説明

光ファイバケーブル及びその心線識別方法

【課題】本発明の課題は、効率的かつ直感的に心線識別作業を行うことができる光ファイバケーブルを提供することにある。
【解決手段】本発明は、光ファイバの外周に着色被覆を施した複数の単心被覆光ファイバから構成される光ファイバテープ心線21を具備する光ファイバケーブルであって、光ファイバテープ心線21は、隣接する2心の単心被覆光ファイバ同士を接着する接着部を配置し、前記光ファイバテープ心線21を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバの着色色相が、マンセル色相環の5つの基本色相において、同一色相内であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外および屋内における光ファイバを利用した情報配線の構成物品である光ファイバケーブル及びその心線識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の単心被覆光ファイバを並列に並べ、一括被覆を施した光ファイバテープ心線を用いた光ファイバケーブル内の光ファイバテープ心線番号及び光ファイバ心線番号の識別手段としては、例えば特許文献1に示すように着色された単心被覆光ファイバを用いて2進法により心線番号を特定する心線識別方法及び光ファイバケーブルがある。
【0003】
例えば、前記光ファイバテープ心線の一端に位置する単心被覆光ファイバの着色が、マンセル色相環の5つの基本色相である青、黄、緑、赤、紫に別れており、これをもって光ファイバテープ心線の番号を識別することができ、さらには前記基本色相で着色された前記単心被覆光ファイバを最も若い番号とすることで、光ファイバテープ心線内の複数の単心被覆光ファイバの心線番号も識別することができるようになっている。
【0004】
その他の単心被覆光ファイバの着色は、光ファイバテープ心線間で同じであるが、5つ以上の光ファイバテープ心線を識別する場合には、6番目以降の光ファイバテープ心線の前記基本色相で着色された単心被覆光ファイバの反対側の一端に位置する単心被覆光ファイバの着色を変えることで識別することができるようになっている。
【0005】
また、非特許文献1では、複数の光ファイバテープ心線を積層させ、プラスティックロッドに設けられた溝(スロット)内に収容されている。前記プラスティックロッドの断面には、識別マークが付与されており、スロット番号が確認できるようになっているため、複数の光ファイバテープ心線から構成される光ファイバユニットの収容位置を容易に把握できるような構成となっている。
【0006】
また、複数の光ファイバテープ心線を並列に並べ、さらに被覆を施したサブユニットテープに分離可能な光ファイバテープ心線が提案されている。このような光ファイバテープ心線では、例えば特許文献2に示すように、光ファイバテープ心線内のサブユニットテープ番号を識別するために、光ファイバテープ心線表面にサブユニットテープ識別用のドットマークを印字した光ファイバテープ心線が提案されている。
【0007】
ところで、近年では、光ファイバを用いたFTTH加入者数は急激に増加している。この結果、光ファイバケーブルを敷設する管路などの基盤設備において、光ファイバケーブルを追加敷設するスペースが不足しつつある。このため、光ファイバケーブルをより一層細径・高密度化することが、基盤設備を有効活用する上で非常に有効となっている。
【0008】
細径・高密度化した光ファイバケーブルに実装する光ファイバテープ心線として、例えば特許文献3では、単心被覆光ファイバの隣接する2心のみを互いに接着する樹脂部を具備し、樹脂部の長さが接着されていない部分の長さよりも短いことを特徴とする光ファイバテープ心線を用いており、ケーブル内で折り畳まれて収容されている。このような光ファイバテープ心線は、曲げ異方性が小さく筒状に折り畳めやすいため、単心被覆光ファイバの束と同様に形を自由に変えることのできるユニットとして、細径・高密度な光ファイバケーブルの製造が可能であることが説明されている。
【0009】
従来用いられている光ファイバテープ心線は、4心、8心のものが多く、前記光ファイバテープ心線を構成する単心被覆光ファイバ心線番号の識別性を向上させるために、同系色の着色が施された複数の単心被覆光ファイバを意図的に同一の光ファイバテープ心線に用いる必要は無い。
【0010】
また、光ファイバテープ心線が折り畳まれて収容されることが無く、光ファイバテープ心線内において、識別の対象となる着色色相を有する単心被覆光ファイバの位置を特定し易いため、端の1心のみに基本色相を有する単心被覆光ファイバが配置されている。
【0011】
また非特許文献2は、従来の光ファイバテープ心線に用いられる代表的な単心被覆光ファイバに用いられる着色系列を示している。12番目までが、青、橙、緑、茶、灰、白、赤、黒、黄、紫、桃、水色の12色で識別され、13番目から24番目までは前記12色の着色被覆表面にマークを付与することで最大24心までの識別が可能となっている。前記12色は、前記5つの基本色相に分類した時、中間色相である橙(赤と黄の中間)、茶(赤と緑の中間)の偏りや基本色相であるが明度が異なる桃(基本色相は赤)、水色(基本色相は青)を考慮しても、同一基本色相内にある色は、最大で基本色相が赤の4色(赤、橙、茶、桃)である。すなわち、代表的な着色系列を全て用いた従来光ファイバテープ心線の場合は、同一基本色相内で着色された単心被覆光ファイバは、前記光ファイバテープ心線を構成する単心被覆光ファイバ全心のうち最大でも1/3以下になり、これよりも多くなることはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−220396号公報
【特許文献2】特開2007−178883号公報
【特許文献3】特開2007−279226号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】“株式会社フジクラ 製品カタログ”、[online]、[平成21年4月24日検索]、インターネット<URL:http://www.fujikura.co.jp/00/comm_sys/fiber2/tapeslot.htm >
【非特許文献2】“Applications Engineering Note” 株式会社コーニングケーブルシステムズ、[online]、[平成21年4月24日検索] <インターネットURL: http://ccswebapps.corning.com/web/library/AENOTES.NSF/$ALL/AENO29/$FILE/AEN029.pdf >
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、光ファイバケーブル内で折り畳めやすく、単心被覆光ファイバの束のように収容される特徴を持つ光ファイバテープ心線または光ファイバテープ心線を複数集合した光ファイバユニットを実装した細径・高密度な光ファイバケーブルにおける心線識別作業では、光ファイバテープ心線及び光ファイバテープ心線を複数集合した光ファイバユニットの全体形状は定まらず、単心被覆光ファイバの配置が規則的では無い状態で収容され、番号識別用の基本色相で着色された単心被覆光ファイバの位置は規則的では無く、ランダムであるため、所望の光ファイバテープ心線、または光ファイバユニットを取り出すことに時間がかかり、特に多くの心線数を有する光ファイバケーブルの場合などで作業効率の低下や配線ミスなどを誘発する恐れがあるという課題がある。
【0015】
特に、光ファイバケーブル内に配置される光ファイバユニット数、光ファイバテープ心線数、光ファイバテープ心線を構成する単心被覆光ファイバ数が増加すると、それぞれを識別するために用いる色の数が増えるため、作業現場において作業者が多数の色配列を理解し、覚えておくことは難しいといった課題がある。
【0016】
また、多数の単心被覆光ファイバを有する光ファイバテープ心線内で、いくつかのグループに分けて用いることのできる光ファイバテープ心線の場合には、グループ数も識別対象に加わるため、さらに用いる色の数を増やす必要がある。
【0017】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光ファイバケーブル内で折り畳められ、単心被覆光ファイバの束のように収容される特徴を持つ光ファイバテープ心線または光ファイバテープ心線を複数集合した光ファイバユニットを実装した光ファイバケーブルについて、効率的かつ直感的に心線識別作業を行うことができる光ファイバケーブル及びその心線識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために本発明は、光ファイバの外周に着色被覆を施した複数の単心被覆光ファイバから構成される光ファイバテープ心線を具備する光ファイバケーブルであって、前記光ファイバテープ心線は、隣接する2心の単心被覆光ファイバ同士を接着する接着部を配置し、前記光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバの着色色相が、マンセル色相環の5つの基本色相において、同一色相内であることを特徴とするものである。
【0019】
また本発明は、光ファイバの外周に着色被覆を施した複数の単心被覆光ファイバから構成される光ファイバテープ心線を具備する光ファイバケーブルであって、前記光ファイバテープ心線は、隣接する2心の単心被覆光ファイバ同士を接着する樹脂部を長手方向及び幅方向の二次元的に配置し、同一の隣接する2心単心被覆光ファイバ間に施された樹脂部の長さは、同一の隣接する2心単心被覆光ファイバ間が接着されない非樹脂部の長さよりも短く、前記光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバの着色色相が、マンセル色相環の5つの基本色相において、同一色相内であることを特徴とするものである。
【0020】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバテープ心線は、隣接する複数の単心被覆光ファイバから構成されるグループに別れており、前記グループを構成する複数の単心被覆光ファイバのうち、少なくとも1つの単心被覆光ファイバの着色されている基本色相が、複数のグループ間において互いに異なっていることを特徴とするものである。
【0021】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、前記グループを構成する複数の単心被覆光ファイバのうち、少なくとも2心以上の単心被覆光ファイバの着色が、2種類以上の着色の組合せで構成されており、前記組合せの並びが非対称であり、かつ前記複数のグループ間において同じであることを特徴とするものである。
【0022】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、前記グループを構成する複数の単心被覆光ファイバにおいて、基本色相が同じである複数の単心被覆光ファイバのうち、少なくとも1つにリングマークが表示されていることを特徴とするものである。
【0023】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバテープ心線を複数集合した光ファイバユニットを具備し、前記光ファイバユニット内における各々の光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバに着色される基本色相が、複数の光ファイバテープ心線間で互いに異なっていることを特徴とするものである。
【0024】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバユニットは外周に施された複数の着色糸またはテープで束ねられており、前記複数の着色糸またはテープの着色色相は、前記基本色相のみ、または前記基本色相と無彩色の組合せで構成されており、複数の光ファイバユニット間で互いに異なっていることを特徴とするものである。
【0025】
また本発明は、前記光ファイバケーブルの心線識別方法であって、前記光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバの着色をマンセル色相環の5つの基本色相において、同一色相内とすることによって、前記光ファイバテープ心線番号を識別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明を用いることによって、光ファイバケーブル内で束状に折り畳まれて収容される光ファイバテープ心線を実装し、番号識別用に着色された単心被覆光ファイバの位置がどこにあるかが定まっていない光ファイバケーブルにおいても、効率的かつ直感的に心線識別作業を行うことができ、作業現場において作業者が多数の色配列を理解する必要が無いために、心線の誤認識などの人為的ミスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルに実装される光ファイバテープ心線の構造例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルの断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルに実装される光ファイバユニットの構造例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る着色糸の組合せによる光ファイバユニットの識別例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルに実装される光ファイバテープ心線を構成する単心被覆光ファイバの着色例を示す説明である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルに実装される光ファイバテープ心線の構造例を示す斜視図である。図1において、11は単心被覆光ファイバ、12は樹脂部である。
【0029】
図1に示すように、光ファイバテープ心線は光ファイバの外周に着色被覆を施した単心被覆光ファイバ番号1,2,3、…………,nの直径が例えば0.25mmの単心被覆光ファイバ複数本から成り、隣接する2心のみの前記単心被覆光ファイバ11同士を接着する樹脂部12を具備し、前記樹脂部12が、光ファイバテープ心線の長手方向および幅方向に二次元的に配置されている。また、光ファイバテープ心線の長手方向における前記樹脂部12の長さは、同じ隣接する2心の単心被覆光ファイバ11間において、接着されていない非樹脂部の長さよりも短いことを特徴としている。
【0030】
このような構造の光ファイバテープ心線は、曲げ方向に対する曲がりやすさの違い、すなわち曲げに対する異方性が小さく、折り畳め易くなり、あたかも単心被覆光ファイバ11の束と同様に取り扱うことができる。光ファイバを接続する作業では、作業者が指で簡単に単心被覆光ファイバ11の並び順を整列させることができるようになっている。
【0031】
また、図1に示すように、前記光ファイバテープ心線は、隣接する複数の単心被覆光ファイバ11、例えば図1では4心の単心被覆光ファイバ11を単位としたグループ番号1,2,……,Nのグループに別れていてもよい。前記グループは、グループ間の境目に該当する単心被覆光ファイバ11間に配置される前記樹脂部12の間隔をその他の間隔と異なるように設定して定義されてもよい。また、前記樹脂部12に用いる樹脂の着色を変えることもできる。
【0032】
図2は本発明の実施形態に係る前記光ファイバテープ心線を実装した光ファイバケーブルの構造例を示す断面図である。図2において、21は光ファイバテープ心線であり、1枚の光ファイバユニットは5つの光ファイバテープ心線21を集合して構成される。22は光ファイバユニット識別用着色糸またはテープ、23はポリエチレン外被、24は抗張力体、25は外被切り裂き用紐である。
【0033】
図2に示すように、例えば、4心の単心被覆光ファイバ11から構成されるグループが5つ連結された合計20心の光ファイバテープ心線21を5枚集合した100心の光ファイバユニットの外周には光ファイバユニット識別用着色糸またはテープ22が巻かれている。前記光ファイバテープ心線21は束状に折り畳まれて収容されている。前記100心の光ファイバユニットを10本一方向に撚り合わせて密に集合した外周に、複数枚の薄い保護テープから構成される押さえ巻き層を有し、さらにその外周にポリエチレン外被23を施して非常に高密度な1000心光ファイバケーブルが構成されている。
【0034】
なお、光ファイバユニットは一方向でも、撚り返し部を有するSZ撚りされていてもよい。また、光ファイバケーブルに必要な防水機能を具備するために、各光ファイバユニット内に吸水ヤーンを具備していてもよい。吸水ヤーンは本発明を実施するにあたって、着色されたものを用いても良い。
【0035】
また、図2の光ファイバケーブルのポリエチレン外被23には、2本の抗張力体24及び2本の外被切り裂き用紐25が前記光ファイバケーブルの中心に対して互いに対称の位置になるように埋め込まれている。前記抗張力体24が埋め込まれている部分のポリエチレン外被23には突起部が形成されおり、前記突起部の外被23の厚さは、前記突起部以外の外被23の厚さよりも厚くなっている。
【0036】
図3は本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルに実装される光ファイバユニットの構造例を示す斜視図である。図3において、テープ番号1,2,3,4,5は光ファイバテープ心線21の番号であり、ユニット識別用着色糸A,Bは光ファイバユニット識別用着色糸またはテープ22の一例である。図3に示すように、20心の光ファイバテープ心線21を束状に折り畳んで5枚集合した100心の光ファイバユニットの外周には光ファイバユニット識別用着色糸A,Bが巻かれている。
【0037】
本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルの心線識別作業では、前記光ファイバケーブルの外被23を除去した後に、光ファイバユニット番号の識別→光ファイバテープ心線番号の識別→グループ番号の識別→単心被覆光ファイバ心線番号の識別の工程を経て行われる。以下に工程順に本発明の実施形態に係る識別機能を説明する。
【0038】
光ファイバユニット番号の識別は、図3に示すように、前記光ファイバユニットの外周に巻かれている6種類の着色糸(またはテープ)A,Bの組合せにより識別される。
【0039】
図4は本発明の実施形態に係る着色糸(またはテープ)の組合せによる光ファイバユニットの識別例を示す説明図である。図4は着色糸A,Bの組合せ例を示し、マンセル色相環の5つの基本色相である、青色、黄色、緑色、赤色、紫色の5種類と、無彩色である白色の合計6種類を用いて、着色糸A,Bの同じ基本色相の組合せをユニット番号1から5番、着色糸A,Bの基本色相と白色の組合せをユニット番号6から10番として識別をすることができる。
【0040】
なお、前記5つの基本色相において最大明度を持つ場合、色相は関係無くなり、白色が得られるが、本発明の実施形態内における白色の定義は、無彩色であり、有彩色である前記5つの基本色相とは区別をして用いることとする。
【0041】
上記のように、光ファイバユニットは外周に施された複数の着色糸またはテープで束ねられており、前記複数の着色糸またはテープの着色色相は、前記基本色相のみ、または前記基本色相と無彩色の組合せで構成されており、複数の光ファイバユニット間で互いに異なっていることを特徴とする。
【0042】
図5は本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルに実装される光ファイバテープ心線を構成する単心被覆光ファイバの着色例を示す説明である。図5において、テープ番号は光ファイバテープ心線の番号、グループ番号は光ファイバテープ心線を構成する単心被覆光ファイバのグループの番号、心線番号は単心被覆光ファイバの番号である。
【0043】
図5に示すように、光ファイバテープ心線番号の識別機能として、各光ファイバテープ心線に基本色相を割り当て、前記光ファイバテープ心線を構成する複数の、例えば20心の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバ、すなわち7心以上の単心被覆光ファイバの着色が前記割り当てられた基本色相内であるように構成されていることを特徴とする。すなわち、光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバの着色色相が、マンセル色相環の5つの基本色相において、同一色相内とすることによって、前記光ファイバテープ心線番号を識別することができる。
【0044】
例えば、図5では、テープ番号1番の光ファイバテープ心線の場合、単心被覆光ファイバ20心のうち、11心が前記5つの基本色相のうちの一つである青の色相内(青または薄青)で着色されていることを特徴とする。
【0045】
また、光ファイバユニット内における各々の光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバに着色される基本色相が、複数の光ファイバテープ心線間で互いに異なっていることを特徴とする。
【0046】
上記のように、光ファイバテープ心線を構成する1/3より多い単心被覆光ファイバの着色を同系色とすることで、光ファイバユニットから所望の光ファイバテープ心線を取り出す時に、互いに密に集合されている複数の光ファイバテープ心線の中から、所望の光ファイバテープ心線を構成する多数の単心被覆光ファイバのまとまりとして直感的に見つけることができ、効率的な心線識別作業を可能とすることができる。
【0047】
また、前記光ファイバテープ心線を構成する同一基本色相内の単心被覆光ファイバの数は、多い方が前記光ファイバテープ心線の識別が容易であり、例えば半数以上であることがより好ましい。
【0048】
なお、前記割り当てられた基本色相内で着色された以外の単心被覆光ファイバは(図5では白色)、他の基本色相内で着色されていても良いが、その数が前記割り当てられた基本色相内で着色された単心被覆光ファイバの数を超えない範囲である必要がある。実際には、前記割り当てられた基本色相の識別を邪魔しないように、前記割り当てられた基本色相内で着色された以外の単心被覆光ファイバには無彩色である白色や灰色、透明色を適用することが好ましい。
【0049】
本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルは、単心被覆光ファイバの束と同様の振る舞いを持つ光ファイバテープ心線が非常に高密度に集合されているため、従来技術のように光ファイバテープ心線うちの特定色を持つ1心のみを取り出す識別手段では、前記特定色を持つ1心の単心被覆光ファイバの位置が特定の場所に配置されているわけではなく、その位置はランダムに、時には単心被覆光ファイバの束の内部に隠れてしまうこともあるため、心線識別作業に時間を要し、識別誤りなどの人為的ミスを誘発する恐れがある。この点において、本発明に係る光ファイバケーブルとは大きく異なる。
【0050】
グループの識別機能として、図5に示すように、各グループの最も小さい心線番号の単心被覆光ファイバに前記5つ基本色相を配置することで、グループ番号を識別することができる。なお、前記5つ基本色相を配置する単心被覆光ファイバの心線番号は各グループの最も大きい心線番号であっても良い。すなわち、光ファイバテープ心線は、隣接する複数の単心被覆光ファイバから構成されるグループに別れており、前記グループを構成する複数の単心被覆光ファイバのうち、少なくとも1つの単心被覆光ファイバの着色されている基本色相が、複数のグループ間において互いに異なっていることを特徴とする。また、グループを構成する心線数としては、従来広く用いられている光ファイバテープ心線が4心または8心タイプであることから、これと同じ4心または8心が良く用いられる。
【0051】
前記グループを構成する単心被覆光ファイバの心線番号の識別として、図5に示すように、前記グループを構成する複数の単心被覆光ファイバのうち、少なくとも2心以上の単心被覆光ファイバの着色が、2種類以上の前記基本色相の組合せで構成されており、前記組合せの並びが非対称であり、かつ前記複数のグループ間において同じであることを特徴としている。
【0052】
具体的には、図5において、例えばテープ番号1番の光ファイバテープ心線のグループ間において、2番目と3番目の2心の単心被覆光ファイバの着色は、2番目が白色、3番目が薄青色と並び順が同じである。このように、着色の組合せの並びを非対称にすることで、前記グループを構成する複数の単心被覆光ファイバの心線番号順を見分けることができる。
【0053】
なお、前記組合せでは、時に光ファイバケーブルは地下マンホール内やとう道などの暗い場所で白熱電灯を用いて識別作業が行われるため、明度の異なる着色の組合せの並びを用いるとなお有効である。
【0054】
図5では、各グループの最も心線番号の大きい単心被覆光ファイバは、最も心線番号の小さい単心被覆光ファイバと同じ着色が施されているため、これを区別するために、単心被覆光ファイバの表面に円周上に黒色のリングマークが、前記単心被覆光ファイバの長さ方向に縞状に付与されていることを特徴とする。すなわち、グループを構成する複数の単心被覆光ファイバにおいて、基本色相が同じである複数の単心被覆光ファイバのうち、少なくとも1つにリングマークが表示されていることを特徴とする。
【0055】
このようにリングマークによって同一グループ内の単心被覆光ファイバを分離してばらばらにした後でも、各グループの最も心線番号の大きい単心被覆光ファイバと、最も心線番号の小さい単心被覆光ファイバを見分けることができるようになっている。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組合せてもよい。
【符号の説明】
【0057】
11…単心被覆光ファイバ、12…樹脂部、21…光ファイバテープ心線、22…光ファイバユニット識別用着色糸またはテープ、23…ポリエチレン外被、24…抗張力体、25…外被切り裂き用紐。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの外周に着色被覆を施した複数の単心被覆光ファイバから構成される光ファイバテープ心線を具備する光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバテープ心線は、隣接する2心の単心被覆光ファイバ同士を接着する接着部を配置し、
前記光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバの着色色相が、マンセル色相環の5つの基本色相において、同一色相内である
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
光ファイバの外周に着色被覆を施した複数の単心被覆光ファイバから構成される光ファイバテープ心線を具備する光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバテープ心線は、隣接する2心の単心被覆光ファイバ同士を接着する樹脂部を長手方向及び幅方向の二次元的に配置し、
同一の隣接する2心単心被覆光ファイバ間に施された樹脂部の長さは、同一の隣接する2心単心被覆光ファイバ間が接着されない非樹脂部の長さよりも短く、
前記光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバの着色色相が、マンセル色相環の5つの基本色相において、同一色相内である
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバテープ心線は、隣接する複数の単心被覆光ファイバから構成されるグループに別れており、
前記グループを構成する複数の単心被覆光ファイバのうち、少なくとも1つの単心被覆光ファイバの着色されている基本色相が、複数のグループ間において互いに異なっている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記グループを構成する複数の単心被覆光ファイバのうち、少なくとも2心以上の単心被覆光ファイバの着色が、2種類以上の着色の組合せで構成されており、前記組合せの並びが非対称であり、かつ前記複数のグループ間において同じである
ことを特徴とする請求項3に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記グループを構成する複数の単心被覆光ファイバにおいて、基本色相が同じである複数の単心被覆光ファイバのうち、少なくとも1つにリングマークが表示されている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記光ファイバテープ心線を複数集合した光ファイバユニットを具備し、
前記光ファイバユニット内における各々の光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバに着色される基本色相が、複数の光ファイバテープ心線間で互いに異なっている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記光ファイバユニットは外周に施された複数の着色糸またはテープで束ねられており、
前記複数の着色糸またはテープの着色色相は、前記基本色相のみ、または前記基本色相と無彩色の組合せで構成されており、複数の光ファイバユニット間で互いに異なっている
ことを特徴とする請求項6に記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載光ファイバケーブルの心線識別方法であって、
前記光ファイバテープ心線を構成する複数の単心被覆光ファイバの1/3より多い単心被覆光ファイバの着色をマンセル色相環の5つの基本色相において、同一色相内とすることによって、前記光ファイバテープ心線番号を識別する
ことを特徴とする光ファイバケーブルの心線識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−286735(P2010−286735A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141525(P2009−141525)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】