説明

光ファイバ内蔵型絶縁スペーサ

【課題】変流器に使用する光ファイバを内蔵させて容易にしかも経済的に製作でき、微小空隙で電界集中によるコロナの発生がなくて、変流器の特性に影響を与えることがない光ファイバ内蔵型絶縁スペーサを提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂等の絶縁材料をモールドして一体に成形する絶縁成形部材3内に、少なくとも一つの通電導体2と、これを取り囲むように配置する接地シールド及びファラデー効果材の光ファイバ14とを、埋め込んで内蔵させた絶縁スペーサ1を構成する。接地シールドには、金属線や帯状金属材料や複数の小孔を設けた金属円筒材製の円筒状シールド部材15を用いており、この円筒状シールド部材15の内部の所定位置に、光変流器の部品として使用する光ファイバ14を配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバ内蔵型絶縁スペーサに係り、特に電流測定用光変流器に使用する光ファイバを内蔵した光ファイバ内蔵型絶縁スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置(以下、「GIS」と略称する)は、高電圧の通電導体や各種の機器を配置する円筒状容器の複数個を連結するとき、エポキシ樹脂等の絶縁材料にて生成した円板状の絶縁スペーサを介在させて密封区画し、区画された各円筒状容器内に絶縁性ガスを充填して構成している。
【0003】
円筒状容器内の通電導体に流れる電流を測定するためにGISでは、巻線形変流器やファラデー効果を有する光ファイバを用いた光変流器が使用される。特に、GISは小型で軽量化することが望まれるため、変流器も巻線形変流器に比べて大幅に小型にできる光変流器の使用が検討されている。GIS用の変流器としては、例えば特許文献1に記載されているような光変流器が知られている。
【0004】
特許文献1の光変流器は、接続用のフランジ部を有する円筒形タンクの複数個を連結する際に、三相分の通電導体を有する絶縁材料製の三相絶縁スペーサが、フランジ部に狭着されて配設されている。この三相絶縁スペーサには、光路となるファラデー効果材の送光用光ファイバ及び受光用光ファイバが各相の通電導体をそれぞれ取り囲むように埋設されている。
【0005】
送光用光ファイバには光源や偏光子等を含む送光側部品がタンク外に配置され、また受光用光ファイバには検光子や測定器等の受光側(検出器側)部品がタンク外に配置されて光変流器を構成している。そして、光変流器では、送光側から光路内に直線偏波光を通過させ、通電導体を流れる電流の磁界作用の大きさに応じて回転する直線偏波光のファラデー回転角を、検出器側で検出して測定して、通電導体の電流の大きさを検出している。
【0006】
一方、ガス絶縁電気機器に用いる零相変流器として、特許文献2に記載されたものがある。この零相変流器は、三相分の通電導体を有する三相絶縁スペーサの内部に、零相電流検出部となる三相の通電導体を一括して周回するようにファラデー効果材の光ファイバを埋め込み、この光ファイバの各端部に送光側部品と受光側部品を配置し、光ファイバを通って出力される偏光信号から零相電流を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−142265号公報
【特許文献2】特開平8−178987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献1の光変流器では、光ファイバが各相の通電導体を取り囲むように埋設した絶縁スペーサを用いており、また特許文献2の零相変流器では、三相の通電導体を一括して取り囲むように設ける光ファイバを埋め込んだ絶縁スペーサを用いている。これらの絶縁スペーサは、一般にはエポキシ樹脂等の絶縁材料を使用して製作される。
【0009】
通常、絶縁材料製の絶縁スペーサは、通電導体を埋設してモールド成形するとき、一般にボイドと称される微小空隙が生じてしまうことがある。この微小空隙は、通電導体に通電した時に加わる電界によってコロナが発生し、電気的な悪影響を与える恐れがある。更に、絶縁スペーサを円筒形タンクのフランジ部に固定するため、複数本の貫通ボルトを用いているが、この貫通ボルトが存在するため絶縁スペーサの外周近傍の電界が乱れるという問題がある。この種の悪影響を防止するため、絶縁スペーサは通電導体の全体を取り囲む接地シールドを、一括して付加してモールド成形し、接地シールドで微小空隙による電気的な悪影響を防ぐことが行われている。
【0010】
特許文献1及び2の絶縁スペーサにおいても、接地シールドを付加して製作することもできるが、通電導体と光ファイバ更には接地シールドとを同時に、一体にモールド成形する場合には微小空隙による電気的な悪影響を十分に解消できず、容易に製作できなくなる問題がある。
【0011】
本発明の目的は、変流器に使用する光ファイバを内蔵させて容易にしかも経済的に製作でき、微小空隙で電界集中によるコロナの発生がなくて、変流器の特性に影響を与えることのない光ファイバ内蔵型絶縁スペーサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、絶縁材料にてモールドして一体に成形する絶縁成形部材内に、少なくとも一つの通電導体と、前記通電導体を取り囲むように配置する接地シールド及びファラデー効果材の光ファイバとを埋め込んで光ファイバ内蔵型絶縁スペーサを構成する際に、前記接地シールドには円筒状シールド部材を用い、前記円筒状シールド部材の内部の所定位置に前記光ファイバと配置して構成したことを特徴としている。
【0013】
好ましくは、前記円筒状シールド部材は、金属線を螺旋状に巻回して形成した金属線円筒材を用いて構成したことを特徴としている。
【0014】
また好ましくは、前記円筒状シールド部材は、帯状金属材料を編んで形成した帯状金属円筒材を用いて構成、金属線を網筒状に形成した金属網円筒材を用いて構成、更には複数の小孔を設けた金属円筒材を用いて構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のように光ファイバ内蔵型絶縁スペーサを構成すれば、変流器を構成するファラデー効果材光ファイバと接地される円筒状シールド部材とを、絶縁成形部材内に埋設して絶縁スペーサをモールド成形できるため、容易にかつ経済的に製作できる利点がある。
【0016】
また、ファラデー効果材の光ファイバ自体が接地される円筒状シールド部材の内部の所定位置に配置されているから、絶縁スペーサの樹脂成形時に光ファイバの近辺に微小ボイドが生じたとしても、円筒状シールド部材が接地されているため、通電導体に電圧が印加されたときに円筒状シールド部材部分付近は電界集中によるコロナの発生もなく、変流器の特性に影響を与えることもない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例である光ファイバ内蔵型絶縁スペーサを一部断面して示す概略側面図である。
【図2】図1の光ファイバ内蔵型絶縁スペーサをA−A線から見た概略断面図である。
【図3】(a)は図1の、(b)図2の部分断面図である。
【図4】図1及び図2の光ファイバ内蔵型絶縁スペーサに用いる接地シールドの例を示す概略図である。
【図5】図1の光ファイバ内蔵型絶縁スペーサをA−A線から見た本発明の他の実施例を示す概略断面図である。
【図6】(a)から(c)は、それぞれ図5に示す光ファイバ内蔵型絶縁スペーサに用いる接地シールドの例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光ファイバ内蔵型絶縁スペーサは、絶縁材料にてモールドして一体に成形する絶縁成形部材内に、少なくとも一つの通電導体と、この通電導体を取り囲むように配置する接地シールド及びファラデー効果材の光ファイバとを、埋め込んで形成する。接地シールドには、円筒状シールド部材を用いており、この中心部付近に前記光ファイバと配置して構成する。内蔵する光ファイバは、電流を測定する変流器の部品として使用する。
【実施例1】
【0019】
以下、図1から図6を用いて本発明の光ファイバ内蔵型絶縁スペーサを具体的に説明する。図1の絶縁スペーサ1は単相用を示している。この絶縁スペーサ1は、円筒形タンク内の中心導体間を電気的に接続する通電導体2と、通電導体2を中心に配置固定する絶縁成形部材3とにより形成している。
【0020】
また、絶縁成形部材3の外周部の鍔部11には、等間隔に複数個の連結金具12を配置し、エポキシ樹脂等の絶縁材料にてモールドして埋め込み、一体に円盤状や円錐状の絶縁成形部材3を成形している。絶縁スペーサ1の鍔部11は、通常と同様に円筒形タンクのフランジ部間に挟持され、絶縁スペーサ1で各円筒形タンク内を区画する。
【0021】
変流器に使用するファラデー効果材の光ファイバ14は、図1から図3に示す例では絶縁スペーサ1の鍔部11付近に通電導体2を取り囲むように配置し、絶縁成形部材3内に埋め込まれる。しかも、光ファイバ14は、接地シールドとなる円筒状シールド部材15の内部の所定位置に配置、望ましくは中心部付近に配置して通電導体2からの距離を一定範囲に維持できるようにし、光変流器に使用しても何ら支障が生じないようにする。
【0022】
円筒状シールド部材15とこの内部に配置する光ファイバ14とを、絶縁成形部材3内に埋め込んでモールド成形して絶縁スペーサ1を製作する際には、次のようにして製作する。光ファイバ14は、円筒状シールド部材15内の所定位置に支持材で支持させた状態にする。
【0023】
そして、円筒状シールド部材15は、図1から図3に例示する如く固定線を兼用する接地線13により連結金具12と連結して電気的に接続し、かつ所定位置を機械的に維持できる状態にして成形型内に装着し、エポキシ樹脂等の絶縁材料によりモールド成形して絶縁スペーサ1を製作する。
【0024】
円筒状シールド部材15には、例えば図4に示すように加工性の良い銅線やアルミニュウム線等の金属線を用い、この金属線を螺旋状に巻回して形成した金属線円筒材15Aを使用している。当然のことながら、使用する金属線は、螺旋状に巻回形成したときに円筒形状を維持できる太さのものを用いている。
【0025】
その上、金属線で巻回形成した金属線円筒材15Aは、接地シールドとしての性能を持つように作られ、光ファイバ14を内部に位置させた状態で、絶縁材料にてモールドを行って絶縁成形部材3を成形する。これにより、光ファイバ14及び金属線円筒材15Aの双方を、絶縁成形部材3の予め定めた位置に埋め込んで形成し、光ファイバ14を予め定めた通電導体2からの距離の寸法範囲内に入るようにして製作する。
【0026】
図2及び図3(b)に示す例の光ファイバ14は、絶縁成形部材3から両端部が突出するように引き出して設けており、この引き出し両端部にも必要に応じて接地シールドとなる円筒状シールド部材15を設けている。
【0027】
そして、光ファイバ14を反射型の変流器部品として用いる際には、この一方の端部に光反射用の鏡面部17を形成し、他方の端部に送光側部品及び受光側部品を配置して光変流器を構成する。また、光ファイバ14を透過型の部品として用いるときには、この一方の端部に送光側部品を、他方の端部に電流検出用の受光側部品を配置して光変流器を構成する。
【0028】
上記のようにして光ファイバ内蔵型絶縁スペーサを構成すれば、接地シールドとなる円筒状シールド部材15の内部に、光変流器に使用する光ファイバ14を予め定めた所定位置に配置できるため、絶縁成形部材3内に埋設して絶縁スペーサ1をモールド成形し、容易に経済的に製作できる。しかも、光ファイバ14自体が接地される円筒状シールド部材15の内部の所定位置に配置されているため、通電導体2に印加された電圧で微小ボイド部分に電界集中を引き起して、コロナを発生して電気的に悪影響を及ぼすことがなく、光変流器の特性も損なうことがなくなる。
【実施例2】
【0029】
次に、図5及び図6を用いて、別の例である本発明の光ファイバ内蔵型絶縁スペーサ1を説明する。絶縁スペーサ1は図1及び図と同様に単相用を示しており、上記の例と同様に、通電導体2及び絶縁成形部材3から形成しており、また図6(a)から(c)に示すように形成した機械的に強い構造の円筒状シールド部材15を使用し、この中心部に光ファイバ14を配置して構成したものである。
【0030】
円筒状シールド部材15として、図6(a)に示す例では帯状金属材料を編んで形成した帯状金属円筒材15Bを、また図6(b)に示す例では金属線を網筒状に形成した金属網円筒材15Cを、更には図6(c)に示す例では複数の小孔16を設けた金属円筒材15Dを使用するものである。
【0031】
このように構成する光ファイバ内蔵型絶縁スペーサであっても、上記した実施例と同様な効果を達成することができるし、円筒状シールド部材15は機械的に強い構造であるため、絶縁成形部材3をエポキシ樹脂等の絶縁材料によりモールド成形するとき、大きく変形することがないため、より容易に製作することができる。
【0032】
なお、上記した各実施例では、単相用絶縁スペーサの例で説明したが、通電導体2の3本を並置或いは頂点を結ぶ線が正三角形や二等辺三角形となるように配置して絶縁成形部材3を一体に成形する三相用絶縁スペーサにも適用できる。この場合、光ファイバー14と円筒状シールド部材15とは、それぞれ各相の通電導体2を取り囲むように設け、更に三相分の通電導体2の全体を一括して取り囲む全体シールドを配置し、絶縁材料にてモールドして絶縁成形部材3を一体に成形すれば使用することができる。
【0033】
また、絶縁成形部材3に内蔵させる光ファイバ14を光変流器に適用する例で説明したが、円筒状シールド部材15内に光ファイバ14を配置して樹脂成形する絶縁スペーサ1の構造は、零相変流器にも使用できて同様な効果を達成できることは明らかである。
【符号の説明】
【0034】
1…絶縁スペーサ、2…通電導体、3…絶縁成形部材、14…光ファイバ、15…円筒状シールド部材、15A…金属線円筒材、15B…帯状金属円筒材、15C…金属網円筒材、15D…金属円筒材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料にてモールドして一体に成形する絶縁成形部材内に、少なくとも一つの通電導体と、前記通電導体を取り囲むように配置する接地シールド及びファラデー効果材の光ファイバとを埋め込んだ光ファイバ内蔵型絶縁スペーサにおいて、前記接地シールドには円筒状シールド部材を用い、前記円筒状シールド部材の内部の所定位置に前記光ファイバと配置して構成したことを特徴とする光ファイバ内蔵型絶縁スペーサ。
【請求項2】
請求項1において、前記円筒状シールド部材は、金属線を螺旋状に巻回して形成した金属線円筒材を用いて構成したことを特徴とする光ファイバ内蔵型絶縁スペーサ。
【請求項3】
請求項1において、前記円筒状シールド部材は、帯状金属材料を編んで形成した帯状金属円筒材を用いて構成したことを特徴とする光ファイバ内蔵型絶縁スペーサ。
【請求項4】
請求項1において、前記円筒状シールド部材は、金属線を網筒状に形成した金属網円筒材を用いて構成したことを特徴とする光ファイバ内蔵型絶縁スペーサ。
【請求項5】
請求項1において、前記円筒状シールド部材は、複数の小孔を設けた金属円筒材を用いて構成したことを特徴とする光ファイバ内蔵型絶縁スペーサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate