説明

光フィルタ/モジュレータ及びフィルタ/モジュレータのアレイ

【課題】光フィルタ又はフィルタのアレイは一次元又は二次元とすることができる。フィルタ又は複数のフィルタは、半反射性表面間の光路長を変化させることによる複数のビーム干渉を用いる。半反射性表面間の光路長は、2つの半透明電極間に形成された電場に応答してポリマーフィルムの厚さを変化させることによって変化する。フィルタは、透過又は反射モードのいずれかに構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルタ及び光フィルタを用いるアレイに関する。詳細には、本発明は、半反射性表面の間の光ビームの光路長を変化させることによる複数のビーム干渉を用いる光フィルタに関する。特に、本発明は、電場に応答して厚さを変化させるポリマーフィルムに関し、フィルムの厚さの変化は、それがフィルタを通過する際に、相当する光ビーム光路長の変化をもたらす。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル及び投影デバイスは、急速に成長しているディスプレイ技術である。これらの技術の多くは光の濾波と変調を含む。より良い解像度、より明るい表示、より広い色域及びより高いコントラスト、並びに、より低い製造コスト及びより低いエネルギー消費は、現在の研究と開発努力の目標のほんの数例である。
【0003】
直視フラットパネルディスプレイは、コンピュータモニター及びテレビジョン、並びに、携帯電話ディスプレイ、個人データシステム、携帯ゲーム機、カメラ、全地球測位システム及び他の多くを含む。プラズマ及び液晶ディスプレイ(LCD)などの現在の技術は、動作のためにかなりのエネルギーを必要とし、製造は比較的コストがかかる。一般にプラズマは、40インチを超えるディスプレイに制限される。典型的なLCDにおいて製造される多数の薄膜トランジスタ(TFT)は、品質管理問題を招き、多くの時間が製品検査に費やされ、不良率が高い。
【0004】
LCD系ディスプレイは、偏光フィルタと色吸収フィルタが必要なため、エネルギー消費の多い非常に高輝度のバックライトを必要とする。偏光フィルタは60%の光源を吸収し、色フィルタは光源の75%までを吸収する。LCDディスプレイにおける他の部品の吸収と一緒にすれば、通常は光源の約5%しか透過しない。このように、これらのデバイスは光とエネルギーの効率が悪い。
【0005】
LCDディスプレイの画質は最適ではない。第1に、応答時間は遅いと考えることができる。第2に、現在のLCD技術はサブピクセルを必要とし、薄膜トランジスタ及びデータドライバーを含む所与の数の電子部品に対して解像度が低い。現在のLCD技術は、輝度を低下させる偏光フィルタと色フィルタを必要とし、色域を狭くし、一度に使用できる原色の数を制限する。最終的に、LCD技術は、各サブピクセルのTFTを含むかなり多くの電子部品を必要とするので、典型的に、各ピクセルに付随して光源を透過しない多数のブラックマトリックスが存在する。
【0006】
ピクセル当たり少ないサブピクセルで高い解像度を提供し、同時にTFTやデータドライバーを含む電子部品を低減する直視ディスプレイが必要である。また、偏光及び色吸収フィルタが省略され、より高い輝度、より広い色域、より純粋な飽和色、より良いコントラスト比を生成するディスプレイが必要である。光をより効率的に用い、偏光フィルタや色吸収フィルタを省き、ダークマトリックス効果を最小にするディスプレイが必要である。
【0007】
デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、液晶光弁(LCD)及びシリコン上液晶(LCOS)などの現在の投影ディスプレイは、フラットパネル直視ディスプレイと同じ多くの欠点を有する。現在の技術は、LCD及びLCOSに用いられている偏光フィルタを用いることが必要である。これら3つの技術の全ては、3つの個別の光弁を用いて3つの個別の色を表示することができ、製造コストの増加を招く。1つの光弁が使用される場合には、吸収フィルタカラーホイールを使用しなければならない。DMDは高価なマイクロ機械加工を必要とする。従って、LCD、LCOS、及びDMDに、これらのデバイスに固有の欠点のない優れた画質を提供する技術が必要である。
【0008】
前述のことに基づき、3つ未満の光弁で高コントラストの広い色域を供給することのできる投影ディスプレイ用の光フィルタが必要であることは明らかである。また、偏光及び色吸収フィルタの必要性を省き、より広い色域を有しより高い輝度のディスプレイが得られる技術が必要である。また、いくつかのLCD系投影ディスプレイに見られる不利な効果の「スクリーンドア効果」を低減するために電子部品の数を低減することが望ましい。また、吸収カラーホイールを使用することなく1つの光弁内で全色制御を行う技術が必要である。また、より飽和した色を提供し、従って、退色のない高い強度で明瞭な画像を提供する必要がある。また、光源の大部分が透過する高い光効率を備える投影ディスプレイが必要である。加えて、従来の投影ディスプレイ技術の特徴である熱を蓄積することのないより明るいディスプレイを達成することができると考えられる。
【0009】
また、トナー/フューザープリンタ用像形成器として使用されるレーザー及びLEDアレイの使用を改善する技術が必要である。例えば、複数の解像度の改善を可能にする技術が必要である。現在のデバイスは、現在のレーザープリンタの場合のように、レーザー及び回転ミラーやレンズの複雑なシステムを用いる。このように、レーザー技術の場合のようにレーザードットのサイズに制限されない、又はLEDアレイの場合のようにLEDのサイズに制限されない技術が必要である。また、高価なレーザーの必要性を無くすことによって、レーザープリンタの低コストの代替を提供する技術が必要である。さらに、全ての線を一回で像形成ドラム上に投影することがきるように、より高速度であることが必要である。また、像形成ドラム上に投影することのできる光強度が変動するため、現在の技術から得られるよりもさらに細かな詳細さが必要である。
【0010】
また、改善された光フィルタ及び付属するアレイは、リソグラフィーを含む大きなフォーマットのプリンタ用像形成器に用いることができると考えられる。
【0011】
また最後に、デジタルカメラ、ビデオカメラ、及び電子的に微調整可能なフィルタなどの他の像形成デバイス、空間光モジュレータ、分光計デバイス、顕微鏡デバイス、ホログラフィー、データバス、及び波長分割マルチプレクサー(WDM)デバイス及び大きなファブリペロー干渉計への使用に適用可能にされた、フィルタ技術が必要である。
【0012】
電場を印加することによってその物理的特性を変化させるポリシロキサンのさまざまな形を用いる多くの従来技術デバイスがある。例えば、光モジュレータは、少なくとも1つの誘電体層がポリシロキサンゲルなどのレリーフ形成ゲルであり、他の層が空気である、2つの変形可能な誘電体層を有するものとして説明されてきた。レリーフは、誘電体層の両側に設けられたいずれかの電極に印加された信号に応答して、層間の界面に形成される。
【0013】
他の従来技術の光スイッチングデバイスは、電子的に制御された可変厚さプレートを有するデバイスを通過する入射光波を操作する。デバイスは第1透明電極と、第2透明電極と、誘電層であり電場に応答して局部的に厚さを変形させる第1と第2電極の間に配置された透明な粘弾性材料を含む。透明粘弾性材料は、電場の存在下に置かれるとき粘性流れを起こし電場が消去されるときその元の形に向かって緩和する、シリコンゲル、油、さまざまなポリマー材料及び他の粘性物質を含む。
【0014】
デバイスの他の種類は、電気信号に応答して幾何形状的に不均一な状態を得る電気浸透運動を行う液体層を有するものとして説明された制御要素であり、印加電圧に高い感受性を有する。液体層は、少なくとも1つのシリコン化合物、好ましくはシラン又は有機ポリシロキサンを含むシロキサンの誘導体を含む。
【0015】
さらに他のデバイスは、電荷貯蔵デバイスを含む固体光モジュレータであり、少なくとも1つのディスプレイ電極が付属する半導体基板と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)など、シリカ含有ゲルの変形可能なエラストマー層と、光反射金属電極層を含む。ディスプレイ電極と上部電極の間に印加された電位は、ゲル層を波状パターンに変形させる。
【0016】
透明フィルム、又はポリシロキサンと液晶成分のコーティング組成物混合物は、光モジュレータデバイス中の有機非線形光ユニットとして用いられてきた。ポリシロキサン分子の分子配列は外部の場によって誘起することができる。
【0017】
上記デバイスのいくつかは、ポリマー材料が流体又は流動可能な状態に維持されることを必要とする。従って、完成された組み立て体は、平坦で水平な配列に保たなければならない。ポリマー材料と基板の間にある種の接着が存在するデバイスにおいても、デバイスの運動はポリマー材料の垂れ下がりを招く可能性があり、従って、ポリマー材料の光変化特性を十分制御することができない。上記デバイスのいくつかは10ミクロンを超える厚さを必要とする。これらのデバイスはその記載された目的に効果的であると考えられるが、その特定の性質と処方はディスプレイに用いる助けにはならない。従って、ディスプレイ型デバイスに用いることのできる光フィルタ及び光モジュレータ用の使用に適合するポリシロキサン構造の技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述のことから、本発明の第1態様は、光フィルタ/モジュレータ及び光フィルタ/モジュレータのアレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の他の態様は、その間に間隙を有する1対の対向基板と、電極と基板の各対がそれに付随する反射特性を有する、基板の各々に配置された電極と、電極の1つに配置され化学的に結合したポリマーフィルムを含み、電極間の電圧印加が、ポリマーフィルムの厚さの均一な対応する変化をもたらす光モジュレータである。
【0020】
本発明のさらに他の態様は、電極表面と結合することのできる反応基と1つ以上の極性基を含むポリシロキサンポリマーであり、ポリマーは電場に感受性がある。
【0021】
本発明の目的、技術、及び構造を完全に理解するために、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の概念による単一透過性フィルタ要素を含む光モジュレータの概略図である。
【図2】本発明によるアレイの2つの透過性フィルタ要素を提供する光モジュレータの概略図である。
【図3】本発明の概念による透過性フィルタ要素の2次元アレイを含む光モジュレータの概略図である。
【図4】本発明の概念による可変厚さポリマーフィルムの厚さ変化を示す、2つの透過性フィルタ要素を提供する光モジュレータの概略図である。
【図5】本発明による各基板に付属する可変厚さポリマーフィルムを含む透過性フィルタ要素を有する光モジュレータの概略図である。
【図6】本発明の概念による共通電極上に連続的にコーティングされた可変厚さポリマーフィルムを有する2つの透過性フィルタ要素を提供する光モジュレータの概略図である。
【図7】本発明の概念による活性電極上に配置された高反射性コーティングを有する2つの透過性フィルタ要素を示す光モジュレータの概略図である。
【図8】本発明の概念による直視ディスプレイのアレイの部分として2つの透過性フィルタ要素を用いる光モジュレータの概略図である。
【図9】本発明の概念による直視ディスプレイのアレイの部分として2つの透過性フィルタ要素を用い、本発明の概念によるファイバー光面プレートが用いられる光モジュレータの概略図である。
【図10】本発明の概念による透過性フィルタを有する光モジュレータを用いるカメラシステムの概略図である。
【図11】本発明の概念による単一ファイバー光入力に結合された単一フィルタを有する光モジュレータの概略図である。
【図12】本発明の概念による複数のファイバー光入力に結合され、又はそれに付随する透過性フィルタのアレイを有する光モジュレータの概略図である。
【図13】2つのフィルタ要素を用い、モジュレータが反射性フィルタアレイ中に用いられる光モジュレータの概略図である。
【図14】2つのフィルタ要素、及び本発明の概念による電極上にコーティングされた高反射性フィルムを有する反射性アレイ中の第3のフィルタ要素の部分を用いる、光モジュレータの概略図である。
【図15】本発明の概念によるポリマーフィルムの膨張を可能にする格子を備えるポリマーフィルムフィルタ要素を有する光モジュレータの電極表面の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一般に、本発明は光フィルタ、又は1次元又は2次元のいずれかとすることのできるフィルタのアレイに関する。これらの光フィルタは、反射モード又は透過モードで用いることができる。他の実施形態において、フィルタは、直列の透過性フィルタ、直列の反射性フィルタ、又は濾波能力を高めるために反射性フィルタと透過性フィルタを組み合わせて配置することができる。
【0024】
説明されるデバイスは、半反射性表面間の光路長を変化させる複数のビーム干渉を用いる光の濾波及び/又は変調によって動作する。光路長はΣndで定義され、nは反射性表面間の個々の層の屈折率であり、dは反射性表面間の個々の層の厚さである。半反射性表面間の光路長は、半反射性表面に付属する2つの半透過性電極間に形成された電場に応答してポリマー層の厚さを変えることによって変化させることができる。また、図面に示した部品は、正確な縮尺でないことを理解されたい。さらに、いくつかの場合、さまざまな光モジュレータ実施形態の部品は、互いに間隔をおいて示される。しかし、部品は、必要に応じて互いに直接隣接して配置することもできる。言い換えれば、デバイスの部品は、互いに直接接触することができる。
【0025】
ここで、図面、特に図1に関し、全体を符号20で表わされた本発明の概念による光モジュレータを見ることができる。図1に示したモジュレータ20は、本発明の一般的な教示を示す透過型フィルタの基本的な実施形態である。当業者であれば、光モジュレータ20が後の図面で示される反射性などの異なる実施形態で構成することができることを理解するであろう。本実施形態において、モジュレータ20は図示したように画素又はピクセルと呼ぶことのできる単一のフィルタを提供するが、後述のように複数のピクセルで提供することができよう。このように複数のフィルタが用いられる場合、モジュレータは、マトリックス、アレイ、又はフィルタのアレイと呼ぶことができる。
【0026】
光モジュレータ20は、全体として符号22で示された、コントローラ24に接続されて制御されるプログラム可能な複数ビーム干渉光フィルタを含む。特に、電源に取り付けられたコントローラ24は電力を供給し、フィルタ22又は複数のフィルタを動作するための適切な制御信号を発生する。コントローラ24は、モジュレータ20及びフィルタ22の動作を可能にするのに必要なハードウェア、ソフトウェア、及びメモリーを含む。説明が進むと判明するように、フィルタ22の実施形態の変形は、アルファベットの接尾辞によって提供することができる。
【0027】
光モジュレータ20は、広帯域、複数の個別帯域、又は光の単色の形を発生する光源26を含むことができる。コントローラ24に接続することができ、又は独立に制御することのできる光源26は、近赤外、赤外、又は紫外(>300nm)の種類の光を発生することもできる。光フィルタ22の部品構造に応じて、光源の範囲はさらに紫外領域に伸びることができる。光源は冷陰極蛍光、熱陰極蛍光、エレクトロルミネセンス、ゼノン系ランプ、ハロゲン化金属、水銀アーク、又はいくつかの実施形態において、極めて狭い帯域の色の3つ以上の発光ダイオード等とすることができる。また、前述の単色光源は、発光ダイオード又は適切なレーザー光源とすることができる。広帯域光源は、カメラ及び像形成用途において天然又は人工光を含むことができる。広帯域紫外/可視又は赤外光源は、分光計用途における光源として用いることができる。
【0028】
光源26は、フィルタ22の光路長が所与の時間で波長の積分であるような波長λを有し、透過する入力光28を発生する。所与の時間で積分ではない光は、反射される。さらに詳細に論じるように、透過する波長λは、式
Σnd=mλ/2 (1)
で求められる。ここで、nは整数≧1である。反射性表面の間で反射した入力光が同相であるような光路長であるとき、コンストラクティブ干渉が発生しフィルタは、光の波長を透過する。この条件が保たれなければ、ディストラクティブ干渉が発生し、透過は低くなり、光の波長は反射されるであろう。当業者であれば、光路長の変化は複数のビーム干渉を招き、従って、フィルタによって透過された、又は光源に向かって反射して戻る光の波長に相当する変化をもたらすことを理解するであろう。
【0029】
光源26によって発生した入力光28は、全体的に符号30で表わされる光学システム中に導くことができる。光学システムから放射される光は、修正入力光28’と呼ぶことができる。選択された実施形態において、光学システム30は、光を平行にするためにレンズを含むことができる。また、システム30は、フィルタ22中の光路長を制御するために僅かな角度、<5°を与えることができる。多くの実施形態において、0°に近い角度が有利であると考えられる。光源26がフィルタ22の直後に広い及び拡散された光を発生する直視用途において、無限遠の焦点は実際的ではない。この場合、光28’を狭い円錐に導く光学システムが望ましい。また、光学システム30は、光の望ましくない波長を濾波し、又は遮断することができる。たとえば、通過する可視光から紫外及び赤外光を濾波又は遮断することができる。また、光学システム30は、黒いピクセルを形成することのある広帯域光源から帯域を濾波することができる。また、光学システム30は、他の実施形態において議論されるように、カメラに用いられるレンズの形とすることができることが理解されるであろう。
【0030】
光学システム30に近接して配置されたフィルタ22は、1対の間隔を置く基板32と34を含む。基板32と34は、光学的に透明なガラスの形とすることができ、又はそれらはシリカ、又はポリエステルなどの可撓性透明ポリマーを含んで、十分な機械的強度の任意の他の透明基板を含むことができる。基板32及び34は分離されて、その間に全体的に符号36で表わされる空隙を提供する。空隙36は、球状ガラスビーズ、ガラス棒、ポリマー壁、堆積されエッチングされた誘電体の形、又は基板間に所定の距離を維持するような他の構成とすることのできる複数のスペーサ38によって維持される。スペーサ38は、基板32と34の間に、フィルタ22の適切な作動を保証するために必要な均一の距離を提供する。
【0031】
反射防止コーティング40は、光学システム30を通過した修正入力光28’に対面するように基板32上に提供し配置することができる。反射防止コーティングは、直視ディスプレイ、投影及び像形成用途などの用途において広帯域可視光用に最適化することができる。単色用途において、反射防止コーティングは修正入力光28’の特定の波長用に最適化することができる。
【0032】
各基板32及び34には高い反射性(HR)誘電体コーティングを設けることができる。特に、基板32には高反射性コーティング42が設けられ、基板34には高反射性コーティング43が設けられる。コーティング42及び43は、互いに対面するようにそれぞれの基板上に配置される。各コーティング42及び43は、高屈折率と低屈折率フィルムの交互の積み重ねを含むことができる。広帯域光源について、HRコーティングは、例えば可視光スペクトルなどの光源のスペクトルに最適化することができる。RGB発光ダイオードを有するディスプレイにおいて、HRコーティングは、発光ダイオードによって発生された特定の波長に最適化することができる。リンを励起する冷陰極蛍光などの光源が用いられる場合には、HRコーティングは、リンの狭い一次帯域用に最適化することができる。HRコーティングは、基板32及び34上に連続的にコーティングすることができ、又は必要なパターンをコーティングすることができる。銀、白金、金又はアルミニウムなどの反射性金属コーティングを用いることができる。実際には、金属と誘電体コーティングの組み合わせを用いることができる。フィルタの前面から光が容易に出ることができるように、HRコーティング43は、HRコーティング42よりもわずかに反射性を低く作ることができることが理解されるであろう。代りに、他の実施形態において議論するように、HRコーティング42及び43は、フィルタ22内の他の部品上にコーティングすることができる。
【0033】
ディスプレイ用途では、コーティングの反射率R(R=rであり、rはコーティング42、43の反射率である)は75%を超えなければならず、より好ましくは95%を超えなければならない。このように、ディスプレイ用途において、反射率は、非常に狭い、しかし狭過ぎない透過した色の帯域幅を形成するために十分大きくなければならない。光源26としてRGBのLEDアレイが用いられる場合には、反射率は、通過した帯域幅がLEDの帯域幅に整合するように制御しなければならない。冷陰極蛍光又は励起されたリンによる他の光源が用いられる場合には、反射率は、リンの一次放射帯域の帯域幅に整合するように制御しなければならない。より高い反射率は、より純粋なスペクトル色を作る狭い帯域を与え、従って、ディスプレイ用途のためにより広い色域及びより黒い黒ピクセルを提供する。また、狭い帯域幅は、ディスプレイ用途においてより黒い黒ピクセルを提供する。光源26としてレーザー光が用いられる場合、コーティング42及び43の反射率は、レーザー光源に相当する帯域幅を通過させ、並びにレーザー光を濾波するように、光源の特定の波長に整合させて99%を超える反射率を与えることができる。分光計用途において、反射率を99%より大きくして、良好な解像度のために狭い分光帯域幅を与える実施形態を提供することができると考えられる。
【0034】
コーティングが提供される場合、コーティング42及び43の各々に、また、コーティングが提供されない場合、基板32及び34上に、対応する電極が配置される。選択的にパターン形成することのできる各電極は、コントローラ24に接続される。電極には、特定の電圧を印加するための電子部品が付属することがさらに理解されるであろう。特に、活性マトリックスの共通電極44には基板34が付属し、活性マトリックスの活性電極46には電極と基板の間にコーティングが配置された基板32が付属する。しかし、電極44と46は、特定の用途で必要に応じて基板上に位置を切り替えられることが理解されるであろう。さらに、各電極44及び46は、必要ならばAl又はSiOなどの絶縁層でさらにコーティングして基板間の電気的短絡を防止し、ポリマーフィルムの化学的結合用の反応性部位を提供することができることが理解されるであろう。電極44及び46は、酸化インジウムスズ(ITO)などの半透明な金属酸化物を含むことができる。また、金属酸化物は、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、その他を含むことができる。代りに、電極は、金、銀、白金、アルミニウム、又はその合金などの金属を含むことができる。これらの金属電極は、1つ以上の誘電体材料でコーティングして反射率及び/又はポリマーフィルム(後述される)又は絶縁フィルムへの結合を高めることができる。また、金属電極が用いられる場合、それらはフィルタ22に反射性コーティングも含むことができ、誘電体の高反射性コーティング42及び43を省くことが可能である。金属電極は低い電圧で同等の電場を可能にできる。金属電極の反射率は、電極の厚さを制御することによって選択することができる。代りに、誘電体と金属電極の組み合わせを用いることができる。さらに、いくつかの実施形態において、反射率整合酸化インジウムスズ(IMITO)電極を用いることができ、ITOは、それが取り付けられ、又は付属する基板に整合する。
【0035】
符号48で全体を示される可変厚さのポリマーフィルムが、少なくとも1つの電極上に配置され、又は付属する。多くの実施形態において、可変厚さのポリマーフィルム又はフィルムは活性電極46上に配置される。フィルム48は、電極44と46の間に印加された電圧に応じて厚さが変化する。従って、フィルム48の厚さが減少すると、フィルム48と対面共通電極44の間の可変空間49は、厚さが増加する。同様に、フィルム48の厚さが増加すると、フィルム48と電極44の間の可変空間49は、厚さが減少する。このように、フィルムの厚さ及び付属間隙の変化は、電極間の光路長
Σnd=n+n (2)
を変化させる。nは空気の屈折率であり、dは可変空間又は空気間隙の厚さであり、nはフィルム48の厚さdでの屈折率である。フィルム48の屈折率は、厚さの変化と共に僅かに変化する。実際に、フィルムの屈折率は、厚さの変化と共にΔn/Δτに従ってわずかに変化し、Δτはフィルムが印加電場によって歪む際のフィルム上に加わる応力である。従って、Σndが光源波長の積分である場合には、光の波長は通過する。通過した帯域の帯域幅は、高反射性コーティング42及び43の反射率によってさらに決定されるが、コーティングはフィルタ22中に構成される。図1に見られるように、フィルム48は、電場が印加されないとき不活性状態50で提供することができ、電場が印加されるとき活性状態で提供することができる。活性状態は、フィルム48を収縮又は拡張させる。フィルムの収縮又は伸長(拡張とも呼ばれる)は、フィルムの特性に関する多くの要因に依存する。実際に、フィルム48は、拡張活性状態52及び収縮活性状態53を有することができる。
【0036】
前に論じたように、修正された入力光28’は、光が通過するときのフィルタの光路長の積分である波長λを有する。所与の時の積分ではない光は、反射される。通過する波長λは、式(1)によって求められ、式中、Σndは反射表面42と43の間の層の光路長の総計であり、mは整数≧1である。光路長Σndは、フィルム48の厚さの変化と共に変化する。フィルムの厚さの変化は、コントローラ24によって制御される電極間に印加された電場によって決定される。従って、電圧がフィルム48の間に印加されるとき、フィルムは収縮することができ、間隔を置く基板間の空間49が増加する。このように、光路長は、光源から1つの色を通過させることができ、変化した光路長は、光源から他の色を通過させることができる。実際には、他の電圧で、光路長は、光源にない帯域幅のコンストラクティブ干渉を行い、従って黒いピクセルを形成しうる。このように、単色光源で、フィルタは、モジュレータとして働くことができ、光源からの光を通過させ、又は通過させない。光路長は、単色光源とディストラクティブ又はコンストラクティブ干渉を行って、ゼロ又は1のデジタルビットを作るように構成され、又はそのようなサイズにされる。言い換えれば、フィルム48の制御は、黒いピクセル又は白いピクセルを発生することができる。
【0037】
スペーサと基板の構成に応じて、反射表面間の間隙36の総距離は、1μm未満〜10μmを超える範囲、いくつかの場合には数ミリメートルの範囲とすることができる。多くの実施形態において、総厚さは、フィルム48の厚さを変化させるのに必要な電場を作るために必要な電圧を最小化するように、実際に可能な限り小さくすべきであると考えられる。薄い総厚さは、消費される電力を最小にし、同時にフィルタの応答時間を低減する。より低い電圧は、活性マトリックス中の部品をより小さくし、ディスプレイの黒い領域又は不活性領域を減少させる。より薄い総厚さは、モード間の重なり合いを最小化するであろう(式1における整数m)。広帯域用途において、最適総厚さは2μm未満である。他の実施形態で議論されるように、フィルム48は、望ましい光出力を提供するように電極上に選択的に配置し必要に応じてパターンコーティングすることができる。
【0038】
一般に、フィルムのポリマーは、電極表面に化学的に結合した柔らかい固体である。すなわち、ポリマーは、低いモジュラス及び低い誘電正接を有すべきであり、誘電正接はモジュラス損失/弾性モジュラスに等しい。電極へのポリマーの化学的結合は、説明されるように、ポリマーの電極及び基板に対する流動又はクリープを防止すると考えられる。また、電極へのフィルムの化学的結合は、本明細書に議論される他の特性と共に既存技術には存在しない動作特徴を提供すると考えられる。1つ以上の実施形態において、ポリマーのモジュラスは、約40,000パスカル未満である。これらの、又は他の実施形態において、誘電正接は約0.15未満である。一実施形態において、誘電正接は約0.05未満である。低い誘電正接を有するポリマーは、低い内部摩擦を有し、電極に印加され取り除かれる電圧の結果として繰り返し応力の間に発生する熱を最小化する。フィルム48のポリマーの弾性モジュラスは、フィルムを拡張又は収縮させるのに緩やかな電圧が必要であるように十分低くなければならない。電極表面の面へのポリマーの化学的な結合は、z方向の応答を高める。また、電極表面へのポリマーフィルムの化学的な結合は、縦位置に保持されたときポリマーフィルムの垂れ下がりを防止する。薄いポリマーフィルムは、バルクのポリマーよりも顕著に低いモジュラスを有することが知られている。多くの実施形態において、ポリマーフィルムは、フィルムのモジュラスを最小にするため可能な限り薄い厚さにコーティングすべきである。上述のように、5μm未満の厚さ、及び1μm未満程度までの厚さを用いる実施形態は、広帯域可視用途に好適である。多くの場合、結合は電極表面への個別の化学鎖によるものだけである。いくつかの場合、ポリマー分子間を光架橋とすることができる。しかし、弾性モジュラスは、フィルムを伸長又は収縮するのに高い電圧を必要とする大きさとすべきではない。しかし、フィルムが拡張又は収縮されるとき、収縮エネルギーは弾性エネルギーとして蓄えられ、これは、電場が取り除かれ又は消去されたときポリマー材料がその元の厚さに戻る助けになる。
【0039】
理想的には、フィルムは、最大収縮50%、さらに理想的には30%収縮させなければならない。電極によって加えられる電圧は、フィルムを数サイクルごとに拡張させて、フィルムの収縮が固定されないように定期的に逆転しなければならない。言い換えれば、1つの極性の電圧のフィルムへの印加は、フィルムを収縮し、逆極性電圧の印加は、フィルムを伸長させる。フィルムの最大拡張は、収縮よりも小さくなければならず、最大30%、さらに理想的には約20%である。フィルタ及びフィルム48の残りの総厚さは、フィルム厚さの最小変化が対象波長のモードについてコンストラクティブ干渉をもたらすように選択することができる。
【0040】
1つ以上の実施形態において、可変厚さポリマーフィルム(ポリマーフィルム)48は、低いガラス転移温度、低いモジュラス、低い誘電正接、高い化学的飽和、及び十分な光安定性を備える弾性ポリマーを含む。一実施形態において、フィルムは、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイソブチレンなどの飽和ゴム、又はポリシロキサンポリマー、又はそのコポリマー又はターポリマーを含む。他の弾性体も可能である。いくつかの実施形態において、フィルムは、電場に感受性のあるように修正したポリマーを含む。一実施形態において、フィルムはポリシロキサンを含む。
【0041】
1つ以上の実施形態において、ポリシロキサンポリマーは直鎖ポリシロキサンを含む。直鎖ポリジメチルシロキサン分子は、ポリマー鎖のSi−O結合の周りの結合回転エネルギーがほぼゼロであり、これはポリマーを非常に可撓性にする。ポリジメチルシロキサンポリマーは120℃未満のガラス転移温度を有する。少ない割合のフェニルを含む直鎖ポリシロキサンポリマーは、より低い結晶性を有し、さらに高い可撓性を与える。
【0042】
直鎖ポリシロキサンは、高い伸長性と収縮性を有する。直鎖ポリシロキサンは、低いモジュラスと低い誘電正接を有する。ポリシロキサンは、高い反射率と光沢を有し低い光散乱と低い光吸収性を示す。ポリシロキサンは、熱と高い光フラックスに安定性がある。ポリシロキサンは、広範囲の屈折率を有し低い複屈折性を示すように合成することができる。ポリマーは、湿度に抵抗性があり、ガス透過性である。ポリシロキサンは、低温で可撓性を保つ。
【0043】
一実施形態において、直鎖ポリシロキサンポリマーは、Si(CH基を含む、すなわち、各シリコン原子に結合した2つのメチル基を有する。他の実施形態において、1つ又は両方のメチル基は、シリコン原子に対して少ない割合(<15%)で他の置換基で置き換えることができる。置き換える置換基の実施例は、フェニル基、フルオロアルキル基、2つ以上の炭素原子を含むアルキル基、及びシアノ基を含むが、これらに制限されない。置換は、屈折率、粘性特性、又は電気活性特性を変化させるように行うことができる。1つ以上の実施形態において、1つ以上のシリコン原子はゲルマニウム原子で置換することができる。メチル基を少ない割合のフェニル基で置換することは、モジュラス及びガラス転移温度の両方を低下させ、並びにポリマーの屈折率を高くする。
【0044】
上述のように、ポリマーフィルムは、電極間に形成された電場に応答性のあるポリマーを含む。1つ以上の実施形態において、ポリシロキサンポリマーは、電場に十分な応答性を示す。他の実施形態において、応答性は、ポリシロキサンポリマーに1つ以上の極性基を加えることによって高めることができる。一実施形態において、ポリマーは、電場に応答性のある極性基を含み又は含むように修正することができる。極性基は、イオン性基及び非イオン性極性基を含むことが理解されよう。1つ以上の実施形態において、ポリマーは、懸垂アニオンを有することができる。他の実施形態において、ポリマーは、懸垂カチオンを有することができる。両性イオンなどの他のイオン構造も可能である。ポリマーは、非イオン性極性官能基、及び例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンオキシド、又はポリビニルエーテルなど非対称電荷分布を有する極性基を含むことができる。
【0045】
1つ以上の実施形態において、ポリマー分子あたりのイオン性基の平均数は少ない。一実施形態において、ポリマー分子あたりのイオン性基の平均数は約1.5までである。他の実施形態において、イオン性基の数は分子あたり約1.1未満である。極性基の数は、電場でポリマー鎖を活性にするのに十分でなければならないが、ポリマーフィルムの光学及び粘性特性に悪影響を与えるほど高くすべきではない。非イオン性基を含む実施形態は、ポリマー鎖あたり1つを超える非イオン性モノマーを含むことができる。1つ以上の実施形態において、ポリマーは、分子あたり平均約2〜約10個の非イオン性極性基を含む。
【0046】
イオン性基は、スルホン酸塩、硫酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、カルボン酸塩、カルボン酸、アンモニウム他を含むことができる。ポリシロキサンへの極性及びイオン性基の添加は、シリコン表面化学の技術分野に知られた方法によって行うことができる。1つ以上の実施形態において、電場中のポリマーフィルムの挙動は、ポリマーがアニオン性又はカチオン性官能性を有するかどうかによってある程度依存するであろう。ポリマーがアニオン性官能性を有する場合には、フィルムは、それが結合される電極上に正の電荷が置かれるとき収縮するであろう。フィルムは、それが結合される電極上に負の電荷が置かれるとき伸長するであろう。ポリマー鎖がカチオン性官能性を有する場合には、フィルムは、それが結合される電極上に負の電荷が置かれるとき収縮するであろう。フィルムは、それが結合される電極上に正の電荷が置かれるとき伸長するであろう。最大の可能な変形を得るために、電場は、ポリマーフィルムが伸長と収縮の両方を行うように極性を交互にすべきである。
【0047】
1つ以上の実施形態において、ポリマーは比較的低分子量、すなわち、約50,000amu未満の主直鎖ポリマーを含む。これらの又は他の実施形態において、ポリマーフィルムのポリマーは、約1.5未満の多分散性を有する非常に狭い分子量分布を特徴とし、ここで、多分散性=Mw/Mnである。分子量は、分子鎖の絡まりを最小にするために十分低くなければならない。絡まり分子量は、希釈されないポリマーの分子間に絡まりが起きる十分長いポリマー鎖長に関する又は相当する分子量を指す。この分子量は、粘度対数対分子量対数のプロットの傾斜からポリマーに実験的に誘導することができる。ポリマーの絡まり分子量を測定する実験技術は、W.W. Graessley in ADV. POLYM. SCI., Vol.16, 1974 にまとめられており、当業者には既知である。
【0048】
ポリシロキサンポリマーは、約100,000amuまでの液体である。直鎖ポリシロキサンポリマー液体の性質は、ポリマーを電極表面に塗工するのに有利である。液体ポリマーは、溶媒なしで塗工し、次いで電極表面に化学的に結合して波打ちのない薄膜の柔らかい固体を形成することができる。コーティングの前に、ポリマー鎖上のイオン性基は、液体ポリマーの流れ及び堆積特性を修正するために、官能基と反応して非極性基を形成することができる。電極表面への堆積及び結合の後、官能基を除去しイオン性基を解放することができる。例えば、堆積前にカルボン酸極性基を長鎖アルコールと反応させて、より非極性のエステルを形成することができる。堆積及び結合の後、アルコールは、弱い酸で脱水してカルボン酸を形成することができる。
【0049】
他の実施形態において、ポリシロキサンポリマー鎖はポリアクリラート、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド−イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂他などの低分子量ポリマーにグラフトすることができる。グラフト化の目的は屈折率、粘性特性、及び電気活性特性を含む光特性を変更するためとすることができる。さらに他の実施形態において、ポリシロキサン鎖はナノ粒子に化学的又は物理的に結合することができる。ナノ粒子はナノ粘土、活性炭酸カルシウム、シリカ、POSS、表面修飾シリカ他を含むことができる。POSS(多面体オリゴマーシルセスキオキサン)は数ナノメートルの寸法のシリカである。POSSは有機基と結合してその溶解性を変化させることができ、並びにビニル基と結合してポリマー鎖にポリマー化が可能である。M及びDの標準表示を有する直鎖ポリシロキサンは、T、Q、及びMQの標準表示を有するポリシロキサン樹脂と結合してポリマーフィルムの光学的及び粘性的特性を修正することができる。
【0050】
他の実施形態において、ポリシロキサンはフェニルシランと反応することができる。実施例は、トリフェニルシラン、ジフェニルアルキルシラン、及びトリフェニルビニルシランである。トリフェニルシランは、ポリマー鎖のビニル基と反応することができる。トリフェニルビニルシランは、ポリマー鎖の水素化物と反応することができる。フェニルシランを加える1つの目的は、ポリマーフィルムのガラス転移温度、弾性モジュラス、及び誘電正接に大きな影響を与えることなくポリマーフィルムの屈折率を高くすることである。
【0051】
フィルム48は、インクジェット、フォトリソグラフィー、e−ビームリソグラフィー、反応性イオンエッチング、プラズマコーティング、スピンオンコーティング、押し出し(スリット)コーティングによって電極に塗工することができる。インクジェット堆積は、個別の活性電極上への堆積に有利であろう。押し出しコーティングは、後に説明するように、連続又は半連続コーティング、又は共通電極などの大面積に有利であろう。次いで、フィルムは、化学反応によって電極に化学的に結合される。従って、フィルムのポリマーは、以下に説明するように、結合の前に電極又は結合剤のいずれかと反応して化学的な結合を形成することのできる反応基を含む。
【0052】
当業者であれば、多くのポリマーは鎖を有するポリマー分子を含みうることを理解するであろう。1つ以上の実施形態において、各鎖は、第1末端(すなわち端部)及び第2末端(すなわち端部)を含む。1つ以上の極性基は、ポリマー鎖の末端又はその近傍に位置する。1つ以上の実施形態において、電極又は結合剤との結合の前に、反応基は、ポリマー鎖の端部又は端部近傍に位置し、極性基は、他の端部又は端部近くに位置する。他の実施形態において、反応基は、ポリマー鎖の中間点近くに位置し、極性基は、各端部に位置する。さらに他の実施形態において、反応基は、ポリマー鎖に沿って途中に位置し、ポリマー鎖の両末端は極性基を含む。これらの又は他の実施形態において、反応基と極性基の間のポリマー鎖の長さは、絡まり分子量未満である。反応基は、ポリマー分子の中間にいくらか不規則に位置するのが好ましい。これは自由端部の極性基を千鳥配置にするので、極性基は互いにより分離される。
【0053】
ポリマー結合のための反応性部位を提供するように電極表面を化学的に修飾することができる。表面処理は、エッチング、酸化、プラズマ処理他を含むことができる。表面をSiOなどの誘電体でコーティングして結合部位を提供することができる。SiOコーティングを酸エッチングして反応性部位を増加することができる。エッチングの後、表面は、無水状態にするために乾燥すべきである。SiOでのコーティングは、電極の絶縁などの他の利点を有する。これは、アルミニウムなどの金属電極が用いられる場合に特に有利であろう。
【0054】
ポリマーの反応基は、水酸化シリコン(Si−OH)、水素化シリコン(Si−H)、シリコンアルコキシ、塩化シリコン他を含むが、これらに制限されない。反応基は、UV又はe−ビーム照射を用いる結合を可能にする官能基を含むことができよう。
【0055】
フィルタ要素に2つのポリマーフィルム層が用いられる一実施形態において、その極性は逆転する必要がある。活性電極に塗工されるポリマーフィルムがアニオン性である場合、共通電極に塗工されるポリマーフィルムは、カチオン性とすることができる。活性電極に塗工されるポリマーフィルムがカチオン性である場合、共通電極に塗工されるポリマーフィルムは、アニオン性とすることができる。2つのポリマーフィルム層が用いられる場合、広範囲の波長にわたって光濾波を行うために必要な2つのフィルムの厚さの変化は、1つのポリマーフィルムだけが用いられるときに必要な厚さより小さくすることができる。
【0056】
直視ディスプレイなど広範囲の波長にわたる光濾波が望ましいとき、ポリマーフィルムの屈折率は、できる限り高くすべきである。いくつかの実施形態において、より高い屈折率は、波長範囲にわたる濾波を達成しながらポリマーフィルムの総偏向を小さくすることを可能にする。単色光源による用途において、より小さな屈折率を有するポリマーフィルムが好ましい。いくつかの実施形態において、より小さな屈折率は、より良好な微小相移動の制御を可能にし、総コンストラクティブ干渉と総ディストラクティブ干渉の間の変調を容易にするであろう。ポリマーフィルムの誘電正接を大きく増加させる屈折率の変更は、避けるのが有利である。ポリマーの屈折率は、電極又はそれが結合される他の表面とできる限り整合すべきである。
【0057】
ポリマーフィルムのモジュラスは、電場によって誘起された応力で屈折率の変化があまり大きくないように十分小さくなければならない。電極領域が小さい用途、例えば、投影ディスプレイ光弁において、圧縮されるとき、ポリマーフィルムは膨張することができる。図2は、電場によって圧縮されるときポリマーフィルムの膨張を可能にする空間56が提供される電極46A及び46Bを示す。大きな直視ディスプレイなど、フィルタの面積が厚さに比べて大きい用途において、圧縮されるときポリマーフィルムが膨張できる領域を提供するために、ポリマーフィルムをフィルタ22内部にパターンコーティングすることができる。図15に見られるように、領域252は、ポリマーフィルム48部品の間の膨張を可能にする。空間252の幅は、光の波長未満でなければならない(50nm〜400nm)。列は、コーティングされない領域が連続的な縞になるのを最小化するために千鳥にすることができる。膨張領域は、無水状態の下、アルキルでキャップしたシランのパターンコーティングによって作ることができる。アルキル基(メチル、エチル等)は、電極表面上の反応性部位にキャップを形成し、それがポリマー表面上にコーティングされるときポリマーが結合することができない。また、アルキル系シランは、非極性不活性表面を提供し、ポリマー鎖中のイオン又は極性基が電極表面とおそらくは非可逆的に相互作用する反応を防止する。ポリマー又はポリマーフィルムと接触することのできるフィルタの他の領域は、同様にキャップを形成することができる。
【0058】
一実施形態において、ポリマーフィルムは、一連のステップで電極又は複数の電極に塗工することができる。第1準備ステップにおいて、電極のある領域、図15の252で境界を示される領域上に、アルキルシランキャッピング剤がパターンコーティングされる。これらの領域は、後続のステップで非反応性であり、従って、ポリマーフィルムの膨張領域を形成するであろう。後続のステップにおいて、電極基板は、シランカップリング剤でコーティングされ、これは、キャッピング剤が存在しない電極に化学的に結合する。第3ステップにおいて、弾性ポリマーが塗工され、カップリング剤と化学的に結合する。弾性ポリマーが電極と直接結合することのできる一実施形態において、カップリング剤は省略することができる。
【0059】
第1準備ステップに用いられるキャッピング剤は、電極との結合を形成する反応の可能な基を含む。キャッピング剤は、電極に結合すると、続いて電極に塗工してポリマーフィルムを形成するポリマーと反応することのできる基は何も含まない。言い換えれば、キャッピング剤は電極基板と反応して、ポリマーに対して非反応性である基板のある領域上にパターン化されたコーティングを形成する。キャッピング剤の実施例は、式
【化1】

で表わされる化合物を含み、式中、Rはアルコキシ基から選択され、Rはアルキル基であり、R及びRは独立にアルコキシ、メチル、又は他のアルキル基から選択され、xは0〜約18の整数である。例えば、R、R、及びRの3つ全てがアルコキシ、メトキシであるならば、シランは、無水状態の下で単一層を形成することができる。しかし、好ましい構造は、R及びRがメチル基でありRがアルコキシであるモノアルコキシである。この種のシランは、無水堆積の下で安定な単量体単一層を与える。
【0060】
カップリング剤は、アルコキシ基、又は電極基板との結合を形成する反応を行うことのできる他の基、及び続いて電極に塗工してポリマーフィルムを形成するポリマーとの結合を形成する反応を行うことのできる官能基を含む。1つ以上の実施形態において、官能基はビニル基である。一実施形態において、カップリング剤は、以下の式
【化2】

で表わすことのできる化合物を含み、式中、Rはアルコキシ基から選択され、Rはビニル基であり、R及びRは独立にアルコキシ、メチル、又は他のアルキル基から選択され、xは0〜約10の整数である。シランキャッピング剤及びシランカップリング剤の両方ともが、単一層を形成する無水条件下で最善に塗工される。R、R、及びRの3つ全てがアルコキシ、メトキシであるならば、シランは無水状態の下で単一層を形成することができる。しかし、好ましい構造は、R及びRがメチル基でありRがアルコキシであるモノアルコキシである。この種のシランは、無水堆積の下で安定な単量体単一層を与える。トリアルコキシシランカップリング剤は、水和条件下でポリマーの多層構造を形成する。
【0061】
上述のように、1つ以上の実施形態において、カップリング剤は、アルコキシ基又は電極基板との結合を形成する反応を行うことのできる他の基、及び続いて電極に塗工してポリマーフィルムを形成するシロキサンポリマーとの結合を形成する反応を行うことのできる官能基を含む。反応の前に、ポリマーは、カップリング剤と反応することのできる反応基を含む。例えば、カップリング剤のRがビニル基である場合、それはシロキサンポリマー鎖上の水素化シリコン基と反応することができる。シランカップリング剤とシロキサンポリマー上の官能基の他の組み合わせが可能である。
【0062】
これらの結合が形成される順序は、特に制限されない。従って、一実施形態において、シロキサンポリマーは、それが電極に結合した後カップリング剤と反応する。他の実施形態において、カップリング剤は、カップリング剤が塗工され電極と結合する前にポリマーと反応することができる。1つ以上の実施形態において、反応は、白金(Pt)又はロジウム(Rh)による触媒反応付加硬化とすることができる。硬化は、UV照射によって誘起することができ、カチオン性又は遊離ラジカル種を含むことができる。硬化は、電子ビーム(EB)又は反応性イオンエッチングによることができる。
【0063】
他の実施形態において、上述のように、カップリング剤は必要ではない可能性がある。すなわち、反応基を含む低分子量のジメチルシロキサンポリマーは、電極に直接結合することができる。これら及び他の実施形態において、ポリマーは、水酸基又は他の反応基を含む縮合反応によって電極に化学的に結合することができる。
【0064】
この明細書の目的のために、化学的結合の用語は、静電気引力及び水素結合を含むことが理解されるであろう。
【0065】
当業者であれば、図1及び2に示した実施形態に基づいて、多くの異なる実施形態が構成できることを理解するであろう。また、これらの異なる実施形態から、開示された技術の使用によって多くの最終使用デバイスを改善することができる。実際に、少なくとも図3に見られるように、フィルタのマトリックスを提供するために対面する基板上に複数のフィルタを構成することができる。フィルタの例示的マトリックスは、当業者に認識されている任意の考え得る最終使用のために構成することができる。本明細書には多くの実施形態が示されるが、それらは制限として解釈すべきではない。
【0066】
他の活性マトリックスの実施形態において、符号20Aで全体を表される光モジュレータが図2に示される。アルファベットの接尾語がいくつかの変形種類の実施形態を示すモジュレータ20Aは、共通参照電圧を提供するためのアレイの共通電極である電極44を含む。活性電極46A及び46Bは、コントローラ24によって発生された活性マトリックスアドレス体系によって制御することができる。実際に、多くの活性電極46を提供することができ、その全てはコントローラ24に接続される。さらに、空間56を各活性電極46Aと46Bの間に提供できるので、薄膜トランジスタ、アドレス線、記憶キャパシタ等がそれに付属できることが理解されるであろう。代りに、単一フィルタにおいて、又はアレイ中の比較的少数のフィルタ要素が用いられる場合、電圧がコントローラによって直接電極に印加されるセグメント化された電圧制御を用いることができる。いくつかの実施形態において、受動マトリックス制御を用いることができる。
【0067】
全体的に符号20Bで表わされる例示的モジュレータは、図3に示され、フィルタ22A及び22Bのアレイを含み、多くは最終使用の用途に必要である。図から分かるように、アレイは、行と列のマトリックスに配置された複数のフィルタ22を含む。選択された行とデータ線57及び58のネットワークは、コントローラが適切と判断した各フィルタ22に電圧を供給する。データ線から典型的に入力又は制御信号を受け取る電極領域59は、各フィルタ22又は画素を取り囲む。領域59は、典型的に選択された行とデータ線から入力又は制御信号を受け取る。また、領域59は、それぞれ各フィルタの動作を制御する追加の電子要素の位置を提供する。
【0068】
図4は、全体的に符号60で表わされるアレイ中の2つのフィルタ要素22A及び22Bを示す。このように構成されるとき、各フィルムは、画素とも呼ばれるピクセル又はアレイ中の画定されたフィルタを形成する。特に、活性電極46Aは、フィルム48Aでコーティングされ、間隙49Aを形成する。活性電極46Bは、フィルム48Bでコーティングされて間隙49Bを形成する。この実施形態において、電極46Aは、フィルム48Aの静止厚さで静止電圧を有する。電極46Bには電圧が印加され、これは電極46Bと共通電極44の間に電場を作る。この実施形態において、電場の印加はフィルム48Bを収縮させ、空隙49Bが増加する。フィルタ22Aの光路長は、光源から1つの色を通過させることができる。フィルタ22Bの光路長は、光源から他の色を通過させることができる。他の電圧で、フィルタ22Bの光路長は、光源中にはない帯域幅用にコンストラクティブ干渉を行うことができ、従って黒いピクセルを作る。単色光源では、フィルタはモジュレータとして働き、光源からの光を通過させ又は通過させない。フィルタ22Aの光路長は、単色光源とディストラクティブ干渉又はコンストラクティブ干渉を行うことができ、ゼロと1のデジタルビットを作る。
【0069】
反射表面42と43の間の総距離は、1μm未満〜10μmを超える範囲、いくつかの場合には数mmの範囲にすることができる。総厚さは、フィルム48Aと48Bの厚さを変化させるのに必要な電場を作るために必要な電圧を最小にするように、実際的に可能な限り薄くすべきである。薄い総厚さは、消費される電力を最小化し、並びにフィルタの応答時間を短縮する。また、より低い電圧は、活性マトリックス部品をより小さくし、ディスプレイ中の黒い領域を減少させる。より薄い総厚さは、モード間の重なり合いを(式1における整数m)最小にする。広帯域用途において、最適総厚さは2μm未満である。
【0070】
ここで、図5に関し、代替の光モジュレータが全体的に符号70で表わされるのを見ることができる。図示されるように、モジュレータ70は、単一のフィルタ22Cだけを備えるが、複数のフィルタ22Cのアレイを用いることができる。この実施形態は、フィルム48と同じ特性を有する可変厚さのポリマーフィルム72が共通電極44上にコーティングされることを除いて、図1に示したモジュレータと類似しており、前述のように、フィルム48は活性電極46上にパターンコーティングされる。可変厚さのポリマーフィルムが両方の電極にコーティングされる場合には、ポリマーフィルム層は、後に論じるように逆の極性を有するであろう。この実施形態は、光路長及び潜在的に改善された応答時間のより精密な制御を可能にする。
【0071】
ここで図6に関し、全体的に符号80で表わされる他の光モジュレータを見ることができる。図示されるように、モジュレータ80は符号22D及び22Eで表わされた2つのフィルタを備えるが、単一フィルタ又はフィルタのアレイを用いることもできるであろう。この実施形態において、フィルム48と同じ特性を有する可変厚さのポリマーフィルム82は、共通電極44に組み合わされる。特に、図6は、共通電極44上に連続層又は半連続層としてコーティングされたフィルム82を示す。電極44と46の間に作られた局部的電場は、前述のようにフィルム82を拡張又は収縮する。電極46Aと46Bの間の空間56は、フィルム82が電極間の厚さを変化させる領域を提供する。言い換えれば、電圧が共通電極44と活性電極46Aの間に印加されるが電極44と電極46Bの間では印加されないとき、フィルム82には角度的な転移が形成される。このように、フィルム82は、フィルム48Aの並列位置に拡張活性化状態で示され、フィルム48Bに並列位置に不活性状態で示される。フィルムが膨張する場所からフィルムが膨張しない領域へのこの転移は、望ましくない光路長の変化を与えるであろうが、間隙56においては低減される。
【0072】
他の実施形態において、符号90で表わされる光モジュレータが図7に示される。この実施形態において、モジュレータ90は、22F及び22Gで表わされる2つのフィルタを提供する。この変形において、基板の表面全体に高い反射性コーティングを塗工する代りに、HRコーティング42A及び42Bが、対応する電極46A及び46B上に直接コーティングされる。言い換えれば、前述の他の部品に加えて、フィルタ22Fはコーティング42A、電極46A及びフィルム48Aを含み、フィルタ22Gはコーティング42B、電極46B及びフィルム48Bを含む。無論、モジュレータ内の電極、反射性コーティング及びポリマーフィルム層の他の組み合わせが可能である。
【0073】
ここで図8に関し、全体的に符号120で表わされる直視光モジュレータが示されている。この実施形態において、モジュレータは、コンピュータモニター、テレビジョン、及び携帯デバイスなどの直視ディスプレイにおいて典型的なように、縁部照明又は背後照明とすることができる。光源102は、冷陰極蛍光、熱陰極蛍光、キセノンフラットランプ、又は他の白色光源とすることができる。最適光源は、レッド、ブルー、グリーンの原色を含む3つ以上の色の複数のLEDである。他の色を選択することができる。3原色範囲以外の他の色、例えば、バイオレット、ディープレッド、又はオレンジを加えてディスプレイの色域を拡大することができる。原色の色域内にある色を加えることもできる。LEDは、特に3つを超える色が使用される場合には、好ましくは20nm〜60nmの非常に狭い帯域幅を有さなければならない。フィルタ22A及び22Baがスペクトルの黒い帯域幅でコンストラクティブ干渉を行って黒いピクセルを作るために、総スペクトルには黒い領域がなければならない。
【0074】
光源102で発生した光104は、拡散器106及び任意選択的なフィルタ108を通過する。拡散器106は光の色を混合し、フルター22に均一な光の分布を作る。拡散器106は、ポリマーフィルム、ホログラフィー、又は任意の他の通常用いられる拡散器とすることができる。任意選択的なフィルタは、可視光からUV、IRなどの望ましくない波長を取り除くことができる。また、光源102の出力スペクトルを清澄化することができる。特に、フィルタ108は、原色帯域幅間のスペクトル領域を清澄化することができる。それは、例えば黒いピクセルを作ることのできる660nmの特定の波長で鋭いカットオフを供給することができる。これはモジュレータ120のコントラストの増加を助ける。
【0075】
フィルタ22H及び22Iは干渉フィルタとして構成されているので、観察者をセルから切り離すことが必要である。さもなければ、光路長は観察者の角度とともに変化するであろう。これは、図8の基板34の外側表面に配置された1つ以上の拡散フィルム109によって達成することができる。拡散フィルムは、任意の標準的なホログラフィー、マイクロレプリカ、及び他の拡散フィルムとすることができる。代りに、ガラス34の外側表面を研磨して拡散させることができる。視野角度が重要ではないより低コストのディスプレイにおいて、拡散器は使用しなくてもよい。拡散フィルムの他の利点は、マット状の外観を提供し、ピクセルを有する反射層からの鏡面反射を低減することである。代りに、基板34はファイバー光面板の形とすることができる。
【0076】
フィルタ22H及び22Iは干渉フィルタとして構成されるので、それは非常に狭い入力角度範囲を必要とする。光方向フィルム110は、モジュレータのフィルタ22に入る前に修正された光104’を狭い角度範囲に導く。光方向フィルムは、3MのBEF、IDF、TRAFフィルムの1つ以上、並びにホログラフィーフィルムを含むことができる。代りに、背部ファイバー光面板122を図8の反射防止層に置き換えることができる。ファイバー光面板122は、バックライトを狭い円錐中に導く。また、平行なバックライトを使用することもできる。
【0077】
前に論じたように、光104’はアレイのフィルタ要素に入る。各フィルタ要素を出た光114は、特定の時間に各フィルタに設定した光路長に応じて着色される。各フィルタ要素の光路長は、光源102の3つ以上の波長のうちの1つを通過するように電子的に設定される。各フィルタ要素の光路長は、対応するフィルム48の厚さによって決定され、これは、活性電極46と共通電極44の間に形成された局部的電場によって制御される。各フィルタ要素の光路長は電圧によって設定され、所定時間に光源102の色の1つを通過させる。通過しない光は反射される。例えば、光源102がRGBのLEDから構成され、フィルタの光路長がブルーを通過するように設定される場合には、フィルタはレッドとグリーンを反射するであろう。フィルタの光路長がグリーンを通過するように設定される場合には、フィルタはブルーとレッドを反射するであろう。フィルタの光路長がレッドを通過するように設定される場合には、フィルタはグリーンとブルーを反射するであろう。反射された光は、光方向フィルム110を通って拡散器106に戻り、光は、それが特定の波長を通すように微調整したフィルタに遭遇するまでフィルタのアレイに反射して戻る。光は、それが使用されるまで再循環する。
【0078】
黒いピクセルは、光源102のスペクトルにない波長を通すようにフィルタ22の光路長を微調整することによって作られる。例えば、光源102がRGBのLEDである場合、黒いピクセルの波長は、波長が色の基線波長外の清澄な領域にあるかぎり、レッドとグリーン又はグリーンとブルー帯域幅の間に設定することができる。より広い帯域の光源が用いられる場合には、黒いピクセルは、光源の帯域幅の上又は下の波長、例えば、400nmを超える数値又は700nm未満に設定することができる。フィルタ108はスペクトルを660nm未満に遮断し、黒いピクセルを例えば700nmに設定することができる。また、フィルタ108はスペクトルを清澄化して、例えば、レッドとグリーン又はグリーンとブルーの間に黒い基線を提供することができる。冷陰極蛍光又は光源として励起リンを用いる他の光源の場合、フィルタ108は、主要放射帯域の外側の帯域幅中の領域を清澄化することができる。
【0079】
色のパレットは、各フィルタ22を光源の原色を通して急速に循環することによって作ることができる。観察者は時間平均色を見るであろう。ピクセル中に黒いピクセル波長を含んだ色循環は、表示された色のコントラストを制御することができる。各ピクセルは時間平均固定色として現れる。色は、フィルタ調時のわずかな変化によって1つの色から他の色へ滑らかに変化する。白色光は、補色のレッドとグリーン又はブルーとイエローの間を循環すること、又はレッド、ブルー及びグリーンを等間隔で循環することによって作ることができる。グレーは、レッド、ブルー及びグリーンの等しい部分を通し、黒の時間を変化させて循環することによって作ることができる。
【0080】
サブピクセルの除去によって各ピクセルの電子部品が2/3に低減できるので、高い解像度及び良好な画質が達成できると考えられる。ピクセルは、開口部がより広く各ピクセルに黒いマトリックスが少ない正方形の形状を取ることができ、LCD及びプラズマディスプレイに典型的なスクリーンドア効果が低減され、それによって画質が向上する。
【0081】
フィルタアレイは純粋なスペクトル色を作るので、ディスプレイの色域は、不飽和吸収フィルタに大きく依存する典型的なLCDよりも広い。これは高い光強度レベルで色の退化を招く。人間の眼は異なる色に応答して変化する。眼は、レッド及びブルーよりもイエローとグリーンに敏感である。ブルーには最も鈍感である。標準的な縞状構造中のレッド、グリーン及びブルーのサブピクセルを有する標準的なLCDスクリーンは、これらの知覚における相違を容易に補正し又は利用することができない。
【0082】
当業者には、多くの変形を構成できることが認識することができよう。ピクセルは2つのサブピクセルから構成され、1つのサブピクセルは、レッド、グリーン及び黒の間で変化し、他のサブピクセルはイエロー、ブルー及び黒の間で変化することができる。代りに、第1ピクセルがレッドとブラックの間で変化し、第2ピクセルがグリーンとブラックの間、第3ピクセルがブルーとブラックの間で変化する標準的なディスプレイのように、3つのサブピクセルを用いることができる。フィルタのアレイはLCDマトリックスと並列に用いることができ、LCDマトリックスは光のスループットを変化させ、開示のアレイは単純に色フィルタとして働く。フィルタアレイは、場の逐次パルスバックライトと共に用いることができる。
【0083】
上述のフィルタは多数の異なる用途に用いることができ、そのいくつかを本明細書で説明する。一実施形態において、図9に見られるように、カメラシステムが全体的に符号130で表わされている。カメラ又は任意の他の光学像形成装置は、レンズ系132を通して光を観察する。レンズ系のレンズを通過した後、光は符号134で表わされたフィルタのアレイに投影され、アレイは、任意の数の画素を備える上述の任意のフィルタを有する光モジュレータを含む。光は、モジュレータのアレイを通ってCCD又はCMOSなど、符号136で表わされる光記録マトリックス上に伝えられる。カメラは静止像又は運動ビデオを記録することができる。アレイ134は、現在用いられている吸収フィルタよりも広い色域を集める。CCD又はCMOSは本質的に単色であり、色の濾波は写真デバイスの必要に応じて選択することができる。
【0084】
アレイのフィルタ22は一連の色を循環する。アレイは、例えば、レッド、ブルー及びグリーンを循環することができる。モジュレータ20Bに組み合わされるCCD又はCMOSアレイが、例えばレッド又はブルーに感受性が低ければ、フィルタは、これらの波長の光をグリーンよりも多く集めるようにプログラムすることができる。モジュレータ20Bのマトリックスアレイを選択することができ、あるいは、1組のピクセルがレッドとグリーンを集め、また他の組のピクセルがブルーとイエローを集めることができる。
【0085】
他の用途において、図10に示したフィルタ22又は図11に示したアレイ134は、ファイバーの光入力に結合することができることが理解されるであろう。図10において、単一のファイバー光入力150は、本明細書に説明される任意のフィルタとすることのできるフィルタ22に入力光を供給することができ、次いで、単一ファイバー光出力152に結合される出力光を発生する。同様に、図11に示したものと同様にして、複数のファイバー光入力150A〜Dは、フィルタ22の任意の実施形態のアレイ134に組み合わされ、このアレイは対応するファイバー光出力152A〜Dにも組み合わされる。単一フィルタ又はフィルタのアレイを備えるファイバー光入力及び出力の使用は、比較的安価な構成を用いて高速スイッチングを可能にする。説明した実施形態は、波長分割多重方式(WDM)及びデータバス用途における微調整可能なフィルタ及び光モジュレータとして用いることができる。
【0086】
フィルタ又はフィルタのアレイの光路長を変化させることによって、広い波長範囲にわたって光学的微調整を行うことができる。これらの実施形態は多重光信号の特定の波長に微調整することを可能にする。単色光源からの光は、デジタル伝送のための一連の1とゼロに変調することができる。
【0087】
前に説明した実施形態は透過性であり、明るい帯域が黒い背景に現れる。しかし、説明したフィルタは、反射モードでも使用できることが理解されるであろう。図12は、反射構成に用いられる2つのフィルタ22J及び22Kを示す。フィルタは、単一ユニット又はさらに好ましくはアレイの要素とすることができる。アレイは1次元又は2次元とすることができる。
【0088】
図12に示した構成は、全体的に符号200で表わされる反射モジュレータである。モジュレータ200は、図1及び2に示した透過モジュレータと同じように構成されるが、透過型の代りに反射型のモジュレータを提供するために全体の構成にいくつかの変更が行われる。モジュレータ200は、前述の実施形態のようにコントローラ24によって制御される。モジュレータの顕著な変更は、光源に面する基板34上に反射防止コーティング202を用いることである。反射防止コーティング202は、反射防止層40について前に論じた材料で作られる。この構造と前の実施形態の間の相違は、反射防止コーティングを有する基板34に対向する基板32上に吸収層204を用いることである。各可変厚さポリマーフィルム48に組み合わされる電子部品は接近することができるが、制御電子部品214を吸収層204上に搭載し、適切な電子部品を用いて電極間の電圧の活性化及び不活性化を制御できることも理解されるであろう。
【0089】
光源206は広帯域、複数の独立光源、又は広い帯域又は狭い帯域の単色とすることができる。光源206は可視、NIR、IR、又はUVとすることができる。光源は標準的なハロゲン化金属、又は水銀アーク、又はさらに好ましくは非常に狭い帯域幅を有する3色以上の発光ダイオード(LED)とすることができる。単色光源はLED又はレーザーを含むことができる。広帯域UV/可視又はIR光源は分光計用途に用いることができる。
【0090】
光源206はモジュレータに対して0°〜90°の角度、又は他の実施形態において、10°〜60°の角度に配向することができる。光学系210は、光源206によって発生した入力光208を平行化する。また、光学系は望ましくない波長、例えば、UV及びIRを可視光から濾波して除くことができる。また、二色性ミラーを光学系210の部分として用いることができる。また、光学系210は、黒いピクセルを形成することのできる波長を濾波することもできる。入力光208’はフィルタ22J及び22Kに入る。光源206は、フィルタ22の光路長が所与の時間で波長の積分であるような波長λを有する入力光208を発生する。反射された光は、
Σnd cosθ=mλ/2 (3)
によって求められ、式中、Σndは反射表面42と43の間の光路長の和であり、mは整数≧1であり、θは垂直な光208’からフィルタ22を打つ角度であり、Σndはポリマーフィルム48の厚さの変化によって変化する。ポリマーフィルム48の厚さの変化は、電極44と46の間に形成された局所的電場によって決定される。電極44と46の間の電圧は、マイクロプロセッサ制御システム24によって制御される。反射されない光は、フィルタによって吸収される。
【0091】
修正された光208’は、フィルタ22に入る。前述のように、フィルタは、光学的に透明な基板32及び34上に構造的に作られる。また、基板32は、シリカ、シリコン又は他の半反射性基板を含む。基板32は、高反射性の誘電体コーティング42でコーティングされる。高反射性コーティングは、交互に高屈折率フィルムと低屈折率フィルムの積み重ねを含むことができる。また、コーティング42は反射性及び吸収性金属フィルムを有する誘電体HRフィルムの組み合わせを含むことができる。金属フィルムは、アルミニウム、銀、金、白金又は他の適切な反射性金属を含むことができる。代りに、図13に見られるように、特定のピクセルに組み合わされるHRコーティングを活性電極46上にコーティングすることができる。
【0092】
基板32は、それに結合された吸収層204を有することができる。吸収層は、基板32を透過した光を吸収するであろう。吸収層204は、透過した光が浸透するであろう領域に連続的又はパターンで結合することができ、これはピクセル要素の位置及び光源206の角度に依存する。また、基板32は、アレイの要素の間の空間56に電子部品を配置する代りに、取り付けられた制御領域214を有することができ、これはトランジスタ、記憶キャパシタ及び他の電子部品を含むことができる。空間56の代りに制御領域214に電子部品を配置することは、アレイのフィルム48部品を互いに近接して配置することを可能にする。電極と並行して動作する各制御領域214は、コントローラ24に接続される。
【0093】
基板34は、反射防止フィルム202でコーティングされる。反射防止フィルム202は、広帯域光源用の波長範囲に最適化することができる。単色用途において、光源の特定の波長用に最適化することができる。複数の独立色を有する光源での用途において、ARコーティングは、個々の波長用に最適化することができる。基板34の反対側は、高反射性誘電体コーティング43でコーティングされる。誘電体コーティングは、交互に高屈折率フィルムと低屈折率フィルムの層を含む。代りに、図13に見られるように、HRコーティング42は活性電極46上にコーティングすることができる。このようにして、モジュレータ200’はフィルタ22L及び22Mを用いる。
【0094】
投影用途では、HRコーティング42及び43の反射率(R=r、rはコーティングの反射度)は75%を超えなければならず、又は他の実施形態において、95%を超えなければならない。HRコーティング42の反射率は、濾波された光がフィルタの頂部からより容易に放射するように、HRコーティング43よりもわずかに低くすることができる。いずれの場合にも、前に説明したように、Σndが光源波長の積分である場合には、反射光220はレンズ系230へ導かれるであろう。反射された光の帯域幅は、反射性層の反射率によって求めることができる。反射性層又はコーティング間の総間隔は、1μm未満〜10μmを超える範囲とすることができる。前に述べたように、フィルムの総厚さは、電力消費を低減し応答時間を短縮するために最小化すべきである。
【0095】
結論として、直視ディスプレイは、コンピュータモニター及びテレビジョン、並びに、携帯電話、PDA、携帯ゲーム機、GPSデバイス及び他の携帯ディスプレイを含む。開示された技術は、LCD及びプラズマなどの従来技術よりもいくつかの利点を有し、特に、それは優れた画質を形成し、動作に顕著に少ないエネルギーしか必要とせず、製造が低コストであると考えられる。
【0096】
示した実施形態は、必要な電子部品(コンデンサ、薄膜トランジスタ及びデータドライバーを含む)の数が1/2以下に低減されるので、LCD又はプラズマよりも製造コストの負担が少ない。さらに、より少ないTFTを用いることは、現在のTFT系活性マトリックスLCDディスプレイに関して製造上の問題となっているスクリーンの不良率が低いことを意味する。
【0097】
エネルギー節約は、本技術が多くの偏光及び吸収フィルタの必要性を取り除くことから達成される。色吸収フィルタは光源の75%を吸収することができる。LCDディスプレイに用いられるような偏光フィルタは、光源の60%を吸収することができる。本発明を用いるディスプレイは、高い光効率を有し、光源のほとんど全てを伝える。低電力の光源を用いることができ、より高い電力の光源を備えるLCDディスプレイと同じ照度を与える。加えて、より明るいディスプレイを与えるより高い電力でより明るい光源を、熱の蓄積なく用いることができる。
【0098】
本技術は、様々な理由でLCDとプラズマに優れた画質を提供する。第1に、開示された光モジュレータは、より高速な応答時間を可能にし、これはにじみのない速い動きを意味する。第2に、LCDやプラズマとは異なり、本技術はサブピクセルを必要とせず、従って、ディスプレイはより高い解像度を提供することが可能である。また、本技術は、偏光及び吸収フィルタの必要性を取り除き、より明るい画像、より広い色域、より純粋なスペクトル色、同時に3原色を超える色を用いる能力をもたらす。開示されたモジュレータは、伝統的なLCD又はプラズマ技術に用いられる電子部品の半分未満しか必要としないので、本モジュレータはより大きな表示面積に適合し、LCD及びプラズマディスプレイに共通の「スクリーンドア」効果を取り除くであろう。
【0099】
また、開示された実施形態は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、液晶(LCD)及びシリコン上液晶(LCOS)などの現在の投影ディスプレイよりも複数の利点を有すると考えられる。再び、優れた利点は、少ない動作エネルギー、低い製造コスト及び改善された画質の必要性を含む。
【0100】
本発明は、偏光フィルタの削除及び吸収フィルタを削除するため、現在の技術よりも少ないエネルギーを使用するであろう。
【0101】
本技術では、必要な電子部品が1/2以下に削減されるので、製造コストはより低くなるであろう。吸収カラーホイールを用いることなく、1つの光弁内で全色制御を達成することができる。さらに、本技術は、DMDよりも製造が簡単である。
【0102】
本発明は、レーザー及びLEDアレイを含んで、現在のトナー/フューザープリンタ技術よりも多くの追加の利点を有する。例えば、本技術は、改善された複数の解像度を可能にする。本発明では、現在のレーザープリンタの場合のような、レーザー及び回転ミラーとレンズの複雑なシステムを必要としない。さらに、本発明は、レーザー技術のようなレーザードットのサイズによって制約を受けず、またLEDアレイにおけるLEDのサイズによって制約を受けない。
【0103】
また、本技術は、高価なレーザーの必要性を取り除くことによって、より安価なレーザープリンタの代替を提供する。さらに、線全体を像形成ドラムに一時に投影することができるので、より高い速度が達成される。
【0104】
本発明は、光の強度変化を像ドラム上に投影することができるので、現在の技術から得られるよりも細かな詳細さを可能にする。対照的に、現在のLEDアレイプリンタ及びレーザープリンタは単純な「オン」又は「オフ」モードで働く。
【0105】
また、本発明は、デジタルカメラ、ビデオカメラ及び他の像形成デバイス用のフィルタとして用いることができる。
【0106】
本発明は、CCD又はCMOS上の個々の固定された吸収フィルタの必要性を省き、それによって、像形成により広い色域を提供するので、現在の技術よりも改善される。本発明は、異なる光波長へのCCD又はCMOSの応答を補償することができる。さらに、本発明は、低い光の状況で特定の波長を集めて、異なる光の条件を補償することができる。
【0107】
本発明は、高速でスペクトル出力を制御できる電子的に微調整可能なフィルタとして用いることができる。いくつかの利点は、高速応答時間、偏光非感受性、薄い厚さ、低損失、波長へのランダムアクセス、広いスペクトル範囲、低い電力消費、厳しい環境下での安定性(熱及び湿気)である。
【0108】
レーザー又はLEDなどの単色光源では、本発明は、光のビームを電子的に制御された光と暗部の空間パターンへ変調することのできる空間光モジュレータとして用いることができる。それは、LCD及びDMDよりも多くの利点を有する。
【0109】
本発明は、フーリエ変換分光計の干渉計としての使用を含んで、UV/可視、NIR及びIR分光計の光学フィルタとして用いることができる。
【0110】
顕微鏡においては、入力光と出力光の両方の制御、明るい場、暗い場、フェーズコントラスト、共焦点、並びに干渉顕微鏡における照射と集光。
【0111】
本発明は、ホログラフィーデータ記憶及びホログラフィー表示を含むホログラフィー用途のための空間光モジュレータとして用いることができる。本発明は、波長分割多重方式(WDM)及びデータバス用途における微調整可能なフィルタ及び光モジュレータとして用いることができる。また、本発明は、大きなファブリーペローエタロン及び干渉計における平行度欠陥及び他の収差の補償に用いることができる。フィルタ要素は、平行度の欠陥及び他の欠陥を補償する領域にわたって微調整することができる。
【0112】
他の可能な用途は、リソグラフィーを含む大フォーマットプリンタのための像形成器、眼に近いディスプレイ、光学演算素子、白色光色温度調節器、ステージ照明用の飽和色作成器、微調整可能なレーザー、及びマイクロケミカルシステム/DNAアレイを含む。
【0113】
従って、上記の構造及びその使用方法によって本発明の目的が満たされていることがわかる。特許法に従って、最良のモード及び好適な実施形態だけを示し、詳細を説明したが、本発明はそれに制限されないことを理解されたい。従って、本発明の真の範囲及び真意を認識するには、特許請求の範囲を参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間に空隙を有する1対の対向基板と、
前記基板の各々に配設されて、電極と前記基板の対がそれに付随する反射特性をする電極と、
前記電極の一方に配設され化学的に結合したポリマーフィルムとを包含し、前記電極への電圧の印加が前記ポリマーフィルムの厚さに対応する均一な変化をもたらす、光フィルタ。
【請求項2】
前記電極と前記基板の各々の対の1つに配設された反射コーティングをさらに含む、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項3】
前記反射コーティングが75%を超える反射率を有する、請求項2記載の光フィルタ。
【請求項4】
前記反射率が90%を超える、請求項3記載の光フィルタ。
【請求項5】
前記反射率が99%を超える、請求項4記載の光フィルタ。
【請求項6】
前記空隙を維持するために前記基板間に配設された複数のスペーサをさらに含み、前記ポリマーフィルムの前記厚さの変化がフィルタの光路長の変化をもたらす、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項7】
前記電圧の印加が前記ポリマーフィルムを不活性状態から収縮状態又は拡張状態へ変化させる、請求項6記載の光フィルタ。
【請求項8】
前記ポリマーフィルムの前記拡張状態が前記空隙未満である、請求項7記載の光フィルタ。
【請求項9】
前記不活性状態における前記ポリマーフィルムの前記厚さが5ミクロン未満である、請求項7記載の光フィルタ。
【請求項10】
前記不活性状態における前記ポリマーフィルムの前記厚さが1ミクロン未満である、請求項7記載の光フィルタ。
【請求項11】
前記ポリマーフィルムが、0.15未満の誘電正接及び約40,000パスカル未満のモジュラスを有する柔らかい固体である、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項12】
前記ポリマーフィルムが、0.05未満の誘電正接を有する柔らかい固体である、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項13】
前記ポリマーフィルムへの前記電圧の印加を制御するように前記電極に接続されたコントローラをさらに含む、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項14】
前記ポリマーフィルムが単一層を含む、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項15】
前記ポリマーフィルムが、前記電圧の印加に対して前記ポリマーフィルムを応答させる極性基を含む、請求項14記載の光フィルタ。
【請求項16】
前記ポリマーフィルムが、アクリル、ポリウレタン、飽和ゴム、ポリシロキサン、及びそのコポリマーとターポリマーからなる群から選択されるポリマーを含み、前記ポリマーが電場に応答するように修正される、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項17】
前記ポリマーがポリシロキサンを含む、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項18】
前記ポリマーが約1.5未満の多分散性を有するポリマーを含む、請求項17記載の光フィルタ。
【請求項19】
前記ポリマーが、ポリマー分子当りゼロ〜約1.5のイオン性基を含むポリマー分子を含む、請求項17記載の光フィルタ。
【請求項20】
前記ポリマー分子が、スルホン酸塩、硫酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、カルボン酸塩、アクリル酸塩、ゲルマン酸塩、ケイ酸塩、及びアンモニウム基からなる群から選択される1つ以上のイオン性基を含む、請求項19記載の光フィルタ。
【請求項21】
前記ポリシロキサンが、ポリアクリラート、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド−イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、及びエポキシ樹脂からなる群から選択される1つ以上の低分子量ポリマーにグラフト化される、請求項17記載の光フィルタ。
【請求項22】
前記ポリシロキサンが、フェニル基、フルオロアルキル基、2つ以上の炭素原子を含むアルキル基、及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の非反応基を含む、請求項17記載の光フィルタ。
【請求項23】
前記ポリシロキサンがナノ粒子に化学的又は物理的に結合し、前記ナノ粒子が、ナノクレイ、活性炭酸カルシウム、シリカ、POSS、及び表面修飾シリカからなる群から選択される、請求項17記載の光フィルタ。
【請求項24】
ポリシロキサンが、トリフェニルシラン及びトリフェニルビニルシランからなる群から選択されるフェニルシランの複数の部位に結合する、請求項17記載の光フィルタ。
【請求項25】
前記ポリマーが、非対称に電荷分布した1つ以上の非イオン性極性官能基を含むポリマー分子を含む、請求項17記載の光フィルタ。
【請求項26】
前記非イオン性極性官能基が、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンオキシド、及びポリビニルエーテルからなる群から選択される、請求項25記載の光フィルタ。
【請求項27】
前記ポリシロキサンが直鎖ポリジメチルシロキサンである、請求項17記載の光フィルタ。
【請求項28】
前記直鎖ポリジメチルシロキサンが、各シリコン原子に結合した2つのメチル基を有する、請求項27記載の光フィルタ。
【請求項29】
少なくとも1つの前記メチル基が、少ない割合のシリコン原子上で他の置換基によって置き換えられる、請求項28記載の光フィルタ。
【請求項30】
前記置換基が、フェニル基、フルオロアルキル基、2つ以上の炭素原子を含むアルキル基、及びシアノ基からなる非反応性の群から選択される、請求項29記載の光フィルタ。
【請求項31】
前記ポリマーが、カチオン性官能性を有するポリマーを含む、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項32】
前記ポリマーが、アニオン性官能性を有するポリマーを含む、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項33】
前記電極の他方に配設されて化学的に結合した第2ポリマーフィルムをさらに含み、前記電極に前記電圧を印加することが前記ポリマーフィルムの厚さに対応する変化をもたらし、前記ポリマーフィルムが前記電圧の印加の際に前記他方の電極に接触しないサイズにされる、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項34】
前記空隙の外側で前記基板の一方の一側面上に配設された反射防止コーティングをさらに含み、前記基板が光源に対面する、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項35】
前記空隙の外側で他方の基板の一側面上に前記光源から離れて配設された吸収層をさらに含む、請求項34記載の光フィルタ。
【請求項36】
前記ポリマーフィルムが前記電極上にパターンコーティングされる、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項37】
前記ポリマーフィルム及び前記電極がパターン形成されてフィルタのマトリックスを形成する、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項38】
前記電極が反射性材料である、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項39】
前記反射性材料が、金、銀、白金、アルミニウム、及びその合金からなる群から選択される、請求項38記載の光フィルタ。
【請求項40】
前記反射性材料上にコーティングされた誘電体材料をさらに含む、請求項39記載の光フィルタ。
【請求項41】
前記ポリマーフィルムの前記厚さにおける前記均一な変化が、前記対の対向基板の間の光路長の変化をもたらす、請求項1記載の光フィルタ。
【請求項42】
電極表面に結合することのできる反応基と、
1つ以上の極性基とを含み、ポリマーが電場に応答する、ポリシロキサンポリマー。
【請求項43】
前記反応基が、水酸化シリコン(Si−OH)、水素化シリコン(Si−H)、シリコンアルコキシ、及び塩化シリコン基からなる群から選択される、請求項42記載のポリマー。
【請求項44】
前記極性基が、アニオン、カチオン、両性イオン、及び非イオン性極性官能基からなる群から選択される、請求項42記載のポリマー。
【請求項45】
前記極性基が、スルホン酸塩、硫酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、カルボン酸塩、カルボン酸、アンモニウム、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンオキシドからなる群から選択される、請求項42記載のポリマー。
【請求項46】
前記ポリマーが、約50,000amu未満の分子量を有する直鎖ポリマーを含む、請求項42記載のポリマー。
【請求項47】
前記ポリマーが約1.5未満の多分散性を特徴とする、請求項42記載のポリマー。
【請求項48】
前記ポリマーが、約40,000パスカル未満のモジュラス及び約0.15未満の誘電正接を有する柔らかい固体である、請求項42記載のポリマー。
【請求項49】
前記ポリマーが直鎖ポリシロキサンを含む、請求項42記載のポリマー。
【請求項50】
前記ポリマーが、ポリアクリラート、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド−イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂からなる群から選択されるポリマーにグラフト化される、請求項49記載のポリマー。
【請求項51】
前記ポリマーがナノ粒子に化学的又は物理的に結合する、請求項49記載のポリマー。
【請求項52】
前記ナノ粒子が、ナノクレイ、活性炭酸カルシウム、シリカ、POSS、表面改質シリカ、及びその混合物からなる群から選択される、請求項51記載のポリマー。
【請求項53】
前記ポリマーが、末端を有する鎖をさらに含み、前記1つ以上の極性基が前記ポリマー鎖の末端又はその近くに配置される、請求項42記載のポリマー。
【請求項54】
前記ポリマーが鎖をさらに含み、前記反応基が前記ポリマー鎖の末端又はその近くに配置される、請求項42記載のポリマー。
【請求項55】
前記ポリマーが、第1末端及び第2末端を有する鎖をさらに含み、前記1つ以上の極性基が第1末端又はその近くに配置され、前記反応基が第2末端又はその近くに配置される、請求項42記載のポリマー。
【請求項56】
前記ポリマーが、中間点及び1つ以上の末端を有する鎖をさらに含み、前記反応基が前記ポリマー鎖の中間点又はその近くに配置され、前記1つ以上の極性基が各末端又はその近くに配置される、請求項42記載のポリマー。
【請求項57】
前記ポリマーが、直鎖ポリジメチルシロキサンをさらに含む、請求項42記載のポリマー。
【請求項58】
前記直鎖ポリジメチルシロキサンが、各シリコン原子に結合した2つのメチル基を有する、請求項57記載のポリマー。
【請求項59】
前記メチル基の少なくとも1つが、少ない割合のシリコン原子上で他の置換基によって置き換えられる、請求項58記載のポリマー。
【請求項60】
前記置換基が、フェニル基、フルオロアルキル基、2つ以上の炭素原子を含むアルキル基、及びシアノ基からなる群から選択される、請求項59記載のポリマー。
【請求項61】
前記ポリシロキサンが、トリフェニルシラン及びトリフェニルビニルシランからなる群から選択されるフェニルシランに複数の部位で結合する、請求項42記載のポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−539143(P2009−539143A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513257(P2009−513257)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/012757
【国際公開番号】WO2007/142978
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508354658)ライト レゾナンス テクノロジーズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】LIGHT RESONANCE TECHNOLOGIES,LLC.
【住所又は居所原語表記】P.O.BOX 991,AKRON,OHIO 44309−0991 U.S.A.
【Fターム(参考)】