説明

光信号再生方法及び装置、NRZ/RZ変換装置並びにクロック再生装置

【課題】
簡易な構成でNRZ信号光を光再生する。
【解決手段】
光フィルタ12は、所定ビットレート(B)の入力NRZ信号光(10)から一方のサイドバンド成分を除去する。電気吸収型光変調器14は、光フィルタ12の出力信号光をRZ信号光に変換し、パワースプリッタ20から電気クロックを出力する。光パルス発生装置24は、電気クロックに従って光クロックパルスを発生する。半導体光増幅器30は、電気吸収型光変調器(14)から出力されるRZ信号光に従い当該光クロックパルスをゲートすることにより、再生RZ信号光を出力する。光バンドパスフィルタ32は、再生RZ信号光を抽出する。複屈折媒体34及び偏光子36が、再生RZ信号光をNRZ信号光に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号再生方法及び装置、NRZ/RZ変換装置並びにクロック再生装置に関し、より具体的には、NRZ信号光を再生する方法及び装置、NRZ/RZ変換装置並びにクロック再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NRZ信号光を3R再生する装置が、特許文献1に記載されている。従来の3R再生装置では、信号波長λsのNRZ信号光からクロックを再生し、そのクロックに同期して2つの近接する波長λp1,λp2のDFBレーザをパルスレーザ発振させる。NRZ信号光とDFBレーザの出力レーザ光を互いに逆方向に半導体光増幅器(SOA)に入射して、信号光の波長を、λsから発振波長λp1,λp2に変換する。SOAから出力される波長λp1の信号光と波長λp2の信号光の一方を遅延させ、最終的に波長λp1,λp2の信号光を単一の出力波長λoutに変換する。これにより、3R再生されたNRZ信号光を得る。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、入力NRZ信号光のビットレートに相当する周波数の光クロックを発生する光クロック発生装置を設け、その光クロックで入力NRZ信号光をサンプリングする第1のサンプリング装置と、半周期遅れた光クロックで入力NRZ信号光をサンプリングする第2のサンプリング装置を設ける。第1及び第2のサンプリング装置の出力光の内で、電力の大きな方を選択し、波形整形した上で、RZ/NRZ変換装置により、NRZ形式に変換する。
【0004】
また、RZ信号光をNRZ信号光に変換する技術が、特許文献2,3に記載されている。
【特許文献1】特開2004−56831号公報
【特許文献2】米国特許第6448913号公報
【特許文献3】米国特許第6646784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の構成では、2段の波長変換、または、2つの光サンプリング装置を必要とし、何れも構成が複雑である。
【0006】
また、従来のNRZ/RZ変換装置は、入力NRZ信号光からクロックを再生する手段を別途、設ける必要があり、構成が複雑である。
【0007】
本発明は、より簡易な構成でNRZ信号光の光再生を実現する光信号再生方法及び装置を提示することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、NRZ信号光をRZ信号光に変換するより簡易な構成のNRZ/RZ変換装置、及び、入力NRZ信号光からクロックを再生するクロック再生装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る信号光再生方法では、所定ビットレートの入力NRZ信号光から一方のサイドバンド成分を除去してNRZ−VSB信号光を生成する。電極間にRFアンプ、当該所定ビットレートに相当する周波数成分を抽出する電気バンドパスフィルタ及びパワースプリッタを接続した電気吸収型光変調器に当該NRZ−VSB信号光を入射する。当該パワースプリッタからの電気クロックに従い光クロックパルスを生成する。当該電気吸収型光変調器の出力信号光に従い当該光クロックパルスをゲートすることにより、再生RZ信号光を生成する。そして、当該再生RZ信号光をNRZ信号光に変換する。
【0010】
本発明に係る信号光再生装置は、所定ビットレート(B)の入力NRZ信号光から一方のサイドバンド成分を除去する光フィルタと、当該光フィルタの出力信号光をRZ信号光に変換し、クロック信号を再生するNRZ/RZ変換装置であって、電極間にRFアンプ、当該所定ビットレートに相当する周波数成分を抽出する電気バンドパスフィルタ及びパワースプリッタを接続した電気吸収型光変調器を具備し、当該パワースプリッタから電気クロック信号を出力するNRZ/RZ変換装置と、当該パワースプリッタからの電気クロックに従って光クロックパルスを発生する光パルス発生装置と、当該電気吸収型光変調器の出力信号光に従い、当該光パルス発生装置から出力される当該光クロックパルスをゲートすることにより、再生RZ信号光を出力する光ゲート装置と、当該再生RZ信号光をNRZ信号光に変換するRZ/NRZ変換装置とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るNRZ/RZ変換装置は、所定ビットレートの入力NRZ信号光から一方のサイドバンド成分を除去する光フィルタと、当該光フィルタの出力信号光が入射する当該電気吸収型光変調器であって、電極間にRFアンプ、及び当該所定ビットレートに相当する周波数成分を抽出する電気バンドパスフィルタをシリアルに接続した電気吸収型光変調器とを具備し、当該電気吸収型光変調器(14)からRZ信号光を出力することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るクロック再生装置は、所定ビットレートの入力NRZ信号光から一方のサイドバンド成分を除去する光フィルタと、当該光フィルタ(12)の出力信号光が入射する当該電気吸収型光変調器であって、電極間にRFアンプ、当該所定ビットレートに相当する周波数成分を抽出する電気バンドパスフィルタ及びパワースプリッタを接続した電気吸収型光変調器とを具備し、当該パワースプリッタから電気クロック信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で、NRZ信号光を光再生できる。NRZ信号光をRZ信号光に変換できる。簡易な構成で、高速の光信号から電気クロックを再生できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。波長λsのNRZ光信号10が、NRZのサイドバンドを除去する光バンドパスフィルタ12に入力する。図2は、光バンドパスフィルタ12に入力するNRZ信号光10の光スペクトルを実線で示し、光バンドパスフィルタ12の透過特性を破線で示す。また、図3は、光バンドパスフィルタ12の出力信号光の光スペクトルを実線で示し、光バンドパスフィルタ12の透過特性を破線で示す。図2及び図3で、横軸は波長を示し、縦軸は、信号光の光強度及び光バンドパスフィルタ12の透過率を示す。
【0016】
図2に示すように、光バンドパスフィルタ12は、入力NRZ信号光から中心波長λsの成分と、長波長側のサイドバンドを透過する。即ち、光バンドパスフィルタ12は、両側波帯(BSB)のNRZ信号光を残留側波帯(VSB)のNRZ信号光、即ちNRZ−VSB信号光に変換する。
【0017】
図4は、NRZ信号光10のRFスペクトルを示し、図5は、NRZ−VSB信号光のRFスペクトルを示す。図4及び図5で、横軸は周波数を示し、縦軸は光強度(任意目盛り)を示す。VSB化により、ビットレートBに相当する周波数1/B,2/B,・・・にクロックトーン成分が出現する。
【0018】
光バンドパスフィルタ12から出力されるNRZ−VSB信号光は、進行波型の電気吸収型光変調器14に入射する。電気吸収型光変調器14の電極14a,14b間には、RFアンプ16、周波数1/Bを透過する電気バンドパスフィルタ18及びパワースプリッタ20がシリアルに接続されている。電気吸収型光変調器14の電極14aには、光バンドパスフィルタ12からのNRZ−VSB信号光により周波数1/Bの電気信号が誘起され、これが、RFアンプ16、電気バンドパスフィルタ18及びパワースプリッタ20を介して電極14bに入力する。結局、電気吸収型光変調器14、RFアンプ16、周波数1/Bを透過する電気バンドパスフィルタ18及びパワースプリッタ20が、周波数1/Bのリング共振器22を構成することになり、パワースプリッタ20から、電気吸収型光変調器14に入力するNRZ−VSB信号光に同期した電気クロックを取り出すことができる。
【0019】
また、リング共振器22による周波数1/Bの電気クロックが電極14a,14b間に印加されることにより、電気吸収型光変調器14は、入力するNRZ−VSB信号光を、周波数1/Bの電気クロックでゲート又はサンプリングする。この結果、電気吸収型光変調器14は、NRZ−VSB信号光をRZ形式に変換して出力する。
【0020】
即ち、本実施例では、リング共振器22を接続した電気吸収型光変調器14は、クロック抽出と、NRZ/RZ変換の両機能を同時に果たすNRZ/RZ変換装置ということができる。
【0021】
パワースプリッタ20から取り出された周波数1/Bの電気クロックは光パルス発生装置24に印加される。光パルス発生装置24は、パワースプリッタ20からの電気クロックに同期して、周波数1/Bの直線偏波で波長λpの光クロックパルスを発生する。なお、複屈折媒体34におけるRZ/NRZ変換のために、光パルス発生装置24の発生する光クロックパルスのディーティ比は、原理的には50%以上である。波長λpは、波長λsとは異なる。偏波制御装置26は、後述するRZ/NRZ変換のために、光パルス発生装置24から出力される光クロックパルスを所定偏波方向に制御する。
【0022】
光合波器28は、電気吸収型光変調器14から出力されるRZ信号光と、偏波制御装置26から出力される光クロックパルスとを合波し、合波光を半導体光増幅器30に供給する。半導体光増幅器30は、RZ信号光に従い、光クロックパルスをゲートする。即ち、半導体光増幅器30は、RZ信号光の光パルス期間では、光クロックパルスを増幅及び透過し、RZ信号光の無光パルス期間では、光クロックパルスを遮断する。これにより、RZ信号光は、光再生又は光増幅され、リタイミングされ、波形整形される。同時に、光キャリア波長がλsからλpに変換される。中心波長λpの光バンドパスフィルタ32は、半導体光増幅器30の出力光から波長λpの成分を抽出する。勿論、半導体光増幅器30から出力される波長λpの光クロックパルス、即ち再生RZ信号光が、RZ信号光とは別方向に伝搬する場合、光バンドパスフィルタ32を省略できる。
【0023】
光バンドパスフィルタ32で抽出された再生RZ信号光は、複屈折媒体34に、その主軸に対して45度傾いた偏波方向で入射する。このような偏波方向になるように、偏波制御粗給費26は、光パルス発生装置24の出力する光クロックパルスの偏波方向を制御する。
【0024】
複屈折媒体34は、例えば、ルチル結晶からなる。複屈折媒体34は、光場度パスフィルタ32の出力信号光を、複屈折媒体34の主軸に平行な偏波成分と主軸に垂直な偏波成分に分離し、これらの偏波成分を所定の時間差Δtで出力する。偏光子36は、複屈折媒体34の入射光の偏波方向と同じ偏波方向に設置されており、複屈折媒体34から出力される2つの偏波成分の、偏光子36の偏光方向への写像成分を合成する。これにより、複屈折媒体34で時間差Δtを与えられた2つ偏波成分を、単一の偏波方向で合成できる。
【0025】
複屈折媒体34及び偏光子36により、RZ信号光の光パルス幅をΔtだけ引き伸ばすことができる。即ち、Δtを適切に設定することで、RZ信号光をNRZ信号光に変換できる。複屈折媒体34の作用から明らかなように、Δtは、例えば、非光クロックパルスの非パルス期間に相当する期間、又はこれより少し長い期間であればよい。例えば、NRZ信号光10のビットレートが40Gbpsの場合、その1ビット期間は25psである。光クロックパルスのデューティ比が50%のとき、光パルス期間は12.5psでるので、Δtは理想的には12.5ps又はこれより少し長ければ良い。実際には、光パルスの立ち上がり時間と立ち下がり時間を考慮する必要がある。
【0026】
偏光子36で合成された偏波方向成分が、再生NRZ信号光38として、外部に出力される。
【0027】
複屈折媒体34と偏光子36の組み合わせの代わりに、光バンドパスフィルタ32から出力される再生RZ信号光を2つの互いに直交する偏波成分に分離する偏波偏光分離装置と、偏光分離装置で分離された偏波成分間に所定の時間差Δtを与える光遅延器と、時間差Δtの2つの偏波成分を同一偏波方向に合成する偏波合成装置とからなる構成に変更できることは明らかである。
【0028】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。
【図2】NRZ信号光10の光スペクトルである。
【図3】光バンドパスフィルタ12から出力されるNRZ−VSB信号光の光スペクトルである。
【図4】NRZ信号光10のRFスペクトルである。
【図5】光バンドパスフィルタ12から出力されるNRZ−VSB信号光のRFスペクトルである。
【符号の説明】
【0030】
10:NRZ光信号
12:光バンドパスフィルタ
14:電気吸収型光変調器
14a,14b:電極
16:RFアンプ
18:電気バンドパスフィルタ
20:パワースプリッタ
22:リング共振器
24:光パルス発生装置
26:偏波制御装置
28:光合波器
30:半導体光増幅器
32:光バンドパスフィルタ
34:複屈折媒体
36:偏光子
38:再生NRZ信号光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ビットレート(B)の入力NRZ信号光(10)から一方のサイドバンド成分を除去してNRZ−VSB信号光を生成し、
電極(14a,14b)間にRFアンプ(16)、当該所定ビットレート(B)に相当する周波数成分を抽出する電気バンドパスフィルタ(18)及びパワースプリッタ(20)を接続した電気吸収型光変調器(14)に当該NRZ−VSB信号光を入射し、
当該パワースプリッタからの電気クロックに従い光クロックパルスを生成し、
当該電気吸収型光変調器(14)の出力信号光に従い当該光クロックパルスをゲートすることにより、再生RZ信号光を生成し、
当該再生RZ信号光をNRZ信号光に変換する
ことを特徴とする光信号再生方法。
【請求項2】
所定ビットレート(B)の入力NRZ信号光(10)から一方のサイドバンド成分を除去する光フィルタ(12)と、
当該光フィルタ(12)の出力信号光をRZ信号光に変換し、クロック信号を再生するNRZ/RZ変換装置であって、電極(14a,14b)間にRFアンプ(16)、当該所定ビットレート(B)に相当する周波数成分を抽出する電気バンドパスフィルタ(18)及びパワースプリッタ(20)をシリアルに接続した電気吸収型光変調器(14)を具備し、当該パワースプリッタ(20)から電気クロック信号を出力するNRZ/RZ変換装置と、
当該パワースプリッタ(20)からの電気クロックに従って光クロックパルスを発生する光パルス発生装置(24)と、
当該電気吸収型光変調器(14)の出力信号光に従い、当該光パルス発生装置(24)から出力される当該光クロックパルスをゲートすることにより、再生RZ信号光を出力する光ゲート装置(30,32)と、
当該再生RZ信号光をNRZ信号光に変換するRZ/NRZ変換装置
とを具備することを特徴とする光信号再生装置。
【請求項3】
当該RZ/NRZ変換装置が、当該再生RZ信号光の、互いに直交する2つの偏波成分間に所定の時間差を与える複屈折媒体(14)を具備することを特徴とする請求項2に記載の光信号再生装置。
【請求項4】
所定ビットレート(B)の入力NRZ信号光(10)から一方のサイドバンド成分を除去する光フィルタ(12)と、
当該光フィルタ(12)の出力信号光が入射する当該電気吸収型光変調器(14)であって、電極(14a,14b)間にRFアンプ(16)、及び当該所定ビットレート(B)に相当する周波数成分を抽出する電気バンドパスフィルタ(18)をシリアルに接続した電気吸収型光変調器(14)
とを具備し、当該電気吸収型光変調器(14)からRZ信号光を出力することを特徴とするNRZ/RZ変換装置。
【請求項5】
更に、当該電極(14a,14b)間に、更にパワースプリッタを接続してあり、当該パワースプリッタ(20)から電気クロック信号を出力することを特徴とする請求項4に記載のNRZ/RZ変換装置。
【請求項6】
所定ビットレート(B)の入力NRZ信号光(10)から一方のサイドバンド成分を除去する光フィルタ(12)と、
当該光フィルタ(12)の出力信号光が入射する当該電気吸収型光変調器(14)であって、電極(14a,14b)間にRFアンプ(16)、当該所定ビットレート(B)に相当する周波数成分を抽出する電気バンドパスフィルタ(18)及びパワースプリッタ(20)を接続した電気吸収型光変調器(14)
とを具備し、当該パワースプリッタ(20)から電気クロック信号を出力することを特徴とするクロック再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−218645(P2009−218645A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57174(P2008−57174)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】