説明

光半導体装置用ダイボンド材及びそれを用いた光半導体装置

【課題】糸曳きの抑制と滲みの抑制との双方を両立できる光半導体装置用ダイボンド材を提供する。
【解決手段】本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、ヒドロシリル化反応可能なシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、酸化ケイ素粒子とを含む。上記シリコーン樹脂のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度は、1000mPa・s以上、6000mPa・s以下である。上記ダイボンド材のE型粘度計を用いて測定された25℃及び10rpmでの粘度が8000mPa・s以上、30000mPa・s以下である。さらに、上記ダイボンド材のE型粘度計を用いて測定された25℃における1rpmでの粘度のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度に対する比は、1.5以上、3.0以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)素子などの光半導体素子をダイボンディングするために用いられる光半導体装置用ダイボンド材、並びに該光半導体装置用ダイボンド材を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)素子などの光半導体素子が、表示装置の光源等に広く用いられている。光半導体素子を用いた光半導体装置は、消費電力が低く、かつ寿命が長い。また、光半導体装置は、過酷な環境下でも使用され得る。従って、光半導体装置は、携帯電話用バックライト、液晶テレビ用バックライト、自動車用ランプ、照明器具及び看板などの幅広い用途で使用されている。
【0003】
下記の特許文献1には、LED素子が基板上に実装された光半導体装置が開示されている。この光半導体装置では、LED素子は、基板の上面にダイボンド材を用いて接合されている。このダイボンド材は、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンと、珪素原子に結合した水素原子を3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、白金触媒と、接着性付与剤とを含む。上記アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンは、珪素原子に結合する水酸基量が50〜3000ppmであり、珪素原子に結合したアルケニル基を平均1個以上有し、かつSiO4/2単位を有するポリオルガノシロキサンを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−114365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記光半導体装置を得る際には、先ずダイボンダーと呼ばれる塗布装置を用いて、基板上にペースト状のダイボンド材を塗布し、ダイボンド層を形成する。次に、ダイボンド層上に、光半導体素子を積層する。その後、ダイボンド層を硬化させ、光半導体装置を得る。
【0006】
上記塗布装置を用いて、特許文献1に記載のような従来のダイボンド材を塗布する際に、糸曳きと呼ばれる現象が発生することがある。糸曳きが生じると、塗布装置が汚染され、ダイボンド材を精度よく塗布できなくなることがある。さらに、意図しない領域にダイボンド材が部分的に配置され、基板等が汚染されることもある。このため、光半導体装置において不良が発生することがある。
【0007】
糸曳きは、ペーストに使用される樹脂成分が高粘度であることに起因して発生することが多い。糸曳きを抑制するためには、比較的低粘度の樹脂成分を用いることが考えられる。しかし、低粘度の樹脂成分を含むダイボンド材が基板上に塗布された場合には、ダイボンド材が濡れ広がり、滲みと呼ばれる現象が発生することがある。このため、やはり意図しない領域にダイボンド材が配置され、基板等が汚染されることがある。
【0008】
本発明の目的は、糸曳きの抑制と滲みの抑制との双方を両立できる光半導体装置用ダイボンド材、並びに該光半導体装置用ダイボンド材を用いた光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、E型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度が1000mPa・s以上、6000mPa・s以下であるヒドロシリル化反応可能なシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、酸化ケイ素粒子とを含み、E型粘度計を用いて測定された25℃及び10rpmでの粘度が8000mPa・s以上、30000mPa・s以下であり、かつ、E型粘度計を用いて測定された25℃における1rpmでの粘度のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度に対する比が1.5以上、3.0以下である、光半導体装置用ダイボンド材が提供される。
【0010】
上記ヒドロシリル化反応可能なシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂とを含むことが好ましい。
【0011】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材のある特定の局面では、上記第1のシリコーン樹脂は、下記式(1A)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂であり、上記第2のシリコーン樹脂は、下記式(51A)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂である。
【0012】
【化1】

【0013】
上記式(1A)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0.05〜0.50、b/(a+b+c)=0〜0.40及びc/(a+b+c)=0.30〜0.80を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0014】
【化2】

【0015】
上記式(51A)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0〜0.40及びr/(p+q+r)=0.30〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0016】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材の他の特定の局面では、上記第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子と、アルケニル基とを有する第1のシリコーン樹脂である。
【0017】
本発明に係る光半導体装置は、本発明に従って構成された光半導体装置用ダイボンド材と、接続対象部材と、上記光半導体装置用ダイボンド材を用いて上記接続対象部材に接続された光半導体素子とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、E型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度が1000mPa・s以上、6000mPa・s以下であるヒドロシリル化反応可能なシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、酸化ケイ素粒子とを含み、更にE型粘度計を用いて測定された25℃及び10rpmでの粘度が8000mPa・s以上、30000mPa・s以下であり、かつ、E型粘度計を用いて測定された25℃における1rpmでの粘度のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度に対する比が1.5以上、3.0以下であるので、ダイボンド材を基板などの塗布対象部材に塗布したときに、糸曳きを抑制することができ、かつ滲みを抑制できる。すなわち、糸曳きの抑制と滲みの抑制とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0021】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、ヒドロシリル化反応可能なシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、酸化ケイ素粒子とを含む。上記ヒドロシリル化反応可能なシリコーン樹脂のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度は、1000mPa・s以上、6000mPa・s以下である。
【0022】
また、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材のE型粘度計を用いて測定された25℃及び10rpmでの粘度η1が8000mPa・s以上、30000mPa・s以下である。さらに、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材では、E型粘度計を用いて測定された25℃における1rpmでの粘度η2(mPa・s)のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度η1(mPa・s)に対する比(η2/η1)が1.5以上、3.0以下である。
【0023】
上記組成を採用し、かつシリコーン樹脂及び光半導体装置用ダイボンド材がそれぞれ特定の上記粘度を有する構成を採用することによって、ダイボンダー等の塗布装置を用いて、ダイボンド材が基板等の塗布対象部材に塗布されたときに、糸曳きが生じ難くなる。このため、塗布装置が汚染され難く、連続してダイボンド材を精度よく塗布できる。さらに、意図しない領域にダイボンド材が部分的に配置され難くなり、塗布対象部材の汚染を抑制できる。このため、光半導体装置において不良が発生し難くなる。さらに、ダイボンド材が塗布対象部材上に塗布された場合には、ダイボンド材が過度に濡れ広がり難く、滲みが生じ難い。このことによっても、意図しない領域にダイボンド材が配置され難く、塗布対象部材の汚染を抑制できる。
【0024】
従って、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材では、糸曳きの抑制と滲みの抑制との双方を両立できる。
【0025】
ダイボンド材の糸曳きと滲みとの双方をより一層抑制する観点からは、上記シリコーン樹脂のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度は、好ましくは1200mPa・s以上、好ましくは4000mPa・s以下である。
【0026】
上記シリコーン樹脂がヒドロシリル化反応可能であるように、上記シリコーン樹脂は、ケイ素原子に結合した水素原子とアルケニル基とを有するシリコーン樹脂を含むか、又は珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂とを含むことが好ましい。
【0027】
(第1のシリコーン樹脂)
効率的にヒドロシリル化反応させるために、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂を含むことが好ましい。該水素原子は、珪素原子に直接結合している。ダイボンド材のガスバリア性をより一層高める観点からは、第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子と、アリール基とを有することが好ましい。該アリール基としては、無置換のフェニル基、置換フェニル基、無置換のフェニレン基、及び置換フェニレン基が挙げられる。
【0028】
高温でのクラック耐性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子と、アルケニル基とを有することが好ましい。上記第1のシリコーン樹脂が、珪素原子に結合した水素原子と、アルケニル基とを有する場合には、該第1のシリコーン樹脂は、単独でもヒドロシリル化反応可能である。
【0029】
高温でのクラック耐性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂は、下記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂であることが好ましい。ただし、第1のシリコーン樹脂として、下記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂以外の第1のシリコーン樹脂を用いてもよい。上記第1のシリコーン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
【化3】

【0031】
上記式(1A)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0.05〜0.50、b/(a+b+c)=0〜0.40及びc/(a+b+c)=0.30〜0.80を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(1A)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位及び(R6SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0032】
高温でのクラック耐性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1A)中、R1〜R6は、少なくとも1個がフェニル基を表し、少なくとも1個が水素原子を表し、フェニル基及び水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0033】
高温でのクラック耐性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1A)中、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、水素原子及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0034】
高温でのクラック耐性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1A)中、R1〜R6は、少なくとも1個がフェニル基を表し、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、フェニル基、水素原子及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0035】
上記式(1A)は平均組成式を示す。上記式(1A)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(1A)中のR1〜R6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
上記式(1A)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R6SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、アルコキシ基の酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
【0037】
なお、一般に、上記式(1A)の各構造単位において、アルコキシ基の含有量は少なく、更にヒドロキシ基の含有量も少ない。これは、一般に、第1のシリコーン樹脂を得るために、アルコキシシラン化合物などの有機珪素化合物を加水分解し、重縮合させると、アルコキシ基及びヒドロキシ基の多くは、シロキサン結合の部分骨格に変換されるためである。すなわち、アルコキシ基の酸素原子及びヒドロキシ基の酸素原子の多くは、シロキサン結合を形成している酸素原子に変換される。上記式(1A)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合には、シロキサン結合の部分骨格に変換されなかった未反応のアルコキシ基又はヒドロキシ基がわずかに残存していることを示す。後述の式(51A)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合に関しても、同様のことがいえる。
【0038】
上記式(1A)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基及びフェニル基等が挙げられる。
【0039】
上記式(1A)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。ガスバリア性をより一層高める観点からは、第1のシリコーン樹脂におけるアルケニル基及び上記式(1A)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0040】
上記第1のシリコーン樹脂のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度は1000mPa・s以上、6000mPa・s以下である。第1のシリコーン樹脂の粘度がこの範囲内であることにより、ダイボンド材の糸曳きと滲みとの双方を抑制できる。ダイボンド材の糸曳きと滲みとの双方をより一層抑制する観点からは、上記第1のシリコーン樹脂のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度は、好ましくは1200mPa・s以上、好ましくは4000mPa・s以下である。
【0041】
上記第1のシリコーン樹脂における下記式(X1)より求められるアリール基の含有比率は3モル%以上、30モル%以下であることが好ましい。このアリール基の含有比率が3モル%以上であると、高温でのクラック耐性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が30モル%以下であると、ダイボンド材の剥離が生じ難くなる。高温でのクラック耐性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は5モル%以上であることがより好ましい。ダイボンド材の剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、25モル%以下であることがより好ましい。
【0042】
アリール基の含有比率(モル%)=(上記第1のシリコーン樹脂の1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/上記第1のシリコーン樹脂の数平均分子量)×100 ・・・式(X1)
【0043】
上記第1のシリコーン樹脂として、上記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X1)中、「第1のシリコーン樹脂」は、「平均組成式が上記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂」を示す。
【0044】
上記式(1A)で表され、フェニル基を有する第1のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X1)におけるアリール基はフェニル基を示し、アリール基の含有比率はフェニル基の含有比率を示す。
【0045】
上記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂において、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0046】
(R4R5SiXO1/2) ・・・式(1−2)
【0047】
(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R4及びR5で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。具体的には、アルコキシ基がシロキサン結合の部分骨格に変換された場合には、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。未反応のアルコキシ基が残存している場合、又はアルコキシ基がヒドロキシ基に変換された場合には、残存アルコキシ基又はヒドロキシ基を有する(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。また、下記式(1−b)で表される構造単位において、Si−O−Si結合中の酸素原子は、隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、Si−O−Si結合中の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0048】
【化4】

【0049】
上記式(1−2)及び(1−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−b)、(1−2)及び(1−2−b)中のR4及びR5は、上記式(1A)中のR4及びR5と同様の基である。
【0050】
上記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂において、(R6SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0051】
(R6SiX1/2) ・・・式(1−3)
(R6SiXO2/2) ・・・式(1−4)
【0052】
(R6SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(1−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−3−c)又は(1−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R6で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R6SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0053】
【化5】

【0054】
上記式(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−c)、(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中のR6は、上記式(1A)中のR6と同様の基である。
【0055】
上記式(1−b)及び(1−c)、式(1−2)〜(1−4)、並びに式(1−2−b)、(1−3−c)及び(1−4−c)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0056】
上記式(1A)中、a/(a+b+c)の下限は0.05、上限は0.50である。a/(a+b+c)が上記下限以上及び上限以下であると、ダイボンド材の耐熱性をより一層高めることができ、かつダイボンド材の剥離をより一層抑制できる。上記式(1A)中、a/(a+b+c)の好ましい下限は0.10、より好ましい下限は0.15であり、好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40である。
【0057】
上記式(1A)中、b/(a+b+c)の下限は0、上限は0.40である。b/(a+b+c)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。なお、bが0であり、b/(a+b+c)が0である場合、上記式(1A)中、(R4R5SiO2/2)の構造単位は存在しない。
【0058】
上記式(1A)中、c/(a+b+c)の下限は0.30、上限は0.80である。c/(a+b+c)が上記下限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。c/(a+b+c)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性が高くなり、かつ高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少し難くなる。上記式(1A)中、c/(a+b+c)の好ましい下限は0.35、より好ましい下限は0.40、好ましい上限は0.75である。
【0059】
上記第1のシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(1A)中の(R1R2R3SiO1/2で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(1A)中の(R4R5SiO2/2及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(1A)中の(R6SiO3/2、並びに(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0060】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(1A)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0061】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(1A)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(1A)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0062】
(第2のシリコーン樹脂)
効率的にヒドロシリル化反応させるために、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、アルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂を含むことが好ましい。該アルケニル基は、珪素原子に直接結合している。上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子が、珪素原子に結合していてもよく、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子とは異なる炭素原子が、珪素原子に結合していてもよい。
【0063】
ダイボンド材の高温でのクラック耐性をより一層高める観点からは、第2のシリコーン樹脂は、アルケニル基とアリール基とを有することが好ましい。該アリール基としては、無置換のフェニル基、置換フェニル基、無置換のフェニレン基、及び置換フェニレン基が挙げられる。
【0064】
高温でのクラック耐性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第2のシリコーン樹脂は、下記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂であることが好ましい。ただし、第2のシリコーン樹脂として、下記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂以外の第2のシリコーン樹脂を用いてもよい。上記第2のシリコーン樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
【化6】

【0066】
上記式(51A)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0〜0.40及びr/(p+q+r)=0.30〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(51A)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位及び(R56SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0067】
上記式(51A)は平均組成式を示す。上記式(51A)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(51A)中のR51〜R56は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
上記式(51A)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。ガスバリア性をより一層高める観点からは、第2のシリコーン樹脂におけるアルケニル基及び上記式(51A)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0069】
上記式(51A)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基及びフェニル基が挙げられる。
【0070】
ダイボンド材のガスバリア性をより一層高め、かつ剥離をより一層生じ難くする観点からは、上記第2のシリコーン樹脂が、下記式(51A)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基及びアリール基を有する第2のシリコーン樹脂であることが好ましい。
【0071】
高温でのクラック耐性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(51A)中、R51〜R56は、少なくとも1個がフェニル基を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、フェニル基及びアルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0072】
上記第2のシリコーン樹脂のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度は1000mPa・s以上、6000mPa・s以下である。第2のシリコーン樹脂の粘度がこの範囲内であることにより、ダイボンド材の糸曳きと滲みとの双方を抑制できる。ダイボンド材の糸曳きと滲みとの双方をより一層抑制する観点からは、上記第2のシリコーン樹脂のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度は、好ましくは1200mPa・s以上、好ましくは4000mPa・s以下である。
【0073】
上記第2のシリコーン樹脂における下記式(X51)より求められるアリール基の含有比率は3モル%以上、30モル%以下であることが好ましい。このアリール基の含有比率が3モル%以上であると、ガスバリア性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が30モル%以下であると、ダイボンド材の剥離が生じ難くなる。ガスバリア性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は5モル%以上であることがより好ましい。剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、25モル%以下であることがより好ましい。
【0074】
アリール基の含有比率(モル%)=(第2のシリコーン樹脂の1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/第2のシリコーン樹脂の数平均分子量)×100 ・・・式(X51)
【0075】
上記第2のシリコーン樹脂として、上記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X51)中、「第2のシリコーン樹脂」は、「平均組成式が上記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂」を示す。
【0076】
上記式(51A)で表され、フェニル基を有する第2のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X51)におけるアリール基はフェニル基を示し、アリール基の含有比率はフェニル基の含有比率を示す。
【0077】
上記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂において、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(51−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0078】
(R54R55SiXO1/2) ・・・式(51−2)
【0079】
(R54R55SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(51−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R54及びR55で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。
【0080】
【化7】

【0081】
上記式(51−2)及び(51−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−b)、(51−2)及び(51−2−b)中のR54及びR55は、上記式(51A)中のR54及びR55と同様の基である。
【0082】
上記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂において、(R56SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(51−3)又は(51−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0083】
(R56SiX1/2) ・・・式(51−3)
(R56SiXO2/2) ・・・式(51−4)
【0084】
(R56SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(51−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−3−c)又は(51−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R56で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R56SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0085】
【化8】

【0086】
上記式(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−c)、(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中のR56は、上記式(51A)中のR56と同様の基である。
【0087】
上記式(51−b)及び(51−c)、式(51−2)〜(51−4)、並びに式(51−2−b)、(51−3−c)及び(51−4−c)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0088】
上記式(51A)中、p/(p+q+r)の下限は0.05、上限は0.50である。p/(p+q+r)が上記下限及び上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性をより一層高めることができ、かつダイボンド材の剥離をより一層抑制できる。上記式(51A)中、中、p/(p+q+r)の好ましい下限は0.10、より好ましい下限は0.15であり、好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40である。
【0089】
上記式(51A)中、q/(p+q+r)の下限は0、上限は0.40である。q/(p+q+r)上記上限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。上記式(51A)中、q/(p+q+r)の好ましい上限は0.35、より好ましい上限は0.30である。なお、qが0であり、q/(p+q+r)が0である場合、上記式(51A)中、(R54R55SiO2/2)の構造単位は存在しない。
【0090】
上記式(51A)中、r/(p+q+r)の下限は0.30、上限は0.80である。r/(p+q+r)が上記下限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。r/(p+q+r)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性が高くなり、かつ高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少し難くなる。
【0091】
上記第2のシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(51A)中の(R51R52R53SiO1/2で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(51A)中の(R54R55SiO2/2及び(51−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(51A)中の(R56SiO3/2、並びに(51−3)及び(51−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0092】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(51A)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0093】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(51A)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(51A)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0094】
上記第1のシリコーン樹脂100重量部に対して、上記第2のシリコーン樹脂の含有量は10重量部以上、400重量部以下であることが好ましい。第1,第2のシリコーン樹脂の含有量がこの範囲内であると、高温での貯蔵弾性率がより一層高く、かつガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得ることができる。高温での貯蔵弾性率がさらに一層高く、かつガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂100重量部に対して、上記第2のシリコーン樹脂の含有量のより好ましい下限は30重量部、更に好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は300重量部、更に好ましい上限は200重量部である。
【0095】
上記光半導体装置用ダイボンド材100重量%中、上記シリコーン樹脂(第1,第2のシリコーン樹脂の合計)の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。シリコーン樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、ダイボンド材の粘度を適度な範囲に容易に調整でき、かつダイボンド材の硬化性を高めることができる。
【0096】
(第1,第2のシリコーン樹脂の他の性質及びその合成方法)
上記第1,第2のシリコーン樹脂のアルコキシ基の含有量の好ましい下限は0.5モル%、より好ましい下限は1モル%、好ましい上限は10モル%、より好ましい上限は5モル%である。アルコキシ基の含有量が上記好ましい範囲内であると、ダイボンド材の密着性を高めることができる。
【0097】
アルコキシ基の含有量が上記好ましい下限を満たすと、ダイボンド材の密着性を高めることができる。アルコキシ基の含有量が上記好ましい上限を満たすと、第1,第2のシリコーン樹脂及びダイボンド材の貯蔵安定性が高くなり、ダイボンド材の耐熱性がより一層高くなる。
【0098】
上記アルコキシ基の含有量は、第1,第2のシリコーン樹脂の平均組成式中に含まれる上記アルコキシ基の量を意味する。
【0099】
上記第1,第2のシリコーン樹脂はシラノール基を含有しないほうが好ましい。第1,第2のシリコーン樹脂がシラノール基を含有しないと、第1,第2のシリコーン樹脂及びダイボンド材の貯蔵安定性が高くなる。上記シラノール基は、真空下での加熱により減少させることができる。シラノール基の含有量は、赤外分光法を用いて測定できる。
【0100】
上記第1,第2のシリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は500、より好ましい下限は800、更に好ましい下限は1000、好ましい上限は50000、より好ましい上限は15000である。数平均分子量が上記好ましい下限を満たすと、熱硬化時に揮発成分が少なくなり、高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少しにくくなる。数平均分子量が上記好ましい上限を満たすと、粘度調節が容易である。
【0101】
上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレンを標準物質して求めた値である。上記数平均分子量(Mn)は、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本、測定温度:40℃、流速:1mL/分、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定された値を意味する。
【0102】
上記第1,第2のシリコーン樹脂を合成する方法としては特に限定されず、アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法、クロロシラン化合物を加水分解し縮合させる方法が挙げられる。なかでも、反応の制御の観点からアルコキシシラン化合物を加水分解する方法が好ましい。
【0103】
アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法としては、例えば、アルコキシシラン化合物、水と酸性触媒又は塩基性触媒との存在下で反応させる方法が挙げられる。また、ジシロキサン化合物を加水分解して用いてもよい。
【0104】
上記第1,第2のシリコーン樹脂にフェニル基を導入するための有機珪素化合物としては、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0105】
上記第1,第2のシリコーン樹脂にアルケニル基を導入するための有機珪素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ビニルジメチルエトキシシラン及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0106】
上記第1のシリコーン樹脂に珪素原子に結合した水素原子を導入するための有機珪素化合物としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0107】
上記第1,第2のシリコーン樹脂を得るために用いることができる他の有機珪素化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン及びオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0108】
上記酸性触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、無機酸の酸無水物及びその誘導体、並びに有機酸の酸無水物及びその誘導体が挙げられる。
【0109】
上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸及び炭酸が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸及びオレイン酸が挙げられる。
【0110】
上記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド及びアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0111】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウムが挙げられる。上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド及びセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0112】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物及びセシウムシラノレート化合物が挙げられる。なかでも、カリウム系触媒又はセシウム系触媒が好適である。
【0113】
(ヒドロシリル化反応用触媒)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材に含まれているヒドロシリル化反応用触媒は、上記シリコーン樹脂をヒドロシリル化反応させる。上記第1,第2のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記ヒドロシリル化反応用触媒は、上記第1のシリコーン樹脂中の珪素原子に結合した水素原子と、上記第2のシリコーン樹脂中のアルケニル基とをヒドロシリル化反応させる触媒である。
【0114】
上記ヒドロシリル化反応用触媒として、ヒドロシリル化反応を進行させる各種の触媒を用いることができる。上記ヒドロシリル化反応用触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。ダイボンド材の透明性を高くすることができるため、白金系触媒が好ましい。
【0116】
上記白金系触媒としては、白金粉末、塩化白金酸、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体及び白金−カルボニル錯体が挙げられる。特に、白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体が好ましい。
【0117】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体におけるアルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。上記白金−オレフィン錯体におけるオレフィンとしては、例えば、アリルエーテル及び1,6−ヘプタジエン等が挙げられる。
【0118】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体及び白金−オレフィン錯体の安定性を向上させることができるため、上記白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体に、アルケニルシロキサン、オルガノシロキサンオリゴマー、アリルエーテル又はオレフィンを添加することが好ましい。上記アルケニルシロキサンは、好ましくは1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである。上記オルガノシロキサンオリゴマーは、好ましくはジメチルシロキサンオリゴマーである。上記オレフィンは、好ましくは1,6−ヘプタジエンである。
【0119】
ダイボンド材100重量%中、上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、0.01〜0.5重量%の範囲内であることが好ましい。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記下限以上であると、ダイボンド材を十分に硬化させることが容易であり、ダイボンド材のガスバリア性をより一層高めることができる。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記上限以下であると、ダイボンド材がより一層変色し難くなる。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、より好ましくは0.02重量%以上、より好ましくは0.3重量%以下である。
【0120】
(酸化ケイ素粒子)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、酸化ケイ素粒子をさらに含む。該酸化ケイ素粒子の使用により、ダイボンド材の硬化物の耐熱性及び耐光性を損なうことなく、硬化前のダイボンド材の粘度を適当な範囲に調整できる。従って、ダイボンド材の取り扱い性を高めることができる。
【0121】
上記酸化ケイ素粒子の一次粒子径の好ましい下限は5nm、より好ましい下限は8nm、好ましい上限は200nm、より好ましい上限は150nmである。上記酸化ケイ素粒子の一次粒子径が上記好ましい下限を満たすと、酸化ケイ素粒子の分散性がより一層高くなり、ダイボンド材の硬化物の透明性がより一層高くなる。上記酸化ケイ素粒子の一次粒子径が上記好ましい上限を満たすと、25℃における粘度の上昇効果を充分に得ることができ、かつ温度上昇における粘度の低下を抑制できる。
【0122】
上記酸化ケイ素粒子の一次粒子径は、以下のようにして測定される。光半導体装置用ダイボンド材の硬化物を透過型電子顕微鏡(商品名「JEM−2100」、日本電子社製)を用いて観察する。視野中の100個の酸化ケイ素粒子の一次粒子の大きさをそれぞれ測定し、測定値の平均値を一次粒子径とする。上記一次粒子径は、上記酸化ケイ素粒子が球形である場合には酸化ケイ素粒子の直径の平均値を意味し、非球形である場合には酸化ケイ素粒子の長径の平均値を意味する。
【0123】
上記酸化ケイ素粒子のBET比表面積の好ましい下限は30m/g、好ましい上限が400m/gである。上記酸化ケイ素粒子のBET比表面積が30m/g以上であると、ダイボンド材の25℃における粘度を好適な範囲に制御でき、温度上昇における粘度の低下を抑制できる。上記酸化ケイ素粒子のBET比表面積が400m/g以下であると、酸化ケイ素粒子の凝集が生じ難くなり、分散性を高くすることができ、更にダイボンド材の硬化物の透明性をより一層高くすることができる。
【0124】
上記酸化ケイ素粒子としては特に限定されず、例えば、フュームドシリカ、溶融シリカ等の乾式法で製造されたシリカ、並びにコロイダルシリカ、ゾルゲルシリカ、沈殿シリカ等の湿式法で製造されたシリカ等が挙げられる。なかでも、揮発成分が少なく、かつ透明性がより一層高いダイボンド材を得る観点からは、上記酸化ケイ素粒子として、フュームドシリカが好適に用いられる。
【0125】
上記フュームドシリカとしては、例えば、Aerosil 50(比表面積:50m/g)、Aerosil 90(比表面積:90m/g)、Aerosil 130(比表面積:130m/g)、Aerosil 200(比表面積:200m/g)、Aerosil 300(比表面積:300m/g)、及びAerosil 380(比表面積:380m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0126】
上記酸化ケイ素粒子は、有機ケイ素化合物により表面処理されていることが好ましい。この表面処理により、酸化ケイ素粒子の分散性が非常に高くなり、硬化前のダイボンド材の温度上昇による粘度の低下をより一層抑制できる。
【0127】
上記有機ケイ素化合物としては特に限定されず、例えば、アルキル基を有するシラン系化合物、ジメチルシロキサン等のシロキサン骨格を有するケイ素系化合物、アミノ基を有するケイ素系化合物、(メタ)アクリロイル基を有するケイ素系化合物、及びエポキシ基を有するケイ素系化合物等が挙げられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを意味する。
【0128】
酸化ケイ素粒子の分散性をさらに一層高める観点からは、表面処理に用いられる上記有機ケイ素化合物は、トリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物及びポリジメチルシロキサン基を有する有機ケイ素化合物の内の少なくとも1種であることが好ましい。上記酸化ケイ素粒子は、トリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物及びポリジメチルシロキサン基を有する有機ケイ素化合物の内の少なくとも1種により表面処理されていることが好ましい。
【0129】
有機ケイ素化合物により表面処理する方法の一例として、トリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物を用いる場合には、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルクロライド及びトリメチルメトキシシラン等を用いて、酸化ケイ素粒子を表面処理する方法が挙げられる。ポリジメチルシロキサン基を有する有機ケイ素化合物を用いる場合には、ポリジメチルシロキサン基の末端にシラノール基を有する化合物及び環状シロキサン等を用いて、酸化ケイ素粒子を表面処理する方法が挙げられる。
【0130】
上記トリメチルシリル基を有する有機ケイ素化合物により表面処理された酸化ケイ素粒子の市販品としては、RX200(比表面積:140m/g)、及びR8200(比表面積:140m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0131】
上記ポリジメチルシロキサン基を有する有機ケイ素化合物により表面処理された酸化ケイ素粒子の市販品としては、RY200(比表面積:120m/g)(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0132】
上記有機ケイ素化合物により酸化ケイ素粒子を表面処理する方法は特に限定されない。この方法としては、例えば、ミキサー中に酸化ケイ素粒子を添加し、攪拌しながら有機ケイ素化合物を添加する乾式法、酸化ケイ素粒子のスラリー中に有機ケイ素化合物を添加するスラリー法、並びに、酸化ケイ素粒子の乾燥後に有機ケイ素化合物をスプレー付与するスプレー法などの直接処理法等が挙げられる。上記乾式法で用いられるミキサーとしては、ヘンシェルミキサー及びV型ミキサー等が挙げられる。上記乾式法では、有機ケイ素化合物は、直接、又は、アルコール水溶液、有機溶媒溶液若しくは水溶液として添加される。
【0133】
上記有機ケイ素化合物により表面処理されている酸化ケイ素粒子を得るために、光半導体装置用ダイボンド材を調製する際に、酸化ケイ素粒子と上記第1,第2のシリコーン樹脂等のマトリクス樹脂との混合時に、有機ケイ素化合物を直接添加するインテグレルブレンド法等を用いてもよい。
【0134】
上記光半導体装置用ダイボンド材100重量%中、上記酸化ケイ素粒子の含有量は、5重量%以上、30重量%以下であることが好ましい。上記ダイボンド材100重量%中、上記酸化ケイ素粒子の含有量は、より好ましくは5重量%以上、より好ましくは25重量%以下である。上記酸化ケイ素粒子の含有量が上記下限以上であると、ダイボンド材の硬化物の耐熱性及び耐光性を損なうことなく、硬化前のダイボンド材の粘度を適当な範囲に調整できる。上記酸化ケイ素粒子の含有量が上記上限以下であると、ダイボンド材の粘度をより一層適正な範囲に制御でき、かつダイボンド材の透明性をより一層高めることができる。本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材では、上記酸化ケイ素粒子の含有量が30重量%以下であっても、高温での貯蔵弾性率が高くなる。
【0135】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材が、上記有機ケイ素化合物により表面処理された酸化ケイ素粒子を含有することにより、アリール基を有する第2のシリコーン樹脂又はアリール基を有する第1のシリコーン樹脂を含有していても、ダイボンド材の高温での粘度を十分な高さに維持できる。これにより、ダイボンド材が高温に加熱された時の粘度を適切な範囲に調整でき、ダイボンド材中の酸化ケイ素粒子の分散状態を良好にすることができる。このため、ダイボンド材の透明性をより一層高めることができる。
【0136】
(カップリング剤)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、接着性を付与するために、カップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0137】
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。該シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。カップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0138】
(他の成分)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、溶剤、着色剤、充填剤、消泡剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含有してもよい。
【0139】
(光半導体装置用ダイボンド材の詳細及び用途)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、ペースト状である。
【0140】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度η1は、8000mPa・s以上、30000mPa・s以下である。さらに、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材のE型粘度計を用いて測定された25℃における1rpmでの粘度η2(mPa・s)のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度η1(mPa・s)に対する比(η2/η1)が1.5以上、3.0以下である。本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材が特定の上記粘度を有することにより、ダイボンド材の糸曳きと滲みとの双方を顕著に抑制できる。
【0141】
ダイボンド材の糸曳きと滲みとの双方をより一層抑制する観点からは、上記粘度η1は、好ましくは12000mPa・s以上、好ましくは25000mPa・s以下である。ダイボンド材の糸曳きと滲みとの双方をより一層抑制する観点からは、上記比(η2/η1)は、好ましくは1.6以上、好ましくは2.8以下である。
【0142】
なお、シリコーン樹脂及び光半導体装置用ダイボンド材における上記「粘度」は、E型粘度計(TV−22型、東機産業社製)を用いて測定された値である。
【0143】
上記第1のシリコーン樹脂と、上記第2のシリコーン樹脂と、上記ヒドロシリル化反応用触媒とは、これらを1種又は2種以上含む液を別々に調製しておき、使用直前に複数の液を混合して、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材を調製してもよい。例えば、上記第2のシリコーン樹脂及び上記ヒドロシリル化反応用触媒を含むA液と、第1のシリコーン樹脂を含むB液とを別々に調製しておき、使用直前にA液とB液を混合して、ダイボンド材を調製してもよい。この場合に、上記酸化ケイ素粒子は、A液に含まれていてもよく、B液に含まれていてもよい。このように上記第2のシリコーン樹脂及び上記ヒドロシリル化反応用触媒と上記第1のシリコーン樹脂とを別々に、第1の液と第2の液との2液にすることによって保存安定性を向上させることができる。
【0144】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール又はビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上記第1のシリコーン樹脂、上記第2のシリコーン樹脂、上記ヒドロシリル化反応用触媒、上記酸化ケイ素粒子及び必要に応じて配合される他の成分を混合する方法等が挙げられる。
【0145】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材を、基板等の接続対象部材上に配置し、又は光半導体素子の下面に配置し、ダイボンド材を介して接続対象部材と光半導体素子とを接続することにより、光半導体装置を得ることができる。
【0146】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材の硬化温度は特に限定されない。光半導体装置用ダイボンド材の硬化温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下である。硬化温度が上記好ましい下限以上であると、ダイボンド材の硬化が充分に進行する。硬化温度が上記好ましい上限以下であると、ダイボンド材及びダイボンド材により接合される部材の熱劣化が起こり難い。
【0147】
硬化には特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法である。ステップキュア方式の使用により、ダイボンド材の硬化収縮を抑えることができる。
【0148】
(光半導体装置)
本発明に係る光半導体装置は、光半導体装置用ダイボンド材と、接続対象部材と、上記光半導体装置用ダイボンド材を用いて上記接続対象部材に接続された光半導体素子とを備える。
【0149】
本発明に係る光半導体装置としては、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置及びフォトカプラ等が挙げられる。このような光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター及びコピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト並びにスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0150】
上記光半導体素子である発光素子としては、半導体を用いた発光素子であれば特に限定されず、例えば、上記発光素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上にLED形式用半導体材料を積層した構造が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、及びSiC等が挙げられる。
【0151】
上記基板の材料としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、及びGaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料との間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層の材料としては、例えば、GaN及びAlN等が挙げられる。
【0152】
図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【0153】
本実施形態の光半導体装置1は、接続対象部材であるハウジング2と、光半導体素子3とを有する。ハウジング2内にLED素子である光半導体素子3が実装されている。この光半導体素子3の周囲を、ハウジング2の光反射性を有する内面2aが取り囲んでいる。本実施形態では、光半導体により形成された発光素子として、光半導体素子3が用いられている。
【0154】
ハウジング2の内面2aは、内面2aの径が開口端に向かうにつれて大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発せられた光のうち、内面2aに到達した光B1が内面2aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。
【0155】
光半導体素子3は、ハウジング2に設けられたリード電極4に、ダイボンド材5を用いて接続されている。ダイボンド材5は、光半導体装置用ダイボンド材である。光半導体素子3に設けられたボンディングパッド(図示せず)とリード電極4とが、ボンディングワイヤー6により電気的に接続されている。光半導体素子3及びボンディングワイヤー6を封止するように、内面2aで囲まれた領域内には、封止剤7が充填されている。
【0156】
ダイボンド材5は、光半導体素子3の底部からはみ出してその周囲を囲むように配置されてもよく、光半導体素子3の底部からはみ出さないように配置されてもよい。ダイボンド材5の厚みは、2〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0157】
光半導体装置1では、光半導体素子3を駆動すると、破線Aで示すように光が発せられる。この場合、光半導体素子3からリード電極4の上面とは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、ダイボンド材5に到達した光が矢印B2で示すように反射される光もある。
【0158】
なお、図1に示す構造は、本発明に係る光半導体装置の一例にすぎず、光半導体素子3の実装構造等には適宜変形され得る。
【0159】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0160】
(合成例1)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルメトキシシラン120g、メチルトリメトキシシラン99g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン27gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.2gと水83gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(A)を得た。
【0161】
得られたポリマー(A)の数平均分子量(Mn)は1200であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(A)は、下記の平均組成式(A1)を有していた。
【0162】
(HMeSiO1/20.20(MeSiO2/20.50(MeSiO3/20.30 …式(A1)
上記式(A1)中、Meはメチル基を示す。
【0163】
なお、合成例1及び合成例2〜14で得られた各ポリマーの分子量は、10mgにテトラヒドロフラン1mLを加え、溶解するまで攪拌し、GPC測定により測定した。GPC測定では、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC
LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いた。
【0164】
(合成例2)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルメトキシシラン120g、メチルトリメトキシシラン99g、フェニルトリメトキシシラン40g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン27gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.2gと水102gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(B)を得た。
【0165】
得られたポリマー(B)の数平均分子量(Mn)は1300であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(B)は、下記の平均組成式(B1)を有していた。
【0166】
(HMeSiO1/20.20(MeSiO2/20.50(MeSiO3/20.30(PhSiO3/20.10 …式(B1)
上記式(B1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0167】
得られたポリマー(B)のフェニル基の含有比率は6モル%であった。
【0168】
(合成例3)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルメトキシシラン48g、ビニルメチルジメトキシシシラン26g、フェニルトリメトキシシラン40g、メチルトリメトキシシラン132g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン27gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.2gと水101gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(C)を得た。
【0169】
得られたポリマー(C)の数平均分子量(Mn)は1600であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(C)は、下記の平均組成式(C1)を有していた。
【0170】
(HMeSiO1/20.20(MeSiO2/20.20(ViMeSiO2/20.10(MeSiO3/20.40(PhSiO3/20.10 …式(C1)
上記式(C1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0171】
得られたポリマー(C)のフェニル基の含有比率は5モル%であった。
【0172】
(合成例4)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルメトキシシラン24g、ビニルメチルジメトキシシシラン26g、メチルトリメトキシシラン198g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン27gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.4gと水99gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(D)を得た。
【0173】
得られたポリマー(D)の数平均分子量(Mn)は2300であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(D)は、下記の平均組成式(D1)を有していた。
【0174】
(HMeSiO1/20.20(MeSiO2/20.10(ViMeSiO2/20.10(MeSiO3/20.60 …式(D1)
上記式(D1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0175】
(合成例5)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルメトキシシラン24g、フェニルトリメトキシシラン80g、メチルトリメトキシシラン165g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン27gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.4gと水99gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(E)を得た。
【0176】
得られたポリマー(E)の数平均分子量(Mn)は3000であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(E)は、下記の平均組成式(E1)を有していた。
【0177】
(HMeSiO1/20.20(MeSiO2/20.20(MeSiO3/20.50(PhSiO3/20.20 …式(E1)
上記式(E1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0178】
得られたポリマー(E)のフェニル基の含有比率(アリール基の含有比率)は5モル%であった。
【0179】
(合成例6)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン40g、ジメチルジメトキシシラン72g、メチルトリメトキシシラン99g、及びビニルメチルジメトキシシラン52gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(F)を得た。
【0180】
得られたポリマー(F)の数平均分子量(Mn)は1100であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(F)は、下記の平均組成式(F1)を有していた。
【0181】
(MeSiO1/20.20(ViMeSiO2/20.20(MeSiO2/20.30(MeSiO3/20.30 …式(F1)
上記式(F1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0182】
(合成例7)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン40g、ジメチルジメトキシシラン72g、ビニルメチルジメトキシシラン52g、メチルトリメトキシシラン33g、及びフェニルトリメトキシシラン80gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(G)を得た。
【0183】
得られたポリマー(G)の数平均分子量(Mn)は1500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(G)は、下記の平均組成式(G1)を有していた。
【0184】
(MeSiO1/20.20(MeSiO2/20.30(ViMeSiO2/20.20(MeSiO3/20.10(PhSiO3/20.20 …式(G1)
上記式(G1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0185】
得られたポリマー(G)のフェニル基の含有比率は10モル%であった。
【0186】
(合成例8)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン40g、ジメチルジメトキシシラン24g、ビニルメチルジメトキシシラン52g、及びフェニルトリメトキシシラン200gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(H)を得た。
【0187】
得られたポリマー(H)の数平均分子量(Mn)は2000であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(H)は、下記の平均組成式(H1)を有していた。
【0188】
(MeSiO1/20.20(MeSiO2/20.10(ViMeSiO2/20.20(PhSiO3/20.50 …式(H1)
上記式(H1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0189】
得られたポリマー(H)のフェニル基の含有比率(アリール基の含有比率)は20モル%であった。
【0190】
(合成例9)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン20g、ジメチルジメトキシシラン48g、メチルトリメトキシシラン165g、及びビニルメチルジメトキシシラン52gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(I)を得た。
【0191】
得られたポリマー(I)の数平均分子量(Mn)は2300であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(I)は、下記の平均組成式(I1)を有していた。
【0192】
(MeSiO1/20.10(ViMeSiO2/20.20(MeSiO2/20.20(MeSiO3/20.50 …式(I1)
上記式(I1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0193】
(合成例10)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン20g、ジメチルジメトキシシラン24g、ビニルメチルジメトキシシラン52g、メチルトリメトキシシラン165g、及びフェニルトリメトキシシラン40gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(J)を得た。
【0194】
得られたポリマー(J)の数平均分子量(Mn)は2500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(J)は、下記の平均組成式(J1)を有していた。
【0195】
(MeSiO1/20.10(MeSiO2/20.10(ViMeSiO2/20.20(MeSiO3/20.50(PhSiO3/20.10 …式(J1)
上記式(H1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0196】
得られたポリマー(J)のフェニル基の含有比率(アリール基の含有比率)は3モル%であった。
【0197】
(合成例11)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン40g、ジメチルメトキシシラン48g、メチルトリメトキシシラン132g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン27gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.4gと水99gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(K)を得た。
【0198】
得られたポリマー(K)の数平均分子量(Mn)は500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(K)は、下記の平均組成式(K1)を有していた。
【0199】
(MeSiO1/20.20(HMeSiO1/20.20(MeSiO2/20.20(MeSiO3/20.40 …式(K1)
上記式(K1)中、Meはメチル基を示す。
【0200】
(合成例12)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコにメチルトリメトキシシラン198g、フェニルトリメトキシシラン80g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン27gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.4gと水99gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(L)を得た。
【0201】
得られたポリマー(L)の数平均分子量(Mn)は4500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(L)は、下記の平均組成式(L1)を有していた。
【0202】
(HMeSiO1/20.20(MeSiO3/20.60(PhSiO3/20.20 …式(L1)
上記式(L1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0203】
得られたポリマー(L)のフェニル基の含有比率(アリール基の含有比率)は4モル%であった。
【0204】
(合成例13)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン80g、ジメチルジメトキシシラン24g、メチルトリメトキシシラン99g、及びビニルメチルジメトキシシラン52gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(M)を得た。
【0205】
得られたポリマー(M)の数平均分子量(Mn)は600であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(M)は、下記の平均組成式(M1)を有していた。
【0206】
(MeSiO1/20.40(ViMeSiO2/20.20(MeSiO2/20.10(MeSiO3/20.30 …式(M1)
上記式(M1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0207】
(合成例14)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン20g、ビニルメチルジメトキシシラン52g、メチルトリメトキシシラン165g、及びフェニルトリメトキシシラン80gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(N)を得た。
【0208】
得られたポリマー(N)の数平均分子量(Mn)は4500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(N)は、下記の平均組成式(N1)を有していた。
【0209】
(MeSiO1/20.10(ViMeSiO2/20.20(MeSiO3/20.50(PhSiO3/20.20 …式(N1)
上記式(N1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0210】
得られたポリマー(N)のフェニル基の含有比率(アリール基の含有比率)は3モル%であった。
【0211】
(実施例1)
ポリマーA5重量部、ポリマーF5重量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体0.02重量部、及び酸化ケイ素微粒子(AEROSIL RY200、ポリジメチルシロキサン基を有する有機ケイ素化合物により表面処理された酸化ケイ素粒子、比表面積120m/g、日本アエロジル社製)2.2重量部を混合し、脱泡を行い、光半導体素子用ダイボンド材を得た。
【0212】
(実施例2〜25及び比較例1〜8)
使用した材料の種類及び配合量を、下記の表1〜2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、光半導体装置用ダイボンド材を得た。
【0213】
(評価)
(1)25℃における粘度の測定
E型粘度計(TV−22型、東機産業社製)を用いて、光半導体装置用ダイボンド材に用いたシリコーン樹脂(第1,第2のシリコーン樹脂)の25℃における10rpmでの粘度(mPa・s)を測定した。また、E型粘度計(TV−22型、東機産業社製)を用いて、得られた光半導体装置用ダイボンド材の25℃における10rpmでの粘度η1(mPa・s)及び1rpmでの粘度η2(mPa・s)を測定した。得られた粘度η1と粘度η2の測定値から、粘度比(η2/η1)を求めた。
【0214】
(2)糸曳き
ダイボンダー(キャノンマシナリー社製「BESTEM−D01R」)を用いて、銀めっきされた銅基板上に得られた光半導体装置用ダイボンド材を、厚みが5μmでダイボンド材上に積層される光半導体素子の大きさとなるように塗布し、基板上にダイボンド材が塗布された複数の塗布物を連続的に製造した。塗布の開始直後(初期)、塗布の開始から4時間後、塗布の開始から8時間後、塗布の開始から12時間後から、それぞれ得られた1000個の塗布物において、糸曳きが生じているか否かを確認した。糸曳きを下記の判定基準で判定した。
【0215】
[糸曳きの判定基準]
○:塗布物1000個のいずれにも糸曳きなし
△:塗布物1000個中1個で糸曳きあり
×:塗布物1000個中2個以上で糸曳きあり
【0216】
(3)滲み
ダイボンダー(キャノンマシナリー社製「BESTEM−D01R」)を用いて銀めっきされた銅基板上に得られた光半導体装置用ダイボンド材を、厚みが5μmでダイボンド材上に積層される光半導体素子の大きさとなるように塗布し、基板上にダイボンド材が塗布された塗布物を得た。
【0217】
得られた塗布物を平面視して、光半導体装置用ダイボンド材の塗布面積を評価した。滲みを下記の判定基準で判定した。
【0218】
[滲みの判定基準]
○○:ダイボンド材上に積層される光半導体素子の面積に対して、はみ出した光半導体装置用ダイボンド材の塗布面積が1%未満
○:ダイボンド材上に積層される光半導体素子の面積に対して、はみ出した光半導体装置用ダイボンド材の塗布面積が1%以上、3%未満
×:ダイボンド材上に積層される光半導体素子の面積に対して、はみ出した光半導体装置用ダイボンド材の塗布面積が3%以上
【0219】
結果を下記の表1〜2に示す。なお、下記の1〜2において、「−」は評価していないことを示す。
【0220】
【表1】

【0221】
【表2】

【符号の説明】
【0222】
1…光半導体装置
2…ハウジング
2a…内面
3…光半導体素子
4…リード電極
5…ダイボンド材
6…ボンディングワイヤー
7…封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
E型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度が1000mPa・s以上、6000mPa・s以下であるヒドロシリル化反応可能なシリコーン樹脂と、
ヒドロシリル化反応用触媒と、
酸化ケイ素粒子とを含み、
E型粘度計を用いて測定された25℃及び10rpmでの粘度が8000mPa・s以上、30000mPa・s以下であり、かつ、E型粘度計を用いて測定された25℃における1rpmでの粘度のE型粘度計を用いて測定された25℃における10rpmでの粘度に対する比が1.5以上、3.0以下である、光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項2】
前記ヒドロシリル化反応可能なシリコーン樹脂が、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂とを含む、請求項1に記載の光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項3】
前記第1のシリコーン樹脂が、下記式(1A)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂であり、
前記第2のシリコーン樹脂が、下記式(51A)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂である、請求項2に記載の光半導体装置用ダイボンド材。
【化1】

前記式(1A)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0.05〜0.50、b/(a+b+c)=0〜0.40及びc/(a+b+c)=0.30〜0.80を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【化2】

前記式(51A)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0〜0.40及びr/(p+q+r)=0.30〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【請求項4】
前記第1のシリコーン樹脂が、珪素原子に結合した水素原子と、アルケニル基とを有する第1のシリコーン樹脂である、請求項2又は3に記載の光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の光半導体装置用ダイボンド材と、
接続対象部材と、
前記光半導体装置用ダイボンド材を用いて前記接続対象部材に接続された光半導体素子とを備える、光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−77171(P2012−77171A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222866(P2010−222866)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】