説明

光充電可能な電気二重層キャパシタ

【課題】電荷輸送層の液状電解質によるウエットな環境下においても、発電を担う光電極での多孔質半導体微粒子層と導電性基板との密着性(ウエット剥離耐久性)を長期間維持することができる色素増感型光電変換素子の経済性に優れた製造方法及び当該光電変換素子、並びに当該光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】透明導電性基板11上に、色素増感された半導体微粒子層12からなる光電極1、電解液層2及び対極3をこの順で有する光電変換素子と、一対の分極性電極と電解液との界面で形成される電気二重層を利用する電気二重層キャパシタとを、該光電変換素子の対極を一対の分極性電極の一方として機能させて積層した光充電可能な電気二重層キャパシタである。前記電気二重層キャパシタの電解液が、ジアルキルグリコールエーテルを溶媒とし、イミダゾリウム塩を溶質とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光充電可能な電気二重層キャパシタに関するものであり、特に充放電の繰り返しで電気特性の変化が少なく、さまざまな環境下に長期間放置されても初期特性の変化が少ない光充電可能な非水電解液を用いた非水系電気二重層キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、誘電物質を用いたキャパシタに比べて、電気エネルギーの入出力特性に優れ、半永久的な充放電反復寿命を持つという特徴を有している。このため、電気自動車、補助電源等のエネルギー貯蔵装置として有望である。しかしながら、Li電池、Ni電池などの二次電池に比べてエネルギー密度が低く、エネルギー密度の向上が求められている。その中で、非水系電気二重層キャパシタは、水系電気二重層キャパシタに比べて耐電圧性が高いことからエネルギー容量を高くできるという特徴を持つ。
【0003】
非水系電気二重層キャパシタは、活性炭などの炭素質材料を主体とする正、負極の分極性電極および非水電解液から構成される。非水系電気二重層キャパシタのキャパシタンスには非水系電解液の組成が大きな影響を及ぼすことが知られている。非水電解液は、電解質塩と非水系有機溶媒とから構成され、これら電解質塩および非水系有機溶媒の組み合わせについては、現在まで種々検討されてきている。
特に、電解質塩としては、第4級アンモニウム塩(特許文献1、特許文献2、特許文献3)や、第4級ホスホニウム塩(特許文献4)等が、有機溶媒への溶解性および解離度、ならびに電気化学的安定域が広いことからよく用いられている。また、イオン性液体であるジアルキルイミダゾリウム塩を電解質塩として用いた例も報告されている(特許文献5、特許文献6)。
【0004】
ところで、太陽電池の電力を貯蔵し、光の照射がない場合にも電力を供給し得る太陽エネルギー貯蔵システムとして、発電から蓄電までを通じたエネルギー効率の低下を極力押さえることができる、光電変換素子と蓄電素子を単一の素子構成に一体化した光充電可能な素子として、「光キャパシタ」が考案され、その原理が開示されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。これらの光キャパシタは蓄電材料に活性炭を用い、電極基板には導電性ガラス基板を用いており、活性炭の特徴である電気二重層による静電的充電機能を素子に内蔵したものである。また、素子を軽量かつ柔軟にした構造のフィルム型光キャパシタも提案されている(特許文献7、特許文献8、特許文献9)。
【0005】
しかしながら、上記電気二重層キャパシタ、光充電可能な「光キャパシタ」のいずれにおいても電解液として、イオン性液体であるジアルキルイミダゾリウム塩を用いた場合、空気中の湿気等に敏感で取り扱いが難しく、さまざまな環境下に長期間放置されると初期特性の変化が大きいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−32509号公報
【特許文献2】特開昭63−173312号公報
【特許文献3】特開平10−55717号公報
【特許文献4】特開昭62−252927号公報
【特許文献5】特開平6−61095号公報
【特許文献6】特開2002−110472号公報
【特許文献7】特開2003−79031号公報
【特許文献8】特開2004−221531号公報
【特許文献9】特開2006−332469号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nature誌,1991年,第353巻,737頁
【非特許文献2】Applied Physics Letters誌,2004年,第85巻,3932頁
【非特許文献3】Chemical Communications誌,2005年,3346頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、このような事情のもとに、充放電の繰り返しで電気特性の変化が少なく、さまざまな環境下に長期間放置されても初期特性の変化が少ない光充電可能な非水電解液を用いた非水系電気二重層キャパシタを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の課題は、本願発明を特定する下記の事項およびその好ましい態様により達成できる。
【0010】
(態様1) 透明導電性基板上に、色素増感された半導体微粒子層からなる光電極、電解液層及び対極をこの順で有する光電変換素子と、一対の分極性電極と電解液との界面で形成される電気二重層を利用する電気二重層キャパシタとを、該光電変換素子の対極を一対の分極性電極の一方として機能させて積層した光充電可能な電気二重層キャパシタである。
【0011】
(態様2) 前記電気二重層キャパシタの電解液が、下記一般式(1)に示すジアルキルグリコールエーテルを溶媒とし、下記一般式(2)に示すイミダゾリウム塩を溶質とする態様(1)に記載した光充電可能な電気二重層キャパシタである。
【化1】

(1)
式(1)において、R11、R12は、炭素数1〜4のアルキル基であり、nは、2〜10の整数である。
【化2】

(2)
式(2)において、R21、R22は、炭素数1〜4のアルキル基、R23は、水素または炭素数1〜4のアルキル基、Xは、BF、PF6である。
【0012】
(態様3) 前記電気二重層キャパシタの電解液、及び前記光電変換素子の電解液が、前記一般式(1)に示すジアルキルグリコールエーテルを溶媒とする態様(1)に記載した光充電可能な電気二重層キャパシタである。
【0013】
(態様4) 前記一般式(1)に示す化合物が、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルである態様(2)又は態様(3)に記載した光充電可能な電気二重層キャパシタである。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によって、光照射により発生した光起電力によって充電を行う光充電型電気二重層キャパシタを提供できる。また、充放電の繰り返しでも電気特性に変化がなく、過酷なサーモ条件後でも初期性能変化が少ない光充電型電気二重層キャパシタも提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の光充電型電気二重層キャパシタの一例の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明の光充電型電気二重層キャパシタについて説明する。
図1に示すように、本願発明の光充電型電気二重層キャパシタは、透明導電性支持体11上に、色素増感された半導体微粒子層12を形成した光電極1、電解液層2及び対極3(以下、これを「内部対極3」という。)をこの順で有する光電変換素子部分と、内部対極3を正極の分極性電極とし、他方を負極の分極性電極(以下、これを「外部対極4」という。)とする一対の分極性電極とその間に挟持されたキャパシタ電解液を含むセパレータ5からなる電気二重層キャパシタ部分で構成されている。光電変換素子部分及び電気二重層キャパシタ部分には、電解液層2からの電解液及びキャパシタ電解液の漏洩を防ぐための封止層6が形成されている。
透明導電性支持体11は透明プラスチック基板111と透明導電層112で構成されている。内部対極3(正極の分極性電極)は、電解液層2側から触媒電極層31、集電基板32、蓄電層33の順で構成されている。外部対極4(負極の分極性電極)は、集電基板41と蓄電層42から構成されている。
【0017】
[1] キャパシタ電解液
本願発明の光充電型電気二重層キャパシタ電解液は、基本的に非水系有機溶媒とイオン液体(常温溶融塩)とから構成されている。
(1)電解液溶媒
本願発明の電解液溶媒は、前記一般式(1)に示すジアルキルグリコールエーテルである。非水系電気二重層キャパシタに用いられる非水系溶媒としては、イオン性液体を溶解することができ、分子径が小さく、電気二重層キャパシタの作動電圧範囲で安定であり、誘電率が大きく、電気化学的安定性が広く、使用温度範囲が広く安全性に優れているものが広く用いられている。しかしながら、充放電の繰り返しでも電気特性に変化がなく、過酷なサーモ条件後でも初期性能変化が少ないという特性を充たすためには、前記一般式(1)に示すジアルキルグリコールエーテルが好ましい。充放電の繰り返しでも電気特性に変化がなく、過酷なサーモ条件でも初期性能変化が少ない、すなわち、高温高湿耐久性が高いという特性は、素材の加水分解安定性に優れるジアルキルグリコールエーテルにより充たすことができるからである。
【0018】
前記一般式(1)に示すジアルキルグリコールエーテルとして、具体的には、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等がある。本発明の電解液の溶質として用いる前記一般式(2)に示すイミダゾリウム塩の溶解性の観点からジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましく、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルがより好ましい。
【0019】
(2)電解液溶質
本願発明の電解液溶質は、前記一般式(2)に示すイミダゾリウム塩である。イミダゾリウム塩の陽イオンは、イミダゾリウム環の2つの窒素原子にアルキル基が結合した一価の陽イオンである。アルキル基として好ましいものは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基であり、具体的には、メチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等がある。
【0020】
また、イミダゾリウム環の2位、4位、5位については、無置換すなわち水素原子が結合しても良く、また好ましい置換基である炭素数1〜4のアルキル基が結合しても良い。また、イミダゾリウム環に結合したアルキル基の一部または全ては、相互に結合して環構造を形成しても良い。具体例としては、1,3−ジメチルベンゾイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルベンゾイミダゾリウム等がある。
【0021】
イミダゾリウム環のアルキル置換基の選択は非常に重要である。アルキル基に比較的低分子量の炭素数1〜4のアルキル基を使用することで、電解液溶質の移動度は高くなる。また、イミダゾリウム環の2つの窒素原子に結合するアルキル基を互いに異なるアルキル基とすることで分子の対称性が低下するため、溶質のイオン解離度が向上して、イオン伝導を担うキャリア-の数が増加することになる。
【0022】
イミダゾリウム塩の陰イオンは、本発明の非水溶媒が前記一般式(1)に示すジアルキルグリコールエーテルであることから、溶媒中の解離度、安定度及び移動度を考慮すると、四フッ化ホウ酸イオン(BF)、六フッ化リン酸イオン(PF)を用いることが好ましく、汎用性が高く、六フッ化リン酸イオン(PF)よりも水の影響を受けにくく、扱い易いという点から四フッ化ホウ酸イオン(BF)がより好ましい。
【0023】
(3)その他の成分
なお、本願発明に用いられる電解液には、上記溶媒、溶質のほか、界面活性剤、分解抑制剤、脱水剤、難燃剤等の一般的な電解液に用いられる各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は、特に限定されるものではない。
【0024】
[2] 分極性電極
(1) 蓄電層
本願発明の電気二重層キャパシタに用いられる分極性電極に用いる蓄電層を構成する材料は、酸化還元活性があり酸化還元反応によって電気エネルギーを蓄えることのでき、電解液に対して電気的に不活性で、かつ比表面積の大きな無機又は有機の電極活性物質を使用することができる。
無機の電極活性物質としては、黒鉛、活性炭粉末、メソフェーズピッチ、活性炭素繊維、カーボンナノチューブ等の炭素材料がある。これらは電解液の含浸と酸化還元反応によって活性を得る。また、ルテニウム、インジウム、ニッケル、スズ、コバルト、バナジウム、ジルコニウム、チタン、マンガン、タングステン等の金属酸化物、遷移金属酸化物、金属硫化物等も活性物質として使用できる。
有機の電極活性物質としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリチオフェン、ポリインドールなどの導電性高分子とその誘導体、ポリキノキサンとその誘導体、有機電荷移動錯体とそのオリゴマー等を用いることができる。また、これらの電極活性物質を電気二重層蓄電層用の炭素材料と混合して用いることもできる。
【0025】
(2) バインダーポリマー
分極性電極の蓄電層には、該蓄電層を固定する目的でバインダーポリマーを配合することができる。バインダーポリマーとしては、当該用途に使用できるポリマーであれば特に限定はなく、公知の種々のバインダーポリマーを使用することができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等を用いることができる。これらのバインダーポリマーの添加量は、上記電極活性物質100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
蓄電層組成物の調製方法は、特に限定はなく、溶媒を添加して溶液状に調製することもできる。このようにして得られた蓄電層組成物を集電用基板上に塗布することにより、分極性電極が得られる。塗布の方法は、特に限定されず、ドクターブレード、エアナイフ等の公知の塗布方法を適宜採用すればよい。また、蓄電層組成物を溶融混練した後に、押し出し成形してフィルム状とすることもできる。
【0026】
(3) 集電用基板
本願発明の内部対極、外部対極の集電用基板には、通常、電気二重層キャパシタに用いられるものを任意に選択して使用できる。内部対極として機能する正極集電基板には、アルミニウム箔または酸化アルミニウム箔を用いることが好ましく、外部対極として機能する負極集電基板には、銅箔、ニッケル箔または表面が銅メッキ膜若しくはニッケルメッキ膜にて形成された金属箔を用いることが好ましい。
かかる集電用基板を構成する箔の形状としては、薄い箔状、平面に広がったシート状、孔が形成されたスタンパブルシート状等を採用できる。また、箔の厚さとしては、通常、1〜200μm程度であるが、電極全体に占める蓄電層の密度及び電極の強度を考慮すると、8〜100μmが好ましく、特に8〜30μmがより好ましい。
【0027】
[3] セパレータ
本願発明の電気二重層キャパシタにおいては、一対の分極性電極間の短絡防止を目的として、液状電解液を含浸したセパレータを用いることができる。セパレータを設けた電気二重層キャパシタにおいては、電解液層はセパレータ層と一体化し、電解液層の厚みは、セパレータ層の厚みとほぼ同等である。
セパレータ層を形成する材料は電気的に絶縁性の材料であり、その形状はフィルム状、粒子状のいずれであってもよいが、フィルム状のセパレータを用いるのが好ましい。分離膜に用いる多孔性の樹脂フィルム、無機または有機材料からなる繊維状シートや不織布、一般的に電解コンデンサー紙と呼ばれるパルプを主原料とする多孔質シートがある。具体的には、ポリオレフィン不織布、クラフト紙、レーヨン繊維・サイザル麻繊維混抄シート、マニラ麻シート、ガラス繊維シート、セルロース系電解紙、レーヨン繊維からなる抄紙、セルロースとガラス繊維の混抄紙、またはこれらを組み合わせて複数層に構成したもの等である。なお、セパレータは、目的に応じてその表面を親水処理または疎水処理を施すことができる。
フィルム状セパレータの厚みは、80μm以下、好ましくは5μm〜50μm、より好ましくは5〜25μmである。また、フィルムの空孔率は40%〜85%が好ましい。
【0028】
[4] 光電極
本願発明の光電極1は、透明導電性基板11上と色素増感された半導体微粒子層12から構成されている。また、透明導電性基板11は、プラスチック基板111上に透明導電層112を積層して構成されている。以下順に説明する。
(1) 光電極用の透明導電性基板
本願発明の光電極用透明導電性基板に用いるプラスチック基板材料としては、無着色で透明性が高く、耐熱性が高く、耐薬品性ならびにガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好ましく選ばれる。この観点から、好ましい材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)などが用いられる。これらのなかでも化学的安定性とコストの点で特に好ましいものは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)であり、もっとも好ましいものはポリエチレンナフタレート(PEN)である。
【0029】
本願発明の光電極用透明導電性基板に用いる透明導電層としては、金属(例、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン)、炭素、導電性金属酸化物(例、酸化スズ、酸化亜鉛)または複合金属酸化物(例、インジウム‐スズ酸化物、インジウム−亜鉛酸化物)から形成できる。この中で高い光学的透明性をもつ点で導電性金属酸化物が好ましく、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)、酸化亜鉛、インジウム‐亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。最も好ましいものは、耐熱性と化学安定性に優れる、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)やインジウム‐亜鉛酸化物(IZO)である。
透明導電層の表面抵抗値は100Ω/□以下が好ましく、50Ω/□以下がより好ましく、30Ω/□以下がさらに好ましく、10Ω/□以下がさらにまた好ましく、5Ω/□以下が最も好ましい。透明基板上に透明電極層を設けた光電極基板の光透過率(測定波長:500nm)は、60%以上が好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、80%以上が最も好ましい。
【0030】
低い表面抵抗値を達成するためには、金属を用いることも好ましいが、透明でないという問題は金属メッシュ構造からなる透明導電性層を形成することにより解決できる。その際にはこの導電層には集電のための補助リードをパターニングなどにより配置させることができ、低抵抗の金属材料(例、銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケル)によって形成される。補助リードを含めた表面の抵抗値は好ましくは1Ω/□以下に制御することが好ましい。このような補助リードのパターンは透明基板に蒸着、スパッタリングなどにより形成し、さらにその上に酸化スズ、ITO膜、IZO膜などからなる透明導電層を設けることも好ましい。
【0031】
(2) 半導体微粒子
本願発明の多孔質半導体微粒子層は、ナノサイズの細孔が内部に網目状に形成されたいわゆるメソポーラスな半導体膜からなっている。多孔質半導体微粒子層を形成する半導体微粒子としては、金属の酸化物及び金属カルコゲニドを使用することができる。金属酸化物及び金属カルコゲニドを構成する金属元素としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、亜鉛、鉛、アンチモン、ビスマス、カドミウム、鉛などが挙げられる。
半導体材料は、n型の無機半導体が好ましい。例えば、TiO2、TiSrO3、ZnO、Nb2O3、SnO2、WO3、Si、CdS、CdSe、V2O5、ZnS、ZnSe、SnSe、KTaO3、FeS2、PbSを含む。TiO2、ZnO、SnO2、WO3、Nb2O3が好ましく、チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物およびこれらの複合体がさらに好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。これらの半導体粒子の一次粒子は、平均粒径が2nm〜80nmであることが好ましく、10nm〜60nmがさらに好ましく、2nm〜30nmが最も好ましい。
【0032】
(3) 半導体微粒子層
本願発明の光電変換素子において、上記の半導体粒子によって作られる多孔質半導体粒子層は、色素によって増感されているので色素を多孔質膜の表面に吸着分子として持っている。本願発明における色素増感多孔質半導体粒子層において、層内を空孔が占める体積分率で示される空孔率は、50%〜85%であることが好ましく、65%〜85%であることがさらに好ましい。
多孔質半導体粒子層は、2種類以上の微粒子群を含むことができる。2種以上の微粒子群は、例えば、粒径分布が異なるものであることができる。粒径分布が異なる2種類以上の微粒子群を含む場合、最も小さい粒子群の平均サイズは20nm以下が好ましい。この超微粒子に対して、光散乱により光吸収を高める目的で、平均粒径が200nmを越える大きな粒子を、質量割合として5質量%〜30質量%の割合で添加することが好ましい。
【0033】
光電極は、透明導電性基板(透明電極および透明導電層)および色素増感多孔質半導体粒子層からなり、透明導電層は実質的に無機酸化物または金属のみから構成され、色素増感多孔質半導体粒子層は、実質的に半導体と色素のみから構成されていることが好ましい。具体的には、透明電極層および色素増感多孔質半導体層から、無機酸化物、半導体および色素を除いた固形分の質量が、透明導電層および色素増感多孔質半導体粒子層の全質量に占める割合は、3%未満が好ましく、1%未満がさらに好ましい。
【0034】
光電極のプラスチック基板を用いて光電極の半導体膜を作製するに際しては、該基板の耐熱性の範囲内である低温条件下(例、200℃以下、好ましくは150℃以下)で半導体膜を形成する低温製膜技術により作製できる。このような低温製膜は、例えば、プレス法、水熱分解法、泳動電着法、バインダーフリーコーティング法により行うことができる。ここでバインダーフリーコーティング法とは、バインダー材料を用いないか用いとも極微量である量であり、粒子分散液をコーティングして作製する方法である。
【0035】
半導体微粒子層の厚みは、10μm未満が好ましく、8μ未満がより好ましい。半導体微粒子層の厚みが、かかる範囲より小さいと均一な厚みの層を形成できず、かかる範囲より大きいと半導体微粒子層の抵抗が高くなるからである。
【0036】
(4) 増感色素
半導体粒子層の増感に用いる色素分子としては、電気化学の分野で色素分子を用いる半導体電極の分光増感にこれまで用いられてきた各種の有機系、金属錯体系の増感材料が用いられる。また、光電変換の波長領域をできるだけ広くし、かつ、変換効率を上げるために、二種類以上の色素を混合して用いてもよく、光源の波長域と強度分布に合わせて、混合する色素とその混合割合を選択してもよい。
増感色素は、有機色素(例、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素)および金属錯体色素(例、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体)を含む。金属錯体色素を構成する金属の例は、ルテニウムおよびマグネシウムを含む。そのほか「機能材料」、2003年6月号、第5〜18ページに記載されている合成色素と天然色素や、「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)」、B.第107巻、第597ページ(2003年)に記載されるクマリンを中心とする有機色素を用いることもできる。
【0037】
(5) 半導体微粒子層への色素の吸着
半導体微粒子層に色素を吸着させる方法としては、色素の溶液中によく乾燥した半導体微粒子層を有する導電性基板を浸漬する方法、あるいは色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。浸漬法の場合は、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7−249790号公報に記載されているように加熱還流して行ってもよい。塗布法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等の塗布方法や、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等の印刷方法が利用できる。
【0038】
色素溶液に用いる溶媒は色素の溶解性に応じて適宜選択できる。例えばアルコール類(メタノール、エタノール、t‐ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3‐メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセタミド等)、N‐メチルピロリドン、1,3‐ジメチルイミダゾリジノン、3‐メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2‐ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)、これらの混合溶媒等が使用できる。
【0039】
色素の吸着方法では、色素溶液の粘度、塗布量、導電性支持体の材質、塗布速度等に応じて適宜選択すればよい。量産化の観点からは、塗布後の色素吸着に要する時間をなるべく短くすることが好ましい。色素の全使用量は、導電性支持体の単位表面積(1m)当たり0.01〜100mmolとすることが好ましい。色素の吸着量が少なすぎると増感効果が不十分となり、また色素の吸着量が多すぎると半導体微粒子に付着していない色素が浮遊し、増感効果を低減させる。色素の吸着量を増大させるために吸着前に半導体微粒子を加熱処理するのが好ましい。また、加熱処理の後に半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるため、加熱処理後には常温に戻さず半導体微粒子層の温度が40℃〜80℃で素早く色素を吸着させるのが好ましい。未吸着の色素は、吸着後速やかに洗浄により除去することが好ましい。洗浄は、アセトニトリルやアルコール系溶剤等の有機溶媒を用いて行うのが好ましい。
【0040】
会合のような色素同士の相互作用を低減する目的で、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素溶液に添加し、半導体微粒子に共吸着させてもよい。共吸着させる化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例 コール酸、ケノデオキシコール酸)が挙げられる。また、紫外線吸収剤を併用してもよい。また、余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。アミン類としてはピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよく、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0041】
[5] 光電変換素子の電解液層
光電変換素子の電解液層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電解液からなる層である。光電極層は、その多孔構造中の空孔が電解液により充填されていることが好ましい。具体的に、光電極層が有する空孔が電解液によって充填されている割合は、20体積%以上が好ましく、50体積%以上がさらに好ましい。電解液層の厚さは、例えば、光電極層と対向電極層との間に設けるスペーサーの大きさによって調整できる。電解液が光電極の外側で単独で存在する部分の厚さは、1μm〜50μmが好ましく、1μm〜30μmがより好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、1μm〜15μmが最も好ましい。
電解液層の光透過率は、測定波長400nmにおいて、電解液層の厚さが30μmである場合に換算して(30μmの光路長において)70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが最も好ましい。光透過率は、350nm〜900nmの波長領域全体において、上記の透過率を有することが好ましい。本願発明の電解液層を形成するには、キャスト法、塗布法、浸漬法等により光電極層上に電解液を塗布する方法や、光電極と対向電極を有するセルを作製しその隙間に電解液を注入する方法などが挙げられる。
【0042】
塗布法によって電解液層を形成する場合、溶融塩等を含む電解液に塗布性改良剤(レベリング剤等)等の添加剤を添加して、これをスピンコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法、多層同時塗布方法等の方法により塗布し、その後必要に応じて加熱すればよい。加熱する場合の加熱温度は色素の耐熱温度等により適当に選択すればよいが、通常10℃〜150℃であるのが好ましく、10℃〜100℃であるのが更に好ましい。加熱時間は加熱温度等にもよるが、5分〜72時間程度が好ましい。
好ましい態様によれば、光電極層中の空隙を完全に埋める量より多い電解質液を塗布するので、図1に示すように得られる電解液層は光電極層の透明導電層との境界から対向電極層の透明導電層との境界までの間に存在する。ここで、電解液層の厚さ(半導体粒子層を含まない)は0.001μm〜200μmであるのが好ましく、0.1μm〜100μmであるのが更に好ましく、0.1〜50μmであるのが特に好ましい。なお、電解液層の厚さ(実質的に電解液を含む層の厚さ)は0.1μm〜300μmであるのが好ましく、1μm〜130μmであるのが更に好ましく、2μm〜75μmであるのが特に好ましい。
【0043】
本願発明では、光電変換素子の電解液層を構成する電解液として、上述した電気二重層キャパシタに採用する非水系有機溶媒から構成されることが好ましい。過酷なサーモ条件でも初期性能変化が少ない、すなわち、高温高湿耐久性が高いという特性を充たすことができるからである。なお、酸化還元対を生成させるために電解質組成物にヨウ素等を導入する場合、前述の電解質の溶液に添加する方法や、電解液層を形成した支持体をヨウ素等と共に密閉容器内に置き、電解質中に拡散させる手法等が使用できる。また、対向電極にヨウ素等を塗布又は蒸着し、光電変換素子を組み立てたときに電解液層中に導入することも可能である。なお、電解液層中の水分は10000ppm以下であるのが好ましく、更に好ましくは2000ppm以下であり、特に好ましくは100ppm以下である。
【0044】
[6] その他の層
光電極に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法が利用できる。本願発明のフィルム型光電池には、上記の基本的層構成に加えて所望に応じさらに各種の層を設けることができる。例えば導電性プラスチック支持体と多孔質半導体層の間に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として設けることができる。下塗り層として好ましいのは金属酸化物であり、たとえばTiO、SnO、Fe3、WO、ZnO、Nbなどである。下塗り層は、例えばElectrochim.Acta
40、643‐652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス法の他、スパッタ法などにより塗設することができる。下塗り層の好ましい膜厚は5〜100nmである。
光電極の外側表面、導電層と基板の間又は基板の中間に、保護層、反射防止層、ガスバリアー層などの機能性層を設けてもよい。これらの機能性層は、その材質に応じて塗布法、蒸着法、貼り付け法などによって形成することができる。
【0045】
本願発明の光充電型電気二重層キャパシタの全体の厚さは、機械的フレキシブル性と性能安定性を保証する目的から、150μm〜500μm、好ましくは250μm〜450μmが好ましい。
【実施例】
【0046】
次に本願発明を実施するための態様を実施例として以下に示す。また、評価結果一覧を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
(1) 光電極の作製
結晶性二酸化チタンナノ粒子(昭和電工社製,ルチル、アナターゼ混合型,平均粒径20nm)を超純水とイソプロピルアルコールを用いて十分に洗浄した後、tert−ブチルアルコール(純度99.5%以上)とアセトニトリル(純度99.5%以上)の混合溶媒(質量比95:5)100mlに30gを撹拌分散し、この分散液に粒径5nmの二酸化チタン粒子を水とエチルアルコールの混合溶媒(質量比50:50)に分散した酸性のゾル液(濃度8質量%)を10質量%添加し、得られた混合分散液を自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使って均一に混合し、粘性のペーストを調製した。このチタニアペーストを、ITO膜を片面に被覆した透明導電性のポリエチレンナフタレート(ITO−PEN)フィルム(厚み125μm、表面抵抗10Ω/□)のITO面にドクターブレード法によって塗布し、40℃で20分乾燥し、多孔性の二酸化チタン粒子層をn型半導体層としてITO−PEN集電体上に形成した。粒子層の膜厚みは10μm、表面粗さ係数は950、空孔率は70%であった。
【0049】
作製した多孔性二酸化チタン電極の表面を色素吸着によって増感させて、色素増感二酸化チタン電極とした。増感色素にはRuビピリジル錯体(Solaronix社製、Ru535)を用い、色素を3×10-4mol/リットル含むアセトニトリルとtert−ブチルアルコール混合溶媒(質量比1:1)の溶液に二酸化チタン被覆ITO−PEN電極を浸漬し、40℃で1時間振とう攪拌し、増感色素を二酸化チタン粒子に吸着させた。
【0050】
(2) 光電変化素子用電解液層の形成
溶媒としてトリエチレングリコールジメチルエーテル、溶質としてヨウ化ナトリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、N−メチルベンゾイミダゾールを各0.4mol/Lを含む電解液を光電変換素子用の電解液として作成した。
【0051】
(3) 内部対極(正極の分極性電極)の作成
BET比表面積が1100m2/g、一次粒子の平均粒系が0.03μmの多孔質の活性炭(活性炭素繊維)をバインダーのポリフッ化ビニリデンのN−メチルピロリドン溶液と質量比10:1で混合してペーストを調製し、ペーストを両面に白金層を形成した50μmのチタン箔上に塗布して、活性炭を0.2mg/cm2の被覆量で担持した。活性炭を被覆した電極フィルムを乾燥空気中で150℃のもとで1時間加熱処理を行った。このようにして得られた炭素被覆二酸化チタン正極の表面粗さ係数は550であった。
【0052】
(4) 外部対極(負極の分極性電極)の作製
負極の集電体として膜厚500nmのアルミニウムを片面に被覆したPENフィルム(厚さ125μm)を用いた。上記の正極で用いた活性炭の粉末、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンのN−メチルピロリドン溶液を質量比9:1:1で混合し、得られたペーストをアルミニウム表面上に塗布し60℃で乾燥後プレスすることによって、活性炭を含む膜厚10μmの炭素層を被覆した。この負極フィルムをさらに乾燥空気中で150℃のもとで1時間加熱処理を行った。このようにして得た活性炭を被覆した負極の表面粗さ係数は800であった。
【0053】
(5) 光キャパシタの組み立て
電気二重層キャパシタ電解液として、表1の実施例及び比較例(No.1〜No.30)に示す溶媒と電解質からなる溶液を用いた。多孔性ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm、空孔率70%)をセパレータとして用いて、上記の正極と負極の両極間にセパレータを挿入して、両極を挟み、両極間に40℃条件下で前記電解液を注入した。両極のエッジ部にエポキシ系熱硬化型シール剤を注入し、110℃で20分間硬化処理を行った。同様に、前記光電変換素子用電解液を前記光電極と前記内部対極の間に注入し、両極のエッジ部にエポキシ系熱硬化型シール剤を注入し、110℃で20分間硬化処理を行った。このようにして、厚みが約500μm、正極と負極の有効電極面積ならびに正極の有効受光面積が1cm2のフィルム型の光キャパシタを組み立てた。
【0054】
(6) 光キャパシタの性能評価
組み立てた電気二重層キャパシタを用い、0.8Vにて1800秒間低電圧充電を行って内部抵抗、静電容量の初期値を測定した。その後、300秒間休止させた後、電流1mAにおけるセル電圧が0Vになるまで定電流放電を行った。電圧0V後は、電圧0Vの定電圧放電を300秒間行って完全にセルを放電させた。このサイクルを1サイクルとして、室温下で1000サイクルの繰り返し測定を行った。1000サイクル後の静電容量値を初期値からの低下率で比較することにより、繰り返し充放電後の耐久性を評価した。
繰り返し充放電後の変化率(%)={充放電1000サイクル後の静電容量(Fg-1)/静電容量初期値(Fg-1)}×100
【0055】
(7) 光キャパシタの湿熱耐久性評価
組み立てた電気二重層キャパシタを環境試験装置(エスペック製 SH−241)にて、湿熱条件(60℃80%RH)下に500時間放置した後、放置後の静電容量を初期値からの変化率で比較することにより、湿熱耐久性を評価した。
湿熱処理後の静電容量低下率(%)={湿熱処理(60℃80%RH,500h)後の静電容量(Fg-1)/静電容量初期値(Fg-1)}×100
【0056】
(8) 評価結果
表1の結果から以下のことが明らかである。
1.電解質として本発明の陽イオンを有するイミダゾリウム塩を使用した場合は、それ以外の陽イオンを有するイミダゾリウム塩より静電容量の初期値が高く、電気二重層キャパシタとして優れた性能を有する(実施例1−1〜1−4と比較例1−1〜1−3の比較)。
【0057】
2.電解質として本発明の陽イオンを有するイミダゾリウム塩を使用した場合は、電気二重層キャパシタ用電解質として一般的に知られている化合物を使用した場合より、本発明のジアルキルグリコールエーテル溶媒に対する溶解性が特異的に良く電気二重層キャパシタとして優れた性能を有する(実施例1−1〜1−4と比較例1−4〜1−10の比較)。
【0058】
3.電解質として本発明の陰イオンを有するイミダゾリウム塩を使用した場合は、それ以外の陰イオンを有するイミダゾリウム塩より、本発明のジアルキルグリコールエーテル溶媒に対する溶解性が特異的に良く、電気二重層キャパシタとして優れた性能を有す(実施例1−1、2−1と比較例2−1〜2−4の比較)。
【0059】
4.溶媒として本発明のジアルキルグリコールエーテル溶媒を使用した場合は、他のグリコールエーテル溶媒を使用した場合に比べ、静電容量の初期値が高く、電気二重層キャパシタとして優れた性能を有する。(実施例1−1、3−1〜3−3と比較例3−1〜3−3の比較)。
【0060】
5.溶媒として本発明のジアルキルグリコールエーテル溶媒を使用した場合は、電気二重層キャパシタ用溶媒として一般的に知られている溶媒を使用した場合に比べ、静電容量の初期値及び繰り返し充放電後の静電容量変化は同等であるが、60℃80%環境下に保存した後の静電容量(初期値)変化が特異的に小さく、ウエット環境下に保存された場合にも静電容量変化が少ない優れた性能を有する(実施例1−1、3−1〜3−3と比較例3−4〜3−7の比較)。
【0061】
以上の結果から、本発明の構造を有するジアルキルグリコールエーテルを溶媒として使用し、本発明の構造を有するイミダゾリウム塩を電解質として使用した場合、電気二重層キャパシタとして静電容量初期値が高く、繰り返し充放電後の性能変化及び湿熱環境(60℃80%RH,500h)下に保存した時の性能低下が少ない湿熱耐久性に優れた電気二重層キャパシタが得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
蓄電可能な太陽電池として、電気エネルギー供給に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 光電極
11 透明導電性基板
111 透明プラスチック基板
112 透明導電層
2 電解液層
3 内部対極
31 触媒電極層
32 集電基板
33 蓄電層
4 外部対極
41 集電基板
42 蓄電層
5 セパレータ
6 封止層





【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性基板上に、色素増感された半導体微粒子層からなる光電極、電解液層及び対極をこの順で有する光電変換素子と、一対の分極性電極と電解液との界面で形成される電気二重層を利用する電気二重層キャパシタとを、該光電変換素子の対極を一対の分極性電極の一方として機能させて積層した光充電可能な電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記電気二重層キャパシタの電解液が、下記一般式(1)に示すジアルキルグリコールエーテルを溶媒とし、下記一般式(2)に示すイミダゾリウム塩を溶質とする請求項1に記載した光充電可能な電気二重層キャパシタ。
【化3】

(1)
式(1)において、R11、R12は、炭素数1〜4のアルキル基であり、nは、2〜10の整数である。
【化4】

(2)
式(2)において、R21、R22は、炭素数1〜4のアルキル基、R23は、水素または炭素数1〜4のアルキル基、X−は、BF4−、PF6− である。
【請求項3】
前記電気二重層キャパシタの電解液、及び前記光電変換素子の電解液が、前記一般式(1)に示すジアルキルグリコールエーテルを溶媒とする請求項1に記載した光充電可能な電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記一般式(1)に示す化合物が、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルである請求項2又は請求項3に記載した光充電可能な電気二重層キャパシタ。


【図1】
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【公開番号】特開2012−204418(P2012−204418A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65129(P2011−65129)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504345953)ペクセル・テクノロジーズ株式会社 (30)
【Fターム(参考)】