説明

光受信装置

【課題】遅延制御の精度と応答性を向上させた光DQPSK受信装置を実現する。
【解決手段】DQPSK光位相変調信号を、直交した位相成分に分岐して第1遅延干渉計及び第2遅延干計に入力させ、これらの出力を夫々一対のバランス型ダイオード構成の第1受光器及び第2受光器により第1受信信号及び第2受信信号に変換すると共に、前記各遅延干渉計の一対のバランス型ダイオードの受光電流の検出信号を入力し前記第1遅延干渉計及び第2遅延干渉計の前記遅延器にフィードバックする遅延制御部を具備する光受信装置において、前記第1受信信号の電圧信号を入力して減算する第1減算回路と、前記第2受信信号の電圧信号を入力して減算する第2減算回路と、前記第1減算回路の出力信号及び前記第2減算回路の出力信号を入力し、前記第1遅延干渉計及び第2遅延干渉計の前記遅延器にフィードバックする遅延制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から供給されるDQPSK光位相変調信号を、直交した位相成分に分岐して夫々遅延器を有する第1遅延干渉計及び第2遅延干計に入力させ、これら遅延干渉計の出力を夫々一対のバランス型ダイオードで構成される第1受光器及び第2受光器により第1受信信号及び第2受信信号に変換すると共に、前記各遅延干渉計の一対のバランス型ダイオードの受光電流の検出信号を入力し前記第1遅延干渉計及び第2遅延干渉計の前記遅延器にフィードバックする遅延制御部を具備する光受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、特許文献1に開示されている従来の光受信装置の構成例を示す機能ブロック図である。この光受信装置は、図示しない光送信機から伝送用光ファイバを介して入力される光DQPSK信号(差動四相位相偏移変調信号)を受信して第1受信信号S1及び第2受信信号S2に変換する装置であり、光DQPSK信号を入力する分波器10、第1遅延干渉計20、第2遅延干渉計30、第1受光器40、第2受光器50及び遅延制御部60で構成されている。分波器10は光カプラであり、光DQPSK信号を2分波してその出射光を第1遅延干渉計20及び第2遅延干渉30に出力する。
【0003】
第1遅延干渉計20は、分波器21、遅延器22及び合波器23から構成され、前記分波器10から入力された光DQPSK信号における実軸上の2位相成分を強度変調信号に変換して第1受光器40に出射する。分波器21は、前記分波器10から入力された光DQPSK信号を2分波し、一方を遅延器22に出射すると共に他方を合波器23に出射する。
【0004】
遅延器22は、前記分波器21から入力された光DQPSK信号を所定の遅延時間だけ遅延させて合波器23に出射する。合波器23は、分波器21から入力された光DQPSK信号と遅延器22から入力された所定時間だけ遅延した光DQPSK信号とを合波することにより一対の光強度変調信号に変換して第1受光器40に出射する。
【0005】
第2遅延干渉計30は、分波器31、遅延器32及び合波器33から構成され、前記第1遅延干渉計20と同様の処理を実行し、前記分波器10から入力された光DQPSK信号における虚軸上の2位相成分を強度変調信号に変換して第2受光器50に出射する。
【0006】
このように、第1遅延干渉計20は光DQPSK信号における実軸上の2位相成分を強度変調信号に変換すると共に、第2遅延干渉計30は光DQPSK信号における虚軸上の2位相成分を強度変調信号に変換する。
【0007】
つまり、第1、第2遅延干渉計20,30は、互いに90°位相が異なる2つの位相成分を夫々強度変調信号に変換する。尚、このような第1,第2遅延干渉計20,30の動作原理は、特許文献2に記載されているように、光DQPSK信号の受信処理の手法として周知であり、詳細な説明を省略する。
【0008】
第1受光器40は、第1、第2抵抗器Ra1、Rb1及び一対のバランス型フォトダイオード(以下、バランス型ダイオード)PDa1,PDb1から構成されており、前記第1遅延干渉計20から入射された一対の光強度変調信号を差動検出することにより、第1チャンネルの2値NRZ(Non Return to Zero)信号(第1受信信号S1)に変換する。
【0009】
同様に、第2受光器50は、第1、第2抵抗器Ra2、Rb2及び一対のバランス型ダイオードPDa2,PDb2から構成されており、前記第2遅延干渉計30から入射された一対の光強度変調信号を差動検出することにより、第2チャンネルの2値NRZ(Non Return to Zero)信号(第2受信信号S2)に変換する。
【0010】
第1受光器40及び第2受光器50の夫々において、一対のバランス型ダイオードは同一極性方向に直列接続され、直列回路のアノード側が夫々第1抵抗Ra1,Rb1を介してプラス電源(+Vcc)に接続され、カソード側が夫々第2抵抗Ra2,Rb2を介してマイナス電源(−Vcc)接続されている。
【0011】
第1受光器40において、一対のバランス型ダイオードPDa1,PDb1の接続点より第1受信信号S1が出力される。バランス型ダイオードPDa1の受光電流は、第1抵抗Ra1とバランス型ダイオードPDa1のアノードとの接続点に発生する電圧信号Va1で検出される。バランス型ダイオードPDb1の受光電流は、第2抵抗Rb1とバランス型ダイオードPDb1のカソードとの接続点に発生する電圧信号Vb1で検出される。
【0012】
同様に、第2受光器50において、一対のバランス型ダイオードPDa2,PDb2の接続点より第2受信信号S2が出力される。バランス型ダイオードPDa2の受光電流は、第1抵抗Ra2とバランス型ダイオードPDa2のアノードとの接続点に発生する電圧信号Va2で検出され、バランス型ダイオードPDb2の受光電流は、第2抵抗Rb2とバランス型ダイオードPDb2のカソードとの接続点に発生する電圧信号Vb2で検出される。
【0013】
第1受光器40の一対のバランス型ダイオードPDa1,PDb1の受光電流を検出する電圧信号Va1,Vb1及び第2受光器50の一対のバランス型ダイオードPDa2,PDb2の受光電流を検出する電圧信号Va2,Vb2は、遅延制御部60に入力される。
【0014】
遅延制御回路60の演算処理手段61は、第1受光器40の一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号Va1,Vb1を、バッファB1,B2及びAD変換器ADC1,ADC2を介して入力し、電圧信号Va1が最大値、Vb1が最小値(Va1とVb1の差が最大値)をとる操作信号M1を演算し、第1遅延干渉計20の遅延器22にフィードバックする。
【0015】
同様に、演算処理手段61は、第2受光器50の一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号Va2,Vb2を、バッファB3,B4及びAD変換器ADC3,ADC4を介して入力し、電圧信号Va2及びVb2が共に最大値と最小値との中間値(Va2とVb2の差がゼロ値)をとる操作信号M2を演算し、第2遅延干渉計30の遅延器32にフィードバックする。
【0016】
このように各遅延器22,32の遅延時間を制御することにより、第1遅延干渉計20は光DQPSK信号の実軸上の2位相成分を強度変調信号に変換する。また、第2遅延干渉計30は光DQPSK信号の虚軸、つまり上記実軸に直交する位相軸上の2位相成分を強度変調信号に変換する。
【0017】
図10は、遅延時間を示す光位相と受光電流検出値の関係及び制御の最適点を示す特性曲線図である。周期的に変化する第1受光器40のバランス型ダイオードPDa1の受光電流が正側の最大値Iとなる位相Piまたは負側の最大値I´となる位相pi´が第1位相干渉計(Iアーム)20の遅延制御の最適設定値である。
【0018】
一方、最大値と最小値との中間値Qとなる位相Pqが第2位相干渉計(Qアーム)30の遅延制御の最適設定値である。ここで注目すべきは、IアームとQアームの制御最適設定値は90度ずれていることがわかる。すなわち90度ずれていることにより、送信信号の位相直交成分が分離していると判断できる。
【0019】
尚、光DQPSK信号の実軸と虚軸とは直交関係にあるので、操作信号M1で電圧信号Va1及びVb1が共に最大値と最小値との中間値をとるように遅延器22を制御し、操作信号M2で電圧信号Va2が最大値、Vb2が最小値を取るように遅延器32を制御しても同様に光DQPSK信号の各位相成分(4位相成分)を検出することができる。
【0020】
遅延制御部60から第1遅延干渉計20の遅延器22に出力される操作信号M1は、電圧信号Va1,b1の一方の光電流が最大でかつ他方が最小である最適設定値を検出するためにディザを操作信号M1に重畳してもよい。
【0021】
この場合に、第1受光器40から得る受光電流を検出する電圧信号にはディザ成分が重畳されているため、同期検波回路によりディザ成分をモニタして除去する手法、または単純に電圧信号Va1,Vb1のトップまたはボトムを検出する回路を構成すればよい。尚、一方の受光電流が最大でかつ他方が最小については、片側の受光電流を検出する電圧信号のみを使用してもかまわない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2009−232330号公報
【特許文献2】特開2007−020138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従来構成の光受信装置では、次のような問題がある。
(1)演算処理部61は、電圧信号Va1とVb1の差信号が正側の最大値Iとなる位相Piまたは負側の最大値I´となる位相設定値pi´の算出演算並びに電圧信号Va2とVb2の差信号が最大値と最小値との中間値Qとなる位相設定値Pqの算出演算をソフトウェア的に処理するため、プログラムが煩雑で処理が重くなり、遅延制御の応答性の低下要因となっている。
【0024】
(2)図10において、Iアーム(最大/最小)の場合、特徴的な値をとる点I,I´で制御を行うため、回路或いは演算処理部61のソフトウェア処理で遅延制御の最適設定値Pi,Pi´を判定するのは簡易である。しかしながら、Qアームの遅延制御の最適設定値Pqは、光電流検出値が一対の光電流の検出電圧信号が「最小」でも「最大」でもない同じ値となる点(光電流の検出特性の中点)であり、これを判定する場合に制御誤差が発生しやすい。
【0025】
特に演算処理部61のソフトウェア処理で同値であることを判定する場合には、閾値を設けてある範囲内に収束させるといった処理を行うのが一般的である。この場合、閾値の範囲が制御誤差となり伝送特性に影響を及ぼす。
【0026】
(3)第1,第2受光器40,50を構成する4個のバランス型ダイオードの受光感度がばらつく場合、光電流を検出する電圧信号の値が同値になる点が必ずしも遅延制御の最適点とはならないため、ソフトウェア処理が複雑となり伝送特性を劣化させる要因となる。
【0027】
本発明の目的は、遅延制御部におけるソフトウェア処理が遅延制御の制御誤差の要因となることを回避し、遅延制御の精度と応答性を向上させた光受信装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)外部から供給されるDQPSK光位相変調信号を、直交した位相成分に分岐して夫々遅延器を有する第1遅延干渉計及び第2遅延干計に入力させ、これら遅延干渉計の出力を夫々一対のバランス型ダイオードで構成される第1受光器及び第2受光器により第1受信信号及び第2受信信号に変換すると共に、前記各遅延干渉計の一対のバランス型ダイオードの受光電流の検出信号を入力し前記第1遅延干渉計及び第2遅延干渉計の前記遅延器にフィードバックする遅延制御部を具備する光受信装置において、
前記第1遅延干渉計の一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号を入力して減算する第1減算回路と、
前記第2遅延干渉計の一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号を入力して減算する第2減算回路と、
前記第1減算回路の出力信号及び前記第2減算回路の出力信号を入力し、前記第1遅延干渉計及び第2遅延干渉計の前記遅延器にフィードバックする遅延制御部と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【0029】
(2)前記第1減算回路及び前記第2減算回路は、一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号を入力するアナログ差動増幅器により構成されていることを特徴とする(1)に記載の光受信装置。
【0030】
(3)前記遅延制御部は、前記第1減算回路の出力信号が正または負の最大値を維持し、前記第1減算回路の出力信号がゼロ値を維持するフィードバック信号を、前記第1遅延干渉計及び第2遅延干渉計の前記遅延器に出力することを特徴とする(1)または(2)に記載の光受信装置。
【0031】
(4)前記第1減算回路または前記第2減算回路に、前記一対のバランス型ダイオードの受光感度特性誤差を補正する信号を供給するオフセット電圧生成回路を備えることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の光受信装置。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)第1受光器及び第2受光器を構成する一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号は、アナログ差動増幅器による第1減算回路及び第2減算回路により予め減算処理されるので、遅延制御部の演算処理手段のソフトウェ処理の負担を大幅に軽減させることができ、遅延制御の応答性を向上させることができる。
【0033】
特に、第2受光器の一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号は、第2減算回路により予め減算処理されるので、遅延制御部では第2減算回路の出力信号の値を『ゼロ』となる様に制御するシンプルなソフトウェア構成をとることができ、遅延干渉計の制御精度並びに伝送特性を向上することが可能となる。
【0034】
(2)第1受光器及び第2受光器を構成する一対のバランス型ダイオードの受光感度特性がばらついた場合や、第1減算回路及び第2減算回を構成する増幅器のゲインにばらつきがある場合等は、遅延制御の誤差要因となり得るが、アナログ回路によるオフセット補正によりそのばらつきを容易にキャンセルすることができる為、伝送特性の劣化を容易に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用した光受信装置の一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】減算回路の構成例を示す回路図である。
【図3】バランス型ダイオードの電流検出回路の構成例を示す回路図である。
【図4】バランス型ダイオードの電流検出回路の他の構成例を示す回路図である。
【図5】バランス型ダイオードの電流検出回路の更に他の構成例を示す回路図である。
【図6】バランス型ダイオードの電流検出回路から得られる出力特性曲線図である。
【図7】オフセットを補償した減算回路の構成例を示す回路図である。
【図8】オフセットを補償したバランス型ダイオードの電流検出回路から得られる出力特性曲線である。
【図9】従来の光受信装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図10】遅延時間を示す光位相と受光電流検出値の関係及び遅延制御の最適点を示す特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用した光受信装置の一実施例を示す機能ブロック図である。図9で説明した従来構成と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図1において、図9の従来構成に追加された本願発明の特徴部は、第1受光器40からの電圧信号Va1とVb1を入力して減算演算を実行する第1減算回路100及び第2受光器50からの電圧信号Va2とVb2を入力して減算演算を実行する第2減算回路200を設けた構成にある。更に、本願発明の特徴部は、図9に示した遅延制御部60が変更された遅延制御部300の構成にある。
【0038】
第1減算回路100は、第1受光器40のバランス型ダイオードPDa1,PDb1による光電流を検出する電圧信号Va1,Vb1を入力して減算した出力信号Vd1を出力する。同様に、第2減算回路200は、第2受光器50のバランス型ダイオードPDa2,PDb2による光電流を検出する電圧信号Va2,Vb2を入力して減算した出力信号Vd2を出力する。
【0039】
ここで、第1減算回路100及び第2減算回路200は、アナログ差動増幅器により構成されており、第1減算回路100の出力信号Vd1及び第2減算回路200の出力信号Vd2は、遅延制御部300に入力され、夫々バッファB1,B2及びAD変換器ADC1,ADC2を経由して演算処理手段301に渡される。
【0040】
演算処理手段301は、第1減算回路100の出力信号Vd1が正または負の最大値をとる操作信号M1を演算して第1遅延干渉計20の干渉器22へフィードバックする。同様に、演算処理手段301は、第2減算回路200の出力信号Vd2がゼロ値をとる操作信号M2を演算して第2遅延干渉計30の干渉器32へフィードバックする。
【0041】
このように、本発明ではアナログ差動増幅器による第1減算回路100及び第2減算回路200により予め減算処理することにより、遅延制御部300の演算処理手段301のソフトウェ処理の負担を大幅に軽減させることができ、遅延制御の応答性を向上させることができる。
【0042】
特に、第2受光器50の一対のバランス型ダイオードPDa2,PDb2の受光電流を検出する電圧信号Va2,Vb2は、第2減算回路200により予め減算処理されるので、遅延制御部300では第2減算回路の出力信号Vd2の値を『ゼロ』となる様に制御するシンプルなソフトウェア構成をとることができ、遅延干渉計の制御精度並びに伝送特性を向上することが可能となる。
【0043】
図2は、減算回路の構成例を示す回路図であり、第1受光器40からの電圧信号Va1,Vb1を減算演算する第1減算回路100側の構成を示している。第2減算回路200側の構成も同一である。
【0044】
減算回路100は、一対のバランス型ダイオードPDa1,PDb1の受光電流を検出する電流検出回路101,102の電圧信号Va2,Vb2を抵抗R1,R3を介して入力する、フィードバック抵抗R2が接続された演算増幅器A1による単純なアナログ差動増幅器構成である。演算増幅器A1の出力Vd1が遅延制御部300に入力され、操作信号M1が生成される。バランス型ダイオードの受光感度が等しい場合、抵抗値R1=R2とし、R3を任意とすることでこの回路のゲインは1倍となる。
【0045】
図3は、バランス型ダイオードPDa1の電流検出回路101の構成例を示す回路図である。第1抵抗Ra1の端子間電圧は、入力抵抗RA及びフィードバック抵抗RBを持つ演算増幅器A2により所定の倍率で増幅される。演算増幅器A2による増幅率Gaは、Ga=RB/RAとなる。電流検出回路102側の構成も同一である。
【0046】
得られる光電流の検出値に応じて増幅率に対する抵抗値を決定する。図10に示すIアームの最適点IまたはI´に遅延制御したとき、電流検出回路101の出力電圧は、
“最大”または“最小”となり、電流検出回路102の出力電圧は、“最小”または“最大”となる。
【0047】
電流検出回路101,102により増幅された受光電流を検出する電圧信号Va1,Vb1は、演算増幅器A1によるゲイン1の差動増幅により減算されるので、減算された出力信号Vd1は、Iアームの最適点となった場合、図10に示す特性曲線のトップIまたはボトムI´となる電圧信号となる。
【0048】
特性曲線のトップまたはボトムの関係は、復調された信号が正相または逆相といった関係になるだけであり、後段に接続される受信データ識別デバイスにより正しい信号に変換される為、どちらで制御を行ってもよい。
【0049】
図4は、バランス型ダイオードの電流検出回路101の他の構成例を示す回路図である。この回路の特徴は、第1抵抗Ra1の両端電圧をゲイン1のハイインピーダンス入力インスツルメンテーションアンプ(計測アンプ)A3,A4で受け、演算増幅器A5と抵抗R5乃至R8で構成された差動増幅回路で演算する。
【0050】
計測アンプA3の出力は、抵抗R5を介してフィードバック抵抗R6が接続された演算増幅器A5のマイナス側入力端子に接続されている。計測アンプA4の出力は、抵抗R7,R8による分圧回路を介して演算増幅器A5のプラス側入力端子に接続されている。
【0051】
演算増幅器A5と抵抗R5乃至R8で構成された差動増幅回路のゲインGbは、Gb=R5/R6となる。但し、R5=R7,R6=R8である。計測アンプA3,A4は非反転増幅回路で第1抵抗Ra1の両端にハイインピーダンス入力で接続されており、微小な差動電圧信号を増幅するには適している。更にR5=R7,R6=R8の関係となるため、同相除去比が高いと言うメリットも兼ね備えている。
【0052】
図5は、バランス型ダイオードの電流検出回路の更に他の構成例を示す回路図である。図4との差は、計測アンプA3,A4の出力とマイナス側入力端子間に夫々フィードバック抵抗R9,R10が接続され、計測アンプA3,A4のマイナス側入力端子間に抵抗R11が接続され、計測アンプA3,A4側にもゲインを設定している。この電流検出回路のゲインGcは、Gc=(1+2・R9/R11)・R6/R5となり、図4の構成よりもハイゲインを実現できる。
【0053】
図6は、正常に遅延制御された場合のバランス型ダイオードの電流検出回路から得られる出力特性曲線図である。F1はVa1特性、F2はVb1特性、F3はVd1(Va1−Vb1)特性を示す。位相90°と270°にIアーム遅延制御の最適点I,I´があり、位相0°と180°にQアーム遅延制御の最適点Q,Q´がある。
【0054】
図7は、オフセットを補償した減算回路の100の構成例を示す回路図である。図2に示す構成に追加したオフセット電圧生成回路400より、抵抗R4を介して演算増幅器A1のマイナス入力端子に補正電圧が加算される。このオフセット電圧生成回路は、バランス型ダイオードPDa1,PDb1の夫々の受光感度が異なる場合、或いは電流検出回路100を構成する差動増幅回路のゲインが異なる場合に有効である。
【0055】
オフセット電圧生成回路400は、DACと演算増幅器やトランジスタを主として構成された電圧信号発生手段や、基準電圧信号発生器を可変抵抗と固定抵抗で分圧することでオフセット電圧信号を発生させる手法等で容易に実現することができる。
【0056】
図8は、オフセットを補償したバランス型ダイオードの電流検出回路から得られる出力特性曲線である。図6に示した理想的な特性曲線との対比で見ると、F3が補正前のVd1特性であり、F3´が補正後のVd1特性を示す。
【符号の説明】
【0057】
10 分波器
20 第1遅延干渉計
21 分波器
22 遅延器
23 合波器
30 第2遅延干渉計
31 分波器
32 遅延器
33 合波器
40 第1受光器
50 第2受光器
100 第1減算回路
200 第2減算回路
300 遅延制御部
301 演算処理手段
400 オフセット電圧生成回路
PDa1、PDb1 バランス型ダイオード
PDa2、PDb2 バランス型ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給されるDQPSK光位相変調信号を、直交した位相成分に分岐して夫々遅延器を有する第1遅延干渉計及び第2遅延干計に入力させ、これら遅延干渉計の出力を夫々一対のバランス型ダイオードで構成される第1受光器及び第2受光器により第1受信信号及び第2受信信号に変換すると共に、前記各遅延干渉計の一対のバランス型ダイオードの受光電流の検出信号を入力し前記第1遅延干渉計及び第2遅延干渉計の前記遅延器にフィードバックする遅延制御部を具備する光受信装置において、
前記第1遅延干渉計の一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号を入力して減算する第1減算回路と、
前記第2遅延干渉計の一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号を入力して減算する第2減算回路と、
前記第1減算回路の出力信号及び前記第2減算回路の出力信号を入力し、前記第1遅延干渉計及び第2遅延干渉計の前記遅延器にフィードバックする遅延制御部と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
前記第1減算回路及び前記第2減算回路は、一対のバランス型ダイオードの受光電流を検出する電圧信号を入力するアナログ差動増幅器により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記遅延制御部は、前記第1減算回路の出力信号が正または負の最大値を維持し、前記第1減算回路の出力信号がゼロ値を維持するフィードバック信号を、前記第1遅延干渉計及び第2遅延干渉計の前記遅延器に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の光受信装置。
【請求項4】
前記第1減算回路または前記第2減算回路に、前記一対のバランス型ダイオードの受光感度特性誤差を補正する信号を供給するオフセット電圧生成回路を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−124558(P2012−124558A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271213(P2010−271213)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】