説明

光ファイバーセンサー及び製法

【課題】高温及び過酷な環境に耐え得る光ファイバーセンサーを提供する。
【解決手段】ファイバー10の表面はセラミック材料20の塗工によって改質されている。セラミック粒子20はファイバー10の表面に付着して接触粒子と解放空間の開気孔網組織を形成している。光学剤40は開気孔網組織の開気孔内に分散している。熱処理中に、セラミック球状粒子20は高密度化し、ファイバー10と一体化して緻密セラミック材料20内に開気孔網組織を形成する。光学剤40はセラミック材料20内の開気孔網組織によって支持され、適所に保持されると共に測定すべき環境又は物質に暴露される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバーセンサー、具体的には過酷な環境用の光ファイバーセンサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】

光ファイバーセンサーは、環境の変化に伴う動的な化学的及び物理的プロセスのモニタリングに使用し得る。典型的な光ファイバーセンサーでは、1種以上の支持体を用いてセンサー材料を配置して、モニター、測定及び/又は検出すべき物質又は環境と相互作用させる。化学光ファイバーセンサーは、独特な化学的環境に基づいて光学指数の変化を同定する光学剤を含有している。適切に機能させるため、光学剤は、光学剤を保持するとともに光学剤がモニター、測定又は検出すべき環境又は物質と相互作用できるように光学的に透明な支持構造体内になければならない。
【0003】
従来の光ファイバーセンサーは、比較的穏和な温度条件に限定されることが多く、ガス又は蒸気タービン排気管、石炭焚きボイラー及び航空機エンジンのような高温及び/又は過酷な環境で使用すると機能しなくなり始める。
【0004】
Popeの米国特許第5496997号には、ファイバーの遠位端を接着材料によって無定形シリカミクロスフェアに結合してなる光ファイバーが開示されている。センサーは、接着剤層が高温又は過酷な環境で分解しかねないので、過酷な環境中では故障するおそれがある。
【特許文献1】米国特許第5496997号明細書
【特許文献2】米国特許第5280172号明細書
【特許文献3】米国特許第5457313号明細書
【特許文献4】米国特許第5864641号明細書
【特許文献5】米国特許第5900215号明細書
【特許文献6】米国特許第7058243号明細書
【特許文献7】米国特許第7151872号明細書
【特許文献8】米国特許第7228017号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第20060215959号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第20060222762号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第20060008677号明細書
【非特許文献1】Schweizer-Berberich et al., “The effect of Pt and Pd surface doping on the response of nanocrystalline tin dioxide gas sensors to CO”; Sensors and Actuators B, Vo. 31 (1996), pp. 71-75; Elsevier Science S.A.
【非特許文献2】Wang et al., “Low-temperature carbon monoxide gas sensors based gold/tin dioxide”; Solid-State Electronics, Vol. 50 (2006), pp. 1728-1731; ScienceDirect, Elsevier Ltd.
【非特許文献3】Boulahouache et al., “Oxidation of carbon monoxide on platinum-tin dioxide catalysts at low temperatures”; Applied Catalysis A: General, Vol. 91 (1992) pp. 115-123; Elsevier Science Publishers B.V..
【非特許文献4】Bevenot el al., “Surface plasmon resonance hydrogen sensor using an optical fibre”; Measurement Science and Technology, Vol. 13 (2002) pp.118-124; Institute of Physics Publishing Ltd.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、高温及び過酷な環境に耐え得る光ファイバーセンサーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、光ファイバーセンサーはファイバーと一体の改質表面を有するファイバーを含んでおり、改質表面は開気孔網状組織と該開気孔網状組織の開気孔内に配置された光学剤を含む。
【0007】
別の実施形態では、光ファイバーセンサーの製造方法は、セラミック材料をファイバーに塗工し、開気孔網状組織構造を形成し、開気孔網状組織の気孔内に光学剤を分散させ、セラミック材料をファイバーと一体化させることを含む。
【0008】
別の実施形態では、光ファイバーセンサーの製造方法は、セラミック材料と光学剤を含むセラミック材料混合物をファイバーに塗工し、セラミック材料内に開気孔網状組織構造を形成し、セラミック材料をファイバーと一体化させることを含む。
【発明の効果】
【0009】
様々な実施形態では、高温及び過酷な環境に耐えることができる光ファイバーセンサーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
単数形で記載したものであっても、文脈から他の意味であることが明らかでない限り、複数形も含めて意味する。同じ特性に関して記載したすべての範囲の上下限は独立に結合させることができ、上下限を含む。本明細書中で引用した文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0011】
量に関して用いる「約」は標記の値を含み、その背景から規定される意味を有する(例えば、特定の量の測定に関しては許容差範囲を含む)。
【0012】
「任意」又は「適宜」は、この語に続いて記載された事象又は状況が起きても起こらなくてもよく、この語で特定される材料が存在してもしなくてもよいことを意味し、その事象又は状況が起こる又はその材料が存在する場合と、その事象又は状況が起こらない又はその材料が存在しない場合とを含む。
【0013】
一実施形態では、光ファイバーセンサーはファイバーと一体の改質表面を有するファイバーを含んでおり、改質表面は開気孔網状組織と開気孔網状組織の開気孔内に配置された光学剤とを含む。
【0014】
光ファイバーセンサーは物理的、電気的及び化学的パラメーターの測定に使用できる。一実施形態では、光ファイバーセンサーは化学的光ファイバーセンサーである。
【0015】
ファイバーはファイバーコアと適宜ファイバークラッドとを含む。ファイバークラッドが存在する場合には、ファイバーコアを少なくとも部分的に囲繞し、ファイバーコアは軸に沿って長手方向に延びる導波路を形成しており、屈折率(又は光学的厚さ)の変化する部分を含んでいて光学的回折格子を形成する。
【0016】
ファイバーコアは透明であり、サファイア、多孔質ゾル−ゲルガラス又は溶融シリカ材料からなるものでよい。
【0017】
ファイバークラッドは透明であってもよく、コア材料と同じ材料からなるものでもよいが、屈折率の低い材料からなる。一実施形態では、ファイバークラッドはガラス又はシリカを含む。
【0018】
ファイバー表面の少なくとも一部分が改質される。改質表面はファイバーコア上でもよいし、或いはファイバーのファイバークラッドが存在する場合はその上にあってもよい。ファイバーに対する改質はファイバー表面にセラミック材料を慣用法で塗工することを含む。セラミック材料が固化すると多孔質で光学的に透明な支持構造体を形成するが、これは三次元マトリックス又は格子型構造で、複数の相互に連絡した気孔を有しており、これらが支持構造全体に延在して開気孔網状組織を構成する。
【0019】
気孔径は、検出すべきガスが支持構造内を通過できる大きさであればよい。一実施形態では、気孔径は直径約150nm以下である。別の実施形態では、気孔径は直径約1〜約150nmである。気孔径は材料が固化する際の時間及び温度の調節によって慣用法で調整することができる。
【0020】
一実施形態では、セラミック材料は、スプレー塗工、刷毛塗り、ロール塗工、流し掛け、ディッピング、浸漬塗工又はファイバー表面へのフィルムの貼付によって塗工さる。一実施形態では、ファイバー表面をコーティングすることによって表面を改質する。別の実施形態では、ファイバーのディッピングによって表面を改質する。別の実施形態では、表面上にフィルムを形成することによって表面を改質する。
【0021】
セラミック材料はシリカ、アルミナ又はチタニアでよい。アルミナ、チタニア及びシリカはテトラエトキシオルトシリケートのような有機金属材料から誘導できる。一実施形態では、セラミック材料はシリカを含む。
【0022】
光学剤は、独特な化学的環境を化学的に検知して、ファイバークラッドの光学指数を測定する検知剤である。光学剤は当技術分野で公知のいかなるタイプの検知剤であってもよい。一実施形態では、光学剤は金属又は遷移金属である。一実施形態では、遷移金属はルテニウム、ロジウム、白金及びパラジウムのような第8〜10族遷移金属を含む化合物である。一実施形態では、光学剤はパラジウムである。別の実施形態では、光学剤として、金属酸化物が挙げられる。別の実施形態では、金属酸化物として、二酸化スズ、酸化イットリウム、酸化バナジウム、酸化チタン及び酸化タングステンを挙げることができる。
【0023】
光学剤は開気孔網状組織の開気孔内に配置され、少なくとも一部が周囲の空気に暴露される。光学剤は、開気孔網状組織中に光学剤を従来法で分散させることによって開気孔中に配置される。光学剤は、改質表面を光学剤でスプレー塗工、刷毛塗り、ロール塗工、流し掛け、ディッピング、浸漬又はコーティングすることによって分散させることができる。一実施形態では、光学剤は、光学剤を含む溶液中に改質光ファイバをディッピングすることによって開気孔網状組織の気孔内に分散させる。溶液は光学剤を水又はアルコールとブレンドすることによって調製できる。セラミック材料は、セラミック材料とファイバー表面を密着させることによってファイバーと一体化され、接着材料又は接着剤層を必要としない。セラミック材料はファイバー表面に浸透して、ファイバー上で一体化改質表面を形成し、ファイバー表面を新たな改質表面へと効果的に置き換える。セラミック材料は、セラミック材料を緻密化するとともにファイバー表面に密着させるのに適した任意の手段によってファイバーと一体化させればよい。緻密化セラミック材料は緻密な構造内に開気孔網状組織を形成して光学剤を適所に保持し、測定、モニター又は検出すべき環境又は物質に対するアクセスを与える。開気孔網状組織は、熱的、化学的及び機械的に頑強で安定な支持構造内に光学剤を保持し保護する。
【0024】
一実施形態では、セラミック材料は、熱処理、乾燥又は照射によって、緻密化しファイバーに結合させることができる。別の実施形態では、セラミック材料を熱処理する。熱処理は任意の従来法で実施できる。一実施形態では、改質ファイバーを約300〜約600℃に最大約4時間加熱する。一実施形態では、改質ファイバーを約1〜約3時間加熱する。高温で長時間継続して加熱すると、次第に開気孔網状組織が完全に緻密化して気孔がは殆ど又は全くなくなってしまう。
【0025】
別の実施形態では、光ファイバーセンサーの製造方法は、セラミック材料をファイバーに塗工して開気孔網状組織構造を形成し、開気孔網状組織の気孔内に光学剤を分散させ、セラミック材料をファイバーと一体化することを含む。
【0026】
上述の通り、セラミック材料はシリカ、アルミナ又はチタニアでよい。アルミナ、チタニア及びシリカはテトラエトキシオルトシリケートのような有機金属化合物から誘導することができる。
【0027】
一実施形態では、セラミック材料は、直径約20〜約700nmの球状粒子を含む。直径は走査型電子顕微鏡で測定される。一実施形態では、球状粒子は単一粒径である。別の実施形態では、球状粒子の約95%以上が、球状粒子の平均直径の約10%以内にある。
【0028】
別の実施形態では、セラミック材料はシリカの球状粒子を含む。シリカの球状粒子は、アルコール及び適宜水、約1〜約50重量%のアンモニアを含む溶液中に、テトラエトキシオルトシリケートのようなシリカ前駆体を加えることによって調製することができる。粒径は、水、アンモニア及びアルコールの相対濃度によって調整される。一実施形態では、アルコールはエタノールである。アルコールの量は、溶液の重量を基準にして約10〜約70重量%である。アンモニアの量は、溶液の重量を基準にして約1〜約50重量%で存在する。水の量は、溶液の重量を基準にして約10〜約70重量%で存在する。シリカ前駆体の量は、溶液の重量を基準にして約1〜約10重量%で存在する。
【0029】
一実施形態では、球状粒子を含むセラミック材料は、スプレー塗工、刷毛塗り、ロール塗工、流し掛け、ディッピング、浸漬塗工又はファイバー表面へのフィルムの貼付によって塗工される。一実施形態では、セラミック球状粒子の水溶液中にファイバーをディッピングすることによってファイバー表面を改質する。球状粒子は、ファンデルワールス力によってファイバー表面に接着する。溶液から水が乾燥すると、蒸発する水の膜からの毛管力で球状粒子が引き寄せられて、接触粒子と開放空間の緻密な網状組織となり開気孔を形成する。
【0030】
光学剤は、開気孔網状組織の開気孔内に従来法で分散させる。上述の通り、光学剤は、改質表面に光学剤をスプレー塗工、刷毛塗り、ロール塗工、流し掛け、ディッピング、浸漬又はコーティングすることによって分散させることができる。一実施形態では、溶液によって光学剤を開気孔網状組織内に分散させる。水又はアルコールを含む溶液に光学剤を加え、改質表面を有するファイバーをその溶液中にディッピングする。光学剤を開気孔網状組織中に分散させる工程を繰り返して、ファイバー上の光学剤の濃度を増大させてもよい。光学剤は開気孔網状組織の開気孔内に位置し、その少なくとも一部が、測定すべき環境又は物質に暴露される。
【0031】
セラミック材料は、セラミック材料を緻密化するとともにファイバーに密着するのに適した任意の手段でファイバー表面と一体化され、接着材料又は接着剤層は必要としない。
【0032】
図1Aは、熱処理前のファイバー10を示す図である。ファイバー10の表面はセラミック球状粒子を含むセラミック材料20の塗工によって改質されている。セラミック粒子20はファイバー10の表面に付着して接触粒子と開放空間30の開気孔網状組織を形成している。光学剤40は開気孔網状組織の開気孔30内に分散している。図1Bは、熱処理後の光ファイバ10を示す図である。熱処理中に、セラミック球状粒子20は高密度化し、ファイバー10と一体化して緻密セラミック材料20内に開気孔網状組織を形成する。光学剤40はセラミック材料20内の開気孔網状組織によって支持され、適所に保持されると共に測定すべき環境又は物質に暴露される。
【0033】
別の実施形態では、光ファイバーセンサーの製造方法は、セラミック材料と光学剤とを含むセラミック材料混合物をファイバーに塗工し、セラミック材料内に開気孔網状組織構造を形成し、セラミック材料をファイバーと一体化することを含む。
【0034】
セラミック材料混合物はセラミック材料と光学剤を含む。セラミック材料混合物は、光学剤をセラミック材料に加えることによって製造される。光学剤は従来法でセラミック材料とブレンドすればよい。一実施形態では、光学剤とセラミック材料とを溶液中でブレンドする。別の実施形態では、テトラエトキシオルトシリケート、アルコール及び光学剤の溶液を製造する。
【0035】
セラミック材料混合物はファイバー表面に従来法で塗工される。一実施形態では、セラミック材料は、スプレー塗工、刷毛塗り、ロール塗工、流し掛け、ディッピング、浸漬塗工又は表面へのフィルムの貼り付けによって塗工される。一実施形態では、セラミック材料混合物をファイバー表面にコーティングすることによって塗工する。別の実施形態では、ファイバーのディッピングによってセラミック材料混合物を塗工する。別の実施形態では、セラミック材料混合物を含むフィルムをファイバー表面上に形成する。
【0036】
開気孔網状組織は、乾燥又は熱処理のようなセラミック材料を硬化させるのに適した任意の手段によって形成することができる。セラミック材料が乾燥又は加熱されると、セラミック材料はゲル化し始め、セラミック材料内に亀裂が形成され始める。亀裂により、緻密セラミック材料内に開気孔網状組織が形成される。亀裂の量は湿度の変化速度及び加熱又は乾燥速度によって調整することができる。
【0037】
セラミック材料は、セラミック材料を緻密化するとともにファイバーに密着させるのに適した任意の手段によって光ファイバと一体化され、接着材料又は接着剤層は必要としない。
【0038】
別の実施形態では、セラミック材料混合物はさらにポリマーを含む。ポリマーは熱処理プロセスにおけるような高温で分解する有機ポリマーであればよい。一実施形態では、有機ポリマーはポリオレフィンの酸化物、ラテックスポリマー、ポリエステル及びポリプロピレンである。別の実施形態では、有機ポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド又はポリプロピレンオキサイドが挙げられる。ポリマーは、セラミック材料を基準にして約0.1〜約10体積%の量でセラミック材料に添加しできる。
【0039】
ポリマーは、セラミックコーティング中に亀裂及び空隙を形成させることによって緻密セラミック材料内に開気孔網状組織を生成するのに役立つ。セラミック材料を従来法で熱処理すると、その熱処理プロセスでポリマーが分解してコーティング中に空隙が残り、これが緻密セラミックコーティング内の開気孔を増大させる。セラミックコーティング内の空隙及び亀裂は、ガスが空隙を通って拡散できる程度に大きいが、セラミックコーティングに構造上の損傷を起こさない程度に小さい。一実施形態では、空隙は直径約10〜約100μでよい。
【0040】
図2Aは、熱処理前のファイバー200を示す図である。セラミック材料210、光学剤220及びポリマー230の混合物をファイバー200の表面に塗工し、調整湿度下で乾燥させて緻密セラミック材料内に亀裂発生(図示せず)を惹起する。図2Bは、熱処理後のファイバー200を示す図である。改質表面を熱処理し、熱処理中にセラミック材料210が高密度化し、光ファイバ200に密着する。ポリマー230は分解してセラミック材料210中に空隙240が残る。光学剤220は、セラミック材料210内に形成された開気孔網状組織内に支持され、適所に保持され、測定すべき環境又は物質に暴露される。
【実施例】
【0041】
本発明を当業者が容易に実施できるように、例示を目的として以下の実施例を挙げる。
【0042】
実施例1
89.5重量%のテトラエトキシオルトシリケート、10.5重量%のパラジウム、及びテトラエトキシオルトシリケートとパラジウムの重量を基準にして40重量%の1−プロパノールの混合物を調製した。平均直径300nmからなり、粒子の95%が平均直径の10%以内の直径を有するシリカを、テトラエトキシオルトシリケートと1−プロパノールから形成した。
【0043】
シリカとパラジウムの混合物のフィルムをガラス基材に塗工し、400℃で2時間熱処理した。フィルムの厚さは約100μmであった。
【0044】
光ファイバーセンサーの水素応答を室温〜525℃で試験した。図3〜8はそれぞれ25℃(室温)、120℃、172℃、355℃、425℃及び525℃でNガス中5%Hを間欠的に導入したときのH応答光反射曲線を示す。センサーは約355℃以下でHを検知した。
【0045】
ガスに対する相対的応答をまとめて図9に示す。相対的応答は、シグナル変化をシグナルレベルで除した商である。これらの値は、より速い変化シグナルを用いて平均によって評価される。結果は、フィルムが検知することができる温度範囲で温度の上昇と共に感度が増大することを示している。
【0046】
図10は、温度に対する応答時間である。応答時間の値は、変化の速いシグナルを用いた平均によって評価される。結果は、フィルムが検知することができる温度範囲内で、温度が高い方が応答時間が短いことを示しており、これは高温で化学反応速度が増大することに対応している。
【0047】
従来技術のPd−合金系検知材料は室温で水素と相互作用して、光学及び光ファイバー技術による水素の検出及び測定が可能であるが、高温では検出されない。X Bevenot1, A Trouillet1, C Veillas1, H Gagnaire1 and M Clement, Meas. Sci. Technol., 13 (2002) 118-124参照。
【0048】
実施例2
80重量%のテトラエトキシオルトシリケート、15重量%の二酸化スズ、5重量%のパラジウム、並びにテトラエトキシオルトシリケート、パラジウム及び二酸化スズの重量を基準にして8重量%の1−プロパノールの混合物を調製した。平均直径300nmの球状粒子からなり、粒子の95%が平均直径の10%以内の直径を有するシリカを、テトラエトキシオルトシリケート及び1−プロパノールから形成した。
【0049】
シリカ、二酸化スズ及びパラジウムの混合物のフィルムをガラス基材に塗工し、400℃で2時間熱処理した。フィルムの厚さは約20μmであった。
【0050】
光ファイバーセンサーの一酸化炭素応答を325〜525℃で試験した。図11及び12は、それぞれ425℃及び525℃でNガス中5%COを間欠的に導入したときのCO応答光反射曲線を示す。センサーは温度範囲全体でCO検知を示した。
【0051】
1%、2%及び3%COの追加の試験を525℃で実施した。結果は、525℃でCOガスに対して有意な応答があることを示していた。シグナルレベルは異なるCO濃度で変化した。
【0052】
実施例3
89.5重量%のテトラエトキシオルトシリケート、10.5重量%のパラジウム、及びテトラエトキシオルトシリケートとパラジウムの重量を基準にして20重量%の1−プロパノールの混合物を調製した。平均直径300nmの球状粒子からなり、粒子の95%が平均直径の10%以内の直径を有するシリカを、テトラエトキシオルトシリケートと1−プロパノールから形成した。
【0053】
シリカとパラジウムの混合物のフィルムをガラス基材に塗工し、500℃で2時間熱処理した。フィルムの厚さは約100μmであった。
【0054】
光ファイバーセンサーの一酸化炭素応答を室温乃至525℃で試験した。室温ではCO測定のシグナルは認められなかったが、高温では良好なシグナル出力があった。図13及び14は、それぞれ280℃及び525℃でNガス中5%COを間欠的に導入したときのCO応答光吸収曲線を示す。図14に示すように、COガスに対する応答は迅速で大きい。
【0055】
例示の目的で典型的な実施形態について説明して来たが、以上の記載は本発明の範囲を限定するものではない。従って、当業者には本発明の思想と範囲から逸脱することなく様々な修正、変更及び代替が理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】熱処理前のファイバーの改質表面を示す図。
【図1B】熱処理後のファイバーの改質表面を示す図。
【図2A】熱処理前のファイバーの改質表面を示す図。
【図2B】熱処理後のファイバーの改質表面を示す図。
【図3】25℃(室温)でNガス中5%Hを間欠的に導入したときのH応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【図4】120℃でNガス中5%Hを間欠的に導入したときのH応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【図5】172℃でNガス中5%Hを間欠的に導入したときのH応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【図6】355℃でNガス中5%Hを間欠的に導入したときのH応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【図7】425℃でNガス中5%Hを間欠的に導入したときのH応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【図8】525℃でNガス中5%Hを間欠的に導入したときのH応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【図9】Hガスに対する相対的応答をまとめて示すグラフである。グラフは相対的応答(Δ/V)対温度(℃)である。
【図10】応答時間(分)対温度(℃)を示すグラフである。
【図11】425℃でNガス中5%COを間欠的に導入したときのCO応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【図12】525℃でNガス中5%COを間欠的に導入したときのCO応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【図13】280℃でNガス中5%COを間欠的に導入したときのCO応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【図14】525℃でNガス中5%COを間欠的に導入したときのCO応答光反射曲線を示すグラフである。グラフはシグナル出力(V)対時間(分)である。
【符号の説明】
【0057】
10 ファイバー/光ファイバ
20 セラミック(球状)粒子/セラミック材料
30 開放空間/開気孔
40 光学剤
200 ファイバー/光ファイバ
210 セラミック材料
220 光学剤
230 ポリマー
240 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバーと一体の改質表面を有するファイバーを含む光ファイバーセンサーであって、該改質表面が開気孔網状組織と該開気孔網状組織の開気孔内に分散した光学剤とを含んでなる、光ファイバーセンサー。
【請求項2】
前記ファイバー表面がセラミック材料の塗工によって改質されている、請求項1記載のセンサー。
【請求項3】
前記セラミック材料がシリカを含む、請求項2記載のセンサー。
【請求項4】
前記光学剤が遷移金属又は金属酸化物である、請求項1記載のセンサー。
【請求項5】
前記遷移金属がパラジウムである、請求項4記載のセンサー。
【請求項6】
光ファイバーセンサーの製造方法であって、セラミック材料をファイバーに塗工し、開気孔網状組織構造を形成し、開気孔網状組織の気孔内に光学剤を分散させ、セラミック材料をファイバーと一体化することを含んでなる方法。
【請求項7】
前記ファイバーをコーティングすることによってセラミック材料を塗工する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
フィルムの形成によってファイバー表面にセラミック材料を塗工する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記ファイバー表面をセラミック材料でコーティングすることによって表面を改質する、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記ファイバー表面をセラミック材料含有溶液中にディッピングすることによって表面を改質する、請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記セラミック材料が球状粒子を含む、請求項6記載の方法。
【請求項12】
前記セラミック材料がシリカを含む、請求項6記載の方法。
【請求項13】
セラミック材料を熱処理して開気孔網状組織を形成し、光学剤を含む溶液中に改質ファイバーをディッピングするすることによって、開気孔網状組織の気孔内に光学剤を分散させる、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記光学剤が遷移金属又は金属酸化物である、請求項6記載の方法。
【請求項15】
前記遷移金属がパラジウムである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ファイバーを約300〜600℃で約1〜約4時間熱処理する、請求項6記載の方法。
【請求項17】
光ファイバーセンサーの製造方法であって、セラミック材料及び光学剤を含むセラミック材料混合物をファイバーに塗工し、セラミック材料内に開気孔網状組織構造を形成し、セラミック材料をファイバーと一体化させることを含んでなる方法。
【請求項18】
前記ファイバーをコーティングすることによってセラミック材料を塗工する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
フィルムの形成によってファイバー表面にセラミック材料を塗工する、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記ファイバー表面をセラミック材料含有溶液中にディッピングすることによって表面を改質する、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記セラミック材料が球状粒子を含む、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記セラミック材料がシリカを含む、請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記光学剤が遷移金属又は金属酸化物である、請求項17記載の方法。
【請求項24】
前記遷移金属がパラジウムである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記ファイバーを約300〜600℃で約1〜約4時間熱処理する、請求項17記載の方法。
【請求項26】
前記セラミック材料混合物がさらにポリマーを含む、請求項17記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマーが有機ポリマーである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
請求項6記載の方法で製造されたセンサー。
【請求項29】
請求項17記載の方法で製造されたセンサー。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−25289(P2009−25289A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129851(P2008−129851)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】