説明

光ピックアップ装置および光ディスク装置

【課題】簡素な構成にて効果的に迷光を除去でき、これにより、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号の品質を高め得る光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】回折格子102によってメインビームとサブビームに分割されたレーザ光は、角度調整素子114に入射する。これらのビームは、角度調整素子114の光軸の周りに設定された4つの光束領域毎に、進行方向がそれぞれ変化する。これにより、光検出器115の検出面には、ビーム毎に、信号光のみ存在する信号光領域が現れる。この領域にメインビーム用とサブビーム用のセンサが配置される。各センサからの信号をもとに3ビーム法によるトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号等の各種信号が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置および光ディスク装置に関するものであり、特に、複数の記録層が積層された記録媒体に対して記録/再生を行う際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。一枚のディスク内に複数の記録層を含めることにより、ディスクのデータ容量を顕著に高めることができる。記録層を積層する場合、これまでは片面2層が一般的であったが、最近では、さらに大容量化を進めるために、片面に3層以上の記録層を配することも検討されている。ここで、記録層の積層数を増加させると、ディスクの大容量化を促進できる。しかし、その一方で、記録層間の間隔が狭くなり、層間クロストークによる信号劣化が増大する。
【0003】
記録層を多層化すると、記録/再生対象とされる記録層(ターゲット記録層)からの反射光が微弱となる。このため、ターゲット記録層の上下にある記録層から、不要な反射光(迷光)が光検出器に入射すると、検出信号が劣化し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。したがって、このように記録層が多数配されている場合には、適正に迷光を除去して、光検出器からの信号を安定化させる必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、ピンホールを用いて迷光を除去する技術が記載されている。また、特許文献2には、1/2波長板と偏光光学素子を組み合わせることにより迷光を除去する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2006−260669号公報
【特許文献2】特開2006−252716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、ターゲット記録層から反射されたレーザ光(信号光)の収束位置にピンホールを正確に位置づける必要があるため、ピンホールの位置調整作業が困難であるとの課題がある。位置調整作業を容易にするためピンホールのサイズを大きくすると、迷光がピンホールを通過する割合が増加し、迷光による信号劣化を効果的に抑制できなくなる。
【0006】
また、特許文献2の技術によれば、迷光を除去するために、1/2波長板と偏光光学素子が2つずつ必要である他、さらに、2つのレンズが必要であるため、部品点数とコストが増加し、また、各部材の配置調整が煩雑であるとの課題がある。また、これらの部材を並べて配置するスペースが必要となり、光学系が大型化するとの課題もある。
【0007】
なお、迷光による信号劣化は、1つのレーザ光を用いる1ビーム法だけでなく、3つのレーザ光を用いる3ビーム法においても生じる。特に、3ビーム法においては、サブビームの検出信号に、3ビームの分光比に応じたゲインが乗じられるため、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号において、メインビームの迷光の影響が大きくなる。
【0008】
本発明は、以上の課題を解消するためになされたものであり、3ビーム法を用いる場合に、簡素な構成にて効果的に迷光を除去でき、これにより、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号等の各種信号の精度を高め得る光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る光ピックアップ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を直線状に並ぶ少なくとも3つのビームに分割する分割素子と、前記各ビームを記録媒体上に収束させる対物レンズと、前記記録媒体によって反射された前記各ビームに非点収差を導入し、これにより、前記各ビームを第1の方向と前記第1の方向に垂直な第2の方向に互いに異なる収束状態にて収束させる非点収差素子と、前記記録媒体によって反射された前記各ビームの異なる4つの光束領域内の光束の進行方向を互いに異ならせ、これら4つの光束領域内の光束を互いに離散させる角度調整素子と、前記離散された各光束を受光して検出信号を出力する光検出器とを備える。ここで、前記角度調整素子は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に2つの前記光束領域が配置され、他の一組の対頂角が並ぶ方向に残りの2つの前記光束領域が配置されるよう、前記4つの光束領域を設定する。
【0010】
この態様によれば、記録/再生対象の記録層(ターゲット記録層)にて反射された3つのビームの信号光と、当該ターゲット記録層の上および/若しくは下の記録層から反射された3つのビーム自身の迷光とが、光検出器の受光面(オンフォーカス時に信号光スポットが最小錯乱円になる面)上において、互いに重なり合わないようにすることができる。したがって、光検出器により3つのビームの信号光を円滑に受光することができ、よって、迷光による検出信号の劣化を抑制することができる。また、この作用を、角度調整素子を光路中に配置するのみで実現できる。よって、この態様によれば、簡素な構成にて効果的に迷光による影響を除去することができる。
【0011】
なお、第1の態様においては、前記3つのビームが略重なり合う位置に一つの前記角度調整素子が配置され得る。この場合、前記4つの光束領域は、前記2つの直線によって前記各ビームの光束領域を分割することにより設定され得る。こうすると、各ビームに対する光束領域の分割が、一つの角度調整素子によってなされるため、光学系の簡素化を図ることができる。
【0012】
また、第1の態様において、前記光検出器は、前記2つの直線に対して45°傾いた2つの分割線にて、前記各ビームの4つの前記光束領域をさらに分割した8つの分割光束領域を受光するセンサ部を個別に有する構成とされ得る。
【0013】
また、第1の態様において、前記光検出器の受光面には、直方形状の3つの検出領域が前記3つのビームに対応して配され得る。この場合、各検出領域の頂角の位置に、それぞれ対応するビームの光束を受光するためのセンサ部が配される。また、前記角度調整素子は、前記各ビームの4つの前記光束領域内の光束が、対応する前記検出領域の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるよう、前記各ビームの4つの前記光束領域の進行方向を変化させる。このように、検出領域を直方形状としてセンサ部を配置すると、センサ部の配置領域をコンパクトにすることができる。
【0014】
なお、前記3つの検出領域は、互いに重ならないように配され得る。この場合、3つの検出領域は、隣の検出領域に入射される光束の迷光が自身の検出領域内のセンサ部に掛からないよう、なるべく間隔を開けて配置するのが望ましい。
【0015】
あるいは、一部が重なる状態で3つの検出領域を配置することもできる。たとえば、前記3つの検出領域が一方向に並び、且つ、前記3つのビームのうち中央の第1のビームに対応する前記検出領域内に、他の2つの第2のビームにそれぞれ対応する2つの検出領域の一つの頂角位置に配置されるセンサ部が含まれるよう、これら3つの検出領域を配置することができる。この場合、3つの検出領域は、各センサ部を互いに重なり合うことなく配置できるように配置される。こうすると、第1のビームの検出領域内に配置された第2のビームのセンサ部は、第1のビームの迷光の影響を受けにくくなる。よって、第2のビームに基づく検出信号の品質を高めることができる。
【0016】
なお、このように検出領域を配置する場合には、前記2つの第2のビームに対応する2つの前記検出領域の頂角位置のうち、前記第1のビームの前記検出領域内に含まれる第1の頂角位置と当該第1の頂角位置に対して対角の位置にある第2の頂角位置にのみ、前記第2のビームに対応する前記センサ部を配する構成とされ得る。こうすると、第1のビームの迷光の影響を受け易いセンサ部が第2のビームを受光するためのセンサ部から除かれるため、第2のビームに基づく検出信号の品質を一層高めることができる。
【0017】
さらに、上記のように3つの検出領域の一部を重ねて配置する場合には、前記2つの第2のビームに対応する2つの前記検出領域の頂角位置のうち、前記第1のビームの前記検出領域内に含まれる第1の頂角位置にのみ、前記第2のビームに対応する前記センサ部を配する構成とされ得る。こうすると、第2のビームのセンサ部は第1のビームの検出領域内にのみ配置されるため、第2のビームに基づく検出信号の品質をより一層高めることができる。
【0018】
本発明の第2の態様に係る光ディスク装置は、前記光ピックアップ装置と、前記光検出器からの信号を処理する信号処理回路とを備える。
【0019】
この態様によれば、上記のように迷光の影響が抑制された各センサパターンからの検出信号をもとに各種信号が生成されるため、生成された信号の品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、簡素な構成にて効果的に迷光を除去することができ、これにより、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号等の各種信号の品質を高め得る光ピックアップ装置を提供することができる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0023】
<技術的原理>
まず、図1ないし図10を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。
【0024】
図1(a)は、ターゲット記録層によって反射されたレーザ光(信号光)が、平行光の状態でアナモレンズ等の非点収差素子に入射されたときの信号光と迷光の収束状態を示す図である。なお、“迷光1”は、レーザ光入射面側から見てターゲット記録層よりも一つ奥側にある記録層にて反射されたレーザ光であり、“迷光2”は、ターゲット記録層よりも一つ手前にある記録層にて反射されたレーザ光である。また、同図は、信号光がターゲット記録層にフォーカス合わせされたときの状態を示している。
【0025】
図示の如く、アナモレンズの作用により、図中の“曲面方向”に信号光が収束することによって面S1に焦線が生じ、さらに、この曲面方向に垂直な図中の“平面方向”に信号光が収束することによって面S2に焦線が生じる。そして、面S1と面S2の間の面S0において、信号光のスポットが最小(最小錯乱円)となる。非点収差法に基づくフォーカス調整では、面S0に光検出器の受光面が置かれる。なお、ここではアナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1中の“平面方向”におけるアナモレンズの形状を平面に限定するものではない。
【0026】
なお、同図(a)に示す如く、迷光1の焦線位置(同図では、非点収差素子による2つの焦線位置の間の範囲を“収束範囲”と示す)は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子に接近しており、また、迷光2の焦線位置は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子から離れている。
【0027】
図1(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における信号光のビーム形状を示す図である。真円で非点収差素子に入射した信号光は、面S1上で楕円となり、面S0上で略真円となった後、面S2上にて再び楕円となる。ここで、面S1上のビーム形状と面S2上のビーム形状は、それぞれの長軸が互いに垂直の関係となっている。
【0028】
ここで、同図(a)および(b)のように、平行光部分におけるビームの外周に、反時計方向に8つの位置(位置1〜8:同図では丸囲み数字で表記)を設定すると、位置1〜8を通る光線は、非点収差素子によってそれぞれ収束作用を受ける。なお、位置4と位置8は、曲面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置しており、位置2と位置6は、平面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置している。位置1、3、5、7はそれぞれ、位置2、4、6、8によって区分される外周円弧の中間にある。
【0029】
平行光部分において位置4と位置8を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射する。このため、これら位置4、8を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置4、8を通る。同様に、平行光部分において位置1、3、5、7を通る光線も、面S1にて曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射するため、面S0上では、同図(d)に示す位置1、3、5、7を通る。これに対し、平行光部分において位置2、6を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束されずに面S0へと入射する。このため、これら位置2、6を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置2、6を通る。
【0030】
図2(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光1のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光1の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線および平面方向の焦線の何れかに収束された後に面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0031】
図3(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光2のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光2の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線と平面方向の焦線の何れへも収束されることなく面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0032】
図4は、以上に説明した平行光部分および面S1、S0、S2上におけるビーム形状と光線の通過位置を、信号光、迷光1および迷光2を対比して示す図である。同図中の(c)の段を対比して分かるとおり、平行光部分において位置1を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束は、それぞれ、面S0上において、互いに異なる外周位置を通過する。同様に、平行光部分において位置3,4,5,7,8を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束も、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光2の光束は、面S0において、同じ外周位置を通過する。この場合も、平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光1の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過し、また、平行光部分において位置2、6を通過した迷光1と迷光2の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。
【0033】
次に、以上の現象を考慮して、平行光部分における信号光および迷光1、2の領域分割パターンと、面S0上における信号光および迷光1、2の照射領域との関係について検討する。
【0034】
まず、図5(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に対して45°傾いた2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。なお、この分割パターンは、従来の非点収差法に基づく領域分割に対応するものである。
【0035】
この場合、上述の現象により、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0036】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図6(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れか一方が必ず重なる。このため、各光束領域の信号光を光検出器上のセンサパターンで受光すると、少なくとも、同じ光束領域における迷光1または迷光2が対応するセンサパターンに同時に入射し、これにより検出信号に劣化が生じる。
【0037】
これに対し、図7(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。この場合、上述の現象から、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0038】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図8(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域内の光束(信号光、迷光1、2)を個別に取り出して対応するセンサパターンで受光すると、センサパターンに信号光のみを入射させることができる。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0039】
以上のように、信号光および迷光1、2を平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を個別に取り出して面S0上において受光することにより、信号光のみに基づく検出信号を得ることができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0040】
図9は、図7(a)に示す4つの光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向を、それぞれ、異なる方向に、同じ角度だけ変化させたときの、面S0上における信号光と迷光1、2の分布状態を示す図である。ここでは、同図(a)に示すように、光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向が、それぞれ、方向Da、Db、Dc、Ddに、同じ角度量α(図示せず)だけ変化している。なお、方向Da、Db、Dc、Ddは、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45°の傾きを持っている。
【0041】
この場合、方向Da、Db、Dc、Ddにおける角度量αを調節することにより、S0平面上において、同図(b)に示すように各光束領域の信号光と迷光1、2を分布させることができる。その結果、図示の如く、信号光のみが存在する信号光領域をS0平面上に設定することができる。この信号光領域に光検出器のセンサパターンを設定することにより、各領域の信号光のみを、対応するセンサパターンにて受光することができる。
【0042】
図10は、センサパターンの配置方法を説明する図である。同図(a)および(b)は、従来の非点収差法に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図であり、同図(c)および(d)は、上述の原理に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図である。ここで、トラック方向は、平面方向および曲面方向に対して45°の傾きを持っている。なお、同図(a)および(b)には、説明の便宜上、光束が8つの光束領域a〜hに区分されている。また、トラック溝による回折の像が実線で示され、オフフォーカス時のビーム形状が点線によって示されている。
【0043】
従来の非点収差法では、光検出器のセンサパターンP1〜P4(4分割センサ)が同図(b)のように設定される。この場合、光束領域a〜hの光強度に基づく検出信号成分をA〜Hで表すと、プッシュプル信号PPは、PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F)の演算により求まり、フォーカスエラー信号FEは、FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H)の演算により求まる。
【0044】
これに対し、上記図9(b)の分布状態では、上述の如く、信号光領域内に、図10(c)の状態で信号光が分布している。この場合、図10(a)に示す光束領域a〜hを通る信号光の分布を同図(c)の分布に重ねると、同図(d)のようになる。すなわち、同図(a)の光束領域a〜hを通る信号光は、光検出器のセンサパターンが置かれる面S0上では、同図(d)に示す光束領域a〜hへと導かれる。
【0045】
したがって、同図(d)に示す光束領域a〜hの位置に、同図(d)に重ねて示す如くセンサパターンP11〜P18を設定すれば、同図(b)の場合と同様の演算処理によって、プッシュプル信号とフォーカスエラー信号を生成することができる。すなわち、この場合も、光束領域a〜hの光束を受光するセンサパターンからの検出信号をA〜Hで表すと、同図(b)の場合と同様、プッシュプル信号PPは、PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F)の演算により取得でき、フォーカスエラー信号FEは、FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H)の演算により取得することができる。
【0046】
以上のように、本原理によれば、平行光部分における信号光および迷光1、2を、図1の平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させ、さらに、分散させた後の各光束領域A〜Dにおける信号光を、2分割された受光部によって個別に受光することにより、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、プッシュプル信号とフォーカスエラー信号を生成することができる。
【0047】
ところで、上記では、1つのレーザ光(1ビーム法)について説明が行われたが、上記原理は、3つのレーザ光を用いる光ピックアップ装置(3ビーム法)にも適宜適用され得る。すなわち、メインビームと2つのサブビームに分割された各ビームの光束領域の進行方向を、図9(a)に示すように変化させることができる。この場合、S0平面上における各ビームの光束は、それぞれ図9(b)のように分布する。かかる分布のうち、2つのサブビームの信号光領域にも、図10(d)に示すセンサパターンを配置することで、サブビーム用の検出信号についても迷光の影響を抑制することができる。すなわち、この場合、サブビームの信号光領域には、上記の如く、サブビーム自身の迷光が掛からないため、メインビーム用の検出信号と同様、サブビーム用の検出信号も、品質が高められる。
【0048】
こうして、メインビームに加えて2つのサブビームの検出信号が得られれば、3ビーム法に基づくプッシュプル信号とフォーカスエラー信号を精度の良いものとすることができる。すなわち、上記原理が適用されれば、1ビーム法に限らず、3ビーム法においても、高品位のプッシュプル信号とフォーカスエラー信号が生成される。
【0049】
<実施例1>
以下、上記原理に基づく実施例について説明する。
【0050】
図11に、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す。なお、同図中のディスクには、複数の記録層が積層して配置されている。
【0051】
図示の如く、光ピックアップ装置の光学系は、半導体レーザ101と、回折格子102と、1/2波長板103と、偏光ビームスプリッタ104と、コリメートレンズ105と、レンズアクチュエータ106と、立ち上げミラー107と、1/4波長板108と、アパーチャ109と、対物レンズ110と、ホルダ111と、対物レンズアクチュエータ112と、検出レンズ113と、光学素子114と、光検出器115とを備えている。
【0052】
半導体レーザ101は、所定波長のレーザ光を出射する。回折格子102は、半導体レーザ101から出射されたレーザ光を、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の3つに分割する。ここで、サブビーム1およびサブビーム2は、回折格子102による回折角に依存して、進行するにつれて次第にメインビームから離れていく。
【0053】
なお、同図中において、半導体レーザ101から出射される実線は、メインビームの光束中心軸を表している。また、同図中の破線は、アパーチャ109によって開口制限された2つのサブビームのメインビームに対する離れ具合を、ディスクから光検出器115へと向かう復路においてのみ、模式的に示すものである。
【0054】
1/2波長板103は、回折格子102側から入射されたメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の偏光方向が偏光ビームスプリッタ104に対してS偏光となるようこれらのビームの偏光方向を調整する。偏光ビームスプリッタ104は、1/2波長板103側から入射されるこれらのビーム(S偏光)を略全反射するとともに、コリメートレンズ105側から入射されるこれらのビーム(P偏光)を略全透過する。
【0055】
コリメートレンズ105は、偏光ビームスプリッタ104側から入射されるメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2を、それぞれ、平行光に変換する。なお、2つのサブビームの光束中心軸は、コリメートレンズ105の作用によってメインビームの光束中心軸に平行な方向に近づくものの、メインビームの光束中心軸に対して平行になることはない。よって、2つのサブビームは、コリメートレンズ105を透過した後も、進行に合わせてメインビームから次第に離れることとなる。
【0056】
レンズアクチュエータ106は、サーボ信号に応じてコリメートレンズ105を光軸方向に変位させる。これにより、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2に生じる球面収差が補正される。立ち上げミラー107は、コリメートレンズ105側から入射されたこれらのビームを対物レンズ110に向かう方向に反射する。
【0057】
1/4波長板108は、ディスクへと向かうメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2を円偏光に変換するとともに、ディスクによって反射されたこれらのビームをディスクへ向かう際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクによって反射されたこれらのビームは、偏光ビームスプリッタ104を透過する。
【0058】
アパーチャ109は、1/4波長板108側から入射されたメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2のビーム径を、対物レンズ110の開口数(NA)に適するビーム径に絞る。対物レンズ110は、アパーチャ109により絞られたこれらのビームをディスク内のターゲット記録層に適正に収束させる。
【0059】
なお、ディスクによって反射された2つのサブビームは、ややずれた状態でアパーチャ109に入射するため、アパーチャ109によって周辺部がカットされ、アパーチャ109を通過した直後では、メインビームと2つのサブビームが互いに重なり合った状態となる。しかし、2つのサブビームの光束中心軸はメインビームの光束中心軸に対し平行でないため、その後、2つのサブビームは、同図中の破線で模式的に示すように、進行に伴ってメインビームから次第に離れて行く。
【0060】
ホルダ111は、1/4波長板108、アパーチャ109および対物レンズ110を一体的に保持する。対物レンズアクチュエータ112は、従来周知の電磁駆動回路によって構成され、当該回路のうち、フォーカスコイル等のコイル部がホルダ111に装着されている。なお、対物レンズアクチュエータ112は、対物レンズ110を、フォーカス方向とトラッキング方向の他、チルト方向にも駆動できるよう構成されている。
【0061】
コリメートレンズ105は、ミラー107側から入射されたメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2を、それぞれ、平行光から収束光に変換する。なお、2つのサブビームの光束中心軸は、コリメートレンズ105の作用によってメインビームの光束中心軸に平行な方向に近づくものの、メインビームの光束中心軸に平行になることはなく収束していく。よって、2つのサブビーム光束は、コリメートレンズ105を透過した後も、進行に合わせてメインビームから次第に離れて行く。
【0062】
検出レンズ113は、偏光ビームスプリッタ104を透過したメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2に非点収差を導入する。すなわち、検出レンズ113は、図1の非点収差素子に相当する。
【0063】
角度調整素子114は、検出レンズ113側から入射されたメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の進行方向を、図9を参照して述べた如く変化させる。すなわち、角度調整素子114は、入射されたこれらのビームのうち、図9(a)の光束領域A〜Dを通過する光束の進行方向を、それぞれ、方向Da〜Ddに、同じ角度量だけ変化させる。
【0064】
ここで、メインビームと2つのサブビームは、互いにややずれた状態で角度調整素子114に入射するが、このずれ量は光束径に対して小さいため、各ビームは略重なり合った状態で角度調整素子114に入射する。このため、各ビームは、角度調整素子114から略同様の作用を付与される。よって、メインビームと、サブビーム1およびサブビーム2は、光検出器115の受光面上において、それぞれ、図9(b)のように分布する。なお、角度調整素子114の構成については、追って図12を参照して説明する。
【0065】
光検出器115は、角度調整素子114によって進行方向が変化したメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2を、それぞれ対応して受光する3つのセンサパターンを有する。光検出器115は、これら3つのセンサパターンが図1の面S0の位置に位置づけられるように配置される。各センサパターンは、図10(d)の構成を有し、それぞれ、メインビームと2つのサブビームの信号光領域(図9(b)参照)に配置される。
【0066】
光検出器115に配された各センサからの出力をもとに、再生RF信号が生成され、さらに、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号が生成される。光検出器115の構成とトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号の演算処理については、追って図13を参照して説明する。
【0067】
図12は、角度調整素子114の構成例を示す図である。同図(a)は、回折パターンを有するホログラム素子によって角度調整素子114を構成する場合の構成例を示し、同図(b)および(c)は、多面プリズムによって角度調整素子114を構成する場合の構成例を示している。
【0068】
まず、同図(a)の構成例において、角度調整素子114は、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面にホログラムパターンが形成されている。光入射面は、図示の如く、4つのホログラム領域114a〜114dに区分されている。これらホログラム領域114a〜114dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dが整合するよう、角度調整素子114が配置される。
【0069】
前述のように、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2は、互いにややずれた状態で、角度調整素子114にそれぞれ入射する。角度調整素子114は、メインビームの光束中心軸が角度調整素子114の中心を貫くように配置される。このため、2つのサブビームは角度調整素子114の中心からややずれた位置に入射する。しかし、このずれ量は光束径に対して小さいため、2つのサブビームは、メインビームとほぼ同量の作用を角度調整素子114から付与される。
【0070】
ホログラム領域114a〜114dは、入射されたメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2(信号光と迷光)を、それぞれ、方向Va〜Vdに回折させる。方向Va〜Vdは、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。よって、ホログラム領域114a〜114dは、回折により、検出レンズ113側から入射されたこれらのビーム(信号光と迷光)の進行方向を、それぞれ、図9(a)のDa〜Ddの方向に変化させる。各領域における回折角は互いに同じとなっている。
【0071】
ここで、回折角は、ホログラム領域114a〜114dを通過したメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2(信号光と迷光)が、図1の面S0において、図9(b)のように分布するよう調整されている。よって、上記の如く、光検出器115の受光面を面S0に配置することにより、3つのセンサパターンを、対応するビームの信号光領域に配置することができ、よって、各センサパターンによって対応するビームの信号光を適正に受光することができる。
【0072】
なお、上記ホログラム領域114a〜114dの回折効率は互いに同じとなっている。ホログラム領域114a〜114dに形成されるホログラムがステップ型である場合、回折効率は、ホログラムパターンのステップ数と1ステップあたりの高さによって調整され、回折角は、ホログラムパターンのピッチによって調整される。よって、この場合には、予め決められた回折次数の回折効率が所期の値となるように、ホログラムパターンのステップ数と1ステップあたりの高さが設定され、さらに、当該回折次数における回折角が図9(b)の分布を与え得るように、ホログラムパターンのピッチが調整される。
【0073】
なお、ホログラム領域114a〜114dに形成されるホログラムをブレーズ型とすることも可能である。この場合、ステップ型のホログラムよりも回折効率を高めることができる。
【0074】
図12(b)の構成例において、角度調整素子114は、光出射面が平坦で、且つ、光入射面が4つの領域において異なる方向に個別に傾斜する透明体によって形成されている。同図(c)は同図(b)を光入射面側から見た図である。図示の如く、角度調整素子114の光入射面には、4つの傾斜面114e〜114hが形成されている。これら傾斜面に入射面側から光線がX軸方向に入射すると、傾斜面114e〜114hに入射する際の屈折作用によって、光の進行方向が、それぞれ、同図(c)のVe〜Vhの方向に変化する。ここで、傾斜面114e〜114hにおける屈折角は、同じである。
【0075】
同図(b)の角度調整素子114は、傾斜面114e〜114hに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過するメインビーム(信号光と迷光)が入射するよう配置される。なお、サブビーム1およびサブビーム2は、上記の如くメインビームからややずれた状態で角度調整素子114に入射するが、このずれ量は光束径に対して小さいため、これら2つのサブビームのうち図9(a)の各光束領域A〜Dを通過する光束は、概ね、傾斜面114e〜114hのうちの対応する傾斜面に入射する。
【0076】
こうして角度調整素子114が配置されると、傾斜面114e〜114hにおける屈折方向Ve〜Vhが、図9(a)の方向Da〜Ddに一致することとなる。よって、傾斜面114e〜114hは、屈折により、検出レンズ113側から入射されたこれらのビーム(信号光と迷光)の進行方向を、一定角度だけ、それぞれ、図9(a)のDa〜Ddの方向に変化させる。
【0077】
ここで、各傾斜面における屈折角は、傾斜面114e〜114hを通過した各ビーム(信号光と迷光)が、図1の面S0において、それぞれ、図9(b)のように分布するよう調整されている。よって、上記の如く、光検出器115の受光面を面S0に配置することにより、3つのセンサパターンによって対応するビームの信号光を適正に受光することができる。
【0078】
なお、図12(a)の構成例では、ホログラム領域114a〜114dに、レーザ光の進行方向を一定角度だけ変化させる角度付与の回折作用のみを持たせるようにしたが、角度付与の他、検出レンズ113による非点収差作用をも同時に発揮するホログラムパターンを、ホログラム領域114a〜114dに設定しても良い。また、角度調整素子114の光入射面に上記角度付与のためのホログラムパターンを形成し、非点収差作用を持たせるためのホログラムパターンを角度調整素子114の光出射面に持たせるようにしても良い。同様に、図12(b)の角度調整素子114においても、光出射面に、非点収差を導入するためのレンズ面を形成するようにしても良く、あるいは、傾斜面114e〜114hを曲面形状として、傾斜面114e〜114hに非点収差のレンズ作用を持たせるようにしても良い。こうすると、検出レンズ113を省略することができ、部品点数とコストの削減を図ることができる。
【0079】
図13は、光検出器115の構成を説明する図である。同図(a)は、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2における各ビーム(信号光と迷光)の、光検出器115上の分布状態を示す図である。また、同図(b)は、光検出器115上のセンサパターンを示す図である。
【0080】
本実施例では、同図(a)に示すように、光検出器115の受光面上において、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の信号光領域が、互いに重なり合うことなく間隔を開けて一直線上に並んでいる。
【0081】
光検出器115は、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の信号光を受光するために、図10(d)に示すセンサパターンを3つ有する。すなわち、同図(b)に示すように、メインビームの信号光を受光するセンサMa〜Mhと、サブビーム1の信号光を受光するセンサS1a〜S1hと、サブビーム2の信号光を受光するセンサS2a〜S2hとが、それぞれ、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の信号光領域に配されている。
【0082】
なお、これら3つの信号光領域の間隔は、回折格子102における回折角に依存する。かかる回折角を大きくして信号光領域間の間隔を広げるほど、となりのビームの迷光が信号光領域に掛かり難くなる。しかし、その一方で、回折格子102の回折角が大きくなると、角度調整素子114におけるメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の位置ずれが大きくなる。加えて、ディスク上におけるこれらビームのスポット間隔が大きくなるため、ディスク内外周におけるトラック曲率の差に起因して、サブビームのスポットにトラックずれが生じ、結果、検出信号に誤差が含まれるようになる。
【0083】
したがって、本実施例においては、これらの点を考慮して、光検出器115の受光面上におけるメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の信号光領域が所定の間隔を開けて並ぶよう、回折格子102の回折角および他の光学系が調整される。
【0084】
次に、トラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号を生成するための演算処理について説明する、なお、以下では、便宜上、各センサからの出力信号を、各センサに付記された記号にて表すこととする。
【0085】
メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2のプッシュプル信号(MPP、S1PPおよびS2PP)は、図10(d)に示した演算手法に基づいて、以下の演算により得られる。
【0086】
MPP=Ma+Mb+Mg+Mh-(Mc+Md+Me+Mf) …(1)
S1PP=S1a+S1b+S1g+S1h-(S1c+S1d+S1e+S1f)
S2PP=S2a+S2b+S2g+S2h-(S2c+S2d+S2e+S2f)
【0087】
また、サブビーム1およびサブビーム2のプッシュプル信号の加算値SPPは、以下のとおりとなる。
【0088】
SPP=S1PP+S2PP …(2)
【0089】
この場合、DPP(Differential Push Pull)法によるトラッキングエラー信号TEは、次式により求められる。
【0090】
TE=MPP−k(SPP) …(3)
【0091】
また、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2のフォーカスエラー信号(MAS、S1ASおよびS2AS)は、図10(d)に示した演算手法に基づいて、以下の演算により得られる。
【0092】
MAS=Ma+Mb+Me+Mf-(Mc+Md+Mg+Mh) …(4)
S1AS=S1a+S1b+S1e+S1f-(S1c+S1d+S1g+S1h)
S2AS=S2a+S2b+S2e+S2f-(S2c+S2d+S2g+S2h)
【0093】
また、サブビーム1およびサブビーム2のフォーカスエラー信号の加算値SASは、以下のとおりとなる。
【0094】
SAS=S1AS+S2AS …(5)
【0095】
この場合、差動非点収差法によるフォーカスエラー信号FEは、次式により求められる。
【0096】
FE=MAS+k(SAS) …(6)
【0097】
なお、TEおよびFEで用いられるkの値は、回折格子102によるレーザ光の分光比を基準に決定される。しかしながら、実際にはアパーチャ109によるケラレ等により、サブビームの光量が減少するため、実際の光学系においてkの値は適宜調整される必要がある。すなわち、トラックずれがない状態において、トラッキングエラー信号TEの値がゼロとなるよう、kの値は調整される。このようにして得られたkの値は、FEの演算処理においても用いられる。
【0098】
以上、本実施例によれば、ディスク内に配された記録層のうちターゲット記録層から反射されたメインビームの信号光と、当該ターゲット記録層の上および下の記録層から反射されたメインビームの迷光とが、光検出器115の受光面(オンフォーカス時に信号光スポットが最小錯乱円になる面S0)上において、互いに重なり合わないようにすることができる。具体的には、受光面(面S0)上におけるメインビームの信号光と迷光の分布を、図9(b)の状態にすることができる。同様に、受光面上におけるサブビームの信号光とサブビームの迷光の分布を、図9(b)の状態にすることができる。
【0099】
したがって、図13(a)の信号光領域に、図13(b)のセンサパターンを配置することにより、メインビームの迷光がメインビーム用のセンサパターンに掛からないようにすることができ、また、サブビーム1およびサブビーム2の迷光が、それぞれ、サブビーム1用のセンサパターンとサブビーム2用のセンサパターンに掛からないようにすることができる。このため、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2を受光する各センサパターンからの信号が、対応するビームの迷光によって劣化するのを抑制することができ、3ビーム法によるトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号の品質を高めることができる。
【0100】
また、この効果を、ディスクによって反射されたレーザ光の光路中、すなわち、図11の構成では検出レンズ113と光検出器115の間に、光学素子114を配置するのみで達成することができる。したがって、本実施例によれば、簡素な構成にて効果的に迷光による影響を低減することができる。
【0101】
なお、上記原理による効果は、迷光1の平面方向の焦線位置が面S0(信号光のスポットが最小錯乱円となる面)よりも非点収差素子に接近した位置にあり、且つ、迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0よりも非点収差素子から離れた位置にあるときに奏され得るものである。すなわち、この関係が満たされていれば、信号光と迷光1、2の分布は上記図9(b)または図13(a)に示す状態となり、面S0において、信号光と迷光1、2が重なり合わないようにすることができる。換言すれば、この関係が満たされる限り、たとえ、信号光の曲面方向の焦線位置よりも迷光1の平面方向の焦線位置が面S0に接近し、あるいは、信号光の平面方向の焦線位置よりも迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0に接近したとしても、上記原理に基づく本発明ないし実施例の効果は奏され得る。
【0102】
<実施例2>
上記実施例1では、光検出器115の受光面上において、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の信号光領域が、図13(a)に示すように、互いに重なり合うことなく間隔を開けて直線状に並ぶよう、回折格子102の回折角とその他の光学系が調整された。しかし、このように信号光領域が配置される場合には、たとえば、サブビーム1およびサブビーム2を受光するセンサパターンにメインビームの迷光が入射して、これらセンサパターンからの信号が劣化することも考えられる。かかる迷光の影響は、各ビームの信号光領域の間隔を広げることにより低減できる。しかし、信号光領域の間隔を広げると、上記のとおり、角度調整素子114上における各ビームのずれ量が大きくなり、また、ディスク上におけるビームスポット間の間隔が広がってしまい、検出信号に誤差成分が含まれる惧れがある。したがって、この点をも考慮すると、信号光領域間の間隔をなるべく狭めながら、同時に、隣り合うビームからの迷光の影響を抑制できるようにするのが望ましい。
【0103】
本実施例およびその後の実施例3、4においては、以上の点を考慮して、信号光領域間の間隔を狭めながら、同時に、隣り合うビームからの迷光の影響を抑制するよう光学系を変更するものである。以下に、まず、本実施例に係る構成について説明し、その後、実施例3、4について説明する。
【0104】
本実施例では、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の信号光領域が互いに重なり合うように、回折格子102の回折角とその他の光学系が調整されている。
【0105】
図14は、光検出器115の受光面上におけるメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の分布状態を示す図である。
【0106】
同図(a)および(b)には、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の信号光領域と共に、信号光および迷光が示されている。なお、同図(a)では、便宜上、サブビーム1、2の迷光が図示省略されている。また、同図(b)では、便宜上、メインビームの迷光が図示省略されている。図示の如く、これらのビームの信号光領域は互いに重なり合いながらも、信号光は互いに重ならないよう、各ビームの分布が調整されている。
【0107】
図15(a)は、光検出器115の受光面上に配置されたセンサパターンを示す図である。各センサパターンは、それぞれ、各ビームの信号光を受光するよう、図14のメインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の信号光領域に配されている。
【0108】
ここで、図14でも示されたように、メインビーム、サブビーム1およびサブビーム2の信号光は重なり合うことがないため、各センサには、信号光のうち対応する信号光のみが入射する。よって、本実施例においても、上記実施例1で示された演算式を用いてトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号が導出され得る。
【0109】
また、メインビームの信号光領域内に配置されたセンサ(センサMa〜Mh、センサS1a、S1h、S2d、S2e)には、図14(a)を参照して分かるとおり、メインビームの迷光が掛からない。このため、これらセンサからの出力がメインビームの迷光による影響を受けることはない。すなわち、本実施例では、メインビームを受光するセンサパターン(センサMa〜Mh)の他、サブビーム1およびサブビーム2を受光するセンサパターンの一部(センサS1a、S1h、S2d、S2e)についても、メインビームの迷光による影響を回避することができる。
【0110】
一般に、メインビームの光量はサブビームの光量よりも数段大きい。よって、メインビームの迷光がサブビーム用のセンサに入射すると、当該センサからの出力信号に劣化が起こり易い。本実施例では、サブビーム1およびサブビーム2を受光するセンサパターンの一部(センサS1a、S1h、S2d、S2e)にメインビームの迷光が掛からないため、これらセンサからの出力信号がメインビームによる迷光によって劣化することはない。したがって、上記実施例1に比べて、少なくとも、これらセンサの検出信号の品質を高めることができ、よって、トラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号の品質が上記実施例1よりも高くなることが期待できる。
【0111】
なお、本実施例の構成において、上記実施例1における演算式を用いて、トラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号を求めてみた。なお、ここでは、迷光を考慮せずに信号光のみに基づいて、トラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号を求めた。図15(b)は、そのシミュレーション結果である。
【0112】
図16は、本シミュレーションに用いた光学系を示す図である。光学系の配置は図11と同じであるため、説明は省略する。
【0113】
本光学系の設計条件は、以下の通りである。
(1)往路倍率:10倍
(2)復路倍率:18倍
(3)半導体レーザ101から出射されるレーザ光の波長:405nm
(4)ターゲット記録層とその前後の記録層との間隔:10μm
(5)角度調整素子114によって付与される分光角度:1.9度
(6)角度調整素子114の分光面と光検出器113の検出面の間の光路長:3mm
(7)角度調整素子114を配さないときの光検出面上におけるスポット径:60μm
(8)角度調整素子114を配したときの光検出面上における各信号光(光束領域A〜Dをそれぞれ通過)の変位距離:100μm
【0114】
なお、往路倍率とは、対物レンズの焦点距離に対するコリメートレンズの焦点距離の比であり、復路倍率とは、対物レンズの焦点距離に対するコリメートレンズと検出レンズの合成焦点距離の比のことである。本光学系では、ディスクによって反射されたレーザ光(信号光)は、角度調整素子114を除去すると検出面上において最小錯乱円となる。上記(7)のスポット径とは、この最小錯乱円の径のことである。また、上記(8)の変位距離とは、角度調整素子114を除去したときの検出面上における信号光の光束中心と、角度調整素子114を配したときの各信号光の頂点位置(図8に示す扇型が直角となる頂点の位置)との間の距離のことである。
【0115】
図15(b)の(b−1)、(b−2)および(b−3)は、それぞれ、メインビームの光束中心軸に対する対物レンズ110のレンズシフト量が300μm、300μmおよび0μmであるとの条件下で、上記光学系に基づいてシミュレーションが行われた結果を示すグラフである。なお、グラフ中の信号値は、図15(a)のセンサパターンから出力される検出信号をもとに、上記実施例1で示した演算方法によって得られた値である。
【0116】
図15(b−1)は、上記レンズシフトの条件下で、メインビームのトラックずれ量を変化させたときのMPP、SPP*kおよびTEの演算値の推移をシミュレーションしたグラフである。ここで、MPPは式(1)により得られる値であり、SPP*kは式(2)をk倍して得られる値であり、TEは式(3)により得られる値である。なお、kの値は、トラックずれがない状態において、トラッキングエラー信号TEがゼロとなるよう調整されている。
【0117】
図15(b−1)を参照して、MPPおよびSPP*kには、レンズシフトによるオフセットが同一量だけ生じている。また、MPPおよびSPP*kは、互いに位相が反転している。したがって、上記式(3)をもとにTEを求めると、同図に示すように、レンズシフトによるオフセットが除去されたトラッキングエラー信号が得られる。
【0118】
次に、図15(b−2)は、上記レンズシフトの条件下で、メインビームをオンフォーカスさせた状態でメインビームのトラックずれ量を変化させたときのMAS、SAS*kおよびFEの演算値の推移をシミュレーションしたグラフである。ここで、MASは式(4)により得られる値であり、SAS*kは式(5)をk倍して得られる値であり、FEは式(6)により得られる値である。なお、kの値は、図15(b−1)で得られた値と同じ値である。
【0119】
図15(b−2)を参照して、MASおよびSAS*kには、レンズシフトによるごく微小のオフセットが生じている。また、トラック溝を横断する際に発生する外乱光(以下、溝外乱という)により、トラックずれに伴ってMASおよびSAS*kに変動が生じている。しかしながら、これら2つの信号のオフセットはごく微少で且つ同一量であり、また、位相は互いに逆であるため、上記式(6)をもとにFEを求めると、同図に示すように溝外乱による変動が消え、オフセットも微少なものとなる。すなわち、トラックのずれに拘わらず、安定したフォーカスエラー信号が得られる。
【0120】
次に、図15(b−3)は、MAS、SAS*kおよびFEが、フォーカスずれにしたがって変化することをシミュレーションしたグラフである。ここでのkの値も、図15(b−1)で得られた値と同じ値である。
【0121】
図15(b−3)のMASおよびSAS*kは変化傾向が一致しており、これら2つの信号を加算したFEは、1ビームから得られるフォーカスエラーよりS字カーブの振幅が大きくなる。よって、図15(b−2)のシミュレーション結果をも併せると、溝外乱の影響を受けない良好なフォーカスエラー信号が得られることがわかる。
【0122】
以上のとおり、図14に示すビーム分布に図15に示すセンサパターンを適用すると、上記実施例1と同様の演算式により、3ビーム法に基づくトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号を取得することができる。この場合、上記の如く、サブビーム1とサブビーム2を受光するセンサパターンの一部(センサS1a、S1h、S2d、S2e)には、メインビームの迷光が掛からないため、上記実施例1に比べて、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号の一層の品質向上が可能となり得る。
【0123】
<実施例3>
本実施例は、上記実施例2におけるサブビーム1およびサブビーム2のセンサパターンを変更することで、メインビームの迷光がサブビームのセンサパターンに与える影響を、さらに低減しようとするものである。
【0124】
図17は、本実施例のセンサパターンを示す図である。上記実施例2のセンサパターンでは、図14(a)を参照して分かるとおり、サブビーム用のセンサのうち、センサS1b、S1c、S1f、S1gと、センサS2b、S2c、S2f、S2gがメインビームの迷光の影響を受け易い。他方、これらのセンサには、上記図10(b)および(d)を参照して分かるとおり、ディスク上のトラック像がそれほど投影されず、このため、これらセンサからの信号にはサブビームのプッシュプル成分がほとんど含まれない。
【0125】
そこで、本実施例では、図17(a)に示す如く、図15(a)のセンサパターンから、サブビーム1のセンサS1b、S1c、S1f、S1gと、サブビーム2のセンサS2b、S2c、S2f、S2gが削除され、残りのセンサからの信号を用いて3ビーム法に基づくトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号を求めるようにしている。
【0126】
このようにセンサS1b、S1c、S1f、S1gと、センサS2b、S2c、S2f、S2gを削除する場合、上記実施例1で示された演算方法は、以下のように変更される。なお、式の後部に付記された変更記号(*)は、当該式が変更されたことを示す。
【0127】
MPP=Ma+Mh-(Md+Me) …(*)
S1PP=S1a+S1h-(S1d+S1e) …(*)
S2PP=S2a+S2h-(S2d+S2e) …(*)
SPP=S1PP+S2PP
TE=MPP−k(SPP)
MAS=Ma+Mb+Me+Mf-(Mc+Md+Mg+Mh)
S1AS=S1a+S1e-(S1d+S1h) …(*)
S2AS=S2a+S2e-(S2d+S2h) …(*)
SAS=S1AS+S2AS
FE=MAS+k(SAS)
【0128】
図17(b)の(b−1)、(b−2)および(b−3)は、上記演算式に基づいて、上記実施例2と同様の条件下でシミュレーションが行われた結果を示すグラフである。
【0129】
図17(b−1)を参照して分かるとおり、本実施例においても上記実施例2と同様、オフセットが解消されたトラッキングエラー信号が得られる。
【0130】
また、図17(b−2)および(b−3)を参照して分かるとおり、本実施例においても上記実施例2と同様、オフセットが微小で、且つ、溝外乱による変動が抑制された安定したフォーカスエラー信号が得られる。
【0131】
なお、本実施例では、図17(b−3)と図15(b−3)を比較して分かるとおり、サブビームのセンサを一部削除したことによって、上記実施例2に比べて、SAS*kの振幅が略2分の1となり、FEの振幅は4分の3程度に減少する。このため、フォーカスエラー信号の品質は、上記実施例2に比べやや低下するものの、1ビームのみの場合に比べるとなお高品質のフォーカスエラー信号が得られる。
【0132】
以上、本実施例では、メインビームの迷光による影響を受け易いセンサが削除されるため、より品質の高いトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号を取得することができる。また、このようにセンサを削除しても、演算処理手法を上記のように変更することで、3ビーム法に基づくトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号を適正に取得することができる。加えて、本実施例では、センサ数が減少するため、光検出器の構成を簡素化することができる。
【0133】
<実施例4>
本実施例は、上記実施例3のセンサパターンをさらに変更することで、メインビームの迷光による影響を、さらに低減しようとするものである。
【0134】
図18は、本実施例のセンサパターンを示す図である。本実施例では、上記実施例3のセンサパターンから、さらにメインビームの迷光の影響を受け得るセンサが削除されている。すなわち、図17(a)のセンサパターンから、サブビーム1用のセンサS1e、S1dと、サブビーム2用のセンサS2a、S2hが削除されている。
【0135】
このようにセンサS1e、S1dと、センサS2a、S2hを削除する場合、上記実施例3で示された演算方法は、以下のように変更される。なお、式の後部に付記された変更記号(*)は、当該式が変更されたことを示す。
【0136】
MPP=Ma+Mh-(Md+Me)
S1PP=S1a+S1h …(*)
S2PP=-(S2d+S2e) …(*)
SPP=S1PP+S2PP
TE=MPP−2k(SPP) …(*)
MAS=Ma+Mb+Me+Mf-(Mc+Md+Mg+Mh)
S1AS=S1a-S1h …(*)
S2AS=S2e-S2d …(*)
SAS=S1AS+S2AS
FE=MAS+2k(SAS) …(*)
【0137】
ここで、サブビームの削除されたセンサからの出力信号を補うため、TEおよびFEの演算式の第2項が2倍されている。
【0138】
図18(b)の(b−1)、(b−2)および(b−3)は、上記演算式に基づいて、上記実施例3と同様の条件下でシミュレーションが行われた結果を示すグラフである。これらのグラフを参照して、本実施例においても上記実施例3と同様、品質の高いトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号が得られる。
【0139】
以上、本実施例では、メインビームの迷光の影響を受け得るセンサが全て削除されるため、メインビームの迷光の影響を完全に抑制することができる。よって、本実施例によれば、最も品質の高いトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号が得られる。また、このようにメインビームの迷光の影響を受け得るセンサを全て削除しても、演算処理手法を上記のように変更することで、3ビーム法に基づくトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号を適正に取得することができる。加えて、センサ数が減少し、且つ、センサの配置領域が縮小するため、光検出器の構成を簡素化および小型化することができる。
【0140】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。本発明は、片面に2つの記録層を有するディスクや片面に4層以上の記録層を有するディスクに適合する光ピックアップ装置にも適用可能である。また、光学系の構成も適宜変更可能である。
【0141】
たとえば、上記実施例では、トラッキングエラー信号の検出にDPP方式を用いたが、これに替えてインライン型DPP方式を用いることもできる。この場合においても、上記実施例と同様の効果が奏される。
【0142】
また、実施例3、4では、メインビームの迷光の影響を受け得るセンサを削除するようにしたが、センサを削除せずに、これらのセンサからの出力を演算に用いないようにしても良い。
【0143】
また、上記実施例では、信号光領域は正方形であったが、長方形等、他の形にすることも可能である。この場合においても、各ビームの光束領域に対応してセンサが配置されれば、上記実施例と同様の効果が奏される。
【0144】
また、上記実施例では、1つの角度調整素子114を用いて、メインビームおよび2つのサブビームの光束の進行方向を変化させたが、メインビームと2つのサブビームが分離される場合には、各ビームに対応して3つの角度調整素子を配置するようにしても良い。
【0145】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図
【図2】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図
【図3】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図
【図4】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図
【図5】実施形態に係る技術原理(分割パターンと光束の分布)を説明する図
【図6】実施形態に係る技術原理(分割パターンと光束の分布)を説明する図
【図7】実施形態に係る技術原理(分割パターンと光束の分布)を説明する図
【図8】実施形態に係る技術原理(分割パターンと光束の分布)を説明する図
【図9】実施形態に係る技術原理(角度付与と光束の分布)を説明する図
【図10】実施の形態に係るセンサパターンの配置方法を示す図
【図11】実施例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図
【図12】実施例1に係る角度調整素子の構成例を示す図
【図13】実施例1に係る光束の分布とセンサパターンの配置方法を示す図
【図14】実施例2に係る光束の分布を示す図
【図15】実施例2に係るセンサパターンの配置方法とシミュレーション結果を示す図
【図16】実施例2に係るシミュレーションの設計条件を示す図
【図17】実施例3に係るセンサパターンの配置方法とシミュレーション結果を示す図
【図18】実施例4に係るセンサパターンの配置方法とシミュレーション結果を示す図
【符号の説明】
【0147】
101 半導体レーザ(レーザ光源)
102 回折格子(分割素子)
110 対物レンズ(対物レンズ)
113 検出レンズ(非点収差素子)
114 角度調整素子
115 光検出器(光検出器)
Ma〜Mh センサ(センサ部)
S1a〜S1h センサ(センサ部)
S2a〜S2h センサ(センサ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を直線状に並ぶ少なくとも3つのビームに分割する分割素子と、
前記各ビームを記録媒体上に収束させる対物レンズと、
前記記録媒体によって反射された前記各ビームに非点収差を導入し、これにより前記各ビームを第1の方向と前記第1の方向に垂直な第2の方向に互いに異なる収束状態にて収束させる非点収差素子と、
前記記録媒体によって反射された前記各ビームの異なる4つの光束領域内の光束の進行方向を互いに異ならせ、これら4つの光束領域内の光束を互いに離散させる角度調整素子と、
前記離散された各光束を受光して検出信号を出力する光検出器とを備え、
前記角度調整素子は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に2つの前記光束領域が配置され、他の一組の対頂角が並ぶ方向に残りの2つの前記光束領域が配置されるよう、前記4つの光束領域を設定する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記3つのビームが略重なり合う位置に一つの前記角度調整素子が配置され、
前記4つの光束領域は、前記2つの直線によって前記各ビームの光束領域を分割することにより設定されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記光検出器は、前記2つの直線に対して45°傾いた2つの分割線にて、前記各ビームの4つの前記光束領域をさらに分割した8つの分割光束領域を受光するセンサ部を個別に有する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項において、
前記光検出器の受光面には、直方形状の3つの検出領域が前記3つのビームに対応して配置されるとともに、各検出領域の頂角の位置に、それぞれ対応するビームの光束を受光するためのセンサ部が配され、
前記角度調整素子は、前記各ビームの4つの前記光束領域内の光束が、対応する前記検出領域の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるよう、前記各ビームの4つの前記光束領域の進行方向を変化させる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記3つの検出領域は、互いに重ならないように配置されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記3つの検出領域が一方向に並ぶとともに、前記3つのビームのうち中央の第1のビームに対応する前記検出領域内に他の2つの第2のビームにそれぞれ対応する2つの検出領域の一つの頂角位置に配置される前記センサ部が含まれ、且つ、前記各センサ部を互いに重なり合うことなく配置できるように前記3つの検出領域が配置されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記2つの第2のビームに対応する2つの前記検出領域の頂角位置のうち、前記第1のビームの前記検出領域内に含まれる第1の頂角位置と当該第1の頂角位置に対して対角の位置にある第2の頂角位置にのみ、前記第2のビームに対応する前記センサ部が配されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記2つの第2のビームに対応する2つの前記検出領域の頂角位置のうち、前記第1のビームの前記検出領域内に含まれる第1の頂角位置にのみ、前記第2のビームに対応する前記センサ部が配されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の光ピックアップ装置と、
前記光検出器からの信号を処理する信号処理回路とを備える、
ことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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