説明

光モジュール及び光モジュールの製造方法

【課題】光学部品を接合後に簡便に光軸のずれを修正することが可能な光モジュール及び光モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】光学部品20と、光学部品20が固定された台座31,32と、台座31,32が固定された筐体40とを備える光モジュール10において、台座31,32には、光学部品20の光軸に対して平行にスリットSL1〜SL8が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及び光モジュールの製造方法に関し、特に、光モジュールを構成する光学部品を筐体内に固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光モジュールは、各種の光学部品(例えばレンズ等)を光軸調整して筐体に内蔵し固定した装置である。例えば、特許文献1では、光学部品を金属製のホルダに取り付け、このホルダ付き光学部品を光軸調整し、ホルダを2つの金属製の台座で挟み込んで、ホルダと台座と筐体をレーザ溶接等の方法で接合することによって、光学部品を筐体に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−286966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように光学部品を固定した後、光学部品が最適な光軸位置からずれてしまっていることがある。例えば、レーザ溶接によって各部材を接合する場合、接合される金属が溶融する際に応力が発生するなどして各部材の位置が動いてしまい、光軸の位置ずれにつながることがある。
【0005】
光軸のずれは、完成した光モジュールの光出力等、光学特性の劣化を引き起こすため、生じてしまった光軸ずれを修正することが必要である。光軸ずれを修正する一つの方法として、一度接合させた各部材を取り外して、再度、正しい光軸位置になるよう各部材を接合する、ということが考えられるが、取り外し作業自体が煩雑で困難であり、また、取り外し作業の際に周囲の構成物を壊してしまうといったおそれもある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学部品を接合後に簡便に光軸のずれを修正することが可能な光モジュール及び光モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、光学部品と、前記光学部品が固定された台座と、前記台座が固定された筐体とを備える光モジュールにおいて、前記台座にスリットが1つ又は複数形成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、台座に形成されたスリットを溶接等によって閉塞させることで、台座を変形(収縮)させることができ、この台座の収縮により光学部品の光軸を調整することができる。よって、光学部品を台座(を介して筐体)に固定した後に、光学部品を取り外すことなく、スリットの溶接等による簡便な方法で、光軸のずれを修正することが可能である。また、複数のスリットのうち、閉塞させるスリットの数を変えることで、台座の収縮量、即ち、光軸のずれの修正の程度を調節することが可能である。
【0009】
また、本発明は、上記の光モジュールにおいて、前記台座には、複数の前記スリットであって、その側端部の一方が該台座の一の外周面に開口しているスリットと、その側端部の一方が該台座の前記一の外周面とは異なる方向の外周面に開口しているスリットとが形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、台座の外周面に開口しているスリット側端部を閉塞させることで、台座を変形させることができる。
【0011】
また、本発明は、上記の光モジュールにおいて、前記台座には、複数の前記スリットであって、その側端部の一方が該台座の一の外周面に開口しているスリットと、その側端部の一方が該台座の前記一の外周面とは異なる方向の外周面に開口しているスリットとが、互い違いに形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、台座の外周面に開口しているスリット側端部を閉塞させることで、台座を変形させることができる。また、台座の外周面におけるスリット側端部の開口位置が各スリットで互い違いとなるように、複数のスリットが設けられているので、隣り合ったスリットを閉塞させたとき、台座の一方の面と他の面が同程度に収縮する。よって、台座の変形を均一にする(変形後の形状の偏りをなくす)ことができる。
【0013】
また、本発明は、光学部品と、前記光学部品を固定する台座と、前記台座を固定する筐体とを備える光モジュールの製造方法であって、前記光学部品、スリットが1つ又は複数形成された前記台座、及び前記筐体をそれぞれ固定する固定工程と、前記固定された台座のスリットのうち少なくとも1つのスリットの少なくとも一部分を閉塞させることにより前記光学部品の光軸を調整する光軸調整工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光学部品を筐体内に固定してなる光モジュールにおいて、光学部品を接合後に簡便に光軸のずれを修正することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による光モジュールの構成図である。
【図2】台座の各部の寸法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による光モジュール10の構成図であり、同図(A)は光モジュール10の内部(一部分)を横から眺めた様子を表し、同図(B)は台座31の斜視図を表している。
【0017】
図1(A)に示されるように、光モジュール10は、光学部品20を2つの台座31,32を介して筐体40に固定した構成を有する。即ち、筐体40と台座31は接合箇所Pで接合され、筐体40と台座32は接合箇所Qで接合され、台座31と光学部品20は接合箇所Rで接合され、台座32と光学部品20は接合箇所Sで接合され、これにより、光学部品20と台座31,32と筐体40とが固定されている。各接合箇所P,Q,R,Sの接合方法としては、レーザ溶接や接着剤による接着など、適宜の接合方法を利用することができる。なお、接合箇所P,Q,R,及びSは、それぞれ、紙面に垂直な方向に複数並べて設けられていてもよいし、あるいは、紙面に垂直な方向に連続して設けられていてもよい。また、図1(A)では、各接合箇所を分かりやすくするための便宜上、接合される各部材間に隙間を空けているが、実際には、各部材は互いに接触した状態で接合されている。
【0018】
光学部品20は、レンズ21及びレンズ21を保持するためのホルダ22からなる。レンズ21は、光モジュール10に内蔵される図示しない他の光学部品(例えば、半導体レーザ素子や光導波路素子等)と光学的に結合される。レンズ21の光軸は図1(A)において紙面に垂直な方向である。ホルダ22は、その外周上の2点の接合箇所R,Sで台座31及び32と接合され、レンズ21を所定の光軸位置に保持している。
【0019】
台座31(台座32も同様)は、固定時に筐体40と接する基底部31Aと、基底部31Aの一方の端から基底部31Aに対して直角に立ち上がった立設部31Bとからなる、L字型の形状をしている。台座31の材質は例えばステンレス等の金属である。台座31は、基底部31Aの先端付近の接合箇所Pで筐体40と接合されるとともに、立設部31Bの先端付近であって基底部31Aの延在方向とは反対側の面上の接合箇所Rでホルダ22と接合されている。また、台座32は、基底部32Aの先端付近の接合箇所Qで筐体40と接合されるとともに、立設部32Bの先端付近であって基底部32Aの延在方向とは反対側の面上の接合箇所Sでホルダ22と接合されている。これにより、台座31と台座32は、ホルダ22(光学部品20)を両側から挟み込む形で固定している。
【0020】
また、台座31及び32には、立設部31B,32Bに複数のスリットSL1〜SL4が形成され、基底部31A,32Aに複数のスリットSL5〜SL8が形成されている。各スリットの加工は、台座31,32を筐体40や光学部品20に固定する前の台座単体の状態において行っておく。
【0021】
立設部31B,32Bに形成されたスリットSL1〜SL4は、スリットをなす切り込み面K1が立設部31B,32Bの延在方向(図1(A)の上下方向)に対して垂直となっており、基底部31A,32Aに形成されたスリットSL5〜SL8は、スリットをなす切り込み面K2が基底部31A,32Aの延在方向(図1(A)の左右方向)に対して垂直となっている。即ち、スリットSL1〜SL4は光軸に対して平行且つ筐体40に対して水平となるように設けられ、スリットSL5〜SL8は光軸に対して平行且つ筐体40に対して垂直となるように設けられている。
【0022】
更に、スリットSL1,SL3,SL6,及びSL8において、スリットの切り込みは台座31,32の一方の側面M1を貫通しており、スリットSL2,SL4,SL5,及びSL7において、スリットの切り込みは台座31,32の他方の側面M2を貫通している。即ち、スリットSL1,SL3,SL6,及びSL8は、スリットの側端部J1が台座の側面M1に開口するように設けられ、スリットSL2,SL4,SL5,及びSL7は、スリットの側端部J2が台座の側面M2に開口するように設けられている。
【0023】
そして、各スリットは、立設部31B,32Bの先端から台座31,32のL字の屈折部に向かってSL1,SL2,SL3,SL4の順番に、また台座31,32のL字の屈折部から基底部31A,32Aの先端に向かってSL5,SL6,SL7,SL8の順番にそれぞれ並んで配置され、台座の側面M1の側に側端部が開口したスリットと側面M2の側に側端部が開口したスリットとが、互い違いになるよう配列している。
【0024】
また、台座31と筐体40とを接合している接合箇所Pは、スリットSL8よりも基底部31Aの先端に近い側(図1(A)において左側)に設けられ、台座31と光学部品20とを接合している接合箇所Rは、スリットSL1よりも立設部31Bの先端に近い側(図1(A)において上側)に設けられている。台座32の接合箇所Q,Sについても同様である。
【0025】
また、図2を参照して、各スリットの間隙の幅dは、例えば、5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。以下説明するように、この幅dの大きさによって、レンズ21の光軸を調整する際の光軸の移動量が決まる。また、各スリットの切り込みの長さLは、台座31(台座32)の横幅w(例えば数mm程度)に対して、例えば60〜90%程度の長さである。このような寸法のスリットを形成する方法として、例えば、放電加工やレーザ加工を適用することができる。
【0026】
さて、このように構成された光モジュール10において、光学部品20,(スリットを形成済みの)台座31,32,及び筐体40をそれぞれ互いに固定した後に、光学部品20(レンズ21)の光軸を調整する方法を説明する。
【0027】
光軸の調整は、台座31,32に形成されたスリットを溶接等によって閉塞させる(スリットの間隙を潰す)ことによって行う。例えば、台座31のスリットSL1をスリット長Lの全体にわたって溶接すると、スリットSL1の間隙全体が潰れて側面M1側の台座31の高さh1がスリットの幅dの分だけ減少し、台座31が高さ方向(筐体40に垂直な方向)に変形(収縮)する。この結果、台座31とホルダ22の接合箇所Rは距離dだけ筐体40に近付き、レンズ21は筐体40に対して垂直な方向へ変位して、レンズ21の光軸が変化する。同様に台座32のスリットSL1を溶接すると、台座32が高さ方向に収縮してレンズ21の光軸が変化する。この時、光学部品20の左右の台座31,32がスリット1つ分、均等に変形したことによって、レンズ21の光軸は、筐体40に向かって距離dだけ移動することになる。このようにして、レンズ21の光軸の高さを距離dだけ調整することができる。
【0028】
また、更に台座31及び32のスリットSL2の全体を溶接すると、同様に、側面M2側の高さh2がdだけ減少するよう台座31及び32が収縮して、レンズ21の光軸は筐体40に向かって更に距離dだけ移動する。こうして、レンズ21の光軸の高さを、溶接したスリット2つ分の距離2dだけ調整することができる。
【0029】
同様に、台座31,32のスリットSL3とSL4を溶接することで、レンズ21の光軸の高さを距離4dまで調整することができる。
このように、溶接するスリットの本数を変えることで、光軸の調整量を制御することができ、容易に光軸を最適な状態に設定することが可能である。
【0030】
また、同様に、台座31,32のスリットSL5〜SL8を溶接することで、台座31,32が筐体40との接合箇所P,Qを基点として水平方向(筐体40に対して)に収縮する。これにより、ホルダ22が水平方向に変位して、レンズ21の光軸の水平位置を調整することができる。
【0031】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0032】
例えば、台座31,32の形状は、L字型のものに限られず、T字型、四角柱、円柱など適宜変更してもよい。また、台座の個数は1つでも3つ以上でもよい。
また、台座31,32に設けるスリットの本数は任意である。本数を多くするほど、光軸調整の自由度を増やすことができる。
また、台座31,32には、筐体40に対して水平なスリット(SL1〜SL4)と、筐体40に対して垂直なスリット(SL5〜SL8)のどちらか一方だけを設けてもよい。
また、光軸調整が可能であるためには、スリットは光軸に対して垂直でないことが最低限必要である(スリットが光軸に対して垂直であると、台座は光軸方向に沿って収縮するのでレンズ21の光軸は変化しないため)が、筐体40に対する関係は、図1のように水平又は垂直となっていなくてもよく、任意である。例えば、筐体40に対して斜めの角度でスリットが設けられていてもよい。
また、筐体40に対して水平なスリットのうち、台座31,32の側面M1の側に側端部が開口したスリット(SL1,SL3)だけを溶接したり、その反対に、側面M2の側に側端部が開口したスリット(SL2,SL4)だけを溶接したりしてもよい。筐体40に対して垂直なスリットについても同様である。
また、台座の側面M1の側に側端部が開口したスリットと側面M2の側に側端部が開口したスリットとが互い違いにならないよう、各スリットを配列した構成としてもよい。例えば、全てのスリットの側端部が台座の側面M1又はM2の側に開口していてもよい。
また、スリットを溶接する箇所は、スリット長Lの全体でなくてもよく、スリット長Lのうちの一部であってもよい。スリット長Lの一部分だけを溶接する場合、その溶接箇所は、台座の側面に開口したスリット側端部とするのが好ましい。
また、光学部品20は、レンズ21に代えて、他の光学素子、例えば、ミラーや光学フィルタ、半導体レーザ素子、光導波路素子等を備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…光モジュール 20…光学部品 21…レンズ 22…ホルダ 31,32…台座 31A,32A…台座の基底部 31B,32B…台座の立設部 40…筐体 SL1〜SL8…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品と、前記光学部品が固定された台座と、前記台座が固定された筐体とを備える光モジュールにおいて、
前記台座にスリットが1つ又は複数形成されている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記台座には、複数の前記スリットであって、その側端部の一方が該台座の一の外周面に開口しているスリットと、その側端部の一方が該台座の前記一の外周面とは異なる方向の外周面に開口しているスリットとが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記台座には、複数の前記スリットであって、その側端部の一方が該台座の一の外周面に開口しているスリットと、その側端部の一方が該台座の前記一の外周面とは異なる方向の外周面に開口しているスリットとが、互い違いに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
光学部品と、前記光学部品を固定する台座と、前記台座を固定する筐体とを備える光モジュールの製造方法であって、
前記光学部品、スリットが1つ又は複数形成された前記台座、及び前記筐体をそれぞれ固定する固定工程と、
前記固定された台座のスリットのうち少なくとも1つのスリットの少なくとも一部分を閉塞させることにより前記光学部品の光軸を調整する光軸調整工程と、
を含むことを特徴とする光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−237440(P2010−237440A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85295(P2009−85295)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】