説明

光ピックアップ装置及び情報記録再生装置

【課題】 点数を増加することなく、信号品位の悪化の低減を実現する光量調整手段を備えた光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 光ピックアップ装置において、光ビームの光量を調整する光量調整手段は、異なる透過率を有する第1透過部と第2透過部とが同一平面上に形成された透過素子と、透過素子を支持するための支持手段と、光ビームの光軸の方向に垂直な方向の軸を回転軸として、透過素子を回転駆動するための回転駆動手段とを有している。この回転駆動により、光ビームが透過素子を出力する際の光量を切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCD、DVD、Blu−ray Discといった光ディスクを用いた情報記録再生装置と、情報記録再生装置に用いられる光ピックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVD(digital versatile disc)は、デジタルデータをCD(Compact Disc Interactive)の約6倍の記録密度で記録することが可能であり、映画や音楽などの大容量のデジタルデータを書き込むことができる情報記録媒体(光ディスク)として知られている。近年は、記録対象となる情報の情報量が増大しているため、さらに容量の大きい情報記録媒体が求められている。
【0003】
光ディスクの情報記録媒体の容量を大きくするためには、情報の記録密度を高くする必要がある。これは一般に、データの書き込み時および読み出し時に光ディスクに放射されるレーザ光のスポット径を小さくすることによって実現される。そして、光のスポット径を小さくするためには、レーザ光の波長をより短くし、かつ、対物レンズの開口数(NA)を大きくすればよい。例えば波長405nmの青色レーザ光と、NAが0.85の対物レンズを使用することによって、現在のDVDのさらに5倍の記録密度で情報を記録することができる。
【0004】
青色レーザ等を用いてレーザ光の短波長化することに加え、さらに記録密度を高めるため、1枚の光ディスクに複数の記録層を設ける技術の開発も進んでいる。例えば、2層の記録層を有する光ディスクを得ることが可能になれば、上述のレーザ光の短波長化およびNAの大きな対物レンズの使用と併せて、記録密度は1層の記録層を有するDVDの約10倍になる。
【0005】
しかしながら、青色レーザを光源とする光ディスク装置では、青色レーザにおける再生用の光パワーのマージンは極めて小さいため、光源の量子ノイズが問題となる。
【0006】
そこで特開2006−40432号公報の光ディスク装置では、光量調整手段として、レーザ光の経路に対して回転によって挿脱可能に光ビーム透過調整手段(強度フィルタ)を設けた光ピックアップが開示されている。
【0007】
図3、図4に上記の従来技術を示す。
【0008】
図3に、従来の光ディスク装置10の機能ブロックの構成を示す。光ディスク装置10は、光ピックアップ装置11と、信号処理回路12と、サーボ制御回路13とを備えている。
【0009】
まず、光ディスク装置10の動作の概要を説明する。光ピックアップ装置11は、光ディスク14に対して光ビームを放射して光ディスク14からの反射光を検出する。そして、反射光の検出位置および検出光量に応じた光量信号を出力する。信号処理回路12は、光ピックアップ装置11から出力される光量信号に応じて、光ディスク14における光ビームの合焦状態を示すフォーカスエラー(FE)信号や、光ビームの焦点位置と光ディスク14のトラックとの位置関係を示すトラッキングエラー(TE)信号等を生成して出力する。FE信号やTE信号は、サーボ信号と総称される。サーボ制御回路13は、それらの信号に基づいて駆動信号を生成して出力する。駆動信号は、後述する光ピックアップ装置11のアクチュエータコイル6に入力され、対物レンズ5の位置が調整される。これにより、光ディスク14に放射される光ビームの焦点が記録層から外れないように制御される。
【0010】
光ビームの焦点が記録層から外れないように制御されている状態において、信号処理回路12は光量信号に基づいて再生信号を出力する。再生信号は光ディスク14に書き込まれたデータを示している。これにより、光ディスク14からのデータの読み出しが実現される。また、光ビームの光パワーを再生時よりも大きくすることにより、光ディスク14にデータを書き込むことができる。
【0011】
以下、光ピックアップ装置11の構成を説明する。光ビーム透過調整手段100は、光透過率のことなる2個の透過素子を回転駆動で切換えて光ビームの光パワーを調整することができる。
【0012】
光ピックアップ装置11は、光源1と、光ビーム透過調整手段100と、ビームスプリッタ2と、コリメートレンズ3と、ミラー4と、対物レンズ5と、アクチュエータコイル6と、マルチレンズ7と、フォトダイオード8とを備える。
【0013】
光源1は、GaN系の青色発光する半導体レーザである。光源1はまた、光ディスク14の記録層に対して、データの読み出しおよび書き込みのためのコヒーレント光を放射する。
【0014】
図4(a)および(b)を参照しながら、光ビーム透過調整手段100の詳細な構成を説明する。
【0015】
図4(a)は、光ビーム20が光ビーム透過調整手段100の光学フィルタを透過するときの斜視図であり、図4(b)は光ビーム20が光ビーム透過調整手段100の光学フィルタを透過しないときの斜視図である。光ビーム20は矢印によって示す方向に進行する。
【0016】
光ビーム透過調整手段100は、第1の透過素子101と、第2の透過素子102と、回転軸103と、支持手段104と、回転駆動手段105とを有する。第1の透過素子101には透過率が50%の光学フィルタ101aが塗布されており、透過する光ビームの光パワーを減衰させる。一方、第2の透過素子102には光学フィルタは塗布されおらず、光ビームの光パワーを概ね維持した状態で光ビーム20を透過させる。支持手段104は、回転軸103周りに第1の透過素子101と第2の透過素子102とを回転可能に支持する。回転軸103は、第1の透過素子101および第2の透過素子102に平行である。すなわち、回転軸103は、光ビーム20の進行方向と垂直である。回転駆動手段105は、第1の透過素子101と第2の透過素子102とを回転軸103周りに回転駆動させる。
【0017】
光ビーム透過調整手段100は、回転駆動手段105を利用して回転軸103周りの回転駆動を行うことにより、光ビーム20が第1の透過素子101を透過するか(図4(a))、第2の透過素子102を透過するか(図4(b))を切換えることができる。すなわち、光ビーム20が光学フィルタ101aを透過するか透過しないかを切換えることができる。光ビーム20が光学フィルタ101aを透過した場合の光パワーは、透過しない場合の光パワーの50%となる。
【0018】
再び図3を参照する。ビームスプリッタ2は、光源1が放射する光ビームを分離する。コリメートレンズ3は、光源1が放射する光ビームを平行光に変換する。ミラー4は、入射する光ビームを反射させ、反射された光ビームを光ディスク14へと指向させる。対物レンズ5は、光ビームを光ディスク14の記録層に集光する。アクチュエータコイル6は、印加された駆動信号のレベルに応じて、光ディスク14に垂直な方向または光ディスク14に平行な方向に、対物レンズ6の位置を変化させる。マルチレンズ7は、フォトダイオード8に光ビームを集光させる。フォトダイオード8は、光ディスク14の記録層で反射された光ビームを受け取り、光量に応じて電気信号(光量信号)に変換する。なお、フォトダイオード8は複数の受光素子を含んでいてもよい。光量信号を受け取る信号処理回路12は、光量信号がいずれの受光素子から出力されたかという情報も利用して、FE信号およびTE信号を生成する。
【0019】
次に、光ディスク装置10がデータを読み出し、書き込むときの動作を説明する。前提として、光ディスク14が2層の記録層を有する場合は対物レンズ5に近い側の層の透過率は約50%と設定されているとする。このため、2層の記録層を有する光ディスクに対して記録再生に要する光パワーの大きさは、1層の記録層を有する光ディスクに対して必要な光パワーの約2倍となる。本従来技術の光ピックアップ装置11は、光ディスク14の記録層が1層か2層かによって光パワーの大きさを切換える機能を有するとして説明する。
【0020】
まず光源1は、所定の光パワーを有する光ビームを発する。このとき光ビーム透過調整手段100は、光ビームが光学フィルタ101aを透過するように配置されているとする。光ビーム透過調整手段100から出射された光ビームは、ビームスプリッタ2で反射され、コリメートレンズ3で平行光にされ、ミラー4で反射される。その後、対物レンズ5は、光ビームを光ディスク14の記録層に集光する。記録層からの反射光は、光ピックアップ装置11内を通過し、フォトダイオード8に入射する。信号処理回路12は、光量信号の信号振幅から光ディスク14が有する記録層の数を判別する。判別処理は、他にも種々考えられる。例えば、光ディスク14の内周部に製造時に層数を特定する判別情報を記録しておき、再生信号としてその判別情報を読み出して層数を特定してもよい。または、レーザ光を照射したときに記録メディアの種類によって反射光の強さが異なるため、その強さを検出して信号処理回路12において判別すればよい。または、光ディスク14がカートリッジに収納された状態で装填されるときは、光ディスク14の種類によって異なるカートリッジの形状によって判別してもよい。いずれも、装填されている光ディスクの光学的特性および/または物理的特性を用いて検出することができる。
【0021】
光ディスク14が1層の記録層を有すると判別された場合には、光ビーム透過調整手段100は第1の透過素子101および第2の透過素子102を回転させ、第1の透過素子101が光軸と垂直になる位置で、かつ、第2の透過素子102が光路から外れる位置に設定する。光学フィルタ101aは、入射した光ビームの光パワーを約50%に減衰して透過させる。
【0022】
一方、光ディスク14が2層の記録層を有すると判断された場合には、光ビーム透過調整手段100は、第1の透過素子101および第2の透過素子102を回転させて、第2の透過素子102が光軸と垂直となる位置で、かつ、第1の透過素子101が光路から外れる位置に設定する。その結果、第2の透過素子102は光ビームの光パワーを実質的に減衰することなく透過させる。
【0023】
データの書き込み時には、光スポットが形成される部分の記録層の状態がそのデータの内容に応じて変化する。一方、データの読み出し時には、光ビームは光ディスク14の記録層の状態に応じた反射率で反射される。記録層で反射した光ビームは、再び対物レンズ5を透過し、ミラー4で反射され、コリメートレンズ3を透過し、マルチレンズ7を透過してフォトダイオード8に集光される。その結果、フォトダイオード8は光量信号を生成して出力する。信号処理回路12は光量信号に基づいて、書き込まれたデータの内容を示す再生信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号等を生成する。
【特許文献1】特開2006−40432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
近年の光ディスク装置においては、装置の小型薄型化、低コスト化とともに、モバイルという過酷な使用環境に対する性能マージンの拡大が要求されている。特に近年増加しているカムコーダという製品形態においては、その要求が顕著である。
【0025】
例えば一般的に温度が上昇すると光源の量子ノイズは増加するが、カムコーダといった製品形態では、製品の小型化を実現するために電気基板といった発熱源と光ディスク装置は、高密度に配置される。これにより、光ディスク装置の温度上昇が助長される。一方、装置の冷却を促進するファンなどは、装置の大型化、高コスト化といった問題から採用することは困難である。
【0026】
また、カムコーダという製品形態では光ディスク装置の使用中に姿勢差、衝撃の付加などが容易に発生する。これは例えば使用者が撮影中に撮影する方向を急激に変化させたり、手などが当たったりする可能性が、パーソナルコンピュータやビデオレコーダといった固定された環境で使用する製品形態と比較し、格段に増加するためである。
【0027】
以上のように、光源の量子ノイズ増加に対する対策と、装置の性能マージンの確保との両立は製品自体の付加価値を高める上でも重要である。
【0028】
しかしながら上記従来例では以下のような問題点があった。
【0029】
従来例の光ビーム透過調整手段100では、第1の透過素子101と第2の透過素子102を直角に構成し支持手段104に固定する必要がある。このため、部品加工上、支持手段104に設けられた第1の透過素子101の取り付け部と、第2の透過素子102の取り付け部の各々には、相対的な角度バラツキが発生する。これにより、第1の透過素子101と第2の透過素子102には相対的な角度バラツキが生じる。以上から、従来例の課題においても示された、透過素子の切換えにより、透過素子を透過する光ビームの光軸に対する透過素子の角度ズレによる光軸ズレが発生してしまう。このため、光ディスク14の記録層で反射された光ビームの、フォトダイオード8に集光する位置にズレが発生する。これにより、上述したフォーカス信号やトラッキングエラー信号といったサーボ信号の信号品位が悪化し、再生信号や光ディスク14に記録される記録信号の品位の悪化が生じてしまう。
【0030】
本発明は上記課題に鑑み、部品点数を増加することなく、信号品位の悪化の低減を実現する光量調整手段を備えた光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題を解決するために、光ビームを発する光源と、前記光ビームの光量を調整する光量調整手段と、前記光量調整手段からの前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、を有する光ピックアップ装置において、前記光量調整手段は、第1の透過率を有する第1透過部と、前記第1透過部と同一平面上に形成された前記第1の透過率と異なる第2の透過率を有する第2透過部とを有する透過素子と、前記透過素子を支持するための支持手段と、前記光ビームの光軸の方向に垂直な方向の軸を回転軸として、前記透過素子を回転駆動するための回転駆動手段とを有していることを特徴とする光ピックアップ装置を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の構成によれば、従来例と比較し、第1の透過部と第2の透過部の相対的な角度バラツキによる、透過素子を透過する光ビームの光軸ズレが低減されるため、光ディスク14の記録層で反射された光ビームの、フォトダイオード8に集光する位置のズレは低減される。このため、部品点数を増加することなく、サーボ信号や再生信号、記録信号の品位の悪化の低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
(実施例)
図1に、本発明の情報記録再生装置(以下、光ディスク装置210と称す。)の機能ブロックの構成を示す。光ディスク装置210は、光ピックアップ装置211と、信号処理回路212と、サーボ制御回路213とを備えている。
【0035】
まず、光ディスク装置210の動作の概要を説明する。光ピックアップ装置211は、光ディスク214に対して光ビームを放射して光ディスク214からの反射光を検出し、反射光の検出位置および検出光量に応じた光量信号を出力する。信号処理回路212は、光ピックアップ装置211から出力される光量信号に応じて、光ディスク214における光ビームの合焦状態を示すフォーカスエラー(FE)信号や、光ビームの焦点位置と光ディスク214のトラックとの位置関係を示すトラッキングエラー(TE)信号等を生成して出力する。FE信号やTE信号は、サーボ信号と総称される。サーボ制御回路213は、それらの信号に基づいて駆動信号を生成して出力する。駆動信号は、後述する光ピックアップ装置211のアクチュエータコイル206に入力され、対物レンズ205の位置が調整される。これにより、光ディスク214に放射される光ビームの焦点が記録層から外れないように制御される。
【0036】
光ビームの焦点が記録層から外れないように制御されている状態において、信号処理回路212は光量信号に基づいて再生信号を出力する。再生信号は光ディスク214に書き込まれたデータを示している。これにより、光ディスク214からのデータの読み出しが実現される。また、光ビームの光パワーを再生時よりも大きくすることにより、光ディスク214にデータを書き込むことができる。
【0037】
以下、光ピックアップ装置211の構成を説明する。
【0038】
光ピックアップ装置211は、光源201と、光量調整手段300と、ビームスプリッタ202と、コリメートレンズ203と、ミラー204と、対物レンズ205と、アクチュエータコイル206と、マルチレンズ207と、フォトダイオード208とを備える。
【0039】
光源201は、GaN系の青色発光する半導体レーザである。光源201はまた、光ディスク214の記録層に対して、データの読み出しおよび書き込みのためのコヒーレント光を放射する。
【0040】
光量調整手段300は、量子ノイズが低く保たれた状態となる高い光パワーで光源201より出射された光ビームを、該光量調整手段300の光透過率を変化させることで、適切な光パワーに変化させるものである。これは、一般的な半導体レーザが高い光パワーを出射するほど、光ビームにおける量子ノイズの割合が低減することを利用している。
【0041】
ここで、図2(a)から(d)を参照しながら、光量調整手段300の詳細な構成を説明する。
【0042】
本発明の光量調整手段300は、第1の透過率を有する第1透過部301aと、第1の透過率とは異なる第2の透過率を有する第2透過部301bという2つの異なる透過率を有した透過部を回転駆動で切換える。これにより、光源201から出射された光ビームの光パワーに対する、対物レンズ205から出射される光ビームの光パワーを変更することができる。
【0043】
図2(a)は、光ビーム220が光量調整手段300の第1透過部301aを透過するときの斜視図であり、図2(b)は同状態における側面図、図2(c)は光ビーム220が光量調整手段300の第2透過部301bを透過するときの斜視図、図2(d)は同状態における側面図である。光ビーム220は矢印によって示す方向に進行する。また、図中に破線の円で示した領域は後述する透過部に入射する光ビーム220の有効領域を示している。
【0044】
光量調整手段300は、第1透過部301aと第2透過部301bとが形成された透過素子301と、回転軸303と、支持手段304と、回転駆動手段305とを有する。本実施例においては、透過素子301を、例えば一枚のガラス平板のような同一部材で形成している。これにより、同一平面上に第1透過部301aと第2透過部301bとを形成することができる。透過素子301には、光ビーム220の有効領域を満足するように、光ビーム220の入射面側の、図2に示すy軸方向に長さLとなる領域に、透過率が50%となる光学フィルタ膜を蒸着することで第1透過部301を形成している。これにより、第1透過部301を透過する光ビームの光量を減衰させる。一方、xy平面と平行である第1透過部301の光学フィルタ膜が形成された平面内であって、y軸方向に隣接し第1透過部301aと同様に長さLとなる領域には光学フィルタ膜は蒸着されていない。これにより、透過した光ビームの光量を概ね維持した第2透過部301bが形成されている。
【0045】
支持手段304は、回転軸303周りに透過素子301を回転可能に支持する。本実施例では支持手段304には透過素子301の光軸方向(=z軸方向)突き当て部304aが一体で形成されており、透過素子301は突き当て部304aに当接して固定されている。
【0046】
回転軸303は、図2(b)および(d)の点Rに示すように、yz平面において第1透過部301aと第2透過部302bの境界上、かつ、透過素子301のz軸方向長さの中心を回転中心として構成している。つまり、yz平面内において、光ビーム220の有効領域外であり、かつ、光ビーム220の光軸方向に対して垂直となるよう回転軸303の軸中心は構成されている。回転駆動手段305は、透過素子301を回転軸303周りに回転駆動する。
【0047】
また、回転軸303を構成する支持手段304の回転軸と回転駆動手段305の回転軸とを、本実施例では同一の構成で示したが、その各々の回転軸の間にギア等で構成された減速機構を設けても良い。
【0048】
以上のような構成とすることで、光学素子301の回転にともなう占有体積を最小に構成することが可能である。
【0049】
光量調整手段300は、回転駆動手段305を利用して回転軸303周りの回転駆動を行うことにより、光ビーム220が第1透過部301aを透過するか(図2(a)、(b))、第2透過部301bを透過するか(図2(c)、(d))を切換えることができる。
【0050】
再び図1を参照する。ビームスプリッタ202は、光源201が放射する光ビームを分離する。コリメートレンズ203は、光源201が放射する光ビームを平行光に変換する。ミラー204は、入射する光ビームを反射させ、反射された光ビームを光ディスク214へと指向させる。対物レンズ205は、光ビームを光ディスク214の記録層に集光する。アクチュエータコイル206は、印加された駆動信号のレベルに応じて、光ディスク214に垂直な方向または光ディスク214に平行な方向に対物レンズ206の位置を変化させる。マルチレンズ207は、フォトダイオード208に光ビームを集光させる。フォトダイオード208は、光ディスク214の記録層で反射された光ビームを受け取り、光量に応じて電気信号(光量信号)に変換する。なお、フォトダイオード208は複数の受光素子を含んでいてもよい。光量信号を受け取る信号処理回路212は、光量信号がいずれの受光素子から出力されたかという情報も利用して、FE信号およびTE信号を生成する。
【0051】
次に、光ディスク装置210がデータを読み出し、書き込むときの動作を説明する。前提として、光ディスク214が2層の記録層を有する場合は対物レンズ205に近い側の層の透過率は約50%と設定されているとする。このため、2層の記録層を有する光ディスクに対して記録再生に要する光パワーの大きさは、1層の記録層を有する光ディスクに対して必要な光パワーの約2倍となる。本実施例の光ピックアップ装置211は、光ディスク214の記録層が1層か2層かによって光パワーの大きさを切換える機能を有するとして説明する。
【0052】
まず光源201は、所定の光パワーを有する光ビームを発する。このとき光量調整手段300は、図1(a)に示すように、光ビームが第1透過部301aを透過するように配置されているとする。光量調整手段300から出射された光ビームは、ビームスプリッタ202で反射され、コリメートレンズ203で平行光にされ、ミラー204で反射される。その後、対物レンズ205は、光ビームを光ディスク214の記録層に集光する。記録層からの反射光は、光ピックアップ装置211内を通過し、フォトダイオード208に入射する。信号処理回路212は、光量信号の信号振幅から光ディスク214が有する記録層の数を判別する。判別処理は、他にも種々考えられる。例えば、光ディスク214の内周部に製造時に層数を特定する判別情報を記録しておき、再生信号としてその判別情報を読み出して層数を特定してもよい。または、レーザ光を照射したときに記録メディアの種類によって反射光の強さが異なるため、その強さを検出して信号処理回路212において判別すればよい。または、光ディスク214がカートリッジに収納された状態で装填されるときは、光ディスク214の種類によって異なるカートリッジの形状によって判別してもよい。いずれも、装填されている光ディスクの光学的特性および/または物理的特性を用いて検出することができる。
【0053】
光ディスク214が1層の記録層を有すると判別された場合には、図1(a)に示すように、光量調整手段300は透過素子301を回転させ、第1透過部301aが光軸と垂直になる位置に設定する。これにより、入射した光ビームの光量を約50%に減衰して透過させる。つまり、光源201から出射する光パワーを増加させ、第1透過部301aを透過させることで、対物レンズ205から出射される光ビーム光パワーを調整し、かつ、量子ノイズを低減することが可能となる。
【0054】
一方、光ディスク214が2層の記録層を有すると判断された場合には、図1(b)に示すように、光量調整手段300は、透過素子301を回転させて、第2透過部301bが光軸と垂直となる位置に設定する。その結果、入射した光ビームの光量は実質的に減衰することなく透過させる。つまり、上述した前提から1層の光ディスク214と比較して必要な光パワーが2倍となっているため、元々光源201から出射する光ビームの量子ノイズは低減された状態となる。
【0055】
データの書き込み時には、光スポットが形成される部分の記録層の状態がそのデータの内容に応じて変化する。一方、データの読み出し時には、光ビームは光ディスク214の記録層の状態に応じた反射率で反射される。記録層で反射した光ビームは、再び対物レンズ205を透過し、ミラー204で反射され、コリメートレンズ203を透過し、マルチレンズ207を透過してフォトダイオード208に集光される。その結果、フォトダイオード208は光量信号を生成して出力する。信号処理回路212は光量信号に基づいて、書き込まれたデータの内容を示す再生信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号等を生成する。
【0056】
本実施例によれば、第1透過部301aと第2透過部301bを、透過素子301に一体で形成することが可能である。また、透過素子301を支持手段304の光軸方向突き当て部304aに突き当てることで構成可能である。このため、従来例と比較し、第1透過部301aと第2透過部301bには、相対的な角度バラツキが生じない。よって、透過素子301を透過する光ビーム220の光軸に対する透過素子301の角度ズレによる光軸ズレを低減することが可能となる。これにより、光ディスク214の記録層で反射された光ビームの、フォトダイオード208に集光する位置のズレは従来例と比較し低減される。
【0057】
このため、部品点数を増加することなく、サーボ信号や再生信号、記録信号の信号品位の悪化が低減される。また、透過素子が一体で構成されているため従来例と比較し部品点数の削減も実現可能である。
【0058】
なお、本実施例では光軸方向突き当て部304aを図示したようにy軸方向に沿って形成したが、本発明の効果はこれに限定されるものではない。例えば光ビーム220の有効領域外であって、第1透過部301aと第2透過部301bの境界上にx軸方向に沿って形成することも可能である。また、例示したように支持手段304から突出して形成するのではなく、透過素子301が挿入可能なようにx軸に沿って凹形状に形成することも可能である。
【0059】
また、例えば光軸方向突き当て部304aを設けることなく、支持手段304の基準面に対して、位置調整された固定治具を用い、該固定治具を用いて例えば透過素子301と支持手段304の位置を調整し、端面同士を面接着で固定することも可能である。
【0060】
また、例えば第1透過部301aと、第2透過部301bを別々の平板状光学素子で構成することも可能である。この場合、上述したような部品点数の削減の効果は得られないが、支持手段304の光軸方向突き当て部304aに突き当てて構成することは可能である。このため、第1透過部301aと第2透過部301bには、相対的な角度バラツキが生じず、本発明の効果を得ることが可能となる。
【0061】
また、二つの平板状光学素子を組み合わせて、上述した固定治具を用いて接着する場合には、厳密には第1透過部301aと第2透過部302bは同一平面から例えばz軸方向に微少量ズレる可能性がある。しかしながら、本発明の効果である第1透過部301aと第2透過部302bの角度ズレを従来例に対し低減することは無論可能である。もちろん、このような場合の固定治具は、図2に示した光軸方向突き当て部304aのように、第1透過部301aと第2透過部301bを、同一の治具面で受けるように構成することが望ましい。
【0062】
また、本実施例では光学フィルタ膜を透過素子301の光ビーム220の入射面側に形成したが、出射面側に形成することも可能である。
【0063】
また、本実施例では透過光量を変更する手段として、減衰効果のある光学フィルタ膜を透過素子301に蒸着することで形成した。しかしながら例えば塗布やスパッタを用いてクロムや酸化クロム、酸化シリコン、TiO、Al、MgFといった金属膜や誘電体膜、および、いずれかの膜の組合せによる膜を光学素子表面に形成することによっても実現可能である。また、フィルム状の減衰素子を透過素子301に貼り付けたり、フィルム状減衰素子自身を第1透過部301aとして用いることも可能である。この場合、透過素子の厚さによる、光ディスク214からの反射光のフォトダイオード208の受光面に対するデフォーカスを防ぐため、第2透過部301bと第1透過部301aの光路長を一致させておくことが望ましい。なお、フィルム状の減衰素子は一般的には例えばゼラチンやアセテートなどの素材に色素などを混合することで形成することが出来る。
【0064】
また、本実施例では透過素子301をガラスで構成したが、樹脂材料を用いることも可能である。
【0065】
また、第1透過部301a自体を、第2透過部301bと比較し低い透過率の材質を用いることで、透過光量を変更する手段を構成することも可能である。
【0066】
また、第1透過部301aの光軸に垂直な一方の表面に微細な凹凸形状からなるナノ構造を形成することで、透過する光ビームの光量を減衰することも可能である。より具体的には、例えば、第1透過部301aの光軸に垂直な一方の表面に回折格子を形成することで透過光量を減衰させることも可能である。この場合、回折格子を透過した1次光の光量を変更し、該1次光を光ディスク214まで導くことで実現可能である。なお、同様の減衰効果を得ることが出来るのであれば、回折格子以外の形状で本発明の効果を得ることも無論可能である。
【0067】
また、本実施例においては、透過光を減衰させる第1透過部301aと、減衰させない第2透過部301bを切換えることで光量調整を行ったが、第2透過部301bにも第1透過部301aと異なる透過率の光学フィルタを形成して用いることも可能である。これにより、2層の記録層を有する光ディスク214を用いる場合においても、量子ノイズを低減可能なようにより高い光パワーを光源201から照射することが可能となる。
【0068】
また、青色半導体レーザを光源として用いたが、赤色半導体レーザや、緑色から紫外線といった異なる波長の光源を用いることも可能である。
【0069】
また、本実施例においては、光量調整手段300は情報記録媒体が1層の記録層を有する場合と2層の記録層を有する場合とで光ビームの光量の切換えを行った。しかし、2層以上の多層の記録層を有する情報記録媒体にデータを書き込みおよび/または読み出すことが可能な光ディスク装置10であれば、光ディスクの記録層の数に応じて光ビームの光量を切換えてもよい。この場合、例えば本実施例で示した光量調整手段300を光軸に沿って複数個備えることで、多段階の光ビームの光量切換えが可能となる。
【0070】
また、同様にデータの読み出し時と書き込み時とで光ビームの光量を切換えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例における光ディスク装置の機能ブロックの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例における光量調整手段の構造の概略を示す図である。
【図3】従来例の光ディスク装置の機能ブロックの構成を示す図である。
【図4】従来例における光量調整手段の構造の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
201 光源
202 ビームスプリッタ
203 コリメートレンズ
204 ミラー
205 対物レンズ
206 アクチュエータコイル
207 マルチレンズ
208 フォトダイオード
210 光ディスク装置
211 光ピックアップ装置
212 信号処理回路
213 サーボ制御回路
214 光ディスク
300 光ビーム透過調整手段
301 透過素子
301a 第1透過部
301b 第2透過部
303 回転軸
304 支持手段
304a 光軸方向突き当て部
305 回転駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを発する光源と、
前記光ビームの光量を調整する光量調整手段と、
前記光量調整手段からの前記光ビームを情報記録媒体に集光する集光手段と、
を有する光ピックアップ装置において、
前記光量調整手段は、第1の透過率を有する第1透過部と、前記第1透過部と同一平面上に形成された前記第1の透過率と異なる第2の透過率を有する第2透過部とを有する透過素子と、
前記透過素子を支持するための支持手段と、前記光ビームの光軸の方向に垂直な方向の軸を回転軸として、前記透過素子を回転駆動するための回転駆動手段とを有していることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記回転軸は、前記第1透過部と前記第2透過部の境界に位置することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記第1透過部と前記第2透過部は同一部材に形成されていることを特徴とする請求項1、または2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置から出力された光量信号から、前記情報記録媒体における前記光ビームの合焦状態を示すフォーカスエラー信号と、前記光ビームの焦点位置と前記情報記録媒体のトラックとの位置関係を示すトラッキングエラー信号を出力する信号処理回路とを有することを特徴とする情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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