したり、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下する。
【0139】
また、本実施形態に係るブロック重合体に、最も低いガラス転移温度が30℃以下である軟質重合体を配合することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
【0140】
上記軟質重合体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などのオレフィン系軟質重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレンゴム、イソブチレン−スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体、イソプレン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体;ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどのアクリル系軟質重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系軟質重合体;天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
【0141】
上記軟質重合体の中でもジエン系軟質重合体が好ましく、特に該軟質重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械的強度、柔軟性、および分散性の点で優れる。軟質重合体の配合量は、化合物の種類に応じて異なるが、一般に、配合量が多すぎれば、ブロック共重合体のガラス転移温度や透明性が大きく低下し、レンズとして使用することができない。また配合量が少なすぎれば、高温高湿下において成形物の白濁を生じる場合がある。配合量は、ブロック共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.02〜5重量部、特に好ましくは0.05〜2重量部である。
【0142】
本発明の好ましい実施形態で用いるブロック共重合体に上記配合剤を配合してブロック共重合体組成物を形成する方法は、例えば、ミキサー、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機などでブロック共重合体を溶融状態にして配合剤と混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させ凝固する方法などが挙げられる。二軸混練機を用いる場合、混錬後に通常は溶融状態でストランド状に押し出し、ペレタイザーにてペレット状にカットして用いられることが多い。
【0143】
このようなブロック重合体としては、例えば、日本ゼオン社製ゼオネックス340R等の市販の樹脂を用いることができる。
【0144】
以上の材料から構成される対物レンズ7は、図2に示す通り、光ディスクDの情報の記録・再生時において半導体レーザ発振器2から出射された光束LBが入射する光学面71(以下「S1面71」という。)と、光束LBが対物レンズ7中を透過して光ディスクDに向けて出射する光学面72(以下「S2面72」という。)とを有している。
【0145】
S1面71は半導体レーザ発振器2側に配置された面であり、S2面72は光ディスクD側に配置された面である。光ディスクDに対する情報の記録・再生時において、波長380〜420nmの光束LB(好ましくは出射時の出力が60〜320mWである光束LB)が半導体レーザ発振器2から出射され対物レンズ7を透過するとき、S1面71では光束LBの最大ピーク強度が100mW/mm未満となり、S2面72では光束LBの最大ピーク強度が100〜2000mW/mmとなる。S2面72は主には光束LBが集光する集光領域73と非集光領域74とに区画され、S2面72のなかでも特に集光領域73において光束LBの最大ピーク強度が100〜2000mW/mmとなる。
【0146】
S1面71には機能膜80が設けられている。機能膜80は好ましくは反射防止膜である。
【0147】
機能膜80が反射防止膜で構成する場合には、誘電体の単層あるいは多層構成によるものを用いることができる。単層構成の場合、屈折率が低く、可視域での吸収がすくないSiO2膜が汎用される。このSiO2膜は、真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法などにより実用化されている。また、SiO2の単層反射防止膜では分光反射特性上の反射率をさらに低くすることが非常に困難であることから、TiO2、ZrO2、Ta2O5などの屈折率が高い膜と組み合わせた2層以上の多層膜構成が一般的に用いられる。
【0148】
対物レンズ7等のプラスチック光学素子は帯電しやすい欠点がある。この欠点を低減するためにさまざまな表面処理が行われる。例えば、帯電を防止するための導電性のある薄膜(例えばITO膜)を形成したり、界面活性剤の極薄膜を形成して表面の抵抗率を下げることが行われる。また、前記反射防止膜にも帯電防止効果があることは一般的に知られている。
【0149】
機能膜80は反射防止膜だけで構成されてもよいし、帯電防止膜だけで構成されてもよいし、反射防止膜と帯電防止膜とを積層した膜であってもよいし、これらを含む公知の機能膜(反射防止膜、帯電防止膜、防汚膜、防傷膜(ハードコート膜)等)であってもよく、金属元素(例えばTi元素,Zr元素,La元素,Ta元素,Ce元素,Hf元素,In元素,Sn元素,Si元素,Mg元素,Al元素など)を含む膜であればよい。
【0150】
これに対し、S2面72には上記のような機能膜は設けられておらず、S2面72は光ディスクDに対し露出した面となっている。
【0151】
本実施形態ではS2面72には機能膜を設けていないが、S2面72は少なくとも下記(A)の機能膜が形成されていなければよく、好ましくは下記(A),(B)の機能膜が形成されていないのがよく、最も好ましくは機能膜が全く形成されていないのがよい。逆に言えば、S2面には(B)の機能膜が形成されてもよいし、(A),(B)で列挙した元素以外の元素を含む機能膜が形成されてもよい。当該機能膜を形成する場合は、集光領域73と非集光領域74とに形成してもよいが、非集光領域74にのみ形成して集光領域73のS2面を露出させるのが好ましい。
【0152】
(A)Ti元素,Zr元素,La元素,Ta元素,Ce元素,Hf元素,In元素,Sn元素を含む機能膜
(B)Si元素,Mg元素,Al元素を含む機能膜
【0153】
以上の本実施形態によれば、光ディスクDの情報の記録・再生時において光束LBの最大ピーク強度が100〜2000mW/mmとなる対物レンズ7のS2面72には機能膜が設けられていないから、半導体レーザ発振器2から波長380〜420nmの光を出射して高い光強度で光ディスクDの情報の記録/再生を行った場合においても、高精度に記録/再生を行うことが可能であり、対物レンズ7自体の光学性能の劣化も抑制することができる。
【0154】
なお、本発明の好ましい実施例として使用可能な光ピックアップ装置用の光学素子としては、例えばコリメータや対物レンズを含むレンズ(上記参照)のみならず、ビームシェーパ、プリズム、回折格子光学素子(回折レンズ、回折プリズム、回折板、色収差補正素子等)、光学フィルタ(空間ローパスフィルタ、波長バンドパスフィルタ、波長ハイパスフィルタ等)、偏光フィルタ(検光子、旋光子、偏光分離プリズム等)、位相フィルタ(位相板、ホログラム等)が挙げられるが、以上に限定されない。特に、当該光学素子は、集光度が大きく、出射側の光強度が強くなる対物レンズであるのが好ましい。
【実施例1】
【0155】
<サンプル(テスト用樹脂基材)の作製>
始めに、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体(日本ゼオン社製ゼオネックス340R)を射出成形することにより、直径11mm、厚さ3mmの平板状テスト用樹脂基材を作製した。その後、各基材に対し真空蒸着法又はスパッタ法で反射防止膜、帯電防止膜(主には表1中のITOである。)を表1の通りに形成することによって、実施例1〜5,比較例1〜10のサンプルを作製した。そして実施例1〜5,比較例1〜10の各サンプルについて、レーザ光照射試験、光吸収量測定、表面粗さ測定を行い、実用性を評価した。
【0156】
<レーザ光照射試験>
テストピースサンプル(実施例1〜5,比較例1〜10)に対し、405nmの半導体レーザの光を、光学面(光出射面)での光のピーク強度が表1に記載したピーク強度となるように集光して照射を2000時間行った。光照射中、サンプルを85℃、相対湿度5%の雰囲気下で保持した。
【0157】
<光吸収量測定>
各サンプルに対し、波長λ=405nmの光束を入射させ、レーザ光照射試験前後の透過率Tを分光光度計(株式会社日立製作所製、製品名UP−4000)で計測し、光吸収量(%)を、(試験前のT)−(試験後のT)の計算式に準じて算出した。その結果、光吸収量が0.5%未満であるものを「◎」とし、光吸収量が0.5%以上2.0%未満であるものを「○」とし、光吸収量が2.0%以上5.0%未満であるものを「△」とし、光吸収量が5%以上であるものを「×」として、それぞれ評価を行った。
【0158】
<表面粗さ測定>
表面粗さ計を用いて各サンプルの表面に相当する面の面形状変化量を測定し、評価した。その結果、面形状変化量が0.05μm未満であるものを「◎」とし、面形状変化量が0.05μm以上0.1μm未満であるものを「○」とし、面形状変化量が0.1μm以上0.2μm未満であるものを「△」とし、面形状変化量が0.2μm以上であるものを「×」として、それぞれ評価を行った。
【0159】
<実用レベル評価>
光吸収量測定と表面粗さ測定の項目が(◎,◎)又は(◎,○)の組み合わせで構成されている場合は「◎(実用レベルをはるかに上回っている)」とし、各項目が(○,○)又は(△,◎)の組み合わせで構成されている場合は「○(実用レベルを上回っている)」とし、各項目が(△,△)又は(△,○)の組み合わせで構成されている場合は「△(実用レベルに達している)」とし、各項目に1つでも×がある場合×(実用レベルをはるかに下回っている)として、評価を行った。
【0160】
【表1】

【0161】
なお、表1中、実施例5,比較例2〜10のサンプルにおいては、膜を2層構造としており、「/」で仕切った材料のうち、左側の材料が樹脂に直に形成した膜材料であり、右側の材料が左側の膜材料上に形成した膜材料である。例えば、実施例5では、「Al」が樹脂に直に形成した膜材料であり、「SiO」がAl上に形成した膜材料である。
また、比較例6の膜構成材料の「OA600」はTa,TiOの混合物(キャノンオプトロン製)を、比較例9の膜構成材料の「H4」はLaTiO(メルク(株)製サブスタンスH4パーチナル)を示している。
【0162】
表1に示す通り、実施例1〜3と実施例4,5と比較例1〜10との各サンプルを比較すると、光の出射面での最大ピーク強度が100〜2000mW/mmであってその出射面に機能膜を設けない場合が最良であり(実施例1〜3)、光の出射面に機能膜を設けた場合であってもSi元素,Al元素を含む膜であれば良好である(実施例4,5)のがわかった。
【実施例2】
【0163】
<サンプルの作製>
スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体(日本ゼオン社製ゼオネックス340R)を射出成形することにより、NA0.85、入射瞳径φ3.7mm、軸上厚2.62mmのテスト用レンズを作製した。そのレンズに対し、真空蒸着法又はスパッタ法で表2,3に示す通りに反射防止膜(1),(2)を形成することによって、実施例1,2、比較例1〜3のサンプルを作製した。そして各サンプルについて、透過率測定を行うとともに、レーザ光照射試験後に表面粗さ測定を行い、各サンプルを評価した。
【0164】
なお、詳しくは反射防止膜(1),(2)は表3に示す通りの膜構成を有している。第4層の膜がレンズに直に形成した膜であり、その膜上に第1〜3層の膜を第3層,第2層,第1層の順序で積層している。反射防止膜(1)の波長と反射率との概略的な特性は図3に、反射防止膜(2)の波長と反射率との概略的な特性は図4に示した。
【0165】
<透過率測定>
各サンプルに対し、波長λ=405nmの光束を入射させ、レーザ光照射試験前後の透過率Tを分光光度計(株式会社日立製作所製、製品名UP−4000)で計測した。そして(試験後のT)/(試験前のT)の計算式に準じて各サンプルの透過率(%)を算出した。
【0166】
<レーザ光照射試験>
各サンプルに対し、波長λ=405nmの半導体レーザ光を、S1面(光源側)のピーク強度が50mW/mmと、S2面(ディスク側)のピーク強度が200mW/mmとなるように、2000時間照射を行った。光照射中のサンプルは85℃、相対湿度5%の雰囲気下で保持した。
【0167】
<表面粗さ測定>
表面粗さ計を用いて各サンプルのS2面の表面の面形状変化量を測定し、評価した。その結果、面形状変化量が0.05μm未満であるものを「◎」とし、面形状変化量が0.05μm以上0.1μm未満であるものを「○」とし、面形状変化量が0.1μm以上0.2μm未満であるものを「△」とし、面形状変化量が0.2μm以上であるものを「×」として、それぞれ評価を行った。
【0168】
【表2】

【0169】
【表3】

【0170】
表2,3から、透過率は比較例1,2>実施例1,2>比較例3の順番で優れているが、レーザ光照射試験の結果から、実用に際してはS1面に反射防止膜を設けてS2面には反射防止膜を設けない実施例1,2が優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明の好ましい実施形態で使用される光ディスク用のピックアップ装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態で使用される対物レンズの概略構成を示す断面図である。
【図3】本実施例に係る反射防止膜(1)の波長と反射率との特性を示す概略図である。
【図4】本実施例に係る反射防止膜(2)の波長と反射率との特性を示す概略図である。
【符号の説明】
【0172】
D 光ディスク
保護基板
情報記録面
100 光情報記録再生装置
1 光ピックアップ装置
2 半導体レーザ発振器
3 コリメータ
4 ビームスプリッタ
5 1/4λ波長板
6 絞り
7 対物レンズ
8 センサーレンズ群
9 2次元アクチュエータ
10 駆動装置
20 光検出器
LB 光束
71 S1面
72 S2面
73 集光領域
74 非集光領域
80 機能膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長380nm〜420nmのレーザ光源と、前記レーザ光源から出射される光束を記録媒体の情報記録面に集光させる少なくとも一つの光学素子を含む集光光学系とを有し、前記光束が前記光学系を透過する際、前記光学素子の少なくとも一つの光学面において前記光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光ピックアップ装置において、
前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、Ti元素、Zr元素、La元素、Ta元素、Ce元素、Hf元素、In元素、或いはSn元素を含有する機能膜を設けず、
前記光学素子の基材が、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(2)で表される繰り返し単位〔2〕または/および下記式(3)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有するブロック共重合体からなることを特徴とする光ピックアップ装置。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2−R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。)
【化2】

(式(2)中、R13は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【化3】

(式(3)中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、Si元素、Mg元素、或いはAl元素を含有する機能膜を設けないことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、金属元素を含有する機能膜を設けないことを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記光学素子が対物レンズであり、前記透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面が、該対物レンズの前記記録媒体側の光学面であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記対物レンズの光源側の光学面は、前記透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm未満であり、金属元素を有する機能膜を設けることを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記金属元素を有する機能膜が反射防止膜であることを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記金属元素を有する機能膜が帯電防止膜であることを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記光源の出射時の出力が60mW〜320mWであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
少なくとも、請求項1〜8の何れか1項に記載の光ピックアップ装置、前記記録媒体を回転駆動する駆動装置、前記記録媒体の情報記録面で反射された光束を受光する光検出器とを有することを特徴とする光情報再生装置。
【請求項10】
少なくとも、請求項1〜8の何れか1項に記載の光ピックアップ装置、前記記録媒体を回転駆動する駆動装置、前記記録媒体の情報記録面で反射された光束を受光する光検出器とを有することを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項11】
波長380nm〜420nmのレーザ光源から出射される光束を記録媒体の情報記録面に集光させる光ピックアップ装置に用いられ、前記光束が透過する際に少なくとも一つの光学面において前記光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光ピックアップ装置用の光学素子において、
前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、Ti元素、Zr元素、La元素、Ta元素、Ce元素、Hf元素、In元素、或いはSn元素を含む機能膜を設けず、
前記光学素子の基材が、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(2)で表される繰り返し単位〔2〕または/および下記式(3)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有するブロック共重合体からなることを特徴とする光ピックアップ装置用光学素子。
【化4】

(式(1)中、R1は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2−R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。)
【化5】

(式(2)中、R13は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【化6】

(式中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項12】
前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、Si元素、Mg元素、或いはAl元素を含む機能膜を設けないことを特徴とする請求項11に記載の光ピックアップ装置用光学素子。
【請求項13】
前記光学素子の光学面のうち、少なくとも、透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面には、金属元素を含む機能膜を設けないことを特徴とする請求項12に記載の光ピックアップ装置用光学素子。
【請求項14】
請求項11〜13の何れか1項に記載の光学素子を含む光ピックアップ装置用集光光学系。
【請求項15】
前記光学素子が対物レンズであり、前記透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm〜2000mW/mmとなる光学面が、該対物レンズの前記記録媒体側の光学面であることを特徴とする請求項14に記載の光ピックアップ装置用集光光学系。
【請求項16】
前記対物レンズの光源側の光学面は、前記透過する光束の最大ピーク強度が100mW/mm未満であり、金属元素を有する機能膜を設けることを特徴とする請求項15に記載の光ピックアップ装置用集光光学系。
【請求項17】
前記金属元素を有する機能膜が反射防止膜であることを特徴とする請求項16に記載の光ピックアップ装置用集光光学系。
【請求項18】
前記金属元素を有する機能膜が帯電防止膜であることを特徴とする請求項16に記載の光ピックアップ装置用集光光学系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−37666(P2009−37666A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199148(P2007−199148)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】