説明

光ファイバ接続構造

【課題】高温環境下でも、突き合わされた光ファイバ同士の間に屈折率整合剤を保持し、光学特性の劣化を防止することができる光ファイバ接続構造を提供する。
【解決手段】光ファイバ接続器1のメカニカルスプライス2は、光ファイバ3を収容するファイバ溝を有するベース部5と、ファイバ溝に収容された光ファイバ3をベース部5に対して押さえるフタ部6とを有している。ベース部5の前端部には、短尺状の内蔵ファイバ9を保持したフェルール8が固定されている。ベース部5は、光ファイバ3と内蔵ファイバ9とが接続されるファイバ接続領域Pと、このファイバ接続領域Pに対してファイバ溝4の延在方向の両側に位置するファイバ非接続領域Qとを含んでいる。ファイバ接続領域Pにおけるベース部5の上面とフタ部6の下面との間の空間は、ファイバ非接続領域Qにおけるベース部5の上面とフタ部6の下面との間の空間よりも大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ同士を機械的に接続する光ファイバ接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバ接続構造としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の光ファイバ接続構造は、二つ割りロッド状のベース及び蓋体を備えており、ベースには、光ファイバ同士を突き合わせ接続可能に位置決め調芯する調芯溝が延在形成され、調芯溝の調芯接続部及びその周囲には屈折率整合剤が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3983377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のような光ファイバ接続構造では、高温環境下において、突き合わされた光ファイバ同士の間に存在すべき屈折率整合剤が無くなり、光学特性(接続ロスや反射)が劣化する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、高温環境下でも、突き合わされた光ファイバ同士の間に屈折率整合剤を保持し、光学特性の劣化を防止することができる光ファイバ接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光ファイバ同士を屈折率整合剤を介して突き合わせて接続するメカニカルスプライスを備えた光ファイバ接続構造において、メカニカルスプライスは、光ファイバを収容するファイバ溝を有するベース部と、ファイバ溝に収容された光ファイバをベース部に対して押さえるフタ部とを有し、ベース部は、光ファイバ同士が接続されるファイバ接続領域と、ファイバ接続領域に対してファイバ溝の延在方向両側に位置するファイバ非接続領域とを有し、ファイバ接続領域におけるベース部とフタ部との間の空間は、ファイバ非接続領域におけるベース部とフタ部との間の空間よりも大きいことを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の光ファイバ接続構造においては、ファイバ接続部分におけるベース部とフタ部との間の空間をファイバ非接続部分におけるベース部とフタ部との間の空間よりも大きくすることにより、ファイバ接続部分には屈折率整合剤が多く充填されることになるため、高温環境下で屈折率整合剤の粘性が低下しても、突き合わされた光ファイバ同士の間から屈折率整合剤が流れ出ることは少ない。また、ファイバ接続部分では、メカニカルスプライス内に光ファイバが導入された時に混入した気泡や屈折率整合剤の揮発成分が広い範囲で動けるようになるため、突き合わされた光ファイバ同士の間を気泡等が通過する可能性が低くなる。以上により、高温環境下においても、突き合わされた光ファイバ同士の間には屈折率整合剤が保持されるため、光学特性の劣化を防止することができる。
【0008】
好ましくは、ベース部におけるファイバ接続領域の上面部には、凹部が形成されている。この場合には、簡単な構成で且つ確実に、ファイバ接続領域におけるベース部とフタ部との間の空間をファイバ非接続領域におけるベース部とフタ部との間の空間よりも大きくすることができる。
【0009】
また、好ましくは、ファイバ接続領域におけるベース部とフタ部との間の空間は、ファイバ溝側よりもファイバ溝の反対側のほうが大きくなっている。この場合には、ファイバ接続領域におけるベース部とフタ部との間の空間に存在する気泡等がファイバ溝側からファイバ溝の反対側に向かって移動しやすくなるため、突き合わされた光ファイバ同士の間を気泡等が通過する可能性が更に低くなる。これにより、高温環境下においても、突き合わされた光ファイバ同士の間に屈折率整合剤を十分保持することができる。
【0010】
さらに、好ましくは、ファイバ非接続領域におけるファイバ溝の空間は、ファイバ接続領域におけるファイバ溝の空間よりも大きい。この場合には、ファイバ接続領域におけるベース部とフタ部との間の空間に存在する気泡等がファイバ非接続領域に向かって移動しやすくなるため、突き合わされた光ファイバ同士の間を気泡等が通過する可能性が更に低くなる。これにより、高温環境下においても、突き合わされた光ファイバ同士の間に屈折率整合剤を十分保持することができる。
【0011】
このとき、好ましくは、ファイバ非接続領域におけるファイバ溝の底の位置は、ファイバ接続領域におけるファイバ溝の底の位置よりも低い。この場合には、簡単な構成で且つ確実に、ファイバ非接続領域におけるファイバ溝の空間をファイバ接続領域におけるファイバ溝の空間よりも大きくすることができる。
【0012】
また、本発明は、光ファイバ同士を屈折率整合剤を介して突き合わせて接続するメカニカルスプライスを備えた光ファイバ接続構造において、メカニカルスプライスは、光ファイバを収容するファイバ溝を有するベース部と、ファイバ溝に収容された光ファイバをベース部に対して押さえるフタ部とを有し、ベース部は、光ファイバ同士が接続されるファイバ接続領域と、ファイバ接続領域に対してファイバ溝の延在方向両側に位置するファイバ非接続領域とを有し、ファイバ非接続領域におけるファイバ溝の空間は、ファイバ接続領域におけるファイバ溝の空間よりも大きいことを特徴とするものである。
【0013】
このように本発明の光ファイバ接続構造においては、ファイバ非接続領域におけるファイバ溝の空間をファイバ接続領域におけるファイバ溝の空間よりも大きくすることにより、メカニカルスプライス内に光ファイバが導入された時に混入した気泡や屈折率整合剤の揮発成分がファイバ非接続領域に向かって移動しやすくなる。このため、突き合わされた光ファイバ同士の間を気泡等が通過する可能性が低くなる。これにより、高温環境下においても、突き合わされた光ファイバ同士の間には屈折率整合剤が保持されるため、光学特性の劣化を防止することができる。
【0014】
また、好ましくは、ベース部には、光ファイバの一つを構成する内蔵ファイバを保持するフェルールが固定されている。この場合には、本発明の光ファイバ接続構造を現地付け光コネクタに適用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高温環境下でも、突き合わされた光ファイバ同士の間に屈折率整合剤を保持し、光学特性の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係わる光ファイバ接続構造の一実施形態が適用される光ファイバ接続器を示す概略断面図である。
【図2】図1に示したメカニカルスプライスの開閉状態を示す断面図である。
【図3】図1に示したベース部及びフタ部の断面図及びベース部の平面図である。
【図4】図1に示した光ファイバと内蔵ファイバとが突き合わされた状態を示す断面図である。
【図5】図4のA−A線断面図及びB−B線断面図である。
【図6】従来構造のメカニカルスプライスにおいて、屈折率整合剤に混入した気泡がファイバ溝内に閉じ込められた様子を示す断面図である。
【図7】図1に示したメカニカルスプライスにおいて、屈折率整合剤に混入した気泡が移動する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係わる光ファイバ接続構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係わる光ファイバ接続構造の一実施形態が適用される光ファイバ接続器を示す概略断面図である。同図において、光ファイバ接続器1は、現地付け用のメカニカルスプライス型の光コネクタである。光ファイバ接続器1は、2本の光ファイバ同士を突き合わせて機械的に接続・固定するメカニカルスプライス2と、このメカニカルスプライス2を覆うハウジング(図示せず)とを備えている。
【0019】
メカニカルスプライス2は、図1及び図2(a)に示すように、光ファイバ3を位置決め・収容するファイバ溝4を有するベース部5と、ファイバ溝4に収容された光ファイバ3をベース部5に対して押さえるフタ部6と、ベース部5及びフタ部6を挟み込む断面U字状のクランプバネ7とを有している。光ファイバ3の先端部分は、被覆除去されて裸ファイバ3aが露出している。
【0020】
ベース部5の前端部には、フェルール8が固定されている。フェルール8は、被覆除去された短尺状の内蔵ファイバ9を保持している。内蔵ファイバ9は、フェルール8の前端面(接続端面)からファイバ溝4まで延びている。
【0021】
メカニカルスプライス2におけるベース部5とフタ部6との境界部分には、楔部材10が挿入される複数の楔挿入凹部11が設けられている。ベース部5及びフタ部6は、楔挿入凹部11の反対側からクランプバネ7に挟み込まれている。
【0022】
また、ベース部5は、光ファイバ3と内蔵ファイバ9とが接続されるファイバ接続領域Pと、このファイバ接続領域Pに対してファイバ溝4の延在方向(メカニカルスプライス2の前後方向)の両側に位置するファイバ非接続領域Qとを含んでいる。
【0023】
ベース部5におけるファイバ接続領域Pの上面部には、図3に示すように矩形状の凹部12が形成されている。従って、ファイバ接続領域Pにおけるベース部5の上面とフタ部6の下面との間の空間(間隔)は、ファイバ非接続領域Qにおけるベース部5の上面とフタ部6の下面との間の空間(間隔)よりも大きくなっている。
【0024】
また、図4に示すように、ファイバ非接続領域Qにおけるファイバ溝4の底の位置は、ファイバ接続領域Pにおけるファイバ溝4の底の位置よりも低くなっている。ファイバ非接続領域Qは、ファイバ溝4の底がファイバ接続領域Pの両端からメカニカルスプライス2の前後方向外側に向かって断面テーパ状に下がるように形成された領域を有している。従って、ファイバ非接続領域Qにおけるファイバ溝4の空間(深さ)は、ファイバ接続領域Pにおけるファイバ溝4の空間(深さ)よりも大きくなっている。
【0025】
このとき、ファイバ接続領域Pでは、図5(a)に示すように、ファイバ溝4の形状は断面逆等脚台形状となっている。ファイバ非接続領域Qでは、図5(b)に示すように、ファイバ溝4の形状は断面V字状となっている。
【0026】
また、ベース部5におけるファイバ接続領域Pの上面の幅方向両側には、図5(a)に示すように段差部13がそれぞれ形成されている。従って、ファイバ接続領域Pにおけるベース部5の上面とフタ部6の下面との間の空間(間隔)は、メカニカルスプライス2の幅方向中心側(ファイバ溝4側)よりも幅方向外側(ファイバ溝4の反対側)のほうが大きくなっている。
【0027】
なお、そのような段差部13を形成する代わりに、ベース部5におけるファイバ接続領域Pの上面の形状を、メカニカルスプライス2の幅方向中心側から幅方向外側に向かって低くなるような断面テーパ状としても良い。
【0028】
ファイバ接続領域Pにおけるベース部5とフタ部6との間の空間には、図1等に示すように、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間での光学的な不連続性を無くすための屈折率整合剤(グリス)Sが充填されている。
【0029】
このような光ファイバ接続器1において、フェルール8に保持された内蔵ファイバ9に光ファイバ3を接続するときは、図2(b)に示すように、楔部材10をメカニカルスプライス2の楔挿入凹部11に挿入する。すると、ベース部5及びフタ部6がクランプバネ7の付勢力に抗して開いた状態となる。
【0030】
そして、図1に示すように、メカニカルスプライス2の後側から光ファイバ3をメカニカルスプライス2内に導入し、光ファイバ3の先端面を内蔵ファイバ9に突き合わせる。
【0031】
その状態で、図2(c)に示すように、楔部材10を楔挿入凹部11から抜去する。すると、ベース部5及びフタ部6がクランプバネ7の付勢力により閉じられ、光ファイバ3と内蔵ファイバ9とが屈折率整合剤Sを介して光学的に接続された状態でベース部5及びフタ部6により押圧固定されることとなる。
【0032】
ところで、以上のような光ファイバ接続器1においては、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間の接続ロスや反射等の光学特性を維持するためには、ファイバ接続領域Pにおけるベース部5とフタ部6との間の空間に常に屈折率整合剤Sが満たされている必要がある。光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間から屈折率整合剤Sが無くなると、接続ロスや反射の増大といった光学特性の劣化につながる。
【0033】
光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間から屈折率整合剤Sが抜ける原因としては、主として次の2点が考えられる。即ち、まず高温環境下において、屈折率整合剤Sの粘度が低くなり、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間から屈折率整合剤Sが流れ出すことが考えられる。
【0034】
また、高温環境下において、メカニカルスプライス2内に光ファイバ3を導入するときに屈折率整合剤S中に混入した気泡や屈折率整合剤の揮発性物質(ガス)が光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間を通過するため、両者間で屈折率整合剤Sが切れることが考えられる。
【0035】
ここで、従来構造のメカニカルスプライスの断面形状を図6に示す。従来構造のメカニカルスプライス50では、ベース部5におけるファイバ接続領域Pの上面部に、上記の凹部12は形成されていない。つまり、ベース部5の上面は、全体的に平坦となっている。また、ファイバ溝4の形状は、全体的に断面V字状となっている。
【0036】
このようなメカニカルスプライス50において、屈折率整合剤S中に混入した気泡としては、ファイバ溝4の側面とフタ部6と光ファイバ3及び内蔵ファイバ9とに挟まれた空間に存在する気泡B(Vワキ気泡という)と、ファイバ溝4の底と光ファイバ3及び内蔵ファイバ9とに挟まれた空間に存在する気泡B(V頂点気泡という)という2種類に分けられる。このようにファイバ溝4内に気泡が閉じ込められると、気泡はファイバ溝4内でしか動けなくなる。このため、その状態でファイバ溝4内が昇温されると、気泡が膨張すると共に、屈折率整合剤Sの粘度が低下するため、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間を気泡が通過する可能性が高くなる。
【0037】
これに対し本実施形態では、図3に示すように、ベース部5におけるファイバ接続領域Pの上面部に凹部12を形成したので、ファイバ接続領域Pにおけるベース部5とフタ部6との間の空間がファイバ非接続領域Qにおけるベース部5とフタ部6との間の空間よりも広くなる。このため、ファイバ接続領域Pに多くの屈折率整合剤Sが充填された状態となるため、高温環境下で屈折率整合剤Sの粘性が低下しても、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間に屈折率整合剤Sが保持されやすくなり、両者間から屈折率整合剤Sが流れ出ることが抑制される。
【0038】
また、ファイバ接続領域Pにおけるベース部5とフタ部6との間の空間が広くなるので、図7(a)に示すように、Vワキ気泡Bの閉じ込め(トラップ)が抑制され、当該空間でVワキ気泡Bが広い範囲で動きやすくなる。このため、高温環境下で、Vワキ気泡Bが膨張すると共に屈折率整合剤Sの粘性が低下しても、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間をVワキ気泡Bが通過する可能性は低い。
【0039】
また、高温環境下での屈折率整合剤S中の気泡は、膨張しながら広い空間に向かって移動する傾向にある。これは、気泡の自由エネルギーが小さくなる方向へ向かっていると考えられる。
【0040】
そこで本実施形態では、ファイバ接続領域Pにおけるベース部5とフタ部6との間の空間については、図5(a)に示すように、メカニカルスプライス2の幅方向中心側よりも幅方向外側のほうを広くしている。これにより、図7(a)に示すように、Vワキ気泡Bがメカニカルスプライス2の幅方向外側つまり広い開放空間に向かって移動しやすくなるため、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間をVワキ気泡Bが通過する可能性が一層低くなる。
【0041】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、ファイバ非接続領域Qにおけるファイバ溝4の底をファイバ接続領域Pにおけるファイバ溝4の底よりも深くすることで、ファイバ非接続領域Qにおけるファイバ溝4の空間をファイバ接続領域Pにおけるファイバ溝4の空間よりも広くしている。これにより、図7(b)に示すように、V頂点気泡Bがメカニカルスプライス2の前後方向外側つまり広い開放空間に向かって移動しやすくなるため、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間をV頂点気泡Bが通過する可能性も低くなる。
【0042】
以上により、高温環境下において、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との間から屈折率整合剤Sが抜けることが防止され、両者間に屈折率整合剤Sが維持されるようになる。これにより、高温環境下での光学特性を安定化させることができる。
【0043】
また、ベース部5におけるファイバ接続領域Pの上面部に凹部12を形成することで、ファイバ接続領域Pにおけるファイバ溝4の深さをファイバ非接続領域Qにおけるファイバ溝4の深さよりも浅くした場合には、ファイバ溝4の深さを全体的に浅くした場合と比較して、以下のような効果がある。
【0044】
即ち、まずメカニカルスプライス2内に存在する光ファイバ3及び内蔵ファイバ9は、ファイバ溝4の側面の2箇所及びフタ部6の1箇所という合計3箇所で固定される。光ファイバ3及び内蔵ファイバ9をファイバ溝4に位置決めする際には、ベース部5の上面に対してフタ部6の下面が平行であることが望ましい。
【0045】
本実施形態では、ベース部5におけるファイバ接続領域Pのみの上面部に凹部12を設けることで、ファイバ非接続領域Qではベース部5とフタ部6との間隔が十分小さくなるため、ベース部5の上面とフタ部6の下面とを平行に保つことができる。
【0046】
また、上記のような現地付け用のメカニカルスプライス型光コネクタでは、保管時には内蔵ファイバ9のみがファイバ溝4の側面とフタ部6とで固定される。ファイバ溝4の深さを全体的に浅くした場合には、その状態で放置しておくと、内蔵ファイバ9の側圧でベース部5及びフタ部6の表面がクリープ変形する。そのクリープ変形によってファイバ溝4に対する内蔵ファイバ9の位置がずれるため、光ファイバ3をメカニカルスプライス2内に導入して内蔵ファイバ9に突き合わせたときに、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との軸ずれが生じ、両者の接続ロスが大きくなる可能性がある。
【0047】
本実施形態では、上述したようにファイバ非接続領域Qにおけるベース部5とフタ部6との間隔が十分小さくなる。このため、内蔵ファイバ9からベース部5及びフタ部6に加わる圧力が緩和されるため、ベース部5及びフタ部6の表面のクリープ変形が抑えられる。従って、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との軸ずれによる接続ロスの増大を防止することができる。
【0048】
さらに、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との接続を行う際には、ベース部5とフタ部6との間を広げて、光ファイバ3をメカニカルスプライス2内に導入する。ここで、ファイバ溝4が浅すぎると、ベース部5とフタ部6との間隔が光ファイバ3の外径よりも大きくなり、ファイバ溝4から光ファイバ3が脱落してしまうことがある。一方、ベース部5とフタ部6との開き量が小さいと、ファイバ溝4に光ファイバ3を通すことができなくなる。
【0049】
本実施形態では、ベース部5におけるファイバ接続領域Pのみの上面部に凹部12を設けたので、光ファイバ3の導入に関わるファイバ非接続領域Qでは、ファイバ溝4を十分深くし、光ファイバ3と内蔵ファイバ9との接続に関わるファイバ接続領域Pでは、光ファイバ3がファイバ溝4の側面の2箇所で接するような程度までファイバ溝4を浅くすることができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ベース部5のファイバ接続領域Pでは、ファイバ溝4の形状が断面逆等脚台形状となっているが、ファイバ非接続領域Qにおけるファイバ溝4の空間がファイバ接続領域Pにおけるファイバ溝4の空間よりも大きくなっていれば、ファイバ溝4の形状としては、ファイバ接続領域Pでも断面V字状となっていても良い。
【0051】
また、上記実施形態の光ファイバ接続器1は、光ファイバ3を内蔵ファイバ9に接続するメカニカルスプライス型の光コネクタであるが、本発明は、2本の光ファイバを両側からメカニカルスプライス内に導入して接続・固定するタイプのものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…光ファイバ接続器(光ファイバ接続構造)、2…メカニカルスプライス、3…光ファイバ、4…ファイバ溝、5…ベース部、6…フタ部、8…フェルール、9…内蔵ファイバ、12…凹部、13…段差部、P…ファイバ接続領域、Q…ファイバ非接続領域、S…屈折率整合剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ同士を屈折率整合剤を介して突き合わせて接続するメカニカルスプライスを備えた光ファイバ接続構造において、
前記メカニカルスプライスは、前記光ファイバを収容するファイバ溝を有するベース部と、前記ファイバ溝に収容された前記光ファイバを前記ベース部に対して押さえるフタ部とを有し、
前記ベース部は、前記光ファイバ同士が接続されるファイバ接続領域と、前記ファイバ接続領域に対して前記ファイバ溝の延在方向両側に位置するファイバ非接続領域とを有し、
前記ファイバ接続領域における前記ベース部と前記フタ部との間の空間は、前記ファイバ非接続領域における前記ベース部と前記フタ部との間の空間よりも大きいことを特徴とする光ファイバ接続構造。
【請求項2】
前記ベース部における前記ファイバ接続領域の上面部には、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ接続構造。
【請求項3】
前記ファイバ接続領域における前記ベース部と前記フタ部との間の空間は、前記ファイバ溝側よりも前記ファイバ溝の反対側のほうが大きくなっていることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバ接続構造。
【請求項4】
前記ファイバ非接続領域における前記ファイバ溝の空間は、前記ファイバ接続領域における前記ファイバ溝の空間よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光ファイバ接続構造。
【請求項5】
前記ファイバ非接続領域における前記ファイバ溝の底の位置は、前記ファイバ接続領域における前記ファイバ溝の底の位置よりも低いことを特徴とする請求項4記載の光ファイバ接続構造。
【請求項6】
光ファイバ同士を屈折率整合剤を介して突き合わせて接続するメカニカルスプライスを備えた光ファイバ接続構造において、
前記メカニカルスプライスは、前記光ファイバを収容するファイバ溝を有するベース部と、前記ファイバ溝に収容された前記光ファイバを前記ベース部に対して押さえるフタ部とを有し、
前記ベース部は、前記光ファイバ同士が接続されるファイバ接続領域と、前記ファイバ接続領域に対して前記ファイバ溝の延在方向両側に位置するファイバ非接続領域とを有し、
前記ファイバ非接続領域における前記ファイバ溝の空間は、前記ファイバ接続領域における前記ファイバ溝の空間よりも大きいことを特徴とする光ファイバ接続構造。
【請求項7】
前記ベース部には、前記光ファイバの一つを構成する内蔵ファイバを保持するフェルールが固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の光ファイバ接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−208230(P2012−208230A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72499(P2011−72499)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】