説明

光ファイバーチャンネル選択装置

【課題】高価な光学機器によるスイッチング部品を必要とせずに、効率的かつ制御された仕方でいくつかの光学的入力および/または出力チャンネルの間での割り出しを行う光ファイバーチャンネル選択装置を提供する。
【解決手段】バレルと、バレル内部に配設された内部光ファイバーと、バレルの周囲に同軸状に設けられた第一のベアリングと、第一のベアリングの周囲に同軸状に設けられた第一の軸受けスリーブとを含む光チャンネル選択装置。バレルは中心軸のまわりに回転可能であり、第一の端面と、対向する第二の端面とを有する。内部光ファイバーは第一のファイバー端部と第二のファイバー端部とを含む。第一のファイバー端部は中心軸からオフセット距離だけずれて第一の端面に露出している。第二のファイバー端は中心軸と同一直線上で第二の端面上に露出している。第一の軸受けスリーブは、円周上で互いに離間した複数の第一の軸受けスリーブ開口を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、光学的信号がそこを通って流される選択された入力および出力ラインまたはチャンネルのカップリングに関し、またかかるラインまたはチャンネルへの、またそこからの光学的信号のルーティング(経路選択)に関する。より具体的には、本発明は協調が取られた機械的割り出し(インデックス)運動を通して選択とカップリングとを行うようになされた装置の設計および使用に関する。かかる装置は広範囲の応用分野、特に分析情報の生成と伝達とに関わる分野において、利点をもたらす。具体的な分野は、可溶性物質のサンプリングおよび分析、また光学的特性を示す他の流体および固体材料の試験を含む。
【背景技術】
【0002】
光のビームまたはパルスを光源から試験部位に向け、その後試験部位で発生または測定された分析情報を適切な受光装置に送るために、光学的伝達技術がよく使用される。光学的手段によって伝達された分析情報は、化学的なものであったり生物学的なものであったりする。例えば、試験部位において含まれるサンプル中に存在する特定の検体、すなわち関心のある成分を識別し、その検体の濃度を求めるために、分析情報を使用できる。分析信号の例としては、様々なスペクトル領域における電磁輻射の放出、吸収、散乱、屈折および回折などがある。これらの分析信号の多くは、分光学的方法により、測定される。分光学は一般に何らかの形態の電磁輻射(光)をサンプルに照射し、照射の結果(例えば吸収、放出または散乱)を測定し、そして測定されたパラメータを解釈して所望の情報を得ることを含む。測定機器による分光学の方法の例として分光光度計の操作があるが、これは照射されるサンプルと組み合わされた光源が分析情報の発生源となり、分析信号は減衰した光ビームの形で発生させられるものである。減衰した信号はフォトセルのような適切な入力トランスデューサによって受けられる。電気信号のような変換された信号は次に読み出し装置に送られる。
【0003】
分光分析を実施するための一例として、分光光度計は紫外線(UV)および/もしくは可視光、または他のケースでは赤外線(IR)または近赤外線(NIR)を利用してサンプルをスキャンして吸収値を計算する。UVまたはUV−可視光領域での分光光度計を使用する1つの具体的な方法であるUVシッパー法では、サンプルは分光光度計内に納められたサンプルセルに移されて、サンプルセル内にある間にスキャンされ、そして次に好適には試験容器に戻される。
【0004】
サンプル中の所定の検体の濃度を分光分析によって求めるプロセスには、典型的にはいくつかの工程が含まれる。含まれる可能性のある工程は(1)初期サンプルの採取、(2)サンプルの調製および/または処理による分析サンプルの作製、(3)サンプル導入システムを使用して、分析サンプルを選択された分析機器のサンプル保持部に供給(例えばサンプルをUV分光光度計のサンプル保持部に送る)、(4)分析サンプルから得られた分析信号(例えば光学信号)の測定、(5)標準(スタンダード)の利用および計算による較正機能の確立、(6)サンプルおよび基準の測定に基づく分析信号の解釈、および(7)解釈された信号の読み出しおよび/または記録システムへの供給などがある。
【0005】
上記のプロセスを実行するために使用される通常の装置は、一般に様々な形態のものが知られている。分析信号の測定は、濃度などのサンプルに関する化学情報を光学的信号の形態に符号化(エンコード)するための、適切な分光分析符号化システムの使用を含む。分光分析システムでは、符号化のプロセスには、光のビームをコントロールされた条件の下でサンプルを通過させることが含まれ、この場合所望の化学情報は特定の波長での光学的信号の強度として符号化される。測定と符号化は、様々な設計のサンプルセル、キュベット、タンク、パイプ、固体サンプルホルダー、またはフローセルの中または上で行える。
【0006】
更に典型的には、適切な光学的情報選択装置を使用して、符号化プロセスによって生じるいくつかの干渉を生じる恐れのある信号から、望みの光学的信号を選び出し、または識別することがある。例えば波長選択装置を使用して、波長つまり光学的な周波数に基づいて識別することができる。輻射トランスデューサまたはフォトディテクタを起動して、通常は分析装置に組み込まれている電子回路による処理に適した対応する電子信号へと、光学的信号を変換する。読み出し装置により、処理された電気信号に比例する値を有する、人が読める数値データが得られる。
【0007】
UV−可視光領域での分子吸収法に従って作動する分光光度計では、サンプルから測定される量は、輻射源からの輻射パワーまたはフラックスがサンプル中の検体種によって吸収されるものの強度である。理想的には、吸光度Aの値は下記のベールの法則により有効に算出できる。
【0008】
【数1】

【0009】
ここでTは透過率であり、P0はサンプルに入射する輻射パワーの大きさであり、Pはサンプルを透過して減少(減衰)した輻射パワーの大きさであり、aは吸光度であり、bは吸収の経路長であり、そしてcは吸収する化学種の濃度である。
従って適切な条件下では、吸光度はベールの法則によって検体濃度に直接比例することがわかる。検体の濃度は吸光度の値から求められ、吸光度は透過した輻射の測定値と入射した輻射の測定値との比から算出される。更に、基準すなわちブランク媒体のサンプルを測定し、ブランクサンプルを透過した輻射パワーに対する検体サンプルを透過した輻射パワーの比を取って、真の吸収度を求めることができる。
【0010】
ある種の従来のサンプル試験システムでは、分析機器(例えば分光光度計)自体の内部に納められた1つ以上のサンプルセルに、サンプルが順次送られる。サンプルは先ず試験容器から取り出され、サンプリングポンプを使ってサンプリングラインを通され、サンプリングフィルターに通される。サンプルは次に、UV分析機、HPLCシステム、フラクションコレクタなどに運ばれる。分析機器には数個のサンプル用キュベットを保持するカルーセルが含まれ、カルーセルが回転すると各キュベットがステップ動作でサンプルセルの位置に移動する。最初の光信号を供給する光源のパルス点灯は、制御手段によってカルーセルの回転と同期させることができる。
【0011】
UV−可視光の分光光度計の例として、カリフォルニア州パロアルトのヴァリアンインコーポレーテッド(Varian,Inc.)が販売するCARY(商標)シリーズのシステムがある。特にVarian CARY 50(商標)分光光度計は、光のビームまたはパルスが通過するサンプルセルを収容するサンプル室を含むものである。数種類の寸法のサンプルセルが入手可能である。しかもこの分光光度計には、最大で18個のセルを収容するマルチセルホルダーを備えることができる。内蔵の移動メカニズムにより、セルは光ビームを通って移動する。
【0012】
近年開発された別のシステムでは、UVスキャンと組み合わせて光ファイバーを使用してその場(インサイチュ)での吸収測定を行う、すなわち、溶解試験装置であれサンプル分析装置であれ、そのサンプル収納器内で直接測定を行うのである。光ファイバーケーブルは、例えば保護被覆で同軸状に包まれ、単色光の信号を伝達することのできるグラスファイバーからなる。溶解試験と関連する典型的なその場(インサイチュ)で測定する光ファイバー法は、浸漬タイプの光ファイバーUVプローブを、容器内に収容された試験媒体中に沈めるものである。重水素ランプで発生した光ビーム(UV輻射)が光ファイバーケーブルを通ってプローブに送られる。プローブ内では、光はフローセル型構造の真上に配設された石英レンズを通過するが、この構造の内部は試験媒体で満たされている。光はフローセル内の試験媒体を通過して、プローブの終端位置に配設された鏡で反射され、フローセルと石英レンズとを通過して戻り、第二の光ファイバーケーブルを通って分光計に入る。
【0013】
前述のVarian CARY 50(商標)分光光度計の場合、その場(インサイチュ)でのサンプルの測定を可能にし、また付属品としてのシッパーを効果的に不要にする浸漬タイプの光ファイバープローブ用カプラーが利用可能である。この光ファイバーカプラーは、分光光度計ユニットにおける通常のサンプルセルの位置に収納することができる。このカプラーは光源とのカップリングのための適切なコネクタと、遠隔操作の浸漬型光ファイバープローブの光ファイバー戻り(リターン)ラインとを含む。分光光度計の光源からの光ビームは、浸漬型プローブの光源ラインに送り込まれ、そして得られた光学的信号は戻りラインを通って分光光度計に送り返される。
【0014】
光ファイバーは、サンプル保持セルとの接続にも使用されてきた。例えば下記特許文献1は、透過光を測定する光学システムであって、サンプル用フローセルと基準用フローセルとの両方を使用するものを開示している。光源から供給された光は、光ファイバーを通ってサンプル用フローセルに伝達され、また第二の光ファイバーを通って基準用フローセルにも伝達される。各フローセルから伝達される光の経路は、それぞれの光ファイバーを通ってフォトディテクタに向かい、光選択シャッターまたはディスクの形態の光路スイッチによって制御される。
【0015】
一連のフローセル、サンプルセル、キュベット、プローブその他の光学測定用機器を使用して、また特に光ファイバー部品を扱って作業をする場合、かかるサンプル容器に向かって、またそれから戻る光エネルギーに対する経路選択または分配を効率的かつ効果的に行うことが依然として必要であることは、当業者であれば認識される。いくつかの開発努力が、この必要性のために行われてきた。
【0016】
例えば下記特許文献2は、光ファイバーを使用するサンプル分析システムであって、複数のキュベットの各々が光源側の光ファイバーと戻りライン光ファイバーとを有するシステムを開示している。複数のキュベットのうち1つの選択されたサンプルを通過する輻射を受け取る光源側ファイバーを選択し、そして選択されたキュベットから伝達された輻射を選択された戻りラインファイバーを通って分光光度計に戻すための装置が提供される。選択装置は、8本の光ファイバー入力線(インプットライン)および対応する8本の光ファイバー出力線のそれぞれの端を支持する単一の回転可能な保持部材を含む。光ファイバー線のそれぞれの端は、保持部材の中心軸の周囲にリング状に配列されている。8本の入力ラインがリングの半分を規定しており、8本の出力ラインが他の半分を規定している。この配列により、保持部材に取り付けられた各入力ラインには、リングに沿って反対側に対向する位置に取り付けられた出力ラインの端が対応している。保持部材を回転することにより、入力および出力ラインのどのペアがそれぞれ、保持部材と間隔を開けた位置関係に配設された入力レンズおよび出力レンズと位置合わせされるかが決まる。光源側のビームは入力レンズを通り、保持部材によって支持された端で選択された入力ラインに入る。光源側のビームは次に入力ラインを通り、その入力ラインに関連付けられたサンプルキュベット内に入射する。サンプルキュベットを通ったビームは、選択された入力ラインとサンプルキュベットとに関連付けられた出力ラインを通って伝達される。この出力ラインは保持部材で支持されたその端部が終端である。この出力端は、保持部材から間隔を開けて配設された出力レンズと位置合わせされているので、透過したビームは出力レンズを通過して、分光光度計の分析手段に導かれる。
【0017】
下記特許文献3は、酵素結合免疫定量法(ELISA)を実行するための鉛直ビーム測光測定システムを開示している。このシステムは、光カップリングと、円筒形のローターおよび光ファイバー分配器とを利用する伝達メカニズムを含む。このメカニズムは光アセンブリーからの光を受ける。円筒形のローターは、その中央に位置する入力端とその周辺近傍に位置する出力端とを有する光ファイバーを含む。ローターが回転するとき、ローターのファイバーの入力端は光アセンブリーに対して静止したままとなり、出力端は円形の経路に沿って移動する。ローターのファイバーからの光出力は、それぞれ円形に配列された入力端を有する複数の光ファイバーを含む光ファイバー分配器によって受け取られる。ローターがその軸回りに割り出されるに従って、そのファイバーの出力端が分配器の各ファイバーと次々に位置合わせされる。分配器の出力側では、前記複数のファイバーはファイバーマニホルドに導かれる。マニホルドは、各ファイバーを、配列されたアッセイ部位の対応する1つと位置合わせする。アッセイ部位の下方にはディテクタボードが配設されている。ディテクタボードはアッセイ部位の配列に対応するフォトディテクタの配列を含む。選択されたファイバーからの光は対応するアッセイ部位を通過し、ディテクタボードの対応するフォトディテクタに入射する。他のシステムと同様、このシステムも複数のフォトディテクタを必要とし、入射光を各サンプルウェルから単一の検出手段に向かう特定の経路に割り当てることはできない。
【0018】
下記特許文献4も鉛直ビーム測光システムを開示しており、この場合プレートキャリアが8×12マイクロプレートを順次前進させて測定ステーションを通過させる。8個のウェルのカラムが、各々、8本の対応する分配光ファイバーの束から放出される光でスキャンされる。光源から供給された光はモノクロメータを通過してローターアセンブリーに入る。8本の分配ファイバーの各々により、ローターアセンブリーからの光を対応する鏡によって鉛直方向に向けて、対応する開口、レンズおよびマイクロプレートウェルを通り、順次対応するフォトディテクタレンズに入射させることができる。ローターアセンブリーは、ローターアセンブリーが受けた光を180°曲げ、その後で分配ファイバーの1本に送り込むことができるるように配置された2個の鏡からなる。次にローターを動かして別の分配ファイバーと位置合わせすることができる。
【0019】
下記特許文献5は、多くの異なるサンプルのサンプリングを可能にするマルチプレクサを開示している。このマルチプレクサは固定した円筒形の外部本体と、外部本体内部に配設された回転可能な光学的バレルを含む。外部本体の一方の側に一次入力ポートが配設されており、これを通って光がマルチプレクサへ導かれる。外部本体の反対側には、一次出力ポートが配設されており、これを通って光がマルチプレクサから出て、サンプルを光学的に分析する装置に伝達される。外部本体の円筒形の壁に沿って補助的な入力および出力ポートの複数のペアが配設されており、これらは長手方向の軸に関して半径方向(横切る方向)に向いている。回転可能なバレルは補助出力ポートと関連づけられた第一の鏡およびレンズと、補助入力ポートと関連づけられた第二の鏡およびレンズとを含む。ステッパーモーターを使用してバレルを回転させ、鏡およびレンズを選択された補助的な入力および出力ポートのペアに順次位置合わせする。マルチプレクサの長手方向の軸に沿って一次入力ポートを通過した光は、第一の鏡で直角に曲げられて第一のレンズを通過し、選択された補助出力ポートを通ってマルチプレクサから出る。選択された補助出力ポートからは、光が光ファイバー束を通過してサンプルに伝達され、対応する選択された補助入力ポートを通ってマルチプレクサに戻る。選択された補助入力ポートからは、光が第二のレンズを通過して第二の鏡で直角に曲げられて、長手方向の軸に沿ってマルチプレクサから出る。バレルを回転することにより、補助入力および出力ポートの他のペアが選択できる。この特許で開示された別の実施形態では、入射光はその端部に角度を付けて鏡状にされた表面を有する光学的ロッドが受ける。ロッドをステッパーモーターで回転することにより、選択された光ファイバー束の中に光を送り込む位置に、上記角度を付けて鏡状にされた表面が位置決めされる。
【0020】
下記特許文献6は、光ファイバー式バイオセンサープローブが試験管内に挿入されるシステムを開示している。プローブは光源から光のビームを受けて、試験信号を分光計のフォトディテクタに送る。時間分割マルチプレクシングおよびデマルチプレクシングが行われて、光を数個のバイオセンサーに分配し、またそれらから信号を取り込む。入力と出力との間の切り替えは、電子クロックで作動するカウンタから供給される入力制御信号によって制御される。
【0021】
下記特許文献7は、複数の化学センサーが数個のサンプル瓶と関連づけられて、光源とフォトディテクタとの間に配設されたシステムを開示している。光ファイバーを使用して輻射が各センサーに送り込まれると同時に、センサーからの放出が送られる。波長同調可能なフィルターが光学的マルチプレクサと組み合わされて、ファイバーを通して輻射を各センサーに順次送り込む。
【特許文献1】米国特許第5,715,173号明細書
【特許文献2】米国特許第5,526,451号明細書
【特許文献3】米国特許第5,112,134号明細書
【特許文献4】米国特許第6,151,111号明細書
【特許文献5】米国特許第4,989,932号明細書
【特許文献6】米国特許第5,804,453号明細書
【特許文献7】米国特許第5,580,784号明細書
【特許文献8】米国特許第6,002,477号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
技術の最新の発展を考慮すると、サンプルの試験部位に向かい、またそれから戻る光エネルギーに対する経路選択と分配とを効率的かつ効果的に行うための改良された手段が相変わらず必要とされている。従って、高価な光学機器によるスイッチング部品を必要とせずに、効率的かつ制御された仕方でいくつかの光学的入力および/または出力チャンネルの間での割り出し(インデックス)を行う、可動および/または固定の機械的部品を利用する光ファイバーチャンネル選択装置を提供できれば有利である。特に、1つの光源と1つの検出手段とだけを使用して、複数のサンプルの分析を可能にする装置を提供できれば有利であろう。かかる装置は、光の損失を最小にして光学的測定システムの広い測定範囲に適合するように設計されなければならない。本発明は上記の、また他の従来技術にまつわる問題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、光学的チャンネル選択装置は回転部材と第一の固定部材とを含む。回転部材は中心軸の回りに回転可能であり、第一の端面、対向する第二の端面、第一および第二の端面の間に配設された外側面、ならびに内部の穴を有する。内部の穴は第一の穴端部と第二の穴端部とを含む。第一の穴端部は中心軸から半径方向にオフセット距離だけずらして第一の端面に形成されており、第二の穴端部は中心軸上で第二の端面に形成されている。第一の固定部材は第一の環状部分と第一の端部とを有する。第一の環状部分は回転部材の外側面の周囲に同軸状に設けられている。第一の端部は、回転部材の第一の端面に軸方向に隣接して円周に沿って間隔を開けられた複数の第一の開口を有する。各第一の開口は半径方向にオフセット距離だけずれて第一の固定部材内に形成されている。回転部材を増分変化するように回転することにより、各第一の開口を選択的に第一の穴端部と光学的に位置合わせすることができる。
【0024】
この装置を適切なモーターおよび歯車のような伝達機構と結合して、内部の穴の第一の穴端部に対する動力による制御された回転が可能となる。
この装置の内部の穴と1つ以上の開口とに光ファイバーを収容して、装置へ、装置から、および/または装置を通っての光の効率的な伝達を実現できる。
装置は更に、外側面の周囲に同軸状に設けられた第二の固定部材を含んでもよい。第二の固定部材は、第二の端面と軸方向に隣接して第二の穴端部と位置合わせされた第二の開口を有する。
【0025】
装置は回転部材と固定部材との間に介在するベアリングを有するのが有利である。ベアリングは好適には転がり軸受けである。
本発明の別の実施形態では、光学的チャンネル選択装置は、バレルと、バレル内に設けられた内部光ファイバーと、バレルの周囲に同軸状に設けられた第一の軸受けと、第一の軸受けの周囲に同軸状に設けられた第一の軸受けスリーブとを含む。バレルは中心軸の回りに回転可能であり、第一の端面と、対向する第二の端面とを有する。内部光ファイバーは第一のファイバー端部と第二のファイバー端部とを含む。第一のファイバー端部は中心軸から半径方向にオフセット距離だけずれて第一の端面に露出している。第二のファイバー端部は中心軸と同一直線で第二の端面に露出している。第一の軸受けスリーブは円周上で互いに離間した複数の第一軸受けスリーブ開口を有する。各第一軸受けスリーブ開口は、中心軸から半径方向にオフセット距離だけずらして第一の軸受けスリーブ内に形成されており、バレルが増分変化するように回転するに従って選択的に第二のファイバー端部との光学的な位置合わせがなされる。
【0026】
第一の軸受けスリーブは、第一の軸受けの半径方向に最も外側の表面と接する第一の環状部分を含むのが有利である。それに加えて、バレルの第一の端面に隣接する第一の端部内に、第一の軸受けスリーブ開口を形成されていてもよい。この構成により、第一の軸受けスリーブの第一の端部と第一の環状部分とが協同して、バレルの第一の端面の周囲に第一の肩部を形成する。
【0027】
この装置はまた、バレルの周囲に同軸状に設けられた第二のベアリングと、第二のベアリングの周囲に同軸状に設けられた第二の軸受けスリーブとを含んでもよい。第二の軸受けスリーブは第二のファイバー端部と位置合わせされた第二の軸受けスリーブ開口を有する。
第一および第二の軸受けスリーブを支持するのに十分な軸方向の長さを有する1つのベアリングが、第一および第二のベアリングの機能を果たすこともできる。
【0028】
本発明は、光のビームまたはパルスを送るチャンネルを割り出しによって選択するために、機械的な回転光ファイバーマルチプレクサ(およびデマルチプレクサ)装置内に有利に組み込むことができる。この装置は、本発明の各実施形態により1台、2台または更に多くの回転割り出し装置を備えることができる。回転割り出し装置の1つは、1本の外に向かう共通の光源ラインからの光を複数の外に向かう光源チャンネルのうちの選択された1本に分配することにより、光のビームのデマルチプレクシングを行う。この選択は、デマルチプレクシング装置を回転して、外に向かう共通の光源ラインが選択された外に向かうチャンネルと光学的に連通可能な位置に移動することによって行われる。他の回転割り出し装置が、チャンネル選択装置内で使用される場合、これは外から戻る複数の戻りチャンネルのうち1本を選択することにより、伝達する光のビームを1本の外から戻る戻りラインにマルチプレクシングする。この選択は、マルチプレクシング装置を回転して、外から戻る共通の戻りラインが、選択された外から戻る戻りチャンネルと光学的に連通可能な位置に移動することによって行われる。マルチプレクシング装置の使用に代わる別の方法として、外から戻る各戻りラインをフォトディテクタのような信号受信手段と位置合わせして、それにより第二の回転割り出し装置および外から戻る共通の戻りラインの必要性を無くすことができる。
【0029】
かかる2台の回転装置が備えられている場合、一方の装置が回転すると他方の装置が回転するようにこれらを機械的にインターフェースして、一方の装置のあるチャンネルが選択されると他の装置の対応するチャンネルが選択されるようにすることができる。例えば、各装置が12チャンネル、従って12ヶ所の割り出し位置を有する場合、一方の装置の割り出し位置1でのチャンネルを選択することは、同時に他の装置の割り出し位置1でのチャンネルを選択することになる。
【0030】
本発明のある実施形態によれば、各回転装置は、2個の固定部品(すなわち第一のおよび第二の固定部品)、回転部品、および固定部品と回転部品との間のインターフェースを行う1個以上のベアリングとを含む。回転部品は2個の固定部品の間に介装されている。各固定部品は回転部品のそれぞれの端面に対面している。固定部品の一方(例えば第一の固定部品)はその中心軸に光学的開口部を有する。他方の固定部品(例えば第二の固定部品)はその中心軸の周囲に円形に配列された複数の光学的開口部を有する。円形に配列された光学的開口の数は、本発明の装置で選択可能な光学的チャンネルの数に対応する。回転部品は、回転部品の中心軸に位置する一端と、中心軸に関して半径方向に外側に位置する他端とを有する光ファイバーのような光案内経路を有する。回転部品の光ファイバーの中心に位置する端部は、第一の固定部品の中央に位置する光学的開口から非常に小さな空隙で隔てられている。回転部品の光ファイバーの中心からずれた端部は、同様に第二の固定部品の複数の光学的開口から非常に小さな空隙で隔てられている。これらの空隙は光の損失を最小に抑制しながら光の伝達を最適化し、それぞれの開口と固定部品および回転部品のファイバー端部とをカップリングするための補足的で高価な光学的部品を使用する必要性を回避する。第二の固定部品に関して回転部品を回転して割り出すことにより、回転部品の光ファイバーオフセット端と第二の固定部品の各開口との間の選択的なカップリングが行われる。
【0031】
前に示したように、チャンネル選択装置に含まれる2台の回転装置は、機械的なインターフェースを介して一緒に回転させることができる。このインターフェースは、少なくとも1つの歯車を回転させると両方の回転装置が回転するように配列された適切な1組の歯車によって実現できる。例えば各々の回転装置にそれ独自の歯車を備え、これらの歯車の各々を第三の歯車と噛み合わせてもよい。第三の歯車を手で回転して他の歯車を回転させることも可能であるが、第三の歯車はモーターまたは同様に自動化された装置に接続することで駆動するのが好ましい。そしてモーターを適切な電子的なハードウェアおよび/またはソフトウェアによって制御できる。各回転装置に歯車を備える代わりに、回転装置のそれぞれの構造に歯車状の歯を形成して、付加的な歯車を不要にすることもできる。いずれの場合でも、この装置の回転装置は、備えられた各チャンネルの割り出しが完了した後で逆回転する必要なく、連続的に回転することができる。例えば、12チャンネルの装置では、割り出し位置1から割り出し位置2までのサンプリング間隔は、割り出し位置12から割り出し位置1までのサンプリング間隔と同等である。
【0032】
あるいは別の構成では、外へ向かうチャンネルを選択するために使用される第一の回転装置が備えられているが、ファイバーの端が光学的検出装置の受光窓と光学的に位置合わせされている固定位置で、外から戻るチャンネルを構成する戻り光ファイバーの束を適切に集めることを重視して、外から戻るチャンネルを選択するために使用される第二の回転装置は省略されている。
【0033】
すぐ上で説明した発明は、1台またはそれ以上の光源と光源からの光エネルギーを受けるようになされた1台またはそれ以上の装置とを含む任意のシステムに組み込まれた場合に有利である。かかるシステムでは、本発明により実現される機械的マルチプレクシング/デマルチプレクシング機能は、選択された光源からの1つ以上の光信号を選択された受信装置にネットワーキングするのに有用である。本発明はまた、1つの光源と1つの検出器との間のいくつかのラインまたはチャンネル上での光学信号の経路を決めて送るための光学機器を使用する任意のシステムに有利に組み込まれたときに、利点を有する。この後者のシステムの例は、一般には、作製されたサンプル上でUVスキャンを行うように設計されたUV−可視光領域での分光光度計である。多くの場合、多数のサンプルをスキャンすることが望まれる。本発明によれば、各サンプルを試験容器、適切なセルもしくはウェル、または他の任意の適切なサンプル保持または収納手段の中に保持でき、光ファイバーの入力および出力ラインを各サンプル試験部位との、またはサンプル試験部位に関連づけられた各プローブとの動作可能な連通状態にすることができる。このようにして、各セル、プローブ、容器または試験部位がそれぞれ本発明の装置のチャンネルの1つと関連づけられ、従ってこの装置の回転装置(1つまたは複数)の対応する割り出し位置と関連づけられる。したがって各回転装置の割り出し位置1の選択は、例えば試験容器1、セル1などの選択に対応する。
【0034】
光ファイバーチャンネル選択装置は、分光装置のような光を利用したサンプル測定および/もしくは分析システムまたは機器の設計に、直接組み込むことができる。分光装置の例としては分光光度計がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
一般に「連通」(例えば第一の要素が第二の要素と「連通する」または「連通状態にある」など)という言葉は、2つ以上の要素の間の構造的、機能的、機械的、光学的、または流体的な関係を示す。従って1つの部品が第二の部品と連通しているということは、第一および第二の部品の間に別の部品が介在する、および/または動作可能に関連づけられているかまたは係合している可能性を排除するものではない。
【0036】
ここで使用する「マルチプレクサ」という言葉は、複数の独立した個別の入力ラインまたはチャンネルと、1つの出力ラインまたはチャンネル(すなわち共通経路またはバス)とを含むシステムまたは装置を示すものとして、広義に定義される。入力ラインの1つが選択されて、その値または信号が出力ラインを通って伝達、または出力ラインを通るように経路選択される。従ってマルチプレクサはデータセレクタとも呼ばれる。また「デマルチプレクサ」という言葉は、マルチプレクサの逆の機能を実施するものとして広義に定義される。すなわち、デマルチプレクサは1つの入力ラインまたはチャンネル(すなわち共通経路またはバス)と複数の出力ラインまたはチャンネルとを含むシステムまたは装置である。出力ラインの1つが選択されて、入力ラインから供給される値または信号を受け取る。従ってデマルチプレクサはデータ分配器とも呼ばれる。従って電気通信やエレクトロニクス業界に関連する人々には、これらの言葉は、その中では与えられた信号の全ての要素が同時に観測されるシステムの意味に限定することが多いが、これらの言葉がここで使用される場合、これらの言葉は、それよりも、もっと広い意味を想定している。便宜上、「マルチプレクサ」または「マルチプレクシング装置」という言葉を、ここではマルチプレクサおよび/もしくはデマルチプレクサを含む装置またはシステムを含む意味に使用する。
【0037】
ここでは「ビーム」、「パルス」および「光学的信号」という言葉は、本発明が連続的および非連続的な方法の両方での光エネルギーの伝達に適用されることを示すために、互いに置き換え可能な言葉として使用される。
ここで「開口」および「穴」という言葉は、許容可能な程度の効率と許容可能な最小の光の損失をもって、そこを光のエネルギーが通過できるあらゆる開口部を表すために、互いに置き換え可能に使用されている。かかる開口部には、これらの目的のための光ファイバーも含まれる。「開口」と「穴」という言葉のどちらがより適切かは、例えばその開口部が内部に形成された構造体の厚みによるが、いずれの場合もこれら2つの言葉は置き換え可能なものと考える。
【0038】
図1〜図4は、本発明による全体が参照符号10で示される光学信号マルチプレクシング装置を示す。マルチプレクシング装置10はベース14に取り付けられた外囲12を有する。全体が16および18でそれぞれ示される2列の開口(図3参照)が外囲12の上面12Aに形成されている。全体がそれぞれ21および23で示される対応する2列の光ファイバーケーブル用フェルールすなわち継手(図1参照)が、これらの開口16および18内に取り付けられている。個々の光ファイバー光源ラインOSL1〜OSLn(図示した実施形態ではn=8)が、それぞれの継手の列23(および開口18)を通って延設されており、個々の光ファイバー戻り(リターン)ラインORL1〜ORLnが、それぞれ他の継手の列21(および開口16)を通って延設されている。図1および3では、光源ラインおよび戻りラインの最初のペアである光源ラインOSL1と戻りラインORL1だけが図示されている。図2ではマルチプレクシング装置10に出入りする光学信号の向きを示すために、光源ラインOSL1〜OSLnと戻りラインORL1〜ORLnが大きな矢印で模式的に表されている。
【0039】
図1〜図4では、外囲12内に配設された内部部品を示すために、外囲12を部分的に取り除いてある。主要な作動内部部品は2台の回転割り出し(インデックス)装置である。1台の回転装置はここでは光源ライン選択装置と呼ばれて全体が80で示され、他方の回転装置は光学的戻りライン選択装置と呼ばれて全体が130で示されている。
光源ラインおよび戻りライン選択装置80および130は互いに隣接して取り付けられており、例えば軸方向に間隔を開けてベース14から立設された2つの取付ブロック26および28によって、互いに固定した位置関係に支持されている。フェルールつまり入力用継手31は、光源ライン選択装置80の入力端に接続されている。全体が33で示される円形に配列された継手が、光源ライン選択装置80の出力端に接続されている。全体が35で示される円形に配列された別の継手が戻りライン選択装置130の入力端に接続されている。フェルールつまり出力用継手37が戻りライン選択装置130の出力端に接続されている。共通の光源ラインすなわち入力バスIBが入力継手31に接続されており、共通の戻りラインすなわち出力バスOBが出力継手37に接続されている。上で述べたように、個々の光ファイバー光源ラインOSL1〜OSLnは各々、開口の列18の対応する継手23を通り、また個々の光ファイバー戻りラインORL1〜ORLnは各々、開口の列16に取り付けられた継手21を通っている。分かりやすくするために図1では特に示してないが、個々の光ファイバー光源ラインOSL1〜OSLnは光源ライン選択装置80の継手33の対応する1つに接続されており、また個々の光ファイバー戻りラインORL1〜ORLnは同様に戻りライン選択装置130の対応する1つの継手35に接続されている。後でより詳しく説明するように、光源ライン選択装置80は、光ファイバー光源ラインOSL1〜OSLnのうちのどれが、与えられた時間の間、入力バスIBに光学的にカップリングされるかを選択するように機能する。戻りライン選択装置130は、光ファイバー戻りラインORL1〜ORLnのうちのどれが、同じ時間の間、出力バスOBに光学的にカップリングされるかを選択するように機能する。
【0040】
図3および4に最もよく示されているように、マルチプレクシング装置10は、更に光源ライン選択装置80および戻りライン選択装置130の両方を割り出し動作で同時に回転させる手段を含む。この手段は好適には、力を伝達するメカニズムを介して回転力を伝達するようにされた動力機構の形で提供される。図1〜図4に示した実施形態では、動力機構は、シャフト42をプログラムされた増分だけ回転させるモーター40(例えばDCステッパーモーターなど)である。伝達機構は一連の歯車45、47、49の配列を含む。歯車45はシャフト42に取り付けられており、従ってシャフト42の軸の回りに回転する。歯車47は光源ライン選択装置80に取り付けられていて、光源ライン選択装置80の軸L1の回りに回転する(図4参照)。歯車49は戻りライン選択装置130に取り付けられていて、戻りライン選択装置130の軸L2の回りに回転する。歯車47および49は、歯車45と噛み合うように配列されている。そのため歯車45が時計回りに回転すると、歯車47および49は両方とも反時計回りに回転する。逆に歯車45が反時計回りに回転すると、歯車47および49は両方とも時計回りに回転する。更に歯車47および49は同じ寸法を有し、同数の歯を有する。その結果、歯車45が与えられた弧長の増分だけ回転すると、歯車47および49は両方ともそれに比例した別の弧長の増分だけ回転する。歯車47が回転する弧長は、歯車49が回転する弧長と等しい。
【0041】
当業者であればわかるように、マルチプレクシング装置10には様々な回転部品の位置を確認する手段を備えることができる。例えばモーター40のシャフト42に焦点を合わせた光学的エンコーダ(図示せず)を備えることにより、一次的な位置確認を行うことができる。位置確認の二次的モードとして、ホール効果を利用したセンサー(図示せず)を備えて、それぞれ光源ライン選択装置80および戻りライン選択装置130と関連付けられた歯車47および49の各々に取り付けた磁石(図示せず)とのインターフェースとすることができる。光源ライン選択装置80および戻りライン選択装置130の各々に対して、対応する歯車47または49に取り付けられた磁石と平行に対応するバレル85または135と共に回転する独立した円板上にセンサーを円形に配列するなど、ホール効果センサーの対応する各組を各割り出し位置に取り付けることができる。
【0042】
図5A〜7Cは、光源ライン選択装置80および戻りライン選択装置130を詳細に示す。特に図5Aを参照して、光源ライン選択装置80は、その中心軸L1の回りに回転できる回転要素すなわちバレル85を有する。バレル85は外側面85A、入力側端面85Bおよび出力側端面85Cを含む。外側面85Aの周囲に沿って歯車47が取り付けられている。歯車47は別体の部品であるか、またはバレル85の周囲に形成された歯を含む。内部の穴87がバレル85の本体を貫通して延びており、この穴87は、入力側端面85Bで開口する入力側穴端部87Aと出力側端面85Cで開口する出力側穴端部87Bとを有する。入力側穴端部87Aは軸L1と一致し、従って軸L1との入力側穴端部87Aの相対的な位置関係はバレル85が回転する間変化しない。一方、出力側穴端部87Bは出力側端面85C上で軸L1から半径Rに等しいオフセット距離だけ半径方向にずれた位置に設けられている。そのためバレル85が軸L1の回りに回転すると、出力側穴端部87Bは出力側端面85C上で軸L1に関して半径Rの円形の経路に沿って回転する。内部光ファイバー90(図6A参照)が内部の穴87を通って延設される。内部光ファイバー90は入力側穴端部87Aにある入力側ファイバー端90A(図6A参照)で終端し、また出力側穴端部87Bにある出力側ファイバー端90B(図6A参照)で終端する。従って入力側ファイバー端90Aは軸L1と一致し、出力側ファイバー端90Bは軸L1からオフセット距離(半径)Rだけ径方向にずれている。バレル85が軸L1の回りに回転しても入力側ファイバー端90Aの位置には影響しないが、出力側ファイバー端90Bの位置は軸L1に関して円周方向に変化する。
【0043】
図6Aを参照して、光源ライン選択装置80はバレル85の軸L1の回りでの回転割り出しを可能にするように設計されている。この回転運動を通して、出力側端面85C上の円周に沿って等間隔に配置された複数の割り出し位置の1つに、出力側ファイバー端90Bを選択的に位置決めすることができる。この円周は、軸L1に対して半径Rの仮想的な終点によって掃引される。光源側ファイバーの「チャンネル」、すなわちラインの選択を実施するには、複数の割り出し位置に対応する多くの固定位置の受光点を含む何らかのタイプの固定部材との関係で、バレル85を回転する。例えば図6Aでは、固定した受光部材を備えることで、本発明によるチャンネル選択が実施される。本実施形態では、固定受光部材はバレル85の出力側に配設された軸受けスリーブまたはキャップ95である。ベアリング105が、回転可能バレル85と固定した軸受けスリーブ95との間のインターフェースを与える。図6Aに示すように、ベアリング105は、内輪105A、外輪105B、および内輪105Aと外輪105Bとのそれぞれの対向する軌道と接触する一連のボール107を含む通常の設計によるローラーベアリングであってもよい。当業者なら理解するように、ボール107は通常、内輪105Aと外輪105Bとの間に配設され、各ボール107の周囲にある種のフレーム、ケージあるいはキャリッジを形成する保持エレメント(図示せず)を使用して円周方向に間隔を開けて配列される。内輪105Aはバレル85の外側面85Aに(プレスはめなどにより)強く接触しており、一方、外輪105Bは軸受けスリーブ95の環状部分95Aの少なくとも内側表面に強く接触している。この構成により、内輪105Aはバレル85と共に回転し、外輪105Bは軸受けスリーブ95との固定した位置に止まる。ベアリング105はバレル85の軸受けスリーブ95に関する安定した回転を可能にするものであれば、ボールベアリング、ニードルベアリング、またはその他のタイプのベアリングであってもよいことが理解されるであろう。すなわち、図6Aに示したボール107の代わりに回転可能なニードルエレメントを使用できる。
【0044】
軸受けスリーブ95は、その環状部分95Aに加えて、光源ライン選択装置80の軸L1に関して横向きとなったプレート部95Bを含む。プレート部95Bはバレル85の出力側端面85Cにすぐ隣接している。プレート部95Bは、軸L1に対して半径Rの円形に配列された複数の開口97(図6Aではそのうち2個だけが示されている)を含む。これらの開口97が前に述べた固定位置の受光点を構成する。開口97の実際の数は、内部光ファイバー90の出力側端部90Bを選択的に位置決めできる割り出し点の数に対応し、従ってまた、入力側ファイバー端部90Aから内部光ファイバー90を通って伝わる光学的信号を、出力側ファイバー端部90Bを介して選択的に送り込むことのできる個別の光学的チャンネルまたはラインの数に対応する。開口97の具体的な数(従って個別の光学的チャンネルおよび割り出し位置の具体的な数)は、光学的光源信号を送り込むべき試験部位の数に依存するであろう。分析サンプルを収納する試験部位の他に、これらの試験部位のうち1つまたはそれ以上に基準すなわちコントロールサンプル(例えばブランクまたは標準測定データを得るための元になるサンプル)を保持することができる。図7Bに示した例では、軸受けスリーブ95のプレート部95Bは8本の個別の光学的チャンネルまたはラインを処理するために8個の開口97の配列を含む。しかしこれについても、個別の光学的チャンネルの数によって、より多くまたは少ない開口97を備えることができることが理解されるであろう。
【0045】
図6Aに示した構成および設計におけるベアリング105および軸受けスリーブ95の具体的な設置形態により、光源ライン選択装置80の光伝動部品による光の損失はいずれも無視できる程度であることが保証される。バレル85の出力側端面85Cと軸受けスリーブ95のプレート部95Bとの間の空隙の寸法は、最適な光の透過が得られるように予め設定されている。軸受けスリーブ95の環状部95Aとプレート部95Bとは協同して、ベアリング105および出力側端面85Cの周囲の肩部を形成して、光の損失を防止する。この構成における光の損失を防止する目的を更に進めて、軸受けスリーブ95のプレート部95Bに対面するベアリング105の内輪105Aおよび外輪105Bの軸方向の縁が、バレル85の出力側端面85Cとほぼ面一であることが好ましい。
【0046】
光源ライン選択装置80とそのバレル85とがマルチプレクシング装置10の作動中に軸方向に押す力(スラスト)を受けることは予想していないが、光源ライン選択装置80に更に図6Aに示すように第二のベアリング125とそれに対応する軸受けスリーブ115を入力側に取り付けてもよい。入力側のベアリング125および軸受けスリーブ115の設計および構成は、出力側ベアリング105および軸受けスリーブ95のものと同様であってもよい。従って入力側の軸受けスリーブ115は環状部115Aとプレート部115Bとを含む。ただし大きな違いとして、入力側の軸受けスリーブ115はそのプレート部115Bに形成された開口117を1つしか有していない(図7Aも参照)。この単独の開口117は軸L1と一致する位置にあり、内部光ファイバー90の入力側ファイバー端90Aとすぐに隣接している。入力側のベアリング125と軸受けスリーブ115とを含むことにより、バレル85の割り出し運動および光源ライン選択装置80の全体の動作に安定性を与え、更に内部光ファイバー90の入力バスIBへの光学的カップリングを可能にすることができる(図1参照)。入力側ベアリング125は、内輪125Aと外輪125Bとの間に配設されたボール127を備えていてもよい。
【0047】
図5Bを参照して、戻りライン選択装置130は光源ライン選択装置80と同様の特徴を有しているが、ただし図1に示されたように、戻りライン選択装置130の入力側および出力側の軸方向の位置は、光源ライン選択装置80の場合と反対になっている。具体的には、戻りライン選択装置130はその中心軸L2の回りに回転可能な回転要素すなわちバレル135を含む。バレル135は、外側面135Aと、入力側端面135Bと、出力側端面135Cとを含む。外側面135Aの外周上の周囲には、歯車49が取り付けられている。歯車49は別体の部品であるか、またはバレル135の周囲に形成された歯を含む。バレル135本体を貫通する内部の穴137は、入力側端面135Bに開口する入力側穴端部137Aと出力側端面135Cに開口する出力側穴端部137Bとを有する。入力側穴端部137Aは、入力側端面135Bにおいて、軸L2から半径Rに等しい半径方向のオフセット距離だけずれた位置に設けられている。従ってバレル135を軸L2の回りに回転させると、入力側穴端部137Aは入力側端面135B上で軸L2に対して半径Rの円形経路に沿って回転する。他方、出力側穴端部137Bは軸L2と一致し、軸L2に対するその相対位置はバレル135が回転する間変化しない。内部の穴137を通って内部光ファイバー140が延設されている。内部光ファイバー140(図6B参照)は入力側穴端部137Aにある入力側ファイバー端140Aで終端し、また出力側穴端部137Bにある出力側ファイバー端140Bで終端する。従って入力側ファイバー端140Aは軸L2から半径方向のオフセット距離(半径)Rだけずれており、出力側ファイバー端140Bは軸L2と一致している。バレル135が軸L2の回りに回転しても、出力側ファイバー端140Bの位置に影響しないが、入力側ファイバー端140Aの位置は軸L2に関して円周方向に変化する。
【0048】
図6Bを参照して、戻りライン選択装置130は光源ライン選択装置80と類似の仕方で軸L2の回りでのバレル135の回転割り出しを可能にする。戻りライン選択装置130によって起こされる回転運動を通して、その入力側ファイバー端140Aは入力側端面135B上に半径Rで定義された円周に沿って等間隔に配置された複数の割り出し位置の1つに選択的に位置決めされる。戻りファイバー「チャンネル」またはラインの選択を実施するために、戻りライン選択装置130はバレル135の出力側に配設された固定軸受けスリーブ145を含む。光源ファイバー選択装置80の場合と同様に、バレル135は軸受けスリーブ145に関して回転する。ベアリング155が、回転可能なバレル135と固定した軸受けスリーブ145との間のインターフェースを与える。ベアリング155は内輪155A、外輪155B、および一連のボール157またはニードルを含む通常の設計によるローラーベアリングであってもよい。内輪155Aはバレル135と共に回転し、外輪155Bは固定した軸受けスリーブ145と共に固定した位置に止まる。
【0049】
戻りライン選択装置130の軸受けスリーブ145は、ベアリング155の周囲に同軸状に配設された環状部分145Aと、戻りライン選択装置130の軸L2に関して横方向に向いたプレート部145Bとを含む。プレート部145Bは、最適な光の透過を実現するような寸法とされた空隙を間に挟んで、バレル135の入力側端面135Bにすぐ隣接している。軸受けスリーブ145の環状部145Aとプレート部145Bとは協同して、ベアリング155と入力側端面135Bとの周囲の肩部を形成している。ベアリング155と軸受けスリーブ145とのこの構成により、戻りライン選択装置130の光伝動部品による光の損失が無視できるレベルであることが保証される。この構成における光の損失を防止する目的を更に進めて、軸受けスリーブ145のプレート部145Bに対面するベアリング155の内輪155Aおよび外輪155Bの軸方向の縁が、バレル135の入力側端面135Bとほぼ面一であることが好ましい。
【0050】
プレート部145Bは、軸L2に対して半径Rの円形に配列された複数の開口147(図6Bではそのうち2個だけが示してある)を含む。これらの開口147が、個々の光ファイバー戻りラインORL1〜ORLnと内部光ファイバー140の入力側ファイバー端140Aとの間の固定した位置での光学的カップリング点を構成する。開口147の実際の数は、入力側ファイバー端140Aを選択的に位置決めできる割り出し点の数に対応し、従ってまた入力側ファイバー端140A内に光信号を選択的に送り込むことのできる個別の光学的チャンネルまたはラインの数に対応する。開口147の具体的な数(従って個別の光学的チャンネルおよび割り出し位置の具体的な数)は、そこから戻りライン光信号を受け取るべき試験部位の数に依存するであろう。
【0051】
更にまた図6Bに示されているように、戻りライン選択装置130は、出力側に取り付けられた第二のベアリング175と対応する軸受けスリーブ165とを更に含んでもよい。出力側ベアリング175および軸受けスリーブ165の設計および配列は、入力側ベアリング105および軸受けスリーブ95の場合と同様であってもよい。従って出力側軸受けスリーブ165は環状部165Aとプレート部165Bとを含む。しかし出力側軸受けスリーブ165は、そのプレート部165B内に形成された穴167を1つしか有していない。この単独の開口167は軸L2と一致する位置にあり、内部光ファイバー140の出力側ファイバー端140Bにすぐ隣接し、そして反対側では出力バスOBに隣接している(図1参照)。出力側ベアリング175は、内輪175Aと外輪175Bとの間に配設されたボール177を備えていてもよい。
【0052】
図7Aは光源ライン選択装置80の入力側軸受けスリーブ115のプレート部115Bおよび単独の開口117を示す。図7Bは光源ライン選択装置80の出力側軸受けスリーブ95のプレート部95Bおよび複数の開口97を示す。図7Cは光源ライン選択装置80のバレル85に組み付けられた入力側軸受けスリーブ115、出力側軸受けスリーブ95およびベアリング105,125を示す。図7A〜7Cは同様に戻りライン選択装置130の構造を表すが、ただし入力および出力側が反対になっていることが理解されるであろう。すなわち、図7Aは戻りライン選択装置130の出力側軸受けスリーブ165のプレート部165Bおよび単独の開口167を示し、図7Bは戻りライン選択装置130の入力側軸受けスリーブ145のプレート部145Bおよび複数の開口147を示すことができる。同様に、図7Cは戻りライン選択装置130のバレル135に組み付けられた入力側軸受けスリーブ145、出力側軸受けスリーブ165およびベアリング155,175を示すと考えることもできる。
【0053】
本発明の別の形態において、図8はマルチプレクサ装置10がその中で有利に作動できる、全体が200で示される分析試験およびデータ収集システムの一般的な特徴を示す。マルチプレクサ装置10に加えて、分析試験システム200は全体が210で示される光源と、全体が220で示されるデータ符号化(エンコード)または分析信号発生システム(構成)、および全体が230で示される光学的信号受信装置またはシステムを備えている。
【0054】
光源210は任意のタイプの適切な連続的または非連続的な光源であってもよい。例としては、重水素アークランプ、キセノンアークランプ、石英ハロゲンフィラメントランプ、およびタングステンフィラメントランプがあるが、これらに限定されない。1つの具体的な例として、キセノンフラッシュランプのようなパルス作動する光源を使用して、非常に短い強力な光のバーストを放射することができる。このタイプのランプは、個別のデータを取り込むときにだけ点灯することができ、各読み取りについてサンプルを全波長範囲に対して露光して光に敏感なサンプルを劣化させる可能性のあるダイオードアレイとは異なる。本願と同一の譲受人に譲渡されている上記特許文献8で説明されているように、キセノンフラッシュランプは非連続作動で光を放出するので、暗信号の測定中に光のビームを遮るチョッパーのような機械的手段を必要としない。キセノンフラッシュランプの1つの具体的な例として、1秒に80データポイントを取り込むことのできるものが、カリフォルニア州パロアルトのヴァリアンインコーポレーテッドが販売するCARY(商標)シリーズの分光光度計に採用されている。
【0055】
データ符号化または分析信号発生システム220は、サンプルに光を透過させたときおよびサンプルに光を照射したときにそのサンプルに関する情報を符号化するために、1つ以上のサンプルを保持し、かつ光源から供給された光のエネルギーに対してサンプルを露光するようになされた任意の装置またはシステムを含んでもよい。例えばデータ符号化システム220は、サンプル測定および/または保持部位のような試験部位F1〜Fnの配列を含む。これらの試験部位F1〜Fnは、固体サンプルホルダー、サンプル収納器またはセル、試験容器、フローセル、タンク、パイプ、石英製の微量力価(タイター)プレートまたは光を透過できる同様のマイクロセルのウェル、および特別に設計された光ファイバープローブなど、様々なサンプル測定/収納部品によって定義することができる。
【0056】
信号受信装置またはシステム230は、データ符号化システム220からの光学的信号を受信および処理するようになされた部品を有する任意のタイプの機器またはシステムでありうる。分析すべきサンプル物質の特定の特性によって、例えば試験容器から取り出されるサンプルを分析するために使用される装置または機器のタイプが決められる。更に、信号受信装置230を構成する様々な部品は、測定および検出すべき分析信号のタイプに依存するであろう。例えば欲しい分析信号が各試験部位F1〜Fnで検体によって吸収される光の輻射の強度であれば、吸光度の値を計算して標的物質(すなわち対象となる検体)の濃度を求めることができる。この目的のために、図8の信号受信装置230はUV−可視光(vis)の分光光度計を含んでいてもよい。しかし本発明は分光光度計のいかなる特定の設計にも限定されるものではない。分光光度計の可能な構成には、単独の検出器または複数チャンネルの検出器を利用するもの、単一ビームまたはダブルビーム測定を行うようになされたもの、水平ビームまたは鉛直ビーム測定を行うようになされたもの、およびサンプルの固定波長または全吸収スペクトルでの測定ができるものが含まれる。更に、本発明の目的のためには、「信号受信装置またはシステム」および「サンプル分析システム」という言葉は、ここで述べるシステムおよび方法と適合性のあるいかなる分析装置をも網羅するものとして使われている。かかる装置にはHPLC、分光計、測光器、分光光度計、分光写真機などが含まれるが、これらに限定されない。分光光度計の場合には、信号受信装置230は、典型的には光源210、波長セレクタまたは同様の装置、光電検出器またはトランスデューサのような輻射検出器、信号処理装置および読み出し装置を含む。
【0057】
図8に示した分析試験およびデータ収集システム200の模式的な表現を参照して、光源210は入力バスIBを介してマルチプレクシング装置10の光源ライン選択装置80と光学的に連通しており、光信号受信装置230は出力バスOBを介して戻りライン選択装置130と光学的に連通している。本実施形態では、データ符号化システム220は、1組のサンプル測定部品または試験部位F1〜Fn(例えばフローセル、サンプルセル、試験容器など)を備え、その各々が分析すべきサンプルのための標的を含むかまたは供給するようになされたものである。光源ライン選択装置80は、1組の光源ラインOSL1〜OSLnを介してそれぞれサンプル測定部品F1〜Fnと光学的に連通しており、また戻りライン選択装置130は1組の光学的戻りラインORL1〜ORLnを介してそれぞれサンプル測定部品F1〜Fnと光学的に連通している。分かりやすくするために、光源ラインOSL1〜OSLn、サンプル測定部品F1〜Fn、および光学的戻りラインORL1〜ORLnのそれぞれ4つだけを図8に示してある。この構成により、各々のサンプル測定部品F1〜Fnは、光源から対応する光源ラインOSL1〜OSLnを通って初期強度P0の入射光の入力を受け、その後対応する光学的戻りラインOSL1〜OSLnを通って強度Pの光出力を処理および読み出しのために光信号受信装置に送信することができる。前に説明したように、光源および戻りライン選択装置80および130のそれぞれの内部光ファイバー90および140は互いに同期させて回転割り出しすることができる。その結果、例えば光源ライン選択装置80の内部光ファイバー90からの光源側信号をサンプル測定部品F1に送るために光源ラインOSL1を選択すると、同じサンプル測定部品F1から伝達された減衰した信号を光学的戻りライン選択装置130の内部光ファイバー140に送るために、光学的戻りラインORL1が同時に選択される。
【0058】
再度図3を参照して、図8について説明したシステムの主要点のいくつかがマルチプレクシング装置10と連通状態にあることが模式的に示されている。光源210は入力バスIBと光学的に連通しており、出力バスOBは信号受信装置230と光学的に連通している。サンプル測定部品F1は光源ラインOSL1および光学的戻りラインORL1と光学的に連通している。更にサンプル測定部品F1は液相を含むサンプルの保持セルの形態として図示されており、従って媒体サンプルラインSL1および媒体戻りラインRL1と流体的に連通しているように図示されている。上で説明したように、光源ラインOSL1は光源ライン選択装置80の継手33の1つに接続されており、光学的戻りラインORL1は戻りライン選択装置130の継手35の1つに接続されている。同様に、他のサンプル測定部品F2〜Fnをマルチプレクシング装置10や他の対応する媒体サンプルラインおよび媒体戻りライン(図示せず)とインターフェースすることができることが理解されるであろう。
【0059】
サンプルセル(例えば図3に示すサンプルセルまたはフローセルF1)を有するサンプル分析システム200の動作を、以下説明する。媒体の1つ以上のサンプルが、選択された試験容器(これは例えば溶解試験装置または他の適切な媒体調製/試験装置内に搭載することができる)から媒体サンプルライン(例えば図3のサンプルラインSL1)を通って対応するサンプルセルF1〜Fnに移送される。光学的測定が行われた後で、もしもシステムがそのように構成されているならば、サンプルを媒体戻りライン(例えば図3の戻りラインRL1)を通って試験容器に戻すことができる。試験を行う前に、必要に応じて較正を行うことができる。
【0060】
マルチプレクシング装置10は図1〜図7Cを参照して説明したように作動させられる。好適には、マルチプレクシング装置10の運動は、コンピュータのような適切な電子処理装置(図示せず)の制御の下で、サンプル分析システム200の他の要素の動作と協調が取られる。従ってマルチプレクシング装置10の光源ライン選択装置80および戻りライン選択装置130は初期にはそれぞれの原位置(ホームポジション)に設定される。原位置では、光ファイバー光源ラインOSL1〜OSLnの束の1つが光学的入力バスIBと光学的なカップリング関係(例えば「割り出し位置1」)に置かれ、光ファイバー戻りラインORL1〜ORLnの束のうち対応する1つが光学的出力バスOBと光学的なカップリング関係(例えば対応する「割り出し位置1」)に置かれる。結果として、マルチプレクシング装置10は光源および戻りライン選択装置80および130の選択された割り出し位置に対応して、サンプル測定部品F1〜Fnを選択する。
【0061】
選択されたサンプル測定部品内にあるサンプルの測定値を取るには、光源210が強度P0の光のビームを入力バスIBに送る。光源ライン選択装置80は、光が光源ラインOSL1〜OSLnの束の選択された1つに通されるように位置決めされる。この光源ビーム(またはパルス)は選択された光源ラインOSL1〜OSLnに対応する特定のサンプル測定部品F1〜Fn内に伝送され、戻りラインORL1〜ORLnに戻る。光源210と選択されたサンプル測定部品の中にあるサンプルとは、両者合わせて信号発生源と考えることができ、光のビームがサンプルを通過するときに、光源210とサンプルとが結びついて強度Pの減衰した光のビームの形で分析信号を発生する。分析信号は戻りラインORL1〜ORLnのうちの選択された1つを通ってマルチプレクシング装置10に戻され、そして戻りライン選択装置130の位置のために、出力バスOBに経路選択される。出力バスOBは分析信号を検出および処理のために信号受信装置230に伝達し、そして必要ならば較正カーブを使用して、測定された吸光度から得られた値を元にして測定されたサンプルの濃度が求められる。
【0062】
信号受信装置230内では、通常はその後の処理のために、波長セレクタが電磁波のスペクトルの制限された領域を分離するフィルターまたはモノクロメータの形で備えられている。検出器は分析信号の輻射エネルギーを、信号処理装置での使用に適した電気信号に変換する。信号処理装置は、信号受信装置230の動作および読み出し信号への変換のための必要に合わせて、変換された信号を様々な形で変形するように適合することができる。信号処理装置が実行する機能には、増幅(すなわち信号に1よりも大きな定数をかけること)、対数スケールでの増幅、比例配分、減衰(すなわち信号に1よりも小さい定数をかけること)、積分、微分、加算、減算、指数関数的増加、ACへの変換、DCへの整流、変換された信号の標準信号源からの信号との比較、および/または電気信号の電流から電圧への変換(もしくはその反対の変換)が含まれ得る。最後に、読み出し装置が変換され処理された信号を表示するが、これは可動コイルメータ、ストリップチャート記録計、ディジタル電圧計またはCRT端末のようなディジタル表示装置、プリンタ、その他類似の装置であってもよい。
【0063】
前に示したように、遠隔のフローセルは信号受信装置230によって処理できる情報を符号化するための手段の1つのタイプに過ぎない。サンプルの測定または符号化用の部品の別の例として、検体を含む媒体を保持する容器に直接挿入するように設計された光ファイバープローブまたは浸漬プローブがある。ある種の用途では、媒体容器からサンプルを取り除き(そしてまた好適にはその後で戻し)、そして分光分析または他のサンプル分析装置のサンプルセルにサンプルを移すために、浸漬プローブが代用として使われてきた。
【0064】
上に述べたフローセル、浸漬プローブなどのサンプル収容手段の使用に加えて、本発明に従って分析データを作成するために他の手段および付属品を使用することができる。例えば吸収プローブの代わりに、反射率(リフレクタンス)プローブを使用してサンプルの反射率の測定を行うことができる。当業者であれば理解できるように、典型的な反射率プローブは2本の光ファイバー束を含む。1本の束は中央のコアを形成して光をサンプルに送る。他の束は中央のコアを取り囲み、サンプルから反射された光を集めてそれをサンプル分析機器と組み合わされた検出器に戻す。あるいはまた、透過プローブを使用して固体サンプルを測定できるようにしてもよい。典型的な透過プローブは2本の単線光ファイバーを含む。1本のファイバーは光をサンプルに送り、他のファイバーはサンプルを透過した光を集めてそれをサンプル分析機器に戻す。透過プローブは好適にはサンプルを測定位置に置くようになされたサンプルホルダーと組み合わせて使用される。サンプル(例えば織布、サングラスなど)の性質によってサンプルホルダーの設計が決まる。透過率データはまた、非選択的な散乱反射面である内部表面を有する中空の球体からなる積分球を使用して、固体サンプルから得ることもできる。積分球は、サンプルの散乱効果によって生じる光の損失のために他の方法では不十分である場合に、混濁した、半透明の、または不透明の耐火材料の透過率をその場で測定するために使用されることが多い。
【0065】
ここで図1〜図3にもどり、入力バスIBを光源210に直接結合し、出力バスOBを信号受信装置230に直接結合することができるが、これは本発明の必要要件ではない。本発明は、上に示したような様々な付属部品および適合品を使用でき、またマルチプレクシング装置10の具体的な用途に応じてマルチプレクシング装置10を既存の分析システムに組み込むことができることを想定している。例えば図1〜図3において、マルチプレクシング装置10には光のビームを光ファイバーケーブル内に導入したり、またそこから取り出すための、全体が425で示される光ファイバーカップリングユニットを更に含んでもよい。光ファイバーカップリング装置425は外囲431、外囲431の1つ以上の壁に取り付けられた継手433および435、外囲431内に配設されて所望の角度で配置された1つ以上の内部光反射鏡437および439(図3参照)、外囲431の壁に形成された1つ以上の開口441および443(図1および図2参照)、ならびに必要に応じて様々なタイプのレンズ(図示せず)を備えている。入力バスIBの入力側端部は継手433に接続されており、出力バスOBの出力側端部は継手435に接続されている。図3に最も良く図示されているように、光源210からの光源信号は開口441を通って外囲431に入り(図1参照)、内部の鏡437で反射され、入力バスIB内に向けられる。出力バスOBからの戻りライン信号は内部の鏡439で反射され、開口443を通って信号受信装置230に向けられる(図1参照)。
【0066】
ここで図9、図10Aおよび図10Bを参照して、本発明の別の実施形態による、全体が600で示される別の分析試験およびデータ収集システムを示す。場合によっては、本発明のマルチプレクサまたはデマルチプレクサ機能を外すことが望まれるかも知れない。そこで本実施形態は、戻りライン選択装置130が取り除かれた全体が10’で示される別のマルチプレクシング装置を提供する。光源ライン選択装置80は上で説明したように機能する。この実施形態では、マルチプレクシング装置10’は出力バス取付アセンブリー630を有する。出力バス取付アセンブリー630は、レンズ634がその中に好適に配設された出力開口632を含む。レンズ634は円筒形のコラー636またはその他の適切な手段の終端に配置して、光学的戻りラインORL1〜ORLnを固定位置の束の中に保持し集めることができる。この実施形態では、例えば開口の列16または18(図2および3参照)から集められた光学的戻りラインORL1〜ORLnの束は実効的に分析試験システム600のマルチチャンネル出力バスであると考えることができる。光学的戻りラインORL1〜ORLnの束はまた、基準信号源に接続された特別な試験ラインを含んでもよい。例えば図10Aでは、全部で9本のラインが図示されている。別の例では、16チャンネルのシステムが17本のラインを有する(この場合も1本の試験ラインが含まれることを前提する)。出力開口632は、サンプル検出器SDもしくは同様の分析装置またはその受光部品の受光窓と光学的に位置合わせされている。
【0067】
使用するときは、上で述べた仕方で光源210からのサンプルビームが入力バスIBを通って光源ライン選択装置80の入力側に送り込まれる。やはり上で述べたように、光源ライン選択装置80がモーター40、シャフト42、歯車45および47、ならびに他の関連部品(図2および図3参照)によって割り出され、光源ラインOSL1〜OSLnの1つを選択する。信号は光源ライン選択装置80から、選択された光源ラインOSL1〜OSLnと開口列16および18の一方の関連する継手とを経て、符号化システム220の選択されたサンプル容器または他のタイプの試験部品F1〜Fnに送られる。伝達された光ビームPは、次に開口列16および18の一方を介して、光学的戻りラインORL1〜ORLnの対応する1つを通って出力バス取付アセンブリー630に戻され、ここで全ての光学的戻りラインORL1〜ORLnが出力開口632で束にまとめられる。選択された光学的戻りラインORL1〜ORLnから出てくる伝達された光ビームPは、サンプル検出器SDの窓の中に送り込まれる。この窓は、出力バス取付アセンブリー630でバンドルされた光学的戻りラインORL1〜ORLnの任意の端部からの光を受けるのに十分な大きさを有する。例として、窓は約1cm2の面積を有してもよく、光学的戻りラインORL1〜ORLnのファイバー端部は、窓から約0.5cm離れた位置に配置することができる。
【0068】
光源ライン選択装置80または戻りライン選択装置130を省略し、またサンプル分析システム600の他の機能を含んでも含まなくてもよいマルチプレクシング装置10’は、図1〜図8を参照して説明した本発明の様々なシステムの中に、マルチプレクシング装置10の代わりに組み込むことができる。
かくして、これまでに述べたところから分かるように、本発明は光学信号と信号経路とを光の損失を最小にしながら効率的かつ制御された仕方で選択し、選択した経路に送り込める装置を提供する。サンプル測定/分析システムと組み合わせて使用すると、ここに述べた実施形態により分析サンプルの高品位分析および定量分析を、低減した労力と費用と時間とで行うことができる。
【0069】
ここで説明した実施形態は、1つよりも多くのマルチプレクシング装置10または10’、光源210、信号受信装置230もしくはSD、および/またはサンプル測定部品の組Fを使用するように、過大な努力を要せずに変更できることが分かるであろう。
更にまた、本発明の様々な詳細な内容を本発明の範囲から逸脱することなく変更できることも理解されるであろう。更に、上の説明は例示を目的としたものであり制限的なものではなく、本発明は特許請求の範囲によって定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明により提供される光ファイバーチャンネル選択装置の斜視図である。
【図2】図1に示した装置の側面図である。
【図3】図1に示した装置の上から見た平面図である。
【図4】図1に示した装置の背面図であり、本発明の1つの実施形態により提供される回転装置の接続状態を示す。
【図5A】本発明により1つの入力からの光ビームまたは信号を1つ以上の光ファイバーチャンネルに分配するための回転装置の横断面図である。
【図5B】本発明により1つ以上の光ファイバーチャンネルからの光ビームまたは信号を1つの出力に分配するための回転装置の横断面図である。
【図6A】図1〜図4に示した装置に備えられる光学的入力選択装置であって、図5Aに示した回転装置を含むものの横断面図である。
【図6B】図1〜図4に示した装置に備えられる光学的出力選択装置であって、図5Bに示した回転装置を含むものの横断面図である。
【図7A】図6Aに示した光学的入力選択装置の入力側、または図6Bに示した光学的出力選択装置の出力側の平面図である。
【図7B】図6Aに示した光学的入力選択装置の出力側、または図6Bに示した光学的出力選択装置の入力側の平面図である。
【図7C】図6Aに示した光学的入力選択装置または図6Bに示した光学的出力選択装置の斜視図である。
【図8】分析試験およびデータ収集システムの模式図であって、本発明により図1〜図7Cに示された装置またはその部分が組み込まれたものを示す。
【図9】別の分析試験およびデータ収集システムの模式図であって、図1〜図7Cに示された装置またはその部分が組み込まれたものを示す。
【図10A】図9に示したシステムに備えられた光ファイバー束取付部品の正面図である。
【図10B】図10Aに示した取付部品の横から見た断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)中心軸の回りに回転可能な回転部材であって、第一の端面と、対向する第二の端面と、前記第一および第二の端面の間にある外側面と、第一の穴端部および第二の穴端部を含む内部の穴とを有し、前記第一の穴端部は前記中心軸から半径方向にオフセット距離だけずらして前記第一の端面に形成されており、前記第二の穴端部は前記中心軸上で前記第二の端面に形成されている回転部材と、
(b)第一の環状部分と第一の端部とを有する第一の固定部材であって、前記第一の環状部分は前記回転部材の前記外側面の周囲に同軸状に設けられており、前記第一の端部は、前記回転部材の前記第一の端面に軸方向に隣接して円周に沿って間隔を開けられた複数の第一の開口を有し、各第一の開口は半径方向にオフセット距離を開けて前記第一の固定部材内に形成されており、前記回転部材を増分変化するように回転することにより、各第一の開口を選択的に前記第一の穴端部と光学的に位置合わせすることができるようになされた第一の固定部材と、
を含む光学的チャンネル選択装置。
【請求項2】
前記外側面の周囲に設けられた複数の歯を有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記歯が歯車と噛み合っている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記回転部材に接続された歯車を有する、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記内部の穴の中に配設された内部光ファイバーを有し、前記内部光ファイバーが前記第一の穴端部に設けられた第一のファイバー端部と前記第二の穴端部に設けられた第二のファイバー端部とを含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
各第一の開口が光ファイバーを収容している、請求項5記載の装置。
【請求項7】
各第一の開口が光ファイバーを収容している、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記回転部材と前記第一の環状部との間に同軸状に設けられた第一のベアリングを有する、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記外側面の周囲に同軸状に設けられた第二の固定部材を有し、前記第二の固定部材が前記第二の穴端部と位置合わせされて前記第二の端面と軸方向に隣接する第二の開口を有する、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記第二の開口が光ファイバーを収容している、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記回転部材と前記第一の環状部との間に同軸状に設けられた第一のベアリングを有する、請求項9記載の装置。
【請求項12】
前記回転部材と前記第二の固定部材との間に同軸状に設けられた第二のベアリングを有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
(a)中心軸の回りに回転でき、第一の端面と、対向する第二の端面とを有するバレルと、
(b)前記バレル内部に設けられ、第一のファイバー端部と第二のファイバー端部とを含む内部光ファイバーであって、前記第一のファイバー端部は前記中心軸から半径方向にオフセット距離だけずれて前記第一の端面に露出しており、前記第二のファイバー端部は前記中心軸と同一直線で前記第二の端面に露出している内部ファイバーと、
(c)前記バレルの周囲に同軸状に設けられた第一のベアリングと、
(d)前記第一のベアリングの周囲に同軸状に設けられ、円周上で互いに離間した複数の第一軸受けスリーブ開口を有する第一の軸受けスリーブであって、各第一軸受けスリーブ開口は、半径方向にオフセット距離だけずらして前記第一の軸受けスリーブ内に形成されており、各第一軸受けスリーブ開口は前記バレルが増分変化するように回転するに従って選択的に前記第二のファイバー端部と光学的に位置合わせされるようになされた第一の軸受けスリーブと、
を含む光学的チャンネル選択装置。
【請求項14】
前記バレルの外側面の周囲に設けられた複数の歯を有する、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記歯が歯車と噛み合っている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記バレルに接続された歯車を有する、請求項13記載の装置。
【請求項17】
各第一の軸受けスリーブ開口が光ファイバーを収容している、請求項13記載の装置。
【請求項18】
前記第一の軸受けスリーブが、前記第一のベアリングの半径方向に最も外側の表面に接触している第一の環状部分を含む、請求項13記載の装置。
【請求項19】
前記第一の軸受けスリーブが前記第一の端面に隣接する第一の端部を含み、前記第一の軸受けスリーブ開口が前記第一の端部内に形成されており、前記第一の端部と前記第一の環状部分とが協同して前記第一の端面および前記第一のベアリングの周囲に、閉じた第一の肩部を形成している、請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記バレルの周囲に同軸状に設けられた第二のベアリングと、前記第二のベアリングの周囲に同軸状に設けられた第二の軸受けスリーブとを含み、前記第二の軸受けスリーブは前記第二のファイバー端部と位置合わせされた第二の軸受けスリーブ開口を有する、請求項13記載の装置。
【請求項21】
前記第二の軸受けスリーブ開口が光ファイバーを収容している、請求項20記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2006−504074(P2006−504074A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−584785(P2003−584785)
【出願日】平成14年9月3日(2002.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2002/027872
【国際公開番号】WO2003/087901
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】