説明

光モジュールおよび電子機器

【課題】温度変化が大きい環境で使用する場合においても分光精度の高い干渉フィルターを備える光モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明の光モジュール(測色センサー)は、干渉フィルター5、並びに干渉フィルター5の第一基板が固定され、第一熱膨張係数とは異なる値である第二熱膨張係数を有する透明基板7、を備え、干渉フィルター5は、ゲル状樹脂からなる接着層6を介して透明基板7に固定され、接着層6は、干渉フィルター5と透明基板7との間の熱膨張係数の差により生ずる応力を緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所定波長の光を分光する干渉フィルターを備えた光モジュールおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入射光から所定波長の光のみを透過または反射させる干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1には、一対の基板が対向配置され、これらの基板の互いに対向する面に、それぞれ反射膜が形成される光学デバイス(干渉フィルター)が記載されている。このような干渉フィルターでは、一対の反射膜間にギャップが形成され、このギャップの寸法に応じて分光可能な波長が決定される。そのため、このような干渉フィルターでは、所定波長の光を精度よく分光させるために、一対の反射膜を平行に維持する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−134027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、干渉フィルターは透明基板や受光素子等に接着剤により固定されて光モジュールとして用いられている。しかしながら、光モジュールを温度変化が大きい環境で使用する場合には、透明基板や受光素子等と干渉フィルターとの熱膨張係数の差により応力が発生して干渉フィルターに歪みが発生し、結果として、反射膜間のギャップが不均一になり、分光波長にずれが発生したり半値幅が変化したりするといった不具合があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みて、温度変化が大きい環境で使用する場合においても分光精度の高い干渉フィルターを備える光モジュールおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光モジュールは、第一熱膨張係数を有する第一基板、前記第一基板と互いに対向する第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、および、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜を有する干渉フィルターと、前記干渉フィルターの前記第一基板が固定され、前記第一熱膨張係数とは異なる値である第二熱膨張係数を有する固定部と、を備え、前記干渉フィルターは、ゲル状樹脂の接着層を介して前記固定部に固定されたことを特徴とする。
【0007】
従来の光モジュールにおいては、温度変化が大きい環境で使用する場合に、透明基板や受光素子等の固定部と干渉フィルターとの熱膨張係数の差により応力が発生することに起因する不具合がある。すなわち、固定部と干渉フィルターとの熱膨張による変位が異なるために、固定部と干渉フィルターとの間に設けられた接着層にせん断応力が加わることになる。そして、このせん断応力に対応する力が、干渉フィルターにも加わることになることから、干渉フィルターに歪みが発生することとなる。
これに対し、この発明では、固定部と干渉フィルターとの熱膨張係数の差により応力が発生したとしても、固定部と干渉フィルターとの間に設けられたゲル状樹脂からなる接着層により、この応力を緩和することができる。そのため、干渉フィルターでの歪みの発生を十分に抑制することができる。これにより、温度変化が大きい環境で使用する場合においても高い分光精度を維持できる。
【0008】
本発明の光モジュールでは、前記接着層の厚み寸法は、当該接着層の厚み寸法をTa(mm)、前記第一基板の線膨張係数をα1(K−1)、前記第一基板のヤング率をE1(GPa)、前記第一基板の厚み寸法をT1、前記固定部の線膨張係数をα2(K−1)、前記固定部のヤング率をE2(GPa)、前記固定部の厚み寸法をT2(mm)、ゲル状樹脂に基づく係数をAとして、
(α1・E1・T1)≦(α2・E2・T2)である場合に、下記式(1)を満たし、
(α1・E1・T1)>(α2・E2・T2)である場合、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0009】
[数1]
Ta≧A・(α2・E2・T2)/(α1・E1・T1) …(1)
Ta≧A・(α1・E1・T1)/(α2・E2・T2) …(2)
【0010】
この発明では、接着層の厚み寸法は、前記条件を満たしている。このように接着層の厚みが前記条件を満たす場合には、接着層に加わるせん断応力を十分に緩和することができる。そのため、固定部と干渉フィルターとの熱膨張係数の差により発生する応力をより確実に緩和することができる。
【0011】
本発明の光モジュールでは、前記接着層のヤング率が10kPa以上100kPa以下であることが好ましい。
【0012】
ここで、接着層のヤング率が10kPa未満である場合、接着層の流動性が強く、例えば光モジュールに加わった振動で固定部に対する干渉フィルターの位置がずれてしまうおそれがある。一方、接着層のヤング率が100kPaよりも大きい場合、環境温度の変化等が起こった際に、固定部と干渉フィルターとの熱膨張係数の差により発生する応力を十分に抑制できず、干渉フィルターに撓みが生じてしまう場合がある。
これに対して、上記のように、接着層のヤング率が10kPa以上100kPa以下である場合には、接着層に加わるせん断応力を十分に緩和することができ、かつ固定部に対する干渉フィルターの位置ずれも防止できる。
【0013】
本発明の光モジュールでは、前記干渉フィルターは、前記第一反射膜および前記第二反射膜により多重干渉された光が透過する光透過領域を有し、前記接着層は、前記光を透過可能であり、空気よりも前記第一基板に近い屈折率を有し、かつ、前記第一基板および前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記光透過領域と重なる領域に設けられることが好ましい。
【0014】
この発明では、接着層は平面視において光透過領域と重なる領域に設けられる。このような場合、干渉フィルターに入射する入射光は、接着層を介して固定部に到達することとなる。そして、接着層は、空気よりも第一基板に近い屈折率を有しているため、入射光のロスは接着層を介する場合の方が小さくなる。したがって、この発明では、反射による入射光のロスを低減することができる。
【0015】
本発明の光モジュールでは、前記第一基板および前記第二基板は、ガラス基板であり、前記接着層の屈折率が1.3以上1.7以下であることが好ましい。
このように接着層の屈折率が前記範囲内である場合には、第一基板および固定部の材質が通常のものであるとすれば、第一基板または固定部の屈折率と接着層の屈折率との差をより小さくすることができる。そのため、この発明では、反射による入射光のロスを低減することができる。
【0016】
本発明の光モジュールでは、前記干渉フィルターの一部は、硬化性接着剤を硬化させてなる硬化接着層を介して前記固定部に固定され、前記干渉フィルターの他の部分は、前記接着層を介して前記固定部に固定されることが好ましい。
【0017】
この発明では、干渉フィルターの一部は、硬化性接着剤を硬化させてなる硬化接着層を介して固定部に固定される。この硬化性接着剤を用いた場合には、ゲル状樹脂を用いた場合と比較して、干渉フィルターを固定部により強固に固定できる。そして、干渉フィルターの位置ずれを抑制することもできる。一方で、その他の部分においては、干渉フィルターは接着層を介して前記固定部に固定されるため、上記と同様に、干渉フィルターでの歪みの発生を十分に抑制することができる。このようにして、干渉フィルターと固定部との間の接着強度を向上させることができる。
なお、ここで、干渉フィルターの一部は、一箇所であることが好ましい。複数箇所が硬化接着層により固定された場合には、干渉フィルターでの歪みの発生を十分に抑制するという効果が不足する傾向にある。
【0018】
本発明の光モジュールでは、前記硬化接着層のヤング率が1MPa以上であることが好ましい。
このように硬化接着層のヤング率が1MPa以上である場合には、ゲル状樹脂を用いた場合と比較して、干渉フィルターを固定部により強固に固定できる。そのため、この発明では、干渉フィルターと固定部との間の接着強度を向上させることができる。そして、干渉フィルターの位置ずれを抑制することもできる。
【0019】
本発明の光モジュールでは、前記干渉フィルターは、前記第一基板に設けられた電極端子を備え、前記硬化接着層は、前記第一基板および前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において前記電極端子と重なる領域の一部に設けられることが好ましい。
【0020】
この発明では、硬化接着層は平面視において電極端子と重なる領域に設けられる。干渉フィルターの電極端子が設けられた部分においては、仮に歪みが発生したとしても、干渉フィルターの分光精度への影響が少ない。このように、分光精度を十分に維持しつつ、干渉フィルターと固定部との間の接着強度を向上させることができる。また、電極端子に配線を設ける際に外部応力が加わっても、干渉フィルターの位置ずれや傾き等の不具合の発生を抑制できる。
【0021】
本発明の光モジュールでは、前記固定部は、前記干渉フィルターを透過した光を透過可能な透明基板であることが好ましい。
この発明では、干渉フィルターは接着層を介して透明基板に固定されている。そこで、干渉フィルターおよび透明基板を透過した光が受光素子に入射するよう、受光素子を配置すれば、好適な光モジュールとして用いることができる。
【0022】
本発明の光モジュールでは、前記固定部は、前記干渉フィルターを透過した光を受光する受光素子であることが好ましい。
この発明では、干渉フィルターは接着層を介して受光素子に固定されているので、そのまま好適な光モジュールとして用いることができる。
【0023】
本発明の光モジュールでは、外装部と、前記干渉フィルターに入射する光が導入される光入射用基板と、前記干渉フィルターを透過した光が出射される光出射用基板とを備え、内部に密閉された空間を形成する筐体を備え、前記干渉フィルターは、前記筐体の内部に収納されたことが好ましい。
この発明では、干渉フィルターを筐体の内部に収納している。このようにすれば、例えば筐体内に不活性ガスを充填したり、筐体内を減圧したりすることで、干渉フィルターでの使用電力を抑制したり、干渉フィルターの酸化等による劣化を抑制することができる。
また、この発明では、筐体が光入射用基板および光出射用基板を備えるため、筐体を透過した光が受光素子に入射するよう、受光素子を配置すれば、好適な光モジュールとして用いることができる。
【0024】
本発明の光モジュールでは、前記固定部は、前記筐体の前記光出射用基板であることが好ましい。
この発明では、このようにして、干渉フィルターを筐体の内部に収納しており、干渉フィルターでの使用電力を抑制したり、干渉フィルターの酸化等による劣化を抑制することもできる
【0025】
本発明の電子機器は、前記光モジュールを備えることを特徴とする。
ここで、電子機器としては、上記のような光モジュールから出力される電気信号に基づいて、光モジュールに入射した光の色度や明るさ等を分析する光測定器、ガスの吸収波長を検出してガスの種類を検査するガス検出装置、受光した光からその波長の光に含まれるデータを取得する光通信装置等を例示することができる。
この発明では、電子機器は、上述したような光モジュールを備えている。光モジュールは、上記のように、分光精度が高いので、高精度な検出結果を得ることができる。したがって、このような光モジュールを備えた電子機器では、高精度な検出結果に基づいて、正確な光分析処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る第一実施形態の測色装置(電子機器)の概略構成を示す図である。
【図2】第一実施形態における干渉フィルターの概略構成を示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿って切断した干渉フィルターの断面図である。
【図4】第一実施形態の光モジュールにおける干渉フィルターの近傍を示す断面図である。
【図5】第二実施形態の光モジュールにおける干渉フィルターの近傍を示す断面図である。
【図6】第三実施形態の光モジュールにおける干渉フィルターの近傍を示す断面図である。
【図7】第四実施形態の光モジュールにおける干渉フィルターの近傍を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態態の光モジュールにおける干渉フィルターの近傍を示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態の電子機器の一例であるガス検出装置の構成を示す概略図である。
【図10】図9のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の他の実施形態の電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態の電子機器の一例である分光カメラの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔1.光学装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る実施形態の測色装置(電子機器)の概略構成を示す図である。
この測色装置1は、本発明の電子機器であり、図1に示すように、測定対象Aに光を出射する光源装置2と、本発明の光モジュールである測色センサー3と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この測色装置1は、光源装置2から出射される光を測定対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち測定対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0028】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、測定対象Aに対して白色光を出射する。複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれていてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から出射された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから測定対象Aに向かって出射する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば測定対象Aが発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0029】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、本発明の光モジュールを構成する。この測色センサー3は、図1に示すように、干渉フィルター5と、干渉フィルター5を透過した光を受光して検出する受光素子31と、干渉フィルター5に駆動電圧を印可する電圧制御部32と、を備えている。また、測色センサー3は、干渉フィルター5に対向する位置に、測定対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
なお、この測色センサー3においては、後述するように、干渉フィルター5がゲル状樹脂からなる接着層6を介して透明基板7に固定される。
【0030】
(3−1.干渉フィルターの構成)
図2は、干渉フィルター5を基板厚み方向から見た平面視における平面図であり、図3は、図2におけるIII−III線に沿って切断した干渉フィルター5の断面図である。
干渉フィルター5は、図2に示すように、第一基板51、および第二基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスや、水晶等、可視光域の光を透過可能な素材により形成されている。そして、これらの2つの基板51,52は、図3に示すように、外周縁に沿って形成される接合面513,523同士が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0031】
また、第一基板51と、第二基板52との間には、第一反射膜56および第二反射膜57が設けられる。ここで、第一反射膜56は、第一基板51の第二基板52に対向する面に固定され、第二反射膜57は、第二基板52の第一基板51に対向する面に固定されている。また、これらの第一反射膜56および第二反射膜57は、ギャップを介して対向配置されている。ここで、第一反射膜56および第二反射膜57により挟まれる空間を光透過領域Gと称す。そして、干渉フィルター5は、この光透過領域Gで入射光を多重干渉させ、互いに強め合った光を透過させる。
【0032】
さらに、第一基板51と第二基板52との間には、ギャップの寸法を調整するための、本発明のギャップ可変部である静電アクチュエーター54が設けられている。この静電アクチュエーター54は、第一基板51に設けられる第一電極541と、第二基板52に設けられる第二電極542とにより構成されている。
【0033】
(3−1−1.第一基板の構成)
第一基板51は、第二基板52に対向する対向面に、電極溝511およびミラー固定部512が、エッチングにより形成されている。
電極溝511は、図示は省略するが、基板厚み方向から第一基板51を見たフィルター平面視において、平面中心点を中心とするリング形状に形成されている。
ミラー固定部512は、電極溝511と同軸上で、第二基板52に向かって突出する円筒状に形成されている。
【0034】
電極溝511の溝底面には、静電アクチュエーター54を構成するリング状の第一電極541が形成されている。また、この第一電極541は、配線溝に沿って延出される第一電極線541Aが、第一基板51の外周部に向かって形成されている。そして、この第一電極線541Aの先端である第一電極端子541Bが電圧制御部32に接続されている。
【0035】
また、ミラー固定部512の第二基板52に対向する面には、第一反射膜56が固定されている。この第一反射膜56は、例えばSiO、TiOを積層することで構成された誘電体多層膜であってもよく、Ag合金等の金属膜により構成されるものであってもよい。また、誘電体多層膜と金属膜との双方が積層された構成であってもよい。
【0036】
そして、第一基板51の電極溝511の外方には、第一接合面513が形成されている。この第一接合面513には、上述したように、第一基板51および第二基板52を接合するプラズマ重合膜53が形成されている。
【0037】
(3−1−2.第二基板の構成)
第二基板52は、第一基板51に対向しない面がエッチングにより加工されることで、形成される。この第二基板52は、基板中心点を中心とした円形筒状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。ここで、この保持部522の外周径寸法は、第一基板51の電極溝511の外周径寸法よりも僅かに小さい寸法に形成されている。また、この保持部522の内周径寸法は、第一基板51のリング状の第一電極541の外周径寸法よりも僅かに大きい寸法に形成されている。
【0038】
可動部521は、撓みを防止するために、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成されている。なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、例えば、可動部の中心に対して点対象となる位置に設けられる複数対の梁構造を有する保持部が設けられる構成としてもよい。
【0039】
保持部522の第一基板51に対向する面には、第一電極541に所定の間隔をあけて対向する、リング状の第二電極542が形成されている。ここで、上述したように、この第二電極542および前述した第一電極541により、静電アクチュエーター54が構成される。
また、第二電極542の外周縁の一部からは、第二基板52の外周部に向かって、第二電極線542Aが形成され、この第二電極線542Aの先端である第二電極端子542Bが、電圧制御部32に接続される。
【0040】
可動部521の第一基板51に対向する面には、ギャップを介して第一反射膜56に対向する第二反射膜57が形成されている。なお、第二反射膜57の構成は、第一反射膜56と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0041】
(3−2.測色センサーの具体的形態)
図4は、第一実施形態における測色センサー3(光モジュール)の干渉フィルター5の近傍を示す断面図である。
測色センサー3においては、図4に示すように、前述の干渉フィルター5がゲル状樹脂からなる接着層6を介して透明基板7に固定される。そして、干渉フィルター5は、配線Rにより電圧制御部32に接続されている。また、接着層6は、平面視において光透過領域Gと重なる領域に設けられている。ここで、透明基板7の素材としては、第一基板51および第二基板52の素材と同様のものが挙げられる。
接着層6は、後述するような物性を有する層である。そして、透明基板7と干渉フィルター5との熱膨張係数の差により応力が発生したとしても、透明基板7と干渉フィルター5との間に設けられたこの接着層6により、この応力を緩和することができる。そのため、干渉フィルター5での歪みの発生を十分に抑制することができる。
【0042】
(3−3.接着層の構成)
接着層6は、ゲル状樹脂からなる層である。このゲル状樹脂は、平面視において接着層6を光透過領域Gと重なる領域に設けることができるという観点から、可視光域の光を透過可能な樹脂であることが好ましい。一方、このゲル状樹脂は、平面視において接着層6を光透過領域Gと重ならない領域に設ける場合には、可視光域の光を透過しない樹脂であってもよい。このゲル状樹脂としては、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0043】
この接着層6は、以下説明するような物性を有することが好ましい。
すなわち、接着層6の厚み寸法Ta(mm)は、第一基板51および透明基板7の線膨張係数、ヤング率、基板厚み寸法に基づいて設定される。
ここで、第一基板51の線膨張係数とα1(K−1)、ヤング率をE1(GPa)、厚み寸法をT1(mm)とし、透明基板7の線膨張係数をα2(K−1)、ヤング率をE2(GPa)、厚み寸法をT2(mm)、ゲル状樹脂に基づく係数をAとすると、接着層6の厚み寸法Taは(α1・E1・T1)≦(α2・E2・T2)である場合に、下記式(1)を満たし、(α1・E1・T1)>(α2・E2・T2)である場合、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0044】
[数2]
Ta≧A・(α2・E2・T2)/(α1・E1・T1) …(1)
Ta≧A・(α1・E1・T1)/(α2・E2・T2) …(2)
【0045】
上記式(1)および(2)において、Aは、ゲル状樹脂に基づく係数であり、ゲル状樹脂の素材により決定される値である。具体的には、Aは、接着層6のヤング率をE3(GPa)とした場合に、下記式(3)により算出できる。
[数3]
A=E3/0.01 …(3)
このように(α1・E1・T1)≦(α2・E2・T2)の場合に上記式(1)で表される条件を満たす場合、或いは(α1・E1・T1)>(α2・E2・T2)の場合に上記式(2)で表される条件を満たす場合には、透明基板7と干渉フィルター5との熱膨張係数の差により応力が発生したとしても、接着層6に加わるせん断応力をこの接着層6にて十分に緩和することができる。
なお、ヤング率は、膜歪み法、押し込み試験法、ブリュアン散乱法、超音波顕微鏡法、共鳴振動法等の公知のヤング率測定法を適宜選択して測定できる。また、線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analysis)を用いて、一定速度で昇温したときの測定試料と標準試料の熱膨張量の差から測定試料の熱膨張量を測定することで測定できる。
【0046】
また、接着層6のヤング率は10kPa以上100kPa以下であることが好ましい。ヤング率が前記範囲内である場合には、透明基板7と干渉フィルター5との熱膨張係数の差により応力が発生したとしても、接着層6に加わるせん断応力をこの接着層6にて十分に緩和することができる。
【0047】
また、接着層6の屈折率は1.3以上1.7以下であることが好ましい。接着層6の屈折率が前記範囲内である場合には、第一基板51および透明基板7の材質が通常のものであるとすれば、第一基板51または透明基板7の屈折率と接着層6の屈折率との差をより小さくすることができる。
【0048】
(3−4.電圧制御部の構成)
電圧制御部32は、制御装置4の制御により、静電アクチュエーター54の第一電極541および第二電極542に印加する電圧を制御する。
【0049】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューター等を用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43を備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を出射させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、受光素子31により検出された受光量から、測定対象Aの色度を分析する。
【0050】
〔5.本実施形態の作用効果〕
上述したように、本実施形態の測色センサー3では、温度変化が大きい環境で使用する場合に、透明基板7と干渉フィルター5の第一基板51との熱膨張係数の差により応力が発生したとしても、透明基板7と第一基板51との間に設けられたゲル状樹脂からなる接着層6により、この応力を緩和することができる。そのため、干渉フィルター5での歪みの発生を十分に抑制することができる。これにより、温度変化が大きい環境で使用する場合においても高い分光精度を維持できる。
【0051】
本実施形態の測色センサー3では、接着層6は、平面視において光透過領域Gと重なる領域に設けられている。このような場合、干渉フィルター5に入射する入射光は、接着層6を介して透明基板7に到達することとなる。そして、空気の屈折率がほぼ1であるのに対し、第一基板51または透明基板7の屈折率は通常1.5程度であり、接着層6の屈折率は1.3以上1.7以下であることから、第一基板51または透明基板7の屈折率と接着層6の屈折率との差は、第一基板51または透明基板7の屈折率と空気の屈折率との差と比較して小さい。そのため、入射光のロスは接着層6を介する場合の方が小さくなる。したがって、本実施形態では、反射による入射光のロスを低減することができる。
【0052】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
図5は、第二実施形態における測色センサー3(光モジュール)の干渉フィルター5の近傍を示す断面図である。なお、以降の説明において、上記第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
この測色センサー3においては、図5に示すように、干渉フィルター5は、硬化性接着剤を硬化させてなる硬化接着層61を介して透明基板7に固定され、干渉フィルター5の他の部分は、接着層6を介して透明基板7に固定されている。そして、干渉フィルター5は、配線Rにより電圧制御部32に接続されている。また、図5に示すように、硬化接着層61は、平面視において第一電極端子541Bまたは第二電極端子542Bと重なる領域の一部(一箇所)に設けられている。
この硬化接着層61を形成させるための硬化性接着剤としては、適宜公知の硬化性の接着剤を用いることができる。また、この硬化接着層61のヤング率は1MPa以上である。
【0053】
(第二実施形態の作用効果)
本実施形態の測色センサー3では、干渉フィルター5の一部は、硬化接着層61を介して透明基板7に固定される。この硬化性接着剤を用いた場合には、ゲル状樹脂を用いた場合と比較して、干渉フィルター5を透明基板7により強固に固定できる。そして、干渉フィルター5の位置ずれを抑制することもできる。一方で、その他の部分においては、干渉フィルター5は接着層6を介して透明基板7に固定されるため、第一実施形態と同様に、干渉フィルター5での歪みの発生を十分に抑制することができる。このようにして、干渉フィルター5と透明基板7との間の接着強度を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態の測色センサー3では、硬化接着層61のヤング率が1MPa以上である。このような場合には、ゲル状樹脂を用いた場合と比較して、干渉フィルター5を透明基板7により強固に固定できる。そのため、本実施形態では、干渉フィルター5と透明基板7との間の接着強度を向上させることができる。
【0055】
さらに、本実施形態の測色センサー3では、硬化接着層61は、平面視において第一電極端子541Bまたは第二電極端子542Bと重なる領域の一部に設けられている。干渉フィルター5の第一電極端子541Bまたは第二電極端子542Bが設けられた部分においては、仮に歪みが発生したとしても、干渉フィルター5の分光精度への影響が少ない。このように、分光精度を十分に維持しつつ、干渉フィルター5と透明基板7との間の接着強度を向上させることができる。また、第一電極端子541Bまたは第二電極端子542Bに配線を設ける際に外部応力が加わっても、干渉フィルター5の位置ずれや傾き等の不具合の発生を抑制できる。
【0056】
[第三実施形態]
次に本発明の第三実施形態について、図面に基づいて説明する。
図6は、第三実施形態における測色センサー3(光モジュール)の干渉フィルター5の近傍を示す断面図である。
この測色センサー3においては、図6に示すように、干渉フィルター5が接着層6を介して受光素子31に固定され、この受光素子31は硬化接着層61を介して支持基板71に固定される。そして、干渉フィルター5は、配線Rにより電圧制御部32に接続されている。受光素子31は、配線Rにより測色処理部43に接続されている。また、接着層6は、平面視において光透過領域Gおよび受光素子31と重なる領域に設けられている。
ここで、支持基板71としては、透明基板7を用いてもよいが、干渉フィルター5に入射する入射光が到達することがないことから、可視光域の光を透過しないものを用いてもよい。
【0057】
(第三実施形態の作用効果)
本実施形態の測色センサー3では、干渉フィルター5は接着層6を介して受光素子31に固定されているので、そのまま好適な光モジュールとして用いることができる。
【0058】
[第四実施形態]
次に本発明の第四実施形態について、図面に基づいて説明する。
図7は、第四実施形態における測色センサー3(光モジュール)の干渉フィルター5の近傍を示す断面図である。
この測色センサー3は、図7に示すように、干渉フィルター5および透明基板7の他に、これらを収納する筐体8を備えている。この測色センサー3においては、干渉フィルター5は、接着層6を介して透明基板7に固定されており、これらは筐体8に収納されている。
この筐体8は、図7に示すように、干渉フィルター5の上表面側を覆う、可視光域の光を透過可能な材質からなる上面透明部81と、干渉フィルター5および透明基板7の側面を覆う側面部82と、透明基板7の下表面側の一部を支持する下面部83とを備えている。側面部82は、導電ペースト等の導電部材84により接合されて形成されており、この導電部材84により下面部83と接合されている。また、側面部82は、ガラスペースト等の接合部材85により上面透明部81と接合されている。下面部83は、大小2つの貫通孔を有しており、大きい貫通孔は透明基板7により塞がれ、小さい貫通孔は金ボール等の封止部材86により塞がれる。
そして、干渉フィルター5は、配線Rにより導電部材84を介して電圧制御部32に接続されている。
この筐体8では、上面透明部81が干渉フィルター5の光透過領域Gに光を入射させることができ、この上面透明部81が光入射用の窓(光入射用基板)となっている。また、図7に示すように、下面部83の透明基板7を支持していない部分では、干渉フィルター5の光透過領域Gを透過した光を出射させることができ、この部分が光出射用の窓(光出射用基板)となっている。
【0059】
(第四実施形態の作用効果)
本実施形態の測色センサー3では、干渉フィルター5を筐体8の内部に収納している。このようにすれば、例えば筐体8の内部に不活性ガスを充填したり、筐体8の内部を減圧したりすることで、干渉フィルター5の酸化等による劣化を抑制することができる。
さらに、筐体8の内部が真空状態にとなるように密閉されていてもよく、この場合、干渉フィルター5における可動部521を変位させる際に、空気抵抗がかからず、可動部521を駆動させる際の駆動電力を小さくでき、省電力化を図れる。
【0060】
また、本実施形態の測色センサー3では、筐体8が光入射用の窓および光出射用の窓を備えるため、筐体8を透過した光が受光素子31に入射するよう、受光素子31を配置すれば、好適な光モジュールとして用いることができる。
【0061】
[他の実施の形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0062】
例えば、前記実施形態では、干渉フィルター5を透明基板7または受光素子31に固定しているが、干渉フィルター5を固定する固定部はこれらに限定されない。この固定部としては、測色装置1を構成する部材であればいずれのものでもよい。
また、この固定部は、可視光域の光を透過しない部材であってもよい。このような場合、例えば、図8に示すように、干渉フィルター5を接着層6を介して貫通孔を有する支持基板71に固定し、干渉フィルター5の光透過領域Gを透過した光を受光素子31に入射させるようにしてもよい。このような構成にすれば、そのまま好適な光モジュールとして用いることができる。
前記実施形態では、干渉フィルター5は、配線Rにより電圧制御部32に接続されているが、配線Rに代えてフレキシブル性を有するプリント配線基板を用いてもよい。
【0063】
また、前記実施形態において、ミラー固定部512の第二基板52に対向するミラー固定面が、電極固定面よりも第二基板52に近接して形成される例を示したが、これに限らない。電極固定面およびミラー固定面の高さ位置は、ミラー固定面に固定される第一反射膜56、および第二基板52に形成される第二反射膜57の間のギャップの寸法、第一電極541および第二電極542の間の寸法、第一反射膜56や第二反射膜57の厚み寸法等により適宜設定される。したがって、例えば、電極固定面とミラー固定面とが同一面に形成される構成や、電極固定面の中心部に、円筒凹溝上のミラー固定溝が形成され、このミラー固定溝の底面にミラー固定面が形成される構成などとしてもよい。
【0064】
また、電極541,542間のギャップ(電極間ギャップ)が、反射膜56,57間のギャップ(ミラー間ギャップ)よりも大きい場合、ミラー間ギャップを変化させるために大きな駆動電圧が必要となる。これに対して、上記のように、ミラー間ギャップが、電極間ギャップよりも大きくなる場合、ミラー間ギャップを変化させるための駆動電圧を小さくでき、省電力化を図ることができる。また、このような構成の干渉フィルターは、ミラー間ギャップが大きいため、特に長波長域の分光特性測定に対して有効であり、例えば、上述したようなガス分析等に用いる赤外光分析や、光通信を実施するためのモジュールに組み込むことができる。
【0065】
さらに、干渉フィルター5の第二基板52にダイアフラム状の保持部522を設ける構成としたが、例えば可動部521の中心に対して点対称となる位置に設けられた複数の梁状の保持部を設ける構成としてもよい。
【0066】
前記実施形態では、本発明の光モジュールとして、測色センサー3を例示し、電子機器として、測色センサー3を備えた測色装置1を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いてもよく、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器としてもよい。さらに、電子機器は、このような光モジュールを備えた分光カメラ、分光分析器などであってもよい。
また、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられた干渉フィルター5により特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0067】
本発明の電子機器として、測色装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の光モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明に係る干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0068】
図9は、干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図10は、図9のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図9に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、干渉フィルター5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッタ―135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
また、図10に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部138が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図10に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0069】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0070】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0071】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、干渉フィルター5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0072】
なお、上記図9,10において、ラマン散乱光を干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、本発明に係る干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0073】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0074】
図11は、干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図11に示すように、検出器210(光モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(受光部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0075】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って干渉フィルター5に入射する。干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0076】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにした得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0077】
また、図11において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる、また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0078】
さらには、本発明の光モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられた干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0079】
また、電子機器としては、本発明に係る干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図12は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図12に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部320とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部320に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図12に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられた干渉フィルター5を備えて構成されている。
撮像部320は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0080】
さらには、本発明に係る干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明に係る干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0081】
さらには、光モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0082】
上記に示すように、本発明の光モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明に係る干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0083】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0084】
1…測色装置、3…測色センサー、5…干渉フィルター、6…接着層、7…透明基板、8…筐体、31…受光素子、51…第一基板、52…第二基板、56…第一反射膜、57…第二反射膜、61…硬化接着層、541…第一電極、542…第二電極、G…光透過領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一熱膨張係数を有する第一基板、
前記第一基板と互いに対向する第二基板、
前記第一基板に設けられた第一反射膜、
および、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜を有する干渉フィルターと、
前記干渉フィルターの前記第一基板が固定され、前記第一熱膨張係数とは異なる値である第二熱膨張係数を有する固定部と、を備え、
前記干渉フィルターは、ゲル状樹脂の接着層を介して前記固定部に固定された
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記接着層の厚み寸法は、
当該接着層の厚み寸法をTa(mm)、前記第一基板の線膨張係数をα1(K−1)、前記第一基板のヤング率をE1(GPa)、前記第一基板の厚み寸法をT1、前記固定部の線膨張係数をα2(K−1)、前記固定部のヤング率をE2(GPa)、前記固定部の厚み寸法をT2(mm)、ゲル状樹脂に基づく係数をAとして、
(α1・E1・T1)≦(α2・E2・T2)である場合に、下記式(1)を満たし、
(α1・E1・T1)>(α2・E2・T2)である場合、下記式(2)を満たす
ことを特徴とする光モジュール。
[数1]
Ta≧A・(α2・E2・T2)/(α1・E1・T1) …(1)
Ta≧A・(α1・E1・T1)/(α2・E2・T2) …(2)
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光モジュールにおいて、
前記接着層のヤング率が10kPa以上100kPa以下である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記干渉フィルターは、前記第一反射膜および前記第二反射膜により多重干渉された光が透過する光透過領域を有し、
前記接着層は、前記光を透過可能であり、空気よりも前記第一基板に近い屈折率を有し、かつ、前記第一基板および前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記光透過領域と重なる領域に設けられる
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の光モジュールにおいて、
前記第一基板および前記第二基板は、ガラス基板であり、
前記接着層の屈折率が1.3以上1.7以下である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記干渉フィルターの一部は、硬化性接着剤を硬化させてなる硬化接着層を介して前記固定部に固定され、
前記干渉フィルターの他の部分は、前記接着層を介して前記固定部に固定される
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の光モジュールにおいて、
前記硬化接着層のヤング率が1MPa以上である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の光モジュールにおいて、
前記干渉フィルターは、前記第一基板に設けられた電極端子を備え、
前記硬化接着層は、前記第一基板および前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において前記電極端子と重なる領域の一部に設けられる
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記固定部は、前記干渉フィルターを透過した光を透過可能な透明基板である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記固定部は、前記干渉フィルターを透過した光を受光する受光素子である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
外装部と、前記干渉フィルターに入射する光が導入される光入射用基板と、前記干渉フィルターを透過した光が出射される光出射用基板とを備え、内部に密閉された空間を形成する筐体を備え、
前記干渉フィルターは、前記筐体の内部に収納された
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項12】
請求項11に記載の光モジュールにおいて、
前記固定部は、前記筐体の前記光出射用基板である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の光モジュールを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−173347(P2012−173347A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32432(P2011−32432)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】