説明

光信号入力の有無を検出する信号入力検出装置

【課題】できるだけ簡易な方法で、光増幅器等の光デバイスの入力端における信号入力の有無を検出し、検出結果に応じて光デバイスの動作を適切に制御する。
【解決手段】第1のモニタ手段101は、入力光の強度をモニタして、入力光強度を示す第1のモニタ信号を出力する。第2のモニタ手段102は、入力光の交流成分の強度をモニタして、交流強度を示す第2のモニタ信号を出力する。判別手段103は、第1のモニタ信号と第2のモニタ信号を用いて、入力光に信号光が含まれているか否かを判別する。その判別結果に応じて、光デバイスが制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムにおいて光増幅器等の光デバイスに対する光信号入力の有無を検出する信号入力検出装置と、その検出結果を用いた光デバイス制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図28は、波長分割多重(WDM)技術を用いた従来の光通信システムの構成例を示している。この光通信システムは、光送信装置11、伝送路ファイバ12、14、16、光増幅中継器13、15、および光受信装置17を含む。
【0003】
このうち、光送信装置11は、光送信器21−1〜21−n、光合波器22、および光増幅器23を備え、光受信装置17は、光増幅器24、光分波器25、光増幅器26−1〜26−n、可変型波長分散補償器27−1〜27−n、および光受信器28−1〜28−nを備える。光増幅中継器13、15、および光増幅器23、24は、WDM信号を一括して増幅し、光増幅器26−1〜26−nは、それぞれ1波長の光信号を増幅する。
【0004】
現在、光通信システムで最も普及している光増幅器としては、光ファイバのコアに添加した希土類元素エルビウムの誘導放出を利用した、EDFA(Erbium-doped fiber amplifier)が挙げられる。光増幅中継器13および15は、それぞれ伝送路ファイバ12および14中を伝送され、パワーが小さくなった光信号を増幅する。
【0005】
このとき、光信号が増幅されると同時に、誘導放出により振幅、位相、偏波等がランダムな自然放出光(ASE:Amplified Spontaneous Emission)が発生し、光信号対雑音比(OSNR:Optical Signal to Noise Ratio )を劣化させる。このASEは、光増幅中継器を通過する毎に増幅、累積され、最終的には光信号と共に光受信装置17に入力される。
【0006】
図28の例では、光送信装置11からWDM信号31およびASE32を含む光が出力される。そして、光受信装置17の光分波器25には、WDM信号33およびASE34を含む光が入力され、光増幅器26−2には、1波長の光信号35およびASE36を含む光が入力される。
【0007】
1波長当りの伝送速度が40Gbit/sの高速な光伝送システムでは、波長分散に対するトレランスが著しく小さくなるため、高精度な波長分散補償が必要になる。そこで、光受信装置17において可変分散補償器27−1〜27−nを設けることにより、チャネル毎に高精度な波長分散補償が可能となり、さらにはシステム運用中の波長分散値の経時変動に追従しながら、常に分散補償量を最適化することが可能になる。また、偏波モード分散(PMD)に起因する信号品質劣化が顕著な場合には、それを補償するために光分波器25と光受信器28−1〜28−nの間にPMD補償器を配置する場合がある。
【0008】
しかしながら、可変型波長分散補償器27−1〜27−nやPMD補償器の適用により光損失が増大し、後段にある光受信器28−1〜28−nの入力ダイナミックレンジに対して光パワーが不足する場合がある。このような場合、光増幅器26−1〜26−nを用いて光信号を増幅することで、光受信器28−1〜28−nへの入力パワーを確保できる。
【0009】
図29は、このような損失補償用の光増幅器を制御するシステムを示している。光増幅器42は、光受信器43の前段に設けられ、入力光を増幅する。光増幅器42の入力側には、光カプラ41とフォトダイオード(PD)44が設けられ、入力光がモニタされる。処理部45は、PD44からのモニタ信号に基づいて光信号入力の有無を判定し、制御部46は、その判定結果に応じて光増幅器42の動作を制御する。
【0010】
処理部45は、図30に示すように、信号入力範囲の下限値付近に、光パワーのシャットダウン閾値Pthを設定し、モニタされた光パワーがPthより高い場合は信号入力有りと判定し、Pthより低い場合は信号入力断と判定する。制御部46は、信号入力有りの場合は光増幅器42を動作させ、信号入力断の場合は動作を停止させる(シャットダウンする)。
【0011】
したがって、時刻t1において光信号がオフになり、光増幅器42の入力光パワー51がPthを下回ると、光増幅器42はシャットダウンされ、光増幅器42の出力光パワー52は0に近づく。
【0012】
下記の特許文献1は、光伝送システムにおけるOSNRのモニタ方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−112427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来の光増幅器制御方法には、次のような問題がある。
【0015】
図31に示すように、nチャネルからなるWDM通信システムを運用中に、光送信器21−2の光ファイバ断または抜去等により、WDM信号の1チャネルのみがオフとなった場合、そのチャネルの光増幅器26−2には、光送信装置と光受信装置の間に配置された光増幅中継器で発生し累積するASEのみが入力される。
【0016】
このASEパワーが光増幅器26−2の信号入力ダイナミックレンジの下限値より大きい場合、図32に示すように、時刻t1において信号がオフになっても、入力光パワー61は、シャットダウン閾値Pthを下回らない。このため、信号とASEの判別ができず、光増幅器26−2はシャットダウンされない。
【0017】
そして、光増幅器26−2が動作状態のままで、時刻t2において信号がオンになり、光増幅器26−2に光信号が入力されると、出力光パワー62が示すように、光サージ63が発生し、後段の光受信器28−2が破壊されてしまう。
【0018】
さらに、WDM通信システムの初期起動時にASEのみが入力されたとき、誤って光増幅器を起動すると、その後で実際に光信号が入力された瞬間に光サージが発生し、やはり光受信器を故障させてしまう。
【0019】
そこで、このような誤判定を防ぐために、図33のような信号入力検出装置を用いる方法が考えられる。信号入力検出装置71は、光カプラ72、高速PD73、バンドパスフィルタ(BPF)74、および強度モニタ75を備える。高速PD73から出力されるモニタ信号は、BPF74を介して強度モニタ75に転送され、強度モニタ75は、信号成分の強度をモニタして、制御部76に出力する。制御部76は、強度モニタ75からのモニタ信号に基づいて光信号入力の有無を判定し、光増幅器42の動作を制御する。
【0020】
このように、光増幅器42の入力端で信号成分の強度をモニタすることで、信号入力かASEのみの入力かを判別することが可能である。しかし、信号入力検出装置71を波長数だけ配置すると、高周波部品を多数用いることになるため、非常に高価なシステムになる。
【0021】
本発明の第1の課題は、できるだけ簡易な方法で、光増幅器等の光デバイスの入力端における信号入力の有無を検出することである。
【0022】
本発明の第2の課題は、信号入力の検出結果に応じて光デバイスの動作を適切に制御することで、光サージのような障害の発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
図1は、本発明の信号入力検出装置の原理図である。図1の信号入力検出装置は、第1のモニタ手段101、第2のモニタ手段102、および判別手段103を備える。
【0024】
第1のモニタ手段101は、入力光の強度をモニタして、入力光強度を示す第1のモニタ信号を出力する。第2のモニタ手段102は、入力光の交流成分の強度をモニタして、交流強度を示す第2のモニタ信号を出力する。判別手段103は、第1のモニタ信号と第2のモニタ信号を用いて、入力光に信号光が含まれているか否かを判別する。
【0025】
入力光には交流(AC)成分と直流(DC)成分が含まれており、入力光強度においてはDC強度が支配的である。このため、入力光強度のみでは、入力光に信号光とASEが含まれている状態と、ASEのみが含まれている状態とを判別することは難しい。しかしながら、入力光強度に加えてAC強度もモニタすることで、これらの2つの入力状態を容易に判別できるようになる。
【0026】
さらに、光デバイスの入力側または出力側の光を信号入力検出装置に入力して、入力光に信号光が含まれているか否かを判別すれば、その判別結果に応じて光デバイスを適切に制御することができる。
【0027】
第1のモニタ手段101は、例えば、後述する強度モニタ205を含み、第2のモニタ手段102は、例えば、DCブロック203および強度モニタ204を含む。判別手段103は、例えば、判別処理部206に対応する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、比較的簡易かつ安価な構成で、光デバイスの入力端における信号入力の有無、すなわち、信号が入力している状態とASEのみが入力している状態との判別を行うことができる。これにより、光デバイスの起動/停止を安全かつ確実に行うことが可能になる。
【0029】
また、光信号のビットレートやフォーマットに依存することなく、信号入力の有無を検出できるため、ビットレートやフォーマットが異なるシステムにも柔軟に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の信号入力検出装置の原理図である。
【図2】第1の信号入力検出装置の構成図である。
【図3】2つの強度モニタの入力端におけるスペクトルおよび時間波形を示す図である。
【図4】トータル強度の入力光パワー依存性を示す図である。
【図5】AC強度の入力光パワー依存性を示す図である。
【図6】第1の光増幅器制御システムの構成図である。
【図7】第1の光増幅器起動制御のフローチャートである。
【図8】第1の光増幅器停止制御のフローチャートである。
【図9】第2の信号入力検出装置の構成図である。
【図10】損失部を設けたときのモニタ強度の入力光パワー依存性を示す図である。
【図11】第2の光増幅器起動制御のフローチャートである。
【図12】第2の光増幅器停止制御のフローチャートである。
【図13】第3の信号入力検出装置の構成図である。
【図14】2つの閾値を示す図である。
【図15】第3の光増幅器起動制御のフローチャートである。
【図16】第3の光増幅器停止制御のフローチャートである。
【図17】第4の信号入力検出装置の構成図である。
【図18】第2の光増幅器制御システムの構成図である。
【図19】第3の光増幅器制御システムの構成図である。
【図20】光フィルタなしのときの入力光のスペクトルを示す図である。
【図21】光フィルタを設けたときの入力光のスペクトルを示す図である。
【図22】光フィルタを設けたときのAC強度の入力光パワー依存性を示す図である。
【図23】第4の光増幅器制御システムの構成図である。
【図24】AC強度のOSNR依存性を示す図である。
【図25】変調方式によるAC強度の違いを示す図である。
【図26】位相変調の場合の波長数によるAC強度の変化を示す図である。
【図27】強度変調の場合の波長数によるAC強度の変化を示す図である。
【図28】従来の光通信システムの構成図である。
【図29】従来の光増幅器制御システムの構成図である。
【図30】従来の光増幅器制御方法を示す図である。
【図31】1チャネルの信号がオフになった状態を示す図である。
【図32】光サージの発生を示す図である。
【図33】信号入力検出の改善策を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0032】
本実施形態では、入力光を光電変換した後、低周波数領域のAC強度をモニタし、光信号が入力する場合とASEのみが入力する場合とでモニタ強度が異なることを利用して、入力状態を判別する。そして、この判別結果を用いて光増幅器の動作を制御する。
【0033】
図2は、このような信号入力検出装置の構成例を示している。この信号入力検出装置は、低速PD201、トランスインピーダンスアンプ(TIA)202、DCブロック203、強度モニタ204、205、および判別処理部206を備える。
【0034】
低速PD201は、入力光を電気信号に変換し、トランスインピーダンスアンプ(TIA)202は、PD出力電流を増幅し、電圧変換する。DCブロック203は、TIA202の出力に含まれるDC成分をブロックして、AC成分のみを強度モニタ204に出力する。強度モニタ204は、入力されたAC成分の信号強度を出力し、強度モニタ205は、TIA202の出力の信号強度を、トータル強度として出力する。判別処理部206は、強度モニタ204からのAC強度と、強度モニタ205からのトータル強度を用いて、入力状態を判別し、判別結果を制御情報として出力する。
【0035】
図3は、それぞれの強度モニタの入力端におけるスペクトルおよび時間波形のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションでは、低速PD201の応答速度は、光信号の速度と比較して十分低い速度とし、DCブロック203は、例えば、キャパシタにより構成されるものとする。
【0036】
図3の例では、AC強度モニタ204の入力端におけるスペクトルおよび時間波形には、DC成分が含まれておらず、トータル強度モニタ205の入力端におけるスペクトルおよび時間波形には、DC成分が含まれていることが分かる。
【0037】
図4は、トータル強度の入力光パワー依存性を示しており、図5は、AC強度の入力光パワー依存性を示している。トータル強度ではDC強度が支配的であるため、ASEのみが入力する場合でも、光信号とASEが入力する場合でも、トータル強度の入力光パワー依存性はほぼ一致する。これに対して、AC強度は、入力状態によって入力光パワー依存性が異なる。
【0038】
図5では、ASEのみが入力する場合と、光信号とASEが入力する場合とでAC強度の入力光パワー依存性が異なり、さらにOSNRによってもAC強度の入力光パワー依存性が異なる。したがって、AC強度とトータル強度をモニタすることで、ASEのみが入力している状態か、光信号が入力している状態かを判別することができる。
【0039】
次に、入力状態の具体的な判別方法、および、その判別結果を用いた光増幅器の制御方法について、具体例を挙げて説明する。
【0040】
図6は、光増幅器制御システムの構成例を示している。このシステムは、光カプラ601、光増幅器602、信号入力検出装置603、および制御部604を備える。信号入力検出装置603は、図2に示した構成を有し、光カプラ601を介して、光増幅器602の入力端における入力状態を判別する。制御部604は、その判別結果を用いて光増幅器602の動作を制御する。
【0041】
この場合、事前にASEのみを信号入力検出装置603に入力して、AC強度とトータル強度の関係を取得し、その関係をデータテーブルとして、信号入力検出装置603の判別処理部206に格納しておく。
【0042】
図7は、光増幅器が停止している状態における光増幅器起動制御のフローチャートである。まず、信号入力検出装置603の強度モニタ204および205は、AC強度およびトータル強度を測定する(ステップ701)。
【0043】
次に、判別処理部206は、データテーブルを用いて、トータル強度の測定値に対応するAC強度を算出し(ステップ702)、得られた計算値をAC強度の測定値と比較する(ステップ703)。AC強度の測定値が計算値以上であれば、信号入力断、すなわち、ASEのみが入力していると判定し(ステップ704)、ステップ701以降の動作を繰り返す。
【0044】
一方、AC強度の測定値が計算値未満であれば、信号が入力していると判定し(ステップ705)、制御部604に信号入力情報を転送する(ステップ706)。そして、制御部604は、信号入力情報に従って、光増幅器602を起動する(ステップ707)。
【0045】
図8は、光増幅器が動作している状態における光増幅器停止制御のフローチャートである。ステップ801〜803の動作は、図7のステップ701〜703の動作と同様である。
【0046】
判別処理部206は、ステップ803においてAC強度の測定値が計算値未満であれば、信号が入力していると判定し(ステップ804)、ステップ801以降の動作を繰り返す。
【0047】
一方、AC強度の測定値が計算値以上であれば、信号入力断、すなわち、ASEのみが入力していると判定し(ステップ805)、制御部604に信号入力断情報を転送する(ステップ806)。そして、制御部604は、信号入力断情報に従って、光増幅器602を停止させる(ステップ807)。
【0048】
図9は、信号入力検出装置の別の構成例を示している。この信号入力検出装置は、図2の信号入力検出装置において、TIA202と強度モニタ205の間に損失部901を設けた構成を有し、AC強度とトータル強度の重み付けを行う。損失部901としては、例えば、減衰器が用いられる。
【0049】
この場合、強度モニタ205の入力信号を損失部901により減衰させることで、トータル強度の測定値を減少させることができ、AC強度とトータル強度の入力光パワー依存性は、図10のようになる。損失部901の損失量は、ASEのみが入力するときのAC強度と、信号とASEが入力するときのAC強度の間に、トータル強度が検出されるように、調整される。
【0050】
これにより、AC強度とトータル強度の大小関係を比較するだけで入力状態を判別することができるため、判別用のデータテーブルが不要となり、判別処理部206の構成が簡易になる。
【0051】
図11は、図6の信号入力検出装置603として、図9の構成を用いた場合の光増幅器起動制御のフローチャートである。まず、強度モニタ204および205は、AC強度およびトータル強度を測定する(ステップ1101)。
【0052】
次に、判別処理部206は、AC強度の測定値とトータル強度の測定値を比較する(ステップ1102)。AC強度がトータル強度以上であれば、信号入力断と判定し(ステップ1103)、ステップ1101以降の動作を繰り返す。
【0053】
一方、AC強度がトータル強度未満であれば、信号が入力していると判定し(ステップ1104)、制御部604に信号入力情報を転送する(ステップ1105)。そして、制御部604は、信号入力情報に従って、光増幅器602を起動する(ステップ1106)。
【0054】
図12は、図9の信号入力検出装置を用いた場合の光増幅器停止制御のフローチャートである。ステップ1201および1202の動作は、図11のステップ1101および1102の動作と同様である。
【0055】
判別処理部206は、ステップ1202においてAC強度がトータル強度以下であれば、信号が入力していると判定し(ステップ1203)、ステップ1201以降の動作を繰り返す。
【0056】
一方、AC強度がトータル強度を超えていれば、信号入力断と判定し(ステップ1204)、制御部604に信号入力断情報を転送する(ステップ1205)。そして、制御部604は、信号入力断情報に従って、光増幅器602を停止させる(ステップ1206)。
【0057】
図9の信号入力検出装置では、損失部901を設けることでモニタ強度の重み付けを行っているが、別の方法として、図13に示すように、AC強度モニタ側とトータル強度モニタ側にそれぞれ利得が異なるTIAを設けてもよい。
【0058】
図13の信号入力検出装置では、低速PD201とDCブロック203の間に、利得G1のTIA1301が配置され、低速PD201と強度モニタ205の間に、利得G2のTIA1302が配置されている。ここで、G1に比べてG2を十分に小さく設定しておけば、図10と同様の特性を実現することができる。
【0059】
図7および図8に示した光増幅器制御方法では、AC強度の測定値と計算値を比較することで入力状態を判別しているが、さらに光パワーの閾値を用いて入力状態を判別することも可能である。この場合、図14に示すように、あらかじめ信号入力範囲の下限値付近およびASE入力範囲の上限値付近に、閾値Pth1およびPth2を設定しておく。
【0060】
そして、トータル強度がPth2より大きい場合は信号入力と判定し、トータル強度がPth1とPth2の間にある場合はさらにAC強度を用いて判定を行い、トータル強度がPth1より小さい場合は信号入力断と判定する。
【0061】
図15は、このような光増幅器起動制御のフローチャートである。まず、強度モニタ205は、トータル強度Pmonを測定する(ステップ1501)。
【0062】
次に、判別処理部206は、PmonをPth1と比較し(ステップ1502)、PmonがPth1以下であれば、信号入力断と判定し(ステップ1503)、ステップ1501以降の動作を繰り返す。
【0063】
一方、PmonがPth1より大きければ、次に、PmonをPth2と比較する(ステップ1504)。そして、PmonがPth2より小さければ、図7のステップ701〜704と同様の動作を行う(ステップ1505〜1508)。
【0064】
ステップ1507においてAC強度の測定値が計算値未満であれば、信号が入力していると判定し(ステップ1509)、図7のステップ706および707と同様の動作を行う(ステップ1510および1511)。
【0065】
また、ステップ1504においてPmonがPth2以上であれば、信号が入力していると判定し(ステップ1509)、ステップ1510および1511の動作を行う。
【0066】
図16は、光増幅器停止制御のフローチャートである。まず、強度モニタ205は、トータル強度Pmonを測定する(ステップ1601)。
【0067】
次に、判別処理部206は、PmonをPth2と比較し(ステップ1602)、PmonがPth2以上であれば、信号が入力していると判定し(ステップ1603)、ステップ1601以降の動作を繰り返す。
【0068】
一方、PmonがPth2より小さければ、次に、PmonをPth1と比較する(ステップ1604)。そして、PmonがPth1より大きければ、図8のステップ801〜804と同様の動作を行う(ステップ1605〜1608)。
【0069】
ステップ1607においてAC強度の測定値が計算値以上であれば、信号入力断と判定し(ステップ1609)、図8のステップ806および807と同様の動作を行う(ステップ1610および1611)。
【0070】
また、ステップ1604においてPmonがPth1以下であれば、信号入力断と判定し(ステップ1609)、ステップ1610および1611の動作を行う。
【0071】
以上の実施形態では、トータル強度とAC強度により入力状態を判別しているが、トータル強度で支配的となるのはDC強度であるため、トータル強度の代わりにDC強度をモニタしてもかまわない。
【0072】
図17は、このような信号入力検出装置の構成例を示している。この信号入力検出装置では、TIA202と強度モニタ205の間にACブロック1701が設けられ、ACブロック1701は、TIA202の出力からDC成分を抽出して、強度モニタ205に出力する。ACブロック1701は、例えば、コイルを含むローパスフィルタにより構成される。
【0073】
なお、上述した信号入力検出装置の各構成例においては、所望の強度をモニタできる機能が備わっていれば、構成部品の順序や数量等を変更してもかまわない。また、信号入力検出装置は、光増幅器の外部ではなく、光増幅器の内部に配置してもよい。
【0074】
図18は、1台の信号入力検出装置を用いて複数の光増幅器を制御するシステムの構成例を示している。このシステムは、光分波器1801、光カプラ1802−1〜1802−n、光増幅器1803−1〜1803−n、光受信器1804−1〜1804−n、光スイッチ1805、信号入力検出装置1806、および制御部1807を備える。
【0075】
光分波器1801は、WDM信号をnチャネルの光信号に分離し、光スイッチ1805は、光カプラ1802−1〜1802−nを介して入力されるnチャネルの光信号のいずれかを選択して、信号入力検出装置1806に出力する。制御部1807は、それぞれのチャネルの判別結果を用いて、光増幅器1803−1〜1803−nの動作を制御する。
【0076】
図19は、光フィルタを用いて信号入力検出装置に入力される光の帯域幅を制限するシステムの構成例を示している。このシステムは、図6の光増幅器制御システムにおいて、光カプラ601と信号入力検出装置603の間に、可変型または固定型の光フィルタ1901を設けた構成を有する。
【0077】
光フィルタ1901がなければ、信号入力検出装置603の入力光には、図20に示すように、信号2001と広い波長領域に渡るASE2002が含まれる。これに対して、光フィルタ1901を設けた場合は、図21に示すように、信号2101と帯域幅に相当するASE2102のみが入力光に含まれる。したがって、図22に示すように、光フィルタ1901を設けることで、ASEのみが入力する場合と、信号とASEが入力する場合のAC強度の差が大きくなり、入力状態の判別が容易になる。
【0078】
図23は、光フィルタを用いた光増幅器制御システムの別の構成例を示している。このシステムは、図6の光増幅器制御システムにおいて、光カプラ601の入力側に、可変型または固定型の光フィルタ2301を設けた構成を有する。この場合も、図19の構成と同様に、入力状態の判別が容易になるという効果が得られる。
【0079】
上述した信号入力検出装置を用いて、AC強度の測定値からOSNRを算出することも可能である。この場合、事前に、入力光パワーを変化させながら、それぞれの値について、AC強度のOSNR依存性を示す曲線のデータを取得し、データテーブルとして判別処理部206に格納しておく。
【0080】
そして、システム運用時に、判別処理部206は、図24に示すように、トータル強度(入力光パワー)の測定値に応じて曲線2401を選択し、その曲線2401のデータを用いて、AC強度の測定値に対応するOSNRを算出する。
【0081】
ところで、信号入力検出装置により測定されるAC強度は、光信号の変調方式によって異なってくる。強度変調方式の信号が入力する場合のAC強度は、ASEのみが入力する場合のAC強度より大きく、位相変調方式の信号が入力する場合のAC強度は、ASEのみが入力する場合のAC強度より小さい。したがって、AC強度の測定値をASEのみの場合のAC強度と比較することで、どちらの変調方式の信号が入力しているかを判別することができる。
【0082】
図25は、このような2種類の変調方式によるAC強度の入力光パワー依存性の違いを示している。NRZ(Non-Return to Zero)変調(強度変調)を用いた場合のAC強度は、ASEのみの場合のAC強度より大きく、RZ−DQPSK(Return to Zero-Differential QuadraturePhase Shift Keying )変調(位相変調)を用いた場合のAC強度は、ASEのみの場合のAC強度より小さくなっている。
【0083】
位相変調を用いた場合は、図7、図8、図11、図12、図15、および図16に示した制御方法により、入力状態を判別することが可能である。これに対して、強度変調を用いた場合は、ステップ703、803、1102、1202、1507、および1607において不等号の向きを逆にして判定を行う必要がある。さらに、図11および図12の制御方法を用いる場合、図10とは異なり、ASEのみが入力するときのAC強度の上側にトータル強度が検出されるように、損失部901の損失量、または、TIA1301、TIA1302の利得を調整する必要がある。
【0084】
図18に示した光増幅器制御システムでは、1波長の光信号を選択して信号入力検出装置に入力しているが、WDM信号のような多波長の光信号をそのまま入力することも可能である。
【0085】
図26は、位相変調を用いた場合の波長数によるAC強度の変化を示している。この場合、1波長の信号が入力しているときより、m+1波長の信号(mは自然数)が入力しているときの方が、AC強度は小さくなる。すなわち、波長数が多くなるほどAC強度が小さくなるため、ASEのみの場合のAC強度と区別し易くなる。
【0086】
図27は、強度変調を用いた場合の波長数によるAC強度の変化を示している。この場合、1波長の信号が入力しているときより、m+1波長の信号が入力しているときの方が、AC強度は大きくなる。すなわち、波長数が多くなるほどAC強度が大きくなるため、ASEのみの場合のAC強度と区別し易くなる。
【0087】
以上説明した実施形態では、信号入力検出装置を光増幅器の入力端に設けているが、これに限らず、信号入力検出装置を他の光デバイスの入力端または出力端に設けてもよい。例えば、光受信器の前段や光スイッチの入出力端に信号入力検出装置を配置して、これらの光デバイスの入出力信号の状態を判別することで、光受信器や光スイッチを適切に制御することが可能になる。
【0088】
(付記1)入力光の強度をモニタして、入力光強度を示す第1のモニタ信号を出力する第1のモニタ手段と、
前記入力光の交流成分の強度をモニタして、交流強度を示す第2のモニタ信号を出力する第2のモニタ手段と、
前記第1のモニタ信号と前記第2のモニタ信号を用いて、前記入力光に信号光が含まれているか否かを判別する判別手段と
を備えることを特徴とする信号入力検出装置。
(付記2)前記判別手段は、前記第1のモニタ信号を用いて、前記入力光に信号光が含まれていないときの交流強度を求め、得られた交流強度と、前記第2のモニタ信号が示す交流強度を比較して、該入力光に信号光が含まれているか否かを判別することを特徴とする付記1記載の信号入力検出装置。
(付記3)前記判別手段は、前記信号光が位相変調された信号の場合、前記第1のモニタ信号を用いて得られた交流強度が、前記第2のモニタ信号が示す交流強度より大きければ、前記入力光に信号光が含まれていると判定し、該第1のモニタ信号を用いて得られた交流強度が、該第2のモニタ信号が示す交流強度以下であれば、該入力光に信号光が含まれていないと判定することを特徴とする付記2記載の信号入力検出装置。
(付記4)前記判別手段は、前記信号光が強度変調された信号の場合、前記第1のモニタ信号を用いて得られた交流強度が、前記第2のモニタ信号が示す交流強度より小さければ、前記入力光に信号光が含まれていると判定し、該第1のモニタ信号を用いて得られた交流強度が、該第2のモニタ信号が示す交流強度以上であれば、該入力光に信号光が含まれていないと判定することを特徴とする付記2記載の信号入力検出装置。
(付記5)前記判別手段は、前記第1のモニタ信号が示す入力光強度を、第1の閾値および該第1の閾値より大きな第2の閾値と比較し、該入力光強度が該第1の閾値より小さければ、前記入力光に信号光が含まれていないと判定し、該入力光強度が該第2の閾値より大きければ、該入力光に信号光が含まれていると判定することを特徴とする付記1記載の信号入力検出装置。
(付記6)前記判別手段は、前記入力光強度が前記第1の閾値より大きく、かつ、前記第2の閾値より小さければ、前記第1のモニタ信号を用いて、前記入力光に信号光が含まれていないときの交流強度を求め、得られた交流強度と、前記第2のモニタ信号が示す交流強度を比較して、該入力光に信号光が含まれているか否かを判別することを特徴とする付記5記載の信号入力検出装置。
(付記7)前記入力光から得られる電気信号を減衰させる減衰手段をさらに備え、前記第1のモニタ手段は、減衰した電気信号の強度をモニタすることを特徴とする付記1記載の信号入力検出装置。
(付記8)前記入力光を第1の電圧信号に変換する第1の変換手段と、該入力光を第2の電圧信号に変換する第2の変換手段をさらに備え、前記第1のモニタ手段は、該第1の電圧信号の強度をモニタし、前記第2のモニタ手段は、該第2の電圧信号の交流成分の強度をモニタすることを特徴とする付記1記載の信号入力検出装置。
(付記9)前記判別手段は、前記第1のモニタ信号が示す入力光強度と、前記第2のモニタ信号が示す交流強度を比較して、該入力光に信号光が含まれているか否かを判別することを特徴とする付記7または8記載の信号入力検出装置。
(付記10)前記第1のモニタ手段は、前記入力光のトータル強度または直流成分の強度をモニタすることを特徴とする付記1乃至9のいずれかに記載の信号入力検出装置。
(付記11)前記入力光の帯域幅を制限する光フィルタ手段をさらに備え、前記第1のモニタ手段は、該光フィルタ手段を通過した光の強度をモニタし、前記第2のモニタ手段は、該光フィルタ手段を通過した光の交流成分の強度をモニタすることを特徴とする付記1乃至8のいずれかに記載の信号入力検出装置。
(付記12)光デバイスと、
前記光デバイスの入力側または出力側の光が入力されたとき、入力光の強度をモニタして、第1のモニタ信号を出力する第1のモニタ手段と、
前記入力光の交流成分の強度をモニタして、第2のモニタ信号を出力する第2のモニタ手段と、
前記第1のモニタ信号と前記第2のモニタ信号を用いて、前記入力光に信号光が含まれているか否かを判別し、判別結果を出力する判別手段と、
前記判別結果に応じて前記光デバイスを制御する制御手段と
を備えることを特徴とする光デバイス制御装置。
(付記13)前記制御手段は、前記光デバイスの動作中に、前記入力光に信号光が含まれていないと判定されたとき、該光デバイスの動作を停止させることを特徴とする付記12記載の光デバイス制御装置。
(付記14)前記制御手段は、前記光デバイスの停止中に、前記入力光に信号光が含まれていると判定されたとき、該光デバイスを起動することを特徴とする付記12または13記載の光デバイス制御装置。
(付記15)入力光の強度をモニタして、入力光強度を示す第1のモニタ信号を取得し、
前記入力光の交流成分の強度をモニタして、交流強度を示す第2のモニタ信号を取得し、
前記第1のモニタ信号と前記第2のモニタ信号を用いて、前記入力光に信号光が含まれているか否かを判別する
ことを特徴とする信号入力検出方法。
(付記16)光デバイスの入力側または出力側の光が入力されたとき、入力光の強度をモニタして、第1のモニタ信号を取得し、
前記入力光の交流成分の強度をモニタして、第2のモニタ信号を取得し、
前記第1のモニタ信号と前記第2のモニタ信号を用いて、前記入力光に信号光が含まれているか否かを判別し、
判別結果に応じて前記光デバイスを制御する
ことを特徴とする光デバイス制御方法。
【符号の説明】
【0089】
11 光送信装置
12、14、16 伝送路ファイバ
13、15 光増幅中継器
17 光受信装置
21−1、21−2、21−n、43 光送信器
22 光合波器
23、24、42、602 光増幅器
25、1801 光分波器
26−1、26−2、26−n、1803−1、1803−n 光増幅器
27−1、27−2、27−n 可変型波長分散補償器
28−1、28−2、28−n、1804−1、1804−n 光受信器
31、33 WDM信号
32、34、36、2002、2102 ASE
35、2001、2101 光信号
41、72、601、1802−1、1802−n 光カプラ
44 フォトダイオード
45 処理部
46、76、604、1807 制御部
51、61 入力光パワー
52、62 出力光パワー
63 光サージ
71、603、1806 信号入力検出装置
73 高速フォトダイオード
74 バンドパスフィルタ
75、204、205 強度モニタ
101 第1のモニタ手段
102 第2のモニタ手段
103 判別手段
201 低速フォトダイオード
202、1301、1302 トランスインピーダンスアンプ
203 DCブロック
206 判別処理部
901 損失部
1701 ACブロック
1805 光スイッチ
1901、2301 光フィルタ
2301 光フィルタ
2401 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光から得られる電気信号を減衰させる減衰手段と、
減衰した電気信号の強度をモニタして、入力光強度を示す第1のモニタ信号を出力する第1のモニタ手段と、
前記入力光の交流成分の強度をモニタして、交流強度を示す第2のモニタ信号を出力する第2のモニタ手段と、
前記第1のモニタ信号が示す入力光強度と、前記第2のモニタ信号が示す交流強度を比較し、該入力光強度が該交流強度より大きければ、前記入力光に信号光が含まれていると判別し、該入力光強度が該交流強度より小さければ、該入力光に信号光が含まれていないと判別する判別手段と
を備えることを特徴とする信号入力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−110042(P2012−110042A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34406(P2012−34406)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2007−87848(P2007−87848)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】