説明

光ファイバテープ心線の製造方法及び光ファイバテープ心線用ダイス装置

【課題】光ファイバ間に接着部と分離部を間欠的に確実に、かつ高精度に形成する。
【解決手段】光ファイバ3の長手方向に対して直交した2方向のうちの一方方向に対して垂直に直交した他方方向に重ね合わせて配置した第1,第2ダイス7、9の出口面7A、9Aにそれぞれ対応して前記一方方向に同じ一定間隔で設けた第1光ファイバ挿通孔11には、一方方向に並べて奇数番の光ファイバ3を通過せしめ、前記第2光ファイバ挿通孔13には、偶数番の光ファイバ3を通過せしめる。第1,第2ダイス7、9を相対的に前記X方向にスライド移動し、このスライド移動した第1,第2ダイス7、9の第1,第2光ファイバ挿通孔11、13が一方方向で同位置になった光ファイバ3同士を接着用樹脂15で接着し、かつ、前記第1,第2光ファイバ挿通孔11、13が一方方向で異なる位置になった光ファイバ3同士の間を分離させて光ファイバテープ心線5を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバテープ心線の製造方法及び光ファイバテープ心線用ダイス装置に関し、特に間欠的に光ファイバの間に接着部と分離部を設けた間欠固定の光ファイバテープ心線を製造するための光ファイバテープ心線の製造方法及び光ファイバテープ心線用ダイス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、網目状の樹脂部材を製作するための樹脂部材専用押し出し成形装置が提案されている。樹脂を押し出し、ダイスを通過させることで所望形状の樹脂部材を成型する装置であり、導出される樹脂が、複数本の棒状にして同一平面上で並列された状態となるようなダイスを設けると共にダイスから導出された棒状の樹脂を同一平面上において内方向もしくは外方向に押圧せしめて該複数の棒状の樹脂を網目状の樹脂部材に成型する押圧部材を設けている。
【0003】
また、特許文献2では、発泡樹脂ネットが提案されている。この発泡樹脂ネットは表側ストランド群と裏側ストランド群が交叉して網状に構成されている。この発泡樹脂ネットを製造するには、輪環盤状の外側ダイスとこの外側ダイスの中央孔部に回転可能に摺嵌された円盤状の内側ダイスを備えた押出機による。前記両ダイスは互いに摺接する外側ダイスの中央孔の内周側面と内側ダイスの外周側面のそれぞれに、等間隔をもって同数のノズルが周設されている。
【0004】
外側ダイスと内側ダイスを互いに反対方向に同一回転速度で回転させながら各ノズルから前記原料樹脂を発泡させた溶融状態で押し出す。各ノズルから押し出された複数の表側ストランドと、複数の裏側ストランドを引き取ることにより、互いに回転方向が違う両ダイスの回転に伴って表側、裏側ストランドが交叉し、この交叉部位が溶着された状態で連続して引き出されて発泡樹脂ネットが形成される。
【特許文献1】特開平6−198711号公報
【特許文献2】特開2002−284245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の光ファイバの間に光ファイバ同士が分離した分離部を持つ光ファイバテープ心線(以下、単に「テープ心線」という)を作製する場合、例えば特許文献1と同様の装置を利用して、接着剤を塗った複数本の光ファイバを触れ合わせることと、引き離すことを繰り返すことで作製するとしても、複数本の光ファイバを同一平面内で押出し、押出した光ファイバを同一平面内で内方向又は外方向へ押圧して成型することになり、押出した光ファイバ同士を接着・分離するために光ファイバを曲げなければならない。したがって、光ファイバはガラスであるため、曲げや引張りや側圧に弱く、光ファイバに曲げや引張などの力を加えて動かす際には断線の恐れがある。
【0006】
また、特許文献2と同様の装置を利用したとしても、テープ心線は、複数本の光ファイバのコアが目的の順番通り、水平に並んでいなければならないので、製作することができない。つまり、表側ストランド群と裏側ストランド群が交叉して網を成型する装置では、光ファイバが同一平面に並んだ網を成型できない。また、ダイスを動かす際に光ファイバ断線の恐れがある。
【0007】
この発明は、間欠的に光ファイバの間に接着部と分離部を設けた光ファイバテープ心線を製造する際に、光ファイバに過度の曲げや力を加えることなく前記接着部と分離部を確実に、かつ高精度に形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明の光ファイバテープ心線の製造方法は、複数本の光ファイバをこの光ファイバの長手方向に対して直交した2方向のうちの一方方向に並列して光ファイバテープ心線を製造する光ファイバテープ心線の製造方法において、
前記一方方向に対して直交した他方方向に重ね合わせて配置した第1,第2ダイスの出口面にそれぞれ対応して前記一方方向に同じ一定間隔で設けた複数の前記第1ダイスの第1光ファイバ挿通孔に、前記一方方向に並列する光ファイバの一方側から奇数番の光ファイバを通過せしめ、かつ前記第2ダイスの複数の第2光ファイバ挿通孔に、前記一方方向に並列する光ファイバの一方側から偶数番の光ファイバを通過せしめ、
前記第1,第2ダイスを相対的に前記一方方向にスライド移動し、
このスライド移動した第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔が前記一方方向で同位置になった光ファイバ同士を接着用樹脂で接着した接着部を形成し、かつ前記スライド移動した第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔が一方方向で異なる位置になった光ファイバ同士の間を分離させた分離部を形成して光ファイバテープ心線を製造することを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明の光ファイバテープ心線の製造方法は、前記光ファイバテープ心線の製造方法において、前記接着用樹脂がUV硬化樹脂であり、前記第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔の少なくとも一方を通過する光ファイバの全周にUV硬化樹脂を塗布し、前記第1,第2ダイスの出口面から送り出された後に前記UV硬化樹脂を硬化することが好ましい。
【0010】
また、この発明の光ファイバテープ心線の製造方法は、前記光ファイバテープ心線の製造方法において、前記一方方向にスライドする側の第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔に入線する光ファイバが、常時断線を起こさない角度で入線するように第1,第2ダイスの一方方向のスライド動作に合わせて一方方向に移動することが好ましい。
【0011】
この発明の光ファイバテープ心線用ダイス装置は、複数本の光ファイバをこの光ファイバの長手方向に対して直交した2方向のうちの一方方向に並列して光ファイバテープ心線を製造する光ファイバテープ心線用ダイス装置において、
前記一方方向に対して直交した他方方向に重ね合わせて配置し、かつ相対的に前記一方方向にスライド自在に設けた第1,第2ダイスと、
前記第1ダイスの出口面に、前記一方方向に並列する光ファイバの一方側から奇数番の光ファイバを通過させるために前記一方方向に一定間隔で設けた複数の第1光ファイバ挿通孔と、
前記第2ダイスの出口面に、前記一方方向に並列する光ファイバの一方側から偶数番の光ファイバを通過させるために前記一方方向に前記第1光ファイバ挿通孔と同じ一定間隔で設けた複数の第2光ファイバ挿通孔と、
前記一方方向に相対的にスライドした前記第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔が一方方向で同位置になった時に、前記第1,第2ダイスの少なくとも一方に、光ファイバ同士を接着する接着用樹脂を吐出すべく設けた複数の接着用樹脂吐出孔と、
で構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の光ファイバテープ心線用ダイス装置は、前記光ファイバテープ心線用ダイス装置において、前記第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔の少なくとも一方が前記接着用樹脂吐出孔と兼用にした構成であり、前記接着用樹脂がUV硬化樹脂であることが好ましい。
【0013】
また、この発明の光ファイバテープ心線用ダイス装置は、前記光ファイバテープ心線用ダイス装置において、前記第1,第2ダイスの少なくとも一方に前記各接着用樹脂吐出孔を塞ぐための複数のシャッタ部を設けたことが好ましい。
【0014】
また、この発明の光ファイバテープ心線用ダイス装置は、前記光ファイバテープ心線用ダイス装置において、前記一方方向にスライドする側の第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔の光ファイバが入線する入口に、前記光ファイバの許容曲げ以上の曲率半径を付けていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の光ファイバテープ心線の製造方法及び光ファイバテープ心線用ダイス装置によれば、光ファイバ同士を接着、分離するために光ファイバに触れる(曲げたりする)ことなく、接着部と分離部を形成した光ファイバテープ心線を製造できるので、光ファイバの断線の恐れが無い。つまり、光ファイバに過度の曲げや力を加えることなく前記接着部と分離部を確実に、かつ高精度に形成することができる。
【0016】
また、2つの第1,第2ダイスはそれぞれ互いに反対方向の一方向のみに移動させないので、換言すれば、特許文献2のように第1ダイスを一方向のみに移動したとき、第2ダイスを他方向のみに移動することはないので、複数の光ファイバが同一平面に並んだ接着部と分離部を有する光ファイバテープ心線を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1及び図2(A)〜(C)を参照するに、第1の実施の形態に係る光ファイバテープ心線用ダイス装置1は、例えば光ファイバ素線あるいは光ファイバ心線などの光ファイバ3の複数本を光ファイバ3の長手方向(図2(A)において紙面に対して直交する方向)に直交した2方向のうちの一方方向例えば図1においてX方向に並列して光ファイバテープ心線5(以下、単に「テープ心線」という)を製造するものである。なお、この実施の形態では合計8本の光ファイバ3を並列して構成されるテープ心線5を例にとって説明する。
【0019】
第1,第2ダイス7、9は、前記X方向に対して垂直に直交した2方向のうちの他方方向例えばZ方向(図1において上下方向)に重ね合わせて配置し、かつ相対的に前記X方向にスライド移動自在に設けられている。この実施の形態では、下方側の第2ダイス9が固定であり、上方側の第1ダイス7がX方向(図2(A)、(B)、(C)において左右方向)に位置決め調整可能にスライド移動自在である。
【0020】
上記の第1ダイス7の出口面7Aには、前記X方向に並列する光ファイバ3の一方側(この実施の形態では図2(A)、(B)、(C)において左側)から奇数番の光ファイバ3を通過させるために複数(この実施の形態では4つ)の第1光ファイバ挿通孔11が前記X方向に一定間隔Lで設けられている。
【0021】
また、上記の第2ダイス9の出口面9Aには、前記X方向に並列する光ファイバ3の一方側(この実施の形態では図2(A)、(B)、(C)において左側)から偶数番の光ファイバ3を通過させるために複数(この実施の形態では4つ)の第2光ファイバ挿通孔13が前記X方向に前記第1光ファイバ挿通孔11と同じ一定間隔Lで設けられている。
【0022】
さらに、前記第1,第2ダイス7、9の少なくとも一方に、この実施の形態では第2ダイス9に、隣り合う光ファイバ3同士を接着するための接着用樹脂15(図3(A)、(B)、(C)参照)を吐出する接着用樹脂吐出孔17が各第2光ファイバ挿通孔13の近傍に設けられている。なお、第2ダイス9は、その内部に接着用樹脂15を溜めておくための図示しない接着用樹脂貯留室が設けられており、前記各接着用樹脂吐出孔17は接着用樹脂貯留室に連通している。すなわち、第1ダイス7がX方向にスライド移動(第1,第2ダイス7、9が相対的にX方向にスライド移動)し、図2(A)及び(C)に示されているように、第1ダイス7の第1光ファイバ挿通孔11と第2ダイス9の第2光ファイバ挿通孔13がX方向で同位置になった時に、各接着用樹脂吐出孔17から接着用樹脂15が吐出される構成である。
【0023】
また、第1ダイス7のX方向への移動に伴って、光ファイバ3が通過する各第1光ファイバ挿通孔11がX方向に移動するとき、光ファイバ3が断線する恐れがあるので、図4(A)〜(C)に示されているように、各第1光ファイバ挿通孔11の入口は、光ファイバ3の許容曲げ以上の曲率半径Rが付けられている。これにより、第1ダイス7がX方向へ移動しても光ファイバ3が各第1光ファイバ挿通孔11の入口で断線することを防止できる。なお、各第1光ファイバ挿通孔11の出口には曲率半径Rを付ける必要がない。むしろ、曲率半径Rを付けると接着用樹脂15が付着してしまうので、付けない方がよい。
【0024】
上記構成により、奇数番の光ファイバ3が第1ダイス7の第1光ファイバ挿通孔11を通過し、偶数番の光ファイバ3が第2ダイス9の第2光ファイバ挿通孔13を通過する。このように各光ファイバ3が第1,第2ダイス7、9の各第1,第2光ファイバ挿通孔11、13を通過する過程で、第1ダイス7がX方向にスライド移動する。
【0025】
図2(A)に示されているように、第1ダイス7の第1光ファイバ挿通孔11と第2ダイス9の第2光ファイバ挿通孔13がX方向で同一の位置にある場合は、各接着用樹脂吐出孔17から接着用樹脂15が吐出され、X方向で同位置にある光ファイバ3同士が接着して接着部19を形成する。それ以外の箇所には分離部21(図3(A)、(B)、(C)参照)が形成される。これにより、図3(A)に示されているように、左側から1番と2番の光ファイバ3同士が接着し、3番と4番の光ファイバ3同士が接着し、5番と6番の光ファイバ3同士が接着し、7番と8番の光ファイバ3同士が接着することとなる。なお、各光ファイバ3は、図4(A)に示されているように、各第1光ファイバ挿通孔11の入口に斜めに入ることになるが、各第1光ファイバ挿通孔11の入口に光ファイバ3の許容曲げ以上の曲率半径Rが付けられているので、光ファイバ3は断線しない。
【0026】
また、図2(B)に示されているように、第1ダイス7がX方向の左方向へL/2だけ移動した場合は、それぞれの光ファイバ3は単心のまま、つまり図3(B)に示されているように、光ファイバ3が互いに分離した状態で、分離部21が形成されることとなる。なお、この時は各接着用樹脂吐出孔17から接着用樹脂15が吐出されない方がよい。なお、各光ファイバ3は、図4(B)に示されているように、第1光ファイバ挿通孔11の入口にほぼ真っ直ぐに入る。
【0027】
さらに、図2(C)に示されているように、第1ダイス7がさらにX方向の左方向へL/2移動させた場合は、各接着用樹脂吐出孔17から接着用樹脂15が吐出され、X方向で同位置にある光ファイバ3同士が接着して接着部19を形成する。それ以外の箇所には分離部21が形成される。これにより、図3(C)に示されているように、左側から1番の光ファイバ3は単心のままで、2番と3番の光ファイバ3同士が接着し、4番と5番の光ファイバ3同士が接着し、6番と7番の光ファイバ3同士が接着し、8番の光ファイバ3は単心のままとなる。
【0028】
なお、各光ファイバ3は、図4(C)に示されているように、各第1光ファイバ挿通孔11の入口に斜めに入ることになるが、各第1光ファイバ挿通孔11の入口に光ファイバ3の許容曲げ以上の曲率半径Rが付けられているので、光ファイバ3は断線しない。
【0029】
以上のように、一例として、第1ダイス7が図2(A)、図2(B)、図2(C)、図2(B)・・・の順にスライド移動することで、光ファイバ3同士の所望の箇所に接着部19と分離部21を形成することができる。その後に、図1に示されているように、Z方向に離れた光ファイバ3を集線用ロール23によりX方向の一列に集線及び整列することによって、平面的に光ファイバ3が並び、分離部21と接着部19を持つテープ心線5を容易にかつ確実に製造することができる。
【0030】
上述した第1の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造方法により製造されたテープ心線5の一例としては、例えば図5に示されているように、複数本の光ファイバ3が並列して構成されるものであり、図5では合計N本の光ファイバ3から構成されるものである。これらのN本の光ファイバ3のうちの互いに隣接する2心の光ファイバ3が接着部19により間欠的に連結されている。
【0031】
より詳しくは、互いに隣接する2心の光ファイバ3の間のみを連結する複数の接着部19が、図6(A)に示されているようにテープ心線5の両面にわたり長手方向及び幅方向の2次元的に間欠的に配設されている。しかも、同一の光ファイバ3に施された前記接着部19の長さは前記同一の光ファイバ3の分離部21の長さよりも短く構成されている。例えば、1本目と2本目の光ファイバ3同士を連結する接着部191〜2の長さAは同一の光ファイバ3の分離部21の長さSよりも短い構成である。さらに、テープ心線5の幅方向で隣り合う接着部191〜2,192〜3同士の間は互いに接触しないように離間距離B及びDが設けられている。
【0032】
なお、図5において、接着部191〜2は1本目と2本目の光ファイバ3同士を連結する接着部19を示し、接着部192〜3は2本目と3本目の光ファイバ3同士を連結する接着部19を示している。したがって、接着部19(N−2)〜(N−1)は(N−2)本目と(N−1)本目の光ファイバ3同士を連結する接着部19で、接着部19(N−1)〜Nは(N−1)本目とN本目の光ファイバ3同士を連結する接着部19である。
【0033】
また、図5において、接着部191〜2・・・、19(N−1)〜Nの長さはAで、接着部192〜3・・・、19(N−2)〜(N−1)の長さはCであり、同一の光ファイバ3の分離部21の長さSより短い構成である。また、テープ心線5の幅方向で隣り合う接着部19(N−2)〜(N−1),19(N−1)〜N同士の間は互いに接触しないように離間距離B及びDが設けられている。上記の長さ、A、Cは離間距離B及びDより短く構成されている。
【0034】
なお、上記の光ファイバ3としての例えば光ファイバ心線は、図6(A)に示されているように、石英の裸光ファイバ25と、この石英の裸光ファイバ25の外周上に被覆された軟質プラスチック樹脂27と、この軟質プラスチック樹脂27の外周上に被覆された例えばUV硬化樹脂29と、から構成されている。
【0035】
また、上記の各接着部19の構造は、図6(A)〜(C)に示されているように、互いに隣接する2心の光ファイバ3の間を上下からUV硬化樹脂あるいは熱可塑性樹脂により連結されている。図6(A)では接着部19の外表面が2心の光ファイバ3の外周を結ぶ線と同じ線上に位置しており、図6(B)では接着部19の外径表面が2心の光ファイバ3の外周を結ぶ線より内側に湾曲しており、図6(C)では2心の光ファイバ3の外周を被覆した構造である。いずれにしても、接着部19の構造は、互いに隣接する2心の光ファイバ3の間を連結するものであればよい。
【0036】
また、この実施の形態のテープ心線5における接着部19の配置状態は、図5に示されているような状態に限らず、図7に示されているような配置例であってもも良い。
【0037】
次に、この発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同様の部分は同符号を付し、異なる部分のみを説明する。
【0038】
図8及び図9(A)〜(C)を参照するに、第2の実施の形態の光ファイバテープ心線用ダイス装置31は、第1,第2ダイス7、9には、それぞれの内部に接着用樹脂15としての例えばUV硬化樹脂を溜めておくための図示しない樹脂貯留室が設けられており、第1,第2ダイス7、9の出口面7A、9Aには複数の第1、第2光ファイバ挿通孔13がそれぞれ前記X方向に一定間隔Lで設けられ、かつ前記樹脂貯留室に連通している。しかも、第1,第2光ファイバ挿通孔11、13がX方向で同じ位置となる時の各光ファイバ3の首部で接続される出口形状を有している。
【0039】
したがって、第2の実施の形態の各第1,第2光ファイバ挿通孔11、13は、前述した第1の実施の形態の各接着用樹脂吐出孔17を兼用している。なお、第1,第2光ファイバ挿通孔11、13のいずれか一方の側にUV硬化樹脂を吐出する構成であっても適用される。
【0040】
これにより、複数本の光ファイバ3は前記樹脂貯留室を経て各第1,第2光ファイバ挿通孔11、13を通過するときに、各光ファイバ3の外周表面にUV硬化樹脂が塗布されるので、第1,第2光ファイバ挿通孔11、13がX方向で同じ位置になる時に各光ファイバ3同士の外周表面にUV硬化樹脂が表面張力により触れ合って接着される状態になる(図9(A)、(B)、(C)参照)。
【0041】
一方、第1,第2光ファイバ挿通孔11、13がX方向で異なる位置になる時の各光ファイバ3は互いに離れているが、集線用ロール23により光ファイバ3同士がX方向の一列に集線される。このとき、光ファイバ3同士がX方向の一列に集線されてUV硬化樹脂の表面張力により互いに触れ合う箇所S点は、実際には図9に示されているように光ファイバ3の移動方向で集線用ロール23の位置よりY方向の後方側に位置する。
【0042】
もし、UV硬化樹脂の表面が硬化していない状態で光ファイバ3同士が前記S点より前方側に配置したSL1点のUV照射装置33としての例えばUVランプ33AのUV照射でUV硬化樹脂を硬化すると、光ファイバ3の間に分離部21を形成することができない。
【0043】
そこで、光ファイバ3が第1,第2ダイス7、9の出口面7A、9Aから出た後に集線される前にUV硬化樹脂を硬化させる必要があるので、第1,第2ダイス7、9の出口面7A、9Aの位置S点からY方向の前方側に、かつ前記S点よりY方向の後方側の位置SL2に、UV照射装置33としての例えばUVランプ33Bが配置されている。
【0044】
なお、少なくとも表面のUV硬化樹脂はスポットUVランプ33Bのみで硬化させるが、光ファイバ3に塗布したすべてのUV硬化樹脂が完全に硬化していない場合は、表面のみ硬化させた複数の光ファイバ3を集線後に、例えばUVランプ33Aで、さらにUV照射することによりテープ心線5を製造することが可能である。
【0045】
上記構成により、奇数番の光ファイバ3が前記樹脂貯留室を経て第1ダイス7の各第1光ファイバ挿通孔11を通過し、偶数番の光ファイバ3が前記樹脂貯留室を経て第2ダイス9の各第2光ファイバ挿通孔13を通過する。この時、各光ファイバ3の外周表面に接着用樹脂15としての例えばUV硬化樹脂が塗布されることになる。各光ファイバ3が第1,第2ダイス7、9の各第1,第2光ファイバ挿通孔11、13を通過する過程で、第1ダイス7がX方向にスライド移動する。
【0046】
図9(A)に示されているように、第1ダイス7の第1光ファイバ挿通孔11と第2ダイス9の第2光ファイバ挿通孔13がX方向で同一の位置にある場合は、X方向で同位置にある光ファイバ3同士の外周表面にUV硬化樹脂(15)が表面張力により接触した状態になる。これにより、図10(A)に示されているように、左側から1番と2番の光ファイバ3同士が接触し、3番と4番の光ファイバ3同士が接触し、5番と6番の光ファイバ3同士が接触し、7番と8番の光ファイバ3同士が接触することとなる。
【0047】
また、図9(B)に示されているように、第1ダイス7がX方向の左方向へL/2だけ移動した場合は、それぞれの光ファイバ3は単心のまま、つまり図10(B)に示されているように、光ファイバ3が互いに分離した状態である。
【0048】
さらに、図9(C)に示されているように、第1ダイス7がさらにX方向の左方向へL/2移動させた場合は、X方向で同位置にある光ファイバ3同士の外周表面にUV硬化樹脂(15)が表面張力により接触した状態になる。これにより、図10(C)に示されているように、左側から1番の光ファイバ3は単心のままで、2番と3番の光ファイバ3同士が接触し、4番と5番の光ファイバ3同士が接触し、6番と7番の光ファイバ3同士が接触し、8番の光ファイバ3は単心のままとなる。
【0049】
上記の各光ファイバ3が第1,第2ダイス7、9の出口面7A、9Aから出た後に、UVランプ33BでUV照射されることにより、UV硬化樹脂(15)の表面が硬化するので、上記の図10(A),(B),(C)の状態で接着部19と分離部21が形成されることになる。
【0050】
その後、図8に示されているように、Z方向に離れた光ファイバ3を集線用ロール23によりX方向の一列に集線及び整列することによって、平面的に光ファイバ3が並び、分離部21と接着部19を持つテープ心線5を容易にかつ確実に製造することができる。
【0051】
次に、この第3の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同様の部分は同符号を付し、異なる部分のみを説明する。
【0052】
図11(A)、(B)、(C)及び図12(A)、(B)を参照するに、第3の実施の形態の光ファイバテープ心線用ダイス装置35は、第1ダイス7の出口面7Aの下側に、第2ダイス9の各接着用樹脂吐出孔17を塞ぐための複数のシャッタ部37が、X方向で第1光ファイバ挿通孔11の間に位置して前記X方向に接着用樹脂吐出孔17と同じ一定間隔Lで突出している。
【0053】
したがって、図11(A)および図12(A)に示されているように、第1ダイス7の第1光ファイバ挿通孔11と第2ダイス9の第2光ファイバ挿通孔13がX方向で同一の位置にある場合は、各接着用樹脂吐出孔17から接着用樹脂15が吐出され、前述した図2(A)の場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0054】
また、図11(B)及び図12(B)に示されているように、第1ダイス7がX方向の左方向へL/2だけ移動した場合は、第1ダイス7の複数のシャッタ部37が第2ダイス9の各接着用樹脂吐出孔17を塞ぐので接着用樹脂15は吐出しない。つまり、接着用樹脂15が不要な時は、第1ダイス7の動きに合わせてシャッタ部37で接着用樹脂15を堰き止めることができる。他は前述した図2(B)の場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0055】
さらに、図11(C)および図12(A)に示されているように、第1ダイス7がさらにX方向の左方向へL/2移動させた場合は、各接着用樹脂吐出孔17から接着用樹脂15が吐出され、前述した図2(C)の場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0056】
また、他の実施の形態としては、前述した第1〜第3の実施の形態において第1ダイス7の第1光ファイバ挿通孔11の入口に入線する光ファイバ3が第1ダイス7の動きに合わせて動く構造とすることができる。
【0057】
さらには、X方向にスライドする側の第1,第2ダイス7、9で、この実施の形態では第1ダイス7の第1光ファイバ挿通孔11に入線する複数の光ファイバ3が、常時断線を起こさない角度で入線するように第1ダイス7のX方向のスライド動作に合わせて前記複数の光ファイバ3を全体的にX方向に移動させることができる。
【0058】
例えば、図4(A)では、光ファイバ3が送出される方向(光ファイバ3の進行方向であるY方向)に対して第1ダイス7が図4(A)において左側にスライド移動しているので、光ファイバ3が図4(A)において左斜め下方向に入線されることになるが、第1ダイス7のスライド動作に合わせて光ファイバ3が送出される位置を図4(A)において左側に移動させれば、光ファイバ3が送出される方向は第1ダイス7の第1光ファイバ挿通孔11にほぼ真っ直ぐに入線することになるので、光ファイバの断線が起こらないようにできる。
【0059】
図4(C)では、第1ダイス7のスライド動作に合わせて光ファイバ3が送出される位置を図4(C)において右側に移動させれば、光ファイバの断線が起こらないようにすることができる。
【0060】
以上のことから、この発明の第1〜第3の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置1、31、35は、以下の効果を奏する。
【0061】
(1)特許文献1のように樹脂に該当する光ファイバ3同士を接着、分離するために光ファイバ3に触れることなく、接着部19と分離部21を形成したテープ心線5を製造できるので、光ファイバ3の断線の恐れが無い。つまり、光ファイバ3に過度の曲げや力を加えることなく前記接着部19と分離部21を確実に、かつ高精度に形成することができる。
【0062】
(2)2つの第1,第2ダイス7、9はそれぞれ互いに反対方向の一方向のみに移動させない。換言すれば、特許文献2のように例えば第1ダイス7を一方向のみに移動したとき、第2ダイス9を他方向のみに移動することはないので、複数の光ファイバ3が同一平面に並んだ接着部19と分離部21を有するテープ心線5を製造することができる。
【0063】
(3)光ファイバ3はスライド移動する側の第1ダイス7の第1光ファイバ挿通孔11の入口に対して常に断線を起こさない角度で入線するので、光ファイバ3は断線を起こさない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この第1の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置を示す概略的な斜視図である。
【図2】(A)〜(C)は、図1の製造装置における第1ダイスの動作を示す正面図である。
【図3】(A)〜(C)は、図2の(A)〜(C)に対応するもので、光ファイバ同士の接着状態を説明する正面図である。
【図4】(A)〜(C)は、図2の(A)〜(C)に対応するもので、第1ダイスの第1光ファイバ挿通孔に入線する光ファイバの状態を示す平面図である。
【図5】光ファイバテープ心線の平面的な斜視図である。
【図6】(A)は図5の矢視VI−VI線の連結部を示す断面図で、(B),(C)は他の実施の形態の接着部を示す断面図である。
【図7】他の光ファイバテープ心線の斜視図である。
【図8】この第2の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置を示す概略的な斜視図である。
【図9】(A)〜(C)は、図8の製造装置における第1ダイスの動作を示す正面図である。
【図10】(A)〜(C)は、図9の(A)〜(C)に対応するもので、光ファイバ同士の接着状態を説明する正面図である。
【図11】(A)〜(C)は、この第3の実施の形態の光ファイバテープ心線製造装置における第1ダイスの動作を示す正面図である。
【図12】(A)、(B)は、図11(A)、(C)および図11(B)の吐出部側面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 光ファイバテープ心線用ダイス装置(第1の実施の形態の)
3 光ファイバ
5 光ファイバテープ心線(テープ心線)
7 第1ダイス
7A 出口面(第1ダイス7の)
9 第2ダイス
9A 出口面(第2ダイス9の)
11 第1光ファイバ挿通孔
13 第2光ファイバ挿通孔
15 接着用樹脂
17 接着用樹脂吐出孔
19 接着部
21 分離部
23 集線用ロール
25 裸光ファイバ
27 軟質プラスチック樹脂
29 UV硬化樹脂
31 光ファイバテープ心線用ダイス装置(第2の実施の形態の)
33 UV照射装置
33A,33B UVランプ
35 光ファイバテープ心線用ダイス装置(第3の実施の形態の)
37 シャッタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバをこの光ファイバの長手方向に対して直交した2方向のうちの一方方向に並列して光ファイバテープ心線を製造する光ファイバテープ心線の製造方法において、
前記一方方向に対して垂直に直交した他方方向に重ね合わせて配置した第1,第2ダイスの出口面にそれぞれ対応して前記一方方向に同じ一定間隔で設けた前記第1ダイスの複数の第1,第2光ファイバ挿通孔に、前記一方方向に並列する光ファイバの一方側から奇数番の光ファイバを通過せしめ、かつ前記第2ダイスの複数の第2光ファイバ挿通孔に、前記一方方向に並列する光ファイバの一方側から偶数番の光ファイバを通過せしめ、
前記第1,第2ダイスを相対的に前記一方方向にスライド移動し、
このスライド移動した第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔が前記一方方向で同位置になった光ファイバ同士を接着用樹脂で接着した接着部を形成し、かつ前記スライド移動した第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔が一方方向で異なる位置になった光ファイバ同士の間を分離させた分離部を形成して光ファイバテープ心線を製造することを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項2】
前記接着用樹脂がUV硬化樹脂であり、前記第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔の少なくとも一方を通過する光ファイバの全周にUV硬化樹脂を塗布し、前記第1,第2ダイスの出口面から送り出された後に前記UV硬化樹脂を硬化することを特徴とする請求項1記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項3】
前記一方方向にスライドする側の第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔に入線する光ファイバが、常時断線を起こさない角度で入線するように第1,第2ダイスの一方方向のスライド動作に合わせて一方方向に移動することを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項4】
複数本の光ファイバをこの光ファイバの長手方向に対して直交した2方向のうちの一方方向に並列して光ファイバテープ心線を製造する光ファイバテープ心線用ダイス装置において、
前記一方方向に対して直交した他方方向に重ね合わせて配置し、かつ相対的に前記一方方向にスライド自在に設けた第1,第2ダイスと、
前記第1ダイスの出口面に、前記一方方向に並列する光ファイバの一方側から奇数番の光ファイバを通過させるために前記一方方向に一定間隔で設けた複数の第1光ファイバ挿通孔と、
前記第2ダイスの出口面に、前記一方方向に並列する光ファイバの一方側から偶数番の光ファイバを通過させるために前記一方方向に前記第1光ファイバ挿通孔と同じ一定間隔で設けた複数の第2光ファイバ挿通孔と、
前記一方方向に相対的にスライドした前記第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔が一方方向で同位置になった時に、前記第1,第2ダイスの少なくとも一方に、光ファイバ同士を接着する接着用樹脂を吐出すべく設けた複数の接着用樹脂吐出孔と、
で構成されていることを特徴とする光ファイバテープ心線用ダイス装置。
【請求項5】
前記第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔の少なくとも一方が前記接着用樹脂吐出孔と兼用にした構成であり、前記接着用樹脂がUV硬化樹脂であることを特徴とする請求項4記載の光ファイバテープ心線用ダイス装置。
【請求項6】
前記第1,第2ダイスの少なくとも一方に前記各接着用樹脂吐出孔を塞ぐための複数のシャッタ部を設けたことを特徴とする請求項4記載の光ファイバテープ心線用ダイス装置。
【請求項7】
前記一方方向にスライドする側の第1,第2ダイスの第1,第2光ファイバ挿通孔の光ファイバが入線する入口に、前記光ファイバの許容曲げ以上の曲率半径を付けていることを特徴とする請求項4、5又は6記載の光ファイバテープ心線用ダイス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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