説明

光処理のためのメタマテリアル構造及び光を処理する方法

光処理のためのメタマテリアル構造(100、700a、700b、700c)が、光導波路(104、704a、704b、704c)と、共振周波数を有する複合共振電磁(EM)構造(102、202、302、402)とを備える。複合共振EM構造は、光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、その光の周波数を共振周波数にアップコンバートし、これによって光周波数の2次高調波及びさらに高次の高調波が生成されるように構成される。光を処理するための方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光処理システムでは、非線形材料の結晶を用いて、光の周波数を変更し、したがって波長も変更して、所望の周波数の光を生成することができる。たとえば、結晶を、結晶に入射する光の周波数を2倍にして波長を半分にする周波数逓倍器として用いることができる。その過程は、2次高調波生成と呼ばれる。そのような結晶では、低い入射光強度では、2次高調波変換効率は低いが、入射光強度を高めると変換効率も高くなる。しかしながら、そのような2次高調波生成の効率は典型的には低い。
【発明の概要】
【0002】
したがって、高い効率の高調波変換を与えることができる光処理システム及び方法を提供することが望ましいであろう。
【0003】
光処理のためのメタマテリアル構造の1つの例示的な実施の形態は、光導波路と、共振周波数ωRを有する複合共振電磁(EM)構造であって、複合共振EM構造は、光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、その光の周波数ωをωRにアップコンバートし、これによってωの2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成されるように配置される、複合共振電磁構造とを備える。
【0004】
光処理のためのメタマテリアル構造の別の例示的な実施の形態は、第1の光導波路と、第2の光導波路と、第3の光導波路と、第1の共振周波数ωR1を有する第1の複合共振電磁(EM)構造であって、第1の複合共振EM構造は、第1の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、その光の周波数ω1をωR1にアップコンバートし、これによってω1の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成されるように配置される、第1の複合共振電磁構造と、第2の共振周波数ωR2を有する第2の複合共振電磁構造であって、第2の複合共振EM構造は、第2の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、その光の周波数ω2をωR2にアップコンバートし、これによってω2の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成されるように配置される、第2の複合共振電磁構造と、第3の共振周波数ωR3を有する第3の複合共振電磁構造であって、第3の複合共振EM構造は、第3の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、光の周波数ω3をωR3にアップコンバートし、これによってω3の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成されるように配置される、第3の複合共振電磁構造とを備える。
【0005】
メタマテリアル構造を用いて光を処理する方法の1つの例示的な実施の形態は、第1の共振周波数ωR1を有する第1の複合共振電磁(EM)構造を貫通して延在する第1の光導波路に沿って光を伝搬させることを含み、第1の複合共振EM構造は、第1の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、その光の周波数ω1をωR1にアップコンバートし、これによってω1の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】メタマテリアル構造を含む、光処理システムの1つの例示的な実施形態を示す。
【図2】スプリットリング共振器を含む、メタマテリアル構造の別の例示的な実施形態を示す。
【図3】プリントナノ共振器を含む、メタマテリアル構造の別の例示的な実施形態を示す。
【図4】穴の周期的な配列を有する、メタマテリアル構造の別の例示的な実施形態を示す。
【図5】金属−絶縁体−金属3層構造を含む、メタマテリアル構造の電磁応答を示す。
【図6】図5の右側に示されるメタマテリアル構造の一部の拡大図である。
【図7】3つのメタマテリアル構造及び3つの関連する光源を含む、光処理システムの別の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
メタマテリアル構造100の1つの例示的な実施形態が図1に示される。メタマテリアル構造100は、光導波路104に沿って配置される複合共振電磁(EM)構造102を備える。図に示されるように、そのメタマテリアル構造100は、光源106も含む光処理システム内に設けられる。光源106は、光を光導波路104内に放射するように構成される。光源106のタイプによるが、光は単色であり(たとえばレーザ光)、概ね単一の周波数だけを含むことができるか、又は光は、或る範囲の周波数を含むことができる(たとえば、広帯域光)。光は光導波路104に沿って伝搬し、複合共振EM構造102と相互作用する。オプションの共振器108が、複合共振EM構造102の両端に設けられる。オプションの外側クラッディング110が、複合共振EM構造102を包囲する。
【0008】
複合共振EM構造102は、固有共振周波数ωRを有する。複合共振EM構造102は、入射光の周波数ωを、共振周波数ωRにアップコンバートする。このアップコンバージョン過程は、入射光の高調波を生成する。高調波は、2次高調波及び/又はさらに高次の高調波とすることができる。複合共振EM構造102によって変換される光周波数ωは、広帯域光源によって放射される周波数範囲内に含まれる周波数、又は単色光源によって放射される単一の周波数とすることができる。
【0009】
複合共振EM構造の実施形態は、共振周期メタマテリアル構造を含む。図1に示される実施形態では、複合共振EM構造102は、光導波路104の長さの少なくとも一部に沿って配置される金属ナノ共振器112を含む。ナノ共振器112は、高い電界を生成し、それにより、複合共振EM構造102の非線形応答を引き起こす。
【0010】
図1に示される実施形態では、金属ナノ共振器112はナノサイズの粒子である。ナノサイズの粒子は、十分に高い導電率を与える任意の金属から構成することができる。損失を最小限に抑えることができるように、その金属は高い導電率(低い抵抗率)を有することが好ましい。たとえば、その金属は、4μΩ・cm、3μΩ・cm、2μΩ・cm又は1μΩ・cmのような5μΩ・cm未満の低い抵抗率を有することができる。その金属は、たとえば、Ag、Au、Al若しくはCu、又はそれらの合金とすることができる。ナノサイズの粒子は、シリコンのような半導体材料から、又はカーボンナノチューブのような非金属材料から構成することもできる。ナノサイズの粒子は単結晶とすることができ、粒界効果を排除することができる。
【0011】
図1に示されるナノサイズの粒子は球形である。他の実施形態では、ナノサイズの粒子は、チューブ、ファイバ、ワイヤ、プレート、ロッド及びリングのような他の形状を有することができる。ナノサイズの粒子は、たとえば、約10nm〜約200nmの最大寸法(たとえば、直径又は長さ)を有することができる。
【0012】
ナノサイズの粒子は、任意の適当な技法によって形成することができる。たとえば、ナノサイズの粒子は、核形成及び核成長、沈殿、レーザアブレーション、界面活性剤を利用した成長、電気化学合成、化学蒸着核形成、電子ビーム蒸着、又はフォトリソグラフィ技法によって形成することができる。ナノサイズの粒子を形成するために用いられる具体的な技法は、ナノサイズの粒子の所望の組成、形状及び/又はサイズによる。
【0013】
その実施形態では、ナノ共振器112は非線形媒体114に埋め込まれる。非線形媒体114は、光導波路104のテーパ部分116を取り囲み、ナノ共振器112は、テーパ部分116に沿って配置される。非線形媒体114は、有機材料、無機材料、又はその混合物から構成される絶縁体である。たとえば、非線形媒体114は、セラミック材料、又はプラスチック、ポリメチルメタクリレート(PMMA)若しくはポリエステルのようなポリマーとすることができる。非線形媒体114は、成形のような任意の適当な工程によって、光導波路104の周囲に形成することができる。代替的に、非線形媒体は、光導波路104に巻き付けることができる。その実施形態では、非線形媒体114は、外側表面118を有する概ね円筒形の構成を有することができる。他の実施形態では、非線形媒体114は、正方形、長方形、三角形等の他の外側表面形状を有することができる。
【0014】
図1に示されるように、ナノ共振器112は、プラズモン導波路の形で、複合共振EM構造102の軸方向(長さ)に沿って配置される。ナノ共振器間の矢印は、電界効果を示す。ナノ共振器112は、複合共振EM構造102の軸方向に沿って概ね等間隔に配置することができる。ナノ共振器112は、約25μm〜約100μmの距離だけ、光導波路104の外側表面から離隔して配置することができる。複合共振EM構造102の軸方向に沿ったナノ共振器112の数は、約5〜約100以上にすることができる。ナノ共振器112は、互いに概ね直線的に配置することができる。また、ナノ共振器112は、光導波路104の周囲にわたって円周方向に配置される。たとえば、プラズモン導波路を形成するナノ共振器112のグループを、光導波路104の外周にわたって30°、60°又は90°のような任意の適当な角度だけ互いに離隔して円周方向に配置することができる。
【0015】
他の実施形態では、共振周期メタマテリアル構造は、非線形媒体の内側表面、及び/又は外側表面上に設けられるナノ共振器を含むことができる。たとえば、図2は、非線形媒体214の外側表面218上に設けられるナノ共振器212(スプリットリング)を有する複合共振EM構造202の別の実施形態を示す。光の電界E及び磁界Hの方向が示される。ナノ共振器212は、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)によってポリマー(たとえば、プラスチック)上にプリントすること、ドライエッチングすること、及びロール・ツー・ロール工程において繊維に転写することを含む、種々の技法によって、外側表面218上に形成することができる。非線形媒体214は円筒形構成を有する。図2では、空孔220を貫通して延在する光導波路は、簡単にするために示されない。複合共振EM構造202は、光導波路のテーパ部分を包囲するように、図1に示される光導波路104のような光導波路上に配置することができ、ナノ共振器212がテーパ部分に沿って配置される。
【0016】
図3は、複合共振EM構造302の別の例示的な実施形態を示しており、ナノ共振器312(ナノロッド)が、非線形媒体302の外側表面318上に設けられ、共振周期メタマテリアル構造を形成する。この実施形態では、ナノ共振器312は、ナノインプリントリソグラフィ等によって、外側表面318上にプリントされる。非線形媒体314は、たとえば、その上でプリントを実行することができる任意の適当なポリマー材料から構成することができる。非線形媒体314は、シートの形をとることができる。非線形媒体314上にナノ共振器312がプリントされた後に、そのシートを丸めて、複合共振EM構造302の所望の構成を形成することができる。非線形媒体314は円筒形構成を有する。図3では、空孔320を貫通して延在する光導波路は、簡単にするために示されない。複合共振EM構造302は、光導波路のテーパ部分を包囲するように、図1に示される光導波路104のような光導波路上に配置することができ、ナノ共振器312がテーパ部分に沿って配置される。
【0017】
図4は、格子構造又は「魚網」構造の複合共振EM構造402の別の例示的な実施形態を示しており、その構造は外側表面418と、軸方向に延在する空孔420とを有する。図4に示されるように、その魚網構造は、複合共振EM構造402の外周にわたって、且つその長さに沿って延在する、穴422の周期的なアレイを含む。複合共振EM構造402は、光導波路のテーパ部分を包囲するように、図1に示される光導波路104のような導波路上に配置することができる。
【0018】
図5は、複合共振EM構造402の金属−絶縁体−金属3層構造の磁気応答を示す。複合共振EM構造402は、軸方向に延在する部分424と、円周方向に延在する部分426とを含み、それにより穴422が画定される。正方形の3層構造(左側)は磁気共振を与え、一方、細長いワイヤ状の3層(中央)は、電気(プラズモン)共振を与える。これらの3層を図5の右側に示される構造402において組み合わせることにより、同じ周波数範囲において磁気共振及び電気(プラズモン)共振の両方を有することができる材料が作り出される。
【0019】
図6に示されるように、部分424は幅Wyを有し、それは典型的には約50nm〜約150nmであり、また部分426は幅Wxを有し、それは典型的には約150nm〜約400nmである。穴422は、たとえば、円周方向において約600μmの距離だけ互いに離隔して、且つ軸方向において約500nm〜約600nmの距離だけ互いに離隔して配置することができる。穴422は、正方形及び長方形を含む種々の断面を有することができる。穴422は、それぞれ約300nm及び約500nmの例示的な長さ及び幅寸法を有することができる。
【0020】
図6に示されるように、複合共振EM構造402の実施形態は、第1の金属層428と、第1の金属層428上にある絶縁体層430と、絶縁体層430上にある第2の金属層432とを備える。第1の金属層428及び第2の金属層432は、十分に高い導電率を与える任意の金属から構成することができる。たとえば、その金属は、約4μΩ・cm、約3μΩ・cm、約2μΩ・cm又は、約1μΩ・cmのような約5μΩ・cm未満の低い抵抗率を有することができる。その金属は、たとえば、Ag、Au、Al若しくはCu、又はそれらの合金とすることができる。第1の金属層428及び第2の金属層432はそれぞれ、たとえば、約20nm〜約40nmの厚みを有することができる。
【0021】
絶縁体層430は、たとえば、SiO2、Al23、ポリマー(たとえば、ポリイミド)から構成することができる。絶縁体層430は、たとえば、約30nm〜約50nmの厚みを有することができる。他の金属/絶縁体材料の組み合わせを用いて、魚網構造の積層を形成することができる。
【0022】
複合共振EM構造402の層の数は変更することができる。たとえば、別の例示的な積層は、金属層/絶縁体層/金属層/絶縁体層/金属層の層配列を有することができる。
【0023】
図5及び図6に示される複合共振EM構造402の場合、3つ全ての層428、430及び432が形成された後に、その構造の中に穴422を形成することができる。そのような実施形態では、穴422は、3つ全ての層を貫通して位置合わせされ、第1の金属層428、絶縁体層430及び第2の金属層432を合わせた厚みに等しい深さを有する。
【0024】
別の実施形態では、穴422は、複合共振EM構造402の厚みの一部だけの中に延在することができる。たとえば、穴を含む第1の金属層上に、穴のない絶縁体層を形成することができ、その後、絶縁体層上に、穴を含む第2の金属層を形成することができる。その実施形態では、第1の金属層内の穴は、第2の金属層内の穴と概ね位置合わせされる。穴の中に絶縁材料が残存しているか否かによって、穴の中に絶縁体材料が残存していない構造に比べて、共振周波数がシフトする場合がある。
【0025】
複合共振EM構造402の層は、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)によってポリマー(たとえば、プラスチック)上にプリントすること、ドライエッチングすること、及びロール・ツー・ロール工程において繊維に転写することを含む、種々の技法によって形成することができる。
【0026】
そのメタマテリアル構造では、光導波路が、光源によって放射される伝播光を閉じ込めて、誘導する。赤外線方式では、InP/GaInAsP/InP等から構成される低屈折率コントラストプレーナ導波路のようなリッジ導波路構造を用いることができる。約1.1μm〜1.6μmの範囲内の赤外線波長をシリカファイバによって搬送することができる。光学方式では、導波路は、円形の断面を有する光ファイバのような、誘電体材料から形成することができる。別の実施形態では、光導波路は、フォトニックバンドギャップ結晶内の線欠陥チャネルとすることができる。
【0027】
図1に示される実施形態では、光導波路104は、円形の断面を有し、複合共振EM構造102内に配置されるテーパ部分116を有する光ファイバである。その光ファイバは、約1μm〜約50μmの例示的な直径を有することができ、テーパ部分116は、約0.3μm〜約15μmの例示的な直径を有することができる。テーパ部分116は、光導波路104によって搬送される光と複合共振EM構造102との結合を強めるように構成される。
【0028】
メタマテリアル構造では、光導波路は一体構造を有することができるか、代替的に、互いに結合される2つ以上の部分を含むことができる。光導波路は、光源106によって放射される周波数ωの光を複合共振EM構造102の中に搬送し、アップコンバージョン過程から生じる2次及び/又はさらに高次の高調波を搬送するマルチモードファイバとすることができる。高調波は、通信用途において利用することができる。
【0029】
別の実施形態では、光導波路は、複合共振EM構造102の出口端122までしか延在しない。この実施形態では、ディスプレイ又は映写の用途の場合のように、複合共振EM構造102から出る光を、ファイバを介して空中に放射し、エアカプラに結合することができる。
【0030】
複合共振EM構造102は、入力端124から出力端122まで、光が出力端124から出る前に光源106によって放射される光と実効的に相互作用するだけの十分な長さを有する。たとえば、複合共振EM構造102は、約5μm〜約150μmの長さを有することができる。
【0031】
図1に示される実施形態では、複合共振EM構造102の両端にある共振器108は、たとえば、ブラッグミラーとすることができる。
【0032】
図1に示される実施形態では、外側クラッディング110は光を反射し、複合共振EM構造102内の光の閉じ込めを高める。クラッディング110は、任意の適当な材料から構成することができる。
【0033】
メタマテリアル構造の実施形態は、オプションの利得媒体、励起媒体、又はさらに高次の高調波増幅のための他の機構を含むことができる。
【0034】
複合共振EM構造は、これらの構造を形成する構成要素とは異なる光学特性を有する。複合共振EM構造は、その周期的な共振構造に起因する電磁材料特性を有する。複合共振EM構造は、周波数ωを有する入射光を2次高調波2ω(λ/2)に、及び/又はさらに高次の高調波(たとえば、3次高調波3ω(λ/3)、又はさらに高次の偶数高調波若しくは奇数高調波)にアップコンバートするのに望ましい共振周波数を有する。2次高調波は、可視スペクトル内に存在することができる。たとえば、2次高調波は、約400nm〜約700nmの範囲内のいずれかに存在することができる。
【0035】
複合共振EM構造によって変換される入射光は、たとえば、約1.1μm〜約1.6μmの赤外線範囲内の概ね単一の波長λから、すなわち概ね単色光から成ることができる。例示的な実施形態では、λ/2は、約620nm〜740nm(赤色光)、約445nm〜500nm(青色光)又は約500nm〜575nm(緑色光)の範囲内に存在することができる。したがって、共振EM構造は、入射光(たとえば、赤外光)の周波数を、赤色光、青色光又は緑色光のような可視スペクトルの色のうちの1つの周波数に対応する2次高調波を有する可視光にアップコンバートすることができる。
【0036】
メタマテリアル構造の1つの例示的な実施形態では、複合共振EM構造は、少なくとも約50%の光結合効率を有する。本明細書において、「光結合効率」は、共振EM構造の共振モードに結合し、当該共振EM構造の共振モードを励起する、周波数ωの入射光強度のパーセンテージと定義される。複合共振EM構造は、共振周波数の場合に約50%〜約70%の結合効率を有することが好ましい。複合共振EM構造の非線形材料は、選択された入射周波数から共振EM構造の共振数波数への変換効率を、たとえば約50%から約70%に高めることができる。
【0037】
「品質係数」Qは、Elocal=QE0によって定義される。ただし、Elocalは、複合共振EM構造付近の局所電界であり、E0は、複合共振EM構造内に導入され、共振周波数に変換される入射光の電界強度である。メタマテリアル構造の実施形態は、Q値>>1を提供することができる。すなわち、局所電界E0は、Elocal/E0>>1のように大きく高めることができる。
【0038】
図7に示される光処理システムの例示的な実施形態では、メタマテリアル構造700a、700b及び700cはそれぞれ、第1の光導波路704a、第2の光導波路704b及び第3の光導波路704cを備える。また、メタマテリアル構造700a、700b及び700cは、共振周波数ωR1を有する第1の複合共振EM構造702a、共振周波数ωR2を有する第2の複合共振EM構造702b、及び共振周波数ωR3を有する第3の複合共振EM構造702cを備える。第1の複合共振EM構造702a、第2の複合共振EM構造702b及び第3の複合共振EM構造702cはそれぞれ、第1の光導波路704a、第2の光導波路704b及び第3の光導波路704cに沿って伝搬する入射光と相互作用して、その光を第1の色、第2の色及び第3の色にそれぞれアップコンバートするように構成される。異なる色は、同時に生成することができるか、又は、或る所望の時間パターンにおいて生成することができる。
【0039】
その実施形態では、第1の複合共振EM構造702a、第2の複合共振EM構造702b及び第3の複合共振EM構造702cはそれぞれ、図1に示される複合共振EM構造102、又は図4〜図6に示される複合共振EM構造402と同じ構造を有することができる。第1の光導波路、第2の光導波路及び第3の光導波路はそれぞれ、図1に示される光導波路104と同じ構造を有することができる。他の実施形態では、それぞれのメタマテリアル構造の複合共振EM構造及び光導波路は、互いに異なることができる。
【0040】
図7に示されるように、光源706a、706b及び706cはそれぞれ、第1の複合共振EM構造702a、第2の複合共振EM構造702b及び第3の複合共振EM構造702cに動作可能に関連付けられる。たとえば、光源706a、706b及び706cはそれぞれ、周波数ω1、ω2及びω3をそれぞれ有する単色放射を放射することができ、その放射はそれぞれの光導波路704a、704b及び704cに沿って伝搬し、第1の複合共振EM構造702a、第2の複合共振EM構造702b及び第3の複合共振EM構造702cによって、2次高調波及び/又はさらに高次の高調波、たとえば、2次高調波2ω1、2ω2及び2ω3にアップコンバートされる。2次高調波2ω1、2ω2及び2ω3は、たとえば、第1の色、第2の色及び第3の色に対応することができる。
【0041】
3つの複合共振EM構造を含むメタマテリアル構造によって生成される色を互いに選択的に合成して、複数の異なる色を生成することができる。たとえば、加法混色の原色の、赤色、緑色及び青色をメタマテリアル構造によって生成することができ、その後、それらの色を合成して、追加的な中間色を生成することができる。緑色及び青色光を合成してシアンを生成することができ、赤色及び青色光を合成してマゼンタを生成することができ、緑色及び赤色光を合成してイエローを生成することができ、赤色、緑色及び青色を合成して白色を生成することができる。
【0042】
メタマテリアル構造の実施形態を用いて、光投影、ディスプレイ及び光電子回路(光相互接続)のような多種多様な用途のために光を生成することができるものと考えられる。
【0043】
メタマテリアル構造を用いて、量子通信のためのもれつた状態のアップコンバートされた光子の明るい光源を設けることができるものと考えられる。可視領域においてもつれた状態の光子を生成するために、2つの光子が複屈折結晶の中を通り抜ける技法を用いることができる。
【0044】
その精神及び本質的な特徴から逸脱することなく、本発明を他の具体的な形において具現できることは当業者には理解されよう。したがって、ここで開示される実施形態は、あらゆる点において、例示と見なされるべきであり、限定するものと見なされるべきではない。本発明の範囲は、上記の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって指示され、本発明の意味及び範囲、並びに均等物の中に入る全ての変更は、本発明の範囲に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光導波路(104、704a)と、
第1の共振周波数ωR1を有する第1の複合共振電磁(EM)構造(102、202、302、402、702a)であって、前記第1の複合共振EM構造は、前記第1の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して前記光の周波数ω1をωR1にアップコンバートし、これによってω1の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成されるように配置される第1の複合共振電磁構造(102、202、302、402、702a)とを備えることを特徴とする光処理のためのメタマテリアル構造(100)。
【請求項2】
前記複合共振EM構造(102、402)は、共振周期メタマテリアル構造を含み、前記共振周期メタマテリアル構造は、
(i)非線形材料内に埋め込まれるか、又は(ii)前記非線形材料の表面上に配置される複数の金属ナノ共振器、又は
第1の金属層と、前記第1の金属層上にある絶縁体層と、前記絶縁体層上にある第2の金属層とを備える多層構造であって、前記多層構造は、少なくとも前記第1の金属層及び前記第2の金属層を貫通して延在する、位置合わせされた穴の周期的な配列を有する、多層構造を備えることを特徴とする請求項1に記載のメタマテリアル構造。
【請求項3】
前記第1の光導波路(104)は、断面積が減少しているテーパ部分(116)を有する光ファイバを含み、前記テーパ部分は前記第1の複合共振EM構造(102)内に配置され、前記第1の光導波路によって搬送される光と、前記第1の複合共振EM構造との結合を強めることを特徴とする請求項1に記載のメタマテリアル構造。
【請求項4】
第2の光導波路(704b)と、
第3の光導波路(704c)と、
第2の共振周波数ωR2を有する第2の複合共振電磁構造(702b)であって、前記第2の複合共振EM構造は、前記第2の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、前記光の周波数ω2をωR2にアップコンバートし、これによってω2の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成されるように配置される、第2の複合共振電磁構造(702b)と、
第3の共振周波数ωR3を有する第3の複合共振電磁構造(702c)であって、前記第3の複合共振EM構造は、前記第3の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、前記光の周波数ω3をωR3にアップコンバートし、これによってω3の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成されるように配置される、第3の複合共振電磁構造(702c)とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のメタマテリアル構造。
【請求項5】
ω1、ω2及びω3のそれぞれの前記2次高調波は、約400nm〜約700nmの範囲内にあるか、又は
ω1、ω2及びω3の前記2次高調波はそれぞれ、赤色、緑色及び青色に対応することを特徴とする請求項4に記載のメタマテリアル構造。
【請求項6】
前記第1の複合共振EM構造、前記第2の複合共振EM構造及び前記第3の複合共振EM構造はそれぞれ、共振周期メタマテリアル構造を含み、前記共振周期メタマテリアル構造は、
(i)非線形材料内に埋め込まれるか、又は(ii)前記非線形材料の表面上に配置される複数の金属ナノ共振器と、
第1の金属層と、前記第1の金属層上にある絶縁体層と、前記絶縁体層上にある第2の金属層とを備える多層構造であって、前記多層構造は、少なくとも前記第1の金属層及び前記第2の金属層を貫通して延在する、位置合わせされた穴の周期的な配列を有する、多層構造とを備えることを特徴とする請求項5に記載のメタマテリアル構造。
【請求項7】
前記第1の光導波路、前記第2の光導波路及び前記第3の光導波路のそれぞれは、断面積が減少しているテーパ部分を有する光ファイバを含み、前記テーパ部分は前記第1の複合共振EM構造、前記第2の複合共振EM構造及び前記第3の複合共振EM構造内に配置され、前記第1の光導波路、前記第2の光導波路及び前記第3の光導波路によって搬送される光と、それぞれ前記第1の複合共振EM構造、前記第2の複合共振EM構造及び第3の複合共振EM構造との結合を強めることを特徴とする請求項5に記載のメタマテリアル構造。
【請求項8】
請求項5に記載のメタマテリアル構造と、
前記第1の光導波路に沿って伝搬する光を放射するように構成される第1の光源(706a)と、
前記第2の光導波路に沿って伝搬する光を放射するように構成される第2の光源(706b)と、
前記第3の光導波路に沿って伝搬する光を放射するように構成される第3の光源(706c)とを備えることを特徴とする光処理システム。
【請求項9】
第1の共振周波数ωR1を有する第1の複合共振電磁(EM)構造を貫通して延在する第1の光導波路に沿って光を伝搬させることを含み、
前記第1の複合共振EM構造は、前記第1の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、前記光の周波数ω1をωR1にアップコンバートし、これによってω1の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成されることを特徴とする、メタマテリアル構造を用いて光を処理する方法。
【請求項10】
前記方法は、
第2の共振周波数ωR2を有する第2の複合共振電磁(EM)構造を貫通して延在する第2の光導波路に沿って光を伝搬させることであって、前記第2の複合共振EM構造は、前記第2の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、前記光の周波数ω2をωR2にアップコンバートし、これによってω2の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成される、第2の光導波路に沿って光を伝搬させることと、
第3の共振周波数ωR3を有する第3の複合共振電磁(EM)構造を貫通して延在する第3の光導波路に沿って光を伝搬させることであって、前記第3の複合共振EM構造は、前記第3の光導波路に沿って伝搬する光と相互作用して、前記光の周波数ω3をωR3にアップコンバートし、これによってω2の2次高調波及び/又はさらに高次の高調波が生成される、第3の光導波路に沿って光を伝搬させることとをさらに含み、
ω1、ω2及びω3のそれぞれの前記2次高調波は、約400nm〜約700nmの範囲内にあるか、又は
ω1、ω2及びω3の前記2次高調波はそれぞれ、赤色、緑色及び青色光に対応することを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−517094(P2010−517094A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547328(P2009−547328)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/001155
【国際公開番号】WO2008/094543
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】