説明

光ファイバ及びテープ状光ファイバ、並びにそれらを用いた光モジュール

【課題】局所的な曲げを与えても破断しにくい光ファイバ及びテープ状光ファイバ、並びにそれらを用いた光モジュールを提供する。
【解決手段】コア2の周囲にクラッド3を有する光ファイバ裸線4の外周に、単層からなる被覆層5が設けられている単層被覆光ファイバ6と、単層被覆光ファイバ6の外周に設けられ、被覆層5に接して形成された内側被覆層7、および該内側被覆層7の外側に形成された外側被覆層8からなる一括被覆層と、を備え、内側被覆層7は、被覆層5のヤング率(E1)、および外側被覆層8のヤング率(E3)よりも低いヤング率(E2)を有する光ファイバ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器内あるいは機器間の光伝送路などに用いられる光ファイバ及びテープ状光ファイバ、並びにそれらを用いた光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
機器内あるいは機器間の光伝送技術として、光インターコネクション方式の光伝送が注目されている。このような光インターコネクション方式では、光素子として多チャンネルアレイ化の容易なVCSEL(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)などのアレイ状光素子が一般に用いられている。
【0003】
このVCSELなどのアレイ状光素子間の光伝送に用いられる従来の光ファイバとしては、例えば、図9に示すように、コア90、クラッド91の周囲にヤング率10MPa以下の低ヤング率層(内側被覆層)92、100MPa以上の高ヤング率層(外側被覆層)93を被覆した単心光ファイバ94やその単心光ファイバ94を一列に(並列に)複数本配列後、50MPa以上の高ヤング率層(被覆層)95にて被覆したテープ状光ファイバ96がある。
【0004】
一般的に、単心光ファイバ94、又は、テープ状光ファイバ96は、発光素子、受光素子、レンズ、光ファイバなどの素子と光接続するために、端末部をコネクタと接着し、コネクタ端面を研磨した状態で用いられる。
【0005】
例えば、上述の単心光ファイバ94をコネクタ化する場合、単心光ファイバ94を光ファイバ接続部品のフェルールに挿入する。図10のように通常のフェルール100は、該フェルール100の一端側に設けられ、単心光ファイバ94の被覆を含む外径より大きい内径を有する光ファイバ挿入穴101と、フェルール100の他端側に設けられ、単心光ファイバ94のクラッド91の外径程度(クラッド91の外径より若干大きい程度)の内径を有し、フェルール100の他端部102の端面にて光を入出射する光入出射穴103とが連通して設けられている。この光ファイバ挿入穴101は、光入出射穴103と同じ同心を有する。図11のように、フェルール100の内部において、単心光ファイバ94は被覆(低ヤング率層92と高ヤング率層93)を除去したコア90とクラッド91とからなる光ファイバをフェルール100の他端部102に設けられた光入出射穴103に入れた後、接着材110で固定される。その後、フェルール100の光入出射端面である底面111を研磨する。
【0006】
テープ状光ファイバ96の場合も同様であり、テープ状光ファイバ96を一括被覆している被覆層(高ヤング率層95)を除去し、単心分離後に、単心光ファイバ94の本数分の穴開け加工がされているフェルール内部に挿入し、図11と同様に端末処理を行う。
【0007】
ただし、単心光ファイバ94を挿入するフェルール100に設けられた光入出射穴103へ光ファイバ挿入穴101から単心光ファイバ94を挿入する際に、図12に示すように、フェルール100の他端部102に形成された光入出射穴103は光ファイバの外径(クラッド91の外径)より大きい内径を有するので、フェルール100の底面111に面した光入出射穴103の開口に対して単心光ファイバ94の端面の位置が挿入するごとに一定とならず、バラツキが生じてしまうという危惧があった。すなわち、製品の再現性が悪いという問題があった。
【0008】
この課題を解決すべく、本発明者らは、フェルール100の他端部102側に形成された光入出射穴103の端面に対して、単心光ファイバ94の端面の位置を常に定位置に配置することができる光ファイバ接続部品として、図13に示すように、光ファイバ挿入穴130の中心位置131と光入出射穴132の中心位置133とをずらした、つまり、光入出射穴132の中心軸が光ファイバ挿入穴130の中心軸に対して光ファイバを拘束させる方向にずれて位置するようにした光ファイバ接続部品135を提案した。
【0009】
このような光ファイバ接続部品135に単心光ファイバ94を挿入した場合、フェルール134の内部において、図14のように、単心光ファイバ94が光ファイバ挿入穴130の中心軸側から光入出射穴132の中心軸側へ局所的に曲げられて配置されることになる。これによって、光入出射穴132の定位置に単心光ファイバ94を拘束することができるため、光入出射穴132の端面に対して定位置に単心光ファイバ94の端面を設置(固定)することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−310197号公報
【特許文献2】特開2007−256372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような光ファイバ接続部品135を用いた場合、上述のとおりフェルール134の内部において、単心光ファイバ94は、光ファイバ挿入穴130の中心軸側から光入出射穴132の中心軸側へと局所的に曲げられる。このため、被覆(低ヤング率層92と高ヤング率層93)を除去した単心光ファイバ94では、上記のような局所的な曲げによって破断してしまうおそれがある。
【0012】
また、被覆を除去した単心光ファイバ94では、クラッド91の表面が図15(c)に示すようなフェルール134の内部の接触点150、151に接触することでクラッド91の表面にキズが発生し、この表面のキズがフェルール134内の曲げ応力によって破断へ繋がるおそれがある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、局所的な曲げを与えても破断しにくい光ファイバ及びテープ状光ファイバ、並びにそれらを用いた光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために、コアの周囲にクラッドを有する光ファイバ裸線の外周に、単層からなる被覆層が設けられている単層被覆光ファイバと、前記単層被覆光ファイバの外周に設けられ、前記被覆層に接して形成された内側被覆層、および該内側被覆層の外側に形成された外側被覆層からなる一括被覆層と、を備え、前記内側被覆層は、前記被覆層のヤング率、および前記外側被覆層のヤング率よりも低いヤング率を有することを特徴とする光ファイバを提供するものである。
【0015】
また、本発明は、コアの周囲にクラッドを有する光ファイバ裸線の外周に、単層からなる被覆層が設けられている複数本の単層被覆光ファイバと、前記複数本の単層被覆光ファイバが並列に配置された外周に設けられ、前記被覆層に接して形成された内側被覆層、および該内側被覆層の外側に形成された外側被覆層からなる一括被覆層と、を備え、前記内側被覆層は、前記被覆層のヤング率、および前記外側被覆層のヤング率よりも低いヤング率を有することを特徴とするテープ状光ファイバを提供するものである。
【0016】
前記内側被覆層は、10MPa以下のヤング率を有していてもよい。
【0017】
前記被覆層は、100MPa以上のヤング率を有し、前記外側被覆層は、50MPa以上のヤング率を有していてもよい。
【0018】
また、本発明は、フェルールと、前記フェルールの一端側から他端側の端面まで貫通するように形成され、前記フェルールの一端側から挿入した光ファイバを前記フェルールの他端側の端面までガイドするガイド穴とを備える光ファイバ接続部品であって、前記ガイド穴は、前記フェルールの一端側に形成され、前記光ファイバを前記フェルールの内部へ挿入させる光ファイバ挿入穴と、前記フェルールの他端側に形成され、前記光ファイバ挿入穴よりも小さい内径を有する、前記フェルールの他端側の端面にて光を入出射させるための光入出射穴と、前記光ファイバ挿入穴と前記光入出射穴との間に配置され、前記光入出射穴に向かうにつれて、その内径が徐々に小さくなるように形状が変化すると共に、前記光ファイバ挿入穴と前記光入出射穴とを連通させる形状変化穴と、からなり、前記形状変化穴は、前記光入出射穴の中心軸が前記光ファイバ挿入穴の中心軸に対して前記光ファイバを拘束させる方向にずれて位置するように、形状が変化している光ファイバ接続部品に、前記光ファイバ、又は前記テープ状光ファイバを挿入してなることを特徴とする光モジュールを提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、局所的な曲げを与えても破断しにくい光ファイバ及びテープ状光ファイバ、並びにそれらを用いた光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係る単心光ファイバの横断面図であり、(b)は本発明の一実施の形態に係るテープ状光ファイバの横断面図である。
【図2】図1(a)の単心光ファイバを用いた光モジュールを示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は立体図、(e)は下面図、(f)は要部拡大図である。
【図3】図1(a)の単心光ファイバを用いた光モジュールを示す図であり、(a)は下面図、(b)はA−A線断面図、(c)はB部拡大図である。
【図4】図1(a)の単心光ファイバがフェルールに拘束される条件を説明する図である。
【図5】図1(b)のテープ状光ファイバを接合する光ファイバ接続部品を示す図であり、(a)は上面図、(b)は立体図、(c)は正面図、(d)は側面図、(e)は下面図である。
【図6】図1(b)のテープ状光ファイバを図5の光ファイバ接続部品に接合した光モジュールを示す図であり、(a)は上面図、(b)は立体図、(c)は正面図、(d)は側面図、(e)は下面図である。
【図7】図1(b)のテープ状光ファイバがフェルールに拘束される条件を説明する図である。
【図8】本実施の形態に係るテープ状光ファイバの光ファイバ配列方向に対する曲げ性を説明する図である。
【図9】(a)は、従来の単心光ファイバを示す横断面図であり、(b)は、従来のテープ状光ファイバを示す横断面図である。
【図10】従来の光ファイバ接続部品を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は立体図である。
【図11】図10の光ファイバ接続部品に、図9(a)の単心光ファイバを接合した光モジュールを示す図である。
【図12】図10の光ファイバ接続部品の問題を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は立体図、(c)は下面図、(d)は要部拡大図である。
【図13】図10の光ファイバ接続部品の問題を解決した光ファイバ接続部品を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は立体図、(e)は下面図である。
【図14】図13の光ファイバ接続部品に図9(a)の光ファイバを接合した光モジュールを示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は立体図、(e)は下面図、(f)は要部拡大図である。
【図15】図13の光ファイバ接続部品に図9(a)の光ファイバを接合した光モジュールを示す図であり、(a)は上面図、(b)はA−A線断面図、(c)はB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0022】
図1(a)は、本発明の一実施の形態に係る単心光ファイバの横断面図であり、図1(b)は本発明の一実施の形態に係るテープ状光ファイバの横断面図である。
【0023】
先ず、本発明の単心光ファイバについて説明する。
【0024】
本実施の形態に係る単心光ファイバは、例えば、図13に示した光ファイバ挿入穴130の中心位置131と光入出射穴132の中心位置133をずらしたフェルール134を備えた光ファイバ接続部品135に接合するのに好適なものである。
【0025】
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る光ファイバ(単心光ファイバ)1は、コア2の周囲にクラッド3を有する光ファイバ裸線4の外周に、単層からなる被覆層(第1被覆層)5が設けられている単層被覆光ファイバ6と、単層被覆光ファイバ6の外周に設けられ、被覆層5に接して形成された内側被覆層(第2被覆層)7、および該内側被覆層7の外側に形成された外側被覆層(第3被覆層)8からなる一括被覆層と、を備え、内側被覆層7は、被覆層5のヤング率(E1)、および外側被覆層8のヤング率(E3)よりも低いヤング率(E2)を有するものである。すなわち、内側被覆層7のヤング率(E2)と、被覆層5、外側被覆層8の各層のヤング率(E1、E3)との関係は、それぞれ、「E2<E1」、「E2<E3」で表される。
【0026】
被覆層(第1被覆層)5は、フェルール134の底面(他端側に形成された光入出射穴132の端面)における研磨性や、フェルール134の内部での曲げ応力による被覆形状の変形防止を考慮して100MPa以上のヤング率を有することが望ましい。
【0027】
また、内側被覆層(第2被覆層)7は、第2被覆層7の被覆除去性、フェルール134の内部で単心光ファイバ1へ曲げが発生した際の被覆除去部への応力集中緩和、フェルール134の外部においての側圧によるマイクロベンド損失低減を目的に、10MPa以下のヤング率を有することが望ましい。
【0028】
また、外側被覆層(第3被覆層)8は、光ファイバ構造の形状を保持する目的を有するため、50MPa以上のヤング率を有することが望ましい。なお、外側被覆層(第3被覆層)8のヤング率(E3)と、被覆層(第1被覆層)5のヤング率(E1)との関係は、「E3<E1」、或いは「E1<E3」のどちらであっても選択が可能である。すなわち、被覆層5、内側被覆層7、外側被覆層8における各層のヤング率の関係は、「E2<E3<E1」、或いは「E2<E1<E3」のいずれかで表される。
【0029】
また、単心光ファイバ1の最外層を構成する第3被覆層8が少なくとも難燃性を有する材料からなることが好ましく、さらには、第1被覆層5、第2被覆層7、第3被覆層8の全てが難燃性を有する材料からなることがより好ましい。
【0030】
ここで、光ファイバ接続部品135の構成を詳述しておく。
【0031】
図2に示すように、光ファイバ接続部品135は、例えば、フェルール134と、フェルール134の一端側から他端側の端面(底面)20まで貫通するように形成され、フェルール134の一端側から挿入した光ファイバ(単心光ファイバ1)をフェルール134の他端側の端面20までガイドするガイド穴21とを備えるものである。この光ファイバ接続部品135は、フェルール3の他端側の端面20を、例えば、他のフェルールの端面、或いは、図示しない基板上の光素子へ接続させるものである。また、基板との接続の際には、例えば、レンズベースなどの部材を介して接続することでもよい。
【0032】
ガイド穴21は、フェルール134の一端側に設けられて単心光ファイバ1をフェルール134の内部へ挿入させる光ファイバ挿入穴130と、フェルール134の他端側に光ファイバ挿入穴130よりも小さい内径を有して設けられ、フェルール134の他端側の端面20にて光を入出射する光入出射穴132と、光ファイバ挿入穴130と光入出射穴132との間に設けられ、その内径が光ファイバ挿入穴130から光入出射穴132にかけて、徐々に小さくなるように形状変化した形状変化穴22と、が連通して形成されてなる。
【0033】
そして、形状変化穴22は、図2(a)に示すように、光入出射穴132の中心軸が光ファイバ挿入穴130の中心軸に対して単心光ファイバ1を拘束させる方向(拘束方向)にずれて位置するように、形状が変化している。つまり、光ファイバ接続部品135においては、単心光ファイバ1を挿入する光ファイバ挿入穴130の中心位置と、光ファイバの光をフェルール3外部へ入出射する光入出射穴5の中心位置とをずらしたものである。また、形状変化穴22は、光入出射穴132の中心軸が光ファイバ挿入穴130の中心軸に対して垂直方向にずれて位置するように、形状が変化していてもよい。また、形状変化穴22は、図2(b)〜(d)に示すように、その内面の光ファイバの挿入方向に対する傾斜角が周方向で異なるように形成されていることが好ましい。
【0034】
形状変化穴22は、光入出射穴132と光ファイバ挿入穴130とを緩やかに接続するためのものである。この形状変化穴22を設けない場合、光入出射穴132と光ファイバ挿入穴130の大きさが異なるために、ガイド穴21内で段差が生じる。ガイド穴21に段差が生じると、単心光ファイバ1をガイド穴21に挿入したときに単心光ファイバ1の先端が段差に引っかかって単心光ファイバ1を光入出射穴132まで挿入するのが困難になってしまう。つまり、形状変化穴22は、単心光ファイバ1をガイド穴21に挿入しやすくするためのものである。
【0035】
光ファイバ挿入穴130は単心光ファイバ1を挿入する側(図示上側)に向かって徐々に拡径しており、光ファイバ挿入穴130に単心光ファイバ1を挿入しやすいようになっている。
【0036】
この光ファイバ接続部品135に単心光ファイバ1を接合する際には、先ず単心光ファイバ1の被覆(第2被覆層7と第3被覆層8)を除去して第1被覆層5を露出させる。次いで、ガイド穴21に接着材24を充填し、その後、接着材24が充填されたガイド穴21に単心光ファイバ1を挿入する。単心光ファイバ1の挿入後、ガイド穴21に充填された接着材24を硬化させる。その後、フェルール134の底面20を研磨して単心光ファイバ1のコア2とクラッド3の端面を底面20と同一面上に露出させる。以上の工程により、単心光ファイバ1が光ファイバ接続部品135に接合され、光モジュール23が得られる。
【0037】
光ファイバ接続部品135では、光入出射穴132と光ファイバ挿入穴130の中心位置131,133がずれているため、単心光ファイバ1はフェルール134の内部で曲がった状態で固定される。つまり、光入出射穴132と光ファイバ挿入穴130の接続部(すなわち、形状変化穴22)で単心光ファイバ1が曲げられ、その曲げ応力にて単心光ファイバ1の位置を光入出射穴132のある方向に拘束することができる。
【0038】
このとき、図3に示すように、第1被覆層5により単心光ファイバ1の光ファイバ裸線(コア2とクラッド3)4が露出せず、光ファイバ裸線4が直接フェルール134と接触することを防止でき、単心光ファイバ1が破断する確率を大きく低減できる。
【0039】
また、第2被覆層7、第3被覆層8を除去した局所曲げ部30では、コア2、クラッド3からなる光ファイバ裸線4、および第1被覆層5からなる単層被覆光ファイバ6への曲げによる応力が集中するが、第2被覆層7が、第1被覆層5のヤング率(E1)、および第3被覆層8のヤング率(E3)よりも低いヤング率(E2)を有するため、応力集中を緩和することが可能であり、局所曲げ部30において単心光ファイバ1に局所的な曲げが加わっても断線を防ぐことができる。
【0040】
本実施の形態に係る単心光ファイバ1の構造において、単心光ファイバ1がフェルール134の内部で拘束される条件は、図4に示すように、L1>L4、且つL2>L3となる。ここで、L1,L2,L3,L4は、図4の構造の場合、以下のようになる。
【0041】
L1:最外被覆面(第3被覆層8)と1層目の被覆面(第1被覆層5)の最大距離
L2:最外被覆面(第3被覆層8)と1層目の被覆面(第1被覆層5)の最小距離
L3:図中X軸方向上の光ファイバ挿入穴130面と光入出射穴132面の最短距離
L4:L3+光入出射穴132寸法
この条件を満たすことで、単心光ファイバ1が光ファイバ接続部品135の内部で拘束される。
【0042】
ここで、図中Y軸方向における光ファイバ挿入穴130と光入出射穴132の間は、上述したように、光ファイバ挿入穴130より単心光ファイバ1を挿入するとき、第2被覆層7と第3被覆層8を除去した単心光ファイバ1を光ファイバ挿入穴130へ挿入しやすくするために緩やかに形状が変化していることが望ましい。
【0043】
以上要するに、本実施の形態に係る単心光ファイバ1によれば、コア2の周囲にクラッド3を有する光ファイバ裸線4の外周に、単層からなる被覆層(第1被覆層)5が設けられている単層被覆光ファイバ6と、単層被覆光ファイバ6の外周に設けられ、被覆層5に接して形成された内側被覆層(第2被覆層)7、および該内側被覆層7の外側に形成された外側被覆層(第3被覆層)8からなる一括被覆層と、を備え、内側被覆層7は、被覆層5のヤング率(E1)、および外側被覆層8のヤング率(E3)よりも低いヤング率(E2)を有する構造であるため、単心光ファイバ1に局所的な曲げが加わっても断線を防ぐことができる。また、単心光ファイバ1がフェルール134の内部で拘束された際に、光ファイバ裸線(コア2、クラッド3)4に加わる曲げ応力を第1被覆層5が吸収して光ファイバ裸線4が保護される。そのため、単心光ファイバ1が断線するのを防止できる。
【0044】
また、第1被覆層5は高ヤング率、第2被覆層7は低ヤング率であるため、第2被覆層7、第3被覆層8を除去する際に、クラッド3をキズつけることなく第2被覆層7及び第3被覆層8の除去作業が容易に行える。
【0045】
次に、本発明のテープ状光ファイバについて説明する。
【0046】
図1(b)に示すように、本実施の形態に係るテープ状光ファイバ10は、上述した単層被覆光ファイバ(単層光ファイバ)6が複数本並列に配列され、複数本並列に配列された単層光ファイバ6の外周に、一括被覆層として内側被覆層(第2被覆層)11と外側被覆層(第3被覆層)12とが順次設けられたものである。この内側被覆層11は、被覆層(第1被覆層)5のヤング率(E1)、および外側被覆層12のヤング率(E3)よりも低いヤング率(E2)を有することが好ましい。すなわち、内側被覆層11のヤング率(E2)と、被覆層5、外側被覆層12の各層のヤング率(E1、E3)との関係は、それぞれ、「E2<E1」、「E2<E3」で表される。
【0047】
第1被覆層5は、挿入されるフェルールの底面(フェルールの他端側に形成された光入出射穴の端面)における研磨性や、フェルールの内部での曲げ応力による被覆形状の変形防止を考慮して100MPa以上のヤング率を有することが望ましい。
【0048】
第2被覆層11は、第2被覆層11の被覆除去性、フェルール134の内部で単心光ファイバ1へ曲げが発生した際の被覆除去部への応力集中緩和、フェルール134の外部においての側圧によるマイクロベンド損失低減を目的に、10MPa以下のヤング率を有することが望ましい。
【0049】
第3被覆層12は、光ファイバ構造の形状を保持する目的を有するため、50MPa以上のヤング率を有することが望ましい。なお、第3被覆層12のヤング率(E3)と、第1被覆層5のヤング率(E1)との関係は、「E3<E1」、或いは「E1<E3」のどちらであっても選択が可能である。すなわち、第1被覆層5、第2被覆層11、第3被覆層12における各層のヤング率の関係は、「E2<E3<E1」、或いは「E2<E1<E3」のいずれかで表される。
【0050】
また、テープ状光ファイバ10の最外層を構成する第3被覆層12が少なくとも難燃性を有する材料からなることが好ましく、さらには、第1被覆層5、第2被覆層11、第3被覆層12の全てが難燃性を有する材料からなることがより好ましい。
【0051】
また、単層光ファイバ6の外径が、光結合対象である発光素子、受光素子、又はレンズベースに設けられたレンズなどの配列間隔と同じ長さにされるとよい。
【0052】
図5に示すように、このテープ状光ファイバ10を接合する光ファイバ接続部品50は、基板に対して水平な底面51を有するフェルール52と、フェルール52に形成されテープ状光ファイバ10を配置させるガイド穴53とを備える。
【0053】
ガイド穴53は、テープ状光ファイバ10からの入出射光をアレイ状光素子へ入出射させるべく、テープ状光ファイバ10の端面を基板と対向するフェルール52の底面51においてアレイ状光素子に対向させて保持する断面四角形状の光入出射穴54と、光入出射穴54よりも大きく形成されると共に光入出射穴54の中心位置とずらして形成され、テープ状光ファイバ10の挿入をガイドする下端の開口部55が断面四角形状に形成された光ファイバ挿入穴56と、光ファイバ挿入穴56から挿入されたテープ状光ファイバ10を光入出射穴54に緩やかにガイドする形状変化穴57とを備える。
【0054】
つまり、光ファイバ接続部品50は、図2の光ファイバ接続部品135と同様に、テープ状光ファイバ10を挿入する光ファイバ挿入穴56の中心位置58を、テープ状光ファイバ10の光をフェルール52の外部へ入出射する光入出射穴54の中心位置59からテープ状光ファイバ10の厚さ方向と幅方向にずらしたものである。
【0055】
本実施の形態に係るテープ状光ファイバ10を光ファイバ接続部品50に接合した光モジュール60を図6に、その断面構造を図7に示す。
【0056】
このように、光ファイバ挿入穴56と光入出射穴54の中心軸を平行にずらすことにより、テープ状光ファイバ10の先端の第2被覆層11、第3被覆層12を除去し、これを光ファイバ接続部品50のガイド穴53に挿入すると、フェルール52の内部でテープ状光ファイバ10に曲げが発生し、フェルール52の底面51においてテープ状光ファイバ10の各コア2の位置を光入出射穴54の隅に拘束し、高精度にテープ状光ファイバ10の各コア2を配列することができる。
【0057】
ここで、テープ状光ファイバ10がX軸方向、Y軸方向共にフェルール52内部で拘束される条件は、図7に示すように、L1X>L4X、且つL2X>L3X、且つL1Y>L4Y、且つL2Y>L3Yとなる。
【0058】
ここで、L1X,L2X,L3X,L4X、及びL1Y,L2Y,L3Y,L4Yは、図7の構造の場合、以下のようになる。
【0059】
L1X:図7のX軸方向において、最外被覆面(第3被覆層12)と1層目の被覆面(第1被覆層5)の最大距離
L2X:図7のX軸方向において、最外被覆面(第3被覆層12)と1層目の被覆面(第1被覆層5)の最小距離
L3X:図7のX軸方向において、光ファイバ挿入穴56面と光入出射穴54面の最短距離
L4X:図7のX軸方向において、L3X+光入出射穴54寸法
L1Y:図7のY軸方向において、最外被覆面(第3被覆層12)と1層目の被覆面(第1被覆層5)の最大距離
L2Y:図7のY軸方向において、最外被覆面(第3被覆層12)と1層目の被覆面(第1被覆層5)の最小距離
L3Y:図7のY軸方向において、光ファイバ挿入穴56面と光入出射穴54面の最短距離
L4Y:図7のY軸方向において、L3X+光入出射穴54寸法
この条件を満たすことで、テープ状光ファイバ10がフェルール52内部で拘束される。
【0060】
以上要するに、本実施の形態に係るテープ状光ファイバ10によれば、コア2の周囲にクラッド3を有する光ファイバ裸線4の外周に、単層からなる被覆層(第1被覆層)5が設けられている複数本の単層被覆光ファイバ6と、この複数本の単層被覆光ファイバ6の外周に設けられ、被覆層5に接して形成された内側被覆層(第2被覆層)11、および該内側被覆層11の外側に形成された外側被覆層(第3被覆層)12からなる一括被覆層と、を備え、内側被覆層11は、被覆層5のヤング率(E1)、および外側被覆層12のヤング率(E3)よりも低いヤング率(E2)を有する構造であるため、テープ状光ファイバ10に局所的な曲げが加わっても断線を防ぐことができる。また、テープ状光ファイバ10がフェルール52の内部で拘束された際に、光ファイバ裸線(コア2、クラッド3)4に加わる曲げ応力を第1被覆層5が吸収して光ファイバ裸線4が保護される。そのため、単心光ファイバ1が断線するのを防止できる。
【0061】
また、第1被覆層5は高ヤング率、第2被覆層11は低ヤング率であるため、第2被覆層11、第3被覆層12を除去する際に、クラッド3をキズつけることなく、かつ、第1被覆層5を残したまま、容易に第2被覆層11及び第3被覆層12の除去作業が行える。また、フェルール52の内部には、光ファイバ裸線4の外周にヤング率が100MPa以上からなる第1被覆層5が設けられた単層光ファイバ6を拘束させているため、拘束後におけるフェルールの端面(底面)51の研磨処理時に、コア2やクラッド3にキズ等が発生したり、コア2の軸(光軸)がずれてしまうのを防止することができる。
【0062】
単層光ファイバ6の外径が、光結合対象である発光素子、受光素子、又はレンズベースに設けられたレンズなどの配列間隔と同じ長さにされることで、フェルール52にテープ状光ファイバ10を拘束するだけで、テープ状光ファイバ10の各コア2が光結合対象である発光素子、受光素子、又はレンズなどと同じ配列間隔で配列される。そのため、各コア2を精度よく光素子などに接続することができる。
【0063】
また、図8に示すように、曲げたい箇所にて第2被覆層11と第3被覆層12を除去することで本実施の形態に係るテープ状光ファイバ10の場合、光ファイバ配列方向(単層光ファイバ6を配列した方向)にテープ状光ファイバ10を曲げることができる。光ファイバ配列方向への曲げ印加部である第2被覆層11と第3被覆層12を除去した箇所80は、コア2とクラッド3からなる光ファイバ裸線4が、高ヤング率の第2被覆層11で保護されているため、局所的な曲げによる曲げ応力が加わってもテープ状光ファイバ10が断線しない。加えて、図8に示す光ファイバ配列方向への曲げ印加部(第2被覆層11と第3被覆層12を除去した箇所80)において、曲げ印加後に、曲げたい形状に固定した場合には、所望の曲げ形状に設定後、第2被覆層11と第3被覆層12などからなる被覆をリコートしても良い。
【0064】
本発明は上述の実施の形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 光ファイバ
2 コア
3 クラッド
4 光ファイバ裸線
5 第1被覆層
6 単層光ファイバ
7 第2被覆層
8 第3被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアの周囲にクラッドを有する光ファイバ裸線の外周に、単層からなる被覆層が設けられている単層被覆光ファイバと、
前記単層被覆光ファイバの外周に設けられ、前記被覆層に接して形成された内側被覆層、および該内側被覆層の外側に形成された外側被覆層からなる一括被覆層と、を備え、
前記内側被覆層は、前記被覆層のヤング率、および前記外側被覆層のヤング率よりも低いヤング率を有することを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記内側被覆層は、10MPa以下のヤング率を有する請求項1記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記被覆層は、100MPa以上のヤング率を有し、前記外側被覆層は、50MPa以上のヤング率を有する請求項1又は2記載の光ファイバ。
【請求項4】
コアの周囲にクラッドを有する光ファイバ裸線の外周に、単層からなる被覆層が設けられている複数本の単層被覆光ファイバと、
前記複数本の単層被覆光ファイバが並列に配置された外周に設けられ、前記被覆層に接して形成された内側被覆層、および該内側被覆層の外側に形成された外側被覆層からなる一括被覆層と、を備え、
前記内側被覆層は、前記被覆層のヤング率、および前記外側被覆層のヤング率よりも低いヤング率を有することを特徴とするテープ状光ファイバ。
【請求項5】
前記内側被覆層は、10MPa以下のヤング率を有する請求項5記載のテープ状光ファイバ。
【請求項6】
前記被覆層は、100MPa以上のヤング率を有し、前記外側被覆層は、50MPa以上のヤング率を有する請求項4又は5記載のテープ状光ファイバ。
【請求項7】
フェルールと、前記フェルールの一端側から他端側の端面まで貫通するように形成され、前記フェルールの一端側から挿入した光ファイバを前記フェルールの他端側の端面までガイドするガイド穴とを備える光ファイバ接続部品であって、前記ガイド穴は、前記フェルールの一端側に形成され、前記光ファイバを前記フェルールの内部へ挿入させる光ファイバ挿入穴と、前記フェルールの他端側に形成され、前記光ファイバ挿入穴よりも小さい内径を有する、前記フェルールの他端側の端面にて光を入出射させるための光入出射穴と、前記光ファイバ挿入穴と前記光入出射穴との間に配置され、前記光入出射穴に向かうにつれて、その内径が徐々に小さくなるように形状が変化すると共に、前記光ファイバ挿入穴と前記光入出射穴とを連通させる形状変化穴と、からなり、前記形状変化穴は、前記光入出射穴の中心軸が前記光ファイバ挿入穴の中心軸に対して前記光ファイバを拘束させる方向にずれて位置するように、形状が変化している光ファイバ接続部品と、前記光ファイバ接続部材に形成されたガイド穴に挿入された請求項1〜6のいずれかに記載の光ファイバ又はテープ状光ファイバと、を備えたことを特徴とする光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−33718(P2011−33718A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178144(P2009−178144)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】