説明

光半導体装置

【課題】駆動電圧の印加が必要な外部光源を用いることなく、発光素子の出射端面に付着した有機物を分解除去して、素子劣化を防ぐことができる光半導体装置を得る。
【解決手段】レーザダイオード10(発光素子)は、出射端面10aから光12を出射する。レーザダイオード10の出射端面10aにTiO膜16(有機物付着防止膜)が形成されている。TiO膜16は、特定の波長の光が照射されると有機物を分解除去する光触媒反応を起こす。反射鏡18は、レーザダイオード10から出射された光12の一部を反射して、TiO膜16に照射する。波長変換器20は、TiO膜16に照射される光22の波長を、TiO膜16が光触媒反応を起こすような波長に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の出射端面又は受光素子のチップ表面に付着した有機物を分解除去して、素子劣化を防ぐ光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の光半導体装置を示す断面図である。レーザダイオード10は、出射端面10aから光12を出射する。レーザダイオード10の出射端面10aにコーティング膜14が形成されている。
【0003】
レーザダイオード10の周囲に汚染などにより有機分子40(有機汚染)が存在する場合、レーザダイオード10を発光させるとレーザダイオード10の発光点付近に有機物42が堆積し、レーザダイオード10が故障する場合があった(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
この問題を解決するために、レーザダイオードの出射端面に、有機物を分解除去する光触媒反応を起こす有機物付着防止膜を形成し、この有機物付着防止膜に光触媒反応を起こさせる光を照射する外部光源を設けることが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、受光素子を覆うパッケージの窓部に有機物付着防止膜を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【非特許文献1】J. A. Sharps, Conf. Proc. IEEE. Lasers and Electro-Optics Society, 1994 Annual Meeting, Boston, p35-36 (1994)
【特許文献1】特開2003−59087号公報
【特許文献2】特開2004−179595号公報
【特許文献3】特開2006−186228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の光半導体装置では、LEDなどの外部光源を駆動するために駆動電圧の印加が必要であった。また、受光素子を覆うパッケージの窓部に有機物付着防止膜を設ける技術はパッケージの窓ガラスがない場合には適用できない。従って、受光素子のチップ表面に付着した有機物を分解除去する技術は提案されていなかった。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、駆動電圧の印加が必要な外部光源を用いることなく、発光素子の出射端面に付着した有機物を分解除去して、素子劣化を防ぐことができる光半導体装置を得るものである。
【0008】
第2の目的は、受光素子のチップ表面に付着した有機物を分解除去して、素子劣化を防ぐことができる光半導体装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、出射端面から光を出射する発光素子と、発光素子の出射端面に形成され、特定の波長の光が照射されると有機物を分解除去する光触媒反応を起こす有機物付着防止膜と、発光素子から出射された光の一部を反射して、有機物付着防止膜に照射する反射鏡と、有機物付着防止膜に照射される光の波長を、有機物付着防止膜が光触媒反応を起こすような波長に変換する波長変換器とを備えることを特徴とする光半導体装置である。
【0010】
第2の発明は、チップ表面で光を受光する受光素子と、受光素子のチップ表面に形成され、特定の波長の光が照射されると有機物を分解除去する光触媒反応を起こす有機物付着防止膜とを備えることを特徴とする光半導体装置である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明により、駆動電圧の印加が必要な外部光源を用いることなく、発光素子の出射端面に付着した有機物を分解除去して、素子劣化を防ぐことができる。
【0012】
第2の発明により、受光素子のチップ表面に付着した有機物を分解除去して、素子劣化を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る光半導体装置を示す断面図である。レーザダイオード10(発光素子)は、出射端面10aから光12を出射する。レーザダイオード10の出射端面10aに、反射率制御や出射面保護などのためにAlやSiOなどのコーティング膜14が形成され、その上に更にTiO膜16(有機物付着防止膜)が形成されている。
【0014】
反射鏡18は、レーザダイオード10から出射された光12の一部を反射して、TiO膜16に照射する。波長変換器20は、物質中で光が受ける非線形効果を利用して、TiO膜16に照射される光22の波長を特定の波長に変換する。波長変換器20は、例えばKDP(KHPO)結晶、CLBO(CsLiB10)結晶、KNbO(ニオブ酸カリウム)結晶などの非線形光学結晶である。
【0015】
TiO膜16は、波長変換器20から特定の波長の光、具体的にはエネルギーがTiOのバンドギャップ(〜3.0eV)以上となる波長380nm以下の光が照射されると、TiO膜16の表面に付着している有機物を分解除去する光触媒反応を起こす。
【0016】
上記のように反射鏡18と波長変換器20を設けたことにより、駆動電圧の印加が必要な外部光源を用いることなく、発光素子の出射端面に付着した有機物を分解除去して、素子劣化を防ぐことができる。
【0017】
実施の形態2.
図2は、実施の形態2に係る光半導体装置を示す断面図である。受光素子24はチップ表面24aで光28を受光する。受光素子24のチップ表面24aに絶縁膜30が形成され、その上に更にTiO膜32(有機物付着防止膜)や電極34が形成されている。
【0018】
TiO膜32は、外部光源36から特定の波長の光38、具体的にはエネルギーがバンドギャップ(〜3.0eV)以上となる波長380nm以下の光が照射されるとTiO膜32の、表面に付着している有機物を分解除去する光触媒反応を起こす。
【0019】
上記の構成により、受光素子のチップ表面に付着した有機物を分解除去して、素子劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1に係る光半導体装置を示す断面図である。
【図2】実施の形態2に係る光半導体装置を示す断面図である。
【図3】従来の光半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 レーザダイオード(発光素子)
10a 出射端面
16,32 TiO膜(有機物付着防止膜)
18 反射鏡
20 波長変換器
24 受光素子
24a チップ表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射端面から光を出射する発光素子と、
前記発光素子の前記出射端面に形成され、特定の波長の光が照射されると有機物を分解除去する光触媒反応を起こす有機物付着防止膜と、
前記発光素子から出射された光の一部を反射して、前記有機物付着防止膜に照射する反射鏡と、
前記有機物付着防止膜に照射される光の波長を、前記有機物付着防止膜が光触媒反応を起こすような波長に変換する波長変換器とを備えることを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
チップ表面で光を受光する受光素子と、
前記受光素子の前記チップ表面に形成され、特定の波長の光が照射されると有機物を分解除去する光触媒反応を起こす有機物付着防止膜とを備えることを特徴とする光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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