説明

光ファイバの位置決め構造及び光ファイバの位置決め方法

【課題】簡易な構成で精度良く光ファイバの位置決めを行うことができる光ファイバの位置決め構造及び位置決め方法を提供する。
【解決手段】光ファイバ11の軸線CLに直交する同一断面内において、光ファイバ11のガラス部12の周方向の複数箇所に刃部材20の刃先21を当接させて、光ファイバ11のガラス部12を位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの位置決め構造及び光ファイバの位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバのコア(光軸)を精度良く位置決めする方法としては、一般的に光ファイバの被覆を除去して、無水アルコール等のついた脱脂綿で清掃した後に、高精度でかつある程度長さを有するV溝や丸穴等に挿入し、位置決めを行っていた。このような方法では光ファイバの被覆を除去する必要があるが、光ファイバの被覆を除去することなく光ファイバの位置決めを行うことができる光ファイバ位置決め方法及び光接続器具が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の光接続器具を図6に示す。
図6に示す光接続器具100は、接続器本体101と蓋部材102とを有している。接続器本体101は、光ファイバ(図示省略)を案内し光ファイバを幅方向に位置規制する溝103aを有するガイド部103と、このガイド部103と繋がり光ファイバの先端を挿入するファイバ孔104とを備えている。蓋部材102は、接続器本体101の溝103aの上方から嵌合装着されて光ファイバを溝103aに向けて押圧すると共に溝103aに沿って移動可能に設けられている。
【0004】
光ファイバの位置決めを行う際には、接続器本体101のガイド部103の溝103aに多心の光ファイバを挿入した後、ガイド部103に蓋部材102を装着することによって、挿入した多心の光ファイバを溝103aの底面に一列に所定の配列ピッチで整列させて、位置決めを行う。
【0005】
【特許文献1】特開2006−163210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の位置決め用の溝や丸穴等は、光ファイバの長手方向に数mm程度の長さは接触する必要があるために、表面の凹凸等をできるだけ少なくするのみならず、軸方向の真直度も要求される。このため、高精度の部品成形が要求され、光ファイバの位置決め部品としてコストがかかり易い。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡易な構成で精度良く光ファイバの位置決めを行うことができる光ファイバの位置決め構造及び位置決め方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することのできる本発明に係る光ファイバの位置決め構造は、光ファイバの軸線に直交する同一断面内において、前記光ファイバの周方向の複数箇所に刃先が当接する刃部材により、前記光ファイバが位置決めされることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る光ファイバの位置決め構造において、前記刃先の角度が20°以上60°以下で、当該刃先の先端が半径20μm以上125μm以下の円弧状に面取りされていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る光ファイバの位置決め構造において、前記刃部材はプラスチックからなり、前記刃部材の弾性率が0.1×1010N/m以上1.0×1010N/m以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバの位置決め方法は、光ファイバの軸線に直交する同一断面内において、前記光ファイバの周方向の複数箇所に刃部材の刃先を当接させて、前記光ファイバを位置決めすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、刃部材の刃先を光ファイバの周方向の複数箇所に当接させることで位置決めを行なうため、刃部材の高い寸法精度は必要とされず、従来の位置決め用の溝や丸穴等のように光ファイバの長手方向に沿った位置決め部材を使用する場合と比較して、簡易かつ安価な構成で精度良く位置決めを行なうことができる。また、刃部材をプラスチック製にした場合には、光ファイバのガラスを傷付けずに位置決めできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る光ファイバの位置決め構造及び位置決め方法の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1(A)は第1実施形態に係る光ファイバの位置決め構造を示す断面図、図1(B)は図1(A)中B方向から見た平面図、図2(A)はプラスチック製刃部材の刃先の形状の一例を示す厚さ方向の断面図、図2(B)はプラスチック製刃部材の刃先の形状の別の例を示す厚さ方向の断面図、図3(A)及び(B)は本発明に係る光ファイバの位置決め構造を用いて光ファイバの接続を行う場合の一例を示す側面図、図4(A)はガラス部が被覆から突出する切断方法の説明図、図4(B)は被覆の端部の拡大断面図である。
【0014】
図1(A)及び(B)に示すように、本発明の第1実施形態に係る光ファイバの位置決め構造10は、光ファイバ11の軸線CLに直交する同一断面内において当該光ファイバ11の位置決めを行うものであり、光ファイバ11のガラス部12における周方向の複数箇所に刃先21が当接するプラスチック製の刃部材20を有するものである。
【0015】
光ファイバの位置決め構造10は、図1(A)に示すように、2つの刃先21,21がV字形状に配置された1個の刃部材20が設けられており、光ファイバ11を図1(A)中上方から2つの刃先21,21間に押し込む。これにより、光ファイバ11が被覆13を有する場合には、刃部材20の刃先21は、被覆13を切れ込むように貫通して、ガラス部12の外周に当接する。なお、V字形状に配置された2つの刃先21,21は、1個の刃部材20に形成しても良いが、各々1個の刃先21を有する2つのプラスチック製刃部材によって刃先21をV字形状に配置するようにしてもよい。
【0016】
刃部材20は、図2に示すように、刃先21の角度αが20°以上60°以下で、当該刃先21の先端が半径R=20μm以上125μm以下の円弧状に面取りされていることが好ましい。なお、図2(A)は刃先21の両側にテーパ面21a,21aが設けられている場合(すなわち両刃形状)であり、図2(B)は刃先21の一方にのみテーパ面21aが設けられている場合(すなわち片刃形状)である。
【0017】
すなわち、刃先21の角度αが20°以下の場合には刃先21の強度が不足することになり不適当である。一方、刃先21の角度αが60°以上の場合には、被覆13を切り裂くための鋭利さが不十分である。また、刃先21の先端の面取りにおいて、半径αが20μm以下の場合には、刃先21の強度が弱く、被覆13を切り裂く前に破損するおそれがある。一方、面取りの半径αが125μm以上の場合には、被覆13を切り裂くための鋭利さが不十分となる。
【0018】
したがって、刃先角度αを20°以上60°以下とすることにより、被覆13を切り裂いて刃先21がガラス部12に達するため、ガラス部12の位置決めを行うことができる。また、刃先21の先端の面取り半径Rを20μm以上125μm以下とすることにより、刃先21がガラス部12に当接した際に、ガラス部12を傷付けるのを防止することができる。
【0019】
また、プラスチック製の刃部材20の弾性率が0.1×1010N/m以上1.0×1010N/m以下であることが好ましい。すなわち、刃部材20を被覆13の材質よりも硬く、例えばナイロン程度よりも軟らかくする。
したがって、刃部材20の弾性率をこの範囲内とすることにより、被覆13を切り裂いて刃先21がガラス部12に達することができるとともに、刃先21がガラス部12に当接した際に、ガラス部12を傷付けることを防止することができる。
【0020】
次に、光ファイバの位置決め方法の例について説明する。
図1に示すように、本実施形態の光ファイバの位置決め方法では、光ファイバ11の軸線CLに直交する同一断面内において、光ファイバ11のガラス部12における周方向の複数箇所(ここでは、2つ)に刃部材20の刃先21を当接させて、光ファイバ11のガラス部12を位置決めする。すなわち、所定位置に設けられた刃部材20に光ファイバ11を径方向に押し込んで、複数個の刃先21によって被覆13を切り裂くとともに、刃先21の先端をガラス部12に当接させる。これにより、ガラス部12を周方向の複数点で支持して、位置決めを行う。
【0021】
図3(A)及び(B)に、前記本発明に係る光ファイバの位置決め構造及び位置決め方法を利用した光ファイバ11の接続状態の一例を示す。
図3(A)に示す接続状態においては、接続する両方の光ファイバ11,11を各々刃部材20,20によって位置決めして支持している。光ファイバ11,11の端部ではガラス部12が突出しており、ガラス部12,12の端面12a,12a同士を突き合わせて接続することができる。なお、ガラス部12,12の端面12a,12a間に屈折率整合剤のゼリーかフィルムを介在させても良い。なお、光ファイバ11,11を支持している両方の刃部材20,20を光ファイバ11の軸方向(図3において左右方向)へ水平移動可能にしておき、光ファイバ11を支持している刃部材20,20を相互に接近させることにより、両端面12a,12aを突き合わせて接続することができる。
【0022】
また、図3(A)に示すように光ファイバ11の端部においてガラス部12を突出させるには、図4(A)に示すように、光ファイバ11を両側に引っ張って張力を付与して、この状態で切断用の刃14によってガラス部12に傷を付けて破断させることにより光ファイバ11を切断すれば良い。これにより、被覆13が伸びた状態で切断され、図4(B)に示すように、被覆13の端部がジャバラ状(ジャバラ部13a)に縮むため、ガラス部12の端部12bが突出することになる。
【0023】
なお、図3(B)に示すように、光ファイバ11の端部においてガラス部12が被覆13から突出していない場合でも、図3(A)の場合と同様に接続することができる。
【0024】
以上説明した光ファイバの位置決め構造及びその位置決め方法によれば、刃部材20の複数の刃先21が光ファイバ11のガラス部12に周方向の複数箇所で当接し、ガラス部12の外周面を基準として位置決めするため、光ファイバ11の位置決め(特に、ガラス部12の位置決め)を、簡易かつ安価な構成により高精度で行うことができる。
【0025】
また、図4(B)において説明したように、被覆13がジャバラ状に凹凸していても、前記刃部材20によれば、被覆13を切り裂いて位置決めするため、被覆13が平坦な場合と同様に支持することができるとともに、ガラス部12を基準として位置決めしているため、高精度の位置決めができることになる。
【0026】
次に、本発明に係る光ファイバの位置決め構造の第2実施形態について説明する。
図5(A)及び(B)は本発明の第2実施形態に係る光ファイバの位置決め構造を示す断面図である。なお、前述した第1実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0027】
図5(A)及び(B)に示すように、第2実施形態に係る光ファイバの位置決め構造10Aでは、先端に刃先21を有する3つの刃部材20Aを有している。各刃部材20Aは、刃先21が円周の3等分の位置(すなわち、120度間隔)でガラス部12に当接するように配置するとよい。この場合には、周方向にバランスの取れた3箇所で刃先21によって支持されているため、径方向への位置ずれが確実に防止される。
【0028】
光ファイバ11の位置決めを行う場合には、図5(A)に示すように、光ファイバ11の被覆13の外周面の3箇所において刃部材20の刃先21を当てて、図5(B)に示すように3つの刃先21をそれぞれ被覆13に押し込む。これによって、刃先21は被覆13を切り裂いてガラス部12に達し、ガラス部12は3方から刃先21によって位置決めされるとともに、支持されることになる。
【0029】
なお、前述した各実施形態においては、被覆13付きの光ファイバ11の位置決めについて説明したが、本発明に係る光ファイバの位置決め構造及び位置決め方法は、被覆のないガラス部のみの光ファイバにも適用可能である。
また、前述した実施形態においては、刃先21によってガラス部12の2箇所又は3箇所を支持して位置決めしている場合について説明したが、4箇所以上支持して位置決めすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る光ファイバの位置決め構造を示す断面図、(B)は図1(A)中B方向から見た平面図である。
【図2】(A)はプラスチック製刃部材の刃先の形状の一例を示す断面図、(B)はプラスチック製刃部材の刃先の形状の別の例を示す断面図である。
【図3】(A)及び(B)は本発明に係る光ファイバの位置決め構造を用いて光ファイバの接続を行う場合の例を示す側面図である。
【図4】(A)はガラス部が突出する切断方法の説明図、(B)は被覆の端部の拡大断面図である。
【図5】(A)は本発明の第2実施形態にかかる光ファイバの位置決め構造及び位置決め方法の一工程を示す断面図、(B)は位置決めした状態を示す断面図である。
【図6】従来の位置決め構造を有する光接続器具の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0031】
10,10A 位置決め構造
11 光ファイバ
12 ガラス部
20,20A プラスチック製刃部材
21 刃先
CL 軸線
α 刃先の角度
R 刃先の先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの軸線に直交する同一断面内において、前記光ファイバの周方向の複数箇所に刃先が当接する刃部材により、前記光ファイバが位置決めされることを特徴とする光ファイバの位置決め構造。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバの位置決め構造であって、
前記刃先の角度が20°以上60°以下で、当該刃先の先端が半径20μm以上125μm以下の円弧状に面取りされていることを特徴とする光ファイバの位置決め構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバの位置決め構造であって、
前記刃部材はプラスチックからなり、前記刃部材の弾性率が0.1×1010N/m以上10×1010N/m以下であることを特徴とする光ファイバの位置決め構造。
【請求項4】
光ファイバの軸線に直交する同一断面内において、前記光ファイバの周方向の複数箇所に刃部材の刃先を当接させて、前記光ファイバを位置決めすることを特徴とする光ファイバの位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−292707(P2008−292707A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137197(P2007−137197)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】