説明

光ファイバケーブル

【課題】ケーブル内部に収納してある複数の光ファイバ通信線の中から特定の光ファイバ通信線を取り出す際の識別性の向上を図る。
【解決手段】光ファイバ心線(光ファイバ通信線)13a、13bを内部に収納する2つのスロット溝12a、12bを備えたスロットコア11と、スロットコアの周囲を被覆するシース14と、スロットコアの内部に埋設された2本の抗張力体15とを備える。ケーブル中心Oを通るY軸上に2本の抗張力体15が配置され、その外側のY軸上にスロット溝12a、12bが配置されている。2つのスロット溝は、ケーブル長手方向に沿って直線状に延びるストレート溝として形成され、一方のスロット溝12aと他方のスロット溝12bに、例えば色違いの光ファイバ心線13a、13bが収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信線(光ファイバ通信線は、光ファイバ心線、ドロップ型の光ファイバケーブル、インドア型の光ファイバケーブル等を含む概念である)を内部に収納するスロット溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、を備えた光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、光ファイバを内部に収納するスロット溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、前記スロットコアの内部にケーブル長手方向に沿って埋設された抗張力体と、を備えた光ファイバケーブルが記載されている。この光ファイバケーブルでは、スロットコアが、1つのスロット溝を備えた断面C字状に形成され、スロットコアの肉厚部の内部に抗張力体が配設されている。また、シースの肉厚がスロット溝の開口部側で厚くなるように設定されると共に、開口部と反対側で薄くなるように設定されている。
【0003】
図10は、特許文献1に記載のものと類似の従来の光ファイバケーブルの構造を示している。
【0004】
この光ファイバケーブル110は、複数の光ファイバ113を内部に収納する1つのスロット溝112を備えたスロットコア111と、このスロットコア111の周囲を被覆するように後から押し出し成形により設けられたシース114と、スロットコア111の内部にケーブル長手方向に沿って埋設された2本の抗張力体115と、を備えている。2本の抗張力体115は、ケーブル中心(ケーブルの長手方向と垂直な断面上の中心)とスロット溝112の開口部116の幅方向中央を通る軸上に並べて配置されている。
【0005】
シース114の肉厚は、スロット溝112の開口部116側で厚くなるように設定されると共に、開口部116と反対側で薄くなるように設定されている。つまり、シース114の厚肉部114aがスロット溝112の開口部116側に配置され、薄肉部114bがスロット溝112の開口部116と反対側に配置されている。
【0006】
また、スロットコア111のスロット溝112の開口部116は、シース114の押し出し成形時に、シース114を構成する溶融樹脂がスロット溝112内に入らないようにするためのPETテープ等の押さえテープ117で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−76897号公報(図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来の光ファイバケーブル110は、スロット溝112を1つしか有していないので、中間後分岐のために、同一スロット溝112内に収納された複数本の光ファイバ113の中から特定の光ファイバ113を外に取り出すような場合に、取り出す必要のない他の光ファイバ113を一緒に外に取り出したり、間違って外に取り出してしまったりするおそれが高く、その結果、他の光ファイバ113に過張力等の余計な影響を与えるおそれがあった。
【0009】
例えば、光ファイバ113として複数の光ファイバ心線をスロット溝112の内部に収納している場合、光ファイバ心線は青、黄、緑、赤、紫、白等の色分けにより互いに識別できるようにされているが、暗いところで作業した場合は、色を区別しにくいために、関係のない光ファイバ心線を外に取り出してしまうことがある。
【0010】
そこで、本発明は、ケーブル内部に収納してある複数の光ファイバ(光ファイバ通信線)の中から特定の光ファイバ(光ファイバ通信線)を取り出す際の識別性の向上を図ることのできる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、光ファイバ通信線を内部に収納するスロット溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、前記スロットコアの内部にケーブル長手方向に沿って埋設された抗張力体と、を備えた光ファイバケーブルにおいて、ケーブル長手方向に垂直な断面においてケーブル中心を通り互いに直交する方向をX軸とY軸としたとき、一方の前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように、前記スロットコアの内部の前記Y軸上の位置で且つケーブル中心に近い位置に2本の前記抗張力体が互いに平行に並べて配設され、前記スロット溝が、共に前記Y軸上の位置で且つ前記ケーブル中心を挟んで180度対向する位置に2つ配設され、これら2つのスロット溝は、前記抗張力体よりもケーブル中心から遠い位置に配設され、しかも、ケーブル長手方向に沿って直線状に延びるストレート溝として形成され、これら2つのスロット溝のうちの一方のスロット溝と他方のスロット溝に、光ファイバ通信線がそれぞれ収納されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、光ファイバ通信線を内部に収納するスロット溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、前記スロットコアの内部にケーブル長手方向に沿って埋設された抗張力体と、を備えた光ファイバケーブルにおいて、ケーブル長手方向に垂直な断面においてケーブル中心を通り互いに直交する方向をX軸とY軸としたとき、一方の前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように、前記スロットコアの内部の前記Y軸上の位置で且つケーブル中心に近い位置に、断面の長手方向を前記Y軸上に一致させた姿勢で帯板状の前記抗張力体が1本配設され、前記スロット溝が、共に前記Y軸上の位置で且つ前記ケーブル中心を挟んで180度対向する位置に2つ配設され、これら2つのスロット溝は、前記抗張力体よりもケーブル中心から遠い位置に配設され、しかも、ケーブル長手方向に沿って直線状に延びるストレート溝として形成され、これら2つのスロット溝のうちの一方のスロット溝と他方のスロット溝に、光ファイバ通信線がそれぞれ収納されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ファイバケーブルによれば、2つのスロット溝を有しているので、例えば各スロット溝に種類の異なる光ファイバ通信線を収納すれば、スロット溝ごとに光ファイバ通信線の種類の識別が可能となり、識別性の向上が図れて、必要な光ファイバ通信線が取り出しやすくなる。
【0014】
また、例えば、異なる構造の光ファイバ通信線を各スロット溝に分けて収納することで、容易に複合ケーブルを作成することが可能となる。
【0015】
また、2本の抗張力体をY軸上に配置し、あるいは、断面の長手方向をY軸に一致させた姿勢で帯板状の抗張力体をY軸上に配置し、且つ、2つのスロット溝をもY軸上に配置しているので、ケーブル曲げ方向を、Y軸がケーブル曲げ中立線となるように限定制御できるようになる。その結果、ケーブル曲げ時に光ファイバ通信線に、問題となる歪み(圧縮歪み)が加わり難くすることができ、伝送特性の確保が可能となる。また、ケーブル曲げ方向が限定されるので、ドラムにケーブルを巻き取ることも可能になる。
【0016】
また、抗張力体が、光ファイバ通信線を収納したスロット溝よりもケーブル中心に近い位置に配置されているので、シースの除去時や光ファイバ通信線の取り出し時に、抗張力体が邪魔にならず、従ってシースの除去や光ファイバ通信線の取り出しが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【図6】第1の比較例として示す光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【図7】第2の比較例として示す光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【図8】第3の比較例として示す光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【図9】本発明の第6実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【図10】従来例の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本発明では、2つのスロット溝に収納する光ファイバ通信線は、同一種類のもの或いは異なる種類のものの何れでもよい。本明細書では、光ファイバ通信線の色の違いや構造(タイプ)の違いを、光ファイバ通信線の種類の違いに含む概念と定義する。
【0020】
「第1実施形態」
図1は本発明の第1実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0021】
この光ファイバケーブル10Aは、外周面に開口部16を持つ2つのスロット溝12a、12bを備えたスロットコア11と、このスロットコア11の周囲を被覆するシース14と、スロットコア11の内部にケーブル長手方向に沿って埋設された2本の断面円形の線条よりなる抗張力体15と、各スロット溝12、12bの内部に収納された互いに色の異なる青色と赤色の2本の光ファイバ心線(光ファイバ通信線)とから構成されている。スロットコア11のスロット溝12の開口部16は、シース14の押し出し成形時に、シース14を構成する溶融樹脂がスロット溝12内に入らないようにするためのPETテープ等の押さえテープ17で覆われている。
【0022】
ここで、ケーブル長手方向に垂直な断面において、ケーブル中心Oを通る互いに直交する方向をX軸(図中横方向)とY軸(図中縦方向)とすると、2本の抗張力体15は、X軸方向が曲げ方向Mとなり、Y軸がケーブル曲げ方向Mの中立線となるように、スロットコア11の内部のY軸上の位置で且つケーブル中心Oに近い位置に、互いに離間して平行に並べて配設されている。特に、ケーブル中心Oに対して対称となる位置に2つの抗張力体15が配設されている。
【0023】
また、2つのスロット溝12a、12bは、共にY軸上の位置で且つケーブル中心Oを挟んで180度対向する位置に配設されおり、各スロット溝12a、12bの開口部16の幅方向の中央がY軸上に位置している。これら2つのスロット溝12a、12bは、2本の抗張力体15よりもケーブル中心Oから遠い位置に配設されている。しかも、2つのスロット溝12a、12bは、ケーブル長手方向に沿って直線状に延びるストレート溝として形成されている。各スロット溝12a、12bは、断面略半円形状のもので、スロットコア11の外周面に、半円の弦に相当する部分が開口部16として開口している。
【0024】
そして、これら2つのスロット溝12a、12bのうちの一方のスロット溝12aに、例えば、青色の1本の光ファイバ心線13aが収納され、他方のスロット溝12bに、例えば、赤色の1本の光ファイバ心線13bが収納されている。なお、各スロット溝12a、12bに収納する光ファイバ心線13a、13bの色の組み合わせは任意であり、両スロット溝12a、12bに収納する光ファイバ心線13a、13bの色が互いに異なっていればよい。
【0025】
このような構造の光ファイバケーブル10Aを使用している状況において、中間後分岐作業のために、2本の光ファイバ心線13a、13bのうちのいずれか一方の光ファイバ心線13a、13bだけの口出しが必要になった場合、まず、シース14を所定領域だけ引き剥がして、スロット溝12a、12bの開口部16を開放し、スロット溝12a、12bの中の必要な光ファイバ心線13a、13bだけを取り出す。
【0026】
その際、2つのスロット溝12a、12bにそれぞれ色の異なる光ファイバ心線13a、13bを収納しているので、スロット溝12a、12bごとに光ファイバ心線13a、13bの種類の識別(色の区別)が可能であり、識別しやすくなり、必要な光ファイバ心線13a、13bだけを無理なく取り出すことができるようになる。従って、取り出す必要のない光ファイバ心線13a、13bに余計な影響を与えずにすむ。
【0027】
なお、光ファイバケーブル10Aの外からどちらのスロット溝12a、12bにどちらの光ファイバ心線13a、13bが収納されているか判るように、スロット溝12a、12bと対向するシース14の外表面に異なるマーカを設けておく(色違いの線を目印としてケーブル長手方向に設けておく)ことが望ましい。識別用のマーカを設けるのが望ましい点は、以下の各実施形態においても同様である。
【0028】
また、2本の抗張力体15をY軸上に並べて配置し、且つ、2つのスロット溝12もY軸上に配置しているので、ケーブル曲げ方向を、Y軸がケーブル曲げ中立線となるように限定制御できるようになる。その結果、ケーブル曲げ時に光ファイバ心線13a、13bに、問題となる歪み(圧縮歪みおよび伸び歪み)が加わり難くすることができ、伝送特性の確保が可能となる。また、曲げ方向が限定されるので、光ファイバケーブル10Aをドラムに巻き取ることも可能になる。
【0029】
また、2本の抗張力体15が、光ファイバ心線13a、13bを収納したスロット溝12a、12bよりもケーブル中心Oに近い位置に配置されているので、シース14の除去時や光ファイバ心線13a、13bの取り出し時に、抗張力体15が邪魔になることがなく、従ってシース14の除去や光ファイバ心線13a、13bの取り出しが容易にできることになる。
【0030】
「第2実施形態」
図2は本発明の第2実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0031】
この光ファイバケーブル10Bでは、2つのスロット溝12a、12bに、それぞれ3本ずつの光ファイバ心線13a、13b、13c及び13d、13e、13fが収納されている。一方のスロット溝12aには、青、黄、緑の3本の光ファイバ心線13a、13b、13cが収納され、他方のスロット溝12bには、赤、紫、白の3本の光ファイバ心線13d、13e、13fが収納されている。それ以外の構成は、図1に示した第1実施形態の光ファイバケーブル10Aと同じであるので、同一構成部品には同一符号を付してその説明は省略する。
【0032】
この光ファイバケーブル10Bによれば、2つのスロット溝12a、12bにそれぞれ色の組み合わせの異なる光ファイバ心線13a〜13fを収納しているので、スロット溝12a、12bごとに光ファイバ心線13a〜13fの種類の識別(色の区別)が可能であり、識別しやすくなり、必要な光ファイバ心線13a〜13fだけを無理なく取り出すことができるようになる。従って、取り出す必要のない光ファイバ心線13a〜13fに余計な影響を与えずにすむ。その他の作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0033】
「第3実施形態」
図3は本発明の第3実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0034】
この光ファイバケーブル10Cでは、2つのスロット溝12a、12bに、それぞれ構造(種類)のタイプの異なる光ファイバが収納されている。一方のスロット溝12aには、複数の光ファイバテープ心線13g(光ファイバ通信線)が収納され、他方のスロット溝12bには、ドロップ型の光ファイバケーブル13h(光ファイバ通信線)が収納されている。それ以外の構成は、図1に示した第1実施形態の光ファイバケーブル10Aと同じであるので、同一構成部品には同一符号を付してその説明は省略する。
【0035】
この光ファイバケーブル10Cによれば、2つのスロット溝12a、12bにそれぞれタイプの異なる光ファイバ通信線(光ファイバテープ心線13gとドロップ型の光ファイバケーブル13h)を収納しているので、スロット溝12a、12bごとに光ファイバ通信線の種類の識別が可能であり、識別しやすくなり、必要な光ファイバ通信線(光ファイバテープ心線13gまたはドロップ型の光ファイバケーブル13h)だけを無理なく取り出すことができるようになる。従って、取り出す必要のない光ファイバ通信線に余計な影響を与えずにすむ。
【0036】
また、異なる構造の光ファイバ通信線を各スロット溝12a、12bに分けて収納しているので、容易に複合ケーブル化することができる。その他の作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0037】
「第4実施形態」
図4は本発明の第4実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0038】
この光ファイバケーブル10Dは、第3実施形態の光ファイバケーブル10Cの2本の抗張力体15の代わりに、1本の帯板状の抗張力体25を配設したものである。この場合、Y軸がケーブル曲げ方向Mの中立線となるように、ケーブル中心Oに断面の長手方向をY軸上に一致させた姿勢で抗張力体25が配設されている。
【0039】
この光ファイバケーブル10Dでは、帯板状の抗張力体25を、その断面の長手方向をY軸に一致させた姿勢で、ケーブル中心Oに配置しているので、1本の抗張力体25を用いながら、ケーブル曲げ方向MをX軸方向に限定することができる。その他の作用効果は、第3実施形態と同様である。
【0040】
「第5実施形態」
図5は本発明の第5実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0041】
この光ファイバケーブル10Eは、第3実施形態の光ファイバケーブル10Cの片方のスロット溝12bに収納していたドロップ型の光ファイバケーブル13hを、インドア型の光ファイバケーブル13mに変更したものである。この光ファイバケーブル10Eの作用効果は、第3実施形態と同様である。
【0042】
「第1の比較例」
図6は第1の比較例として示す光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0043】
この光ファイバケーブル10Pは、図9に示した従来例の光ファイバケーブル110の変形例に相当するもので、スロットコア11には1つのスロット溝12だけが設けられている。そして、この1つのスロット溝12内に、複数種類の光ファイバ通信線として、光ファイバテープ心線13gとインドア型の光ファイバケーブル13mが収納されている。
【0044】
この光ファイバケーブル10Pでは、1つのスロット溝12に光ファイバテープ心線13gとインドア型の光ファイバケーブル13mが収納されているので、光ファイバテープ心線13gを取り出すときに、一緒にインドア型の光ファイバケーブル13mも引き出してしまうおそれがある。また、光ファイバ通信線の種類毎に剛性や伸縮率が異なっているはずなのに、1つのスロット溝12に一緒に収納するのは無理があり、実際にこのような形での複合化は難しいと言わざるを得ない。
【0045】
「第2の比較例」
図7は第2の比較例として示す光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0046】
この光ファイバケーブル10Qは、図5に示した第5実施形態の光ファイバケーブル10Eに対する比較例である。
【0047】
スロットコア11には2つのスロット溝12a、12bが設けられているものの、スロット溝12a、12bの配置の方向が、2本の抗張力体15が並んでいる方向、つまりケーブル曲げ中心線となるY軸上ではなく、X軸上になっている。そして、各スロット溝12a、12bに、光ファイバテープ心線13gとインドア型の光ファイバケーブル13mが収納されている。
【0048】
この光ファイバケーブル10Qでは、ケーブル曲げ方向Mが、2本の抗張力体15の配置によりX軸方向に限定されるので、ケーブル曲げ時に、ケーブル曲げ中心に対して外側に位置する光ファイバ通信線ほど伸びやすく、ケーブル曲げ中心に対して内側に位置する光ファイバ通信線ほど圧縮しやすくなる。従って、内側に位置する光ファイバ通信線が圧縮歪みを多く受けやすくなり、伝送特性が確保されなくなるおそれがある。
【0049】
「第3の比較例」
図8は第3の比較例として示す光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0050】
この光ファイバケーブル10Rは、図5に示した第5実施形態の光ファイバケーブル10Eに対する比較例である。
【0051】
この光ファイバケーブル10Rでは、2本の抗張力体15を、図5の光ファイバケーブル10Eのようにスロットコア11の断面の中央に配置するのではなく、スロット溝12a、12bのケーブル半径方向外側のシース14の内部に埋設している。
【0052】
この光ファイバケーブル10Rでは、2本の抗張力体15がY軸上にあるものの、シース14の内部に埋設されているので、シース14の除去時やスロット溝12内の光ファイバ通信線(光ファイバテープ心線13gやインドア型の光ファイバケーブル13m)を取り出す時に、抗張力体15が邪魔になり、光ファイバ通信線の取り出し作業が困難になる。
【0053】
以上の比較例に対して、本発明の実施形態の光ファイバケーブルは、Y軸がケーブル曲げ中立線となるように抗張力体15、25が配置されていること、Y軸上の抗張力体より外側のケーブル中心Oに対して180度対向する位置に2つのスロット溝12a、12bが配置されていること、各スロット溝12a、12bに種類の異なる光ファイバ通信線が収納されていること、を必要な条件として、比較例における問題を回避しながら、次の効果を奏することができる。
【0054】
(1)中間後分岐で取り出そうとする光ファイバ通信線の識別性を向上させる。
【0055】
(2)複合ケーブル化を容易に図ることができる。
【0056】
(3)ケーブルの曲げ方向を限定することができ、ケーブル曲げ時の伝送特性の確保を可能にする。
【0057】
(4)光ファイバ通信線の取り出しを容易にする。
【0058】
「第6実施形態」
図9は本発明の第6実施形態の光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0059】
この光ファイバケーブル10Fは、第1〜第5実施形態とは異なり、スロットコア11及びシース14を共に矩形状とした光ファイバケーブルである。これら第1〜第5実施形態の断面円形状をなす光ファイバケーブルと同一構成部品には、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0060】
第6実施形態の光ファイバケーブル10Fにおいては、2本の抗張力体15は、矩形状をなすスロットコア11のY軸上の位置で且つケーブル中心Oに近い位置に、互いに離間して平行に並べて配設されている。そして、2つのスロット溝12a、12bは、共にY軸上の位置で且つケーブル中心Oを挟んで180度対向する位置に配設されおり、各スロット溝12a、12bの開口部16の幅方向の中央がY軸上に位置している。これら2つのスロット溝12a、12bは、2本の抗張力体15よりもケーブル中心Oから遠い位置に配設されている。しかも、2つのスロット溝12a、12bは、ケーブル長手方向に沿って直線状に延びるストレート溝として形成されている。
【0061】
スロットコア11とシース14との間には、シース14を構成する溶融樹脂がスロット溝12a、12b内に入らないようにするための押さえテープ17が当該スロットコア11全体を覆うように設けられている。シース14には、中間分岐する際に一部領域のシース14を引き裂き易くするためのV溝に形成されたノッチ18が設けられている。ノッチ18は、X軸上に左右1箇所設けられており、ケーブル長手方向に連続して形成されている。
【0062】
この光ファイバケーブル10Fでは、2つのスロット溝12a、12bに、それぞれ4本ずつの光ファイバ心線13a、13b、13c、13d及び13e、13f、13g、13hが収納されている。一方のスロット溝12aには、青、黄、緑、赤の4本の光ファイバ心線13a、13b、13c、13dが収納され、他方のスロット溝12bには、茶、紫、白、灰の4本の光ファイバ心線13e、13f、13g、13hが収納されている。
【0063】
この光ファイバケーブル10Fによれば、2つのスロット溝12a、12bにそれぞれ色の組み合わせの異なる光ファイバ心線13a〜13hを収納しているので、スロット溝12a、12bごとに光ファイバ心線13a〜13hの種類の識別(色の区別)が可能であり、識別しやすくなり、必要な光ファイバ心線13a〜13hだけを無理なく取り出すことができるようになる。従って、取り出す必要のない光ファイバ心線13a〜13hに余計な影響を与えずにすむ。
【0064】
なお、第6実施形態の光ファイバケーブルにおいて、第3実施形態〜第5実施形態におけるように、2つのスロット溝12a、12bに、それぞれ構造(種類)のタイプの異なる光ファイバが収納されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、シースを切り裂いてスロットコアに収納してある光ファイバを取り出すのに適した光ファイバケーブルに利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10A〜10F…光ファイバケーブル
11…スロットコア
12a,12b…スロット溝
13a〜13h…光ファイバ心線(光ファイバ通信線)
13g…光ファイバテープ心線(光ファイバ通信線)
13h…ドロップ型の光ファイバケーブル(光ファイバ通信線)
13m…インドア型の光ファイバケーブル(光ファイバ通信線)
14…シース
15…抗張力体
16…開口部
25…帯板状の抗張力体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ通信線を内部に収納するスロット溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、前記スロットコアの内部にケーブル長手方向に沿って埋設された抗張力体と、を備えた光ファイバケーブルにおいて、
ケーブル長手方向に垂直な断面においてケーブル中心を通り互いに直交する方向をX軸とY軸としたとき、
一方の前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように、前記スロットコアの内部の前記Y軸上の位置で且つケーブル中心に近い位置に2本の前記抗張力体が互いに平行に並べて配設され、
前記スロット溝が、共に前記Y軸上の位置で且つ前記ケーブル中心を挟んで180度対向する位置に2つ配設され、
これら2つのスロット溝は、前記抗張力体よりもケーブル中心から遠い位置に配設され、しかも、ケーブル長手方向に沿って直線状に延びるストレート溝として形成され、
これら2つのスロット溝のうちの一方のスロット溝と他方のスロット溝に、光ファイバ通信線がそれぞれ収納されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
光ファイバ通信線を内部に収納するスロット溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、前記スロットコアの内部にケーブル長手方向に沿って埋設された抗張力体と、を備えた光ファイバケーブルにおいて、
ケーブル長手方向に垂直な断面においてケーブル中心を通り互いに直交する方向をX軸とY軸としたとき、
一方の前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように、前記スロットコアの内部の前記Y軸上の位置で且つケーブル中心に近い位置に、断面の長手方向を前記Y軸上に一致させた姿勢で帯板状の前記抗張力体が1本配設され、
前記スロット溝が、共に前記Y軸上の位置で且つ前記ケーブル中心を挟んで180度対向する位置に2つ配設され、
これら2つのスロット溝は、前記抗張力体よりもケーブル中心から遠い位置に配設され、しかも、ケーブル長手方向に沿って直線状に延びるストレート溝として形成され、
これら2つのスロット溝のうちの一方のスロット溝と他方のスロット溝に、光ファイバ通信線がそれぞれ収納されていることを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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