説明

光ピックアップ装置

【課題】雰囲気温度の変化による対物レンズの傾きを効果的に低減させることができる光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】レンズホルダ2は、対物レンズ1の外周部1cの下面部と接する受け面部2bと、受け面部2bから突出して設けられ、対物レンズ1の外周側面部1eに接する互いに離間して設けられた複数個の突起部2cとを有し、対物レンズ1を保持する。対物レンズ1は、突起部2cと対向していない部分の外周側面部1eと受け面部2bとにまたがるように塗布された接着剤3によってレンズホルダ2に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVD等の光ディスクに記録されたデータを再生したり、光ディスクにデータを記録したりする光ディスク装置において用いられる光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置は、対物レンズと、対物レンズを載せるレンズホルダとを備える。対物レンズは、接着剤によってレンズホルダに固定される。対物レンズをレンズホルダに固定する際、接着剤が対物レンズの外周部の下面に入り込む場合がある。接着剤が対物レンズの外周部の下面に入り込んだ状態で対物レンズがレンズホルダに固定されると、接着剤が温度の変化により膨張または収縮して対物レンズがレンズホルダに対して傾くことがある。対物レンズがレンズホルダに対して傾くと、光ピックアップ装置の光学的特性が劣化する。そこで、対物レンズの外周部の下面に接着剤が入り込むことを防止するための種々の工夫がなされている。
【0003】
特許文献1には、レンズホルダにおける対物レンズの外周部の下面を受ける面に、余分な接着剤を溜めるための凹部を設けることが記載されている。特許文献2には、レンズホルダに、対物レンズの外周部の側面及び下面を受けるレンズ搭載部と、接着剤を塗布する接着剤塗布部とを分離して設けることが記載されている。特許文献3には、レンズホルダの上端面と対物レンズの外周部の側面との間に塗布した接着剤を対物レンズの外周全体に染み渡らせて、対物レンズをレンズホルダに強固に接着させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−329508号公報
【特許文献2】特開2007−184060号公報
【特許文献3】特開2000−215489号公報(段落0031、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の光ピックアップ装置でも、接着剤によって対物レンズをレンズホルダに固定した後に、雰囲気温度の変化により対物レンズがレンズホルダに対して傾き、光学的特性を劣化させる場合がある。接着剤の温度特性により対物レンズが傾くという問題点は依然として解消されていない。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑み、雰囲気温度の変化による対物レンズの傾きを効果的に低減させることができる光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、対物レンズ(1)と、前記対物レンズの外周部(1c)の下面部と接する受け面部(2b)と、前記受け面部から突出して設けられ、前記対物レンズの外周側面部(1e)に接する互いに離間して設けられた複数個の突起部(2c)とを有し、前記対物レンズを保持するレンズホルダ(2)と、を備え、前記対物レンズは、前記突起部と対向していない部分の前記外周側面部と前記受け面部とにまたがるように塗布された接着剤(3)によって前記レンズホルダに固定されていることを特徴とする光ピックアップ装置を提供する。
【0008】
上記構成において、前記対物レンズの外周側面部と前記突起部との間には接着剤が塗布されていないことが好ましい。
【0009】
上記構成において、前記受け面部上の前記対物レンズ周方向で、前記突起部が設けられていない部分の角度範囲は前記突起部が設けられている部分の角度範囲よりも広いことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ピックアップ装置によれば、雰囲気温度の変化による対物レンズの傾きを効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ピックアップ装置の要部の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面が現れている切断斜視図である。
【図4】図1の光ピックアップ装置の製造に際し、対物レンズをレンズホルダに挿入する様子を示す斜視図である。
【図5】図1の光ピックアップ装置の製造に際し、レンズホルダに挿入された対物レンズを接着剤により固定する様子を示す斜視図である。
【図6】図1の光ピックアップ装置において突起部が存在する範囲を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の光ピックアップ装置について、添付図面を参照して説明する。図1〜図3において、対物レンズ1はレンズホルダ2上に配置され、接着剤3によって固定されている。対物レンズ1は、図示していない光ディスクに対してデータを書き込んだり光ディスクからデータを読み取ったりするためのレーザ光を光ディスク上に集光させるものである。対物レンズ1は、レンズの上面を構成する上球面1a、レンズの下面を構成する下球面1b、レンズの周囲を構成するフランジ状の外周部1cを備える。上球面1a及び下球面1bは球面または非球面の凸状の形状を有する。外周部1cは、環状の平面を構成する下面部1d及びこれに隣接する外周側面部1eを有する。
【0013】
レンズホルダ2は、対物レンズ1の下球面1bを挿入させるレンズ挿入穴2a、レンズ挿入穴2aの周囲に設けられた受け面部2b、受け面部2b上に設けられた4つの突起部2cを備える。レンズ挿入穴2aの径は、外周部1cの径より小さく、下球面1bの径より大きい。受け面部2bは対物レンズ1の光軸方向の位置を定める平面である。受け面部2bは下面部1dが接する部分から外側へと所定の面積で広がっている。
【0014】
4つの突起部2cの高さは外周部1cの高さに概ね等しい。4つの突起部2cの中心はレンズ挿入穴2aと中心軸と等しい。4つの突起部2cは、対物レンズ1の外周側面部1eに沿って周方向にほぼ等間隔に設けられている。外周側面部1eが突起部2cの内壁面と接することにより、対物レンズ1はレンズホルダ2上で光軸方向と直交する方向の位置決めがなされる。
【0015】
接着剤3は、突起部2cと対向していない部分の外周側面部1eと受け面部2bとにまたがるように塗布されており、対物レンズ1をレンズホルダ2に対して固定している。好ましくは、接着剤3は隣り合う2つの突起部2cのほぼ中央の外周側面部1eと受け面部2bとの間に塗布されている。外周側面部1eと突起部2cとの隙間には接着剤3を塗布しておらず、接着剤3は存在しない。
【0016】
図4及び図5を用いて本実施形態の光ピックアップ装置の製造工程について説明する。図4に示すように、対物レンズ1をレンズホルダ2の上方からレンズホルダ2に対して配置させる。このとき、対物レンズ1の中心軸をレンズ挿入穴2aの中心軸に一致させて、対物レンズ1の下球面1bをレンズ挿入穴2aに挿入する。これにより、対物レンズ1の側面部1eは各突起部2cの内壁面に沿って下降し、対物レンズ1の下面部1dがレンズホルダ2の受け面部2bに接する。すると、対物レンズ1は上下方向(光軸方向)に位置決めされ、かつ各突起部2cにより受け面部2bの面方向(光軸と直交方向)にも位置決めされる。
【0017】
図5に示すように、レンズホルダ2の4つの突起部2cは対物レンズ1の外周側面部1eと接している。突起部2cが存在しない部分では、対物レンズ1の外周側面部1eはいかなるものとも接触していない。突起部2cが存在しない部分で、受け面部2bから外周側面部1eにかけて接着剤3を塗布し、対物レンズ1をレンズホルダ2に対して固定する。接着剤3は突起部2cにかからないように、また、外周側面部1eと突起部2cとの隙間に入り込まないように塗布される。
【0018】
接着剤3が突起部2cまで広がらないようにするため、接着剤3としては、例えば10[Pa・s](パスカル・秒)程度の粘度でチクソ性を有する紫外線硬化型のものを使用し、塗布後に紫外線を照射して硬化させることが好ましい。これにより、接着剤3が突起部2cまで広がることなく、接着剤3が速やかに硬化し、接着剤3が外周側面部1eと突起部2cとの隙間に入り込むことを防止することができる。
【0019】
図6を用いて突起部2cが存在する範囲について説明する。図6に示すように、本実施形態においては、1つの突起部2cが存在する範囲は、レンズ挿入穴2aの中心軸Aの周りの角度で35°の範囲である。隣り合う2つの突起部2c間の突起部2cが存在しない範囲は55°である。これらの角度範囲は単なる例であり、これに限定されるものではない。突起部2cが存在する範囲よりも接着剤3を塗布する突起部2cが存在しない範囲の方が大きいので、容易に、接着剤3が外周側面部1eと突起部2cとの隙間に入り込まないよう接着剤3の塗布作業を行うことができる。
【0020】
本発明者は、種々の実験により、雰囲気温度の変化により対物レンズ1が傾くのは、対物レンズ1の下面部1dに入り込んだ接着剤の影響によるものだけではなく、対物レンズ1の外周側面部1eと、レンズホルダ2上の外周側面部1eに対向する面との隙間に入り込んだ接着剤の影響によるものであることを見出した。具体的には、外周側面部1eと、レンズホルダ2上の外周側面部1eに対向する面との間に接着剤が存在すると、対物レンズ1とレンズホルダ2と接着剤それぞれの熱膨張係数の差により、対物レンズ1の側面に対し、接着剤を介してレンズホルダ2から応力が加わる。すると、対物レンズ1に傾きが生じるということが判明した。
【0021】
上述のように、本実施形態においては、接着剤3は外周側面部1eと突起部2cとの隙間に塗布されていない。また、接着剤3を意図的に下面部1dと受け面部2bとの間に塗布していないので、接着剤3が下面部1dと受け面部2bとの間に流れ込んだとしても非常にわずかである。従って、本実施形態によれば、雰囲気温度が変化しても接着剤3の膨張や収縮に起因する対物レンズの傾きを効果的に低減させることが可能となる。
【0022】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 対物レンズ
1c 外周部
1e 外周側面部
2 レンズホルダ
2b 受け面部
2c 突起部
3 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと、
前記対物レンズの外周部の下面部と接する受け面部と、前記受け面部から突出して設けられ、前記対物レンズの外周側面部に接する互いに離間して設けられた複数個の突起部とを有し、前記対物レンズを保持するレンズホルダと、
を備え、
前記対物レンズは、前記突起部と対向していない部分の前記外周側面部と前記受け面部とにまたがるように塗布された接着剤によって前記レンズホルダに固定されている
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記対物レンズの外周側面部と前記突起部との間には接着剤が塗布されていないことを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記受け面部上の前記対物レンズ周方向で、前記突起部が設けられていない部分の角度範囲は前記突起部が設けられている部分の角度範囲よりも広いことを特徴とする請求項1または2に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−134431(P2011−134431A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226417(P2010−226417)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】