光ピックアップ装置及び光学部品の接着方法
【課題】
光ピックアップ装置を組み立てる際に、光学素子を固定するために紫外線硬化型接着剤を塗布する作業回数が多く、作業性が悪いという課題が生じる
【解決手段】
光ピックアップ筺体には、プリズムを固定する部分に、光ピックアップ筺体の他の面より突出させた台座を備える。台座には、紫外線硬化型接着剤を塗布する接着面から、接着面以外の面に貫通する貫通孔を有する。さらに、接着面に、台座の外周と貫通孔を連通する溝を有し、溝の幅は台座の外周から貫通孔に向かって断面が階段状に広がる形状となっている。
光ピックアップ装置を組み立てる際に、光学素子を固定するために紫外線硬化型接着剤を塗布する作業回数が多く、作業性が悪いという課題が生じる
【解決手段】
光ピックアップ筺体には、プリズムを固定する部分に、光ピックアップ筺体の他の面より突出させた台座を備える。台座には、紫外線硬化型接着剤を塗布する接着面から、接着面以外の面に貫通する貫通孔を有する。さらに、接着面に、台座の外周と貫通孔を連通する溝を有し、溝の幅は台座の外周から貫通孔に向かって断面が階段状に広がる形状となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録・再生を行う光ピックアップ装置及び光学部品の接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置とは、光ディスク装置に搭載され、光ディスク上に情報を記録、または情報を読み取る装置であり、さらにその際に照射するレーザ光を制御する装置である。
【0003】
光ピックアップ装置では、レーザダイオードから照射されたレーザ光をレンズ、プリズム、ミラー等の光学素子を介し、対物レンズに導き、光ディスク上で収束させることで光ディスク上への情報の記録を行う。逆に、光ディスクに照射したレーザ光の反射光を対物レンズおよび光学素子を介し、受光素子に導くことで光ディスク上の情報を読み取る。そのため、これらの部品がすべて光ピックアップ筺体内に搭載されている。
【0004】
また、光ディスク装置は、記憶容量の増大が求められており、これまでのCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)に加え、記録密度を向上させたBD(Blu―ray Disc)に対応することが求められている。
【0005】
このような複数の光ディスクに対応するには、光ピックアップ装置内に、それぞれの光ディスクに対応するレーザ素子、受光素子、光学素子を搭載する必要がある。そのため、光ピックアップ装置に搭載される部品点数が増大しており、組立作業性の向上が重要な課題となっている。そこで、一般的には紫外線硬化型接着剤を使用して各部品を光ピックアップ筺体に接着する構造となっている。
【0006】
このような構造の一例として例えば、特許文献1では、光学素子と光ピックアップ筺体の間に接着剤層を介材させて接着固定している。しかし、この構造では、紫外線を直接紫外線硬化型接着剤に照射することができず、光学素子を介して照射することになるため、均一に紫外線を照射することが容易ではない。そのため、紫外線硬化型接着剤の硬化が不十分になりやすい。
【0007】
硬化が不十分であると、光ピックアップ装置に落下衝撃などの外的な力が加わった時に、光学素子が変位したり脱落したりすることにより、光ディスクへの情報の記録、再生精度が低下する。そのため、光学素子は、十分な強度で光ピックアップ筺体に固定されていることが求められており、接着剤に紫外線を直接照射する構造が望ましい。
【0008】
そこで、例えば特許文献2では、光学素子を固定する光ピックアップ筺体の座面に貫通孔を形成し、貫通孔内に紫外線硬化型の接着剤を充填し、貫通孔を介して紫外線を照射する。これにより、光学素子を介さず、接着剤に直接紫外線を照射することができるため、接着剤に十分な紫外線を照射でき高い硬化による接着を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−210851号公報
【特許文献2】特開2007−213689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2のように接着座面と、この接着座面中央の貫通孔とで光学部品を筺体に強固に接着することが可能であるが、接着作業上、以下のごとき問題がある。
【0011】
紫外線硬化型接着剤を接着座面に塗布する工程と、貫通孔の下方から注入による塗布工程の2回の塗布作業を必要である。そのため接着固定を行う際の工数が増え、ピックアップ装置の組み立て作業効率が悪いという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、光ピックアップ筺体へ接着剤塗布工程を削減し、信頼性の高い光ピックアップ装置、さらには光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、光ピックアップ筺体の表面に対物レンズやプリズム等の光学部材を紫外線硬化型接着剤で接着した光ピックアップ装置において、前記光ピックアップ筺体の面より突出して備えられた台座と、この台座の上面に設けられた前記光学部材用の接着面と、この接着面の中央部から前記光ピックアップ筺体の裏面まで貫通して設けられた貫通孔と、この貫通孔から前記台座の側壁面まで連通して設けられた溝を前記接着面に備えてなり、前記貫通孔で開口する溝は前記台座の側壁面で開口する溝より大きいことにより達成される。
【0014】
また上記目的は、前記溝は前記接着面に複数本でかつ放射状に設けられたことが好ましい。
【0015】
また上記目的は、前記接着面に接着される光学部材はプリズムであることが好ましい。
【0016】
また上記目的は、前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって段階的に広げられて形成されていることが好ましい。
【0017】
また上記目的は、前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって次第に広がるテーパー形状で形成されていることが好ましい。
【0018】
また上記目的は、前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって次第に深くなるテーパー形状で形成されることが好ましい。
【0019】
また上記目的は、前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって段階的に深くなる形状で形成されることが好ましい。
【0020】
また上記目的は、光ピックアップ筺体上に搭載された台座の接着面に形成された溝に紫外線硬化型接着剤を塗布する工程と、前記紫外線硬化型接着剤を光学部材で押圧して前記溝と前記接着面の中央部から前記台座の裏面まで貫通して設けられた貫通孔まで流入させる工程と、前記光学部材を通して前記接着面上の前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する第一の紫外線硬化工程と、前記貫通孔内に流入した前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する第二の接着剤硬化工程とからなることにより達成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光ピックアップ筺体へ接着剤塗布工程を削減し、信頼性の高い光ピックアップ装置、さらには光ディスク装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一般的な光ディスクドライブ装置の概略平面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るプリズム固定における要部斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】実施例1に係るプリズム接着工程を示したフロー図である。
【図6】比較例におけるプリズムの接着手順を示した要部断面図である。
【図7】実施例1に係るプリズムの固定手順を示した概略断面図である。
【図8】実施例1に係る台座の溝を紫外線硬化接着剤が押し広げられる原理を示す概略平面図である。
【図9】実施例2に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
【図10】実施例3に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
【図11】実施例4に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施例を説明する前に一般的な光ピックアップ装置の概略を図1で説明する。
図1は一般的な光ディスクドライブ装置の概略平面図である。
【0024】
図1において、光ピックアップ装置2は、光ディスクドライブ装置1中にガイドバー11によって保持され、光ディスク3の半径方向に摺動するようになっている。光ピックアップ装置1は回転する光ディスク3の情報の記録および再生を行うためのレーザ射出部であるレーザ素子5と、光ディスク3からの反射光を受光する受光素子4と、レーザ素子5から射出されたレーザ光5aを光ディスク3に導くプリズム6やレンズ7と、光ディスク3上にレーザ光5aを収束させる対物レンズ8を搭載する光ピックアップ筺体20から構成されている。光ピックアップ筺体20上のレーザ素子5、受光素子4、プリズム6、レンズ7は接着剤24(以下、接着剤24という。詳細は図2で説明する)によって接着固定されている。
【0025】
各構成要素の材料としては、例えば光ピックアップ筺体20はマグネシウムダイカスト、亜鉛ダイカスト、アルミダイカスト、プラスチックなどで形成されている。また、プリズム6、レンズ7、対物レンズ8はガラス、プラスチックなど形成されている。
【実施例1】
【0026】
図2は本発明の実施例1に係るプリズム固定における要部斜視図である。
図2において、プリズム6が固定される光ピックアップ筺体20の対向位置には光ピックアップ筺体20面よりも突出させた台座21が備えられている。この台座21には、接着剤24(図3に示す)を塗布するための接着面21aが形成され、この接着面21aの中央部には台座21を底面21b方向に貫通する貫通孔23が設けられている。接着面21aには貫通孔23から座面21の外周壁面21cまで連続する溝22が形成されている。
【0027】
図3は図2のA−A線断面図である。
図3において、台座21とプリズム6との間には接着剤24の薄い層が形成されて接着面21aにプリズム6が固定される。接着剤24は台座21中央の貫通孔23にも侵入している。
【0028】
図4は図3のB−B線断面図である。
図4において、台座21の接着面21aに形成された溝22は放射状に複数本設けられている。この溝22は貫通孔23で最大の開口となり、台座21の側壁部では絞られて最も小さい開口となっている。本実施例で示した溝22は段階的に絞り込んだ形状となっている。
【0029】
図4の点線で示した部分は最初に接着剤24を塗布する位置で、溝22上に塗布させたものである。
【0030】
本実施例による接着剤塗布と従来の接着剤塗布を図5を使って比較する。
【0031】
図5(a)〜(c)は比較例におけるプリズムの接着手順を示した要部断面図である。
【0032】
図5(a)において、接着面21aに接着剤24を塗布する。次に、図5(b)において、プリズム6を接着面21aに押しつけ、接着剤24を接着面21a薄く押し広げる。その後、接着剤24に向けて紫外線9aをプリズム6を透過させて照射する。紫外線照射によって接着剤24が硬化し、プリズム6が台座21の接着面21aに接着される。
【0033】
図5(c)において、台座21の底面21b方向から貫通孔23にシリンジ25を用いて接着剤24を充填する。貫通孔23内に充填された接着剤24に向けてから紫外線9bを照射し、硬化させることでプリズム6を光ピックアップ筺体20に固定される。
【0034】
このとき、接着面21aに過剰量の接着剤24を塗布すると、プリズム6を押し付けたときに、接着剤24は台座21から漏れ出してしまい、プリズム6の表面に接着剤24が広がってしまう恐れがある。
【0035】
そのため、接着面21a塗布する接着剤24の量が過剰にならないように制限する必要がある。さらに、接着強度を高めるために、貫通孔23に接着剤24を充填し、硬化させる必要がある。そのため、プリズム6を台座21に固定するために、接着剤24を2回塗布する必要があり、作業工数が多くなり、光ピックアップ装置1の組立性が悪化してしまうことになる。
【0036】
ここで、本実施例によるプリズム接着工程を図6を使って説明する。
【0037】
図6はプリズム接着工程を示したフロー図である。
図6において、Step1で台座22の接着面21aの溝22上に接着剤24(以下、接着剤24という)を塗布する。Step2でプリズム6を接着剤24上に搭載し、このプリズム6で接着剤24を押圧する。Step3接着剤24を押圧することで接着剤24が接着面21a及び溝22内で広がる。Step4で溝22の大開口方向に接着剤24が流動する。Step5で接着剤24が大開口側溝から中央の貫通孔23内に流入する。Step6で紫外線をプリズム方向と台座の底面方向から照射し、接着剤を硬化させる。
【0038】
このような工程によって本実施例では、1回の接着剤塗布で台座20の接着面21aと貫通孔23に接着剤を塗布することができる。
つまり、溝22の上面に塗布された接着剤24がプリズム6で押圧されると、接着剤24は抵抗が少ない方向(溝22の開口が大きい方向)に押し流され、貫通孔23に流入することになる。そのため、従来は接着剤24を接着面21aと貫通孔23とに2回にわたって塗布していたものが、1回の塗布作業で完了する。
【0039】
図7を使ってさらに詳細に説明する。
【0040】
図7は実施例1におけるプリズムの固定手順を示した概略断面図である。
【0041】
図7(a)に示すように、台座21の接着面21aに接着剤24を塗布する。次に、図7(b)に示すように、プリズム6を接着面21aに押しつける。このとき、接着剤24は、接着面21aを広がり、また、溝22に流れ込む。ここで、溝22が貫通孔23に向かって階段状に広がる形状となっているため、接着剤24は貫通孔23に向かって押し広げられ、貫通孔23に充填される。
【0042】
ここで、紫外線9aを照射し、接着面21aに広がる接着剤24を硬化させる。その後、貫通孔23から紫外線9bを照射することにより、貫通孔23内に充填された接着剤24を完全に硬化させることができる。
【0043】
続いて、接着剤24が貫通孔23方向に押し広げられる原理を、接着面21aに形成した溝22の概略平面図を示した図8を用いて説明する。
図8は実施例1による台座の溝を紫外線硬化接着剤が押し広げられる原理を示す概略平面図である。
図8において、ここで△P1、△P2は紫外線硬化接着剤24の表面張力によって生じる圧力を示しており、式1によって求められる。ただし、γは接着剤24の表面張力、θは接着剤24と台座21の接触角、Rは溝の幅を示す。
【0044】
【数1】
【0045】
式1から、圧力は溝22の幅に反比例するため、△P1<△P2である。そのため、接着剤24は台座21の外周部方向には進まず、貫通孔23に向かって押し広げられる。
【0046】
ここで、表面張力の影響をより顕著に表すために、溝は細く、なおかつR1、R2、R3の差が大きいことが望ましく、たとえばR1は0.2mm、R2は0.1mm、R3は0.05mmとするとよい。
【0047】
以上の構造により、接着面21aに接着剤24を塗布し、プリズム6を取り付けることで、接着面21aだけでなく、接着面21a上の接着剤24が溝22を貫通孔方向24aに押し出され、貫通孔23に流入する。そのため、貫通孔23に改めて接着剤24を充填することなく、接着剤24の塗布面積を大きくすることができ、光ピックアップ装置2を組み立てるときの作業性を高め、さらに接着強度を高めることができるので信頼性の高い光ピックアップ装置2を提供することができる。
【0048】
さらに、台座21に溝22を形成することで、接着剤24を接着面21aに偏りなく塗布する目印となるため、接着剤24層を均一に形成することができる。
【0049】
また、上記実施例では、台座21を円柱状にしたが、円柱状に限定されるものではなく、四角柱でも良い。さらに、上記実施例では台座21の接着面21aには溝22を4本形成したが、4本に限定されるものではなく3本にしても構わない。また、接着すべき光学素子はプリズム6に限らず、レンズ、ミラーとしてもよい。
【実施例2】
【0050】
実施例2を図9を使って説明する。
図9は実施例2に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
なお、図9(a)は実施例2による光ピックアップ装置2の台座21の概略斜視図であり、図9(b)は図9(a)をz軸方向からみた概略平面図である。
【0051】
図9において、第一の実施例と同様に、光ピックアップ筺体20には、プリズム6を固定する部分に、光ピックアップ筺体20の他の面より突出させた台座21を備えている。
【0052】
台座21には、紫外線硬化型接着剤を塗布する接着面21aから、接着面以外の面21bに貫通する貫通孔23を有する。さらに、接着面21aに、台座21の外周と貫通孔23を連通する溝22を有する。
【0053】
このとき、溝22は、台座21の外周から貫通孔23に向かって階段状に広がる形状でなくてもよく、たとえば、台座21の外周から貫通孔23に向かって次第に広がるテーパー形状としてもよい。
【0054】
本実施例による構造により、プリズム6を接着面21aに押しつけることで、接着剤24は、溝22から貫通孔23に向かって押し出され、貫通孔23に充填される。ここで、紫外線9aを照射し、接着面21aに広がる接着剤24を硬化させる。その後、貫通孔23を介して紫外線9bを照射することにより、貫通孔23内に充填された接着剤24を完全に硬化させることができ、貫通孔23に改めて接着剤24を充填することなく、接着剤24の塗布面積を大きくすることができる。
【0055】
以上のことから、組み立て作業性がよい光ピックアップ装置2を提供することができる。さらに接着強度を高めることができるため、信頼性の高い光ピックアップ装置2を提供することができる。
【実施例3】
【0056】
実施例3を図10を使って説明する。
図10は実施例3に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
【0057】
なお、図10(a)は第二の実施例を適用した光ピックアップ装置2の台座21の概略斜視図であり、図10(b)は図10(a)をz軸方向からみた概略平面図である。
【0058】
図10において、第一の実施例と同様に、光ピックアップ筺体20には、プリズム6を固定する部分に、光ピックアップ筺体20の他の面より突出させた台座21を備える。台座21には、紫外線硬化型接着剤を塗布する接着面21aから、接着面以外の面21bに貫通する貫通孔23を有する。さらに、接着面21aに、台座21の外周と貫通孔23を連通する溝22を有する。
【0059】
このとき、溝22の深さは一定ではなくてもよく、たとえば、台座21の外周から貫通孔23に向かって階段状に深くなっていてもよい。
【0060】
この構造により、プリズム6を接着面21aに押しつけることで、接着剤24は、溝22から貫通孔23に向かって押し出され、貫通孔23に充填される。ここで、紫外線9aを照射し、接着面21aに広がる接着剤24を硬化させる。その後、貫通孔23を介して紫外線9bを照射することにより、貫通孔23内に充填された接着剤24を完全に硬化させることができ、貫通孔23に改めて接着剤24を充填することなく、接着剤24の塗布面積を大きくすることができる。
【0061】
以上のことから、組み立て作業性がよい光ピックアップ装置2を提供することができる。さらに接着強度を高めることができるため、信頼性の高い光ピックアップ装置2を提供することができる。
【実施例4】
【0062】
実施例4を図11を使って説明する。
図11は実施例4に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
なお、図11(a)は第二の実施例を適用した光ピックアップ装置2の台座21の概略斜視図であり、図11(b)は図11(a)をz軸方向からみた概略平面図である。
【0063】
図11において、第一の実施例と同様に、光ピックアップ筺体20には、プリズム6を固定する部分に、光ピックアップ筺体20の他の面より突出させた台座21を備える。台座21には、紫外線硬化型接着剤を塗布する接着面21aから、接着面以外の面21bに貫通する貫通孔23を有する。さらに、接着面21aに、台座21の外周と貫通孔23を連通する溝22を有する。
【0064】
このとき、溝22の深さは一定ではなくてもよく、たとえば、台座21の外周から貫通孔23に向かって階段状に深くなっていてもよい。
【0065】
この構造により、プリズム6を接着面21aに押しつけることで、接着剤24は、溝22から貫通孔23に向かって押し出され、貫通孔23に充填される。ここで、紫外線9aを照射し、接着面21aに広がる接着剤24を硬化させる。その後、貫通孔23を介して紫外線9bを照射することにより、貫通孔23内に充填された接着剤24を完全に硬化させることができ、貫通孔23に改めて接着剤24を充填することなく、接着剤24の塗布面積を大きくすることができる。
【0066】
本発明によれば、台座に塗布した紫外線硬化型接着剤が、光学素子を取り付ける際に、接着面に広がるだけでなく、接着面に形成した溝に流れ込み、貫通孔方向に押し出され、貫通孔に充填される。そのため、台座に紫外線硬化型接着剤を塗布した後、貫通孔に紫外線硬化型接着剤を充填する必要がなく、組立作業性の良い光ピックアップ装置を提供することができる。
【0067】
なお、各実施例では溝を十字状に形成したが、十字状に限定されるものではなく、複数の放射状溝であれば本数に限定はない。また上述したが、溝は接着剤の塗布位置の目印としても利用できるため、接着剤の均等な塗布が可能となり、均一な厚さの接着層を形成することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…光ディスクドライブ装置、2…光ピックアップ装置、3…光ディスク、3a…光ディスクの回転方向、4…受光素子、5…レーザ素子、5a…レーザ光、6…プリズム、7…レンズ、8…対物レンズ、9a、9b…紫外線、11…ガイドバー、20…光ピックアップ筺体、21…台座、21a…接着面、21b…底面、21c…外周壁面、22…溝、23…貫通孔、24…紫外線硬化型接着剤、25…シリンジ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録・再生を行う光ピックアップ装置及び光学部品の接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置とは、光ディスク装置に搭載され、光ディスク上に情報を記録、または情報を読み取る装置であり、さらにその際に照射するレーザ光を制御する装置である。
【0003】
光ピックアップ装置では、レーザダイオードから照射されたレーザ光をレンズ、プリズム、ミラー等の光学素子を介し、対物レンズに導き、光ディスク上で収束させることで光ディスク上への情報の記録を行う。逆に、光ディスクに照射したレーザ光の反射光を対物レンズおよび光学素子を介し、受光素子に導くことで光ディスク上の情報を読み取る。そのため、これらの部品がすべて光ピックアップ筺体内に搭載されている。
【0004】
また、光ディスク装置は、記憶容量の増大が求められており、これまでのCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)に加え、記録密度を向上させたBD(Blu―ray Disc)に対応することが求められている。
【0005】
このような複数の光ディスクに対応するには、光ピックアップ装置内に、それぞれの光ディスクに対応するレーザ素子、受光素子、光学素子を搭載する必要がある。そのため、光ピックアップ装置に搭載される部品点数が増大しており、組立作業性の向上が重要な課題となっている。そこで、一般的には紫外線硬化型接着剤を使用して各部品を光ピックアップ筺体に接着する構造となっている。
【0006】
このような構造の一例として例えば、特許文献1では、光学素子と光ピックアップ筺体の間に接着剤層を介材させて接着固定している。しかし、この構造では、紫外線を直接紫外線硬化型接着剤に照射することができず、光学素子を介して照射することになるため、均一に紫外線を照射することが容易ではない。そのため、紫外線硬化型接着剤の硬化が不十分になりやすい。
【0007】
硬化が不十分であると、光ピックアップ装置に落下衝撃などの外的な力が加わった時に、光学素子が変位したり脱落したりすることにより、光ディスクへの情報の記録、再生精度が低下する。そのため、光学素子は、十分な強度で光ピックアップ筺体に固定されていることが求められており、接着剤に紫外線を直接照射する構造が望ましい。
【0008】
そこで、例えば特許文献2では、光学素子を固定する光ピックアップ筺体の座面に貫通孔を形成し、貫通孔内に紫外線硬化型の接着剤を充填し、貫通孔を介して紫外線を照射する。これにより、光学素子を介さず、接着剤に直接紫外線を照射することができるため、接着剤に十分な紫外線を照射でき高い硬化による接着を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−210851号公報
【特許文献2】特開2007−213689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2のように接着座面と、この接着座面中央の貫通孔とで光学部品を筺体に強固に接着することが可能であるが、接着作業上、以下のごとき問題がある。
【0011】
紫外線硬化型接着剤を接着座面に塗布する工程と、貫通孔の下方から注入による塗布工程の2回の塗布作業を必要である。そのため接着固定を行う際の工数が増え、ピックアップ装置の組み立て作業効率が悪いという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、光ピックアップ筺体へ接着剤塗布工程を削減し、信頼性の高い光ピックアップ装置、さらには光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、光ピックアップ筺体の表面に対物レンズやプリズム等の光学部材を紫外線硬化型接着剤で接着した光ピックアップ装置において、前記光ピックアップ筺体の面より突出して備えられた台座と、この台座の上面に設けられた前記光学部材用の接着面と、この接着面の中央部から前記光ピックアップ筺体の裏面まで貫通して設けられた貫通孔と、この貫通孔から前記台座の側壁面まで連通して設けられた溝を前記接着面に備えてなり、前記貫通孔で開口する溝は前記台座の側壁面で開口する溝より大きいことにより達成される。
【0014】
また上記目的は、前記溝は前記接着面に複数本でかつ放射状に設けられたことが好ましい。
【0015】
また上記目的は、前記接着面に接着される光学部材はプリズムであることが好ましい。
【0016】
また上記目的は、前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって段階的に広げられて形成されていることが好ましい。
【0017】
また上記目的は、前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって次第に広がるテーパー形状で形成されていることが好ましい。
【0018】
また上記目的は、前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって次第に深くなるテーパー形状で形成されることが好ましい。
【0019】
また上記目的は、前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって段階的に深くなる形状で形成されることが好ましい。
【0020】
また上記目的は、光ピックアップ筺体上に搭載された台座の接着面に形成された溝に紫外線硬化型接着剤を塗布する工程と、前記紫外線硬化型接着剤を光学部材で押圧して前記溝と前記接着面の中央部から前記台座の裏面まで貫通して設けられた貫通孔まで流入させる工程と、前記光学部材を通して前記接着面上の前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する第一の紫外線硬化工程と、前記貫通孔内に流入した前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する第二の接着剤硬化工程とからなることにより達成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光ピックアップ筺体へ接着剤塗布工程を削減し、信頼性の高い光ピックアップ装置、さらには光ディスク装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一般的な光ディスクドライブ装置の概略平面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るプリズム固定における要部斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】実施例1に係るプリズム接着工程を示したフロー図である。
【図6】比較例におけるプリズムの接着手順を示した要部断面図である。
【図7】実施例1に係るプリズムの固定手順を示した概略断面図である。
【図8】実施例1に係る台座の溝を紫外線硬化接着剤が押し広げられる原理を示す概略平面図である。
【図9】実施例2に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
【図10】実施例3に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
【図11】実施例4に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施例を説明する前に一般的な光ピックアップ装置の概略を図1で説明する。
図1は一般的な光ディスクドライブ装置の概略平面図である。
【0024】
図1において、光ピックアップ装置2は、光ディスクドライブ装置1中にガイドバー11によって保持され、光ディスク3の半径方向に摺動するようになっている。光ピックアップ装置1は回転する光ディスク3の情報の記録および再生を行うためのレーザ射出部であるレーザ素子5と、光ディスク3からの反射光を受光する受光素子4と、レーザ素子5から射出されたレーザ光5aを光ディスク3に導くプリズム6やレンズ7と、光ディスク3上にレーザ光5aを収束させる対物レンズ8を搭載する光ピックアップ筺体20から構成されている。光ピックアップ筺体20上のレーザ素子5、受光素子4、プリズム6、レンズ7は接着剤24(以下、接着剤24という。詳細は図2で説明する)によって接着固定されている。
【0025】
各構成要素の材料としては、例えば光ピックアップ筺体20はマグネシウムダイカスト、亜鉛ダイカスト、アルミダイカスト、プラスチックなどで形成されている。また、プリズム6、レンズ7、対物レンズ8はガラス、プラスチックなど形成されている。
【実施例1】
【0026】
図2は本発明の実施例1に係るプリズム固定における要部斜視図である。
図2において、プリズム6が固定される光ピックアップ筺体20の対向位置には光ピックアップ筺体20面よりも突出させた台座21が備えられている。この台座21には、接着剤24(図3に示す)を塗布するための接着面21aが形成され、この接着面21aの中央部には台座21を底面21b方向に貫通する貫通孔23が設けられている。接着面21aには貫通孔23から座面21の外周壁面21cまで連続する溝22が形成されている。
【0027】
図3は図2のA−A線断面図である。
図3において、台座21とプリズム6との間には接着剤24の薄い層が形成されて接着面21aにプリズム6が固定される。接着剤24は台座21中央の貫通孔23にも侵入している。
【0028】
図4は図3のB−B線断面図である。
図4において、台座21の接着面21aに形成された溝22は放射状に複数本設けられている。この溝22は貫通孔23で最大の開口となり、台座21の側壁部では絞られて最も小さい開口となっている。本実施例で示した溝22は段階的に絞り込んだ形状となっている。
【0029】
図4の点線で示した部分は最初に接着剤24を塗布する位置で、溝22上に塗布させたものである。
【0030】
本実施例による接着剤塗布と従来の接着剤塗布を図5を使って比較する。
【0031】
図5(a)〜(c)は比較例におけるプリズムの接着手順を示した要部断面図である。
【0032】
図5(a)において、接着面21aに接着剤24を塗布する。次に、図5(b)において、プリズム6を接着面21aに押しつけ、接着剤24を接着面21a薄く押し広げる。その後、接着剤24に向けて紫外線9aをプリズム6を透過させて照射する。紫外線照射によって接着剤24が硬化し、プリズム6が台座21の接着面21aに接着される。
【0033】
図5(c)において、台座21の底面21b方向から貫通孔23にシリンジ25を用いて接着剤24を充填する。貫通孔23内に充填された接着剤24に向けてから紫外線9bを照射し、硬化させることでプリズム6を光ピックアップ筺体20に固定される。
【0034】
このとき、接着面21aに過剰量の接着剤24を塗布すると、プリズム6を押し付けたときに、接着剤24は台座21から漏れ出してしまい、プリズム6の表面に接着剤24が広がってしまう恐れがある。
【0035】
そのため、接着面21a塗布する接着剤24の量が過剰にならないように制限する必要がある。さらに、接着強度を高めるために、貫通孔23に接着剤24を充填し、硬化させる必要がある。そのため、プリズム6を台座21に固定するために、接着剤24を2回塗布する必要があり、作業工数が多くなり、光ピックアップ装置1の組立性が悪化してしまうことになる。
【0036】
ここで、本実施例によるプリズム接着工程を図6を使って説明する。
【0037】
図6はプリズム接着工程を示したフロー図である。
図6において、Step1で台座22の接着面21aの溝22上に接着剤24(以下、接着剤24という)を塗布する。Step2でプリズム6を接着剤24上に搭載し、このプリズム6で接着剤24を押圧する。Step3接着剤24を押圧することで接着剤24が接着面21a及び溝22内で広がる。Step4で溝22の大開口方向に接着剤24が流動する。Step5で接着剤24が大開口側溝から中央の貫通孔23内に流入する。Step6で紫外線をプリズム方向と台座の底面方向から照射し、接着剤を硬化させる。
【0038】
このような工程によって本実施例では、1回の接着剤塗布で台座20の接着面21aと貫通孔23に接着剤を塗布することができる。
つまり、溝22の上面に塗布された接着剤24がプリズム6で押圧されると、接着剤24は抵抗が少ない方向(溝22の開口が大きい方向)に押し流され、貫通孔23に流入することになる。そのため、従来は接着剤24を接着面21aと貫通孔23とに2回にわたって塗布していたものが、1回の塗布作業で完了する。
【0039】
図7を使ってさらに詳細に説明する。
【0040】
図7は実施例1におけるプリズムの固定手順を示した概略断面図である。
【0041】
図7(a)に示すように、台座21の接着面21aに接着剤24を塗布する。次に、図7(b)に示すように、プリズム6を接着面21aに押しつける。このとき、接着剤24は、接着面21aを広がり、また、溝22に流れ込む。ここで、溝22が貫通孔23に向かって階段状に広がる形状となっているため、接着剤24は貫通孔23に向かって押し広げられ、貫通孔23に充填される。
【0042】
ここで、紫外線9aを照射し、接着面21aに広がる接着剤24を硬化させる。その後、貫通孔23から紫外線9bを照射することにより、貫通孔23内に充填された接着剤24を完全に硬化させることができる。
【0043】
続いて、接着剤24が貫通孔23方向に押し広げられる原理を、接着面21aに形成した溝22の概略平面図を示した図8を用いて説明する。
図8は実施例1による台座の溝を紫外線硬化接着剤が押し広げられる原理を示す概略平面図である。
図8において、ここで△P1、△P2は紫外線硬化接着剤24の表面張力によって生じる圧力を示しており、式1によって求められる。ただし、γは接着剤24の表面張力、θは接着剤24と台座21の接触角、Rは溝の幅を示す。
【0044】
【数1】
【0045】
式1から、圧力は溝22の幅に反比例するため、△P1<△P2である。そのため、接着剤24は台座21の外周部方向には進まず、貫通孔23に向かって押し広げられる。
【0046】
ここで、表面張力の影響をより顕著に表すために、溝は細く、なおかつR1、R2、R3の差が大きいことが望ましく、たとえばR1は0.2mm、R2は0.1mm、R3は0.05mmとするとよい。
【0047】
以上の構造により、接着面21aに接着剤24を塗布し、プリズム6を取り付けることで、接着面21aだけでなく、接着面21a上の接着剤24が溝22を貫通孔方向24aに押し出され、貫通孔23に流入する。そのため、貫通孔23に改めて接着剤24を充填することなく、接着剤24の塗布面積を大きくすることができ、光ピックアップ装置2を組み立てるときの作業性を高め、さらに接着強度を高めることができるので信頼性の高い光ピックアップ装置2を提供することができる。
【0048】
さらに、台座21に溝22を形成することで、接着剤24を接着面21aに偏りなく塗布する目印となるため、接着剤24層を均一に形成することができる。
【0049】
また、上記実施例では、台座21を円柱状にしたが、円柱状に限定されるものではなく、四角柱でも良い。さらに、上記実施例では台座21の接着面21aには溝22を4本形成したが、4本に限定されるものではなく3本にしても構わない。また、接着すべき光学素子はプリズム6に限らず、レンズ、ミラーとしてもよい。
【実施例2】
【0050】
実施例2を図9を使って説明する。
図9は実施例2に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
なお、図9(a)は実施例2による光ピックアップ装置2の台座21の概略斜視図であり、図9(b)は図9(a)をz軸方向からみた概略平面図である。
【0051】
図9において、第一の実施例と同様に、光ピックアップ筺体20には、プリズム6を固定する部分に、光ピックアップ筺体20の他の面より突出させた台座21を備えている。
【0052】
台座21には、紫外線硬化型接着剤を塗布する接着面21aから、接着面以外の面21bに貫通する貫通孔23を有する。さらに、接着面21aに、台座21の外周と貫通孔23を連通する溝22を有する。
【0053】
このとき、溝22は、台座21の外周から貫通孔23に向かって階段状に広がる形状でなくてもよく、たとえば、台座21の外周から貫通孔23に向かって次第に広がるテーパー形状としてもよい。
【0054】
本実施例による構造により、プリズム6を接着面21aに押しつけることで、接着剤24は、溝22から貫通孔23に向かって押し出され、貫通孔23に充填される。ここで、紫外線9aを照射し、接着面21aに広がる接着剤24を硬化させる。その後、貫通孔23を介して紫外線9bを照射することにより、貫通孔23内に充填された接着剤24を完全に硬化させることができ、貫通孔23に改めて接着剤24を充填することなく、接着剤24の塗布面積を大きくすることができる。
【0055】
以上のことから、組み立て作業性がよい光ピックアップ装置2を提供することができる。さらに接着強度を高めることができるため、信頼性の高い光ピックアップ装置2を提供することができる。
【実施例3】
【0056】
実施例3を図10を使って説明する。
図10は実施例3に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
【0057】
なお、図10(a)は第二の実施例を適用した光ピックアップ装置2の台座21の概略斜視図であり、図10(b)は図10(a)をz軸方向からみた概略平面図である。
【0058】
図10において、第一の実施例と同様に、光ピックアップ筺体20には、プリズム6を固定する部分に、光ピックアップ筺体20の他の面より突出させた台座21を備える。台座21には、紫外線硬化型接着剤を塗布する接着面21aから、接着面以外の面21bに貫通する貫通孔23を有する。さらに、接着面21aに、台座21の外周と貫通孔23を連通する溝22を有する。
【0059】
このとき、溝22の深さは一定ではなくてもよく、たとえば、台座21の外周から貫通孔23に向かって階段状に深くなっていてもよい。
【0060】
この構造により、プリズム6を接着面21aに押しつけることで、接着剤24は、溝22から貫通孔23に向かって押し出され、貫通孔23に充填される。ここで、紫外線9aを照射し、接着面21aに広がる接着剤24を硬化させる。その後、貫通孔23を介して紫外線9bを照射することにより、貫通孔23内に充填された接着剤24を完全に硬化させることができ、貫通孔23に改めて接着剤24を充填することなく、接着剤24の塗布面積を大きくすることができる。
【0061】
以上のことから、組み立て作業性がよい光ピックアップ装置2を提供することができる。さらに接着強度を高めることができるため、信頼性の高い光ピックアップ装置2を提供することができる。
【実施例4】
【0062】
実施例4を図11を使って説明する。
図11は実施例4に係るプリズム固定部の要部概略斜視図である。
なお、図11(a)は第二の実施例を適用した光ピックアップ装置2の台座21の概略斜視図であり、図11(b)は図11(a)をz軸方向からみた概略平面図である。
【0063】
図11において、第一の実施例と同様に、光ピックアップ筺体20には、プリズム6を固定する部分に、光ピックアップ筺体20の他の面より突出させた台座21を備える。台座21には、紫外線硬化型接着剤を塗布する接着面21aから、接着面以外の面21bに貫通する貫通孔23を有する。さらに、接着面21aに、台座21の外周と貫通孔23を連通する溝22を有する。
【0064】
このとき、溝22の深さは一定ではなくてもよく、たとえば、台座21の外周から貫通孔23に向かって階段状に深くなっていてもよい。
【0065】
この構造により、プリズム6を接着面21aに押しつけることで、接着剤24は、溝22から貫通孔23に向かって押し出され、貫通孔23に充填される。ここで、紫外線9aを照射し、接着面21aに広がる接着剤24を硬化させる。その後、貫通孔23を介して紫外線9bを照射することにより、貫通孔23内に充填された接着剤24を完全に硬化させることができ、貫通孔23に改めて接着剤24を充填することなく、接着剤24の塗布面積を大きくすることができる。
【0066】
本発明によれば、台座に塗布した紫外線硬化型接着剤が、光学素子を取り付ける際に、接着面に広がるだけでなく、接着面に形成した溝に流れ込み、貫通孔方向に押し出され、貫通孔に充填される。そのため、台座に紫外線硬化型接着剤を塗布した後、貫通孔に紫外線硬化型接着剤を充填する必要がなく、組立作業性の良い光ピックアップ装置を提供することができる。
【0067】
なお、各実施例では溝を十字状に形成したが、十字状に限定されるものではなく、複数の放射状溝であれば本数に限定はない。また上述したが、溝は接着剤の塗布位置の目印としても利用できるため、接着剤の均等な塗布が可能となり、均一な厚さの接着層を形成することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…光ディスクドライブ装置、2…光ピックアップ装置、3…光ディスク、3a…光ディスクの回転方向、4…受光素子、5…レーザ素子、5a…レーザ光、6…プリズム、7…レンズ、8…対物レンズ、9a、9b…紫外線、11…ガイドバー、20…光ピックアップ筺体、21…台座、21a…接着面、21b…底面、21c…外周壁面、22…溝、23…貫通孔、24…紫外線硬化型接着剤、25…シリンジ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップ筺体の表面に対物レンズやプリズム等の光学部材を紫外線硬化型接着剤で接着した光ピックアップ装置において、
前記光ピックアップ筺体の面より突出して備えられた台座と、この台座の上面に設けられた前記光学部材用の接着面と、この接着面の中央部から前記光ピックアップ筺体の裏面まで貫通して設けられた貫通孔と、この貫通孔から前記台座の側壁面まで連通して設けられた溝を前記接着面に備えてなり、
前記貫通孔で開口する溝は前記台座の側壁面で開口する溝より大きいことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記接着面に複数本でかつ放射状に設けられているたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記接着面に接着される光学部材はプリズムであることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって段階的に広げられて形成されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって次第に広がるテーパー形状で形成されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって次第に深くなるテーパー形状で形成されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって段階的に深くなる形状で形成されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
光ピックアップ筺体上に搭載された台座の接着面に形成された溝に紫外線硬化型接着剤を塗布する工程と、
前記紫外線硬化型接着剤を光学部材で押圧して前記溝と前記接着面の中央部から前記台座の裏面まで貫通して設けられた貫通孔まで流入させる工程と、
前記光学部材を通して前記接着面上の前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する第一の紫外線硬化工程と、
前記貫通孔内に流入した前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する第二の接着剤硬化工程とからなる光学部品の接着方法。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置を具備してなる光ディスク装置。
【請求項1】
光ピックアップ筺体の表面に対物レンズやプリズム等の光学部材を紫外線硬化型接着剤で接着した光ピックアップ装置において、
前記光ピックアップ筺体の面より突出して備えられた台座と、この台座の上面に設けられた前記光学部材用の接着面と、この接着面の中央部から前記光ピックアップ筺体の裏面まで貫通して設けられた貫通孔と、この貫通孔から前記台座の側壁面まで連通して設けられた溝を前記接着面に備えてなり、
前記貫通孔で開口する溝は前記台座の側壁面で開口する溝より大きいことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記接着面に複数本でかつ放射状に設けられているたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記接着面に接着される光学部材はプリズムであることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって段階的に広げられて形成されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって次第に広がるテーパー形状で形成されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって次第に深くなるテーパー形状で形成されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記溝は前記台座の側壁面から前記貫通孔に向かって段階的に深くなる形状で形成されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
光ピックアップ筺体上に搭載された台座の接着面に形成された溝に紫外線硬化型接着剤を塗布する工程と、
前記紫外線硬化型接着剤を光学部材で押圧して前記溝と前記接着面の中央部から前記台座の裏面まで貫通して設けられた貫通孔まで流入させる工程と、
前記光学部材を通して前記接着面上の前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する第一の紫外線硬化工程と、
前記貫通孔内に流入した前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する第二の接着剤硬化工程とからなる光学部品の接着方法。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置を具備してなる光ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−146363(P2012−146363A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4218(P2011−4218)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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