説明

光反射性フィルムの製造方法

【課題】フィルムの透明度を低下させることなく、液晶層と支持体のブロッキングを防止することができる光反射性フィルムの製造方法の提供。
【解決手段】(a)一方の表面の表面粗さが4.5〜25nmである支持体を用い、(b)前記支持体のもう一方の表面上に、硬化性コレステリック液晶化合物を含む硬化性液晶組成物を塗布する塗布工程と、(c)塗布された前記硬化性液晶組成物を乾燥して、前記硬化性コレステリック液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする配向工程と、(d)前記硬化性液晶組成物の硬化反応を進行させてコレステリック液晶相を固定した光反射層を形成する工程と、(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程とを含むことを特徴とする光反射性フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射性フィルムの製造方法に関する。より詳しくは、コレステリック液晶相を固定した光反射層を有する光反射性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギーへの関心の高まりから省エネに関する工業製品へのニーズは高くなってきている。その一つとして住宅や自動車等の窓ガラスの遮熱、つまり日光による熱負荷の減少に効果のあるガラス用光反射性フィルムが求められている。
【0003】
断熱・遮熱性の高いエコガラスとしてよく用いられるのがLow−Eペアガラスと呼ばれる熱放射を遮断する特殊な金属膜をコーティングした複層ガラスである。特殊な金属膜は、例えば真空成膜法により複数層を積層することで作製できる。しかしながら、真空プロセスは生産性が低く、生産コストが高い。また、ガラス用光反射性フィルムの用途では目的とする反射波長以外の波長については光透過性を要求されることが多く例えば自動車用窓には安全性の観点から、低ヘイズ化や赤外光を反射させつつ可視光は高い透過性が求められるなど、高い透明性が要求されている。しかしながら、金属膜を用いる場合には必ずしも高い透明性を満足できるものではなく、その他電波透過性などの観点からも改善が求められるものであった。
【0004】
これに対し、支持体上に硬化性コレステリック液晶相を固定してなる層を積層した赤外光反射フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、コレステリック液晶層を複数積層する方法として、コレステリック液晶材料を含む塗膜を乾燥・加熱配向・紫外線硬化させて1層ずつ上に塗り重ねていく方法が記載されている。しかしながら、特許文献1ではコレステリック液晶層を積層した光反射性フィルムを最終的に巻き取る工程は記載されておらず、巻き取った光反射性フィルムの特性についても記載はなかった。また、同文献には、コレステリック液晶材料を含む塗膜を1層ずつ乾燥・加熱配向・紫外線硬化するにあたり、支持体を搬送しながら連続的に製造することについては言及されておらず、連続製造時にコレステリック液晶材料を含む塗膜を1層積層した時点で一度巻き取るような製造方法についても記載されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−286643号公報
【特許文献2】特開2003−221463号公報
【特許文献3】特開2003−84284号公報
【特許文献4】特開2007−72262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが、特許文献1に記載の方法を参考にして支持体と硬化性コレステリック液晶層を積層した光反射性フィルムを連続的に製造したところ、製造工程中または最終的に光反射性フィルムを巻き取ったときに、ブロッキングの問題が生じることがわかった。
【0007】
従来、一般に成型加工時にフィルムを巻き取ったり、巻き姿のまま保管したり、その後の二次加工時において多数の枚数のフィルムを積層したりすると、フィルム同士が互いにブロッキングして剥がれ難くなる問題が生じることが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、その防止策として、ポリエチレン系の樹脂フィルムに対し、スリップ性を付与するスリップ剤を添加する方法が記載されている。しかしながら、スリップ剤を用いる方法ではフィルムからのブリード発生が懸念されることに加え、本発明者らがスリップ剤を用いて支持体と硬化性コレステリック液晶層を積層した光反射性フィルムを連続的に製造したところ、スリップ剤が転写されてしまったり、また、液晶層を含むフィルムの場合はスリップ剤を用いると液晶の配向不良が発生したりすることがわかった。このような液晶の配向不良が生じると、光反射性フィルムのヘイズが高くなり、透明性の問題が生じる。
【0008】
一方、樹脂フィルムと液晶層を積層したフィルムの液晶配向に起因する欠陥を低減する方法として、例えば特許文献3には配向支持基板として使用する高分子フィルムの表面を研磨して平坦化し、凹凸に由来する液晶配向の欠陥を低減させる方法が記載されている。しかしながら、本発明者らが支持体の表面粗さを小さくした支持体を用いて硬化性コレステリック液晶層を積層した光反射性フィルムを連続的に製造したところ、ブロッキングがさらに発生しやすくなることがわかった。また、特許文献4にはコレステリック液晶層を積層した光反射性フィルムを連続的に製造して巻き取る工程が記載されているが、ブロッキングの問題については何ら言及されていなかった。
【0009】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、フィルムの透明度を低下させることなく、液晶層と支持体のブロッキングを防止することができる光反射性フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここで、液晶層を積層したフィルム分野(特にコレステリック液晶層を用いる分野)では、フィルムへの塵埃付着防止やスタチック故障防止の目的など様々な観点から一般的に帯電防止を行うことが通常であり、帯電防止層を設けることなどが知られている。また、特許文献3には、樹脂フィルムを研磨した際に生じる静電気を除去する方法も記載されている。
このような事情のもと、本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討した結果、支持体の裏面の表面粗さを特定の範囲に制御し、かつ、従来一般的であった液晶層の帯電防止の思想とは逆に、液晶層の塗布および硬化後に(巻き取り直前でのみであることが好ましく、他の部分では除電することがより好ましい)支持体の裏面および液晶層の最外層の帯電を同極にさせながら製膜することで、上記課題を解決できることを見出すに至った。
【0011】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1](a)一方の表面の表面粗さが4.5〜25nmである支持体を用い、(b)前記支持体のもう一方の表面上に、硬化性コレステリック液晶化合物を含む硬化性液晶組成物を塗布する塗布工程と、(c)塗布された前記硬化性液晶組成物を乾燥して、前記硬化性コレステリック液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする配向工程と、(d)前記硬化性液晶組成物の硬化反応を進行させてコレステリック液晶相を固定した光反射層を形成する工程と、(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程とを含むことを特徴とする光反射性フィルムの製造方法。
[2] (f)前記支持体と前記光反射層の積層体を巻き取る工程を含むことを特徴とする[1]に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[3] 前記(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程が、前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を、少なくとも1回ずつパスロールと接触させる工程を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[4] 前記パスロールが、前記支持体および前記光反射層のいずれの電気極性とも逆の電気極性となる帯電列上の物質を表面に含むことを特徴とする[3]に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[5] 前記(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程が、荷電しているパスロールに前記支持体および前記光反射層の少なくとも一方の表面を接触させる工程を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[6] 前記パスロールが、ゴムロール、ウレタンロール、ハードクロムメッキロールまたはアルミニウムコーティングロールであることを特徴とする[3]〜[5]のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[7] (g)前記光反射層の上で、上記(b)〜(f)を繰り返す工程を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[8] 前記硬化性液晶組成物が、重合性棒状液晶化合物、配向制御剤、および溶剤を含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[9] 前記光反射層として、右円偏光の光を反射する層および左円偏光の光を反射する層を少なくとも一層ずつ形成することを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[10] 前記支持体がポリエチレンテレフタレートフィルムを含むことを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[11] マット剤含有層の積層、マイクロ波プラズマ処理またはマット剤の練り込みによって、前記支持体の一方の表面を表面粗さ4.5〜25nmに制御することを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[12] 前記支持体に対する、マット剤の添加量が支持体は15質量%以下であることを特徴とする[11]に記載の光反射性フィルムの製造方法。
[13] 窓貼付用または合わせガラス用光反射性フィルムの製造方法であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルムの透明度を低下させることなく、液晶層と支持体のブロッキングを防止することができる光反射性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造方法に用いられる製造装置の概略図である。
【図2】本発明の製造方法によって製造される赤外光反射性フィルムの一例の断面を示した概略図である。
【図3】本発明の製造方法によって製造される赤外光反射性フィルムの他の一例の断面を示した概略図である。
【図4】本発明の製造方法によって製造される赤外光反射性フィルムの他の一例の断面を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。なお、本明細書中、重合性基とは、アクリレート基、メタクリレート基などの光重合する官能基のことを言う。
【0015】
[光反射性フィルムの製造方法]
本発明の光反射性フィルムの製造方法は、(a)一方の表面の表面粗さが4.5〜25nmである支持体を用い、(b)前記支持体のもう一方の表面上に、硬化性コレステリック液晶化合物を含む硬化性液晶組成物を塗布する塗布工程と、(c)塗布された前記硬化性液晶組成物を乾燥して、前記硬化性コレステリック液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする配向工程と、(d)前記硬化性液晶組成物を硬化させてコレステリック液晶相を固定した光反射層を形成する工程と、(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程とを含むことを特徴とする。なお、本発明の光反射性フィルムの製造方法を本発明の製造方法とも言う。
従来、フィルムのブロッキングは、接触したフィルム表面のフッ素、酸素、窒素原子間で分子間力や水素結合による凝着が発生することで起きると考えられていた。本発明の製造方法では、いかなる理論に拘泥するものでもないが、フィルムの適度な表面凹凸とフィルム両表面同士の電気的な斥力の相乗効果によって、フィルム同士の接着面積を小さくし、また、フィルム表面の原子間距離が広くすることができる。そのため、原子間での分子間力や水素結合による凝着の発生を防止でき、ブロッキングを抑制することができる。さらに、本発明の製造方法によれば、支持体に適度な表面凹凸を設ければ上記のブロッキング抑制効果を得られるため、フィルムにスリップ剤などの添加剤を多量に加えることによる透明性の問題も生じず、透明性の高い光反射性フィルムを製造することができる。なお、本発明で求められる支持体の表面凹凸は、無機微粒子を添加して達成することもできるが、透明性に悪影響を与えない程度の極微量の添加量で達成することが可能である。
以下、本発明の光反射性フィルムの製造方法について、各工程で好ましく用いられる材料や装置について順に説明する。
【0016】
(a)支持体
本発明の光反射性フィルムの製造方法に用いられる支持体としては、一方の表面が表面粗さ4.5〜25nmであること以外は特に制限はなく、任意の支持体の上に光反射層を塗布し、光反射性フィルムを製造することができる。前記支持体としては、例えば、ポリマーフィルム、ガラス板、石英板等を用いることができ、可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムが好ましく用いられる。
前記可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、などが好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよびトリアセチルセルロースがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0017】
前記支持体の一方の表面粗さの好ましい範囲は6〜20nmであり、より好ましい範囲は8〜15nmである。一方、前記支持体の表面粗さ4.5〜25nmである表面とは逆のもう一方の表面については、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はなく、特に表面粗さを制御する必要はない。但し、前記光反射層として液晶層を設けるときに表面粗さがある程度小さい方が、液晶層の配向を良好にし、得られる光反射性フィルムのヘイズを小さくできる観点から好ましい。
【0018】
前記支持体の一方の表面を表面粗さは、そもそも4.5〜25nmの表面粗さの支持体を任意の方法で製造しても、商業的に入手して使用してもよい。また、この範囲から外れる表面粗さの支持体の一方の表面を表面粗さ4.5〜25nmに制御してもよい。
本発明の製造方法では、前記支持体の一方の表面を表面粗さ4.5〜25nmに制御する工程を含むことが好ましい。前記支持体の一方の表面を表面粗さ4.5〜25nmに制御する方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、マット剤含有層の積層、マイクロ波プラズマ処理またはマット剤の練り込みによって、制御する方法を挙げることができる。その中でも、マット剤含有層の積層またはマイクロ波プラズマ処理が、得られるフィルムの透明性を高める観点から好ましい。さらに、マット剤含有層の積層が、後述する(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程において、帯電を制御しやすくなる観点から好ましい。
【0019】
(マット剤)
前記支持体は、マット剤を含有することが、フィルムすべり性、および安定製造の観点から好ましい。前記マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。これらの中でも、無機化合物のマット剤が、後述する(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程において、帯電をより制御しやすくなる観点から好ましい。
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、透明度の低下が少なく、かつ、後述する(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程において液晶層と同極に帯電させやすくなる観点から、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0020】
前記支持体にマット剤を含める場合、支持体として前述したポリマーフィルム、ガラス板、石英板など(好ましくは、可視光に対する透過性が高いポリマーフィルム)の一方の表面に新たにマット剤含有層を積層して、マット剤を含む層と含まない層からなる複数層の支持体としてもよい。また、支持体として前述したポリマーフィルム、ガラス板、石英板などにマット剤を練り込んで、支持体全体にマット剤が分散された単層の支持体としてもよい。その中でも、少ないマット剤添加量で所望の表面粗さを達成することができて透明性を高くすることができる観点、および液晶層を積層する側の表面の表面粗さが大きくなって液晶層の配向に影響を与えないようにできる観点から、新たにマット剤含有層を積層してマット剤を含む層と含まない層からなる複数層の支持体とすることが好ましい。
本発明の製造方法では、前記支持体(マット剤を含む層と含まない層からなる複数層の支持体の合計、または、支持体全体にマット剤が分散された単層の支持体)に対する、マット剤の添加量が15質量%以下であることが好ましく、3〜13質量%であることがより好ましく、5〜10質量%であることが特に好ましい。また、前記支持体が、マット剤を含む層と含まない層からなる複数層の支持体である場合は、前記マット剤含有層に対するマット剤の添加量がマット剤含有層の30質量%以下であることが好ましく、6〜26質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることが特に好ましい。このような添加量でマット剤を用いることにより、本発明の製造方法で得られる光反射性フィルムのヘイズを十分に低くすることができ、かつ、支持体の一方の表面の表面粗さを所望の範囲に制御することができる。
マット剤を前記マット剤含有層に添加する方法や、マット剤を前記支持体に練り込む場合、特にその方法は限定されず、いずれの方法を用いてもよい。例えば、マット剤を前記マット剤含有層に添加する場合は、任意のラテックス水分散液にマット剤を分散した分散液を用いて、マット剤を含まない層上に塗布し、乾燥させて製膜する方法が好ましい。また、支持体全体にマット剤が分散された単層の支持体とする場合は、マスターぺレットにあらかじめマット剤添加したものを用い、溶融押し出しにより製膜することが好ましい。
マット剤を分散液にする場合、その混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いることが好ましい。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。
【0021】
(マイクロ波プラズマ処理)
本発明の製造方法では、前記支持体の一方の表面を表面粗さ4.5〜25nmに制御する工程として、マイクロ波プラズマ処理を用いることもできる。前記マイクロプラズマ処理の好ましい態様としては、以下の態様を挙げることができる。
BH−10(株式会社ニッシン)周波数2.45GHz、出力〜10kW、プロセスガスN2で処理し、処理時間を変更することで表面粗さを制御することができる。
【0022】
(b)塗布工程
本発明の製造方法は、前記支持体のもう一方の表面上に、硬化性コレステリック液晶化合物を含む硬化性液晶組成物を塗布する塗布工程を含む。
【0023】
(材料)
本発明の製造方法に使用することができる材料について説明する。本発明の製造方法は、硬化性コレステリック液晶化合物、溶剤(有機溶媒)を使用する。さらに本発明の製造方法では、前記硬化性液晶組成物が、重合性棒状液晶化合物、配向制御剤、および溶剤を含有することが、良好な配向性を得る観点から好ましい。また、本発明の製造方法では、重合開始剤を含有していることが好ましい。
【0024】
硬化性コレステリック液晶化合物:
本発明の方法に利用される硬化性液晶組成物は、硬化性コレステリック液晶化合物を含む。前記硬化性コレステリック液晶化合物は重合性コレステリック液晶化合物であることが好ましい。前記硬化性コレステリック液晶化合物は、棒状であっても、円盤状であってもよいが、棒状であることが好ましい。
【0025】
本発明に使用可能な棒状の重合性コレステリック液晶化合物の例は、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0026】
本発明の製造方法では、前記硬化性液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであり、前記硬化性液晶組成物は、少なくとも1種の硬化性コレステリック液晶化合物を含む。
【0027】
重合性コレステリック液晶化合物は、重合性基をコレステリック液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、コレステリック液晶化合物の分子中に導入できる。重合性コレステリック液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性コレステリック液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性コレステリック液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性コレステリック液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0028】
また、前記硬化性液晶組成物中の硬化性コレステリック液晶化合物の添加量は、硬化性液晶組成物に対して、10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、30〜40質量%であることが特に好ましい。
【0029】
キラル剤(光学活性化合物):
前記硬化性液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであり、そのためには、キラル剤を含有している。
前記キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。前記キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と硬化性コレステリック液晶化合物が重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性コレステリック液晶化合物との重合反応により、コレステリック液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性コレステリック液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、前記キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
前記硬化性液晶組成物中のキラル剤は、併用される前記硬化性コレステリック液晶化合物に対して、1〜10質量%であることが好ましい。
【0030】
有機溶媒:
硬化性コレステリック液晶化合物を溶解させる、前記有機溶媒としては特に制限はなく、公知の溶剤を用いることができる。例えば、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。
本発明の製造方法では、1種又は2種以上の有機溶媒を用いることができ、2種以上の有機溶媒を用いることが好ましい。
【0031】
配向制御剤:
本発明に使用可能な配向制御剤の好ましい例には、下記一般式(I)〜(IV)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。
尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなり、また赤外領域での反射率が増大する。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、コレステリック液晶相の螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生したりし、ヘイズの増大や回折性を示すため好ましくない。
【0032】
【化1】

【0033】
前記一般式中、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルコキシ基を表し、炭素原子数1〜20のアルコキシ基がより好ましく、炭素原子数1〜15のアルコキシ基がさらに好ましい。但し、アルコキシ基中の1以上のCH2及び互いに隣接しない2以上のCH2は、−O−、−S−、−OCO−、−COO−、−NRa−、−NRaCO−、−CONRa−、−NRaSO2−、又は−SO2NRa−で置換されていてもよい。Raは、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。1以上のフッ素原子を有するのが、層の空気界面に多く分布して偏在し、上層への溶出・拡散が容易になるので好ましい。末端の炭素原子がフッ素原子で置換されているのが好ましく、末端にパーフルオロアルキル基を有しているのが好ましい。
Rの好ましい例には、
−OCn2n+1
−(OC24n1(CF2n2
−(OC36n1(CF2n2
−(OC24n1NRaSO2(CF2n2
−(OC36n1NRaSO2(CF2n2
なお、上記式中、n、n1及びn2はそれぞれ1以上の整数であり、nは1〜20であるのが好ましく、5〜15であるのがより好ましく;n1は1〜10であるのが好ましく、1〜5であるのがより好ましく;n2は1〜10であるのが好ましく、2〜10であるのがより好ましい。
前記式中、m1、m2及びm3はそれぞれ、1以上の整数を表す。
m1は、1又は2であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。1である場合はパラ位、2である場合は、パラ位とメタ位にRが置換しているのが好ましい。
m2は、1又は2であるのが好ましく、1であるのがより好ましい。1である場合はパラ位、2である場合は、パラ位とメタ位にRが置換しているのが好ましい。
m3は、1〜3であるのが好ましく、−COOHに対して、2つのメタ位と1つのパラ位にRが置換しているのが好ましい。
【0034】
前記式(I)の化合物の例には、特開2005−99248号公報の[0092]及び[0093]中に例示されている化合物が含まれる。
前記式(II)の化合物の例には、特開2002−129162号公報の[0076]〜{0078}及び[0082]〜[0085]中に例示されている化合物が含まれる。
前記式(III)の化合物の例には、特開2005−99248号公報の[0094]及び[0095]中に例示されている化合物が含まれる。
前記式(IV)の化合物の例には、特開2005−99248号公報の[0096]中に例示されている化合物が含まれる。
前記配向制御剤の使用量は、前記硬化性コレステリック液晶化合物に対して(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
重合開始剤:
硬化性液晶組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
前記光重合開始剤の使用量は、前記硬化性コレステリック液晶化合物に対して(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
その他の添加剤:
その他、上記液晶組成物は、配向の均一性や塗布適性、膜強度を向上させるために、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、前記液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0037】
(塗布方法)
前記硬化性液晶組成物は、前記有機溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。本発明の製造方法では、前記硬化性液晶組成物に光重合開始剤を添加することが好ましい。
本発明の塗布工程は、前記硬化性液晶組成物を塗布液にして完成させた後に、例えば、ポリマーフィルム、ガラス板、石英板等の支持体の表面に、又は必要であれば、基板上に形成された配向膜表面に塗布されることが好ましい。前記硬化性液晶組成物の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。
【0038】
(c)配向工程:
本発明の製造方法は、(c)塗布された前記硬化性液晶組成物を乾燥して、前記硬化性コレステリック液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする配向工程を含む。
なお、本発明の製造方法は、前記(a)塗布工程後、(b)配向工程の前後に、塗布された硬化性液晶組成物を乾燥する乾燥工程を有していてもよい。前記乾燥工程はいかなるタイミングで行ってもよいが、塗布工程の後で行うことが好ましく、塗布工程の後で配向工程の前に行うことが好ましい。また、前記乾燥工程は、加熱、送風その他の方法により制限なく行うことができる。
【0039】
前記(c)配向工程では、コレステリック液晶相への転移温度とするために、塗布された前記硬化性液晶組成物に熱を加える。前記熱を加える方法としては、例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、コレステリック液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的にコレステリック液晶相の状態にすることができる。前記硬化性液晶組成物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃以上であれば液晶相を呈する温度範囲にすることが容易であり、200℃以下であれば熱エネルギーの消費等の観点から好ましく、さらに支持体の変形や変質等に対しても有利である。
前記硬化性コレステリック液晶化合物を配向させ、コレステリック液晶相の状態とするには、80℃〜90℃で1.5分〜5分熱を加えることが特に好ましい。
【0040】
(d)照射工程
本発明の製造方法は、(d)前記硬化性液晶組成物を硬化させてコレステリック液晶相を固定した光反射層を形成する工程(以下、照射工程とも言う)を含む。
前記活性照射線としては、紫外線等を用いることができる。紫外線照射を利用する態様では、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。
【0041】
活性放射線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、硬化性液晶組成物に活性放射線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
【0042】
コレステリック液晶相を固定する反応を促進するため、加熱条件下で活性放射線照射を実施してもよい。また、活性放射線照射時の温度は、コレステリック液晶相が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。
【0043】
上記照射工程では、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、活性放射線照射によってコレステリック液晶相の配向状態を固定する。
【0044】
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に光反射層中の液晶組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0045】
(e)帯電工程
本発明の製造方法は、(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程を含む。なお、本発明では、前記支持体と前記光反射層を共にプラスに帯電させても、共にマイナスに帯電させてもよい。また、前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程は、本発明の製造方法のどのタイミングで行ってもよく、前記支持体を帯電させるタイミングと、前記光反射層を帯電させるタイミングは異なっていても同時であってもよい。また、本発明の製造方法では、前記支持体と前記光反射層の帯電を1回で行っても複数回行ってもよい。但し、本発明の製造方法が、後述する(f)前記支持体と前記光反射層の積層体を巻き取る工程を含む場合は、そのときまでに前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させておき、その状態で巻き取ることが好ましい。
【0046】
前記(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程は、特に制限はなく、いかなる方法で行ってもよい。例えば、前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を少なくとも1回ずつパスロールと接触させる工程、荷電しているパスロールに前記支持体および前記光反射層の少なくとも一方の表面を接触させる工程の他、パスロールを使わない場合はコロナ放電、帯電ブラシ等の方法で帯電させることができる。
その中でも、本発明の製造方法は、前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を少なくとも1回ずつパスロールと接触させる工程、あるいは、荷電しているパスロールに前記支持体および前記光反射層の少なくとも一方の表面を接触させる工程を含むことが好ましい。
【0047】
(e−1)前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を少なくとも1回ずつパスロールと接触させる工程
まず、前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を少なくとも1回ずつパスロールと接触させる工程について説明する。この工程では、前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を、前記パスロールと接触させて摩擦を生じさせたときの静電気によって、帯電させることが好ましい。このとき、前記パスロールが、前記支持体の表面および前記光反射層の表面のいずれの電気極性とも逆の電気極性となる帯電列上の物質を表面に含むことが好ましい。ここで、前記光反射層の表面は、液晶配向性の観点などから無機微粒子などの上記に挙げた材料以外の不純物をなるべく含んでいないコレステリック液晶層であることが好ましい。そのため、前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を少なくとも1回ずつパスロールと接触させて前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる場合、前記支持体の表面と、前記パスロールの表面の材料によって、達成することが好ましい。具体的には、本発明に好ましく用いられる材料の帯電系列を下記表1に記載する。なお、表1は、表中の任意の2つの物質間で摩擦を生じさせたとき、上側の物質ほどプラスに帯電し易い傾向があり、下側の物質ほどマイナスに帯電し易い傾向にあることを表す。
【0048】
【表1】

【0049】
上記表1より、例えば、前記支持体の表面がマット剤としてシリカを含有するポリオレフィンフィルムである場合、前記パスロールがゴムロール場合、このパスロールと接触させながら搬送することで、共にプラスに帯電させることができることがわかる。
また、前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を少なくとも1回ずつパスロールと接触させる工程の場合、前記パスロールは表面と内部で異なる材料を用いたロールであってもよい。本発明の製造方法では、前記支持体の表面粗さが4.5〜25nmである側の材料や、前記液晶層(光反射層)の帯電系列とも関連するが、前記パスロールの表面がゴム、ウレタンまたは帯電系列上好ましく用いられる適切な金属であることが、前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させやすい帯電系列上の位置である観点から、好ましい。さらに、前記パスロールは、ゴムロール、ウレタンロール、(少なくとも表面が金属のロールで)ハードクロムメッキロールまたはアルミニウムコーティングロールであることが好ましく、ゴムロール、ウレタンロールまたはアルミニウムコーティングロールであることが特に好ましく、ゴムロールまたはウレタンロールであることが特に好ましく、ウレタンロールであることがさらにより好ましい。
前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を少なくとも1回ずつパスロールと接触させるとき、前記パスロールは、本発明の製造方法における前記支持体および前記光反射層を含む積層体の搬送方向と同じ方向に回転していることが、スリキズの発生を抑制する観点から好ましい。また、前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面にそれぞれ付与する電荷の大きさは、本発明の趣旨に反しない限り特に制限はない。
【0050】
(e−2)帯電しているパスロールに前記支持体および前記光反射層の少なくとも一方の表面を接触させる工程
次に、帯電しているパスロールに前記支持体および前記光反射層の少なくとも一方の表面を接触させる工程について説明する。この工程では、上記表1の帯電列の傾向から、(e−1)前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を少なくとも1回ずつパスロールと接触させる工程のみで前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させることが達成できない材料を用いても、前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させることができる。例えば、表面処理されたPETフィルムを支持体として用いて、特にマット剤含有層をもうけていない支持体を用いる場合には、この方法を本発明の製造方法では採用することができる。
このような帯電しているパスロールを用いる方法としては、特に制限はないが、例えば以下の方法で前記支持体および前記光反射層の少なくとも一方の表面の帯電状態を制御することができる。特開平6−348110号公報に記載の感光ドラムを帯電させるための帯電ロールのような帯電ロールを支持体に直接接触させる。あるいは帯電ロールを接触させて帯電させた金属ロールを支持体に接触させる。
帯電しているパスロールを用いる方法では、帯電しているパスロールに前記支持体および前記光反射層の一方の表面を接触させて特定の電気極性に帯電させ、別の荷電しているパスロールに前記支持体および前記光反射層のもう一方の表面を接触させて同じ電気極性に帯電させてもよい。また、前記(e−1)前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を少なくとも1回ずつパスロールと接触させる工程と組み合わせて用いてもよく、例えば、硬化性コレステリック液晶膜をゴムロールと接触させた摩擦により静電気でプラスに帯電させ、表面処理された側のPETフィルム表面を荷電しているパスロールと接触させてプラスに帯電させる組合せなどを用いることができる。
荷電しているパスロールに前記支持体および前記光反射層の少なくとも一方の表面を接触させる工程も、前記パスロールは表面と内部で異なる材料を用いたロールであってもよい。前記パスロールの表面が金属であることが荷電させやすさの観点から好ましく、前記パスロールがハードクロムメッキロールまたはアルミニウムコーティングロールであることがより好ましく、アルミニウムコーティングロールであることが特に好ましい。
【0051】
(f)巻き取り工程
本発明の製造方法は、(f)前記支持体と前記光反射層の積層体を巻き取る工程を含むことが、好ましい。本発明の製造方法では前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させているため、このような巻き取り工程を行った場合にブロッキングが生じにくい。本発明の製造方法では、前記(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程で帯電された前記支持体と前記光反射層は、少なくとも巻き取り工程が完了するまで帯電が失われないことが好ましく、前記の方法により十分に帯電させることができる。また、巻き取った後のフィルムを保管しておく観点からは、巻き取り開始から36時間帯電が失われないことが好ましく、72時間帯電が失われないことが好ましい。
【0052】
(g)積層工程
また、本発明の製造方法は、前記光反射層を複数積層する場合、1層積層するごとに巻き取り工程を行ってもよく、複数層積層してから巻き取り工程を行ってもよい。その中でも、本発明の製造方法では、前記光反射層の上で、上記(b)〜(f)を繰り返す工程を含むこと、すなわち、(b)前記支持体のもう一方の表面上に、硬化性コレステリック液晶化合物を含む硬化性液晶組成物を塗布する塗布工程と、(c)塗布された前記硬化性液晶組成物を乾燥して、前記硬化性コレステリック液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする配向工程と、(d)前記硬化性液晶組成物を硬化させてコレステリック液晶相を固定した光反射層を形成する工程と、(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程と、(f)前記支持体と前記光反射層の積層体を巻き取る工程を繰り返す工程を含むことが、低コストで連続製造する観点から好ましい。本発明の製造方法は、前記硬化性液晶組成物の種類を変更して、前記塗布工程、配向工程及び照射工程を少なくとも1回繰り返して光反射層を3層以上積層する積層工程を含むことが好ましい。このような光反射層が3層以上の積層体を得る場合においても、本発明の製造方法は好ましく採用することができる。
【0053】
[光反射性フィルム]
次に、本発明の光反射性フィルムの製造方法で製造することができる、光反射性フィルムについて説明する。
【0054】
(構成)
本発明の製造方法によって製造される光反射性フィルムの例を図4に示す。
図4に示す光反射性フィルム21は、樹脂フィルム12の一方の表面上に形成された、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層14aを有している。また、図4に示す光反射性フィルム21は、さらにその上に、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層14b、16a及び16bをさらに有する。本発明の製造方法で製造される光反射性フィルムはこれらの態様に限定されるものではなく、3層以上光反射層が形成されていることが好ましく、6層以上光反射層が形成されている態様がさらに好ましい。一方、前記光反射層が奇数層形成されていてもよい。
【0055】
図4中に示す光反射性フィルム21は、各光反射層が、コレステリック液晶相を固定してなるので、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチに基づいて、特定の波長の光を反射する光選択反射性を示す。例えば、隣接する光反射層(14aと14b、16aと16b)が、同程度の螺旋ピッチを有するとともに、互いに逆向きの旋光性を示していると、同程度の波長の左及び右円偏光のいずれも反射することができるので好ましい。例えば、図4の光反射性フィルム21の一例として、光反射層14a及び14bのうち、光反射層14aが右旋回性のキラル剤を含有する液晶組成物からなり、光反射層14bが左旋回性のキラル剤を含有する液晶組成物からなり、光反射層14a及び14bで、螺旋ピッチが同程度d14nmである例が挙げられる。
また、図4の光反射性フィルム21のそれぞれの一例として、光反射層14a及び14bの関係が光反射性フィルム21の上記例と同様であり、光反射層16aが右旋回性のキラル剤を含有する液晶組成物からなり、光反射層16bが左旋回性のキラル剤を含有する液晶組成物からなり、光反射層16a及び16bで螺旋ピッチが同程度d16nmであり、及びd14≠d16を満足する例が挙げられる。この条件を満足する光反射性フィルム21は、上記光反射性フィルム21の例と同様の効果を示すとともに、さらに、光反射層16a及び16bによって、反射される光の波長帯域が拡張し、広帯域の光反射性を示す。
【0056】
本発明の製造方法により製造される光反射性フィルムは、各層のコレステリック液晶相に基づく選択反射特性を示す。前記光反射性フィルムは、右捩れ及び左捩れのいずれのコレステリック液晶相を固定してなる層を有していてもよい。同一の螺旋ピッチの右捩れ及び左捩れのコレステリック液晶相を固定した層をそれぞれ有していると、特定の波長の光に対する選択反射率が高くなるので好ましい。また、同一の螺旋ピッチの右捩れ及び左捩れのコレステリック液晶相を固定した層の対を、複数有していると、選択反射率を高められるとともに、選択反射波長域を広帯域化するので好ましい。
なお、コレステリック液晶相の旋回の方向は、棒状液晶の種類又は添加されるキラル剤の種類によって調整でき、螺旋ピッチは、これらの材料の濃度によって調整できる。
【0057】
(厚み)
また、光反射性フィルムが光反射層を2層以上有する積層体であるときの総厚みについては特に制限はないが、コレステリック液晶相を固定した光反射層を4層以上含み、赤外線反射域に広く光反射特性、即ち遮熱性、を示す態様では、各層の厚みは、3〜6μm程度であり、且つ光反射性フィルムの総厚みは、通常、15〜40μm程度になるであろう。
【0058】
(反射波長)
本発明の製造方法は、光反射性フィルムの製造方法に関する。なお、光反射性フィルムの反射する特定の領域の波長は、製造方法のさまざまな要因によってシフトさせることができることが知られており、キラル剤の添加濃度のほか、コレステリック液晶相を固定するときの温度や照度と照射時間などの条件などでシフトさせることができる。
本発明の光反射性フィルムの製造方法は、800nm以上の赤外光を反射する赤外光反射性フィルムを製造するときにより好ましく用いることができる。
【0059】
本発明の製造方法は、反射中心波長が950〜2000nmにある赤外光反射性フィルムを製造するときに好ましく用いることができ、反射中心波長が950〜1400nmにある赤外光反射性フィルムを製造するときにより好ましく用いることができる。
【0060】
また、前記光反射性フィルムの1層の光反射層(または複数層の光反射層を有する場合は各光反射層)の選択反射波長については特に制限はない。用途に応じて、螺旋ピッチを調整することで、所望の波長光に対する反射特性を持たせることができる。一例は、少なくとも1層が、波長800nm〜2000nmの赤外光波長域の光の一部を反射する、いわゆる赤外反射膜であり、それにより遮熱性を示す。
【0061】
(反射率)
前記光反射性フィルムの一例は、波長900nm〜1160nmの太陽光を75%以上反射することが可能であり、80%以上反射できることが好ましく、90%以上反射できることが好ましい。この性能を使ってウインドウフィルムを作ると、JIS A−5759(建築窓ガラス用フィルム)で規定されている遮蔽係数で0.7以下となる高い遮熱性能を達成可能である。
【0062】
コレステリック液晶相を固定化する場合には、一つの層では右あるいは左円偏光成分のどちらか一方のみになり、最大50%の反射性能を示す。右円偏光を反射する層と左円偏光を反射する層を塗り重ねることで、最大100%の反射性能を高めることができる。反射帯域の幅は、通常100〜150nmになるが、コレステリック層の複屈折率Δnが高い材料を用いたり、作製した膜内部のキラル剤の膜断面方向のキラル剤の濃度分布をつけたりすることで、この反射帯域を150〜300nm程度まで広げることができる。
【0063】
(ヘイズ)
前記光反射性フィルムは、低ヘイズを達成可能であり、具体的には、光反射性フィルムのヘイズ0.9%未満を達成可能である。前記光反射性フィルムは、前記光反射性フィルムのヘイズが0.6%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることが特に好ましい。
窓等に貼付されている光反射性フィルムには、透明であることが要求され、ヘイズは低いほど好ましい。なお、ヘイズは、JIS K 7136:2000(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に準拠して測定することができる。
【0064】
(形態)
前記光反射性フィルムの形態は、シート状に広げられた形態であっても、ロール状に巻き取られた形態であっても構わないが、ロール状に巻き取られていることも好ましい。すなわち、前記光反射性フィルムは製造工程において巻き取りと送り出しを繰り返された場合にブロッキングを抑制できるために良好な光学特性を維持できることに加え、さらに製造後にロール状に巻き取られた状態で保管、搬送などをされてもブロッキングを抑制できるために良好な光学特性を維持できる。
前記光反射性フィルムは、それ自体が窓材として利用できる自己支持性のある部材であっても、またそれ自体は自己支持性がなく、自己支持性のあるガラス板等の支持体に貼合等されて用いられる部材であってもよい。
【0065】
(用途)
前記光反射性フィルムの用途は特に制限されない。前記光反射性フィルムは、窓用赤外光反射性フィルムであることが好ましい。
前記光反射性フィルムは、さらにガラス板やプラスチック支持体等の表面に貼合されて用いられてもよい。この態様では、前記遮熱部材のガラス板等との貼合面は、粘着性であるのが好ましい。本実施形態では、前記光反射性フィルムは、ガラス板等の支持体表面に貼合可能な、粘着層、易接着層等を有しているのが好ましい。勿論、非粘着性の前記光反射性フィルムを、接着剤を利用してガラス板の表面に貼合してもよい。
【0066】
前記光反射性フィルムは、太陽光に対して遮熱性を示すことが好ましく、太陽光の700nm以上の赤外線を効率よく反射することが好ましい。
前記光反射性フィルムは、車両用又は建物用の遮熱性窓そのものとして、又は遮熱性付与を目的として、車両用又は建物用の窓に用いられるシート又はフィルムとして、利用することができる。その他、フリーザーショーケース、農業用ハウス用材料、農業用反射シート、太陽電池用フィルム等として用いることができる。その中でも、前記光反射性フィルムは、窓用赤外光反射性フィルムに用いることが、高可視光透過率と低へイズという特性の観点から好ましい。
【0067】
また、前記光反射性フィルムは、合わせガラス内部に組み込まれて遮熱部材として利用されてもよい。
前記遮熱部材は、住宅、オフィスビル等の建造物、又は自動車等の車両の窓に、日射の遮熱用の部材として貼付される。又は、日射の遮熱用の部材そのもの(たとえば、遮熱用ガラス、遮熱用フィルム)として、その用途に供することができる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例と比較例(なお比較例は公知技術というわけではない)を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0069】
[実施例1]
1.光反射性フィルムの製造
(支持体)
樹脂フィルムとして、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、富士フイルム(株)社製)を使用した。
実施例1では、上記PETの片面に、マット剤を含有する無機粒子含有層を以下の方法で作製して設けた。
下記表2の組成のラテックス水分散液を、乾燥膜厚が1.0μmになるようにダイコーターで上記PET上に塗布した。これを185℃で3分間乾燥させて膜を形成した。
【0070】
【表2】

【0071】
(塗布液(硬化性液晶組成物)の調製)
下記表3および表4に示す組成の塗布液をそれぞれ調製した。
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【化2】

【0074】
各層の形成に用いた塗布液を、以下の表5にまとめた。また、各層の反射特性及び反射波長のピークも合わせて示した。
【0075】
【表5】

【0076】
図1に示す連続塗布装置を使って、以下のような条件で実施例1の光反射性フィルムを作製した。
(a) 上記にて作成したマット剤を含む層11をバック面側に設けたPETフィルム12を支持体10として、送り出し部から送り出し;
(b) 前記支持体10のマット剤を含む層11を設けていないもう一方の表面上に上記にて調製した第1層用の塗布液を、ダイコーター33を用いて、乾燥後の乾膜の厚みが4〜5μm程度になるように、室温にて塗布し;
(c) 乾燥部34において室温にて30秒間乾燥させた後、熟成部35において85℃の雰囲気で4分間熟成し、コレステリック液晶相とし;
(d) その後、UV照射部36において30℃でアイグラフィック製メタルハライドランプにて出力を調整して、UV照射し、コレステリック液晶相を固定して第1層(下層)の光反射層14bを支持体上に設けた光反射性フィルム21を作製した。
(e) 作製した光反射性フィルム21を搬送しながら、巻き取り部37の直前に光反射性フィルムの各表面側にそれぞれ1つずつ設置しておいたアルミニウムコーティングされたパスロール38と、25℃で接触させて、支持体10と第1層の光反射層14bをそれぞれパスロールとの摩擦により帯電させた。
(f) パスロール38と接触させた光反射性フィルム21を、帯電計39を通過させた後、巻き取り部37で巻き取った。
(g) 巻き取った光反射性フィルムを、送り出し部31に取り付けて、塗布液を次の層用の塗布液に変更して上記(b)〜(f)を繰り返して、第2層〜第6層の光反射層を形成した。ここで、第4層までの光反射層を積層した光反射フィルム21の断面図を図4に示し、さらに巻き取った状態の光反射性フィルム21が積層している状態の概略図を図3に示した。本発明の製造方法では、複数層の光反射層を積層した場合も、マット剤を含む層11と、第4層の光反射層がともにプラスに帯電しており、2枚の光反射性フィルムの間の電気的な斥力とマット剤を含む層11表面の適度な凹凸により、フィルムの接触を抑制でき、ブロッキングを抑制することができる。
第6層目の光反射層まで順次積層した光反射性フィルムを巻き取り、得られた光反射性フィルムを実施例1の光反射性フィルムとした。
【0077】
[実施例2〜8、比較例1〜8]
下記表6に記載のとおりに支持体のバック面の種類、表面粗さRa、巻き取り前のパスロールの素材を変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例の光反射性フィルムを製造した。
但し、実施例2、3、比較例1および2では、それぞれマット剤の含有量を10質量部、15質量部、2質量部、20質量部とし、マット剤含有膜の表面粗さを制御した。また、実施例4、5および比較例3〜6では、マット剤含有膜を設ける代わりに、PETのバック面にマイクロ波プラズマ処理を実施し、その表面粗さRaを下記表6に記載の値に制御した。なお、マイクロ波プラズマ処理の条件は、例えば実施例4では以下のとおりであった。
BH−10(株式会社ニッシン)周波数2.45GHz、出力1000W、プロセスガスN2、処理時間1分で表面粗さを制御。
【0078】
前記表1に記載の帯電列のとおり、実施例1〜3および比較例1〜4では、表5に記載の構成でパスロールを通過させることのみによって、支持体の両表面にそれぞれ表5に記載の帯電量を付与することができた。一方、実施例4および比較例5では、表面処理されたPETとアルミニウムコーティングされたパスロールとを接触させると通常はマイナスに帯電するところ、これらの実施例および比較例ではバック面側のパスロールにプラスの電荷を帯びた帯電ロールに接触させることによって支持体のバック面側をプラスに帯電させた。また、実施例5および比較例6では、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層とアルミニウムコーティングされたパスロールとを接触させると通常はプラスに帯電するところ、これらの実施例および比較例では光反射層側のパスロールにマイナスの電荷を帯びた帯電ロールに接触させることによって支持体の光反射層側をマイナスに帯電させた。実施例6〜8、比較例7および8では巻き取り前のパスロールの素材を下記表6に記載のようにゴムまたはウレタンに変更し、下記表6に記載の態様で帯電させた。
【0079】
2.光反射性フィルムの評価
作製した各実施例および比較例の光反射性フィルムについて、以下の項目で評価した。
(1) 帯電量:
各実施例および比較例の光反射性フィルムの製造時に、巻き取り部の1m前において、6層目の光反射層を積層したときのパスロールを通過した後の帯電量を、支持体のバック面および最外層の光反射層からそれぞれ50mm離れた位置で、帯電計(春日電機株式会社製、商品名KSD−0108)にて測定した。
【0080】
(2) 表面粗さ:
各実施例および比較例の光反射性フィルムを巻き出し、200μm×200μmにカットした。そのフィルム表面をAFM(KEYENCE社製、商品名VN−8000)にて測定した。
【0081】
(3) 反射率:
遮熱性能は、塗膜の日射反射率としてJIS R 316 :1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法」に記載の算出方法に準じて計算する方法(一般的に用いられている)に準拠して測定した。
反射率は、各実施例および比較例の光反射性フィルムを巻き出し、200μm×200μmにカットし、積分球付属装置付きの分光光度計を用いて測定した。下記表6には、波長900nm〜1160nmの反射率を示した。
【0082】
(4) ヘイズ:
コレステリック液晶層の配向が悪化すると反射率が低下するのみならず、ヘイズが顕著に上昇する。コレステリック液晶層の配向性の指標として、ヘイズを測定した。また、マット剤含有膜の透明度についてもヘイズを測定することで評価した。
ヘイズは、各実施例および比較例の光反射性フィルムを巻き出し、200μm×200μmにカットし、JIS K 7136:2000(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に準拠して測定した。
【0083】
以下の表6にこれらの測定で得られた結果を示す。
【0084】
【表6】

【0085】
上記表6中、*1は波長900nm〜1160nmの光の反射率を表す。反射率が75%以上であれば、反射フィルムとして性能が十分であることを意味し、75%未満は性能不十分であることを意味する。
*2は光反射性フィルムのヘイズを表す。光反射性フィルムのヘイズが0.9%以下である場合は、“透明性が高く窓用のフィルムとして利用可能なレベル”を意味し、光反射性フィルムのヘイズが0.9%を超える場合は“(主に内部)散乱による白っぽさが観察され、窓用のフィルムとして透明性が不十分”を意味する。なお、光反射性フィルムのヘイズの下に設けた括弧内の数値は、コレステリック液晶層の積層膜のみ(光反射層のみ)のヘイズである。
【0086】
上記表6より、本発明の光反射性フィルムは、いずれも反射率が良好であり、かつ、ヘイズも小さいことがわかった。
一方、比較例1、3、5および6より、前記支持体の表面粗さが本発明で規定する範囲を下回ると、反射率もヘイズも悪くなることが分かった。また、比較例2より、前記支持体の表面粗さが本発明で規定する範囲を上回ると、ヘイズが悪くなることが分かった。比較例4より、前記支持体と前記光反射層の表面の帯電が逆符号であると、反射率もヘイズも悪くなることが分かった。
【0087】
[実施例11]
実施例1で得られた光反射性フィルムについて、ロール状に巻き取った状態で120分放置したのちに電圧計を用いて、帯電状態を測定した。その結果、十分に帯電していることがわかった。
【符号の説明】
【0088】
10 支持体
11 無機粒子含有層
12 樹脂フィルム
13 無機粒子
14a、14b、16a、16b 光反射層
21 光反射性フィルム
31 送り出し部
32 ラビング部
33 ダイコーター
34 乾燥部
35 熟成部
36 UV照射部
37 巻き取り部
38 パスロール
39 帯電計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一方の表面の表面粗さが4.5〜25nmである支持体を用い、
(b)前記支持体のもう一方の表面上に、硬化性コレステリック液晶化合物を含む硬化性液晶組成物を塗布する塗布工程と、
(c)塗布された前記硬化性液晶組成物を乾燥して、前記硬化性コレステリック液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする配向工程と、
(d)前記硬化性液晶組成物の硬化反応を進行させてコレステリック液晶相を固定した光反射層を形成する工程と、
(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程とを含むことを特徴とする光反射性フィルムの製造方法。
【請求項2】
(f)前記支持体と前記光反射層の積層体を巻き取る工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程が、前記支持体および前記光反射層を含む積層体の両表面を、少なくとも1回ずつパスロールと接触させる工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記パスロールが、前記支持体および前記光反射層のいずれの電気極性とも逆の電気極性となる帯電列上の物質を表面に含むことを特徴とする請求項3に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記(e)前記支持体と前記光反射層を同極に帯電させる工程が、荷電しているパスロールに前記支持体および前記光反射層の少なくとも一方の表面を接触させる工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記パスロールが、ゴムロール、ウレタンロール、ハードクロムメッキロールまたはアルミニウムコーティングロールであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項7】
(g)前記光反射層の上で、上記(b)〜(f)を繰り返す工程を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記硬化性液晶組成物が、重合性棒状液晶化合物、配向制御剤、および溶剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記光反射層として、右円偏光の光を反射する層および左円偏光の光を反射する層を少なくとも一層ずつ形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記支持体がポリエチレンテレフタレートフィルムを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項11】
マット剤含有層の積層、マイクロ波プラズマ処理またはマット剤の練り込みによって、前記支持体の一方の表面を表面粗さ4.5〜25nmに制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記支持体に対する、マット剤の添加量が15質量%以下であることを特徴とする請求項11に記載の光反射性フィルムの製造方法。
【請求項13】
窓貼付用または合わせガラス用光反射性フィルムの製造方法であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の光反射性フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−203237(P2012−203237A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68453(P2011−68453)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】