説明

光ピックアップ装置

【課題】ゲルホルダに対するプリント基板の接着強度を向上させる光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】アクチュエータは、ベースと、ベース上に設けられ、光源から射出された光ビームを光ディスクの情報記録面に集光させる対物レンズを支持するレンズホルダと、ベース上に設けられ、プリント基板が取り付けられる取付部と、取付部に設けられる複数の貫通孔に挿通され、一端がレンズホルダに取り付けられ、他端がプリント基板に接続されて、レンズホルダを揺動可能に支持する複数のワイヤと、を備え、取付部においてプリント基板との接触面には接着剤が充填される凹部が設けられ、プリント基板は、当該凹部を塞ぐように取付部に接触することで接着剤を介して取付部に取り付けられており、プリント基板には、取付部に取り付けられたときに、取付部の凹部内部に挿入される突起部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関し、特に、対物レンズを所定の方向に移動可能とするアクチュエータの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンパクトディスク(以下、CDという。)、デジタル多用途ディスク(以下、DVDという。)、ブルーレイディスク(以下、BDという。)、HD−DVDといった光ディスクが実用化されている。このような光ディスクの記録再生を行うにあたっては、光ビーム(レーザ光)を光ディスクに照射して情報の記録や情報の読み取りを可能とする光ピックアップ装置が用いられる。
【0003】
従来の光ピックアップ装置は、光ビームを射出する光源と、光源から射出された光ビームを光ディスクの記録面上に高精度に集光させる対物レンズと、対物レンズが搭載される対物レンズアクチュエータとを備えており、対物レンズは、光ディスクの情報記録面と略垂直な方向であるフォーカス方向や、光ディスクの径方向と略平行な方向であるトラッキング方向に移動可能とされる。
【0004】
対物レンズアクチュエータには対物レンズを支持するレンズホルダが備えられており、当該レンズホルダは、複数本の弾性を有するワイヤによってベースに対して揺動可能に支持されている。そして、このような対物レンズアクチュエータにおいて、レンズホルダは、フォーカス用コイル及びトラッキング用コイル等を備え、さらに、ベース上に永久磁石を備える。ベース上には基板が立設されていて、各ワイヤの一端が基板に接続されるとともに、各ワイヤの他端がフォーカス用コイル又はトラッキング用コイルに接続されている。更にそれらの各ワイヤは、接着剤やハンダ等でレンズホルダに接合されている。
【0005】
しかしながら、各ワイヤはレンズホルダの駆動に応じて振動が生じるという問題がある。そこでそのような振動を抑制するために、ベース上には、各ワイヤが挿通されるとともにゲル材が充填される貫通孔を有するゲルホルダが設けられており、当該ゲルホルダの貫通孔に各ワイヤが挿通されることによって各ワイヤの振動が減衰される。
【0006】
このようなゲルホルダはその内面側が永久磁石やレンズホルダに対向しており、一方、その外側面にはプリント基板が固定配置されている。
【0007】
特許文献1に記載されている光ピックアップとその組立方法において、接続配線をゲルボックスの背面から両側面にかけて略コ字状に折り曲げて接続配線の両端部により、ゲルボックスの側面開口部を塞ぐ構成とし、当該側面開口部に紫外線硬化機能付き熱硬化性接着剤を充填している。そして、紫外線を照射することによって熱硬化性接着剤を半硬化させて接続配線の両端部をゲルボックスの両側面に仮固定した後、接続配線が仮固定されたゲルボックスを加熱炉に入れて例えば80℃で20〜30分加熱することで熱硬化性接着剤を完全硬化させて接続配線の両端部をゲルボックスの両側面に本固定することが開示されている。
【0008】
特許文献2に記載されている光ピックアップアクチュエータにおいて、ワイヤホルダーとワイヤホルダーの後面(外面側)に配置される印刷回路基板とは、ワイヤホルダーに形成された組み立てボスに、印刷回路基板の当該組み立てボスに対応する位置に形成された組み立て孔を貫通させることで、印刷回路基板がワイヤホルダーの組み立てボスに沿って動くように支持される。また、ワイヤホルダーの空間部の中間にはねじ締結溝が形成されると共に、印刷回路基板の中間部分にはワイヤホルダーのねじ締結溝に対応する位置に、ねじ結合孔が形成されている。そして、印刷回路基板のねじ結合孔を貫いてワイヤホルダーのねじ締結溝に締結するように調整ねじを組み立てることによって、印刷回路基板がワイヤホルダーに固定されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−287263号公報
【特許文献2】特開2005−182977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゲルホルダの一部に充填された接着剤を利用してプリント基板をゲルホルダに固定配置する場合、そのプリント基板と接着剤の接触位置(接着位置)は、特許文献1のようにゲルボックス(ゲルホルダ)の側面側としたり、ゲルボックス(ゲルホルダ)の背面側(外面側側)としたりすることができるが、いずれの場合であっても、接着剤とプリント基板との接触面積(接着位置)が小さく、ゲルホルダに対するプリント基板の接着強度を向上させることが困難であった。
【0011】
本発明は上述した問題点に鑑み、基板に突起部を形成することでゲルホルダの一部に充填された接着剤とプリント基板との接触面積(接着面積)を増やし、これによってゲルホルダに対するプリント基板の接着強度を向上させる光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の光ピックアップ装置は、対物レンズをフォーカス方向及びトラッキング方向に移動可能とするアクチュエータを備える光ピックアップ装置であって、前記アクチュエータは、ベースと、前記ベース上に設けられ、光源から射出された光ビームを光ディスクの情報記録面に集光させる対物レンズを支持するレンズホルダと、前記ベース上に設けられ、プリント基板が取り付けられる取付部と、前記取付部に設けられる複数の貫通孔に挿通され、一端が前記レンズホルダに取り付けられ、他端が前記プリント基板に接続されて、前記レンズホルダを揺動可能に支持する複数のワイヤと、を備え、前記取付部において前記プリント基板との接触面には接着剤が充填される凹部が設けられ、前記プリント基板は、当該凹部を塞ぐように前記取付部に接触することで接着剤を介して前記取付部に取り付けられており、前記プリント基板には、前記取付部に取り付けられたときに、前記取付部の凹部内部に挿入される突起部が形成されていることを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、プリント基板に形成された突起部の表面積の内、少なくとも側面積に相当する面積について、接着剤とプリント基板との接触面積が増えるので、接着剤(接着剤が充填された凹部を備えるゲルホルダ)を加熱して接着剤を硬化させたときに、ゲルホルダに対するプリント基板の接着強度が向上する。
【0014】
また上記構成の光ピックアップ装置において、前記取付部は、前記貫通孔にゲル材が充填されるゲルホルダであることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、プリント基板の保持とワイヤの支持(ワイヤの振動の抑制)とを一つの部材で行うことができ、光ピックアップ装置の小型化を実現することができる。
【0016】
また上記構成の光ピックアップ装置において、前記プリント基板の前記突起部は、略円柱状のボスであることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、ゲルホルダに対するプリント基板の接着強度を向上させつつ、汎用性の高いプリント基板とすることができる。
【0018】
また上記構成の光ピックアップ装置において、前記プリント基板の前記突起部は、略矩形柱状のリブであることが望ましい。
【0019】
この構成によれば、突起部の表面積が増えるので、ゲルホルダに対するプリント基板の接着強度がさらに向上する。
【0020】
また上記構成の光ピックアップ装置において、前記プリント基板の前記突起部は、径大部と径小部とからなり、前記径小部はその軸方向の一端側が前記プリント基板に連結され、その軸方向の他端側が前記径大部に連結されていることが望ましい。
【0021】
この構成によれば、突起部の表面積が増えるので、ゲルホルダに対するプリント基板の接着強度がさらに向上ことがする。また、径大部とプリント基板の内側面との間に形成される隙間を熱硬化性接着剤が埋めて硬化することにより、当該隙間の熱硬化性接着剤と径大部とが掛合するので、ゲルホルダに対するプリント基板の接着強度が著しく向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プリント基板に形成された突起部の表面積の内、少なくとも側面積に相当する面積について、接着剤とプリント基板との接触面積が増えるので、接着剤(接着剤が充填された凹部を備えるゲルホルダ)を加熱して接着剤を硬化させたときに、ゲルホルダに対するプリント基板の接着強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】は、光ピックアップ装置が備える光学系の構成を示す概略図である。
【図2】は、対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図の第1例である。
【図3】は、対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図の第2例である。
【図4】は、フレキシブルプリント基板の構成を示す概略平面図の第1例である。
【図5】は、フレキシブルプリント基板の構成を示す概略平面図の第2例である。
【図6】は、フレキシブルプリント基板の構成を示す概略平面図の第3例である。
【図7】は、リジッドプリント基板が備える突起部の形状と接着剤との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の光ピックアップ装置について図面を参照して説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために本発明の光ピックアップ装置の一例を示すものであって、本発明をこの光ピックアップ装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の装置にも等しく適応し得るものである。
【0025】
例えば、本実施形態の光ピックアップ装置1においては、BD用の光学系とDVD/CD用の光学系とを完全に独立した構成としているが、一部の光学部材を、BD、DVD、およびCDの情報の再生等を行う場合に共通して使用するような構成等としても構わない。また、波面収差を補正する収差補正素子等、必要に応じて各種光学部材を追加しても構わない。
【0026】
[光ピックアップ装置の概略構成]
まず、本実施形態の光ピックアップ装置の概略構成について図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の光ピックアップ装置が備える光学系の構成を示す概略図である。本実施形態の光ピックアップ装置1は、BD、DVD、及びCDに対して情報の読み取りと情報の書き込みを可能に設けられている。
【0027】
図1に示すように、光ピックアップ装置1は2種類の光学系を備える。このうちの一方はBD用の光学系で、他方はDVD及びCD(DVD/CD)用の光学系である。この2種類の光学系は、光ピックアップ装置1によって情報の読み取りや書き込みが行われる光ディスク50の種類(ここでは、BD、DVD、及びCDのうちのいずれか)によって切り換えて使用される。以下、BD用の光学系、DVD/CD用の光学系について、別々に説明する。
【0028】
BD用の光学系は、第1レーザダイオード11と、回折素子12と、偏光ビームスプリッタ13と、第1コリメートレンズ14と、1/4波長板15と、第1立ち上げミラー16と、第1対物レンズ17と、第1シリンドリカルレンズ18と、第1フォトディテクタ19と、を備える。
【0029】
第1レーザダイオード11は、波長405nm帯の光ビーム(レーザ光)を出射する光源である。第1レーザダイオード11から出射された光ビームは、回折素子12によって主ビームと2つの副ビームとに分けられる。回折素子12から出射した光ビームは、偏光ビームスプリッタ13で反射され、第1コリメートレンズ14に送られる。
【0030】
第1コリメートレンズ14は、図示しない駆動手段によって光軸方向(図1に示す矢印の方向)に移動可能となっており、その位置によって、第1対物レンズ17に入射する光ビームの収束発散状態を変化させる。このような構成とするのは、球面収差の補正を行えるようにするためである。
【0031】
第1コリメートレンズ14を出射した光ビームは、偏光ビームスプリッタ13と協働して光アイソレータとして機能する1/4波長板15を通過し、第1立ち上げミラー16によって反射されて第1対物レンズ17に入射する。第1対物レンズ17は、入射した光ビームを光ディスク50の情報記録面50aに集光する。
【0032】
光ディスク50で反射された光ビームは、第1対物レンズ17を透過後、第1立ち上げミラー16で反射され、1/4波長板15、第1コリメートレンズ14の順に透過後、更に偏光ビームスプリッタ13も透過する。偏光ビームスプリッタ13を透過した光ビームは、非点収差を付与する機能を有する第1シリンドリカルレンズ18を透過して、第1フォトディテクタ19の受光面に集光する。第1フォトディテクタ19は、入射した光信号を電気信号に変換して出力する。ここで出力された電気信号は図示しない信号処理部で処理されて、再生信号や、フォーカスエラー信号や、トラッキングエラー信号等となる。
【0033】
次に、DVD/CD用の光学系について説明する。DVD/CD用の光学系は、第2レーザダイオード21と、ハーフミラー22と、第2コリメートレンズ23と、第2立ち上げミラー24と、第2対物レンズ25と、第2シリンドリカルレンズ26と、第2フォトディテクタ27と、を備える。
【0034】
第2レーザダイオード21は、波長650nm帯の光ビームと、波長780nm帯の光ビームと、を切り換えて出射できる2波長レーザである。第2レーザダイオード21から出射された光ビームは、ハーフミラー22で反射されて第2コリメートレンズ23に送られ、平行光に変換される。
【0035】
第2コリメートレンズ23から出射された光ビーム(平行光)は、第2立ち上げミラー24で反射され、第2対物レンズ25に入射し、光ディスク50の記録面50aに集光する。
【0036】
光ディスク50で反射された光ビームは、第2対物レンズ25を透過後、第2立ち上げミラー24で反射され、第2コリメートレンズ23、ハーフミラー22の順に透過し、非点収差を付与する機能を有する第2シリンドリカルレンズ26を透過して、第2フォトディテクタ27の受光面に集光する。第2フォトディテクタ27は、入射した光信号を電気信号に変換して出力する。ここで出力された電気信号は図示しない信号処理部によって処理されて、再生信号や、フォーカスエラー信号や、トラッキングエラー信号等となる。
【0037】
第1対物レンズ17と第2対物レンズ25とは、その詳細は後述する対物レンズアクチュエータ30によって、フォーカス方向とトラッキング方向とに移動可能となっている。これにより、光ピックアップ装置1におけるフォーカシング制御やトラッキング制御が可能となっている。
【0038】
なお、フォーカス方向とは、対物レンズ17、25が光ディスク50に対して接離する方向(図1では上下方向)であり、トラッキング方向とは、光ディスク50の半径方向(ラジアル方向)と平行な方向(図1では紙面と垂直な方向)である。
【0039】
[対物レンズアクチュエータの構成]
次に、本実施形態の光ピックアップ装置1に備えられる対物レンズアクチュエータ30の構成の詳細について、図2〜図6を参照しながら説明する。ここで、図2は、本実施形態の対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図の第1例である。図3は、対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図の第2例である。図4は、フレキシブルプリント基板の構成を示す概略平面図の第1例である。図5は、フレキシブルプリント基板の構成を示す概略平面図の第2例である。図6は、フレキシブルプリント基板の構成を示す概略平面図の第3例である。なお、図2〜図6において同一の部分については同一の符号を付している。
【0040】
図2は、ゲルホルダ34にリジッドプリント基板35が固定配置されて(取り付けられて)いるときにおける対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図であり、図3はゲルホルダ34にリジッドプリント基板35が固定配置されていないときにおける対物レンズアクチュエータの構成を示す概略斜視図である。
【0041】
図2を参照して、本実施形態の対物レンズアクチュエータ30は、ベース31と、レンズホルダ32と、四つの永久磁石33と、ゲルホルダ34と、リジッドプリント基板35と、6本のワイヤ(棒状弾性支持部材)37と、を備える。
【0042】
ベース31は強磁性を有する金属からなる。ベース31には、そのほぼ中央に光ビームを通過させる貫通孔(図示せず)が形成されている。そして、この貫通孔の上にレンズホルダ32が配置される構成となっている。また、ベース31上には、四つの永久磁石33と、ゲルホルダ34と、が固定配置される。
【0043】
レンズホルダ32は、液晶ポリマ(LCP)等の樹脂によって形成され、対物レンズ17、25を保持する。本実施形態においては、光ピックアップ装置1が2つの対物レンズ17、25を有する構成となっているために、レンズホルダ32には2つの対物レンズ17、25を保持できるように2つの保持部(図示せず)が設けられる。2つの保持部はそれぞれ光ビームを通過させる光路孔(図示せず)と繋がっており、これにより第1レーザダイオード11からの光ビームが第1対物レンズ17を、第2レーザダイオード21からの光ビームが第2対物レンズ25を通過するようになっている。また、レンズホルダ32はベース31上に永久磁石33を立設するために断面略十字状に形成されている。
【0044】
レンズホルダ32の内側には、その内壁に沿って、略矩形状に巻回されたフォーカスコイル(図示せず)が接着剤等で貼り付けられている。また、レンズホルダ32の側壁であって、各永久磁石33において後述するヨーク31aに対向する面の反対側の面と対向する部分のそれぞれには、トラッキングコイル38がそれぞれ一つずつ接着剤等で貼り付けられている。なお、これら4つのトラッキングコイル38は全体として1本の線で繋がっている。
【0045】
ベース31上に立設される四つの永久磁石33は例えば希土類磁石から成り、断面略十字状に形成されているレンズホルダ42の四隅に立設されて、四隅からレンズホルダ32を挟むように配置される。すなわち、本実施形態においてベース31上には、2つのトラッキングコイル38を挟んで対向する一対の永久磁石33が左右に立設されていると言い換えることができる。一対の永久磁石33は、同一の極(N極又はS極)が向かい合うように配置される。また、永久磁石33のそれぞれは、外面がベース31から折曲形成されたヨーク31aに磁着された状態とされる。
【0046】
なお、ヨーク31aのうち、ゲルホルダ34側に形成されているヨーク31aは、上述したようにベース31の中央に貫通孔を形成する際に、ベース31において刳り貫かれる部分(刳り貫き部)の全部又は一部を折り曲げることによって形成される。
【0047】
ポリカーボネート等の樹脂成型品から成るゲルホルダ34は、一方のヨーク31aの外面側(ヨーク31aにおいて、レンズホルダ32及び永久磁石33に対向する側の反対側)に配置される。ゲルホルダ34には、一対の挿通孔34aが左右対称に形成されている(図3参照)。一対の挿通孔34aのそれぞれには、シリコンを主成分とするゲル材が充填される。このゲル材は、低粘度のゲル材(ゾル)がゲルホルダ34の各挿通孔34aに注入された後、所定時間の紫外線照射によってゲル状に硬化したものである。
【0048】
リジッドプリント基板35は、ゲルホルダ34の外側面(ゲルホルダ34において、ヨーク31aに対向する面の反対側の面)に固定配置され、また、リジッドプリント基板35の外側面(リジットプリント基板35において、ゲルホルダ34と接触する面と反対側面)には図示しないフレキシブルプリント基板が固定配置されている。リジッドプリント基板35とフレキシブルプリント基板とは、光ピックアップ装置1全体を制御する制御部からの信号を受信して、対物レンズアクチュエータ30に伝達するための回路基板である。
【0049】
ゲルホルダ34に対するリジッドプリント基板35の固定は、熱硬化性の接着剤を用いて行われる。ただし、接着剤による固定に加えてビス止めを行ったり、半田による固定を行ったりしても構わない。
【0050】
図3に示すように、ゲルホルダ34の外側面34bの両側端部には、後述するワイヤ37が挿通される挿通孔34aが左右対称に形成される。各挿通孔34aには、ワイヤ37が三本ずつ挿通された状態となっている。これにより、レンズホルダ32の駆動に応じて各ワイヤ37に生じた振動(主に低次の共振)を減衰することが可能となる。
【0051】
また、ゲルホルダ34の外側面34bにおいて各挿通孔34aの近傍(ゲルホルダ34の中央部側)には、位置決めボス34cが左右対称に形成されている。一方、フレキシブルプリント基板には、図4に示すように、ゲルホルダ34の位置決めボス34cに対応する位置に一対の位置決め孔35cが形成されており、各位置決め孔35cに各位置決めボス34cが挿通されることで、リジッドプリント基板35のゲルホルダ34の外側面34bに対する位置が決まる。
【0052】
また、図3に示すように、ゲルホルダ34の外側面34bの中央部には、熱硬化性接着剤等の接着剤が充填される略コ字状の凹部34dが左右対称に形成されている。ゲルホルダ34の凹部34dの開口部は、リジッドプリント基板35のゲルホルダ34の外側面34bに対する位置決めが完了したときに(各位置決めボス34cがリジッドプリント基板35の各位置決め孔35cに挿通されたときに)、リジッドプリント基板35の内側面(リジッドプリント基板35において、ゲルホルダ34の外側面34bと接触する面)35aによって塞がれる。
【0053】
なお、本実施形態では、ゲルホルダ34の凹部34dの形状が略コ字状である場合を例に説明したが、ゲルホルダ34の凹部34dの形状は略コ字状に限られず、略円状(略楕円状も含む)や、略矩形状など種々の形状を選択することができる。例えば後述するようにゲルホルダ34が位置決めボス34cを備えない構成とすることで、ゲルホルダ34の凹部34dの形状を略矩形状とすることができる。
【0054】
そして、凹部34dがリジッドプリント基板35の内側面35aによって閉鎖された状態で、ゲルボックス34を加熱することで熱硬化性接着剤を硬化させ、リジッドプリント基板35のゲルホルダ34に対する取り付け(固定、接着)が完了する。
【0055】
図4が示すようにリジッドプリント基板35の内側面35aの中央部には、一対の突起部35b、が左右対称に形成されている。各突起部35bは、リジッドプリント基板35のゲルホルダ34の外側面34bに対する位置決めが完了したときに(各位置決めボス34cがリジッドプリント基板35の各位置決め孔35cに挿通されたときに)、ゲルホルダ34の各凹部34d内部に挿入される位置に形成されている。
【0056】
このように、ゲルホルダ34の各凹部34dにリジッドプリント基板35の突起部35bが挿入された状態で、ゲルホルダの各凹部34dに充填された熱硬化性接着剤に熱を加えて硬化させることで、熱硬化性接着剤とリジッドプリント基板35との接触面積(リジッドプリント基板35の接着面積)が増えるので、ゲルホルダ34とリジッドプリント基板35との接着強度を増加させることができる。
【0057】
なお、リジッドプリント基板35の突起部35bの形状は特に限定されるものではなく、図4が示すように略円柱状のボスとしてもよいし、図5が示すように略矩形柱状のリブとしてもよい。
【0058】
図4が示すような略円柱状のボスは、基本的に、ゲルホルダ34の各凹部34dの形状によらずに各凹部34dに挿入することができるので汎用性が高い。一方、図5に示すような略矩形柱状のリブは、ゲルホルダ34の各凹部34dの形状を当該突起部35bの形状に合致させなければならない(例えば図5に示す突起部35bに合わせて、凹部34dの形状は少なくとも縦長形状である必要がある)が、接着面積は増大するため接着強度は向上する。
【0059】
また、リジッドプリント基板35の突起部35bの形状は、図6に示すように径小部351と径大部352とから構成されていることとしてもよい。径小部351はその軸方向の一端側がリジッドプリント基板35の内側面35aに連結され、その軸方向の他端側が径大部352の外側面352aに連結されている。これによって、径大部352の外側面352aとリジッドプリント基板35の内側面35aとの間には所定の隙間が形成される。
【0060】
上述したようなリジッドプリント基板35の突起部35bが径小部351と径大部352とから構成されている場合におけるゲルホルダ34に対するリジッドプリント基板35の接着強度の向上について、図7に示すリジッドプリント基板が備える突起部の形状と接着剤との関係を示す模式図を用いて以下に説明する。
【0061】
図7(a)に示すように、突起部35bが略円柱状であるときは、リジッドプリント基板35に、リジッドプリント基板35をゲルホルダ34から引き剥がそうとする方向(図中の矢印A)に力が加わったときに、熱硬化性接着剤と接触している突起部35bの側面部と底面部(若しくは上面部)が、リジッドプリント基板35がゲルホルダ34から引き剥がされないように抵抗する。
【0062】
一方、突起部35bが径小部351と径大部352とから構成されており、径大部352(径大部352の外側面352a)とリジッドプリント基板35(リジッドプリント基板35の内側面35a)との間に所定の隙間Gが形成されると、図7(b)に示すように、熱硬化性接着剤が隙間Gを埋めるので、突起部35bと熱硬化性接着剤との接触面積が増える。また、この状態で熱硬化性接着剤が硬化すると、硬化した隙間Gの熱硬化性接着剤と径大部352とが掛合することになる。
【0063】
従って、ゲルホルダ34に対するリジッドプリント基板35の接着強度は著しく高まるので、リジッドプリント基板35に、リジッドプリント基板35をゲルホルダ34から引き剥がそうとする方向(図中の矢印A)に力が加わっても、リジッドプリント基板35はゲルホルダ34から引き剥がれない。
【0064】
なお、本実施形態では、ゲルホルダ34の位置決めボス34cとリジッドプリント基板35の位置決め孔35cとによって、リジッドプリント基板35のゲルホルダ34の外側面34bに対する位置を決めることとしているが、リジッドプリント基板35の形状を工夫することによって、位置決めボス34cと位置決め孔35cとを設けないこととしてもよい。すなわち、突起部35bが凹部34dに挿通されることによって、リジッドプリント基板35のゲルホルダ34の外側面34bに対する位置が決まることとしてもよい。
【0065】
図2に戻って、ワイヤ37は導電性を有する部材からなる。ワイヤ37は、レンズホルダ32を挟むように存在する第1の側(レンズホルダ32の側面32aがある側)と第2の側(レンズホルダ32の側面32bがある側)とに、各3本ずつ、計6本設けられる。各ワイヤ37の一方の端部はレンズホルダ32に設けられる中継基板39(図2及び図3では1つのみ示しているが、レンズホルダ32の対向する位置に、もう1つ設けられる)に半田付けにて固定される。
【0066】
なお、中継基板39には、配線パターンが形成されており、上段の2本のワイヤ37は、中継基板39を介してフォーカスコイル(図示せず)と電気的に接続された状態となっている。また、下段の2本のワイヤ37は、中継基板39を介してトラッキングコイル38と電気的に接続された状態となっている。
【0067】
ワイヤ37うち、上段及び下段の計4本のワイヤ37は、その他方の端部がリジッドプリント基板35に形成される貫通孔35dを挿通するように設けられ、半田付けにて固定される。一方、中段の2本のワイヤ37は、その他方の端部がフレキシブルプリント基板に形成される貫通孔を挿通するように設けられ、半田付けにて固定される。ワイヤ37を以上のように構成することにより、レンズホルダ32はワイヤ37によってベース31に対して揺動可能に支持されることになる。
【0068】
(対物レンズアクチュエータの作用)
次に、以上のように構成される対物レンズアクチュエータ30の作用について説明する。
【0069】
フレキシブルプリント基板、リジッドプリント基板35、及び上段のワイヤ37を経由して、制御部からの信号に従った電流がフォーカスコイルに供給される。この場合、フォーカスコイルを流れる電流と、一対の永久磁石33によって形成される磁界と、の電磁気的な作用により、レンズホルダ32はフォーカス方向に変位する。このため、フォーカスコイルに供給する電流の大きさ及び向きを調整することでフォーカシング制御が可能となる。
【0070】
フレキシブルプリント基板、リジッドプリント基板35、及び下段のワイヤ37を経由して、制御部からの信号に従った電流がトラッキングコイル38に供給される。この場合、トラッキングコイル38を流れる電流と、一対の永久磁石33によって形成される磁界と、の電磁気的な作用により、レンズホルダ32はトラッキング方向に変位する。このため、トラッキングコイル38に供給する電流の大きさ及び向きを調整することでトラキング制御が可能となる。
【0071】
(その他)
本発明は、以上に示した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、本実施形態では、レンズホルダ32を、第1の側に3本、第2の側に3本、の合計6本のワイヤ37で支持する構成の場合について示したが、ワイヤの数は本実施形態の数に限定される趣旨ではない。すなわち、片側2本ずつの計4本のワイヤでレンズホルダを支持する構成や、片側4本以上のワイヤでレンズホルダを支持する構成に対しても本発明は適用可能である。
【0073】
また、本実施形態においては、リジッドプリント基板35がゲルホルダ34に固定配置され、リジッドプリント基板35の外側面にフレキシブルプリント基板が配置される構成とした。しかし、ゲルホルダ34に固定配置されるプリント基板はリジッドプリント基板35に限られるものではない。すなわち、フレキシブルプリント基板をゲルホルダ34と貼り付け、フレキシブルプリント基板の外側面にリジッドプリント基板35を配置する構成としても構わない。この場合、突起部35bはフレキシブルプリント基板に形成されることになる。
【0074】
また、本実施形態では、対物レンズアクチュエータ30に2つの対物レンズ17、25が搭載される構成としたが、これに限らず、対物レンズの数が1つ、或いは3つ以上の場合にも当然本発明は適用できる。また、本実施形態の対物レンズアクチュエータ30においては、レンズホルダ32にフォーカスコイルとトラッキングコイルとが設けられている構成としたが、さらに、チルトコイルが設けられていてもよい。なお、ここでいうチルトコイルは、レンズホルダ32をフォーカス方向とトラッキング方向との両方に直交する軸の軸周り方向に回転する作用を発生するためのコイルである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、対物レンズを所定の方向に移動可能とする対物レンズアクチュエータを備える光ピックアップ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 光ピックアップ装置
17 第1対物レンズ
25 第2対物レンズ
30 対物レンズアクチュエータ
31 ベース
32 レンズホルダ
34 ゲルホルダ
35 リジッドプリント基板
35b 突起部
37 ワイヤ(棒状弾性支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズをフォーカス方向及びトラッキング方向に移動可能とするアクチュエータを備える光ピックアップ装置であって、
前記アクチュエータは、
ベースと、
前記ベース上に設けられ、光源から射出された光ビームを光ディスクの情報記録面に集光させる対物レンズを支持するレンズホルダと、
前記ベース上に設けられ、プリント基板が取り付けられる取付部と、
前記取付部に設けられる複数の貫通孔に挿通され、一端が前記レンズホルダに取り付けられ、他端が前記プリント基板に接続されて、前記レンズホルダを揺動可能に支持する複数のワイヤと、
を備え、
前記取付部において前記プリント基板との接触面には接着剤が充填される凹部が設けられ、前記プリント基板は、当該凹部を塞ぐように前記取付部に接触することで接着剤を介して前記取付部に取り付けられており、
前記プリント基板には、前記取付部に取り付けられたときに、前記取付部の凹部内部に挿入される突起部が形成されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記取付部は、前記貫通孔にゲル材が充填されるゲルホルダであることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記プリント基板の前記突起部は、略円柱状のボスであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記プリント基板の前記突起部は、略矩形柱状のリブであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記プリント基板の前記突起部は、径大部と径小部とからなり、前記径小部はその軸方向の一端側が前記プリント基板に連結され、その軸方向の他端側が前記径大部に連結されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−252751(P2012−252751A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125706(P2011−125706)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】