説明

光ピックアップ装置用の対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置

【課題】コストを低減しながらも、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換を共通の対物レンズで行うことを可能としつつ、温度特性を向上させ、波長変化時における回折効率の変動を抑えることができる対物レンズを備えた光ピックアップ装置並びに光情報記録再生装置及びそれに好適な対物レンズを提供する。
【解決手段】
対物レンズの第1光路差付与構造を構成する第1基礎構造及び第2基礎構造がブレーズ形状であり、第2基礎構造における光軸に最も近い1つの輪帯上に、第1基礎構造の輪帯が2〜5個含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる種類の光ディスクに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生(記録/再生)を行える光ピックアップ装置、対物レンズ及び光情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ピックアップ装置において、光ディスクに記録された情報の再生や、光ディスクへの情報の記録のための光源として使用されるレーザ光源の短波長化が進み、例えば、青紫色半導体レーザ等、波長390〜420nmのレーザ光源が実用化されている。これら青紫色レーザ光源を使用すると、DVD(デジタルバーサタイルディスク)と同じ開口数(NA)の対物レンズを使用する場合で、直径12cmの光ディスクに対して、15〜20GBの情報の記録が可能となり、対物光学素子のNAを0.85にまで高めた場合には、直径12cmの光ディスクに対して、23〜25GBの情報の記録が可能となる。
【0003】
上述のようなNA0.85の対物レンズを使用する光ディスクの例として、BD(ブルーレイディスク)が挙げられる。光ディスクの傾き(スキュー)に起因して発生するコマ収差が増大するため、BDでは、DVD における場合よりも保護基板を薄く設計し(DVDの0.6mmに対して、0.1mm)、スキューによるコマ収差量を低減している。
【0004】
ところで、BDに対して適切に情報の記録/再生ができると言うだけでは、光ディスクプレーヤ/レコーダ(光情報記録再生装置)の製品としての価値は十分なものとはいえない。現在において、多種多様な情報を記録したDVDやCD(コンパクトディスク)が販売されている現実をふまえると、BDに対して情報の記録/再生ができるだけでは足らず、例えばユーザが所有しているDVDやCDに対しても同様に適切に情報の記録/再生ができるようにすることが、BD用の光ディスクプレーヤ/レコーダとしての商品価値を高めることに通じるのである。このような背景から、BD用の光ディスクプレーヤ/レコーダに搭載される光ピックアップ装置は、BDとDVD、更にはCDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できる性能を有することが望まれる。
【0005】
BDとDVD、更にはCDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できるようにする方法として、BD用の光学系とDVDやCD用の光学系とを情報を記録/再生する光ディスクの記録密度に応じて選択的に切り替える方法が考えられるが、複数の光学系が必要となるので、小型化に不利であり、またコストが増大する。
【0006】
従って、光ピックアップ装置の構成を簡素化し、低コスト化を図るためには、互換性を有する光ピックアップ装置においても、BD用の光学系とDVDやCD用の光学系とを共通化して、光ピックアップ装置を構成する光学部品点数を極力減らすのが好ましい。そして、光ディスクに対向して配置される対物レンズを共通化することが光ピックアップ装置の構成の簡素化、低コスト化に最も有利となる。尚、記録/再生波長が互いに異なる複数種類の光ディスクに対して共通な対物レンズを得るためには、球面収差の波長依存性を有する回折構造等の光路差付与構造を対物レンズに形成する必要がある。
【0007】
特許文献1には、それぞれ回折構造である2つの基礎構造を重畳してなる構造を有し、3種類の光ディスクに対して共通に使用可能な対物レンズ、及びこの対物レンズを搭載した光ピックアップ装置が記載されている。
【0008】
特許文献1に記載された3種類の光ディスクのうち2種類は明らかにDVD/CDであるが、実施例を参照するに波長405nmに対応するNA=0.67とされており、つまりHD−DVD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換について重きを置いた出願といえる。本発明者が、この出願の実施例をBD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換に適用可能か否か検討したところ、BDのNAは一般的に0.85であって、HD−DVDに比べ高NAであるから、温度変化時における対物レンズの屈折率変化により球面収差が大きくなってしまうことが判明した。また、特許文献1に記載されるようなHD−DVD/DVD/CDに適用される対物レンズはHD−DVDのNAが0.65と比較的低い。そのため、対物レンズの厚さが薄めの薄肉レンズを用いることができる。その結果、保護基板の厚さが厚いCD使用時のワーキングディスタンスの問題が起きにくい。一方で、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換について適用される対物レンズは、BDのNAが0.85と高い。そのため、対物レンズの厚さが厚い対物レンズを用いることが多くなる。その結果、特許文献1に記載される技術をそのままBD/DVD/CD用の対物レンズに適用すると、保護基板の厚さが厚いCDの使用時に充分なワーキングディスタンスを確保することができないという問題がある。更には、特許文献1に示す回折構造を重畳した重畳構造において、最も段差量が低いものでもHD−DVDで3次回折光を発生する構造と、HD−DVDで2次回折光を発生する構造とを重畳しており、光軸方向の段差量が大きい。その結果、波長変化時における回折効率の大きな変動を招きやすいことも判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4562645号明細書
【特許文献2】特開2009−199707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに対し特許文献2には、405nmのレーザ光に対しては1次回折光を発生させ、660nmのレーザ光に対しては0次回折光を発生させ、790nmのレーザ光に対しては0次回折光を発生させる第1の回折構造と、405nmのレーザ光に対しては2次回折光を発生させ、660nmのレーザ光に対しては1次回折光を発生させ、790nmのレーザ光に対しては1次回折光を発生させる第2の回折構造とを重畳させて、BDとDVDとCDに対して互換可能に情報の記録/再生を行う光ピックアップ装置用の対物光学系が開示されている。
【0011】
しかるに、近年においては、BDやDVDでは複数層の情報記録面に対して情報の記録/再生を行う光ピックアップ装置も開発され既に市販されているが、本発明者の検討結果によれば、かかる光ピックアップ装置に特許文献2の対物光学系を用いた場合、3つの異なる波長の光束が共通領域を通過した際に、回折構造から発生した不要光が、情報の記録/再生を行おうとする情報記録層以外の情報記録層に集光してしまい、エラー信号を発生する恐れがあることがわかった。
【0012】
更に、BDにおいて複数の情報記録層の1つを選択して集光スポットを形成しようとする場合、コリメータなどのカップリングレンズを光軸方向に変位させて、選択した情報記録層までの基板厚変化に伴う球面収差を補正することが行われる。よってDVD使用時にも、例えば環境温度が変化した場合における対物レンズの屈折率変化により生じる球面収差を、同様にカップリングレンズを光軸方向に変位させることで補正することもできる。
【0013】
ところが、カップリングレンズを駆動するドライブの制御が複雑になることを考慮すると、DVD使用時にはカップリングレンズを変位させないことが望ましい場合もある。又、BD使用時には、対物レンズの有効径内を通過した光束が全て集光スポットの形成に用いられるので本来的にフレア光が生じないのに対し、DVD使用時には、BDより低いNAを確保すべく、一部の光束をフレア光としている。かかる場合、カップリングレンズを光軸方向に変位させると、フレア光を誤って検出してしまい、情報の記録/再生に障害となるエラー信号を発生させる恐れもある。そこで、DVD使用時には対物レンズを固定したいという要請がある。そのため、DVD使用時の対物レンズの温度特性、波長特性を良好にしたいという課題がある。
【0014】
本発明は、上述の課題を解決することを目的としたものであり、コストを低減しながらも、CD使用時のワーキングディスタンスを確保することでBD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換を共通の対物レンズで行うことを可能としつつ、複数層を有する光ディスク使用時においても目的の層以外の層で反射した不要光の悪影響を低減し、また、DVD使用時における温度特性と波長特性を向上させ、波長変化時における回折効率の変動を抑えることができる対物レンズを備えた光ピックアップ装置並びに光情報記録再生装置及びそれに好適な対物レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の対物レンズは、第1波長λ1(390nm≦λ1≦415nm)の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(630nm≦λ2≦670nm)の第2光束を射出する第2光源と、第3波長λ3(760nm≦λ3≦820nm)の第3光束を射出する第3光源とを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有するBDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有するDVDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有するCDの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズであって、
前記対物レンズの光学面は、中央領域と、前記中央領域の周りの中間領域と、前記中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有し、
前記中央領域は第1光路差付与構造を有し、
前記対物レンズは、前記中央領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物レンズは、前記中間領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記対物レンズは、前記周辺領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記第1光路差付与構造は、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた構造であり、
前記第1基礎構造は、前記第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第2基礎構造は、前記第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第1基礎構造及び前記第2基礎構造はブレーズ形状であり、前記第2基礎構造における前記光軸に最も近い1つの輪帯上に、前記第1基礎構造の輪帯が2〜5個含まれることを特徴とする。
【0016】
前記第1光路差付与構造が、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた構造であり、前記第1基礎構造は、前記第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造が、前記第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすることで、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた前記第1光路差付与構造において、光軸方向の段差量を低減でき、それにより波長変動時の回折効率の低下を抑制できる。
【0017】
また、複数の情報記録層を有するBDに対応するために、BD使用時には、カップリングレンズを光軸方向に変位して、各情報記録層への記録/再生に対応させることが考えられる。そのような場合、既にカップリングレンズを光軸方向に変位させる機能は必須であるが、DVD使用時においては、カップリングレンズを光軸方向に変位させず、固定させておきたい、という場合もある。その理由としては、BD使用時にはフレアが発生しないが、DVD使用時にはフレアが発生するため、カップリングレンズを変位させることにより、そのフレアの収差が変化し、結果としてそのフレアが記録/再生に悪影響を与える可能性が生じるという理由や、ドライブにおけるカップリングレンズの制御を単純化したいという理由などが挙げられる。そのような課題に対して、第1基礎構造と第2基礎構造との重畳の効果と相まって、前記第1基礎構造及び前記第2基礎構造がブレーズ形状であり、前記第2基礎構造における前記光軸に最も近い1つの輪帯上に、前記第1基礎構造の輪帯が2〜5個含まれる対物レンズを利用することで、DVD使用時の温度特性及び波長特性を良好なものとできるため、DVD使用時にカップリングレンズを変位させる必要がなくなるため好ましい。
【0018】
更に、前記第2基礎構造における前記光軸に最も近い1つの輪帯上に、前記第1基礎構造の輪帯を2〜5個重畳することで、BD/DVD/CDの互換を取りながら、CD使用時のワーキングディスタンスを確保できる。又、複数層を有する光ディスク使用時の不要光(他層で反射する光束)の問題を低減できるという優れた効果も奏することを、本発明者は見出した。
【0019】
請求項2に記載の対物レンズは、請求項1に記載の発明において、少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第2基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることを特徴とする。
【0020】
これによって、第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた前記第1光路差付与構造において、光軸方向の段差量をさらに低減でき、それにより波長変動時の回折効率の低下をさらに抑制できる。
【0021】
請求項3に記載の対物レンズは、請求項1又は2に記載の発明において、前記中間領域は、少なくとも第3基礎構造と第4基礎構造とを重ね合わせた第2光路差付与構造を有し、
前記第3基礎構造は、前記第3基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第3基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第4基礎構造は、前記第4基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第4基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすることを特徴とする。
【0022】
これにより、少なくとも前記第3基礎構造と前記第4基礎構造とを重ね合わせた前記第2光路差付与構造において、光軸方向の段差量を低減でき、それにより波長変動時の回折効率の低下を抑制できる。また、第1基礎構造と第3基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数が一致し、且つ第2基礎構造と第4基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数が一致しているため、中央領域と中間領域を通過する光束について、温度や波長変化時においても、球面収差を連続とでき、高次収差の発生を抑えることができる。又、中間領域と周辺領域とで、瞳透過率分布がフラットに近くなり、アボダイゼーション等による境界で光量が大きく変化した場合に生じるスポットの太りなどを効果的に抑えることができる。また、対物レンズの設計の自由度を確保することも可能となる。
【0023】
請求項4に記載の対物レンズは、請求項3に記載の発明において、前記第3基礎構造及び前記第4基礎構造はブレーズ形状であり、前記第4基礎構造における前記中央領域に最も近い1つの輪帯上に、前記第3基礎構造の輪帯が1〜3個含まれていることを特徴とする。
【0024】
これにより、複数の情報記録層を有するBD使用時やDVD使用時において、中間領域を通過することにより発生した不要光の集光位置を、情報の記録/再生を行うとする情報記録層以外の情報記録装置から離すことができる。又、DVD使用時の波長特性を良好なものとできる。
【0025】
請求項5に記載の対物レンズは、請求項3又は4に記載の発明において、中央領域との境界付近に設けられる前記第3基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、中央領域との境界付近に設けられる前記第4基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることを特徴とする。
【0026】
これによって、第3基礎構造と第4基礎構造とを重ね合わせた前記第2光路差付与構造において、光軸方向の段差量をさらに低減でき、それにより波長変動時の回折効率の低下をさらに抑制できる。
【0027】
請求項6に記載の対物レンズは、請求項3乃至5のいずれかに記載の発明において、前記中間領域は、前記第3基礎構造と前記第4基礎構造のみが設けられており、他の基礎構造が設けられていないことを特徴とする。
【0028】
請求項7に記載の対物レンズは、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記第2基礎構造における前記中間領域に最も近い1つの輪帯に、前記第1基礎構造の輪帯が1〜5個含まれていることを特徴とする。
【0029】
請求項8に記載の対物レンズは、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、以下の式を満たすことを特徴とする。
160(mm)≦N・f≦210(mm) (1)
ここで、前記中央領域の総輪帯数をN、前記対物レンズの前記第1光束における焦点距離をf(mm)とする。
【0030】
(1)式の値を下限以上とすることで、CDのワーキングディスタンスを確保でき、光ディスクと干渉して傷をつける可能性を低減できる。一方、(1)式の値を上限以下とすることで、ピッチが小さくなりすぎることを防止できるため、加工性の低下を防ぎ、形状誤差を低減でき、結果として回折効率の低下を防止できる。
【0031】
請求項9に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至8のいずれかに記載の対物レンズを有することを特徴とする。
【0032】
請求項10に記載の光ピックアップ装置は、請求項9に記載の発明において、
少なくとも前記第1光束と前記第2光束が通過するカップリングレンズと、前記カップリングレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータ―を有し、
前記第1光束が通過するときは、前記アクチュエータ―によって前記カップリングレンズが光軸方向に変位可能とされており、
前記第2光束が通過するときには、前記カップリングレンズは、光軸方向の位置を固定されていることを特徴とする。
【0033】
例えば、複数の情報記録層を有するBDに対応するために、BDの使用時には、カップリングレンズを光軸方向に変位して、各情報記録層への記録/再生に対応させることが考えられる。そのような場合、既にカップリングレンズを光軸方向に変位させる機能は必須であるが、DVD使用時においては、カップリングレンズを光軸方向に変位させず、固定させておきたい、という場合がある。その理由としては、BD使用時には、フレアが発生しないが、DVD使用時には、フレアが発生するため、カップリングレンズを変異させることにより、そのフレアの収差が変化し、結果としてそのフレアが記録/再生に悪影響を与える可能性が生じるという理由や、ドライブによるカップリングレンズ変位の制御を単純化したいという理由などが挙げられる。そのような課題に対して、本発明の対物レンズを用いてDVD使用時の温度特性と波長特性を共に良好にすることで、結果として、DVD使用時に、第2光束が通過するときにカップリングレンズを光軸方向の位置を固定した状態でも、DVDの情報記録面に対して情報の記録/再生を行うことができるようになり、上述の課題を解決することができた。
【0034】
請求項11に記載の光情報記録再生装置は、請求項9又は10に記載の光ピックアップ装置を有することを特徴とする。
【0035】
本発明に係る光ピックアップ装置は、第1光源、第2光源、第3光源の少なくとも3つの光源を有する。さらに、本発明の光ピックアップ装置は、第1光束をBDの情報記録面上に集光させ、第2光束をDVDの情報記録面上に集光させ、第3光束をCDの情報記録面上に集光させるための集光光学系を有する。また、本発明の光ピックアップ装置は、BD、DVD又はCDの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有する。
【0036】
BDは、厚さがt1の保護基板と情報記録面とを有する。DVDは厚さがt2(t1<t2)の保護基板と情報記録面とを有する。CDは、厚さがt3(t2<t3)の保護基板と情報記録面とを有する。なお、BD、DVD又はCDは、複数の情報記録面を有する複数層の光ディスクでもよい。
【0037】
本明細書において、BDとは、波長390〜415nm程度の光束、NA0.8〜0.9程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.05〜0.125mm程度であるBD系列光ディスクの総称であり、単一の情報記録層のみ有するBDや、2層又はそれ以上の情報記録層を有するBD等を含むものである。更に、本明細書においては、DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD− Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、NA0.45〜0.51程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm 程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでDVD、CDの順に低くなる。
【0038】
なお、保護基板の厚さt1、t2、t3に関しては、以下の条件式(2)、(3)、(4)を満たすことが好ましいが、これに限られない。尚、ここで言う、保護基板の厚さとは、光ディスク表面に設けられた保護基板の厚さのことである。即ち、光ディスク表面から、表面に最も近い情報記録面までの保護基板の厚さのことをいう。
0.050mm ≦ t1 ≦ 0.125mm (2)
0.5mm ≦ t2 ≦ 0.7mm (3)
1.0mm ≦ t3 ≦ 1.3mm (4)
【0039】
本明細書において、第1光源、第2光源、第3光源は、好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。第1光源から出射される第1光束の第1波長λ1、第2光源から出射される第2光束の第2波長λ2(λ2>λ1)、第3光源から出射される第3光束の第3波長λ3(λ3>λ2)は以下の条件式(5)、(6) を満たすことが好ましい。
1.5・λ1 < λ2 < 1.7・λ1 (5)
1.8・λ1 < λ3 < 2.0・λ1 (6)
【0040】
第1光源の第1波長λ1は好ましくは、350nm 以上、440nm以下、より好ましくは、390nm以上、415nm以下であって、第2光源の第2波長λ2は好ましくは570nm以上、680nm以下、より好ましくは、630nm以上、670nm以下であって、第3光源の第3波長λ3は好ましくは、750nm以上、880nm以下、より好ましくは、760nm以上、820nm以下である。
【0041】
また、第1光源、第2光源、第3光源のうち少なくとも2つの光源をユニット化してもよい。ユニット化とは、例えば第1光源と第2光源とが1パッケージに固定収納されているようなものをいう。もちろん、第1光源、第2光源及び第3光源を全て1パッケージに固定収納するようにしてもよい。また、光源に加えて、後述する受光素子を1パッケージ化してもよい。
【0042】
受光素子としては、フォトダイオードなどの光検出器が好ましく用いられる。光ディスクの情報記録面上で反射した光が受光素子へ入射し、その出力信号を用いて、各光ディスクに記録された情報の読み取り信号が得られる。さらに、受光素子上のスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて、合焦、トラッキングのために対物レンズを移動させることが出来る。受光素子は、複数の光検出器からなっていてもよい。受光素子は、メインの光検出器とサブの光検出器を有していてもよい。例えば、情報の記録再生に用いられるメイン光を受光する光検出器の両脇に2つのサブの光検出器を設け、当該2つのサブの光検出器によってトラッキング調整用のサブ光を受光するような受光素子としてもよい。また、受光素子は各光源に対応した複数の受光素子を有していてもよい。
【0043】
集光光学系は、対物レンズを有する。集光光学系は、対物レンズの他にコリメータ等のカップリングレンズを有していることが好ましい。カップリングレンズとは、対物レンズと光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。コリメータは、カップリングレンズの一種で、コリメータに入射した光を平行光にして出射するレンズである。本明細書において、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。また、本発明の対物レンズは、単玉のプラスチックレンズであることが好ましい。好ましくは、凸レンズである。また、対物レンズは、屈折面が非球面であることが好ましい。また、対物レンズは、光路差付与構造が設けられるベース面が非球面であることが好ましい。
【0044】
また、対物レンズを構成するプラスチック材料として、環状オレフィン系の樹脂材料等の脂環式炭化水素系重合体材料を使用するのが好ましい。また、当該樹脂材料は、波長405nmに対する温度25℃ での屈折率が1.54乃至1.60の範囲内であって、−5℃から70℃の温度範囲内での温度変化に伴う波長405nmに対する屈折率変化率dN/dT(℃ -1) が−20×10-5乃至−5×10-5(より好ましくは、−10×10-5乃至−8×10-5)の範囲内である樹脂材料を使用するのがより好ましい。また、対物レンズがプラスチックレンズである場合、カップリングレンズもプラスチックレンズとすることが好ましい。
【0045】
脂環式炭化水素系重合体の好ましい例を幾つか、以下に示す。
【0046】
第1の好ましい例は、下記式(I)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(1)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(II)で表される繰り返し単位〔2〕または/および下記式(III)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有し、前記ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率a(モル%)と、前記ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率b(モル%)との関係がa>bであるブロック共重合体からなる樹脂組成物である。
【0047】
【化1】

【0048】
(式中、R1 は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R2−R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。)
【0049】
【化2】

【0050】
(式中、R13は、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0051】
【化3】

【0052】
(式中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0053】
次に、第2の好ましい例は、少なくとも炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(IV)で表される環状オレフィンからなる単量体組成物とを付加重合させることにより得られる重合体(A)と、炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(V)で表される環状オレフィンからなる単量体組成物とを付加重合させることにより得られる重合体(B)とを含む樹脂組成物である。
【0054】
【化4】

【0055】
〔式中、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1であり、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、括弧内の単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16と、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
【0056】
【化5】

【0057】
〔式中、R19〜R26はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。〕
【0058】
樹脂材料に更なる性能を付加するために、以下のような添加剤を添加してもよい。
【0059】
(安定剤)
フェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、リン系安定剤及びイオウ系安定剤から選ばれた少なくとも1種の安定剤を添加することが好ましい。これらの安定剤を適宜選択し添加することで、例えば、405nmといった短波長の光を継続的に照射した場合の白濁や、屈折率の変動等の光学特性変動をより高度に抑制することができる。
【0060】
好ましいフェノール系安定剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0061】
また、好ましいヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0062】
また、好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0063】
また、好ましいイオウ系安定剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル 3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ)−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0064】
これらの各安定剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して通常0.01〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部であることが好ましい。
【0065】
(界面活性剤)
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤は樹脂表面への水分の付着や上記表面からの水分の蒸発の速度を調節することで、樹脂組成物の白濁を防止することが可能となる。
【0066】
界面活性剤の親水基としては、具体的には、ヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基などが挙げられる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的に炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルキル基を有するシリル基、炭素数6以上のフルオロアルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数6以上のアルキル基は置換基として芳香環を有していてもよい。アルキル基としては、具体的にヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ミリスチル、ステアリル、ラウリル、パルミチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。芳香環としてはフェニル基などが挙げられる。この界面活性剤は、上記のような親水基と疎水基とをそれぞれ同一分子中に少なくとも1個ずつ有していればよく、各基を2個以上有していてもよい。
【0067】
このような界面活性剤としては、より具体的には、例えば、ミリスチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシトリデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシテトラデシルアミン、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、アルキル(炭素数8〜18)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、エチレンビスアルキル(炭素数8〜18)アミド、ステアリルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、などが挙げられる。これらのうちでも、ヒドロキシアルキル基を有するアミン化合物またはアミド化合物が好ましく用いられる。本発明では、これら化合物を2種以上組合わせて用いてもよい。
【0068】
界面活性剤は、温度、湿度の変動に伴なう成形物の白濁を効果的に抑え、成形物の光透過率を高く維持するという観点から、脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.01〜10質量部添加されることが好ましい。界面活性剤の添加量は脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.05〜5質量部とすることがより好ましく、0.3〜3質量部とすることが更に好ましい。
【0069】
(可塑剤)
可塑剤は共重合体のメルトインデックスを調節するため、必要に応じて添加される。
【0070】
可塑剤としては、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジプロピレングリコールジベンゾエート、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸トリ−n−ブチルアセチル、エポキシ化大豆油、2−エチルヘキシルエポキシ化トール油、塩素化パラフィン、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸−t−ブチルフェニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、Santicizer 278、Paraplex G40、Drapex 334F、Plastolein 9720、Mesamoll、DNODP−610、HB−40等の公知のものが適用可能である。可塑剤の選定及び添加量の決定は、共重合体の透過性や環境変化に対する耐性を損なわないことを条件に適宜行なわれる。
【0071】
これらの樹脂としては、シクロオレフィン樹脂が好適に用いられ、具体的には、日本ゼオン社製のZEONEXや、三井化学社製のAPEL、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製のTOPAS、JSR社製ARTONなどが好ましい例として挙げられる。
【0072】
また、対物レンズを構成する材料のアッベ数は、50以上であることが好ましい。
【0073】
対物レンズについて、以下に記載する。対物レンズの少なくとも一つの光学面が、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有する。中央領域は、対物レンズの光軸を含む領域であることが好ましいが、光軸を含む微小な領域を未使用領域や特殊な用途の領域とし、その周りを中心領域(中央領域ともいう)としてもよい。中央領域、中間領域、及び周辺領域は同一の光学面上に設けられていることが好ましい。図1に示されるように、中央領域CN、中間領域MD、周辺領域OTは、同一の光学面上に、光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。また、対物レンズの中央領域には第一光路差付与構造が設けられ、中間領域には第二光路差付与構造が設けられている。周辺領域は屈折面であってもよいし、周辺領域に第三光路差付与構造が設けられていてもよい。中央領域、中間領域、周辺領域はそれぞれ隣接していることが好ましいが、間に僅かに隙間があっても良い。
【0074】
対物レンズの中央領域は、BD、DVD及びCDの記録/再生に用いられるBD/DVD/CD共用領域と言える。即ち、対物レンズは、中央領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中央領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、中央領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。また、中央領域に設けられた第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過する第1光束及び第2光束に対して、BDの保護基板の厚さt1とDVDの保護基板の厚さt2の違いにより発生する球面収差/第1光束と第2光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。さらに、第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過した第1光束及び第3光束に対して、BDの保護基板の厚さt1とCDの保護基板の厚さt3との違いにより発生する球面収差/第1光束と第3光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。
【0075】
対物レンズの中間領域は、BD、DVDの記録/再生に用いられ、CDの記録/再生に用いられないBD/DVD共用領域と言える。即ち、対物レンズは、中間領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中間領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。その一方で、中間領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しない。対物レンズの中間領域を通過する第3光束は、CDの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。図2に示すように、対物レンズを通過した第3光束がCDの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸側(又はスポット中心部)から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部SCN、光量密度がスポット中心部より低いスポット中間部SMD、光量密度がスポット中間部よりも高くスポット中心部よりも低いスポット周辺部SOTを有することが好ましい。スポット中心部が、光ディスクの情報の記録/再生に用いられ、スポット中間部及びスポット周辺部は、光ディスクの情報の記録/再生には用いられない。上記において、このスポット周辺部をフレアと言っている。但し、スポット中心部の周りにスポット中間部が存在せずスポット周辺部があるタイプ、即ち、集光スポットの周りに薄く光が大きなスポットを形成する場合も、そのスポット周辺部をフレアと呼んでもよい。つまり、対物レンズの中間領域を通過した第3光束は、CDの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましいとも言える。
【0076】
対物レンズの周辺領域は、BDの記録/再生に用いられ、DVD及びCDの記録/再生に用いられないBD専用領域と言える。即ち、対物レンズは、周辺領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。その一方で、周辺領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光せず、周辺領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しない。対物レンズの周辺領域を通過する第2光束及び第3光束は、DVD及びCDの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。つまり、対物レンズの周辺領域を通過した第2光束及び第3光束は、DVD及びCDの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましい。
【0077】
第1光路差付与構造は、対物レンズの中央領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第1光路差付与構造が、中央領域の全面に設けられていることである。第2光路差付与構造は、対物レンズの中間領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造が、中間領域の全面に設けられていることである。周辺領域が第3光路差付与構造を有する場合、第3光路差付与構造は、対物レンズの周辺領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第3光路差付与構造が、周辺領域の全面に設けられていることである。
【0078】
なお、本明細書でいう光路差付与構造とは、入射光束に対して光路差を付加する構造の総称である。光路差付与構造には、位相差を付与する位相差付与構造も含まれる。また、位相差付与構造には回折構造が含まれる。本発明の光路差付与構造は回折構造であることが好ましい。光路差付与構造は、段差を有し、好ましくは段差を複数有する。この段差により入射光束に光路差及び/又は位相差が付加される。光路差付与構造により付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。段差は、光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、光路差付与構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
【0079】
また、本明細書でいう回折構造とは、段差を有し、回折によって光束を収束あるいは発散させる作用を持たせる構造の総称である。例えば、単位形状が光軸を中心として複数並ぶことによって構成されており、それぞれの単位形状に光束が入射し、透過した光の波面が、隣り合う輪帯毎にズレを起こし、その結果、新たな波面を形成することによって光を収束あるいは発散させるような構造を含むものである。回折構造は、好ましくは段差を複数有し、段差は光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、回折構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、回折構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ回折次数の回折光を発生させる回折構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
【0080】
ところで、光路差付与構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有することが好ましい。また、光路差付与構造は、一般に、様々な断面形状(光軸を含む面での断面形状) をとり得、光軸を含む断面形状がブレーズ型構造と階段型構造とに大別される。
【0081】
ブレーズ型構造とは、図3(a)、(b)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、鋸歯状の形状ということである。尚、図3の例においては、上方が光源側、下方が光ディスク側であって、母非球面としての平面に光路差付与構造が形成されているものとする。ブレーズ型構造において、1つのブレーズ単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという。(図3(a)、(b)参照)また、ブレーズの光軸に平行方向の段差の長さを段差量Bという。(図3(a)参照)
【0082】
また、階段型構造とは、図3(c)、(d)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、小階段状のもの(階段単位と称する)を複数有するということである。尚、本明細書中、「Vレベル」とは、階段型構造の1つの階段単位において光軸垂直方向に対応する(向いた)輪帯状の面(以下、テラス面と称することもある)が、段差によって区分けされV個の輪帯面毎に分割されていることをいい、特に3レベル以上の階段型構造は、小さい段差と大きい段差を有することになる。例えば、図3(c)に示す光路差付与構造を、5レベルの階段型構造といい、図3(d)に示す光路差付与構造を、2レベルの階段型構造(バイナリ構造ともいう)という。
【0083】
尚、光路差付与構造は、ある単位形状が周期的に繰り返されている構造であることが好ましい。 ここでいう「単位形状が周期的に繰り返されている」とは、同一の形状が同一の周期で繰り返されている形状は当然含む。さらに、周期の1単位となる単位形状が、規則性を持って、周期が徐々に長くなったり、徐々に短くなったりする形状も、「単位形状が周期的に繰り返されている」ものに含まれているとする。
【0084】
光路差付与構造が、ブレーズ型構造を有する場合、単位形状である鋸歯状の形状が繰り返された形状となる。図3(a)に示されるように、同一の鋸歯状形状が繰り返されてもよいし、図3(b)に示されるように、光軸から離れる方向に進むに従って、徐々に鋸歯状形状のピッチが長くなっていく形状、又は、ピッチが短くなっていく形状であってもよい。加えて、ある領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側とは逆を向いている形状とし、他の領域においては、ブレーズ型構造の段差が光軸(中心)側を向いている形状とし、その間に、ブレーズ型構造の段差の向きを切り替えるために必要な遷移領域が設けられている形状としてもよい。なお、このようにブレーズ型構造の段差の向きを途中で切り替える構造にする場合、輪帯ピッチを広げることが可能となり、光路差付与構造の製造誤差による透過率低下を抑制できる。
【0085】
また、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造は、それぞれ対物レンズの異なる光学面に設けてもよいが、同一の光学面に設けることが好ましい。更に、第3光路差付与構造を設ける場合も、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造と同じ光学面に設けることが好ましい。同一の光学面に設けることにより、製造時の偏芯誤差を少なくすることが可能となるため好ましい。また、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの光ディスク側の面よりも、対物レンズの光源側の面に設けられることが好ましい。別の言い方では、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの曲率半径の絶対値が小さい方の光学面に設けることが好ましい。尚、第1基礎構造と第2基礎構造を重畳せずに、それぞれ異なる光学面に設けることも考えられる。第3基礎構造と第4基礎構造も、同様に重畳せずにそれぞれ異なる光学面に設けることも考えられる。
【0086】
次に、中央領域に設けられる第1光路差付与構造について説明する。第1光路差付与構造は、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造を重ね合わせた構造である。第1光路差付与構造は、第1基礎構造と第2基礎構造のみを重ね合わせた構造であることが好ましい。
【0087】
第1基礎構造は、ブレーズ型構造である。また、第1基礎構造は、第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。これを(1/1/1)構造と呼ぶ。特に、低次である1次回折光が発生するようにすると、第1基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。
【0088】
また、少なくとも中央領域の光軸付近に設けられる第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いていることが好ましい。「段差が光軸とは逆の方向を向いている」とは、図4(b)のような状態を言う。また、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第1基礎構造とは、(1/1/1)構造の段差のうち、少なくとも最も光軸に近い段差を言う。好ましくは、少なくとも、光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する(1/1/1)構造の段差が、光軸とは逆の方向を向いていることである。
【0089】
例えば、中央領域の中間領域付近に設けられる第1基礎構造は、段差が光軸の方向を向いていてもよい。即ち、図5(b)に示すように、第1基礎構造が光軸付近では段差が光軸とは逆の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では第1基礎構造の段差が光軸の方を向くような形状としてもよい。但し、好ましくは、中央領域に設けられる第1基礎構造の全ての段差が光軸とは逆の方向を向いていることである。
【0090】
このように、第1光束における回折次数が1次となる第1基礎構造の段差の向きを光軸と逆方向に向けることにより、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいても、CD使用時にワーキングディスタンスを十分確保することが可能となるのである。
【0091】
BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいても、CD使用時にワーキングディスタンスを十分確保するという観点からは、第1基礎構造が第1光束に対して近軸パワーを持つことが好ましい。ここで、「近軸パワーを持つ」とは、第1基礎構造の光路差関数を後述する数2式で表した場合、C22が0でないことを意味する。
【0092】
また、第2基礎構造も、ブレーズ型構造である。第2基礎構造は、第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。これを(2/1/1)構造と呼ぶ。特に、低次である2次回折光又は1次回折光が発生するようにすると、第2基礎構造の段差量が大きくなり過ぎないため、製造が容易となり、製造誤差に起因する光量ロスを抑えることが出来ると共に、波長変動時の回折効率変動も低減することができるため好ましい。
【0093】
また、少なくとも中央領域の光軸付近に設けられる第2基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることが好ましい。「段差が光軸の方向を向いている」とは、図4(a)のような状態を言う。また、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第2基礎構造とは、(2/1/1)構造の段差のうち、少なくとも最も光軸に近い段差を言う。好ましくは、少なくとも光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する(2/1/1)構造の段差が光軸の方向を向いていることである。
【0094】
例えば、中央領域の中間領域付近に設けられる第2基礎構造は、段差が光軸とは逆の方向を向いていてもよい。即ち、図5(a)に示すように、第2基礎構造が光軸付近では段差が光軸の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では第2基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向くような形状としてもよい。但し、好ましくは、中央領域に設けられる第2基礎構造は、全ての段差が光軸の方向を向いていることである。
【0095】
(1/1/1)構造である第1基礎構造と、(2/1/1)構造である第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造にすると、段差の高さを非常に低くできる。従って、より製造誤差を低減させることが可能となり、光量ロスを更に抑えることが可能となると共に、波長変動時の回折効率の変動をより抑えることが可能となる。
【0096】
さらに、少なくとも中央領域の光軸付近においては段差が光軸とは逆の方向を向いている第1基礎構造と、少なくとも中央領域の光軸付近においては段差が光軸の方向を向いている第2基礎構造を重ね合わせることにより、第1基礎構造と第2基礎構造の段差の向きが同じになるように重ね合わせた場合に比べて、重ね合わせた後の段差の高さが高くなることをより一層抑制でき、それに伴い、製造誤差などに因る光量ロスをより抑えることが可能となると共に、波長変動時の回折効率の変動もより抑えることが可能となる。
【0097】
また、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換を可能とするだけでなく、BD/DVD/CDの3種類の何れの光ディスクに対しても、高い光利用効率を維持できる光利用効率のバランスが取れた対物レンズを提供することが好ましい。例えば、波長λ1に対する回折効率を80%以上、波長λ2に対する回折効率を60%以上、波長λ3に対する回折効率を50%以上とする対物レンズを提供することが好ましい。更には、波長λ1に対する回折効率を80%以上、波長λ2に対する回折効率を70%以上、波長λ3に対する回折効率を60%以上とする対物レンズも提供することがより好ましい。加えて、第1基礎構造の段差の向きを光軸と逆方向に向けることにより、波長が長波長側に変動した際に収差をアンダー(補正不足)の方向に変化させることがより容易に行える。
【0098】
段差が光軸とは逆を向いている第1基礎構造と段差が光軸の方を向いている第2基礎構造とを重ね合わせた後の第1光路差付与構造の形状と段差量という観点から、(1/1/1)構造である第1基礎構造と、(2/1/1)構造である第2基礎構造とを重ね合わせた第1光路差付与構造を以下のように表現することができる。少なくとも中央領域の光軸付近に設けられている第1光路差付与構造は、光軸とは逆の方向を向いている段差と、光軸の方向を向いている段差とを共に有し、光軸とは逆の方向を向いている段差の段差量d11と、光軸の方向を向いている段差の段差量d12とが、以下の条件式(7)、(8)を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(7)、(8)を満たすことである。尚、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面の凸レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。下記条件式において上限に1.5を乗じているのは、当該段差量の増加を加味した故である。但し、nは、第1の波長λ1における対物レンズの屈折率を表す。
0.6・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (7)
0.6・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(2λ1/(n−1)) (8)
【0099】
尚、「少なくとも中央領域の光軸付近」に設けられる第1光路差付与構造とは、少なくとも光軸に最も近い光軸とは逆の方向を向いている段差と、光軸に最も近い光軸の方向を向いている段差とを共に有する光路差付与構造をいう。好ましくは、少なくとも、光軸から中央領域と中間領域の境界までの光軸直交方向の半分の位置と、光軸との間に存在する段差を有する光路差付与構造である。
【0100】
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
【0101】
0.39μm<d11<1.15μm (9)
0.39μm<d12<2.31μm (10)
【0102】
更に、第1基礎構造と第2基礎構造の重ね合わせ方としては、第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置を合わせるように基礎構造の形状を微調整するか、第1基礎構造の全ての段差の位置と、第2基礎構造の段差の位置を合わせるように基礎構造の形状を微調整することが好ましい。
【0103】
上述のように第2基礎構造の全ての段差の位置と、第1基礎構造の段差の位置を合わせた場合、第1光路差付与構造のd11、d12は以下の条件式(7)、(8)を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(7)、(8)を満たすことである。
0.6・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (7)
0.6・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(λ1/(n−1)) (8)
【0104】
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
【0105】
0.39μm<d11<1.15μm (9)´
0.39μm<d12<1.15μm (10)´
【0106】
更に好ましくは、以下の条件式(7)´、(8)´を満たすことが好ましい。より好ましくは、中央領域の全ての領域において、以下の条件式(7)´、(8)´を満たすことである。
0.9・(λ1/(n−1))<d11<1.5・(λ1/(n−1)) (7)´0.9・(λ1/(n−1))<d12<1.5・(λ1/(n−1)) (8)´
【0107】
また、例えば、λ1が390〜415nm(0.390〜0.415μm)であって、nが1.54〜1.60である場合、上記条件式は以下のように表すことが可能となる。
【0108】
0.59μm<d11<1.15μm (9)´´
0.59μm<d12<1.15μm (10)´´
【0109】
また、(1/1/1)構造である第1基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には、球面収差が補正不足方向(アンダー)に変化し、(2/1/1)構造である第2基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には、球面収差が補正不足方向(アンダー)に変化すると好ましい。このような構成により、光ピックアップ装置の温度の上昇により対物レンズの屈折率が変化したような場合には、同じく環境温度の上昇により光源の波長が上昇することを利用して、対物レンズの屈折率の変化による球面収差の変化を補正して、適切な集光スポットを各光ディスクの情報記録面に形成できる。これにより、対物レンズがプラスチック製であっても、温度変化時においても安定した性能を維持できる対物レンズを提供することができる。
【0110】
第2基礎構造に比べて、第1基礎構造の近軸パワーが大きいことが好ましい。つまりは、第1基礎構造の平均ピッチが、第2基礎構造の平均ピッチに比べて小さいことが好ましい。これにより、BD/DVD/CD互換用対物レンズという軸上厚が厚い対物レンズにおいてもCDにおけるワーキングディスタンスを確保できる。更に、色収差を小さくし、光源が高周波重畳を起こしていても、良好な光スポットを形成させ、しかも、光ディスクが複数の情報記録面を有する場合の、迷光の問題を低減させるためには、第1光路差付与構造において、第2基礎構造の光軸に最も近い輪帯1つ分に、第1基礎構造の輪帯が2〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることが好ましい。尚、この場合、第2基礎構造の光軸に最も近い「輪帯」と記載しているが、実際は、光軸を含む「円」であることが通常である。従って、ここで言う「光軸に最も近い輪帯」には、円状の形状も含まれる。又、中間領域に最も近い第2基礎構造の1つの輪帯において、第2基礎構造の輪帯1つ分に、第1基礎構造の輪帯が1〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることである。
【0111】
尚、図6(d)に示すように、第1基礎構造と第2基礎構造とをそのまま重畳すると、点線で示すように一部が突出する場合があるが、突出部分の幅が5μm以下と狭ければ、突出した部分を光軸に沿って平行にシフトして、突出部分をなくしても大きな影響がなく、これにより第2基礎構造の1つの輪帯に、第1基礎構造の複数の輪帯が丁度のるようになる(実線参照)。よって、図6(d)の例では、第2基礎構造の1つの輪帯上に、3つの第1基礎構造の輪帯がのっているものとして扱う。第1基礎構造と第2基礎構造をそのまま重畳した場合に、幅が5μm以下と狭い凹みが発生する場合も同様にして凹みをなくしてもよい。
【0112】
ここで、Δλ(nm)は第1波長の変化量、ΔWD(μm)は第1波長の変化Δλに起因して発生する対物レンズの色収差とすると、以下の式を満たすと好ましい。
0.3(μm/nm)≦ΔWD/Δλ≦0.6(μm/nm) (11)
尚、ここでいう「色収差」とは、光束の波長が変化した際に生じるフォーカス位置のずれである。即ち、光束の波長が変化した際に生じる「波面収差が最良となる位置」のずれである。
【0113】
このような構成とするためには、上述したように、第1光路差付与構造において、第2基礎構造の光軸に最も近い輪帯1つ分に、第1基礎構造の輪帯N1が2〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれるようにすることが好ましい。色収差を上述の範囲にすることによって、BD/DVD/CD互換用対物レンズという軸上厚が厚い対物レンズにおいてもCDにおけるワーキングディスタンスを確保しながら、光ディスクが複数の情報記録面を有する場合の、迷光の問題を低減させることができ、さらにDVD使用時の温度特性及び波長特性を良好にできるため好ましい。又、第2基礎構造における中間領域に最も近い1つの輪帯上に重畳された第1基礎構造の輪帯の数N2は、N1と等しいかN1より小さいことが望ましく、例えば1〜5個重畳されていることがよい。尚、ここに記載されている効果は、有効径Φが3.2mm以下の所謂スリム系のピックアップに用いられる対物レンズにおいて、特に顕著に得られる。
【0114】
第1基礎構造は正の回折パワーを持つことが好ましく、それによりBD/DVD/CD用の対物レンズといった軸上厚が厚い対物レンズにおいてもCD使用時のワーキングディスタンスを確保できる。また、第2基礎構造は負の回折パワーを持つことが好ましい。このように第1基礎構造と第2基礎構造が共に回折パワーを持つことにより、複数の情報記録面を有する光ディスクを使用した際に、記録再生対象でない情報記録面で反射した不要光を必要光からより遠ざけることが可能となるため好ましい。
【0115】
第1光路差付与構造を通過した第3光束によって、第3光束が形成するスポットの光強度が最も強い第1ベストフォーカス位置と、第3光束が形成するスポットの光強度が次に強い第2ベストフォーカス位置とが、以下の条件式(12)を満たすことが好ましい。なお、ここでいうベストフォーカス位置とは、ビームウェストが、或るデフォーカスの範囲でビームウェストが極小となる位置を指すものである。第1ベストフォーカス位置がCDの記録/再生に用いられる必要光のベストフォーカス位置であり、第2ベストフォーカス位置がCDの記録/再生に用いられない不要光のうち、最も光量が多い光束のベストフォーカス位置である。
0.05≦L/f13≦0.35 (12)
但し、f13[mm]は、第1光路差付与構造を通過し、第1ベストフォーカスを形成する第3光束の焦点距離を指し、L[mm]は、第1ベストフォーカスと第2ベストフォーカスの間の距離を指す。
【0116】
より好ましくは、以下の条件式(12)´を満たすことである。
0.10≦L/f13≦0.25 (12)´
【0117】
以上述べた第1光路差付与構造の好ましい例をいくつか図6(a)、(b)、(c)として示す。尚、図6は、便宜上、第1光路差付与構造ODS1が平板状に設けられたものとして示されているが、単玉非球面の凸レンズ上に設けられていてもよい。(2/1/1)回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされている。図6(a)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。次に、図6(b)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差も光軸OAの方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。次に、図6(c)においては、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAと逆の方向を向いており、第2基礎構造BS2の段差も光軸OAと逆の方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。
【0118】
更に、中央領域の総輪帯数をN、対物レンズの第1光束における焦点距離をf(mm)としたとき、以下の式を満たすと好ましい。これによりCDのワーキングディスタンスが短くなりすぎることを抑制すると共に、輪帯のピッチが小さくなりすぎて加工性が低下することを抑制できる。尚、中央領域における光軸に略平行な段差数を、中央領域の総輪帯数とみなしてよい。
160(mm)≦N・f≦210(mm) (1)
【0119】
次に、中間領域に設けられる第2光路差付与構造について説明する。第2光路差付与構造は、少なくとも第3基礎構造と第4基礎構造の2つの基礎構造を重ね合わせた構造であることが好ましい。
【0120】
第3基礎構造も第4基礎構造も、ブレーズ型構造であることが好ましい。また、第3基礎構造は、第3基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすると好ましい。又、第3基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすると好ましい。また、第4基礎構造は、第4基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすると好ましい。又、第4基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。これにより、少なくとも第3基礎構造と第4基礎構造とを重ね合わせた第2光路差付与構造において、光軸方向の段差量を低減でき、それにより波長変動時の回折効率の低下を抑制できる。また、第1基礎構造と第3基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数が一致し、且つ第2基礎構造と第4基礎構造における最も光強度が高い回折光の次数が一致しているため、中央領域と中間領域を通過する光束について、温度や波長変化時においても球面収差を連続と出来、その結果、高次収差の発生を抑えることができる。
【0121】
第2光路差付与構造は第3、第4基礎構造に加えて、第5基礎構造を重ね合わせた構造としてもよいが、構造を単純にし、製造誤差による光利用効率の低下を抑えるためにも、第2光路差付与構造は、第3基礎構造及び第4基礎構造のみからなることが好ましい。
【0122】
尚、この時、第5基礎構造は、第5基礎構造を通過した第1光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第2光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第5基礎構造を通過した第3光束のG次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする構造であることが好ましい。この様な第5基礎構造を重ね合わせることにより、対物レンズの中間領域を通過する第1光束、第2光束に悪影響を与えることなく、且つ、中央領域と中間領域との間で位相ずれを生じさせることなく、第3光束のみに、CDの情報記録面上でフレアを光スポットから遠い位置に形成させる作用を容易に与えることが可能となる。
【0123】
好ましくは、Gが±1である。Gが±1である場合に、第5基礎構造は、図3(d)に示すような2レベルの階段型構造(バイナリ構造とも言う)であることが好ましい。
【0124】
また、第3基礎構造を通過した第1光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第2光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし((3/2)構造とも言う)、第4基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする((2/1)構造とも言う)ようにしてもよい。このような構成であると、BDにおける回折効率をより高めることができる。
【0125】
尚、第3基礎構造と第4基礎構造が、(1/1)構造と(2/1)構造の組み合わせである場合も、(3/2)構造と(2/1)構造の組み合わせである場合も、少なくとも中間領域の、中央領域に最も近い位置に設けられる第3基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、少なくとも中間領域の、中央領域に最も近い位置に設けられる第4基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることが好ましい。より好ましくは、中間領域におけるすべての第3基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向いており、中間領域におけるすべての第4基礎構造の段差が光軸の方向を向いていることである。
【0126】
第3基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、第4基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化するようにしてもよい。
【0127】
このような構成とすると、第2光路差付与構造においても、光ピックアップ装置の温度上昇により対物レンズの屈折率が変化したような場合には、同じく環境温度の上昇により光源の波長が上昇することを利用して、対物レンズの屈折率の変化による球面収差の劣化を補正するため、環境温度の変化時に、より適切な集光スポットを各光ディスクの情報記録面に形成できる。
【0128】
一方で、第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化するようにしてもよい。
【0129】
尚、縦軸が光軸から光軸垂直方向の高さを表し、横軸が収差を示す座標であって、横軸の左側が負であり、右側が正であり、負は対物レンズに近づく方向であり、正は対物レンズから遠ざかる方向である場合において、補正過剰とは、正の方向に傾いている状態であり、補正不足とは、負の方向に傾いている状態をいう。尚、収差の値が負であったとしても、傾きが正の方向に傾いていれば補正過剰とみなす。また、収差の値が正であったとしても、傾きが負の方向に傾いていれば補正不足とみなす。
【0130】
更に、第1基礎構造と第2基礎構造、又は、第3基礎構造と第4基礎構造の光路差関数において近軸の項(例えば(数2)のC2の項や(数3)のB2の項)のみを削除して光路差関数のグラフを作成した際に、当該グラフの位置(傾きは関係ない)が負側にあれば補正不足とみなし、正側にあれば補正過剰と見なすようにしてもよい。
【0131】
また、縦球面収差図において、中間領域の第3基礎構造は、波長が長くなると球面収差の位置(傾きは関係ない)が正側となり、第4基礎構造は、波長が長くなると球面収差の位置が負側になる事が好ましい。このように構成することにより、BDの色収差(波長が変化した場合の集光位置のずれ)を小さくすることが可能となる。
【0132】
第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化するようにすると、対物レンズ全体として、第1光束をBDの情報記録面上に集光する際に、第1光束の波長が+5nm変化した場合の3次球面収差の変化量を、−30mλrms以上、+50mλrms以下にすることができるため好ましい。尚、対物レンズ全体として、第1光束をBDの情報記録面上に集光する際に、第1光束の波長が+5nm変化した場合の3次球面収差の変化量を、−10mλrms以上、+10mλrms以下にすることがより好ましい。尚、対物レンズ全体として、第1光束をBDの情報記録面上に集光する際に、第1光束の波長が+5nm変化した場合の5次球面収差の変化量は、−20mλrms以上、20mλrms以下であることが好ましい。より好ましくは、−10mλrms以上、+10mλrms以下である。
【0133】
このような構成とすると、第3基礎構造と第4基礎構造のうち何れか一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰方向に変化するので、第2光路差付与構造が、第3基礎構造と第4基礎構造のみからなっていても、CD使用時のフレア出しを容易に行うことが出来る。従って、CD使用時のフレア出しを、単純な形状の第2光路差付与構造で行えるため、影の効果による光利用効率の低下を抑制し、更に、製造誤差による光利用効率の低下も抑制し、結果として光利用効率を向上させることが可能となる。尚、これにより中間領域においてはBD使用時の温度特性補正効果が小さくなるが、中央領域の第1基礎構造と第2基礎構造が共に長波長において補正不足であるため、温度特性が悪くなりすぎることを防止でき、またBD使用時の波長特性補正効果を大きくすることができる。加えて、DVD使用時においては、DVDの温度特性及び波長特性を共に良好にすることができる。
【0134】
なお、第4基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足(アンダー)方向に変化し、第3基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰(オーバー)方向に変化すると、CD使用時にフレアをより遠くに飛ばしやすくできるため、好ましい。
【0135】
更にDVD使用時の波長特性を良好にするために、第2光路差付与構造において、第4基礎構造の中央領域に最も近い輪帯1つ分に、第3基礎構造の輪帯が1〜3個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることが好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造において、第4基礎構造の周辺領域に最も近い輪帯1つ分に、第3基礎構造の輪帯が1〜5個(特に好ましくは2〜3個)含まれていることである。
【0136】
周辺構造に第3光路差付与構造を設ける場合、任意の光路差付与構造を設けることが可能である。第3光路差付与構造は、第6基礎構造を有することが好ましい。第6基礎構造は、第6基礎構造を通過した第1光束のP次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第6基礎構造を通過した第2光束のQ次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第6基礎構造を通過した第3光束のR次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。尚、波長変動時の回折効率の変動を抑えるためにも、Pが5以下であることが好ましい。
【0137】
ここで、図20に好ましい対物レンズの模式図を示す。光軸OAを含む対物レンズの断面のうち、光軸よりも上半分を示した図である。尚、図20は、あくまでも模式図であり、実施例に基づいた正確な長さの比率などを表した図面ではない。
【0138】
図20の対物レンズは、中央領域CN、中間領域MD、周辺領域OTを有している。中央領域には第1光路差付与構造ODS1が設けられており、中間領域には第2光路差付与構造ODS2が設けられており、周辺領域には第3光路差付与構造が設けられている。
【0139】
図20の第1光路差付与構造ODS1は、(2/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸の方を向いている第2基礎構造BS2と、(1/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸と逆の方を向いている第1基礎構造BS1とが重畳した構造となっている。図20においては、第2基礎構造BS2は3輪帯であり、第2基礎構造BS2における光軸に最も近い輪帯(円状)上に、第1基礎構造BS1の輪帯が4個含まれている。また、第2基礎構造BS2における中間領域に最も近い1つの輪帯に、第1基礎構造BS1の輪帯が2個含まれている。
【0140】
図20の第2光路差付与構造ODS2は、(2/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸の方を向いている第4基礎構造BS4と、(1/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸と逆の方を向いている第3基礎構造BS3とが重畳した構造となっている。図20においては、第4基礎構造BS4は3輪帯であり、第4基礎構造BS4における中央領域に最も近い輪帯上に、第3基礎構造BS3の輪帯が3個含まれている。また、第4基礎構造BS4における周辺領域に最も近い1つの輪帯に、第3基礎構造BS3の輪帯が1個含まれている。
【0141】
図20の第3光路差付与構造ODS3は、(2/1/1)のブレーズ構造であって段差が光軸の方を向いている第6基礎構造BS6のみからなっている。
【0142】
BDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA1とし、DVDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA2(NA1>NA2)とし、CDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA3(NA2>NA3)とする。NA1は、0.75以上、0.9以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8以上、0.9以下である。特にNA1は0.85であることが好ましい。NA2は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。特にNA2は0.60又は0.65であることが好ましい。また、NA3は、0.4以上、0.55以下であることが好ましい。特にNA3は0.45又は0.53であることが好ましい。
【0143】
対物レンズの中央領域と中間領域の境界は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中央領域と中間領域の境界が、NA3に相当する部分に形成されていることである。また、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界は、第2光束の使用時において、0.9・NA2以上、1.2・NA2以下(より好ましくは、0.95・NA2以上、1.15・NA2以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界が、NA2に相当する部分に形成されていることである。
【0144】
対物レンズを通過した第3光束をCDの情報記録面上に集光する場合に、球面収差が少なくとも1箇所の不連続部を有することが好ましい。その場合、不連続部は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に存在することが好ましい。
【0145】
また、対物レンズは、以下の条件式(14)を満たすことが好ましい。
0.8≦d/f≦1.5 (14)
但し、dは、対物レンズの光軸上の厚さ(mm)を表し、fは、第1光束における対物レンズの焦点距離を表す。
【0146】
BDのような短波長、高NAの光ディスクに対応させる場合、対物レンズにおいて、非点収差が発生しやすくなり、偏心コマ収差も発生しやすくなるという課題が生じるが、条件式(12)を満たすことにより非点収差や偏心コマ収差の発生を抑制することが可能となる。
【0147】
また、対物レンズの軸上厚が厚めの厚肉対物レンズになるため、CDの記録/再生時におけるワーキングディスタンスが短くなりがちになるため、条件式(14)の上限の値を超えないことが好ましい。
【0148】
第1光束、第2光束及び第3光束は、平行光として対物レンズに入射してもよいし、発散光若しくは収束光として対物レンズに入射してもよい。トラッキング時においても、コマ収差が発生することを防止するためには、第1光束、第2光束、及び第3光束を全て平行光又は略平行光として対物レンズに入射させることが好ましい。本発明の第1光路差付与構造を用いることによって、第1光束、第2光束及び第3光束の全てを平行光又は略平行光として対物レンズに入射させることが可能となるため、本発明の効果がより顕著となる。第1光束が平行光又は略平行光になる場合、第1光束が対物レンズに入射する時の対物レンズの結像倍率m1が、下記の式(15)を満たすことが好ましい。
−0.01<m1<0.01 (15)
【0149】
また、第2光束を平行光又は略平行光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(16)を満たすことが好ましい。
−0.01<m2<0.01 (16)
【0150】
一方で、第2光束を発散光として対物レンズに入射させる場合、第2光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m2が、下記の式(16)´を満たすことが好ましい。
−0.025<m2≦−0.01 (16)´
【0151】
また、第3光束を平行光束又は略平行光束として対物レンズに入射させる場合、第3光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m3が、下記の式(17)を満たすことが好ましい。
−0.01<m3<0.01 (17)
【0152】
一方で、第3光束を発散光として対物レンズに入射させる場合、第3光束が対物レンズへ入射する時の、対物レンズの結像倍率m3が、下記の式(17)´を満たすことが好ましい。
−0.025<m3≦−0.01 (17)´
【0153】
また、第3光ディスクを用いる際の対物光学素子のワーキングディスタンス(WD)は、0.15mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。好ましくは、0.2mm以上、0.5mm以下である。次に、第2光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.2mm以上、1.3mm以下であることが好ましい。さらに、第1光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.25mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
【0154】
光ピックアップ装置は、カップリングレンズが、少なくとも第1光束と第2光束が通過するものであって、カップリングレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータ―を有するようにしてもよい。特に、BDが2層や3層以上など複数の情報記録面を持っている場合には、或る層の記録/再生から他の層の記録/再生を行う際には、透明基板厚に差が生じるため、当該厚みの差に起因して発生する球面収差を補正しなければならない。カップリングレンズを光軸方向に移動させ、対物レンズの倍率を変えることによって、当該発生する球面収差を補正することが考えられる。また、温度変化や波長変化の際に発生する球面収差も、カップリングレンズを光軸方向に移動させ、対物レンズの倍率を変えることによって補正することができる。
【0155】
しかしながら、例え、BD使用時にカップリングレンズを光軸方向に移動させて各種球面収差を補正する光ピックアップ装置であっても、DVD使用時においては、カップリングレンズの光軸方向の位置が固定されていることが好ましい。
【0156】
その理由としては、BD使用時には、フレアが発生しないが、DVD使用時には、フレアが発生するため、カップリングレンズを変異させることにより、そのフレアの収差が変化し、結果としてそのフレアが記録/再生に悪影響を与える可能性が生じるという理由や、ドライブでのカップリングレンズの変位の制御を単純化したいという理由などが挙げられる。
【0157】
DVD使用時にカップリングレンズの光軸方向の位置を固定させるためには、対物レンズの第2光路差付与構造を構成する第3基礎構造と第4基礎構造のうち一方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化し、その他方において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰方向に変化させるようにすることで、DVD使用時の温度特性と波長特性を共に良好にすることができ、結果として、DVD使用時に、第2光束が通過するときにカップリングレンズを光軸方向の位置を固定した状態でも、DVDの情報記録面に対して情報の記録/再生を行うことができるようになるため好ましい。
【0158】
本発明に係る光情報記録再生装置は、上述の光ピックアップ装置を有する光ディスクドライブ装置を有する。
【0159】
ここで、光情報記録再生装置に装備される光ディスクドライブ装置に関して説明すると、光ディスクドライブ装置には、光ピックアップ装置等を収納している光情報記録再生装置本体から光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイのみが外部に取り出される方式と、光ピックアップ装置等が収納されている光ディスクドライブ装置本体ごと、外部に取り出される方式とがある。
【0160】
上述した各方式を用いる光情報記録再生装置には、概ね、次の構成部材が装備されているがこれに限られるものではない。ハウジング等に収納された光ピックアップ装置、光ピックアップ装置をハウジングごと光ディスクの内周あるいは外周に向けて移動させるシークモータ等の光ピックアップ装置の駆動源、光ピックアップ装置のハウジングを光ディスクの内周あるいは外周に向けてガイドするガイドレールなどを有した光ピックアップ装置の移送手段及び、光ディスクの回転駆動を行うスピンドルモータ等である。
【0161】
前者の方式には、これら各構成部材の他に、光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイおよびトレイを摺動させるためのローディング機構等が設けられ、後者の方式にはトレイおよびローディング機構がなく、各構成部材が外部に引き出し可能なシャーシに相当するドロワーに設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0162】
本発明によれば、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの互換で用いるような軸上厚が厚い厚肉の対物レンズにおいて、CD使用時にワーキングディスタンスを確保しながらも、温度特性を良好にすることが可能となる。また、複数の情報記録面を有する光ディスクの使用時に、記録再生対象ではない情報記録面で反射した不要光が記録再生に与える悪影響を低減できる。更に、DVD使用時における温度特性及び波長特性を良好にすることが可能となる。さらに、光路差付与構造の段差の高さが高くなることを抑制でき、それに伴い、製造誤差などに因る光量ロスを抑えることが可能となると共に、波長変動時の回折効率の変動を抑えることが可能となる。これらの効果によって、BD/DVD/CDの3種類の光ディスクの記録/再生も、共通の対物レンズで良好に行うことが可能となるものである。又、特に複数の情報記録層を有する光ディスクに対して情報の記録/再生を行うのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本実施の形態にかかる単玉の対物レンズOLを光軸方向に見た図である。
【図2】対物レンズを通過した第3光束が第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットを形成する状態を示す図である。
【図3】光路差付与構造の例を示す軸線方向断面図であり、(a)、(b)はブレーズ型構造の例を示し、(c)、(d)は階段型構造の例を示す。
【図4】(a)は段差が光軸の方向を向いている状態を示し、(b)は段差が光軸とは逆の方向を向いている状態を示す図である。
【図5】(a)は光軸付近では段差が光軸の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では段差が光軸とは逆の方を向くような形状を示し、(b)は光軸付近では段差が光軸とは逆の方向を向いているが、途中で切り替わり、中間領域付近では段差が光軸の方を向くような形状を示す図である。
【図6】第1光路差付与構造の概念図であり、(a)、(b)、(c)、(d)は第1光路差付与構造の例を示す。
【図7】異なる光ディスクであるBDとDVDとCDに対して適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。
【図8】実施例1の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図9】実施例2の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図10】実施例3の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図11】実施例4の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図12】実施例5の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図13】実施例6の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図14】実施例7の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図15】実施例8の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図16】実施例9の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図17】実施例10の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図18】実施例11の縦球面収差図であり、(a)はBD使用時の縦球面収差を示し、(b)はDVD使用時の縦球面収差を示す。
【図19】好ましい対物レンズの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0164】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図7は、異なる光ディスクであるBDとDVDとCDに対して適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、光情報記録再生装置に搭載できる。なお、本発明は、本実施の形態に限られるものではない。
【0165】
光ピックアップ装置PU1は、対物レンズOL、λ/4波長板QWP、コリメートレンズCOL、偏光ビームスプリッタBS、ダイクロイックプリズムDP,BDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ1=405nmのレーザ光束(第1光束)を射出する第1半導体レーザLD1(第1光源)と、DVDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ2=660nmのレーザ光束(第2光束)を射出する第2半導体レーザLD2(第2光源)及びCDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ3=785nmのレーザ光束(第3光束)を射出する第3半導体レーザLD3を一体化したレーザユニットLDP、センサレンズSEN、光検出器としての受光素子PD等を有する。
【0166】
図1に示されるように、本実施の形態にかかる単玉の対物レンズOLにおいて、光源側の非球面光学面に光軸を含む中央領域CNと、その周囲に配置された中間領域MDと、更にその周囲に配置された周辺領域OTとが、光軸を中心とする同心円状に形成されている。図示していないが、中心領域CNには既に詳述した第1光路差付与構造が形成され、中間領域MDには既に詳述した第2光路差付与構造が形成されている。また、周辺領域OTには、第3光路差付与構造が形成されている。本実施の形態では、第3光路差付与構造はブレーズ型の回折構造である。また、本実施の形態の対物レンズはプラスチックレンズである。対物レンズOLの中心領域CNに形成された第1光路差付与構造は、図6に示すように、第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた構造であり、第1基礎構造は、第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、少なくとも中心領域CNの光軸付近に設けられる第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、第2基礎構造は、第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。又、第1基礎構造及び前記第2基礎構造はブレーズ形状であり、第2基礎構造における光軸に最も近い1つの輪帯上に、前記第1基礎構造の輪帯が2〜5個含まれ、第2基礎構造における中間領域に最も近い1つの輪帯に、第1基礎構造の輪帯が1〜5個含まれている。
【0167】
更に、対物レンズOLの中間領域MDに形成された第2路差付与構造は、第3礎構造と第4礎構造とを重ね合わせた構造であり、第3基礎構造は、第3基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第3基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造は、第4基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第4基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。又、第3基礎構造及び第4基礎構造はブレーズ形状であり、第4基礎構造における中央領域CTも近い1つの輪帯上に、第3基礎構造の輪帯が1〜3個含まれている。対物レンズOLの一例としては、図20に示すものがある。
【0168】
青紫色半導体レーザLD1から射出された第1光束(λ1=405nm)の発散光束は、実線で示すように、ダイクロイックプリズムDPを通過し、偏光ビームスプリッタBSを通過した後、コリメートレンズCOLを通過して平行光となり、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、不図示の絞りによりその光束径が規制され、対物レンズOLに入射する。ここで、対物レンズOLの中央領域と中間領域と周辺領域により集光された光束は、保護基板PL1を介して、BDの情報記録面RL1上に形成されるスポットとなる。
【0169】
情報記録面RL1上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOL、不図示の絞りを透過した後、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCOLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタBSで反射され、センサレンズSENを介して受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いて、2軸アクチュエータAC1により対物レンズOLをフォーカシングやトラッキングさせることで、BDに記録された情報を読み取ることができる。ここで、第1光束に波長変動が生じた場合や、複数の情報記録層を有するBDの記録/再生を行う場合、波長変動や異なる情報記録層に起因して発生する球面収差を、倍率変更手段としてのコリメートレンズCOLを光軸方向に変化させて、対物光学素子OLに入射する光束の発散角又は収束角を変更することで補正できるようになっている。
【0170】
レーザユニットLDPの半導体レーザLD2から射出された第2光束(λ2=660nm)の発散光束は、点線で示すように、ダイクロイックプリズムDPで反射され、偏光ビームスプリッタBS、コリメートレンズCOLを通過し、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、対物レンズOLに入射する。ここで、対物レンズOLの中央領域と中間領域により集光された(周辺領域を通過した光束はフレア化され、スポット周辺部を形成する)光束は、保護基板PL2を介して、DVDの情報記録面RL2に形成されるスポットとなり、スポット中心部を形成する。
【0171】
情報記録面RL2上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOLを透過した後、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCOLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタBSで反射され、センサレンズSENを介して受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いてDVDに記録された情報を読み取ることができる。
【0172】
レーザユニットLDPの半導体レーザLD3から射出された第3光束(λ3=785nm)の発散光束は、一点鎖線で示すように、ダイクロイックプリズムDPで反射され、偏光ビームスプリッタBS、コリメートレンズCOLを通過し、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、対物レンズOLに入射する。ここで、対物レンズOLの中央領域により集光された(中間領域及び周辺領域を通過した光束はフレア化され、スポット周辺部を形成する)光束は、保護基板PL3を介して、CDの情報記録面RL3上に形成されるスポットとなる。
【0173】
情報記録面RL3上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOLを透過した後、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCOLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタBSで反射され、センサレンズSENを介して受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いてCDに記録された情報を読み取ることができる。
【0174】
(実施例)
以下、上述した実施の形態に用いることができる実施例について説明する。尚、これ以降(表のレンズデータ含む)において、10のべき乗数(例えば、2.5×10-3)を、E(例えば、2.5×E−3)を用いて表す場合がある。また、対物レンズの光学面は、それぞれ数1式に表に示す係数を代入した数式で規定される、光軸の周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0175】
【数1】

【0176】
ここで、X(h)は光軸方向の軸(光の進行方向を正とする)、κは円錐係数、Aiは非球面係数、hは光軸からの高さ、rは近軸曲率半径である。
【0177】
また、回折構造を用いた実施例の場合、その回折構造により各波長の光束に対して与えられる光路差は、数2式の光路差関数に、表に示す係数を代入した数式で規定される。
【0178】
(数2)
Φ(h)=Σ(C2i2i×λ×m/λB)
ここで、λ:使用波長、m:回折次数、λB:製造波長、h:光軸から光軸垂直方向の距離である。
また、ピッチP(h)=λB/(Σ(2i×C2i×h2i-1))とする。
【0179】
(実施例1)
実施例1の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表1にレンズデータを示す。実施例1の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例1の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例1の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0180】
【表1】

【0181】
実施例1において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は3であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は3であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は3である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは182.6mmである。
【0182】
(実施例2)
実施例2の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表2にレンズデータを示す。実施例2の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例2の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例2の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0183】
【表2】

【0184】
実施例2において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は1であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは200.2mmである。
【0185】
(実施例3)
実施例3の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表3にレンズデータを示す。実施例3の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例3の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例3の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0186】
【表3】

【0187】
実施例3において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は3であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は3であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は3である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは198.0mmである。
【0188】
(実施例4)
実施例4の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表4にレンズデータを示す。実施例4の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例4の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例4の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0189】
【表4】

【0190】
実施例4において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は1であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは206.8mmである。
【0191】
(実施例5)
実施例5の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表5にレンズデータを示す。実施例5の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例5の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例5の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0192】
【表5】

【0193】
実施例5において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は3であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は1であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは209.0mmである。
【0194】
(実施例6)
実施例6の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表6にレンズデータを示す。実施例6の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例6の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例6の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0195】
【表6】

【0196】
実施例6において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は3であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は3であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は5である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは167.7mmである。
【0197】
(実施例7)
実施例7の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表7にレンズデータを示す。実施例7の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例7の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例7の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0198】
【表7】

【0199】
実施例7において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は3であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は3であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は3である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは180.0mmである。
【0200】
(実施例8)
実施例8の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表8にレンズデータを示す。実施例8の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例8の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例8の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0201】
【表8】

【0202】
実施例8において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は3であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は3であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は5である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは167.7mmである。
【0203】
(実施例9)
実施例9の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表9にレンズデータを示す。実施例9の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例9の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例9の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0204】
【表9】

【0205】
実施例9において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は1であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは187.1mmである。
【0206】
(実施例10)
実施例10の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表10にレンズデータを示す。実施例10の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例10の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例10の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0207】
【表10】

【0208】
実施例10において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は3であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは174.8mmである。
【0209】
(実施例11)
実施例11の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。表11にレンズデータを示す。実施例11の第1光路差付与構造の概念図を図6(a)に示す(図6(a)は実施例11の実際の形状とは異なり、あくまでも概念図である)。実施例11の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。
【0210】
【表11】

【0211】
実施例11において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は3であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2である。更に、中央領域における総輪帯数×BD使用時の焦点距離N・fは170.9mmである。
【0212】
上記各実施例に対応する請求項に規定する式の数値等を、表12にまとめて示す。
【0213】
【表12】

【0214】
図8(a)〜18(a)は実施例におけるBD使用時の縦球面収差であり、図8(b)〜18(b)は実施例におけるDVD使用時の縦球面収差であるが、CDの有効径を1として示す。図8(a)〜18(a)において、b1は(1/1/1)構造で発生した0次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した2次回折光である。b2は(1/1/1)構造で発生した1次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した3次回折光である。b3は(1/1/1)構造で発生した1次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した2次回折光である。b4は(1/1/1)構造で発生した1次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した1次回折光である。b5は(1/1/1)構造で発生した2次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した2次回折光である。ここでは、b3を用いてBDに対して情報の記録/再生を行うものであり、b1,b2,b4,b5は全て不要光である。図8(a)〜18(a)から明らかであるが、不要光は全てb3から離れた位置に集光するため、複数の情報記録層を有するBDを用いた場合でもエラー信号が発生する恐れは少ない。
【0215】
又、図8(b)〜18(b)において、d1は(1/1/1)構造で発生した0次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した1次回折光であるが、CDの有効径を1として示す。d2は(1/1/1)構造で発生した1次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した2次回折光である。d3は(1/1/1)構造で発生した1次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した1次回折光である。d4は(1/1/1)構造で発生した1次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した0次回折光である。d5は(1/1/1)構造で発生した2次回折光であり、また(2/1/1)構造で発生した1次回折光である。ここでは、d3を用いてDVDに対して情報の記録/再生を行うものであり、d1,d2,d4,d5は全て不要光である。図8(b)〜18(b)から明らかであるが、不要光は全てd3から離れた位置に集光するため、複数の情報記録層を有するDVDを用いた場合でもエラー信号が発生する恐れは少ない。
【0216】
また、別の実施例12について説明する。実施例12の場合、その回折構造により各波長の光束に対して与えられる光路差は、数3式の光路差関数に、表に示す係数を代入した数式で規定される。
【0217】
【数3】

【0218】
尚、hは光軸からの高さ、λは入射光束の波長、mは回折次数、B2iは光路差関数の係数である。
【0219】
(実施例12)
実施例12の対物レンズはプラスチック単玉レンズである。実施例12の第1光路差付与構造の概念図は図6と同様である。実施例12の第1光路差付与構造は、中央領域の全領域において、(2/1/1)のブレーズ型の回折構造である第2基礎構造BS2に、(1/1/1)のブレーズ型の回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた光路差付与構造となっている。また、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。更に、第1基礎構造BS1の平均ピッチが、第2基礎構造BS2の平均ピッチに比べて小さく、第1基礎構造の光軸とは逆の方向を向いている段差の数が、第2基礎構造の光軸の方向を向いている段差の数に比べて多い。第1基礎構造BS1と第2基礎構造BS2において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化する。
【0220】
また、実施例12の第2光路差付与構造は、中間領域の全領域において、第1基礎構造と同じ第3基礎構造と、第2基礎構造と同じ第4基礎構造とのみを重ねあわせた光路差付与構造となっている。第3基礎構造の段差は光軸と逆の方を向いており、第4基礎構造の段差は光軸の方を向いている。第3基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正過剰方向に変化し、第4基礎構造において、入射する光束の波長がより長くなるよう変化した場合には球面収差が補正不足方向に変化する。
【0221】
実施例12の第3光路差付与構造は、第6基礎構造のみからなっている。第6基礎構造は、第6基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第6基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第6基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくするブレーズ型の回折構造である。
【0222】
表13に実施例12のレンズデータを示す。
【0223】
【表13】

【0224】
実施例12のBDにおける波長特性は、光源波長が+5nm変動したときの、3次球面収差は−1mλrmsであり、5次球面収差は1mλrmsである。
【0225】
実施例12において、中央領域において光軸に最も近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中央領域において最も中間領域に近い第2基礎構造の輪帯上における第1基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も中央領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2であり、中間領域において最も周辺領域に近い第4基礎構造の輪帯上における第3基礎構造の輪帯数は2である。
【0226】
本発明は、明細書に記載の実施例に限定されるものではなく、他の実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施例や思想から本分野の当業者にとって明らかである。明細書の記載及び実施例は、あくまでも例証を目的としており、本発明の範囲は後述するクレームによって示されている。
【符号の説明】
【0227】
AC1 2軸アクチュエータ
BS 偏光ビームスプリッタ
CN 中央領域
COL コリメートレンズ
DP ダイクロイックプリズム
LD1 第1半導体レーザ又は青紫色半導体レーザ
LD2 第2半導体レーザ
LD3 第3半導体レーザ
LDP レーザユニット
MD 中間領域
OL 対物レンズ
OT 周辺領域
PD 受光素子
PL1 保護基板
PL2 保護基板
PL3 保護基板
PU1 光ピックアップ装置
QWP λ/4波長板
RL1 情報記録面
RL2 情報記録面
RL3 情報記録面
SEN センサレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長λ1(390nm≦λ1≦415nm)の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(630nm≦λ2≦670nm)の第2光束を射出する第2光源と、第3波長λ3(760nm≦λ3≦820nm)の第3光束を射出する第3光源とを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有するBDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有するDVDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有するCDの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる対物レンズであって、
前記対物レンズの光学面は、中央領域と、前記中央領域の周りの中間領域と、前記中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有し、
前記中央領域は第1光路差付与構造を有し、
前記対物レンズは、前記中央領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物レンズは、前記中間領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記対物レンズは、前記周辺領域を通過する前記第1光束を、前記BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、前記DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第3光束を、前記CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記第1光路差付与構造は、少なくとも第1基礎構造と第2基礎構造とを重ね合わせた構造であり、
前記第1基礎構造は、前記第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第2基礎構造は、前記第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第2基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第1基礎構造及び前記第2基礎構造はブレーズ形状であり、前記第2基礎構造における前記光軸に最も近い1つの輪帯上に、前記第1基礎構造の輪帯が2〜5個含まれることを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第1基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、
少なくとも前記中央領域の光軸付近に設けられる前記第2基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項3】
前記中間領域は、少なくとも第3基礎構造と第4基礎構造とを重ね合わせた第2光路差付与構造を有し、
前記第3基礎構造は、前記第3基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第3基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、
前記第4基礎構造は、前記第4基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第4基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の対物レンズ。
【請求項4】
前記第3基礎構造及び前記第4基礎構造はブレーズ形状であり、前記第4基礎構造における前記中央領域に最も近い1つの輪帯上に、前記第3基礎構造の輪帯が1〜3個含まれていることを特徴とする請求項3に記載の対物レンズ。
【請求項5】
中央領域との境界付近に設けられる前記第3基礎構造は、その段差が光軸とは逆の方向を向いており、
中央領域との境界付近に設けられる前記第4基礎構造は、その段差が光軸の方向を向いていることを特徴とする請求項3又は4に記載の対物レンズ。
【請求項6】
前記中間領域は、前記第3基礎構造と前記第4基礎構造のみが設けられており、他の基礎構造が設けられていないことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の対物レンズ。
【請求項7】
前記第2基礎構造における前記中間領域に最も近い1つの輪帯に、前記第1基礎構造の輪帯が1〜5個含まれていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の対物レンズ。
【請求項8】
以下の式を満たすことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の対物レンズ。
160(mm)≦N・f≦210(mm) (1)
ここで、前記中央領域の総輪帯数をN、前記対物レンズの前記第1光束における焦点距離をf(mm)とする。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の対物レンズを有することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項10】
少なくとも前記第1光束と前記第2光束が通過するカップリングレンズと、前記カップリングレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータ―を有し、
前記第1光束が通過するときは、前記アクチュエータ―によって前記カップリングレンズが光軸方向に変位可能とされており、
前記第2光束が通過するときには、前記カップリングレンズは、光軸方向の位置を固定されていることを特徴とする請求項9に記載の光ピックアップ装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の光ピックアップ装置を有することを特徴とする光情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−65395(P2013−65395A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−265993(P2012−265993)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2012−542945(P2012−542945)の分割
【原出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】