説明

光ピックアップ

【課題】対物レンズ駆動手段のチルトコイルで発生する駆動力を増大しつつ、対物レンズ駆動手段の薄型化を実現することで、薄型で低消費電力な光ピックアップを提供する。
【解決手段】光ディスクに光を集光する対物レンズと、この対物レンズを取り付けたレンズホルダと、このレンズホルダに取り付けられたフォーカシングコイルとトラッキングコイルとチルトコイルと、前記対物レンズの光軸方向に光を反射させる立ち上げミラーとを備えた光ピックアップにおいて、前記チルトコイルの形状を前記立ち上げミラーの前記対物レンズに近い側を避ける形状としたものでらる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録面上に記録された情報を読み出し、または光ディスクに情報を記録する光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置の光ピックアップに備えられる一般的な対物レンズ駆動手段は、対物レンズを搭載したレンズホルダと、レンズホルダに取り付けられたフォーカシングコイルとトラッキングコイルおよびチルトコイルと、これらを含む可動部を支持する支持部材と、ヨークおよびマグネットとから構成されている。
【0003】
フォーカシングコイルに駆動電流を印加すると、マグネットからの磁束との作用によって生じる電磁力により、可動部が光ディスク面に接近または離遠する方向であるフォーカシング方向に駆動される。同様にトラッキングコイルに駆動電流を印加すると、マグネットからの磁束との作用によって生じる電磁力により、可動部が光ディスクの半径方向であるトラッキング方向に駆動される。また、チルトコイルに駆動電流を印加すると、マグネットからの磁束との作用によって生じる電磁力により、可動部が光ディスクの接線方向を回転軸としたラジアルチルト方向に回転駆動される。
【0004】
このような対物レンズ駆動手段の従来例として、例えば特開2010−40067号公報(特許文献1)がある。この特許文献1では、レンズホルダをラジアルチルト方向に回転駆動する略矩形筒形状の一対のチルトコイルを備える構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−40067号公報(請求項1、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ディスク装置を搭載するパーソナルコンピュータ等の情報機器は小型、薄型化が進んでいるため、光ディスク装置および光ピックアップは薄型化が求められている。また、長時間携行して使用できるように消費電力の低減も求められている。
【0007】
対物レンズ駆動手段において消費電力を低減するためには、フォーカシングコイル、トラッキングコイル、チルトコイルへの印加電流当たりの各コイルで発生する駆動力を大きくすることが必要である。
【0008】
これに対して上記特許文献1では、チルトコイルが略矩形筒形状に構成されただけであり、チルトコイルで発生する駆動力を大きくするという点に関して十分に考慮されているわけではなかった。
【0009】
本発明の目的は、対物レンズ駆動手段のチルトコイルで発生する駆動力を増大しつつ、対物レンズ駆動手段の薄型化を実現することで、薄型で低消費電力な光ピックアップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、光ディスクに光を集光する対物レンズと、この対物レンズを取り付けたレンズホルダと、このレンズホルダに取り付けられたフォーカシングコイルとトラッキングコイルとチルトコイルと、前記対物レンズの光軸方向に光を反射させる立ち上げミラーとを備えた光ピックアップにおいて、前記チルトコイルの形状を前記立ち上げミラーの前記対物レンズに近い側を避ける形状としたことにより達成される。
【0011】
また上記目的は、前記チルトコイルは前記立ち上げミラーの前記対物レンズに近い端部側のコイル線部を第一コイル線部、もう一方を第二コイル線部とするとともに、前記第二コイル線部の長さは前記第一コイル線部の長さよりも長することが好ましい。
【0012】
また上記目的は、前記チルトコイルの形状を台形形状とすることが好ましい。
【0013】
また上記目的は、前記第一コイル線部は前記対物レンズの光軸方向から見て前記立ち上げミラーから離れ位置であり、前記第二コイル線部は前記対物レンズの光軸に近い側の一部が前記立ち上げミラーと重なる位置に備えることが好ましい。
【0014】
また上記目的は、前記第一コイル線部は前記レンズホルダがフォーカシング方向の最も下側に動作した時に前記光ディスク接線方向から見て前記立ち上げミラーからから離れており、前記第二コイル線部の前記対物レンズの光軸に近い一部は前記立ち上げミラーと重なる位置に備えることが好ましい。
【0015】
また上記目的は、前記チルトコイルは前記対物レンズの光軸に対して前記光ディスクの半径方向における外周側に1個備えられることが好ましい。
【0016】
また上記目的は、前記チルトコイルは前記光ディスクの半径方向における外周側と内周側に2個備えられ、前記外周側のチルトコイルの巻数は前記内周側のチルトコイルの巻数よりも多いことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対物レンズ駆動手段のチルトコイルで発生する駆動力を増大しつつ、対物レンズ駆動手段の薄型化を実現することで、薄型で低消費電力な光ピックアップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係る光ピックアップ及び対物レンズ駆動手段の斜視図である。
【図2】図1に示した対物レンズ駆動手段の下面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る光ピックアップの斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係るチルトコイルと立ち上げミラーの位置関係を示す図である。
【図5】本発明に一実施例に係る可動部と立ち上げミラーの位置関係を示す図である。
【図6】従来例におけるチルトコイルと立ち上げミラーの位置関係を示す図である。
【図7】従来例における可動部と立ち上げミラーの位置関係を示す図である。
【図8】本発明の効果を説明する図である。
【図9】光ディスクの反りに対する本発明の効果を示す図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る光ピックアップ及び対物レンズ駆動手段の斜視図である。
【図11】本発明の他の実施例に係るチルトコイルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明に係わる光ピックアップについて以下に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る光ピックアップ及び対物レンズ駆動手段であって、下から仰ぎ見た状態の斜視図である。
図2は図1に示した対物レンズ駆動手段の下面図である。
図3は本発明の一実施例に係る光ピックアップの斜視図である。
【0021】
図1,図2,図3において、図中z方向は対物レンズ1の光軸方向であり、対物レンズ1を図示していない光ディスクに接近または離遠させるフォーカシング方向である。このフォーカシング方向において、光ディスクに近い側を上、光ディスクから遠い側を下とする。y方向は光ディスクの半径方向であり、対物レンズ1を光ディスクのトラックに対して位置決めを行うトラッキング方向である。x方向はy方向とz方向の双方に直交する方向であり、光ディスクの接線方向である。θ方向はx軸を中心とした回転方向であり、光ディスクの半径方向への傾きを表すラジアルチルト方向となる。
【0022】
図1に示すように、対物レンズ1はレンズホルダ2の上面に搭載されている。フォーカシングコイル3は対物レンズ1の光軸方向を巻回軸として形成され、レンズホルダ2に取り付けられている。トラッキングコイル4は光ディスクの接線方向を巻回軸として形成され、フォーカシング方向およびトラッキング方向と平行なレンズホルダ2の2つの側面に取り付けられる。チルトコイル5は対物レンズ1の光軸方向を巻回軸として形成され、レンズホルダ2の下面に取り付けられている。チルトコイル5は対物レンズ1の光軸方向に垂直な面内において光ディスクの半径方向に平行な2つのコイル線部5a、5bを有する。そして、このチルトコイル5は、対物レンズ1の光軸に対して光ディスクの半径方向の外周側に1個取り付けられる。
【0023】
支持部材6は、それぞれ一端側がレンズホルダ2に固定され、他方が固定部7に固定されている。対物レンズ1とレンズホルダ2とフォーカシングコイル3とトラッキングコイル4およびチルトコイル5を含む可動部は、支持部材6により固定部7に対して変位可能に支持される。フォーカシングコイル3とトラッキングコイル4およびチルトコイル5は、支持部材6の一端と半田等により電気的に接続される。
【0024】
フォーカシング方向およびトラッキング方向と平行なレンズホルダ2の2つの側面に対向するそれぞれの側において、3個ずつのマグネット11a、11b、11cおよび11d、11e、11fが配置され、磁性体であるヨーク9に取り付けられる。
【0025】
立ち上げミラー20はレンズホルダ2の下側に配置され、図3に示した光ピックアップ110に備えられたレーザ発光素子111からのレーザ光を対物レンズ1の光軸方向に反射させものである。光ピックアップ110に備えられたレーザ発光素子111から発せられたレーザ光は、対物レンズ1により光ディスクに集光される。集光されたレーザ光は光ディスクで反射し、レンズホルダ2上の対物レンズ1を通過し、光ピックアップ110に備えられた光検出器112に入射する。図1では、立ち上げミラー20は図示していないが、専用の取り付け部材によって常に傾斜(略45°)した状態に固定されている。また図1に示すように、立ち上げミラー20はレンズホルダ2に最も接近した端部を20aで表し、最も離れた端部を20bとして表している(以下、端部20a、端部20bという)。
【0026】
一方図1に示したチルトコイル5は、トラッキング方向に平行な2つのコイル線部があり、立ち上げミラー20の対物レンズ1に近い端部20a側に位置している部分を第一コイル線部5aとし、もう一方を第二コイル線部5bで表している。このようなチルトコイル5は第二コイル線部5bの長さが第一コイル線部5aの長さよりも長くなり、外見上台形形状となっている。
【0027】
ところで、本実施例ではチルトコイル5の巻き方形状を台形と表現したが、これは必ずしも台形の限定されるものではなく、四角形の一部を切り欠いた形状或いは四角形の組み合わせによるL字形状でも良い。その場合巻線の折り曲げ角部は当然のことながら円弧を描くことになる。つまり、チルトコイル5は立ち上げミラーの端部20aを避ける形状であればどのような形状でも良い。
【0028】
図4は本発明の一実施例に係るチルトコイルと立ち上げミラーの位置関係を示す図である。
図4において、チルトコイル5の第一コイル線部5aは第二コイル線部5bより短い分立ち上げミラー20とトラッキング方向に距離Lだけ位置が離れている。これに対してチルトコイル5の第二コイル線部5bの対物レンズ1の光軸に近い側の一部は立ち上げミラー20と重なる位置に配置されている。つまり、傾斜して取り付けられた立ち上げミラー20の対物レンズ1に近い側の端部20aの近傍に第一コイル端部5aを位置させ、立ち上げミラー20の対物レンズ1から遠い側の端部20b側に形成される大きな空間に入り込むように第二コイル端部5bを位置させているので、第二コイル端部5bをその分長くできる。
【0029】
図5は本発明に一実施例に係る可動部と立ち上げミラーの位置関係を示す図である。
図5において、図5(a)は対物レンズ駆動手段50を固定部7側から見た図であり、図5(b)は対物レンズ駆動手段50を反固定部7側から見た図である。
【0030】
図5(a)に示すように、チルトコイル5の第一コイル線部5aは立ち上げミラー20とトラッキング方向に距離Lだけ離れた位置にある。また、図5(b)に示すように、チルトコイル5の第二コイル線部5bの対物レンズ1の光軸に近い側の一部は立ち上げミラー20と重なる位置に配置されている。
【0031】
対物レンズ駆動手段50の可動部が動作した時に、対物レンズ駆動手段50の可動部と立ち上げミラー20が接触しないように、対物レンズ駆動手段50の可動部と立ち上げミラー20は離しておく必要がある。立ち上げミラー20は略45°の傾斜面となった状態で固定されている。そのため、対物レンズ駆動手段50の可動部と立ち上げミラー20の接触を考慮するべき箇所は、立ち上げミラー20の対物レンズ1に近い側の端部20aの近傍である。
【0032】
立ち上げミラー20の対物レンズ1から遠い側の端部20b側では、対物レンズ駆動手段50の可動部がフォーカシング方向の最も下側に動作した時に、対物レンズ駆動手段50の可動部が立ち上げミラー20と接触しない範囲であれば、立ち上げミラー20が傾斜している空間に対物レンズ駆動手段50の可動部を部分的に配置することができる。
【0033】
このように本発明では、対物レンズ駆動手段50の可動部がフォーカシング方向の最も下側に動作した場合に、チルトコイル5の第一コイル線部5a側は立ち上げミラー20と離れた位置に配置することで、対物レンズ駆動手段50の可動部と立ち上げミラー20の接触を避けることができる。したがって、チルトコイル5の第二コイル線部5bを立ち上げミラー20側に長く伸ばすことが可能となるため、チルトコイルを1個にしても十分な駆動力を得ることができる。
【0034】
このような対物レンズ駆動手段50において、フォーカシングコイル3に電流を流すとマグネット11a〜11fとの電磁作用によりフォーカシング方向の駆動力が発生し、可動部がフォーカシング方向に動作する。また、トラッキングコイル4に電流を流すとマグネット11a〜11fとの電磁作用によりトラッキング方向の駆動力が発生し、可動部がトラッキング方向に動作する。また、チルトコイル5に駆動電流を流すとマグネット11c、11fとの電磁作用によりチルトコイル5で駆動力が発生し、可動部がラジアルチルト方向に動作する。
【0035】
図3に示した光ピックアップ110に備えられたレーザ発光素子111から発せられたレーザ光は、対物レンズ1により光ディスクに集光される。集光されたレーザ光は光ディスクで反射し、対物レンズ1を通過し、光ピックアップ110に備えられた光検出器112に入射する。光検出器112で得られた信号からサーボ信号が検出され、そのサーボ信号に基づいて対物レンズ駆動手段50のフォーカシングコイル3およびトラッキングコイル4に駆動信号を入力し、対物レンズ1の位置決め制御が行われる。また、チルトコイル5に駆動信号を入力し対物レンズ1をラジアルチルト方向に駆動することで、対物レンズ1と光ディスクの相対傾きの制御が行われる。また、光検出器112で得られた信号から再生信号が検出され、光ディスクの情報が再生される。
【0036】
このように構成された本発明の実施例による効果について、図6、図7に示した従来構造を説明しながら説明する。
本発明のチルトコイル5において、ラジアルチルト方向の駆動力が発生するのは、マグネット11f、11cに対向した第一コイル線部5aと第二コイル線部5bである。
【0037】
図6、図7は従来の対物レンズ駆動手段におけるチルトコイル65と立ち上げミラー20の位置関係を示す図である。
図6は従来の対物レンズ駆動手段におけるチルトコイル65と立ち上げミラー20の位置関係を対物レンズの光軸方向の上方から見た図である。
図7は従来の対物レンズ駆動手段において、可動部がフォーカシング方向の最も下側に動作した時の、可動部と立ち上げミラー20の位置関係を光ディスクの接線方向から見た図である。
【0038】
図6に示すように、従来の対物レンズ駆動手段では、2個設置されたチルトコイル65の形状は長方形であり、立ち上げミラー20を挟んでトラッキング方向の内周側と外周側に2個配置される。可動部が動作した時にチルトコイル65と立ち上げミラー20が接触しないように、チルトコイル65は図7に示すように立ち上げミラー20から離れた位置に配置されている。
【0039】
ここで、チルトコイル65の形状は長方形なので、対物レンズの光軸方向および光ディスクの接線方向のいずれから見ても、チルトコイル65は立ち上げミラー20と離れた位置にある。チルトコイル65において、ラジアルチルト方向の駆動力が発生するのは、トラッキング方向に平行なコイル線部である65a、65b、65c、65dである。
【0040】
コイルへの印加電流に対してコイルで発生する駆動力は、コイルに作用する磁束密度を一定とするとコイルの長さに比例する。したがって、コイルで発生する駆動力を大きくするためには、コイルの長さを大きくすることが有効である。
【0041】
図4に示した本発明のチルトコイル5と図6に示した従来のチルトコイル65を比較すると、本発明のチルトコイル5の第一コイル線部5aと従来のチルトコイル65の各コイル線部65a〜65dの長さは同程度である。
【0042】
一方、本発明のチルトコイル5の第二コイル線部5bは第一コイル線部5aよりも長いので、本発明のチルトコイル5の第二コイル線部5bは、従来のチルトコイル65の各コイル線部65a〜65dよりも長い。
【0043】
したがって、コイル1巻当たりのラジアルチルト方向の駆動力を発生するコイル線部の長さは、本発明のチルトコイル5の方が従来のチルトコイル65よりも大きくなる。本発明のチルトコイル5の巻数と従来のチルトコイル65の総巻数が同じであれば、本発明のチルトコイル5で発生する駆動力は従来のチルトコイル65で発生する駆動力よりも大きくなる。
【0044】
次に、光ディスクの接線方向から見て、チルトコイル5の第二コイル線部5bの対物レンズ1の光軸に近い側の一部が立ち上げミラー20と重なる位置に配置されていることで、光ピックアップ110の薄型化が可能となることを図8を使って説明する。
【0045】
図8は、光ディスクの接線方向から見て、対物レンズ駆動手段50の可動部がフォーカシング方向の最も下側に動作した時に、チルトコイル5を立ち上げミラー20からフォーカシング方向に離れた位置に配置した場合を示す図である。
図5と図8とを比較すると、図8では長方形のチルトコイル5を単に大きくしただけではレンズホルダ2と立ち上げミラー20との間にチルトコイル5が入り込んでしまうため、その分光ピックアップ110が厚くなってしまう。これに対し、図5に示すように光ディスクの接線方向から見て、チルトコイル5を立ち上げミラー20と重なる位置に配置することで、チルトコイル5のフォーカシング方向の厚みtだけ光ピックアップ110の高さを薄くすることができることが分かる。
【0046】
次に、チルトコイル5を光ディスクの半径方向の外周側に1個備えることにより、光ディスクの反りに対して対物レンズ1の傾きを制御する時に、光ディスクの反りの方向と対物レンズ1のフォーカシング動作方向を合わせることができることについて説明する。
【0047】
図9は光ディスク101の反りと対物レンズ1の動作を示す図であり、図9(b)は光ディスク101に反りが無い場合で、対物レンズ1は基準位置にあることを示す図である。
【0048】
図9(a)のように光ディスク101が上側に反っている場合は、光ディスク101の反りに対応して対物レンズ1を光ディスク101の内周側に傾かせることで光ディスク101と対物レンズ1の相対傾きの制御を行う。また、上側に反っている光ディスク101に対物レンズ1の焦点を合わせるために、対物レンズ1をフォーカシング方向の上側に動作させる必要がある。
【0049】
本発明では、対物レンズ1の光軸に対して光ディスク101の外周側に備えたチルトコイル5でフォーカシング方向の上向きの駆動力を発生させれば、支持部材6の支持中心回りの回転モーメントにより対物レンズ1を光ディスク101の内周側に傾かせることができる。この時、チルトコイル5で発生するフォーカシング方向の上向きの駆動力により、対物レンズ1はフォーカシング方向の上側に動作する。
【0050】
逆に図9(c)のように、光ディスク101が下側に反っている場合は、光ディスク101の反りに対応して対物レンズ1を光ディスク101の外周側に傾かせることで光ディスク101と対物レンズ1の相対傾きの制御を行う。また、下側に反っている光ディスク101に対物レンズ1の焦点を合わせるために、対物レンズ1をフォーカシング方向の下側に動作させる必要がある。
【0051】
本発明では、対物レンズ1の光軸に対して光ディスク101の外周側に備えたチルトコイル5でフォーカシング方向の下向きの駆動力を発生させれば、支持部材6の支持中心回りの回転モーメントにより対物レンズ1を光ディスク101の外周側に傾かせることができる。この時、チルトコイル5で発生するフォーカシング方向の下向きの駆動力により、対物レンズ1はフォーカシング方向の下側に動作する。
【0052】
本発明とは反対に、チルトコイルを光ディスクの半径方向の内周側に1個備えた場合は、対物レンズを傾かせた時に、光ディスクの反りと反対のフォーカシング方向に動作することになる。このフォーカシング方向の位置を補正するために、フォーカシングコイルに余分な電流を加える必要があり、消費電力が増加する。
【0053】
したがって、本発明のチルトコイル5を光ディスクの半径方向の外周側に1個備える構成により、ラジアルチルト動作を行う場合の対物レンズ駆動手段50の消費電力を低減することができる。
【0054】
以上から、本発明によれば、薄型で低消費電力な光ピックアップを提供することができる。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明の他の実施例を図10、図11に示す。
図10は本発明の他の実施例に係る光ピックアップ及び対物レンズ駆動手段の斜視図である。
図11は本発明の他の実施例のチルトコイルの構成を示す図である。
【0056】
図10、図11において、本実施例では、チルトコイル55a、55bで示すようにレンズホルダ2の下面における光ディスクの半径方向の外周側と内周側に2個配置したものである。そして、外周側のチルトコイル55aのフォーカシング方向の厚さtaが内周側のチルトコイル55bのフォーカシング方向の厚さtbよりも厚く、外周側のチルトコイル55aの巻数が内周側のチルトコイル55bの巻数よりも多い構成となっている。その他の構成は実施例1と同じである。
【0057】
このように構成することで、光ディスクの反りに対する対物レンズ駆動手段の動作方向を合わせる効果は実施例1よりは低下するものの、トラッキング方向の可動部の質量バランスを、可動部の幾何中心に合わせやすくなる効果が有る。したがって、可動部の質量バランスのずれに起因した振動を低減することができる。
【0058】
以上のごとく、本発明によれば、チルトコイルの2つのコイル線部のうち、立ち上げミラーの対物レンズに近い端部側のコイル線部を第一コイル線部とし、もう一方を第二コイル線部として、第二コイル線部の長さが第一コイル線部の長さよりも長い台形形状とすることで、チルトコイルで発生する駆動力を大きくすることができる。
【0059】
また、対物レンズの光軸方向から見て、第一コイル線部が立ち上げミラーと離れており、第二コイル線部の一部が立ち上げミラーと重なる位置にあり、レンズホルダがフォーカシング方向の最も下側に動作した時に、光ディスクの接線方向から見て、第一コイル線部が立ち上げミラーと離れており、第二コイル線部の一部が立ち上げミラーと重なる位置にあることで、チルトコイルのフォーカシング方向の厚み分だけ光ピックアップの高さを薄くすることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…対物レンズ、2…レンズホルダ、3…フォーカシングコイル、4…トラッキングコイル、5…チルトコイル、5a…チルトコイルの第一コイル線部、5b…チルトコイルの第二コイル線部、6…支持部材、7…固定部、9…ヨーク、11a、11b、11c、11d、11e、11f…マグネット、20…立ち上げミラー、20a…立ち上げミラーの対物レンズに近い端部、20b…立ち上げミラーの対物レンズから遠い端部、50…対物レンズ駆動手段、55a、55b…チルトコイル、65…従来のチルトコイル、101…光ディスク、110…光ピックアップ、111…レーザ発光素子、112…光検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに光を集光する対物レンズと、この対物レンズを取り付けたレンズホルダと、このレンズホルダに取り付けられたフォーカシングコイルとトラッキングコイルとチルトコイルと、前記対物レンズの光軸方向に光を反射させる立ち上げミラーとを備えた光ピックアップにおいて、
前記チルトコイルの形状を前記立ち上げミラーの前記対物レンズに近い側を避ける形状としたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
請求項1記載の光ピックアップにおいて、
前記チルトコイルは前記立ち上げミラーの前記対物レンズに近い端部側のコイル線部を第一コイル線部、もう一方を第二コイル線部とするとともに、
前記第二コイル線部の長さは前記第一コイル線部の長さよりも長くしたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項3】
請求項1記載の光ピックアップにおいて、
前記チルトコイルの形状を台形形状としたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項4】
請求項2に記載の光ピックアップにおいて、
前記第一コイル線部は前記対物レンズの光軸方向から見て前記立ち上げミラーから離れ位置であり、前記第二コイル線部は前記対物レンズの光軸に近い側の一部が前記立ち上げミラーと重なる位置に備えられていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項5】
請求項2に記載の光ピックアップにおいて、
前記第一コイル線部は前記レンズホルダがフォーカシング方向の最も下側に動作した時に前記光ディスク接線方向から見て前記立ち上げミラーからから離れており、前記第二コイル線部の前記対物レンズの光軸に近い一部は前記立ち上げミラーと重なる位置に備えられていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項6】
請求項2に記載の光ピックアップにおいて、
前記チルトコイルは前記対物レンズの光軸に対して前記光ディスクの半径方向における外周側に1個備えられていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項7】
請求項2に記載の光ピックアップにおいて、
前記チルトコイルは前記光ディスクの半径方向における外周側と内周側に2個備えられ、前記外周側のチルトコイルの巻数は前記内周側のチルトコイルの巻数よりも多いことを特徴とする光ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−243348(P2012−243348A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112120(P2011−112120)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】