説明

光ファイバケーブル

【課題】蝉の産卵管により突き刺しによる損傷を防止するとともに、巻き癖がなく難燃特性を備えた光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線13とテンションメンバ14を平行に配置し、外被15により一体に被覆した光ファイバケーブルで、外被15は、光ファイバ心線13の外周を覆う内側の第1の被覆層15aと、該第1の被覆層の外周を覆う外側の第2の被覆層15bとを有し、第1の被覆層15aはデュロメータ(タイプD)による硬さが52以上で、第2の被覆層15bは第1の被覆層より硬さが小さい樹脂材料で形成される。第1の被覆層15aの硬さは56〜64で、第2の被覆層15bの硬さが52以下とすることができる。また、第1の被覆層15aの外被15に対する断面積比率は、1/4〜2/3であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線とテンションメンバを平行に配し、外被により一体に被覆した光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット等の情報通信等の普及により通信の高速化、情報量の増大に加え、双方向通信と大容量通信に対応するために光ネットワークの構築が進展している。この光ネットワークでは、通信事業者と各家庭を直接光ファイバで結び、高速通信サービスを提供するFTTH(Fiber To The Home)サービスが開始されている。これにより、光ケーブルの宅内への引き込みに用いられるドロップ光ケーブルや、これを複数本集合した集合光ケーブルの需要が増えている。これらの光ファイバケーブルは、一般的には、光ファイバ心線と平行に抗張力体をケーブル外被内に埋設して、ケーブルの引張り強度を高めた構造のものが用いられている。
【0003】
近年、この種の光ファイバケーブルに対して、蝉がケーブル外被に産卵管を突き刺し、内部の光ファイバ心線を損傷、あるいは外被内に卵を産み付けるという問題が多発している。これは、ドロップ光ケーブルを蝉が産卵しやすい対象物と認識したものと推定されているが、この蝉による対策としては、例えば、特許文献1,2に開示のように、内部の光ファイバ心線の周りを金属のような硬い防護体で包囲する蝉対策用の光ファイバケーブルが知られている。
【0004】
従来の蝉対策用の光ファイバケーブルとしては、例えば、図4(A)〜図4(C)に示すような本体部8と支持線部9を細幅の首部で連結した自己支持形光ファイバケーブルが知られている。図4(A)に示す光ファイバケーブル1aの本体部8は、光ファイバ心線2の両側に抗張力体3(テンションメンバともいう)を配し、抗張力体3が配されていない両側に光ファイバ心線2を挟んで蝉対策用の防護体4を配し、外被6により一括被覆して構成する例である。また、防護体4が配される外被6の表面には、外被切裂き用のノッチ7が形成される。
【0005】
図4(B)に示す光ファイバケーブル1bの本体部8は、光ファイバテープ心線2’の両側に抗張力体3を配し、抗張力体3が配されていない両側に、光ファイバテープ心線2’を挟んで蝉対策用の防護体4を配し、外被6により一括被覆して構成する例である。また、外被切裂き用のノッチ7は形成しない例で示してあるが、ノッチ7を形成したものであってもよい。
【0006】
図4(C)に示す光ファイバケーブル1cの本体部8は、光ファイバ心線2の両側に抗張力体3を配し、蝉の産卵管が突き刺さらないような硬質の樹脂からなる外被6’により一括被覆して構成する例である。また、外被切裂き用のノッチ7は、前記と同様にあってもなくてもよい。
なお、図4(A)〜図4(C)のいずれの例においても、本体部8は支持線部9から切り離して使用することができ、また、初めから支持線部9を有しない構成のものであってもよい。
【特許文献1】特開2006−11166号公報
【特許文献2】特開2006−195109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4(A),図4(B)のように、光ファイバ心線を防護体4で保護する構造の光ファイバケーブルは、ケーブル端末に光コネクタを取り付ける際には、防護体を切断した上で行う必要があり作業性がよくない。
また、光ファイバケーブルの適用環境の拡大に伴い、ノンハロゲンの難燃性が付与された光ケーブルが要求されている。しかし、図4(C)に示すケーブルのように、外被に硬質の樹脂材料を用いると、難燃剤の添加が難しくなり、十分な難燃特性を実現することができないという問題がある。さらに、硬質の外被は、支持線と分離した際に巻き癖の影響が出て作業性がよくないという問題もある。
【0008】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、蝉の産卵管により突き刺しによる損傷を防止するとともに、難燃特性を備え、巻き癖のない光ファイバケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光ファイバケーブルは、光ファイバ心線とテンションメンバを平行に配置し、外被により一体に被覆した光ファイバケーブルで、外被は、光ファイバ心線の外周を覆う内側の第1の被覆層と、該第1の被覆層の外周を覆う外側の第2の被覆層とを有し、第1の被覆層はデュロメータ(タイプD)による硬さが52以上で、第2の被覆層は第1の被覆層より硬さが小さい樹脂材料で形成されていることを特徴とする。
例えば、第1の被覆層の硬さは56〜64で、第2の被覆層の硬さが52以下とすることができる。また、第1の被覆層の外被に対する断面積比率は、1/4〜2/3であることが望ましい。なお、第2の被覆層には、難燃ポリエチレン樹脂を用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外被の第1の被覆層により蝉の産卵管により突き刺しによる損傷を防止するという耐蝉性をもたせ、第2の被覆層によりケーブルに難燃特性をもたせ、巻き癖を少なくして作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1により本発明の実施の形態を説明する。図1(A)は本発明による光ファイバケーブルの基本形態を示し、図1(B)はノッチを有する例を示し、図1(C)は支持線なしで第1の被覆層が光ファイバ心線のみを覆う例を示し、図1(D)は支持線なしでノッチを有する例を示す図である。図中、10a〜10dは光ファイバケーブル、11は本体部、12は支持線部、13は光ファイバ心線、14はテンションメンバ、15は外被、15aは第1の被覆層、15bは第2の被覆層、16はノッチ、17は鋼線、18は首部を示す。
【0012】
図1(A)に示す光ファイバケーブル10aは、本体部11と支持線部12を細幅の首部18を介して一体に形成されている。本体部11は、例えば、光ファイバ心線13の両側にテンションメンバ(抗張力体ともいう)14を配し、外被15で一体に被覆してなる。支持線部12は、単心線又は撚り線からなる鋼線17(外径1.2mm程度)が用いられ、本体部11の外被15の成形時に外被15と同じ樹脂材で一括被覆して形成される。この形態のケーブルは、ドロップケーブルとして使用されることが多い。
【0013】
光ファイバ心線13は、標準外径が125μmのガラスファイバを被覆外径が250μm前後で被覆した光ファイバ素線と称されているもの、また、その外側にさらに被覆を施し、或いは着色被覆を施したもの全てを含むものとする。なお、光ファイバ心線は、1本〜数本程度が用いられる。
テンションメンバ14には、引張り及び圧縮に対する耐力を有する線材を用いることができる。例えば、外径0.4mm〜0.7mmの鋼線あるいはガラス繊維強化プラスチック(G−FRP)、アラミド繊維強化プラスチック(K−FRP)などを用い、高温から低温の使用温度環境下で長期の使用に耐えるようにすることができる。
【0014】
外被15は、光ファイバ心線13を直接覆う内側の第1の被覆層15aと、この第1の被覆層15aの外周を覆う第2の被覆層15bからなる2層で形成される。内側の第1の被覆層15aは、蝉の産卵管が突き刺しにくい硬質の樹脂材料で形成され、例えば、JIS K 7215で規定されるデュロメータ(タイプD)硬さ試験法による硬さが、52以上の樹脂材料で形成する。第2の被覆層15bは、第1の被覆層15aより硬さが小さく、難燃特性を有している樹脂材料で形成される。上記の光ファイバケーブル10aは、例えば、本体部11が長辺側を3.1±0.2mm、短辺側が2.0±0.2mm、支持線部12が被覆外径2.8±0.2mmの外形寸法で形成される。
【0015】
図1(B)に示す光ファイバケーブル10bは、図1(A)の例と同様に本体部11と支持線部12を細幅の首部18を介して一体に形成され、ケーブル端末の形成等で光ファイバ心線の取り出しを容易にするためのノッチ16を設けた例である。ノッチ16は、テンションメンバ14が配されていない側の外被15の両側面に、例えば、光ファイバ心線13と一致する位置に形成されている。
【0016】
この光ファイバケーブル10bの外被15は、図1(A)の例と同様に、内側の第1の被覆層15aと、この第1の被覆層15aの外周を覆う第2の被覆層15bからなる2層で形成される。内側の第1の被覆層15aは、蝉の産卵管が突き刺しにくい硬質の樹脂材料で形成され、第2の被覆層15bは、第1の被覆層15aより硬さが小さく、難燃特性を有している樹脂材料で形成される。蝉の産卵管が、光ファイバ心線13までの距離が小さいノッチ16の部分から突き刺すことが多いが、硬質の第1の被覆層15aで阻止することができる。
【0017】
図1(C)に示す光ファイバケーブル10cは、支持線部を有しない又は除去した形態のケーブルである。この形態のケーブルは、複数本を集合させて支線用として布設される集合ケーブル、あるいは屋内の配線に用いられるインドアケーブルとして使用されることが多い。この光ファイバケーブル10cは、光ファイバ心線13の両側にテンションメンバ14を配する構成においては、図1(A)の本体部11と同じである。
【0018】
この光ファイバケーブル10cの外被15は、図1(A)の例と同様に、内側の第1の被覆層15aと、この第1の被覆層15aの外周を覆う第2の被覆層15bからなる2層で形成される。内側の第1の被覆層15aは、蝉の産卵管が突き刺しにくい硬質の樹脂材料で形成され、第2の被覆層15bは、第1の被覆層15aより硬さが小さく、難燃特性を有している樹脂材料で形成される。第1の被覆層15aは、光ファイバ心線13の外周を覆うが、テンションメンバ14を覆わない。テンションメンバ14は、第2の被覆層15bで覆われる。すなわち、第1の被覆層15aは、少なくとも光ファイバ心線13の外周を覆っていればよく、これにより、蝉の産卵管による直接の損傷を回避することができる。本例は、図1(A)の例と比べて第2の被覆層15bの比率が増えるので、その分、難燃性を向上させ巻き癖が少なくなる。
【0019】
図1(D)に示す光ファイバケーブル10dは、支持線部を有しない又は除去した形態のケーブルで、ノッチを設けた例である。この形態のケーブルは、図1(C)の場合と同様に、複数本を集合させて支線用として布設される集合ケーブル、あるいは屋内の配線に用いられるインドアケーブルとして使用される。この光ファイバケーブル10dは、光ファイバ心線13の両側にテンションメンバ14を配し、硬質の第1の被覆層15aと、難燃性の第2の被覆層15bからなる2層で形成する構成においては、図1(B)の本体部11と同じである。蝉の産卵管が、光ファイバ心線13までの距離が小さいノッチ16の部分から突き刺す場合でも、硬質の第1の被覆層15aで阻止することができる。
【0020】
図2は、光ファイバ心線として、複数本の光ファイバ並べて一括被覆した光ファイバテープ心線(以下、テープ心線という)を用いた例を示す図である。図1(A)は基本形態を示す図、図1(B)はノッチを有する例を示し、図1(C)は支持線なしで第1の被覆層がテープ心線のみを覆う例を示し、図1(D)は支持線なしでノッチを有する例を示す図である。図中、20a〜20dは光ファイバケーブル、13’はテープ心線を示す。その他、図1で説明した部分と同じ機能を有する部分には、同じ符号を用いることによりその説明を省略する。
【0021】
図2(A)に示す光ファイバケーブル20aは、本体部11と支持線部12を細幅の首部18を介して一体に形成されている。本体部11は、光ファイバ心線として4心のテープ心線13’を用い、その幅方向の両側にテンションメンバ14をテープ心線13’と直線上に並ぶように配し、外被15で一体に被覆してなる。支持線部12は、単心線又は撚り線からなる鋼線17(外径1.2mm程度)が用いられ、本体部11の外被15の成形時に外被15と同じ樹脂材で一括被覆して形成される。この形態のケーブルは、ドロップケーブルとして使用されることが多い。
【0022】
テープ心線13’は、標準外径が125μmのガラスファイバを被覆外径が250μm前後で被覆した複数本の光ファイバ心線を一列に並べて一括被覆したもので、例えば、4心で、幅が1.1mm、厚さが0.3mm程度のものが用いられる。なお、テープ心線13’は、1枚〜数枚が用いられる。テンションメンバ14には、図1の例で説明したのと同様に、引張り及び圧縮に対する耐力を有する線材を用いることができ、詳細説明は省略する。
【0023】
外被15についても、図1の例で説明したのと同様に、テープ心線13’を直接覆う内側の第1の被覆層15aと、この第1の被覆層15aの外周を覆う第2の被覆層15bからなる2層で形成される。内側の第1の被覆層15aは、蝉の産卵管が突き刺しにくい硬質の樹脂材料で形成され、デュロメータ(タイプD)による硬さが52以上の樹脂材料で形成する。第2の被覆層15bは、第1の被覆層15aより硬さが小さく、難燃特性を有している樹脂材料で形成される。上記の光ファイバケーブル20aは、例えば、本体部11が長辺側を3.7±0.2mm、短辺側が2.0±0.2mm、支持線部12が被覆外径2.8±0.2mmの外形寸法で形成される。
【0024】
図2(B)に示す光ファイバケーブル20bは、図2(A)の例と同様に本体部11と支持線部12を細幅の首部18を介して一体に形成され、2枚のテープ心線13’を収納し、ケーブル端末の形成等で光ファイバ心線の取り出しを容易にするためのノッチ16を設けた例である。ノッチ16は、テンションメンバ14が配されていない側の外被15の両側面に、例えば、テープ心線13’と一致する位置に形成されている。
光ファイバケーブル20bの外被15は、図2(A)の例と同様に、内側の硬質の第1の被覆層15aと、この第1の被覆層15aの外周を覆う難燃性の第2の被覆層15bからなる2層で形成され、その形状、機能は図1(B)の例と同じである。
【0025】
図2(C)に示す光ファイバケーブル20cは、支持線部を有しない又は除去した形態のケーブルである。この形態のケーブルは、複数本を集合させて支線用として布設される集合ケーブル、あるいは屋内の配線に用いられるインドアケーブルとして使用されることが多い。この光ファイバケーブル20cは、テープ心線13’の両側にテンションメンバ14を配する構成においては、図2(A)の本体部11と同じである。
【0026】
光ファイバケーブル20cの外被15は、図2(A)の例と同様に、内側の第1の被覆層15aと、この第1の被覆層15aの外周を覆う第2の被覆層15bからなる2層で形成される。ただ、第1の被覆層15aは光ファイバ心線15aの外周を覆うが、テンションメンバ14を覆わない。テンションメンバ14は、第2の被覆層15bで覆う点が異なっている。すなわち、図1(C)の例と同様に、第1の被覆層15aは少なくともテープ心線13’の外周を覆っていればよく、これにより、蝉の産卵管による直接の損傷を回避することができる。本例は、図2(A)の例と比べて第2の被覆層15bの比率が増えるので、その分、難燃性を向上させ巻き癖が少なくなる。
【0027】
図2(D)に示す光ファイバケーブル20dは、支持線部を有しない又は除去した形態のケーブルで、ノッチを設けた例である。この形態のケーブルは、図2(C)の場合と同様に、複数本を集合させて支線用として布設される集合ケーブル、あるいは屋内の配線に用いられるインドアケーブルとして使用される。また、この光ファイバケーブル20dは、テープ心線13’の両側にテンションメンバ14を配し、硬質の第1の被覆層15aと、難燃性の第2の被覆層15bからなる2層で形成する構成される。
【0028】
本発明による光ファイバケーブルは、上述したように、外被15が少なくとも光ファイバ心線13(テープ心線13’を含む)の外周を硬質の第1の被覆層15aで覆い、これにより蝉の産卵管突き刺しによる損傷を防止する。この場合、第1の被覆層15aは、蝉の産卵管が突き刺さらない程度の硬さを有していることが必要である。第1の被覆層15aの硬さは、デュロメータ(タイプD)による硬さが52以上あれば、蝉の産卵管突き刺しを阻止することができるので、この硬さ以上の樹脂材を用いて形成する。
【0029】
そして、第1の被覆層15aの外周を第2の被覆層15bで覆って、外被全体としての所定の被覆厚さと外被15の形状を確保する。この第2の被覆層15bは、第1の被覆層15aより軟質の樹脂材で形成する。これにより、外被15による曲げ癖を少なくすることができ、取り扱い性を向上させることができる。また、第2の被覆層15bに軟質の樹脂材を用いることにより、難燃剤の添加が可能となり難燃化ケーブルを実現することが可能となる。なお、第1の被覆層15aと第2の被覆層15bは、2色押出し成形機を用いることにより、容易に形成することができる。
【0030】
図3は、本発明による光ファイバケーブルの評価結果を示すもので、図3(A)は、従来の光ファイバケーブルとの特性を比較したものである。試験品(イ)は、従来の図4(A)に示すケーブルに相当するもので、外被全体の硬度を48(軟質)とし、光ファイバ心線の両側に防護体を配したものである。試験品(ロ)は、従来の図4(C)に示すケーブルに相当するもので、外被全体の硬度を60(硬質)とし、光ファイバ心線の両側に防護体を配しないものである。試験品(ハ)は、本発明の図1(A)に示すケーブルに相当するもので、内側の第1の被覆層の硬度を60、外側の第2の被覆層の硬度を48とした2層構造の外被で形成したものである。なお、外被はいずれも難燃ポリエチレンで2.0mm×3.1mmの矩形断面とした。
【0031】
評価項目の(1)本体部の曲げ癖については、試験品(イ)と(ハ)は特に問題ない程度であったが、試験品(ロ)は、支持線を切断分離するとΦ100mm以下の曲げ癖が発生した。評価項目の(2)難燃特性については、試験品(イ)と(ハ)は、JISC3521の難燃試験をクリアすることができたが、試験品(ロ)は、外被の難燃性が十分でなく難燃試験をクリアすることができなかった。
【0032】
評価項目の(3)取り扱い性については、試験品(ロ)と(ハ)は特に問題はなかったが、試験品(イ)は、防護体の除去を必要とするなどよくなかった。評価項目の(4)耐せみ性については、試験品(イ)は防護体により、試験品(ロ)は硬質の外被により、試験品(ハ)は硬質の第1の被覆層により、いずれも蝉の産卵管突き刺しから光ファイバ心線を保護することができた。
【0033】
図3(B)及び図3(C)は、本発明による光ファイバケーブルで、内側の第1の被覆層と外側の第2の被覆層との断面積比率と、それぞれの硬さの関係について、曲げ癖の観点からの評価結果を示す図である。被覆層の硬さはJIS K 7215に規定されるデュロメータ(タイプD)による試験での値を示す。「○」は支持線除去後の本体部に曲げ癖が生じなかった場合、「△」は本体部にΦ100mm以上の曲げ癖が生じた場合、「×」は本体部にΦ100mm未満の曲げ癖が生じた場合を示している。
【0034】
図3(B)は、第1の被覆層の横断面積を「3」、第2の被覆層の断面積を「1」とした場合、すなわち、第1の被覆層の横断面積を外被全体の3/4(75%)としたときの評価である。第1の被覆層の硬さが52〜56、第2の被覆層の硬さが40〜44の範囲で「△」であるが、それ以上ではΦ100mm未満の曲げ癖が生じる。これは、硬質の第1の被覆層が横断面積で外被全体の75%を占めると、硬い被覆層が支配的になって曲げ癖が生じやすくなることを示している。
【0035】
図3(C)は、第1の被覆層の横断面積を「2」、第2の被覆層の横断面積を「1」とした場合、すなわち、第1の被覆層の横断面積を外被全体の2/3(67%)としたときの評価である。第1の被覆層の硬さが52〜64、第2の被覆層の硬さが52以下の範囲で「○」であるが、それ以上では曲げ癖が生じる。なお、第1の被覆層の硬さが52以下では、蝉の産卵管による損傷があり、評価外としてある。
【0036】
図3(B)と図3(C)の評価結果から、硬質の第1の被覆層が横断面積で外被全体の67%以下とすることが望ましい。また、硬質の第1の被覆層は、少なくとも光ファイバ心線の外周を覆っている必要があり、硬質の第1の被覆層は横断面積で外被全体の1/4(25%)以上とするのが望ましい。この場合に、図3(C)の結果から、曲げ癖を完全に排除するには、第1の被覆層の硬さを56〜64、第2の被覆層の硬さを52以下とするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態を説明する図である。
【図2】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図3】本発明の評価結果を示す図である。
【図4】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
10a〜10d,20a〜20d…光ファイバケーブル、11…本体部、12…支持線部、13(13’)…光ファイバ心線(テープ心線)、14…テンションメンバ、15…外被、15a…第1の被覆層、15b…第2の被覆層、16…ノッチ、17…鋼線、18…首部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線とテンションメンバを平行に配置し、外被により一体に被覆した光ファイバケーブルであって、
前記外被は、光ファイバ心線の外周を覆う内側の第1の被覆層と、該第1の被覆層の外周を覆う外側の第2の被覆層とを有し、前記第1の被覆層はデュロメータ(タイプD)による硬さが52以上で、前記第2の被覆層は前記第1の被覆層より硬さが小さい樹脂材料で形成されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記第1の被覆層の硬さは56〜64であり、前記第2の被覆層の硬さが52以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記第1の被覆層の前記外被に対する断面積比率は、1/4〜2/3であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記第2の被覆層は、難燃ポリエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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