説明

光ピックアップ装置およびその製造方法

【課題】フレキシブル配線基板と接続されるアクチュエータの位置調整を容易とする光ピックアップ装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明では、ハウジング28の一主面に段差部48を設けている。そして、アクチュエータ36と接続されたフレキシブル配線基板38の途中部分に曲折部50を設け、この曲折部50をハウジング28の段差部28に密着させている。フレキシブル配線基板38に曲折部50を設けることにより、位置調整のためにアクチュエータ36を移動させても、この移動に伴いフレキシブル配線基板38に応力が残存することが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置およびその製造方法に関する。特に本発明は、フレキシブル配線基板を経由してアクチュエータが接続される光ピックアップ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置は、発光素子から放射される所定の波長のレーザー光を光ディスクに照射し、光ディスクの情報記録層で反射したレーザー光を受光素子で検出する機能を備えている(特許文献1)。このことにより、光ディスクに対して、情報の読取動作または書込動作が行われる。
【0003】
また、光ピックアップ装置では、光ディスクに対して正確にレーザー光を照射させるために、光ディスクの情報記録層で反射したレーザー光を検出することにより、トラッキングサーボおよびフォーカスサーボを行っている。ここで、フォーカスサーボとは、光ディスクの情報記録層に正確にレーザー光を合焦させるための調整機構である。また、トラッキングサーボとは、光ディスクのトラックにレーザー光を追従させるための調整機構である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−216436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなサーボ機構は、アクチュエータに含まれる制御コイルに制御電圧を印加することにより行われるので、アクチュエータは外部と電気的に接続される必要がある。アクチュエータはフレキシブル配線基板を経由して接続される。
【0006】
一方、光ピックアップ装置の製造方法では、アクチュエータをハウジングに収納した後に、スキュー調整が行われる。このスキュー調整では、アクチュエータが支持する対物レンズにより合焦されるレーザー光が、所定の位置となるように調整される。
【0007】
しかしながら、スキュー調整の工程では、アクチュエータには既にフレキシブル配線基板が固着されている。また、フレキシブル配線基板はアクチュエータに対して面的に固着されている。従って、スキュー調整を行うべくアクチュエータを移動させようとすると、アクチュエータに接続されたフレキシブル配線基板により、アクチュエータの移動が阻害されるおそれがあった。更に、フレキシブル配線基板が捻れてしまう問題もあった。
【0008】
また、アクチュエータの移動により、フレキシブル配線基板に曲げ応力や引張応力を与えたまま固着される場合もある。この応力が大きいと、使用状況下に於いて、温度変化、湿度変化や外部衝撃が光ピックアップ装置に作用した場合、フレキシブル配線基板が接続部から分離してしまう恐れがあった。
【0009】
本発明はこの様な問題点を鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、フレキシブル配線基板に過大な応力が残存することを防止する光ピックアップ装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光ピックアップ装置は、第1主面と第2主面とを有するハウジングと、対物レンズを移動可能に保持するアクチュエータと、前記アクチュエータと電気的に接続されたフレキシブル配線基板と、を備え、前記ハウジングの前記第2主面を段差形状にした段差部に、前記フレキシブル配線基板の途中部分を曲折した曲折部を配置することを特徴とする。
【0011】
本発明は、情報記録媒体にレーザー光を放射し、前記情報記録媒体で反射した前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置の製造方法であり、第1主面と第2主面とを有するハウジングを用意し、対物レンズを移動可能に保持するアクチュエータを、フレキシブル配線基板に接続された状態で、前記ハウジングに組み込む工程と、前記対物レンズに前記レーザー光を放射させつつ、前記アクチュエータの位置を調整する工程と、を備え、前記組み込む工程では、前記フレキシブル配線基板の途中部分に設けた曲折部を、前記ハウジングの前記第2主面に設けた段差部に配置し、前記位置を調整する工程では、前記アクチュエータの位置調整に伴い、フレキシブル配線基板の前記曲折部が変形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アクチュエータと接続されるフレキシブル配線基板に、階段状の曲折部を設けている。従って、スキュー調整の為にアクチュエータを移動・傾斜させても、これに伴いフレキシブル配線基板の曲折部が変形するので、アクチュエータの移動等がフレキシブル配線基板により阻害されることが無い。更には、アクチュエータの調整のための移動により、フレキシブル配線基板に過大な曲げ応力や引張応力が残存することが抑制されるので、使用状況下におけるフレキシブル配線基板の断線等が防止される。
【0013】
更には、フレキシブル配線基板の曲折部は、ハウジングの段差部と密着しているので、曲折部が外部に突出することが無い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光ピックアップ装置を示す図であり、(A)は対物レンズが露出する面を上面にした光ピックアップ装置を示す斜視図であり、(B)は上下反転させた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の光ピックアップ装置を示す図であり、(A)はアクチュエータと接続されるフレキシブル配線基板が配置される部分を拡大して示す斜視図であり、(B)はハウジングの段差部を示す斜視図である。
【図3】本発明の光ピックアップ装置に用いられるフレキシブル配線基板を示す図であり、(A)は展開図であり、(B)は曲折されてハウジングに組み込まれる状態のフレキシブル配線基板を示す斜視図である。
【図4】本発明の光ピックアップ装置に組み込まれる光学素子を示す図である。
【図5】本発明の光ピックアップ装置の製造方法に於いて、アクチュエータがハウジングに組み込まれる状態を示す図である。
【図6】本発明の光ピックアップ装置の製造方法に於いて、スキュー調整の工程を示す図であり、(A)はフレキシブル配線基板を示す図であり、(B)は位置調整されるアクチュエータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、本形態の光ピックアップ装置10の構成を説明する。図1(A)は対物レンズ33が露出する光ピックアップ装置10の主面を示す斜視図であり、図1(B)はその反対面のハウジング28を示す斜視図である。尚、以下の説明では、対物レンズ33が配置される主面を上面と称し、上面に対向する主面を下面と称する。
【0016】
光ピックアップ装置10は、BD(Blu−ray Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)またはCD(Compact Disk)規格のレーザー光を、光ディスク(情報記録媒体)の情報記録層に合焦させ、この情報記録層からの反射光を受光して電気信号に変換する機能を備えている。光ピックアップ装置10は、例えば、BD用の発光チップ、DVD用およびCD用の発光チップを内蔵している。
【0017】
光ピックアップ装置10から放射されるレーザー光としては、BD規格のレーザー光(青紫色波長帯400nm〜420nm)、DVD規格のレーザー光(赤色波長帯645nm〜675nm)およびCD規格のレーザー光(赤外波長帯765nm〜805nm)である。ここで、光ピックアップ装置10は必ずしも3種類の規格のレーザー光に対応する必要はなく、1つまたは2つの規格のレーザー光に対応するタイプでも良い。
【0018】
光ピックアップ装置10は、樹脂材料や金属材料から成るハウジング28と、このハウジング28に内蔵された各種光学素子と、光学素子と電気的に接続されるフレキシブル配線基板を備えている。
【0019】
ハウジング28の上面には、対物レンズ33を移動可能に保持するアクチュエータ36が配置さる。更に、ハウジング28の上面には、フレキシブル配線基板26が折り畳まれた状態で固定されている。また、ハウジング28の内部および側面には、各種光学素子が配置されている。尚、アクチュエータ36以外の領域のハウジング28の上面が、ステンレス等の金属板から成るカバーにより被覆されても良い。
【0020】
ここで、ハウジング28に備えられる光学素子は2種類に大別できる。具体的には、上記したレーザー光の発光および受光等を行うために、外部と電気的に接続される第1光学素子と、レーザー光の透過または反射を行うハーフミラー等の第2光学素子に大別される。本形態にてフレキシブル配線基板26を経由して電気的に接続されるのは、第1光学素子であり、具体的には、上記したレーザー光を放射するLD(laser diode)、レーザー光を受光するPDIC(Photo Detector IC)、アクチュエータ36等が該当する。更に、ノイズ対策等の為にフレキシブル配線基板26に固着されるチップ抵抗や制御素子を内蔵したパッケージ等が第1光学素子に含まれて良い。ハウジング28に内蔵される光学素子の詳細は図4を参照して後述する。
【0021】
ハウジング28は、射出成形で一体的に形成された樹脂材料や金属材料(例えばマグネシム)から成る。また、ハウジング28の両端部分には、ガイド孔30とガイド溝32が設けられている。使用状況下に於いては、ガイド孔30にはガイド軸が挿通され、ガイド溝32には別のガイド軸が係合される。そして、光ピックアップ装置10は、これらのガイド軸に沿って、ディスクの径方向に移動する。
【0022】
本形態では、3つのフレキシブル配線基板が用いられている。具体的には、単層構造のフレキシブル配線基板26(図1(A)参照)と、多層配線構造を備えたフレキシブル配線基板34(図1(A)参照)と、アクチュエータ36との接続に用いられるフレキシブル配線基板38(図1(B)参照)が適用されている。
【0023】
フレキシブル配線基板26は、光ピックアップ装置10に内蔵された第1光学素子を外部と接続する。更に、フレキシブル配線基板26は、ハウジング28に備えられた第1光学素子同士を電気的に接続する機能を備えている。また、フレキシブル配線基板26は、複数回の曲折加工が施されて畳まれた状態で、ハウジング28の上面部分に固定されている。フレキシブル配線基板26は、光ピックアップ装置10自体を外部と接続する機能を備えているので、メイン基板と称される場合もある。
【0024】
一方、フレキシブル配線基板34は、第1光学素子の1つであるDVD、CD用LDと、このLDを制御する制御素子を内蔵するパッケージ22とを接続し、基材の両主面に配線パターンが形成されている。そして、フレキシブル配線基板34の両面に形成される配線パターンは、フレキシブル配線基板26に形成される配線パターンよりも太く形成されている。このことにより、十分な応答特性が得られると共にノイズが軽減され、DVD、CD用LDにより安定して書き込み動作を行うことができる。
【0025】
フレキシブル配線基板38は、図1(B)に示すように、アクチュエータ36とフレキシブル配線基板26とを接続するための基板であり、ハウジング28の下面を窪ませた凹状領域46に配置されている。具体的には、アクチュエータ36が備える制御用コイルが、フレキシブル配線基板38の配線パターンと接続される。
【0026】
図2を参照して、アクチュエータ36と接続されるフレキシブル配線基板38を説明する。図2(A)はフレキシブル配線基板38が配置される箇所を拡大して示す斜視図であり、図2(B)はこの部分のハウジング28を示す斜視図である。
【0027】
図2(A)を参照して、本形態の光ピックアップ装置はノート型パソコンの光学ドライブに適用可能な薄型のものである。従って、光ピックアップ装置の外形を構成するハウジング28も非常に薄型である。このことから、光学部品の中でも比較的厚いアクチュエータ36の一部は、ハウジング28の底部から露出している。
【0028】
また、アクチュエータ36は、印加される電圧に応じて対物レンズの位置を調整するため、フレキシブル配線基板38を経由して外部と電気的に接続されている。そして本形態では、アクチュエータ36を接続するフレキシブル配線基板38は、ハウジング28の下面に配置されている。
【0029】
フレキシブル配線基板38は、外部と接続されるフレキシブル配線基板26とは別体である。具体的には、アクチュエータ36はフレキシブル配線基板に接続された状態でハウジング28に組み込む必要があるので、アクチュエータ36はフレキシブル配線基板に接続された状態で用意される必要がある。しかしながら、メイン基板であるフレキシブル配線基板26は比較的複雑な形状を備えた大型のものである。このことから、フレキシブル配線基板26に接続された状態でアクチュエータ36を保管すると、アクチュエータ36が備える細長いワイヤが変形する恐れがある。そこで、本形態では、比較的小型で単純な形状を備えたフレキシブル配線基板38をアクチュエータ36に接続した状態で保管している。このようにすることで、保管時や搬送時に於いてアクチュエータ36が備える細長いワイヤが破損することが防止される。
【0030】
フレキシブル配線基板38と、フレキシブル配線基板26とは、接続部40にて接続される。この接続部40では、両フレキシブルシートに備えられる配線パターン同士が半田接続される。
【0031】
フレキシブル配線基板38は、ハウジング28の下面を部分的に厚み方向に窪ませた凹状領域46に収納されている。このようにすることで、フレキシブル配線基板38の外部への突出が防止され、光ピックアップ装置の外形形状が小型になる。
【0032】
更に、フレキシブル配線基板38の途中部分を階段状に曲折させて曲折部50が設けられている。このようにすることで、アクチュエータ36の調整に伴いフレキシブル配線基板38に応力が残存することが抑制される。具体的には、アクチュエータ36の調整は、アクチュエータ36をハウジング28に組み込み、接続部40でフレキシブル配線基板同士を接続した後に行われる。従って、仮に、フレキシブル配線基板38が平らな状態であれば、アクチュエータ36を調整のために移動させると、フレキシブル配線基板38に曲げ応力や引張応力が残存したまま製品となる。
【0033】
この対策として、フレキシブル配線基板38の途中部分に曲折部50を設けている。このようにすることで、フレキシブル配線基板38が固着されたアクチュエータ36を調整の為に移動させても、この移動は曲折部50が変形することにより吸収される。結果的に、フレキシブル配線基板38に応力が残存することが抑制される。更には、アクチュエータ36の調子がスムーズになる。
【0034】
ハウジング28の下面には、フレキシブル配線基板38の曲折部50の形状に即した段差部48が設けられている(図2(B)参照)。そして、フレキシブル配線基板の曲折部50は、この段差部48に当接している。このようにすることで、曲折部50が外部に突出することが防止されている。
【0035】
凹状領域46の側壁を部分的に突起させることにより突起部42が設けられており、この突起部42に対応する箇所のフレキシブル配線基板38に、切り欠き部44が設けられている。従って、フレキシブル配線基板38の切り欠き部44を、ハウジング28の突起部42に嵌合させることにより、ハウジング28の所定箇所に、フレキシブル配線基板38が配置される。ここでは、一組の突起部42および切り欠き部44が示されているが、これらが複数個設けられても良い。
【0036】
図3を参照して、アクチュエータと接続されるフレキシブル配線基板38の構成を説明する。図3(A)はフレキシブル配線基板38を展開して示す平面図であり、図3(B)は曲折されてハウジング28に組み込まれる状態のフレキシブル配線基板38を示す斜視図である。
【0037】
これらの図を参照して、フレキシブル配線基板38は、アクチュエータと接続される接続部54と、途中部分が180度曲折される湾曲部60と、湾曲部60と連続する配線部56と、階段状に曲折される曲折部50と、曲折部50と連続する配線部58と、フレキシブル配線基板26と接続される接続部52とを備えている。
【0038】
接続部54、52では、半田接続のために配線パターンから成るパッドが露出している。また、アクチュエータと接続される接続部54の端部はU字状に切り欠かれているが、これは、アクチュエータの側面に備えられるネジを避けるためである。また、接続部54に配置されたパッドは、アクチュエータの側面に設けられた接続パッドと半田を介して接続される。
【0039】
湾曲部60は、その途中部分が180度曲折加工される。このことにより、フレキシブル配線基板38が接続されるアクチュエータの移動がよりスムーズとなる。
【0040】
曲折部50の両端部では、フレキシブル配線基板38が約90度折り曲げられることで、階段状の曲折形状が実現される。
【0041】
配線部58の側辺に設けられた2つの切り欠き部44が、ハウジングの突起部に嵌合することにより、ハウジングの所定箇所にフレキシブル配線基板38が配置される。また、使用状況下のフレキシブル配線基板38の移動や離脱も、切り欠き部44がハウジングの突起部に嵌合することで防止される。
【0042】
図3(B)に示すようなフレキシブル配線基板38の曲折加工は、金型による押圧加工にて行われる。
【0043】
ここで、フレキシブル配線基板38は、単層の基板でも良いし多層の基板でも良い。単層の基板の場合は、厚みが10μm程度のポリイミド等の樹脂材料から成る基材の一主面のみに、厚みが10μm程度の銅からなる配線パターンが設けられる。更に、基材の一主面および配線パターンは、厚みが10μm程度のポリイミドから成る被覆層により被覆される。
【0044】
次に、図4を参照して、光ピックアップ装置10のハウジングに収納される光学素子を説明する。
【0045】
光ピックアップ装置10の具体的な構成は、対物レンズ82、84と、立ち上げミラー86、88と、1/4波長板90と、反射板92、94と、コリメートレンズ96と、プリズム98、100と、アナモレンズ102と、PDIC104と、回折格子110、112と、レーザー装置106、108とを備えている。
【0046】
本形態では、1つの光路を3つの規格のレーザー光で共有している。このことにより、3波長対応の光ピックアップ装置10に必要とされる部品点数が削減される。従って、低コストが実現されると共に、光ピックアップ装置10全体の小型化にも寄与する。
【0047】
レーザー装置108は、BD規格のディスク80に照射されるレーザー光を放射する発光素子をパッケージ化したものである。
【0048】
レーザー装置106は、DVD規格およびCD規格のディスク80に照射されるレーザー光を放射する発光素子のパッケージである。
【0049】
ここで、レーザー装置106、108は、所謂CANタイプのパッケージでも良いし、リードフレーム型のパッケージでも良い。
【0050】
回折格子110は、レーザー装置106から放射されるレーザー光(DVD規格またはCD規格)を0次回折光、+1次回折光及び−1次回折光に分離する機能を有する。
【0051】
同様に、回折格子112は、レーザー装置108から放射されるBD規格のレーザー光を、0次回折光、+1次回折光及び−1次回折光に分離する機能を有する。
【0052】
アナモレンズ102は、通過するレーザー光に収差を付与するためのレンズであり、アナモフィックレンズとも称されている。
【0053】
PDIC104は、光検出器として機能する信号検出用のフォトダイオード集積回路素子が内蔵されており、BD規格、DVD規格またはCD規格のレーザー光を受光して情報信号成分を含む受光出力を発生する。更に、PDIC104は、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに用いられるサーボ信号成分を発生する。
【0054】
プリズム100は、レーザー装置108から放射されるBD規格のレーザー光に対して、偏光選択性を有する反射面を内蔵している。レーザー装置108から放射されたS方向の直線偏光光であるレーザー光は、プリズム100の反射面により+X方向に反射される。また、ディスク80により反射された復路の戻り光は、1/4波長板90の作用によりP方向の直線偏光光とされており、プリズム100の反射面を−X方向に透過する。
【0055】
プリズム98は、波長選択性および偏光選択性を有する反射面を内蔵している。具体的には、プリズム98は、レーザー装置108から放射されるBD規格のレーザー光を偏向方向に関わらず透過させる。一方、レーザー装置106から放射されるDVD規格およびCD規格のレーザー光は、その偏光方向により、プリズム98の反射面で反射または透過する。具体的には、レーザー装置106からはDVD規格またはCD規格のレーザー光が放射され、これらのレーザー光はS方向の直線偏光光である。そして、レーザー装置106から+Y方向に放射されたレーザー光は、プリズム98の反射面にて+X方向に反射された後に、各種光学素子を介してディスク80に至る。ディスク80の情報記録層にて反射された戻り光であるレーザー光は、1/4波長板90の作用でP方向の直線偏光光に変換されており、プリズム98の反射面を+X方向から−X方向に透過する。
【0056】
コリメートレンズ96は、レーザー装置106、108から放射されたレーザー光を平行光にするためのレンズである。
【0057】
反射板92、94は、レーザー装置106、108から放射されたレーザー光を所定方向に反射するためのものである。ここで、反射板92、94がレーザー光を反射する反射率は100%でも良いし、プリズム98、100の機能を補うために特定の波長や偏向方向のレーザー光の反射率を調節しても良い。
【0058】
1/4波長板90は、入射するレーザー光に位相差を生じさせる光学素子である。従って、レーザー装置106、108から放射されたS方向の直線偏光光のレーザー光が、1/4波長板90を通過すると、円偏光光のレーザー光に変換される。更に、円偏光光とされたレーザー光が、ディスク80の情報記録層にて反射されて再び1/4波長板90を通過すると、P方向の直線偏光光のレーザー光に変換される。
【0059】
立ち上げミラー88は、周波数選択性を有する反射面を備えており、DVD、CD規格のレーザー光を+Y方向に反射する一方、BD規格のレーザー光を−X方向に透過させる。
【0060】
立ち上げミラー86は、立ち上げミラー88を透過したBD規格のレーザー光を、+Y方向に反射させる。
【0061】
対物レンズ84は、立ち上げミラー88により反射されたDVD規格およびCD規格のレーザー光を、ディスク80の情報記録層に合焦する。
【0062】
対物レンズ82は、立ち上げミラー86により反射されたBD規格のレーザー光を、ディスク80の情報記録層に合唱する。
【0063】
次に、上記のように構成された光ピックアップ装置10の動作を説明する。読み取り動作と書き込み動作は基本的に同じであり、書き込み動作は読み取り動作よりも強度が高いレーザー光が用いられる。
【0064】
先ず、DVD規格およびCD規格のレーザー光の光路を説明する。レーザー装置106から放射されたレーザー光は、回折格子110の回折作用により、0次回折光、+1次回折光及び−1次回折光に分離される。ここで、レーザー装置106から放射されるレーザー光は、S方向の直線偏光光である。
【0065】
そして、分離されたレーザー光は、プリズム98の反射面にて反射した後に、反射板94、92にて反射されて1/4波長板を通過することにより、直線偏光光から円偏光光に変換される。
【0066】
その後、円偏光光とされたレーザー光は立ち上げミラー88にて反射された後に、対物レンズ84によりディスク80の情報記録層に合焦される。
【0067】
ディスク80の情報記録層により反射された戻り光であるレーザー光は、対物レンズ84を通過した後に立ち上げミラー88にて反射されて1/4波長板を通過する。このことにより円偏光光であるレーザー光は、P方向の直線偏光光に変換される。
【0068】
偏光方向が変換されたレーザー光は、反射板92、94で反射された後に、コリメートレンズ96を通過してプリズム98、100を透過し、アナモレンズ102にて収差が付与された後に、PDIC104に至る。
【0069】
PDIC104では、情報が読み出されるとともに、読み出された情報に基づいてフォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行われる。
【0070】
次に、BD規格のレーザー光の光路を説明する。
【0071】
先ず、レーザー装置108から、S方向の直線偏光光であるBD規格のレーザー光が放射される。放射されたBD規格のレーザー光は、回折格子112にて3つのレーザー光に分離された後に、プリズム100の反射面にて反射される。反射されたレーザー光は、プリズム98を透過した後にコリメートレンズ96にて平行光に変換され、反射板94、92にて反射されて1/4波長板90に至る。
【0072】
1/4波長板90で直線偏光光から円偏光光に変換されたレーザー光は、立ち上げミラー88を透過して、立ち上げミラー86の反射面で+Y方向の反射にされる。そして、レーザー光は、対物レンズ82によりディスク80の情報記録層に合焦される。
【0073】
ディスク80の情報記録層にて反射された戻り光のレーザー光は、対物レンズ82を通過して立ち上げミラー86にて反射された後に、立ち上げミラー88を透過して1/4波長板90に入射する。1/4波長板90では、円偏光光のレーザー光が、P方向の直線偏光光のレーザー光に変換される。その後、P方向の直線偏光光であるレーザー光は、反射板92、94で反射されてコリメートレンズ96を透過した後に、プリズム98に至る。
【0074】
P方向の直線偏光光であるBD規格のレーザー光は、プリズム98およびプリズム100を透過して、アナモレンズ102にて収差が付与された後に、PDIC104に照射される。そして、PDIC104にて、情報が読み出されるとともに、読み出された情報に基づいてフォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行われる。
【0075】
本形態の形態では、フレキシブル配線基板により上記した各光学素子が接続される。具体的には、上記した光学素子の内、レーザー装置108およびPDIC104が、図1に示した単層のフレキシブル配線基板26により接続される。そして、レーザー装置106は、書き込み動作の為に大電流を流す必要があることから、幅広のパターンが両面に設けられたフレキシブル配線基板34を経由して接続される。更には、上記した対物レンズ82、84はアクチュエータにより移動可能な状態で保持されるが、このアクチュエータは図2に示すフレキシブル配線基板38を経由して接続される。
【0076】
図5および図6を参照して、上記した構成の光ピックアップ装置の製造方法を説明する。
【0077】
図5を参照して、先ず、光ピックアップ装置を構成する各光学部品を、ハウジング28に組み込む。具体的には、図4にて説明した各種光学素子を、ハウジング28に組み込む。
【0078】
ここで、電気的に接続される光学素子(図4に示したレーザー装置106、108、PDIC104)は、フレキシブル配線基板26またはフレキシブル配線基板34にて接続された状態でハウジング28に備えられる。更に、フレキシブル配線基板26には、これらの光学素子を制御する素子や、特性を調整するための素子(抵抗、コンデンサ、コイル)等が半田を介して面接続されている。また、フレキシブル配線基板26は、上記したように単層の配線構造であり、曲折部により複雑の曲折された状態でハウジングに備えられている。尚、電気的に接続されない他の光学素子(図4に示すプリズム100等)は、絶縁性の接着材を介してハウジング28内部の所定箇所に固着されている。
【0079】
一方、アクチュエータ36は、対物レンズ33を移動させるためのコイルに電圧を印加する必要があるので、フレキシブル配線基板38を経由して外部と接続される。また、フレキシブル配線基板38が固着されるアクチュエータ36の側面は、ハウジング28の側壁内面と密着する箇所に配置される。従って、アクチュエータ36をハウジング28の収納領域62に収納した後に、アクチュエータ36にフレキシブル配線基板38を接続することは困難である。
【0080】
このことから、アクチュエータ36は予めフレキシブル配線基板38に接続された状態で、収納領域62に収納される。また、フレキシブル配線基板38は、ハウジング28の収納領域62を開口した開口部29から、ハウジング28の下面側に引き出される。更に、アクチュエータ36の底面は、ハウジング28の開口部29から部分的に外部に露出する。
【0081】
図6(A)を参照して、次に、ハウジング28の下面に引き出されたフレキシブル配線基板38を、接続部40にて、フレキシブル配線基板26と接続する。具体的には、フレキシブル配線基板38のパッドと、フレキシブル配線基板26のパッドとを、半田を介して接続する。
【0082】
本工程では、ハウジング28の凹状領域46にフレキシブル配線基板38が収納されることにより、厚み方向へのフレキシブル配線基板38の突出が抑制される。更に、フレキシブル配線基板38の曲折部50は、ハウジング28の下面に設けた段差部48に配置される。また、フレキシブル配線基板38の切り欠き部44を、ハウジング28に設けた突起部42に嵌合させることにより、ハウジング28の所定箇所にフレキシブル配線基板38が配置される。
【0083】
図6(B)を参照して、次に、スキュー調整を行う。ここで、スキュー調整とは、対物レンズ76により合焦されるレーザー光の出射光と入射光を、ディスクに対して垂直にすることである。
【0084】
アクチュエータ36の構造を説明する。アクチュエータ36は、全体を機械的に支持するベース64と、ベース64に固定されたマグネット66およびサスペンションホルダー72と、サスペンションホルダーに保持されたサスペンションワイヤー68と、サスペンションワイヤー68により支持されるレンズホルダー74と、レンズホルダー74に組み込まれた対物レンズ76と、レンズホルダー74に組み込まれたコイル70とを備えている。
【0085】
各コイル70は、それぞれが2つのサスペンションワイヤー68を経由して、フレキシブル配線基板38の接続部54と接続されている。そして、サスペンションワイヤー68を経由して電圧が印加されることでコイル70から発生する磁界と、マグネット66から発生する磁界との相互作用により、対物レンズ76のトラッキングサーボおよびフォーカスサーボが行われる。
【0086】
本形態では、対物レンズ76を通過するレーザー光の進行方向が所定の方向と成ると共に、対物レンズ76が所定位置にレーザー光を合焦するように、アクチュエータ36の全体的な位置調整を行う。ここで、位置調整とは、X方向、Y方向およびZ方向に対する位置調整だけではなく、各軸周りの角度調整も含まれる。本形態では、この位置調整および角度調整は、アクチュエータ36全体を移動または傾けることで行われる。
【0087】
このスキュウ調整が終了したら、アクチュエータ36とハウジング28との間にエポキシ樹脂等の接着材を塗布して硬化させ、アクチュエータ36を固定する。同様に、接着材を介してフレキシブル配線基板38をハウジング28に接着する。
【0088】
ここで、スキュウ調整は、レーザー装置やPDIC等の光学素子の位置調整の後に行ってもよいし、これらの工程の前に行っても良い。
【0089】
上記したように、スキュウ調整では、アクチュエータ36が全体的に移動および傾斜させている。従って、アクチュエータ36の右側側面に固着されたフレキシブル配線基板38も、この移動および傾斜の影響を受ける。このことから、フレキシブル配線基板38が平坦の状態であれば、特にアクチュエータ36を回転調整すると、フレキシブル配線基板38が捩れるような応力が作用する。更には、フレキシブル配線基板38が、外側に膨らむような変形が生じる恐れもある。
【0090】
本形態では、フレキシブル配線基板38の途中部分に、階段状の曲折部50を設けている。従って、スキュウ調整に伴い、アクチュエータ36の移動や傾きがあっても、曲折部50が変形することでこれらが吸収される。従って、アクチュエータ36の移動により、フレキシブル配線基板38に応力が残存しない。更には、フレキシブル配線基板38が外側に膨らむように変形することも抑止されている。
【0091】
また、フレキシブル配線基板38が平坦な状態であると、固着されたフレキシブル配線基板38により、スキュウ調整でのアクチュエータ36の移動が阻害されるおそれがある。本形態では、曲折部50が変形することにより、アクチュエータ36の移動や傾斜を許容している。従って、本形態では、スキュウ調整におけるアクチュエータ36の移動がスムーズに行える利点がある。
【0092】
上記工程が終了したら、各光学素子の位置確認等の確認工程を経て、図1に示すような光ピックアップ装置が製造される。
【符号の説明】
【0093】
10 光ピックアップ装置
11 配線部
14 配線パターン
22 パッケージ
26 フレキシブル配線基板
28 ハウジング
29 開口部
30 ガイド孔
32 ガイド溝
33 対物レンズ
34 フレキシブル配線基板
36 アクチュエータ
38 フレキシブル配線基板
40 接続部
42 突起部
44 切り欠き部
46 凹状領域
48 段差部
50 曲折部
52 接続部
54 接続部
56 配線部
58 配線部
60 湾曲部
62 収納領域
64 ベース
66 マグネット
68 サスペンションワイヤー
70 コイル
72 サスペンションホルダー
74 レンズホルダー
76 対物レンズ
80 ディスク
82 対物レンズ
84 対物レンズ
86 立ち上げミラー
88 立ち上げミラー
90 1/4波長板
92 反射板
94 反射板
96 コリメートレンズ
98 プリズム
100 プリズム
102 アナモレンズ
104 PDIC
106 レーザー装置
108 レーザー装置
110 回折格子
112 回折格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と第2主面とを有するハウジングと、
対物レンズを移動可能に保持するアクチュエータと、
前記アクチュエータと電気的に接続されたフレキシブル配線基板と、を備え、
前記ハウジングの前記第2主面を段差形状にした段差部に、前記フレキシブル配線基板の途中部分を曲折した曲折部を配置することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記フレキシブル配線基板は、前記ハウジングの前記前記第2主面を部分的に窪ませた凹状領域に収納されることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記第1主面側から前記第2主面に一部が露出する様に前記ハウジングに組み込まれ、
前記フレキシブル配線基板は、前記第2主面側から前記ハウジングの内部まで引き回されて前記アクチュエータに接続されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記フレキシブル配線基板を部分的に設けた切り欠き部が、前記ハウジングの前記第2主面を部分的に突出させた突起部に嵌めこまれることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
絶縁性接着材を介して前記フレキシブル配線基板が前記ハウジングの前記第2主面に固着されることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記フレキシブル配線基板の端部は、メイン基板と接続されることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
情報記録媒体にレーザー光を放射し、前記情報記録媒体で反射した前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置の製造方法であり、
第1主面と第2主面とを有するハウジングを用意し、対物レンズを移動可能に保持するアクチュエータを、フレキシブル配線基板に接続された状態で、前記ハウジングに組み込む工程と、
前記対物レンズに前記レーザー光を放射させつつ、前記アクチュエータの位置を調整する工程と、を備え、
前記組み込む工程では、前記フレキシブル配線基板の途中部分に設けた曲折部を、前記ハウジングの前記第2主面に設けた段差部に配置し、
前記位置を調整する工程では、前記アクチュエータの位置調整に伴い、フレキシブル配線基板の前記曲折部が変形することを特徴とする光ピックアップ装置の製造方法。
【請求項8】
前記位置を調整する工程が終了した後に、接着材を介して前記フレキシブル配線基板を前記ハウジングに固着することを特徴とする請求項7に記載の光ピックアップ装置の製造方法。
【請求項9】
前記位置を調整する工程では、前記フレキシブル配線基板はメイン基板と接続されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の光ピックアップ装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43498(P2012−43498A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182922(P2010−182922)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】