説明

光レシーバ装置

【課題】 高周波特性が改善された光レシーバ装置を提供する。
【解決手段】 光レシーバ装置は、出力端子となる第1電極と接地電位とは異なる電源が接続される第2電極とを有する受光素子と、アンプ素子を搭載するとともに上面に信号電極および接地電極からなる接続端子が設けられてなるアンプ回路と、信号電極に対し上面側から受光素子の第1電極の電位を接続する第1導体と、接地電極に対し上面側から受光素子の第2電極の電位を、第1コンデンサを介して接続する第2導体と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光レシーバ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光レシーバ装置は、高周波特性の向上が求められている。図1は、光レシーバ装置の回路構成の一例を示す図である。図1に示すように、光レシーバ装置は、例えば、受光素子10、TIA(Trans Impedance Amplifier)20等を備えている。受光素子10には、信号光1が光結合されている。受光素子10のアノードは、TIA20の入力端子に接続され、カソードは正電源(たとえば+5V)に接続されている。TIA20は、アンプ素子21および帰還抵抗R1により構成されている。受光素子10によって光電変換された信号は、TIA20によって電圧情報に変換されて出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−274032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光レシーバ装置に求められる高周波特性は、年々高くなっている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高周波特性が改善された光レシーバ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光レシーバ装置は、出力端子となる第1電極と接地電位とは異なる電源が接続される第2電極とを有する受光素子と、アンプ素子を搭載するとともに上面に信号電極および接地電極からなる接続端子が設けられてなるアンプ回路と、信号電極に対し上面側から受光素子の第1電極の電位を接続する第1導体と、接地電極に対し上面側から受光素子の第2電極の電位を、第1コンデンサを介して接続する第2導体と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る光レシーバ装置においては、受光素子には、接地電位とは異なる電源が接続され、逆バイアスされる。しかしながら、受光素子の出力端子(第1電極)から見た場合、上記電源電位は、高周波的には基準電位として作用する。本発明者らは、この事項に着目し、逆バイアスを与える電源が接続される電極(第2電極)と、アンプ回路の接続端子を構成する接地電極との間をコンデンサを介してアンプ回路の上面側から接続するものである。これにより、受光素子とアンプ回路の間の伝送特性が向上する。したがって、光レシーバ装置の高周波特性を改善することができる。
【0008】
また、本発明による光レシーバ装置において、接地電極は、前記信号電極の両側にそれぞれ設けることが可能である。
【0009】
また、本発明による光レシーバ装置において、前記受光素子は、2つの受光部を縦続接続した構成を備え、前記2つの受光部の共通接続点を前記第1電極とし、前記2つの受光部の前記共通接続される電極とは反対側の電極のうち、少なくとも一方を前記受光素子の第2電極とすることができる。
【0010】
また、本発明による光レシーバ装置において、前記受光素子は、前記受光素子の第1電極の電位を引き出す第1パターンと、前記受光素子の第2電極の電位を引き出す第2パターンを有する受光素子キャリアに搭載することができる。
【0011】
また、本発明による光レシーバ装置において、前記第2パターンを、前記第1パターンの両側に設け、前記第1コンデンサは、前記第2パターンの両方に設けることができる。
【0012】
また、本発明による光レシーバ装置において、前記第1導体を前記第1パターンと前記信号電極との間を接続するボンディングワイヤとし、前記第2導体を前記第2パターン上の前記第1コンデンサと前記接地電極との間を接続するボンディングワイヤとすることができる。
【0013】
また、本発明による光レシーバ装置において、前記各受光部のうち、前記共通接続される電極とは反対側の電極は、それぞれ、接地電位とは異なる電源に接続することができる。
【0014】
また、本発明による光レシーバ装置において、各受光部の前記共通接続される電極とは反対側の電極それぞれの間は、直流阻止手段を介して共通に接続することができる。
【0015】
また、本発明による光レシーバ装置において、前記直流阻止手段として、前記第1コンデンサを採用することができる。
【0016】
また、本発明による光レシーバ装置において、前記第2電極の電位に対して前記第1コンデンサと並列に前記第1コンデンサよりも容量の大きな第2コンデンサを接続することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高周波特性が改善された光レシーバ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光レシーバ装置の回路構成の一例を示す図である
【図2】(a)は光レシーバ装置の平面図であり、(b)は(a)の切断線A−A’における要部断面図である。
【図3】(a)は第1の実施形態に係る光レシーバ装置の上面図であり、(b)は切断線B−B’における要部断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る光レシーバ装置の回路構成を説明する図である。
【図5】第2の実施形態に係る光レシーバ装置の上面図である。
【図6】第3の実施形態に係る光レシーバ装置の平面図である。
【図7】第3の実施形態に係る光レシーバ装置の光・電気変換利得の周波数特性を示す図である。
【図8】第4の実施形態に係る光レシーバ装置の平面図である。
【図9】第5の実施形態に係る光レシーバ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に、比較例1に係る光レシーバ装置について説明を行う。
(比較例1)
【0020】
図2(a)および図2(b)は、比較例1に係る光レシーバ装置の実装構造を模式的に説明する図である。図2(a)は、比較例1に係る光レシーバ装置の平面図であり、図2(b)は、図2(a)の切断線A−A’における要部断面図である。
【0021】
受光素子10は、半導体基板10−1の主面に設けられた受光素子メサ(受光部)10−2、受光素子メサ10−2の両側に設けられたダミーメサ10−3、および、半導体基板10−1の裏面に設けられたレンズ10−4によって構成されている。なお、図2(a)は、受光素子メサ10−2および各ダミーメサ10−3の回路図も併せて示している。
【0022】
受光素子メサ10−2の上面は、p型半導体で構成されている。受光素子メサ10−2の上面には、アノード電極に相当する出力電極10−21が設けられている。また、各ダミーメサ10−3の上面には、受光素子メサ10−2の下側のn型半導体の領域から導出された、カソード電極に相当する電源電極10−31が設けられている。レンズ10−4に入射した信号光は、受光素子メサ10−2に集光される。
【0023】
受光素子10は、受光素子キャリア30に搭載されている。受光素子キャリア30は、たとえばセラミックスなどの誘電体で構成されている。受光素子キャリア30の表面には、信号パターン30−1および電源パターン30−2が設けられている。信号パターン30−1は、受光素子メサ10−2の出力電極10−21と接続されている。電源パターン30−2は、各ダミーメサ10−3の電源電極10−31と接続されている。電源パターン30−2には正電源が接続されている。それにより、受光素子10には、電源パターン30−2を介して逆バイアスが印加される。
【0024】
一方、図1におけるTIA20は、半導体からなるTIAチップ20−1により構成されている。TIAチップ20−1には、模式的に示すアンプ素子21が設けられている。また、TIAチップ20−1には、図示しない帰還抵抗、電源回路等が設けられている。アンプ素子21の入力には信号導体20−11が接続されている。信号導体20−11には信号電極20−111が設けられている。信号導体20−11および信号電極20−111の両側には、接地電極20−12が配置されている。接地電極20−12はビアホール電極20−13を介して裏面の接地電位に接続される。信号電極20−111および接地電極20−12は、所定の特性インピーダンスを有する入力端子として作用する。
【0025】
受光素子キャリア30およびTIAチップ20−1は、ベースキャリア50に搭載されている。ベースキャリア50は、たとえば導体で構成されており、接地電位に接続されている。この接地電位は、TIAチップ20−1のビアホール電極20−13を介して接地電極20−12と接続される。受光素子キャリア30に設けられた信号パターン30−1と、TIAチップ20−1に設けられた信号電極20−111とは、ボンディングワイヤ40によって接続されている。
【0026】
光レシーバ装置に求められる高周波特性は、年々高くなっている。たとえば、受光素子メサ10−2を小型化することで寄生容量を低減し、これによって受光素子10の高周波特性を改善することが考えられる。しかしながら、受光素子メサ10−2をさらに小型化しようとすると、受光素子メサ10−2の受光領域における光結合が困難になってしまう。以下の各実施形態に係る光レシーバ装置は、高周波特性を改善するものである。
【0027】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態に係る光レシーバ装置100を説明するための図である。図3(a)は、光レシーバ装置100の上面図であり、図3(b)は切断線B−B’における要部断面図である。本実施形態は、図2に示した構成と同じ受光素子10を採用した光レシーバ装置に対して、本発明を適用したものである。
【0028】
図3(a)および図3(b)において、受光素子10は、図2(a)および図2(b)に示したものと同じ構成を採用している。受光素子10は、半導体基板10−1の主面上に設けられた受光素子メサ10−2およびダミーメサ10−3を備えている。なお、図3(a)は、受光素子メサ10−2および各ダミーメサ10−3の回路図も併せて示している。
【0029】
受光素子メサ10−2は、たとえばp−i−n構造の受光素子構造で構成されている。典型的には、半導体基板10−1としてInPが利用され、受光素子メサ10−2のp−i−n構造は、基板側から順にn型InP、i型(n型)InGaAs、およびp型InGaAsで構成される。本実施形態では、受光素子メサ10−2の上面はアノード端子に相当し、受光素子メサ10−2の下面(基板側)はカソード端子に相当する。受光素子メサ10−2の上面には、受光素子10の出力端子に相当する出力電極10−21(第1電極に相当)が設けられている。
【0030】
ダミーメサ10−3は、受光素子メサ10−2の両側の領域に設けられている。各ダミーメサ10−3の上面には、電源電極10−31(第2電極に相当)が設けられている。ダミーメサ10−3は電気的には利用されておらず、受光素子メサ10−2と同じ高さに受光素子メサ10−2のカソード端子の電位を引き出すためのものである。本実施形態では、電源電極10−31に正電位(たとえば+5V)が接続され、これにより、受光素子10に逆バイアスが印加される。
【0031】
半導体基板10−1の裏面にはレンズ10−4が形成されている。このレンズ10−4を介して、入射光が受光素子メサ10−2に集光される。受光素子キャリア30は、たとえばセラミックスからなる誘電体によって構成されている。この受光素子キャリア30には、受光素子10の受光素子メサ10−2に設けられた出力電極10−21に対応して、信号パターン30−1が設けられている。また、信号パターン30−1の両側には、各ダミーメサ10−3に設けられた電源電極10−31に対応して、電源パターン30−2が設けられている。これら2つの電源パターン30−2は、受光素子キャリア30上の図示しない領域で共通に接続されており、正電源に接続される。信号パターン30−1と電源パターン30−2との間隔は、所定の特性インピーダンスを持つ伝送線路を構成するように定められている。
【0032】
本実施形態に係る信号パターン30−1および電源パターン30−2は、受光素子キャリア30の受光素子10を搭載する面に対して直角な面に設けられている。受光素子キャリア30の2つの電源パターン30−2上には、それぞれ第1コンデンサとして機能するコンデンサ31が設けられている。コンデンサ31は、上面電極31−1および下面電極31−2を備えている。下面電極31−2は、電源パターン30−2と共通に接続されている。
【0033】
一方、アンプ回路として機能するTIAチップ20−1は、典型的にはInPで構成されている。また、TIAチップ20−1には、HBT(Hetero Junction Bipolar Transistor)によって構成されたアンプ素子21が設けられている。また、アンプ素子21の入力には信号導体20−11が接続されている。信号導体20−11の先端には、信号電極20−111が設けられている。信号導体20−11および信号電極20−111の両側の領域には接地電極20−12が設けられている。
【0034】
接地電極20−12には、ビアホール電極20−13が設けられており、TIAチップ20−1の裏面に配置された裏面電極(図示せず)と接続されている。信号電極20−11および接地電極20−12は、所定の特性インピーダンスを有する入力端子として作用する。また、信号導体20−11および接地電極20−12は、上記入力端子(信号電極20−111および接地電極20−12)とアンプ素子21との間を接続し、所定の特性インピーダンスを有する伝送線路を構成している。
【0035】
受光素子10を搭載した受光素子キャリア30と、TIAチップ20−1は、たとえば銅タングステン(CuW)、鉄ニッケルコバルト(FeNiCo)等の導体によって構成されたベースキャリア50上に搭載されている。ベースキャリア50は、接地電位と接続されており、TIAチップ20−1の裏面電極に対して接地電位を与える。
【0036】
受光素子キャリア30に設けられた信号パターン30−1と、TIAチップ20−1の信号導体20−11に接続された信号電極20−111とは、ボンディングワイヤ40(第1接続導体)によって接続されている。また、各電源パターン30−2に搭載されたコンデンサ31の上面電極31−1と、TIAチップ20−1の各接地電極20−12とは、それぞれボンディングワイヤ41(第2接続導体)によって接続されている。
【0037】
以上説明した構成によれば、受光素子10に逆バイアスを印加する電流源に接続される電極(本実施形態では受光素子10の電源電極10−31)と、TIAチップ20−1上の接地電極20−12との間が、高周波的に共通化されることになる。
【0038】
本実施形態によれば、高周波的な観点において、受光素子10における基準電位(すなわち受光素子10の電源電極10−31)とTIAチップ20−1に設けられた接地電極20−12との共通性が高まる。これにより、受光素子10からTIAチップ20−1に至る信号経路の伝送特性が向上する。また、この接続は、ボンディングワイヤ40,41によって、TIAチップ20−1の信号導体20−11が設けられている側である上面側から行われるため、不要なインダクタンス成分を抑えることができる。
【0039】
以上の構成により、光レシーバ装置100の高周波特性を改善することができる。なお、本実施形態では、カソード端子に正電源を接続することによって受光素子10に対して逆バイアスを印加したが、それに限られない。例えば、アノード端子に負バイアスを印加することによって、受光素子10同様に逆バイアスの印加を行うことができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態においては、バランスタイプの受光素子を利用した光レシーバ装置が採用されている。図4は、本実施形態に係る光レシーバ装置101の回路構成を説明する図である。
【0041】
図4に示すように、光レシーバ装置101においては、受光素子10aと受光素子10bとが、同じ方向に縦続接続されている。出力信号は、2つの受光素子10a,10bの共通接続点から取り出される。2つの受光素子10a,10bの他端は、それぞれの受光素子に逆バイアスを印加する電流源に接続されている。図4の例では、受光素子10aの他端側には正電流源、受光素子10bの他端側には負電流源が接続されている。
【0042】
共通接続点から取り出される出力信号は、TIA20に入力され、TIA20において電圧信号に変換される。2つの受光素子10a,10bには、互いに逆相の光信号1,2が光結合されている。これにより、受光素子10a,10bは、信号振幅を拡大して出力することができる。この態様は、位相変調されたデジタル光信号の電気変換において、特に好適な態様である。
【0043】
図5は、光レシーバ装置101の上面図である。第1の実施形態において説明したものと同じ部位には、同じ符号を付しており、説明を省略する。本実施形態における受光素子10は、半導体基板10−1の主面上にバランスタイプの受光素子を構成する2つの受光素子10a,10bとして機能する受光素子メサ10−2,10−5が設けられている。また、受光素子メサ10−2に隣接して、ダミーメサ10−3が設けられている。受光素子メサ10−2,10−5とダミーメサ10−3とは、受光素子メサ10−2,10−5が縦続接続されている。なお、図5は、受光素子メサ10−2,10−5およびダミーメサ10−3の回路図も併せて示している。
【0044】
受光素子メサ10−2の上面は、2つの受光部の共通接続点に相当する。また、受光素子メサ10−2の上面には、バランスタイプの受光素子の出力端子に相当する出力電極10−21が設けられている。受光素子メサ10−5の上面には、受光素子メサ10−5に逆バイアスを印加するための負電流源に接続される負電源電極10−51が設けられている。また、ダミーメサ10−3の上面には、受光素子メサ10−2に逆バイアスを印加するための正電流源に接続される正電源電極10−31が設けられている。すなわち、正電源電極10−31および負電源電極10−51は、それぞれ電源を印加するための電極(第2電極)に相当する。これら正電源電極10−31および負電源電極10−51は、高周波的には、信号電極10−21に対する基準電位となる。半導体基板10−1の裏面側には、受光素子メサ10−2,10−5のそれぞれに対応して、レンズ10−4が設けられている。
【0045】
受光素子キャリア30には、信号パターン30−1の両側に、電源パターン30−2,30−3が設けられている。電源パターン30−2と電源パターン30−3とは、電気的に分離されている。電源パターン30−2は、ダミーメサ10−3の正電源電極10−31に接続されており、外部の正電流源と接続されるものである。電源パターン30−3は、受光素子メサ10−5の負電源電極10−51に接続されており、外部の負電流源と接続されるものである。
【0046】
また、電源パターン30−2の上にはコンデンサ31が搭載されており、電源パターン30−3の上にはコンデンサ32が搭載されている。コンデンサ31,32の下面電極は、それぞれ電源パターン30−2および電源パターン30−3と接続される。コンデンサ31,32の上面電極31−1,32−1は、それぞれボンディングワイヤ41によって各接地電極20−12と接続されている。
【0047】
本実施形態では、TIAチップ20−1における2つの接地電極20−12のうち、一方には正電流源が接続された電源パターン30−2がコンデンサ31を介して接続され、他方には、負電流源が接続された電源パターン30−3がコンデンサ32を介して接続される。
【0048】
本実施形態においても、第1実施形態と同様、受光素子10からTIAチップ20−1に至る信号経路の伝送特性が向上する。なお、本実施形態におけるバランスタイプの受光素子は、正電流源と負電流源との間に接続されているが、正電流源と接地電源との間に接続することもできる。その場合、受光素子メサ10−5の負電源電極10−51は、電源パターン30−3を介して接地電源に接続される。また、コンデンサ32は排除され、電源パターン30−3がボンディングワイヤ41を介して接地電極20−12と直接に接続されていればよい。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態においては、コンデンサ31,32の上面電極31−1,32−1を共通に接続するボンディングワイヤ42が設けられている。その他の構成は、第2の実施形態と同じである。
【0050】
図6は、本実施形態に係る光レシーバ装置102の平面図である。なお、図6は、受光素子メサ10−2,10−5およびダミーメサ10−3の回路図も併せて示している。光レシーバ装置102においては、バランスタイプの受光素子10にそれぞれ接続される電流源が、直流阻止手段を介して共通に接続される。本実施形態においては、この直流阻止手段として、コンデンサ31,32を利用している。なお、別のコンデンサを配置して、直流阻止を行った後、コンデンサ31,32の電位を共通に接続してもよい。
【0051】
本実施形態によれば、バランスタイプの受光素子10において、2つの電流源が、高周波的に共通に接続されることになる。また、その2つの電流源は、TIAチップ20−1に設けられた伝送線路の接地電位と共通に接続されることになる。これらの構成により、本実施形態では、さらに良好な高周波特性を得ることができる。
【0052】
図7は、本実施形態に係る光レシーバ装置102の光・電気変換利得の周波数特性を示す図である。図7においては、比較例2の周波数特性も併せて示されている。なお、比較例2は、図6において、コンデンサ31,32およびボンディングワイヤ41,42が排された構成を有する。図7から明らかなように、比較例2においては、3dB帯域が16GHz程度であるのに対し、本実施形態においては、20GHzに近い3dB帯域を得ることができることが分かる。図7によれば、本実施形態において良好な高周波特性が得られていることがわかる。
【0053】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図8は、第4の実施形態に係る光レシーバ装置103の平面図である。本実施形態においては、第3の実施形態に対して、さらに受光素子キャリア30上に第2コンデンサとして機能するコンデンサ33,34を設けた態様が示されている。なお、図8は、受光素子メサ10−2,10−5およびダミーメサ10−3の回路図も併せて示している。
【0054】
コンデンサ33,34は、第1コンデンサとして機能するコンデンサ31,32と同様、上面電極および下面電極を備えている。コンデンサ33,34の下面電極はそれぞれ、受光素子キャリア30上の電源パターン30−2,30−3に接続されている。また、コンデンサ33,34の上面電極33−1,34−1は、それぞれ、ボンディングワイヤ43,44により、コンデンサ31,32の上面電極31−1,32−1に共通に接続されている。コンデンサ33,34は、コンデンサ31,32よりも大きな容量を備えており、コンデンサ31,32の通過周波数帯域よりも低い通過周波数帯域を有している。コンデンサ33,34を設けることにより、広い周波数帯域に渡って基準電位が接地電極20−12と共通化されるため、さらに高周波特性を向上させることができる。
【0055】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図9は、第5の実施形態に係る光レシーバ装置104の平面図である。光レシーバ装置104は、第4の実施形態におけるコンデンサ33,34をベースキャリア50上に設けた構成を有する。なお、図9は、受光素子メサ10−2,10−5およびダミーメサ10−3の回路図も併せて示している。
【0056】
コンデンサ33,34の下面電極は、ベースキャリア50に接続されており、接地電位となる。コンデンサ33,34の上面電極33−1,34−1は、第4の実施形態と同様、コンデンサ31,32の上面電極と共通に接続されている。本実施形態においては、コンデンサ31,32の上面電極の電位が、コンデンサ33,34によって直流阻止されて、ベースキャリア50の接地電位に高周波的に接続される。ベースキャリア50の接地電位は、ビアホール電極20−13を介してTIAチップ20−1の接地電極20−12と接続される。このため、コンデンサ31,32の上面電極の電位は、ベースキャリア50を介して接地電極20−12と共通に接続されることになる。
【0057】
本実施形態においては、ベースキャリア50上にコンデンサ33,34が搭載される。したがって、本実施形態に係る光レシーバ装置104は、第4の実施形態に係る光レシーバ装置103に比べ、実装が容易である。
【0058】
本実施形態においては、コンデンサ33,34は、ベースキャリア50上に搭載される。したがって、ボンディングワイヤ43,44は、第4の実施形態に比べて長くなる。しかしながら、コンデンサ33,34はコンデンサ31,32に比べて低い周波数帯域を通過させるものである。したがって、その低い周波数帯域において、長いボンディングワイヤ43,44のインダクタンスは、大きな影響を持たない。
【0059】
以上説明したように、上記各実施形態によれば、良好な高周波特性を有する光レシーバ装置を提供することができる。また、本発明は、以上説明した各実施形態に限られるものではない。受光素子10には、pin型受光素子のほか、アバランシェ増倍を利用したAPD(avalanche photodiode)を採用することもできる。また、受光素子10は受光素子キャリア30に搭載されているが、たとえば、ベースキャリア50に搭載することもできる。その場合は、ベースキャリア50を誘電体によって構成し、受光素子キャリア30に配置されていた信号パターン30−1および電源パターン30−2,30−3は、ベースキャリア50上のパターンとして配置すればよい。コンデンサ31,32についてもベースキャリア50に設けられた電源パターン30−2,30−3上に配置すればよい。
【0060】
また、受光素子10をTIAチップ20−1上に配置することもできる。その場合、受光素子キャリア30に配置されていた信号パターン30−1および電源パターン30−2,30−3は、TIAチップ20−1上のパターンとして配置すればよい。コンデンサ31,32については、TIAチップ20−1上に設けるか、あるいは、TIAチップ20−1上にMIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタにより構成することができる。
【0061】
なお、第1乃至第3の実施形態においては、TIAチップ20−1の接地電極20−12には、ビアホール電極が設けられていたが、本発明を採用した場合、これは必ずしも必要ではない。すなわち、本発明によれば、信号伝送に必要な基準電位が、受光素子10側からコンデンサ31,32を介して接地電極20−12に接続されている。このため、TIAチップ20−1の接地電極20−12をTIAチップ20−1の接地電位に接続しない場合においても、この接地電極20−12には、基準電位、すなわち高周波的には接地電位が提供されることになる。
【0062】
また、本発明はバランスタイプの受光素子を利用して、位相変調された光信号を電気信号に変換する方式に採用することができる。また、上記各実施形態に係る光レシーバ装置を複数用意し、たとえばDP−QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)光通信における各受光ユニットとして採用することもできる。
【0063】
なお、第2乃至第5の実施形態では、バランスタイプの受光素子10として、2つの受光部(受光素子メサ10−2,10−5)を共通の半導体基板に集積化した構造を採用していたが、それに限られない。例えば、バランスタイプの受光素子は、別個の受光素子チップを縦続接続した構造を有していてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 受光素子
10−2 受光素子メサ
10−3 ダミーメサ
20 TIA
20−1 TIAチップ
30 受光素子キャリア
31,32,33,34 コンデンサ
40,41,42,43 ボンディングワイヤ
50 ベースキャリア
100 光レシーバ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端子となる第1電極と、接地電位とは異なる電源が接続される第2電極とを有する受光素子と、
アンプ素子を搭載するとともに、上面に信号電極および接地電極からなる接続端子が設けられてなるアンプ回路と、
前記信号電極に対し、前記上面側から前記受光素子の第1電極の電位を接続する第1導体と、
前記接地電極に対し、前記上面側から前記受光素子の第2電極の電位を、第1コンデンサを介して接続する第2導体と、を備えることを特徴とする光レシーバ装置。
【請求項2】
前記接地電極は、前記信号電極の両側にそれぞれ設けられてなることを特徴とする請求項1記載の光レシーバ装置。
【請求項3】
前記受光素子は、2つの受光部を縦続接続した構成を備え、
前記2つの受光部の共通接続点を前記第1電極とし、
前記2つの受光部の前記共通接続される電極とは反対側の電極のうち少なくとも一方を、前記受光素子の第2電極とすることを特徴とする請求項1または2記載の光レシーバ装置。
【請求項4】
前記受光素子は、前記受光素子の第1電極の電位を引き出す第1パターンと、前記受光素子の第2電極の電位を引き出す第2パターンと、を有する受光素子キャリアに搭載されてなることを特徴とする請求項1乃至3記載の光レシーバ装置。
【請求項5】
前記第2パターンは、前記第1パターンの両側に設けられ、
前記第1コンデンサは、前記第2パターンの両方に設けられてなることを特徴とする請求項4記載の光レシーバ装置。
【請求項6】
前記第1導体は、前記第1パターンと前記信号電極との間を接続するボンディングワイヤであり、
前記第2導体は、前記第2パターン上の前記第1コンデンサと前記接地電極との間を接続するボンディングワイヤであることを特徴とする請求項4または5記載の光レシーバ装置。
【請求項7】
前記各受光部のうち、前記共通接続される電極とは反対側の電極は、それぞれ、接地電位とは異なる電源に接続されてなることを特徴とする請求項3記載の光レシーバ装置。
【請求項8】
各受光部の前記共通接続される電極とは反対側の電極それぞれの間は、直流阻止手段を介して共通に接続されてなることを特徴とする請求項3または7記載の光レシーバ装置。
【請求項9】
前記直流阻止手段は、前記第1コンデンサであることを特徴とする請求項8記載の光レシーバ装置。
【請求項10】
前記第2電極の電位に対して前記第1コンデンサと並列に前記第1コンデンサよりも容量の大きな第2コンデンサが接続されてなることを特徴とする請求項1記載の光レシーバ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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