説明

光偏向器

【課題】 反射面を有するミラー部と、これを駆動する圧電アクチュエータとを備え、二次元方向に駆動可能で小型化できる光偏向器を提供する。
【解決手段】 光偏向器1は、ミラー部2と、駆動電圧の印加により屈曲変形する第1圧電体61a〜61d及び第2圧電体62a〜62dを支持する圧電カンチレバー31a〜31dを有する一対の圧電アクチュエータ3a,3bとを備える。一対の圧電アクチュエータ3a,3bは、ミラー部2を挟んで対向するように配置される。第1圧電体61a〜61dに電圧が印加されると、ミラー部2を複数の圧電カンチレバー31a〜31dの並び方向に平行な第1軸xの周りに駆動し、第2圧電体62a〜62dに電圧が印加されると、ミラー部2を第1軸xと直交する第2軸yの周りに駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射面を有するミラー部と、ミラー部を駆動する圧電アクチュエータとを備えた光偏向器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミラー部と、ミラー部と連結された振動子とを備えた光学反射素子が知られている(特許文献1)。この光学反射素子は、ミラー部を介して対向すると共にミラー部の端部にそれぞれ連結された一対の第一振動子と、これらの第一振動子と連結され、これらの第一振動子及びミラー部の外周を囲む枠体と、この枠体を介して対向すると共に枠体とそれぞれ連結された一対の第二振動子を備えている。第一振動子の中心軸と第二振動子の中心軸とはミラー部の重心で直交する。第一振動子は、中心軸に垂直な軸に平行な複数の振動板が同一平面状で折り返し連結されたミアンダ形状であり、第二振動子は、中心軸に垂直な軸に平行な複数の振動板が同一平面状で折り返し連結されたミアンダ形状である。
【0003】
これらの第一振動子及び第二振動子の複数の振動板にはドライブ素子が配置される。ドライブ素子は交流電圧が印加されると振動し、第一振動子及び第二振動子も振動する。このとき、第一振動子及び第二振動子は、自身の中心軸を中心に大きく反復回転振動する。第一振動子の中心軸と第二振動子の中心軸は直交しているので、第一振動子と第二振動子とによってミラー部を二次元方向に振動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−122480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光学反射素子では、第一振動子と第二振動子とのミアンダ形状の振動子(圧電アクチュエータ)が二対形成されている。このため、必要とされる大きさの反射領域が得られるようにミラー部を形成した場合、これに二対の振動子の大きさが加えられるので光学反射素子は全体として大きくなる。その結果、装置の大型化や製造コストの増大をもたらす。
【0006】
そこで、本発明は、反射面を有するミラー部と、ミラー部を駆動する圧電アクチュエータとを備える光偏向器であって、二次元方向に駆動可能で小型化できる光偏向器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、反射面を有するミラー部と、該ミラー部を駆動する圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータに電圧を印加するための複数の電極とを備える光偏向器であって、前記圧電アクチュエータは、前記ミラー部を挟んで対向するように一対配置され、各圧電アクチュエータの一端が前記ミラー部に連結され、前記各圧電アクチュエータは、駆動電圧が印加されることにより屈曲変形する圧電体と、前記圧電体を支持し、該圧電体が屈曲変形するときに共に屈曲変形する複数の圧電カンチレバーとを備え、前記複数の圧電カンチレバーは、各圧電カンチレバーの両端部が隣り合うように並んで配置されて、各々の屈曲変形を累積するようにそれぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように端部が機械的に連結され、各圧電カンチレバーは、各圧電カンチレバーの並び方向に直交する方向に屈曲変形するように形成され、前記圧電体は、前記各圧電カンチレバーで支持される第1圧電体と第2圧電体とからなり、前記複数の電極は、前記第1圧電体と前記第2圧電体とにそれぞれ独立に電圧を印加できるように構成され、前記第1圧電体に電圧が印加されることにより、前記ミラー部を前記複数の圧電カンチレバーの並び方向に平行な第1軸の周りに駆動し、前記第2圧電体に電圧が印加されることにより、前記ミラー部を前記第1軸と直交する第2軸の周りに駆動することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1圧電体に電圧が印加されることで、第1圧電体を支持する圧電カンチレバーが屈曲変形し、ミラー部が複数の圧電カンチレバーの並び方向に平行な第1軸の周りに駆動する。また、第2圧電体に電圧が印加されることで、第2圧電体を支持する圧電カンチレバーが屈曲変形し、ミラー部が第1軸に直交する第2軸の周りに駆動される。複数の電極は、第1圧電体と第2圧電体とにそれぞれ独立に電圧が印加できるため、ミラー部を第1軸及び第2軸の周りにそれぞれ独立して駆動することができる。
【0009】
以上のように、本発明の光偏向器では、隣り合う圧電カンチレバーの端部が折り返すように機械的に連結された(ミアンダ形状の)圧電アクチュエータを一対だけ形成した場合であっても、二次元方向に駆動が可能となる。従って、本発明の光偏向器は、第一振動子と第二振動子のミアンダ形状の振動子を二対形成している光偏向器と比べると、ミラー部の大きさが同じ場合には、光偏向器の大きさを小さくすることができる。
【0010】
本発明において、前記複数の電極は、前記複数の圧電カンチレバーのうち前記ミラー部側からその反対側に向かって奇数番目の圧電カンチレバーに支持された第1圧電体に電圧を印加できる第1電極と、前記複数の圧電カンチレバーのうち前記ミラー部側からその反対側に向かって偶数番目の圧電カンチレバーに支持された第1圧電体に電圧を印加できる第2電極と、前記各圧電アクチュエータの一方の各圧電カンチレバーに支持された第2圧電体に電圧を印加できる第3電極と、前記各圧電アクチュエータの他方の各圧電カンチレバーに支持された第2圧電体に電圧を印加できる第4電極とで構成され、隣り合う圧電カンチレバー同士が互いに逆方向に屈曲変形するように前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加することにより、前記ミラー部を前記複数の圧電カンチレバーの並び方向に平行な第1軸の周りに駆動し、前記一対の圧電アクチュエータのうち一方が有する複数の圧電カンチレバーがそれぞれ同一方向に屈曲変形し、他方が有する複数の圧電カンチレバーがそれぞれ前記同一方向とは逆方向に屈曲変形するように前記第3電極及び前記第4電極に電圧を印加することにより、前記ミラー部を前記第1軸と直交する第2軸の周りに駆動することが好ましい。
【0011】
これにより、第1電極に電圧が印加されることで、各圧電カンチレバーのうちミラー部側からその反対側に向かって奇数番目の圧電カンチレバーが、当該圧電カンチレバーが支持する第1圧電体によって屈曲変形する。
【0012】
また、第2電極に電圧が印加されることで、各圧電カンチレバーのうちミラー部側からその反対側に向かって偶数番目の圧電カンチレバーが、当該圧電カンチレバーが支持する第1圧電体によって屈曲変形する。
【0013】
このとき、隣り合う圧電カンチレバー同士が互いに逆方向に屈曲変形するように第1電極及び第2電極に電圧が印加されるため、隣り合う圧電カンチレバー同士、すなわち奇数番目と偶数番目との圧電カンチレバーが互いに逆方向に屈曲変形する。
【0014】
各圧電カンチレバーは、両端部が隣り合うように並んで配置され、各々の屈曲変形を累積するようにそれぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように端部が機械的に連結されている。このため、隣り合う2つの圧電カンチレバー全体として発生する出力(例えば、圧電アクチュエータ全体の先端部で出力されるトルク又は変位)は、2つの圧電カンチレバーが互いに逆方向に屈曲変形した場合に、各圧電カンチレバーで発生した出力の大きさを加算した大きさとなる。
【0015】
これにより、圧電アクチュエータ全体としては、奇数番目の圧電カンチレバーで発生した出力の大きさと、偶数番目の圧電カンチレバーで発生した出力の大きさとを加算した大きさの出力が得られる。このようにして第1電極及び第2電極に電圧が印加されることで、ミラー部を第1軸の周りに駆動できる。
【0016】
また、第3電極に電圧が印加されることで、一対の圧電アクチュエータのうち一方が有する複数の圧電カンチレバーが、当該圧電カンチレバーがそれぞれ支持する第2圧電体によって同一方向に屈曲変形する。第4電極に電圧が印加することで、一対の圧電アクチュエータのうち他方が有する複数の圧電カンチレバーが、当該圧電カンチレバーがそれぞれ支持する第2圧電体によって同一方向に屈曲変形する。
【0017】
このとき、一方の圧電アクチュエータの各圧電カンチレバーと他方の圧電アクチュエータの各圧電カンチレバーとは逆方向に屈曲変形するように第3電極及び第4電極に電圧が印加される。第1電極及び第2電極に電圧が印加されたときと同様に、圧電アクチュエータは、各圧電カンチレバーで発生した出力の大きさが加算された大きさの出力が得られる。
【0018】
圧電体は、各圧電カンチレバーの並び方向に直交する方向に屈曲変形するため、一方の圧電アクチュエータの各圧電カンチレバーが同一方向に屈曲変形し、一方の圧電アクチュエータ全体は、各圧電カンチレバーの並び方向に直交する方向に出力される。他方の圧電アクチュエータ全体の出力は、一方の圧電アクチュエータの出力とは逆方向に出力される。これにより、ミラー部を第2軸の周りに駆動できる。
【0019】
本発明において、前記圧電体は、更に前記各圧電カンチレバーで支持される第3圧電体も含み、前記複数の電極は、前記第1圧電体と前記第2圧電体とに電圧を印加できる電極とは独立に、前記第3圧電体が屈曲変形することで発生する電圧を出力できるように構成され、前記屈曲変形することで発生する電圧に応じて、前記ミラー部の前記第1軸周りの駆動及び前記第2軸周りの駆動を補正することが好ましい。
【0020】
これにより、第1圧電体及び第2圧電体が屈曲変形するとき、共に屈曲変形する第3圧電体は、圧電効果により分極が誘起され屈曲変形の大きさに応じた電圧を出力する。すなわち、第1圧電体及び第2圧電体の屈曲変形によって駆動するミラー部の駆動量(偏向角)に応じた電圧が第3圧電体から出力される。このため、第3圧電体から出力された電圧によって、ミラー部の駆動量を検知できる。
【0021】
そして、第3圧電体から出力された電圧によって検知したミラー部の駆動量を、目標とするミラー部の駆動量に近づけるように第1圧電体及び第2圧電体に印加する電圧を調整することで、ミラー部の第1軸周りの駆動及び第2軸周りの駆動を補正する。これにより、ミラー部の駆動を目標の駆動に近づけることができるため、精度の高いミラー部の駆動を実現できる。このように、第一振動子と第二振動子のミアンダ形状の振動子を二対形成している光偏向器と比べて小型化できると共に、ミラー部を精度良く駆動できる。
【0022】
本発明において、前記複数の電極に交流電圧を印加して前記ミラー部を駆動する場合、第2軸の周りに駆動するときの固有振動数が、第1軸の周りに駆動するときの固有振動数に比べて互いに影響を与えない程度に大きく設定されていることが好ましい。これにより、ミラー部を交流電圧で二次元方向に駆動(回転駆動)する場合に第1軸周りと第2軸周りとで互いに影響を与えずに独立して駆動することができる。
【0023】
本発明において、前記第1圧電体に交流電圧を印加する場合には、前記ミラー部を第1軸の周りに駆動するときの固有振動数に合わせた周波数の交流電圧を印加することが好ましい。これにより、ミラー部の第1軸周りの回転駆動の固有振動数に合わせた周波数、すなわち共振周波数に合わせた交流電圧を印加することで、ミラー部の回転駆動が大きくなり、光偏向器の第1軸周りの偏向角を大きくすることができる。
【0024】
本発明において、前記第2圧電体に交流電圧を印加する場合には、前記ミラー部が第2軸の周りに駆動するときの固有振動数に合わせた周波数の交流電圧を印加することが好ましい。これにより、ミラー部の第2軸周りの回転駆動の固有振動数に合わせた周波数、すなわち共振周波数に合わせた交流電圧を印加することで、ミラー部の回転駆動が大きくなり、光偏向器の第2軸周りの偏向角を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態の光偏向器の斜視図。
【図2】第1実施形態の圧電アクチュエータの領域IIの拡大図。
【図3】(a)は第1実施形態の第1圧電アクチュエータが作動していないとき、(b)は第1実施形態の第1圧電アクチュエータが作動して、ミラー部を第1軸周りに回転駆動しているとき、(c)は第1実施形態の第1圧電アクチュエータが作動して、ミラー部を第2軸周りに回転駆動しているときの例を示す図。
【図4】(a)は第1実施形態の圧電アクチュエータが第1軸の周りに駆動しているときの一例を表わすA−A線断面図、(b)は第1実施形態の圧電アクチュエータが第2軸の周りに駆動しているときの一例を表わすB−B線断面図。
【図5】(a)は第1実施形態の圧電アクチュエータが第1軸の周りに駆動しているときの一例を表わす斜視図、(b)は第1実施形態の圧電アクチュエータが第2軸の周りに駆動しているときの一例を表わす斜視図。
【図6】第1実施形態の圧電アクチュエータの第1軸又は第2軸の周りに駆動するときの共振周波数を示す図。
【図7】第1実施形態の光偏向器を使用した光学装置の構成を示す説明図。
【図8】本発明の第2実施形態の光偏向器の斜視図。
【図9】第2実施形態の圧電アクチュエータの領域IXの拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態の光偏向器の構成について説明する。
【0027】
第1実施形態の光偏向器1は、入射された光を反射するミラー部2と、ミラー部2を駆動する一対の第1圧電アクチュエータ3a及び第2圧電アクチュエータ3bと、これらの一対の圧電アクチュエータ3a,3bを支持する支持部11とを備える。
【0028】
ミラー部2は、小判型の形状に形成されている。その一対の直線の辺の一部が、ミラー部2を挟んで対向した一対の圧電アクチュエータ3a,3bの先端部にそれぞれ連結されている。また、これらの一対の圧電アクチュエータ3a,3bは、その基端部が、ミラー部2とこれらの一対の圧電アクチュエータ3a,3bとを囲むように設けられた支持部11に連結されて支持されている。
【0029】
ミラー部2は、ミラー部支持体2aと、ミラー部支持体2a上に形成されたミラー面反射膜(反射面)2bとを備えている。ミラー面反射膜2bは、ミラー部支持体2a上の金属薄膜(第1実施形態では1層の金属薄膜)を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工して形成されている。金属薄膜の材料としては、例えば金、白金、アルミニウム(Al)等が用いられる。金属薄膜の厚みは、例えば100〜500nm程度とする。金属薄膜は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。
【0030】
第1圧電アクチュエータ3aは、4つの圧電カンチレバー(第1圧電アクチュエータ3aの先端部側から奇数番目の2つの圧電カンチレバー31a,31aと、偶数番目の2つの圧電カンチレバー31b,31b)とを連結して、構成されている。また、第2圧電アクチュエータ3bも、4つの圧電カンチレバー(第2圧電アクチュエータ3bの先端部側から奇数番目の2つの圧電カンチレバー31c,31cと、偶数番目の2つの圧電カンチレバー31d,31d)とを連結して、構成されている。
【0031】
各圧電カンチレバー31a〜31dは、支持体4a〜4d、第1下部電極51a〜51d、第2下部電極52a〜52d、第1圧電体61a〜61d、第2圧電体62a〜62d、第1上部電極71a〜71d、及び第2上部電極72a〜72dを備えている。
【0032】
第1圧電アクチュエータ3aにおいて、4つの圧電カンチレバー31a,31bは、その長さ方向が同じになるように各圧電カンチレバー31a,31bの両端部が隣り合うと共に、ミラー部2を回転駆動可能に所定の間隔で並んで配置されている。そして、各圧電カンチレバー31a,31bは、隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように連結されている。
【0033】
第2圧電アクチュエータ3bにおいても、4つの圧電カンチレバー31c,31dは、その長さ方向が同じになるように各圧電カンチレバー31c,31dの両端部が隣り合うと共に、所定の間隔で並んで配置されている。そして、各圧電カンチレバー31c,31dは、隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように連結されている。
【0034】
また、光偏向器1は、4つの第1上部電極パッド12a〜12dと、2つの第1下部電極パッド13a,13bと、2つの第2上部電極パッド12e,12fと、2つの第2下部電極パッド13c,13dとを、支持部11上に備えている。
【0035】
詳細には、第1上部電極パッド12a及び第1下部電極パッド13aは、第1圧電アクチュエータ3aの奇数番目の第1上部電極71aと第1下部電極51aとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続されている。
【0036】
第1上部電極パッド12b及び第1下部電極パッド13aは、第1圧電アクチュエータ3aの偶数番目の第1上部電極71bと第1下部電極51bとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続されている。このように、第1下部電極パッド13aは、第1上部電極パッド12a及び第1上部電極パッド12bで共通の電極パッドとしている。
【0037】
第1上部電極パッド12c及び第1下部電極パッド13bは、第2圧電アクチュエータ3bの奇数番目の第1上部電極71cと第1下部電極51cとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続されている。
【0038】
第1上部電極パッド12d及び第1下部電極パッド13bは、第2圧電アクチュエータ3bの偶数番目の第1上部電極71dと第1下部電極51dとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続されている。このように第1下部電極パッド13bは、第1上部電極パッド12c及び第1上部電極パッド12dで共通の電極パッドとしている。
【0039】
第2上部電極パッド12e及び第2下部電極パッド13cは、第1圧電アクチュエータ3aの第2上部電極72a,72bと第2下部電極52a,52bとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続されている。
【0040】
第2上部電極パッド12f及び第2下部電極パッド13dは、第2圧電アクチュエータ3bの第2上部電極72c,72dと第2下部電極52c,52dとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続されている。
【0041】
第2下部電極52a〜52dと第2下部電極パッド13c,13dとは、シリコン基板上の金属薄膜(第1実施形態では2層の金属薄膜、以下、下部電極層ともいう)を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成される。この金属薄膜の材料としては、例えば、1層目(下層)にはチタン(Ti)を用い、2層目(上層)には白金(Pt)を用いる。詳細には、第1と第2との2つの圧電アクチュエータ3a,3bの圧電カンチレバーの第2下部電極52a〜52dは、長さを支持体4a〜4dの長さ方向とほぼ同じとし、それぞれ、支持体4a〜4d上の幅方向の中央部に形成されている。そして、第2下部電極パッド13c,13dは、支持部11上の下部電極層を介して、第2下部電極52a〜52dに導通される。
【0042】
第1下部電極51a〜51dと第1下部電極パッド13a,13bとは、シリコン基板上の金属薄膜を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成される。詳細には、第1と第2との2つの圧電アクチュエータ3a,3bの圧電カンチレバーの第1下部電極51a〜51dは、長さを支持体4a〜4dの長さ方向とほぼ同じとし、それぞれ、支持体4a〜4d上の幅方向の両端部側に第2下部電極52a〜52dを挟むように形成されている。
【0043】
第1下部電極51a〜51dと第2下部電極52a〜52dとで、支持体(直線部)4a〜4d上のほぼ全面を覆うように形成されている。すなわち、第1下部電極51a〜51d及び第2下部電極52a〜52dが、各圧電カンチレバー31a〜31dの幅方向の中心線に対して対称に配置されている。そして、第1下部電極パッド13a,13bは、支持部11上の下部電極層を介して、第1下部電極51a〜51dに導通される。
【0044】
なお、「第1下部電極51a〜51dと第1下部電極パッド13a,13bとを導通する下部電極層」と、「第2下部電極52a〜52dと第2下部電極パッド13c,13dとを導通する下部電極層」とは、互いに絶縁するように平面的に分離して設けられている。
【0045】
第1圧電体61a〜61dは、半導体プレーナプロセスを用いて下部電極層上の1層の圧電膜(以下、圧電体層ともいう)を形状加工することにより、それぞれ、第1下部電極51a〜51d上に互いに分離して形成されている。
【0046】
この圧電膜の材料としては、例えば、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。詳細には、第1圧電アクチュエータ3aの圧電カンチレバーの第1圧電体61a,61bは、第1下部電極51a,51b上のほぼ全面に形成されて、第2圧電アクチュエータ3bの圧電カンチレバーの第1圧電体61c,61dは、第1下部電極51c,51d上のほぼ全面に形成されている。
【0047】
第2圧電体62a〜62dは、半導体プレーナプロセスを用いて下部電極層上の1層の圧電膜を形状加工することにより、それぞれ、第2下部電極52a〜52d上に互いに分離して形成されている。
【0048】
この圧電膜の材料としては、例えば、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。詳細には、第1圧電アクチュエータ3aの圧電カンチレバーの第2圧電体62a,62bは、第2下部電極52a,52b上のほぼ全面に形成されて、第2圧電アクチュエータ3bの圧電カンチレバーの第2圧電体62c,62dは、第2下部電極52c,52d上のほぼ全面に形成されている。
【0049】
このように、第1圧電体61a〜61d及び第2圧電体62a〜62dが、各圧電カンチレバー31a〜31dの幅方向の中心線に対して対称に配置されている。
【0050】
第1上部電極71a〜71d,第1上部電極パッド12a〜12d及びこれらを導通する上部電極配線(図示せず)と、第2上部電極72a〜72d,第2上部電極パッド12e,12f及びこれらを導通する上部電極配線(図示せず)とは、半導体プレーナプロセスを用いて、圧電体層上の金属薄膜(第1実施形態では1層の金属薄膜、以下、上部電極層ともいう)を形状加工することにより形成されている。この金属薄膜の材料としては、例えば白金(Pt)又は金(Au)が用いられる。
【0051】
詳細には、第1と第2との2つの圧電アクチュエータ3a,3bの圧電カンチレバーの第1上部電極71a〜71dは第1圧電体61a〜61d上のほぼ全面に形成されており、第2上部電極72a〜72dは第2圧電体62a〜62d上のほぼ全面に形成されている。そして、第1上部電極パッド12a〜12dは、支持部11上及び支持体4a〜4d上の側部に形成された上部電極配線(図示せず)を介して第1上部電極71a〜71dに導通され、第2上部電極パッド12e,12fは、支持部11上及び支持体4a〜4d上の側部に形成された上部電極配線(図示せず)を介して第2上部電極72a〜72dに導通される。なお、上部電極配線は、平面的に互いに分離して設けられていると共に、第1下部電極パッド13a,13b、第1下部電極51a〜51d、第2下部電極パッド13c,13d、及び第2下部電極52a〜52dと層間絶縁されている。
【0052】
また、ミラー部支持体2aと支持体4a〜4dと支持部11とは、複数の層から構成される半導体基板を形状加工することにより一体的に形成されている。シリコン基板を形状加工する手法としては、フォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術等を利用した半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスが用いられる。
【0053】
ミラー部2と支持部11との間には空隙11’が設けられ、ミラー部1が所定角度まで回転可能となっている。ミラー部2は、一体的に形成することで、一対の圧電アクチュエータ3a,3bを介して支持部11と機械的に連結され、一対の圧電アクチュエータ3a,3bの駆動に応じて回動する。
【0054】
更に、光偏向器1は、ミラー部2の偏向・走査を制御する制御回路(図示省略)に接続されている。制御回路は、その機能として、第1圧電アクチュエータ3aへ印加する駆動電圧の位相、周波数、振幅、波形等を制御することで、ミラー部2の第1軸x周りの偏向・走査(回転駆動)及び並進駆動の位相、周波数、偏向角等を制御する第1駆動機能と、第2圧電アクチュエータ3bへ印加する駆動電圧の位相、周波数、振幅、波形等を制御することで、ミラー部2の第2軸y周りの偏向・走査(回転駆動)の位相、周波数、偏向角、変位量等を制御する第2駆動機能とを備えている。
【0055】
次に、図3〜図5を参照して、第1実施形態の光偏向器1の作動を説明する。以下では適宜、ミラー部2側からi番目の圧電カンチレバーについて(i)と付記して説明する(i=1〜4)。
【0056】
まず、一対の圧電アクチュエータ3a,3bによる第1軸x周りの回転駆動について説明する。光偏向器1では、一対の圧電アクチュエータ3a,3bに駆動電圧を印加する。具体的には、第1圧電アクチュエータ3aでは、第1上部電極パッド12aと共通の第1下部電極パッド13aとの間に第1の電圧を印加して、奇数番目の圧電カンチレバー31aを駆動させる。これと共に、第1上部電極パッド12bと共通の第1下部電極パッド13aとの間に第2の電圧を印加して、偶数番目の圧電カンチレバー31bを駆動させる。
【0057】
第2圧電アクチュエータ3bでは、第1上部電極パッド12cと共通の第1下部電極パッド13bとの間に第1の電圧を印加して、奇数番目の圧電カンチレバー31aを駆動させる。これと共に、第1上部電極パッド12dと共通の第1下部電極パッド13bとの間に第2の電圧を印加して、偶数番目の圧電カンチレバー31bを駆動させる。ここで、第1の電圧と第2の電圧とは、互いに逆位相或いは位相のずれた交流電圧(例えば正弦波)とする。
【0058】
このとき、第1,第2の電圧の回転駆動用の電圧成分は、一対の圧電アクチュエータ3a,3bの垂直方向について、奇数番目の圧電カンチレバー31a,31cと偶数番目の圧電カンチレバー31b,31dとの角度変位が逆方向に発生するように印加する。
【0059】
例えば、第1軸xの周りに回転駆動するとき、第1圧電アクチュエータ3aの先端部を上方向(図1に示す方向U)に変位させる場合には、奇数番目の圧電カンチレバー31aを上方向に変位させ、偶数番目の圧電カンチレバー31bを下方向に変位させる。第1圧電アクチュエータ3aの先端部を下方向に変位させるには、奇数番目の圧電カンチレバー31aを下方向に変位させ、偶数番目の圧電カンチレバー31bを上方向に変位させる。
【0060】
また、第2圧電アクチュエータ3bについても、第1圧電アクチュエータ3aと同様に、第2圧電アクチュエータ3bの先端部を上方向に変位させる場合には、奇数番目の圧電カンチレバー31cを上方向に変位させ、偶数番目の圧電カンチレバー31dを下方向に変位させる。第2圧電アクチュエータ3bの先端部を下方向に変位させるには、奇数番目の圧電カンチレバー31cを下方向に変位させ、偶数番目の圧電カンチレバー31dを上方向に変位させる。
【0061】
これにより、第1圧電アクチュエータ3a及び第2圧電アクチュエータ3bの奇数番目の圧電カンチレバー31a,31cと、第1圧電アクチュエータ3a及び第2圧電アクチュエータ3bの偶数番目の圧電カンチレバー31b,31dとが、互いに逆方向に屈曲変形する。
【0062】
図3(b)、図4(a)及び図5(a)に示すように、第1圧電アクチュエータ3aに電圧を印加して、ミラー部2側(先端部側)から奇数番目の圧電カンチレバー31aを上方向に屈曲変形させると共に、偶数番目の圧電カンチレバー31bを下方向に屈曲変形させる。
【0063】
このとき、圧電カンチレバー31b(4)は、支持部11と連結した基端部を支点として、その先端部に下方向の角度変位が発生している。圧電カンチレバー31a(3)は、圧電カンチレバー31b(4)の先端部と連結した基端部を支点として、その先端部に上方向の角度変位が発生している。圧電カンチレバー31b(2)は、圧電カンチレバー31a(3)の先端部と連結した基端部を支点として、その先端部に下方向の角度変位が発生している。圧電カンチレバー31a(1)は、圧電カンチレバー31b(2)の先端部と連結した基端部を支点として、その先端部(ミラー部2と連結している)に上方向の角度変位が発生している。これにより、第1圧電アクチュエータ3aでは、各圧電カンチレバー31a,31bの屈曲変形の大きさを加算した大きさの角度変位が発生する。
【0064】
これにより、ミラー部2を第1軸xの周りに回転駆動することができ、所定の第1周波数で所定の第1偏向角で光走査することができる。このとき、これらの一対の圧電アクチュエータ3a,3bでは、駆動電圧として一対の圧電アクチュエータ3a,3bを含むミラー部2の機械的な共振周波数付近の周波数の交流電圧を印加して共振駆動させることで、より大きな偏向角で光走査することができる。
【0065】
また、ミラー部2を第1軸xの周りに回転駆動する場合には、上述したように交流電圧を印加する必要はなく、直流電圧を印加してもよい。この場合、各圧電カンチレバー31a,31b,31c,31dで発生する屈曲変形の大きさは直流電圧の大きさに応じて線形的に変化する。従って、例えば交流電圧を印加して圧電カンチレバーを共振駆動させる場合と異なり、直流電圧の大きさを制御することで一対の圧電アクチュエータ3a,3bから任意の出力を得ることができる。
【0066】
このように、光偏向器1では、第1軸xの周りに駆動する場合には、駆動電圧として印加した直流電圧の大きさに応じて線形的に偏向角を制御することができるので、任意の速度で任意の偏向角を得ることができる。
【0067】
次に、一対の圧電アクチュエータ3a,3bによる第2軸y周りの回転駆動について説明する。光偏向器1では、一対の圧電アクチュエータ3a,3bに駆動電圧を印加する。具体的には、第1圧電アクチュエータ3aでは、第2上部電極パッド12eと第2下部電極パッド13cとの間に第3の電圧を印加して、奇数番目の圧電カンチレバー31a及び偶数番目の圧電カンチレバー31bを駆動させる。また、第2圧電アクチュエータ3bでは、第2上部電極パッド12fと共通の第1下部電極パッド13dとの間に第4の電圧を印加して、奇数番目の圧電カンチレバー31c及び偶数番目の圧電カンチレバー31dを駆動させる。ここで、第3の電圧と第4の電圧とは、互いに逆位相或いは位相のずれた交流電圧(例えば正弦波)とする。
【0068】
このとき、第3,第4の電圧の回転駆動用の電圧成分は、一対の圧電アクチュエータ3a,3bの垂直方向について、第1圧電アクチュエータ3aの圧電カンチレバー31a,31bと第2圧電アクチュエータ3bの圧電カンチレバー31c,31dとの角度変位が逆方向に発生するように印加する。
【0069】
例えば、第2軸yの周りに回転駆動するときに、第1圧電アクチュエータ3aの先端部を上方向に変位させる場合には、奇数番目の圧電カンチレバー31a及び偶数番目の圧電カンチレバー31bを上方向に変位させる。第1圧電アクチュエータ3aの先端部を下方向に変位させるには、逆に、奇数番目の圧電カンチレバー31a及び偶数番目の圧電カンチレバー31bを下方向に変位させる。
【0070】
また、第2圧電アクチュエータ3bについても第1圧電アクチュエータ3aと同様に、第2圧電アクチュエータ3bの先端部を上方向に変位させる場合には、奇数番目の圧電カンチレバー31c及び偶数番目の圧電カンチレバー31dを上方向に変位させる。第2圧電アクチュエータ3bの先端部を下方向に変位させるには、奇数番目の圧電カンチレバー31c及び偶数番目の圧電カンチレバー31dを下方向に変位させる。
【0071】
第1実施形態では、一対の圧電アクチュエータ3a,3bは、隣り合う圧電カンチレバーが折り返すように連結されているため、ミラー部2は、第1軸xの周りに回転駆動する場合に比べて第2軸yの周りに回転駆動する場合の方が回転しづらい。このため、第2上部電極パッド12eを第1圧電アクチュエータ3aの奇数番目の圧電カンチレバー31aと偶数番目の圧電カンチレバー31bとに対して共通の電極パッドとし、第2上部電極パッド12fを第2圧電アクチュエータ3bの奇数番目の圧電カンチレバー31cと偶数番目の圧電カンチレバー31dとに対して共通の電極パッドとして、第1圧電アクチュエータ3aの奇数番目の圧電カンチレバー31a及び偶数番目の圧電カンチレバー31bと、第2圧電アクチュエータ3bの奇数番目の圧電カンチレバー31c及び偶数番目の圧電カンチレバー31dとをそれぞれ同一方向に変位可能にして、上下方向に大きく変位できるようにしている。
【0072】
図3(c)、図4(b)及び図5(b)に示すように、第1圧電アクチュエータ3aに電圧を印加して、ミラー部2側(先端部側)から奇数番目の圧電カンチレバー31a及び偶数番目の圧電カンチレバー31bを上方向に屈曲変形させる。このとき、圧電カンチレバー31b(4)は、支持部11と連結した基端部を支点として、その先端部に上方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー31a(3)は、圧電カンチレバー31b(4)の先端部と連結した基端部を支点として、その先端部に上方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー31b(2)は、圧電カンチレバー31a(3)の先端部と連結した基端部を支点として、その先端部に上方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー31a(1)は、圧電カンチレバー31b(2)の先端部と連結した基端部を支点として、その先端部(ミラー部2と連結している)に上方向の角度変位が発生している。これにより、第1圧電アクチュエータ3aでは、その先端部に、各圧電カンチレバー31a,31bの屈曲変形による上方向への移動量を加算した大きさの上方向への移動が発生する。
【0073】
これにより、ミラー部2を挟んで対向する一対の圧電アクチュエータ3a,3bのそれぞれの先端部が互いに逆方向へ移動するためミラー部2が第2軸y周りに回転駆動する。これにより、所定の第2周波数で所定の第2偏向角で光走査することができる。また、ミラー部2を図4(b)のミラー部2’で示される角度で回転駆動する場合には、図4(b)の31a’(1)〜31b’(4),31c’(1)〜31d’(4)に示されるように圧電アクチュエータ3aを上方向、圧電アクチュエータ3bを下方向に屈曲変形させる。
【0074】
これらの一対の圧電アクチュエータ3a,3bでは、駆動電圧として一対の圧電アクチュエータ3a,3bを含むミラー部2の機械的な共振周波数付近の周波数の交流電圧を印加して共振駆動させることで、より大きな偏向角で光走査することができる。
【0075】
上述したように、ミラー部2は、第1軸xの周りに回転駆動する場合に比べて第2軸yの周りに回転駆動する場合の方が回転しづらい。このため、図6に示されるように、第1軸xで回転駆動するときの共振周波数fxは、第2軸yで回転駆動するときの共振周波数fyに比べて充分に低くなる。これらの共振周波数fx,fyは、10倍程度の差があれば、第1軸x周りの回転駆動と第2軸y周りの回転駆動とが互いに与える影響を抑制し、互いに独立して回転駆動することができる。
【0076】
共振周波数fx,fyは、各圧電アクチュエータ3a,3bの各圧電カンチレバーの並びに設けられた所定の間隔、各圧電カンチレバーの材料、厚さ、長さ又は本数等の様々な要因により異なってくる。
【0077】
また、ミラー部2は、第1軸xの周りに回転駆動する場合に比べて第2軸yの周りに回転駆動する場合の方が回転しづらいので、第2軸yで回転駆動するときの偏向角θyは、第1軸xで回転駆動するときの偏向角θxに比べて小さくなりやすい。偏向角θx,θyも、共振周波数fx,fyと同様に、各圧電アクチュエータ3a,3bの各圧電カンチレバーの並びに設けられた所定の間隔、各圧電カンチレバーの材料、厚さ、長さ又は本数等の様々な要因により異なってくる。
【0078】
従って、光偏向器1の用途に応じて、共振周波数fx,fy及び偏向角θx,θyが所望の大きさになるように、上述した様々な要因を実験等によって調整する。
【0079】
図7は、第1実施形態の光偏向器1を使用した画像表示装置101を示す。画像表示装置101は、光偏向器1と、レーザ光源102と、ハーフミラー(ビームスプリッター)103と、スクリーン104とを備えている。レーザ光源102、ハーフミラー103、スクリーン104は所定の位置に固定されている。レーザ光源102から出力されたレーザ光は、所定の強度変調を受けて集光用のレンズ又はレンズ群(図示せず)を通過して、ハーフミラー103を通り、光偏向器1のミラー部2に入射される。入射されたレーザ光は、ミラー部2の偏向角に応じた所定の方向に偏向され、ハーフミラー103で分岐された光がスクリーン104上に投影され、画像を形成する。光偏向器1は、入射されたレーザ光を水平方向、垂直方向にラスタスキャンし、スクリーン104上の水平方向H、垂直方向Vの長方形の領域を走査して画像を表示する。
【0080】
このとき、光偏向器1は、水平方向の走査と垂直方向の走査とを独立に且つ両立させて行うことができるので、入射された光を水平方向、垂直方向に効率良くラスタスキャンしてスクリーン104上に投射することができる。従って、図7に示されるように、スクリーン104上の水平方向H、垂直方向Vの長方形の領域を、効率良く走査して画像を表示することができる。
【0081】
第1実施形態では、第1軸xの周りに駆動する場合には、周波数220[Hz],振幅電圧5[V]の交流電圧を印加すると、ミラー部2の第1軸x周りの偏向角として±15°が得られた。また、交流電圧ではなく直流電圧を印加する場合には、直流電圧の電圧値を変更する周波数が0〜200[Hz]の範囲で、入力した直流電圧に応じたミラー部2の追随が得られた。このとき、周波数60[Hz],振幅電圧20[V]のときに、ミラー部2の第1軸x周りの偏向角は±10°として得られた。
【0082】
また、第2軸yの周りに駆動する場合には、周波数2.1[kHz],振幅電圧5[V]の交流電圧を印加すると、ミラー部2の第2軸y周りの偏向角は±3°として得られた。
【0083】
なお、光偏向器1は、上述の光投射型ディスプレイ等の画像表示装置の他にも、例えば、電子写真方式の複写機やレーザプリンタ等の画像形成用の光走査装置、或いはレーザレーダ、バーコードリーダ、エリアセンサ又はタッチパネル等のセンシング用の光走査装置に用いることができる。
【0084】
以上のように第1実施形態の光偏向器1では、両端部が隣り合うように並んだ各圧電カンチレバー31a〜31dの両端部を各々の屈曲変形を累積するようにそれぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように端部が機械的に連結(ミアンダ形状)した圧電アクチュエータを2つ(3a,3b)設け、これらの圧電アクチュエータ3a,3bを、ミラー部2を挟んで対向して配置している。そして、第1圧電体61a〜61dと第2圧電体62a〜62dとの2つの圧電体にそれぞれ独立した電圧を印加できるため、ミラー部2を第1軸xと第2軸yとで独立して回転駆動できる。
【0085】
これにより、隣り合う圧電カンチレバーの端部が折り返すように機械的に連結された(ミアンダ形状)圧電アクチュエータを一対だけ形成した場合であっても、二次元方向に振動が可能となる。従って、第1実施形態の光偏向器1は、ミアンダ形状の圧電アクチュエータを二対形成している光偏向器と比べると、ミラー部2の大きさが同じ場合には、光偏向器1の大きさを小さくすることができる。これにより、同じ大きさの基板から作成できる光偏向器1の数を増やすことができ、製造コストを削減できる。
【0086】
また、第1実施形態の光偏向器1は、ミアンダ形状の圧電アクチュエータを一対のみで構成している。このため、ミアンダ形状の圧電アクチュエータを二対形成している光偏向器と比べると構造が簡素化され、製造ライン等での歩留まりを向上できる。
【0087】
また、第1実施形態の光偏向器1は、ミアンダ形状の圧電アクチュエータを二対形成している光偏向器と比べると可動部(一対の圧電アクチュエータ3a,3b及びミラー部2)の構成要素を簡略化でき、可動部の質量を低減できる。このため、可動部の質量が多いものに比べて加速度の影響を低減できる。
【0088】
ここで、第1上部電極パッド12a及び第1上部電極パッド12cが、本発明における第1電極に相当し、第1上部電極パッド12b及び第1上部電極パッド12dが、本発明における第2電極に相当する。
【0089】
第1下部電極パッド13a及び第1下部電極パッド13bは、第1上部電極パッド12a〜12dに共通の電極パッドとしているため、これらは、本発明における第1電極及び第2電極に相当する。
【0090】
また、第2上部電極パッド12e及び第2下部電極パッド13c、第2上部電極パッド12f及び第2下部電極パッド13dが、本発明における第3電極又は第4電極に相当する。
【0091】
本発明の第1〜第4電極の4つの電極(複数の電極)のそれぞれは、第1実施形態に示されるように複数の電極から構成されるものであってもよい。
【0092】
また、第1実施形態の光偏向器1は、第1圧電体に印加する交流電圧を、光偏向器1が第1軸xの周りに回転駆動するときの機械的な共振周波数fxとなるようにしている。これにより、より大きな偏向角で光走査することができる。同様に、第2圧電体に印加する交流電圧を、光偏向器1が第2軸yの周りに回転駆動するときの機械的な共振周波数fyとなるようにしている。これにより、より大きな偏向角で光走査することができる。
【0093】
また、第1軸xの周りに回転駆動するときの機械的な共振周波数fxが、第2軸yの周りに回転駆動するときの共振周波数fyに比べて充分に低くなるように、fyがfxの10倍以上の周波数となるように構成されている。これにより、第1軸x周りの回転駆動と第2軸y周りの回転駆動とが互いに与える影響を抑制し、互いに独立して回転駆動することができる。
【0094】
なお、第1実施形態の光偏向器1では、第1圧電体61a〜61d及び第2圧電体62a〜62dを、各圧電カンチレバー31a〜31dの幅方向の中心線に対して対称に配置しているが、これに限らない。例えば、各圧電カンチレバー31a〜31dの幅方向の中心線より一方に第1圧電体を配置し、他方に第2圧電体を配置してもよい。これによっても、一対の圧電アクチュエータ3a,3bのみで二次元方向に回転駆動できる。
【0095】
また、第1実施形態では、第1圧電アクチュエータ3aの各圧電カンチレバーの第2圧電体62a,62bのそれぞれに第2上部電極パッド12eから電圧が印加できるようにし、第2圧電アクチュエータ3bの各圧電カンチレバーの第2圧電体62c,62dのそれぞれに第2上部電極パッド12fから電圧が印加できるようにしているが、これに限らない。
【0096】
例えば、4つの第2上部電極パッド14e,14f,14g,14hを形成し、第2上部電極パッド14e及び第2下部電極パッド13cを、第1圧電アクチュエータ3aの奇数番目の第2上部電極72aと第2下部電極52aとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続し、第2上部電極パッド14f及び第1下部電極パッド13cを、第1圧電アクチュエータ3aの偶数番目の第2上部電極72bと第2下部電極52bとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続する。
【0097】
また、第2上部電極パッド14g及び第2下部電極パッド13dを、第2圧電アクチュエータ3bの奇数番目の第2上部電極72cと第1下部電極52cとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続し、第2上部電極パッド14h及び第2下部電極パッド13dを、第2圧電アクチュエータ3bの偶数番目の第2上部電極72dと第1下部電極52dとの間にそれぞれ駆動電圧を印加できるように電気的に接続する。
【0098】
そして、第1圧電アクチュエータ3aの第2上部電極パッド14eと共通の第2下部電極パッド13cとの間に第1の電圧を印加して、奇数番目の圧電カンチレバー31aを駆動させると共に、第2上部電極パッド14fと共通の第2下部電極パッド13cとの間に第2の電圧を印加して、偶数番目の圧電カンチレバー31bを駆動させる。第2圧電アクチュエータ3bの、第2上部電極パッド14gと共通の第2下部電極パッド13dとの間に第2の電圧を印加して、奇数番目の圧電カンチレバー31aを駆動させると共に、第2上部電極パッド14hと共通の第2下部電極パッド13dとの間に第1の電圧を印加して、偶数番目の圧電カンチレバー31bを駆動させる。
【0099】
このとき、第1,第2の電圧の回転駆動用の電圧成分は、一対の圧電アクチュエータ3a,3bの垂直方向について、圧電カンチレバー31a,31dと圧電カンチレバー31b,31cとの角度変位が逆方向に発生するように印加する。
【0100】
これにより、ミラー部2を挟んで対向する一対の圧電アクチュエータ3a,3bのそれぞれの先端部が互いに逆方向へ移動するため、ミラー部2を第2軸y周りに回転駆動することができる。
【0101】
また、第1実施形態では、ミラー部2を第1軸xの周りに回転駆動する場合、各圧電カンチレバーに印加する電圧を、第1圧電アクチュエータ3aの奇数番目の2本の圧電カンチレバー31aと、第2圧電アクチュエータ3bの奇数番目の2本の圧電カンチレバー31cとに印加し、第1の電圧第1圧電アクチュエータ3aの偶数番目の2本の圧電カンチレバー31bと、第2圧電アクチュエータ3bの偶数番目の2本の圧電カンチレバー31dとに、第2の電圧を共通に印加しているが、これに限らない。全ての圧電カンチレバーに対して独立した電極パッドを接続し、独立して電圧を印加可能にしてもよい。これは、ミラー部2を第2軸yの周りに回転駆動する場合においても同様である。
【0102】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態の光偏向器において、第1実施形態の光偏向器1の構成と異なる点について、図8及び図9を参照して説明する。
【0103】
第2実施形態の光偏向器8の第1圧電アクチュエータ3a及び第2圧電アクチュエータ3bの各圧電カンチレバー31a〜31dは、第1実施形態の光偏向器1に比べて更に、第3下部電極53a〜53dと、第3圧電体63a〜63dと、第3上部電極73a〜73dとを備えている。
【0104】
これに伴い、第2実施形態の光偏向器8の支持部11は、第1実施形態の支持部11に比べて更に、2つの第3上部電極パッド12g,12hと、2つの第3下部電極パッド13e,13fとを備えている。
【0105】
4つの第1上部電極パッド12a〜12d、2つの第1下部電極パッド13a,13b、2つの第2上部電極パッド12e,12f、及び2つの第2下部電極パッド13c,13dの各電極パッドと、第1下部電極51a〜51d、第2下部電極52a〜52d、第1圧電体61a〜61d、第2圧電体62a〜62d、第1上部電極71a〜71d、及び第2上部電極72a〜72dの各電極との電気的接続は、第1実施形態と同じであるから、説明を省略する。
【0106】
第3上部電極パッド12g及び第3下部電極パッド13eは、第1圧電アクチュエータ3aの第3圧電体63a,63bが屈曲変形することで、圧電効果により分極が誘起され、第3上部電極73a,73bと第3下部電極53a,53bとの間に屈曲変形の大きさに応じた電圧を出力できるように電気的に接続されている。
【0107】
また、第3上部電極パッド12h及び第3下部電極パッド13fは、第2圧電アクチュエータ3bの第3圧電体63c,63dが屈曲変形することで、第3上部電極73c,73dと第3下部電極53c,53dとの間に発生した電圧を出力できるように電気的に接続されている。
【0108】
第2下部電極52a〜52dは、第1実施形態と同様に、第1と第2との2つの圧電アクチュエータ3a,3bの圧電カンチレバーの第2下部電極52a〜52dは、長さを支持体4a〜4dの長さ方向とほぼ同じとし、それぞれ、支持体4a〜4d上の幅方向の中央部に形成されている。そして、第1実施形態と同様に、第2下部電極パッド13c,13dは、支持部11上の下部電極層を介して、第2下部電極52a〜52dに導通される。
【0109】
第2実施形態の第1下部電極51a〜51dは、第1と第2との2つの圧電アクチュエータ3a,3bの圧電カンチレバーの第1下部電極51a〜51dは、長さを支持体4a〜4dの長さ方向とほぼ同じとし、それぞれ、支持体4a〜4d上の幅方向の第2下部電極52a〜52dのミラー部2側の端部側に形成されている。そして、第1実施形態と同様に、第1下部電極パッド13a,13bは、支持部11上の下部電極層を介して、第1下部電極51a〜51dに導通される。
【0110】
第3下部電極53a〜53dと第3下部電極パッド13e,13fとは、第1下部電極51a〜51d,第2下部電極52a〜52dと第1下部電極パッド13a,13b,第2下部電極パッド13c,13dと同様に、シリコン基板上の金属薄膜を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成される。第1と第2との2つの圧電アクチュエータ3a,3bの圧電カンチレバーの第3下部電極53a〜53dは、長さを支持体4a〜4dの長さ方向とほぼ同じとし、それぞれ、支持体4a〜4d上の幅方向の第2下部電極52a〜52dのミラー部2側とは反対の端部側に形成されている。第1下部電極51a〜51dと第2下部電極52a〜52dと第3下部電極53a〜53dとで、支持体(直線部)4a〜4d上のほぼ全面を覆うように形成されている。
【0111】
すなわち、第1実施形態では、第1下部電極51a〜51dが、各圧電カンチレバーの幅方向の両端部に2つずつ配置されているが、第2実施形態では、これらの一方を第1下部電極51a〜51dとし、他方を第3下部電極53a〜53dとしている。このため、第1下部電極51a〜51dと第3下部電極53a〜53dとが、各圧電カンチレバー31a〜31dの幅方向の中心線に対して対称に配置されている。そして、第3下部電極パッド13e,13fは、支持部11上の下部電極層を介して、第3下部電極53a〜53dに導通される。
【0112】
なお、「第1下部電極51a〜51dと第1下部電極パッド13a,13bとを導通する下部電極層」と、「第2下部電極52a〜52dと第2下部電極パッド13c,13dとを導通する下部電極層」と、「第3下部電極53a〜53dと第3下部電極パッド13e,13fとを導通する下部電極層」とは互いに絶縁するように平面的に分離して設けられている。
【0113】
第2実施形態の第1圧電体61a〜61dは、第1実施形態と同様に形成され、それぞれが、第1下部電極51a〜51d上のほぼ全面に形成されている。第2実施形態の第2圧電体62a〜62dは、第1実施形態と同様に形成され、それぞれが、第2下部電極52a〜52d上のほぼ全面に形成されている。
【0114】
第3圧電体63a〜63dは、第1圧電体61a〜61d及び第2圧電体62a〜62dと同様に、半導体プレーナプロセスを用いて下部電極層上の1層の圧電膜を形状加工することにより、それぞれ、第2下部電極52a〜52d上に互いに分離して形成されている。詳細には、第1圧電アクチュエータ3aの圧電カンチレバーの第3圧電体63a,63bは、第3下部電極53a,53b上のほぼ全面に形成されて、第2圧電アクチュエータ3bの圧電カンチレバーの第1圧電体63c,63dは、第3下部電極53c,53d上のほぼ全面に形成されている。
【0115】
第1上部電極71a〜71d,第1上部電極パッド12a〜12d及びこれらを導通する上部電極配線(図示せず)と、第2上部電極72a〜72d,第2上部電極パッド12e,12f及びこれらを導通する上部電極配線(図示せず)と、第3上部電極73a〜73d,第3上部電極パッド12g,12h及びこれらを導通する上部電極配線(図示せず)とは、半導体プレーナプロセスを用いて、圧電体層上の金属薄膜(第2実施形態でも第1実施形態と同様に1層の金属薄膜)を形状加工することにより形成されている。
【0116】
詳細には、第1と第2との2つの圧電アクチュエータ3a,3bの圧電カンチレバーの第1上部電極71a〜71dは、第1圧電体61a〜61d上のほぼ全面に形成され、第2上部電極72a〜72dは、第2圧電体62a〜62d上のほぼ全面に形成され、第3上部電極73a〜73dは、第3圧電体63a〜63d上のほぼ全面に形成されている。
【0117】
そして、第1上部電極パッド12a〜12dは、支持部11上及び支持体4a〜4d上の側部に形成された上部電極配線(図示せず)を介して第1上部電極71a〜71dに導通し、第2上部電極パッド12e,12fは、支持部11上及び支持体4a〜4d上の側部に形成された上部電極配線(図示せず)を介して第2上部電極72a〜72dに導通し、第3上部電極パッド12g,12hは、支持部11上及び支持体4a〜4d上の側部に形成された上部電極配線(図示せず)を介して第3上部電極73a〜73dに導通する。
【0118】
なお、上部電極配線は、平面的に互いに分離して設けられると共に、第1下部電極パッド13a,13b、第1下部電極51a〜51d、第2下部電極パッド13c,13d、第2下部電極52a〜52d、第3下部電極パッド13e,13f、及び第3下部電極53a〜53dと層間絶縁されている。
【0119】
第2実施形態の光偏向器8を第1軸xの周りに回転駆動する場合と、第2軸yの周りに回転駆動する場合とは、第1実施形態の光偏向器1と同様であるので、説明を省略する。
【0120】
光偏向器8は、第1圧電体61a〜61d及び第2圧電体62a〜62dが屈曲変形することで、第3圧電体63a〜63dが共に屈曲変形する。このとき、圧電体の圧電効果によって、屈曲変形の大きさに応じた電圧が第3圧電体63a〜63dに発生する。第3上部電極パッド12g,12hと第3下部電極パッド13e,13fとの間の電圧差に第3圧電体63a,63bと第3圧電体63c,63dとの出力が累積して出力される。
【0121】
このときの屈曲変形の大きさに応じた電圧値に対するミラー部2の第1軸x周りの偏向角及び第2軸y周りの偏向角の値を、実験等により予め測定して、対応関係(例えばテーブル等)を記憶装置等に記憶しておく。そして、ミラー部2を駆動するとき、この記憶されたテーブルから、第3圧電体63a〜63dが出力した電圧値に対応する現時点のミラー部2の第1軸x周りの偏向角及び第2軸y周りの偏向角を取得することができる。
【0122】
すなわち、第3圧電体63a〜63dをミラー部2の駆動量(偏向角)を検知するセンサ(角度センサ)として使用することができる。このようにして検知した偏向角が、制御回路の制御の目標とする偏向角ではない場合には、目標となる偏向角となるように第1駆動機能及び第2駆動機能によってミラー部2の回転駆動を補正する。これにより、光偏向器8の偏向角を安定して得ることができる。
【0123】
以上のように、第2実施形態の光偏向器8では、第3圧電体63a〜63dを、ミラー部2の駆動量(偏向角)を検知するセンサ(角度センサ)として利用して、実際の偏向角と目標とする偏向角とのずれを補正するようにフィードバック制御している。このため、ミラー部の駆動を目標の駆動に近づけることができ、精度の高いミラー部の駆動を実現できる。このように、第2実施形態の光偏向器8では、第一振動子と第二振動子のミアンダ形状の振動子を二対形成している光偏向器と比べて小型化できると共に、ミラー部を精度良く駆動できる。
【0124】
また、第2実施形態の光偏向器8は、第1実施形態の光偏向器1と同様に、第1圧電体に印加する交流電圧を、光偏向器1が第1軸xの周りに回転駆動するときの機械的な共振周波数fxとなるようにしている。これにより、より大きな偏向角で光走査することができる。同様に、第2圧電体に印加する交流電圧を、光偏向器1が第2軸yの周りに回転駆動するときの機械的な共振周波数fyとなるようにしている。これにより、より大きな偏向角で光走査することができる。
【0125】
また、第2軸yの周りに回転駆動するときの共振周波数fyに比べて充分に低くなるように構成することにより、第1軸x周りの回転駆動と第2軸y周りの回転駆動とが互いに与える影響を抑制し、互いに独立して回転駆動することができる。
【0126】
第1実施形態の光偏向器1と同様の構成によって得られる効果については、第2実施形態の光偏向器8でも得られる。
【0127】
なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、全ての圧電カンチレバーに対して独立した電極パッドを接続し、各圧電カンチレバーの第3圧電体63a〜63dが発生した電圧を独立に出力可能にしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…光偏向器(第1実施形態)、2…ミラー部、2a…ミラー部支持体、2b…ミラー面反射膜(反射面)、3a…第1圧電アクチュエータ(一対の圧電アクチュエータの一方又は他方)、31a…奇数番目の圧電カンチレバー、31b…偶数番目の圧電カンチレバー、3b…第2圧電アクチュエータ(一対の圧電アクチュエータの他方又は一方)、31c…奇数番目の圧電カンチレバー、31d…偶数番目の圧電カンチレバー、61a〜61d…第1圧電体、62a〜62d…第2圧電体、12a…第1上部電極パッド(第1電極)、12b…第1上部電極パッド(第2電極)、12c…第1上部電極パッド(第1電極)、12d…第1上部電極パッド(第2電極)、13a…第1下部電極パッド(第1電極、第2電極)、13b…第1下部電極パッド(第1電極、第2電極)、12e…第2上部電極パッド(第3電極又は第4電極)、12f…第2上部電極パッド(第4電極又は第3電極)、13c…第2下部電極パッド(第3電極又は第4電極)、13d…第2下部電極パッド(第4電極又は第3電極)、8…光偏向器(第2実施形態)、63a〜63d…第3圧電体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を有するミラー部と、該ミラー部を駆動する圧電アクチュエータと、前記圧電アクチュエータに電圧を印加するための複数の電極とを備える光偏向器であって、
前記圧電アクチュエータは、前記ミラー部を挟んで対向するように一対配置され、各圧電アクチュエータの一端が前記ミラー部に連結され、
前記各圧電アクチュエータは、
駆動電圧が印加されることにより屈曲変形する圧電体と、
前記圧電体を支持し、該圧電体が屈曲変形するときに共に屈曲変形する複数の圧電カンチレバーとを備え、
前記複数の圧電カンチレバーは、各圧電カンチレバーの両端部が隣り合うように並んで配置されて、各々の屈曲変形を累積するようにそれぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように端部が機械的に連結され、各圧電カンチレバーは、各圧電カンチレバーの並び方向に直交する方向に屈曲変形するように形成され、
前記圧電体は、前記各圧電カンチレバーで支持される第1圧電体と第2圧電体とからなり、
前記複数の電極は、前記第1圧電体と前記第2圧電体とにそれぞれ独立に電圧を印加できるように構成され、
前記第1圧電体に電圧が印加されることにより、前記ミラー部を前記複数の圧電カンチレバーの並び方向に平行な第1軸の周りに駆動し、
前記第2圧電体に電圧が印加されることにより、前記ミラー部を前記第1軸と直交する第2軸の周りに駆動することを特徴とする光偏向器。
【請求項2】
請求項1に記載の光偏向器において、
前記複数の電極は、
前記複数の圧電カンチレバーのうち前記ミラー部側からその反対側に向かって奇数番目の圧電カンチレバーに支持された第1圧電体に電圧を印加できる第1電極と、
前記複数の圧電カンチレバーのうち前記ミラー部側からその反対側に向かって偶数番目の圧電カンチレバーに支持された第1圧電体に電圧を印加できる第2電極と、
前記各圧電アクチュエータの一方の各圧電カンチレバーに支持された第2圧電体に電圧を印加できる第3電極と、
前記各圧電アクチュエータの他方の各圧電カンチレバーに支持された第2圧電体に電圧を印加できる第4電極とで構成され、
隣り合う圧電カンチレバー同士が互いに逆方向に屈曲変形するように前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加することにより、前記ミラー部を前記複数の圧電カンチレバーの並び方向に平行な第1軸の周りに駆動し、
前記一対の圧電アクチュエータのうち一方が有する複数の圧電カンチレバーがそれぞれ同一方向に屈曲変形し、他方が有する複数の圧電カンチレバーがそれぞれ前記同一方向とは逆方向に屈曲変形するように前記第3電極及び前記第4電極に電圧を印加することにより、前記ミラー部を前記第1軸と直交する第2軸の周りに駆動することを特徴とする光偏向器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光偏向器において、
前記圧電体は、更に前記各圧電カンチレバーで支持される第3圧電体も含み、
前記複数の電極は、前記第1圧電体と前記第2圧電体とに電圧を印加できる電極とは独立に、前記第3圧電体が屈曲変形することで発生する電圧を出力できるように構成され、
前記屈曲変形することで発生する電圧に応じて、前記ミラー部の前記第1軸の周りの駆動及び前記第2軸の周りの駆動を補正することを特徴とする光偏向器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光偏向器において、前記複数の電極に交流電圧を印加して前記ミラー部を駆動する場合、第2軸の周りに駆動するときの固有振動数が、第1軸の周りに駆動するときの固有振動数に比べて互いに影響を与えない程度に大きく設定されていることを特徴とする光偏向器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光偏向器において、前記第1圧電体に交流電圧を印加する場合には、前記ミラー部が第1軸の周りに駆動するときの固有振動数に合わせた周波数の交流電圧を印加することを特徴とする光偏向器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光偏向器において、前記第2圧電体に交流電圧を印加する場合には、前記ミラー部が第2軸の周りに駆動するときの固有振動数に合わせた周波数の交流電圧を印加することを特徴とする光偏向器。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−203079(P2012−203079A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65578(P2011−65578)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】