説明

光吸収部材

【課題】本発明の目的は、空気との界面での光の反射を防止し、かつ光を実質的に完全に吸収することのできる光吸収部材を提供することである。
【解決手段】光吸収部材は、反射を低減すべき光を吸収する材料からなる基材101と、該光の波長よりも小さいピッチでアレイ状に配列された構造単位を含む反射防止構造体102とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収部材に関し、特定的には、投写型表示装置や撮像装置等の光学機器において、不要光を効率的に吸収することが可能な光吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器において、機器内部の不要光を取り扱いは重要である。ここで、不要光とは、光学機器内部を、意図しない光路に沿って伝搬され、光学系本来の機能を達成するために用いられない光をいう。不要光は、多くの場合、光学機器の性能劣化の原因となる。
【0003】
例えば、大画面映像を得る方法としてライトバルブ上に映像信号に応じた光学像を形成し、その光学像を投写レンズによりスクリーン上に拡大投写する投写型映像表示装置が知られている。このような投写型映像表示装置の一例として、映像信号に応じて照明光の進行方向を制御することにより光学像を形成する反射型のライトバルブを用いた装置がある。反射型のライトバルブを用いた投写表示装置は、光利用効率が高く高輝度の投写画像を表示することが可能である。
【0004】
反射型のライトバルブを用いた投写表示装置において、投写レンズに入射されない照明光成分は、いわゆるオフ光と呼ばれる不要光となる。ところが、オフ光は、何ら対策を施さないと、ライトバルブ周辺に配置されるプリズムや各種光学素子を保持する機構部品などにより反射され、投写レンズへ入射してしまう。オフ光が投写レンズに入射してしまうと、スクリーン上に表示されるべき表示画像の品質を著しく劣化させる。そこで、従来、このような投写表示装置において、オフ光を吸収するため、黒色塗料を塗布した吸収板が使用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、別の例として従来から、前述の投写レンズや、デジタルスチルカメラやビデオカメラなどの光学機器に用いられる撮像光学系を保持するレンズ鏡筒の不要光対策が知られている。一般に、レンズ鏡筒内でレンズ面間の反射や各種光学素子を保持する機構部品などにより反射された光は、迷光と呼ばれる不要光となる。迷光は、複雑な反射光路に沿って再び光学系の光路に戻ってくることがある。前述の投写レンズや、デジタルスチルカメラ等の撮像光学系のような結像光学系の場合、迷光は、光学系のゴーストやフレアをとなって、形成されるべき結像画像の画像品質を劣化させる原因になる。そこで、従来のレンズ鏡筒は、鏡筒の内面を黒色材料で構成したり内面を梨地処理したりして、迷光の発生の防止を図っていた。
【特許文献1】特開2001−66693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された投写型表示装置の例のように、黒色塗料を塗布された吸収板を用いた場合、吸収板の表面は空気との界面になるので、オフ光が無視できない割合で反射して、光路に戻ってしまうという問題があった。また、レンズ鏡筒の例のように、鏡筒の内面を黒色材料で構成したり内面を梨地処理したりしても、同様に迷光を完全に防止することは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、空気との界面での光の反射を防止し、光を実質的に完全に吸収することのできる光吸収部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、
反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなる基材と、
構造単位を含む反射防止構造体とを備え、
前記構造単位が、前記光の波長よりも小さいピッチでアレイ状に配列されてなる、光吸収部材
により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気との界面での光の反射を防止し、光を実質的に完全に吸収することのできる光吸収部材を提供することができる。
【0010】
なお、この明細書において、反射防止構造体とは、反射を低減すべき光の反射を防止するために、表面に微細構造が形成された部材を意味し、反射を低減すべき光を完全に反射させない態様だけではなく、所定の波長の反射を低減すべき光の反射を防止する効果を持つ態様を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態における光吸収部材を示す概略断面図、図2はそれを拡大して示した概略斜視図である。図1、図2に示すように、本実施形態の光吸収部材100は、基材101と、反射防止構造体102とを備える。基材101は、反射を低減すべき光が光束として入射する場合にその光束を包括する大きさと、機械的強度と、構成上必要な厚みとを持つ。また、基材101は、反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなり、例えば、反射を低減すべき光が可視光の場合、黒色材料からなる。黒色材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られる。
【0012】
反射防止構造体102は、高さ0.15μmの円錐形状を構造単位とし、これらの円錐形状がピッチ0.15μmで、基材101の表面にアレイ状に配置されている。ここで、円錐形状間のピッチは、可視帯域波長(400nm〜700nm)よりも小さいピッチに相当している。また、これらの円錐形状の高さは、ピッチの1倍以上に相当している。光吸収部材100は、反射防止構造体102が以上の構成を有しているため、可視帯域波長およびそれより長い波長を持つ光が入射しても、反射されることがなく基材101によってその光を実質的に完全に吸収することができる。
【0013】
光吸収部材100の製造方法の一例を説明する。例えば、石英ガラス基板などに電子線描画などの方法でパターンを描画してドライエッチング等の加工し、予め高精度の反射防止構造体102と同一の形状に精密加工されたマスター型を形成しておく。このマスター型を用いて、加熱軟化したガラス材料をプレス成形することにより、ガラスからなる反射防止構造体成形用型を作成する。この反射防止構造体成形用型を用いて黒色の樹脂材料からなる基材101をプレス成形により製造すると、光吸収部材100を安価に大量に製造することができる。
【0014】
上記のように、本実施形態の光吸収部材100は、基材101の表面に、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成された微細な反射防止構造体102を設けることによって構成されているので、この光吸収部材100を用いることにより、空気との界面での光の反射を防止し、かつ、入射した光を実質的に完全に吸収することが可能となる。
【0015】
ところで、光吸収部材100を、光が頻繁に到達する箇所で長時間にわたって使用し続けると、熱を持って劣化してしまうおそれがある。この場合には、図3に示すように、基材103の内部に冷媒が封入された空間104を有する光吸収部材105とすることにより、かかる問題を解消することができる。冷媒としては、ポリエチレングリコールと水からなる不凍液、空気、アルコールと水の混合液等を用いることができる。
【0016】
なお、本実施形態においては、円錐形状がピッチの1倍以上の高さを持つ反射防止構造体が形成されているが、円錐形状がピッチの3倍以上の高さを持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。
【0017】
また、本実施形態においては、反射を低減すべき光として可視光が用いられているが、可視光の他に、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、凸部は当該ピッチの1倍以上あるいは3場合以上の高さを有するのが望ましい。
【0018】
また、本実施形態においては、黒色材料からなる基材101が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られているが、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0019】
また、本実施形態においては、反射防止構造体102として、構造単位が円錐形状の反射防止構造体を例に挙げて説明しているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、図4に示すような構造単位が正六角錐形状108や、四角錐形状などの角錐形状であってもよい。また、反射防止構造体の構造単位の形状は必ずしも錐体に限定されるものではなく、円柱体や角柱体であっても、先端が丸くなっているものであってもよい。反射防止構造体102は、少なくとも、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成されていればよい。
【0020】
また、本実施形態においては、反射防止構造体102として、構造単位が円錐形状の凸部からなる構造体を示したが、これに限られない。例えば、平面に円錐形状の凹部がアレイ状に形成されている反射防止構造体を形成してもよい。
【0021】
(第2の実施形態)
図5は本発明の第2の実施形態における光吸収部材を示す概略断面図、図6はそれを拡大して示した概略斜視図である。図5、図6に示すように、本実施形態の光吸収部材200は、基材201と、反射防止構造体202と、シート状部材203とを備える。基材201は、反射を低減すべき光が光束として入射する場合にその光束を包括する大きさと、機械的強度と、構成上必要な厚みとを持つ。また、基材201は、反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなり、例えば、反射を低減すべき光が可視光の場合、黒色材料からなる。黒色材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られる。
【0022】
シート状部材203は、基材201の表面に貼付され、その表面に反射防止構造体202が形成されている。シート状部材203は、ハンドリングが容易で、かつ、充分な機械的強度が得られる10μm以上の厚みを持つアクリル樹脂からなる。シート状部材203と基材201の屈折率の差は、0.2以下とすることが必要である。このように、シート状部材203と基材201との間の屈折率の差を0.2以下とすることにより、シート状部材203と基材201との界面での光の反射を問題とならない程度にまで抑えることができる。さらには、シート状部材203と基材201の屈折率の差は0.1以下であるのが望ましい。このようにシート状部材203と基材201との間の屈折率の差を0.1以下とすることにより、シート状部材203と基材201との界面での光の反射をさらに一層低減することが可能となり、不要光の発生を効率良く抑えることができる。このとき、シート状部材203は、基材201に紫外線を印加することにより硬化する紫外線硬化樹脂等を接着剤として貼付される。この場合、接着剤の層もシート状部材203の構成要件と考え、接着剤の屈折率も上記条件を満たすのが望ましい。
【0023】
光吸収部材200に用いられるシート状部材203の製造方法の一例を説明する。例えば、石英ガラス基板などに電子線描画などの方法でパターンを描画してドライエッチング等の加工をし、予め高精度の反射防止構造体202と同一の形状に精密加工されたマスター型を形成しておく。このマスター型を用いて、加熱軟化したアクリル樹脂材料をプレス成形することにより、アクリル樹脂からなる反射防止構造体成形用型を作成する。このとき、シート状部材203は、ハンドリングが容易で、かつ、充分な機械的強度が得られる10μm以上(シート状部材203の厚み+0.15μm)の厚みがあることが望ましい。
【0024】
上記のように、本実施形態の光吸収部材200は、上記第1の実施形態の光吸収部材100の場合と同様の効果(光の吸収効率の向上)を有すると共に、シート状部材203を貼付するだけで、容易に目的の構造物を光吸収部材とすることができる。
【0025】
また、上記第1の実施形態の場合と同様に、光吸収部材200を、光が頻繁に到達する箇所で長時間にわたって使用し続けると、熱を持って劣化してしまうおそれがある。この場合には、図7に示すように、基材204の内部に冷媒が封入された空間205を有する光吸収部材206とすることにより、かかる問題を解消することができる。冷媒としては、ポリエチレングリコールと水からなる不凍液、空気、アルコールと水の混合液等を用いることができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、シート状部材203の材料として、アクリル樹脂等の透明材料が用いられているが、必ずしも透明材料に限定されるものではなく、染料や顔料によって黒色に着色された黒色材料を用いてもよい。シート状部材203の材料として黒色材料を用いることにより、光の吸収効率のさらなる向上を図ることができる。また、透明材料としては、アクリル樹脂の他にポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等を用いることもできる。
【0027】
また、本実施形態においても、上記第1の実施形態の場合と同様に、円錐形状がピッチの1倍以上の高さを持つ反射防止構造体が形成されているが、円錐形状がピッチの3倍以上の高さを持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。
【0028】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、反射を低減すべき光として可視光が用いられているが、可視光の他に、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、凸部は当該ピッチの1倍以上あるいは3場合以上の高さを有するのが望ましい。
【0029】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、黒色材料からなる基材201が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られているが、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0030】
また、本実施形態においては、黒色材料からなるシート状部材203は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得ることができる。また、シート状部材203は、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0031】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、反射防止構造体202として、構造単位が円錐形状の反射防止構造体を例に挙げて説明しているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、構造単位が正六角錐形状や、四角錐形状などの角錐形状であってもよい。また、反射防止構造体の構造単位の形状は必ずしも錐体に限定されるものではなく、円柱体や角柱体であっても、先端が丸くなっているものであってもよい。反射防止構造体202は、少なくとも、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成されていればよい。
【0032】
また、本実施形態においては、反射防止構造体202として、構造単位が円錐形状の凸部からなる構造体を示したが、これに限られない。例えば、平面に円錐形状の凹部がアレイ状に形成されている反射防止構造体を形成してもよい。
【0033】
(第3の実施形態)
図8は本発明の第3の実施形態における光吸収装置を示す概略図である。図8に示すように、本実施形態の光吸収装置300は、第1の実施形態の変形例にかかる光吸収部材105と、ポンプ301と、放熱器302とを備えている。ポンプ301は、基材103の内部の空間104に封入された冷媒を外部に搬送し、放熱器302を通過させ、再び空間104に戻している。放熱器302は、ポンプ301とは別体に設けられたラジエータが適切であるが、ポンプ301に放熱フィンを一体的に設けて放熱器302を兼用させてもよい。
【0034】
以上のように構成することにより、光吸収部材105を基材103の内部に形成された空間内に封入される冷媒をクールダウンさせながら用いることができるため、光吸収部材105の劣化を防止することができる。
【0035】
また、本実施形態においても、上記第1の実施形態の場合と同様に、円錐形状がピッチの1倍以上の高さを持つ反射防止構造体が形成されているが、円錐形状がピッチの3倍以上の高さを持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。
【0036】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、反射を低減すべき光として可視光が用いられているが、可視光の他に、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、凸部は当該ピッチの1倍以上あるいは3場合以上の高さを有するのが望ましい。
【0037】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、黒色材料からなる基材103が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られているが、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0038】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、黒色材料からなるシート状部材301は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得ることができる。また、シート状部材301は、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0039】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、反射防止構造体102として、構造単位が円錐形状の反射防止構造体を例に挙げて説明しているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、構造単位が正六角錐形状や、四角錐形状などの角錐形状であってもよい。また、反射防止構造体の構造単位の形状は必ずしも錐体に限定されるものではなく、円柱体や角柱体であっても、先端が丸くなっているものであってもよい。反射防止構造体102は、少なくとも、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成されていればよい。
【0040】
また、本実施形態においては、反射防止構造体102として、構造単位が円錐形状の凸部からなる構造体を示したが、これに限られない。例えば、平面に円錐形状の凹部がアレイ状に形成されている反射防止構造体を形成してもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、ポンプ301及び放熱器302を除いた部分である光吸収部材として、上記第1の実施形態の図3に示す光吸収部材105の構成が用いられているが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えば、上記第2の実施形態の図7に示す光吸収部材206の構成を用いてもよい。この場合において、シート状部材203の材料としては、アクリル樹脂等の透明材料の他、染料や顔料によって黒色に着色された黒色材料を用いることもできる。また、透明材料としては、アクリル樹脂の他にポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等を用いることもできる。
【0042】
なお、本実施形態において、基材103として樹脂が用いられているが、樹脂に限定されるものではなく、アルミニウム等の金属部材を用いることもできる。この場合において、金属部材の表面を、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られる黒色材料や、黒色染料の代わりにカーボンブラック等の顔料を混ぜた光を吸収する材料でコーティングし、コーティングした表面に、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成された微細な反射防止構造体を具備させるようにしてもよい。あるいは、金属部材の表面を黒色塗装し、上記第2の実施形態で示したシート状部材203を塗装表面に貼付してもよい。
【0043】
(第4の実施形態)
図9は本発明の第4の実施形態における照明プリズム装置を示す概略断面図である。図9に示すように、本実施形態の照明プリズム装置400は、ライトバルブ409と、ライトバルブ409側から順に設けられた第1のプリズム(直角プリズム)401と第2のプリズム(直角プリズム)405と、第1の実施形態で説明した光吸収部材100とを備える。また、第1のプリズム401と第2のプリズム405との間には、空気層413が設けられている。
【0044】
第1のプリズム401は、ライトバルブ409に近接する第1面402と、第2面403と、光410が入射する第3面404とを有しており、空気層413は、第2面403と第2のプリズム405との間に形成されている。
【0045】
第2のプリズム405は、第1面406と、ライトバルブ409からの反射光が射出し、かつ、第1のプリズム401の第1面402と略平行な第2面407と、第3面408とを有しており、空気層413は、第1面406と第1のプリズム401との間に形成されている。
【0046】
ライトバルブ409は、映像信号に応じて光の進行方向を制御することにより光学画像を形成する反射型の空間光変調素子であり、図示しない外部から供給される画像に対応する信号により駆動される。
【0047】
以上の構成において、照明光410は、第1のプリズム401の第3面404に垂直に入射した後、第2面403に入射角θ2で入射して全反射し、ライトバルブ409に入射角θ1で入射する。そして、ライトバルブ409がオン(ON)状態のときの、ライトバルブ409からの反射光411(オン光)は、第2のプリズム405の第2面407に垂直な方向に射出する。一方、ライトバルブ409がオフ(OFF)状態のときの、ライトバルブ409からの反射光412(オフ光)は、第2のプリズム405の第2面407に対して斜めに射出する。
【0048】
第2のプリズム405近傍の第2面407側には、ライトバルブ409がオフ(OFF)状態のときの、ライトバルブ409から反射光412が射出する方向に位置して上記第1の実施形態で説明した光吸収部材100が配置されている。このため、ライトバルブ409がオフ(OFF)状態のときの不要光を、光吸収部材100に完全に吸収させることができる。
【0049】
尚、図9においては、第2のプリズム405近傍の第2面407側に、上記第1の実施形態で説明した光吸収部材100が配置されているが、図10に示すように、上記第3の実施形態で説明した光吸収装置300を配置しても同様の効果が得られる。また、光吸収部材100の位置に、第1の実施形態の変形例で示した光吸収部材105、第2の実施形態で説明した光吸収部材200あるいは206を配置しても同様の効果が得られる。
【0050】
(第5の実施形態)
図11は本発明の第5の実施形態における投写型表示装置を示す概略構成図である。図11に示すように、本実施形態の投写型表示装置500は、上記第4の実施形態で説明した照明プリズム装置400と、光源501と、光源501からの照明光を照明プリズム装置400側に折り曲げるミラー504と、光源501からの照明光が照明プリズム装置400のライトバルブ409(反射型の空間光変調素子)で変調された光を投影する投写レンズ507とを備えている。また、光源501とミラー504との間には、コンデンサレンズ503が配置されており、照明プリズム装置400を構成する第1のプリズム401の第3面404(図9、図10参照)には、コンデンサレンズ506が取り付けられている。
【0051】
以上のように、本実施形態の投写型表示装置においては、上記第4の実施形態で説明した照明プリズム装置400が用いられていることにより、ライトバルブ409がオフ(OFF)状態のときの不要光を、光吸収部材100に完全に吸収させることができる。その結果、迷光となる光の成分を防止し、コントラストの良好な高画質の投写型表示装置を実現することが可能となる。
【0052】
本実施形態において、プリズム装置400には上記第1の実施形態で説明した光吸収部材100が配置されているが、上記第3の実施形態で説明した光吸収装置300を配置しても同様の効果が得られる。また、光吸収部材100の位置に、第1の実施形態の変形例で示した光吸収部材105、第2の実施形態で説明した光吸収部材200あるいは206を配置しても同様の効果が得られる。
【0053】
(第6の実施形態)
図12Aは本発明の第6の実施形態における投写型表示装置を示す概略構成図である。図12Bは本発明の第6の実施形態における投写型表示装置に備えられたカラーホイールを示す正面図である。本実施形態の投写型表示装置600は、以下の点において、上記第5の実施形態の投写型表示装置500と異なっている。すなわち、図12A及び図12Bに示すように、本実施形態の投写型表示装置600においては、光源501とコンデンサレンズ503との間に、RGBフィルタ601を支軸602を中心として回転させることにより、光源501からの光を青、緑、赤の3色に時間的に制限し分離するカラーホイールが配置されている。そして、ライトバルブ409(反射型の空間光変調素子)は、時間的に制限され分離された青、緑、赤の3色に対応する光学像を形成し、フルカラーによる拡大投写を行うことができる。また、本実施形態の投写型表示装置600においては、上記第4の実施形態で説明した照明プリズム装置400が用いられていることにより、ライトバルブ409がオフ(OFF)状態のときの不要光を、光吸収部材100に完全に吸収させることができる。その結果、迷光となる光の成分を防止し、コントラストの良好な高画質の投写型表示装置を実現することが可能となる。
【0054】
本実施形態において、プリズム装置400には上記第1の実施形態で説明した光吸収部材100が配置されているが、上記第3の実施形態で説明した光吸収装置300を配置しても同様の効果が得られる。また、光吸収部材100の位置に、第1の実施形態の変形例で示した光吸収部材105を配置しても同様の効果が得られる。
【0055】
(第7の実施形態)
図13は本発明の第7の実施形態におけるリアプロジェクタを示す概略構成図である。図13に示すように、本実施形態のリアプロジェクタ700は、上記第5の実施形態で説明した投写型表示装置500と、投写型表示装置500内の投写レンズ507(図11、図12参照)から投写された光を折り曲げるミラー702と、ミラー702によって折り曲げられた光を透過散乱させ、映像として映し出す透過型スクリーン703とにより構成されている。
【0056】
本実施形態のリアプロジェクタ700においては、投写型表示装置500から投写される映像が、ミラー702によって反射されて、透過型スクリーン703に結像される。そして、本実施形態のリアプロジェクタ700によれば、投写型表示装置500として上記第5の実施形態で説明した投写型表示装置が用いられているので、ライトバルブがオフ(OFF)状態のときの不要光を、光吸収部材あるいは光吸収装置に完全に吸収させることができる。その結果、オフ光のうち迷光となる光の成分を防止し、コントラストの良好な高画質のリアプロジェクタを実現することが可能となる。
【0057】
(第8の実施形態)
図14は本発明の第8の実施形態におけるマルチビジョンシステムを示す概略構成図である。図14に示すように、本実施形態のマルチビジョンシステム800は、上記第5の実施形態で説明した複数の投写型表示装置500と、各投写型表示装置500ごとに設けられた複数の透過型スクリーン703と、各投写型表示装置500ごとに映像信号を供給する映像信号供給手段801とにより構成されている。
【0058】
映像信号供給手段801は、1つの画像の映像信号を分割し、各投写型表示装置ごとに異なる分割された映像信号を供給する機能を有している。この機能は、映像信号供給手段801に搭載された映像分割回路によって達成される。
【0059】
本実施形態のマルチビジョンシステムにおいては、映像信号が、映像分割回路によって加工分割されて複数の投写型表示装置500に送られる。各投写型表示装置500から投写される映像は各透過型スクリーン703に結像される。そして、本実施形態のマルチビジョンシステムによれば、投写型表示装置500として上記第5の実施形態で説明した投写型表示装置が用いられているので、ライトバルブがオフ(OFF)状態のときの不要光を、光吸収部材あるいは光吸収装置に完全に吸収させることができる。その結果、オフ光のうち、迷光となる光の成分を防止し、コントラストの良好な高画質のマルチビジョンシステムを実現することが可能となる。基材905。
【0060】
(第9の実施形態)
図15は本発明の第9の実施形態におけるレンズ鏡筒を示す概略断面図である。図15に示すように、本実施形態のレンズ鏡筒900は、基材905と、反射防止構造体906と、レンズ901と、レンズ902と、レンズ903とを備える。基材905は、円筒形状で黒色材料からなる。基材905の黒色材料は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られる材料、あるいは黒色染料の代わりにカーボンブラック等の顔料を混ぜた光を吸収する材料である。
【0061】
反射防止構造体906は、高さ0.15μmの円錐形状を構造単位とし、これらの円錐形状がピッチ0.15μmで、基材905の表面にアレイ状に配置されている。ここで、円錐形状間のピッチは、可視帯域波長(400nm〜700nm)よりも小さいピッチに相当している。また、これらの円錐形状の高さは、ピッチの1倍以上に相当している。反射防止構造体906が以上の構成を有しているため。可視帯域波長およびそれより長い波長を持つ光が入射しても、反射されることがなく基材905によってその光を実質的に完全に吸収することができる。
【0062】
レンズ901と、レンズ902と、レンズ903とは、すべて光軸904上に同軸に配置されている。
【0063】
以上の構成において、レンズ鏡筒900の左側から入射する包括画角以上の光束や前記レンズ表面での反射によって発生する迷光はレンズ鏡筒900の内面に入射して不要光となる。当該入射光束は、基材905の内表面に設けられた微細な反射防止構造体906によって効率良く吸収されるので、ゴーストやフレアの発生を防止することができる。したがって、例えば、レンズ鏡筒900をデジタルスチルカメラやビデオカメラなどの撮像光学系の鏡筒や、投写型表示装置の投写レンズの鏡筒に用いた場合、コントラストの良好な光学像の形成を実現することが可能となる。
【0064】
本実施形態のレンズ鏡筒900は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、表面にピッチがレンズ鏡筒で用いられる光の波長の中で一番短い波長よりも小さい微細なピッチで形成された反射防止構造体に対応する凹凸パターンを、熱プレスによってレンズ鏡筒900の基材905の内面に転写することにより製造することができる。さらに具体的には、図16に示すように、外周面にピッチが撮像光の波長の中で一番短い波長よりも小さい微細な反射防止構造体を有する円筒状型907を、レンズ鏡筒900の基材905の内面に加熱加圧しながら、同時に回転させて、円筒状型907の外周面の凹凸パターンを、レンズ鏡筒900の基材905の内面に転写することにより製造することができる。
【0065】
なお、本実施形態においては、円錐形状がピッチの1倍以上の高さを持つ反射防止構造体が形成されているが、ピッチの3倍以上の高さを持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。
【0066】
また、本実施形態においては、反射を低減すべき光として可視光が用いられているが、可視光の他に用途に応じて、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、凸部は当該ピッチの1倍以上あるいは3場合以上の高さを有するのが望ましい。
【0067】
また、本実施形態においては、黒色材料からなる基材905が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られているが、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0068】
また、本実施形態においては、反射防止構造体906として、構造単位が円錐形状の反射防止構造体を例に挙げて説明しているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、図4に示すような構造単位が正六角錐形状108や、四角錐形状などの角錐形状であってもよい。また、反射防止構造体の構造単位の形状は必ずしも錐体に限定されるものではなく、円柱体や角柱体であっても、先端が丸くなっているものであってもよい。反射防止構造体906は、少なくとも、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成されていればよい。
【0069】
また、本実施形態においては、反射防止構造体906として、構造単位が円錐形状の凸部からなる構造体を示したが、これに限られない。例えば、平面に円錐形状の凹部がアレイ状に形成されている反射防止構造体を形成してもよい。
【0070】
(第10の実施形態)
図17は本発明の第10の実施形態におけるレンズ鏡筒を示す概略断面図である。図17に示すように、本実施形態のレンズ鏡筒1000は、基材1005と、反射防止構造体1006と、シート状部材1007と、レンズ1001と、レンズ1002と、レンズ1003とを備える。基材1005は、反射を低減すべき光が光束として入射する場合にその光束を包括する大きさと、機械的強度と、構成上必要な厚みとを持つ。また、基材1005は、反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなり、例えば、反射を低減すべき光が可視光の場合、黒色材料からなる。黒色材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られる。
【0071】
シート状部材1007は、基材1005の表面に貼付され、その表面に反射防止構造体1006が形成されている。シート状部材1007は、ハンドリングが容易で、かつ、充分な機械的強度が得られる10μm以上の厚みを持つアクリル樹脂からなる。シート状部材1007と基材1005との屈折率の差は、0.2以下とすることが必要である。このように、シート状部材1007と基材1005との間の屈折率の差を0.2以下とすることにより、シート状部材1007と基材1005との界面での光の反射を問題とならない程度にまで抑えることができる。さらには、シート状部材1007と基材1005の屈折率の差は0.1以下であるのが望ましい。このようにシート状部材1007と基材1005との間の屈折率の差を0.1以下とすることにより、シート状部材1007と基材1005との界面での光の反射をさらに一層低減することが可能となり、不要光の発生を効率良く抑えることができる。このとき、シート状部材1007は、基材1005に紫外線を印加することにより硬化する紫外線硬化樹脂等を接着剤として貼付される。この場合、接着剤の層もシート状部材1007の構成要件と考え、接着剤の屈折率も上記条件を満たすのが望ましい。
【0072】
シート状部材1007の製造方法の一例を説明する。例えば、石英ガラス基板などに電子線描画などの方法でパターンを描画してドライエッチング等の加工をし、予め高精度の反射防止構造体1006と同一の形状に精密加工されたマスター型を形成しておく。このマスター型を用いて、加熱軟化したアクリル樹脂材料をプレス成形することにより、アクリル樹脂からなる反射防止構造体成形用型を作成する。このとき、シート状部材1007は、ハンドリングが容易で、かつ、充分な機械的強度が得られる10μm以上(シート状部材1007の厚み+0.15μm)の厚みがあることが望ましい。
【0073】
以上の構成において、レンズ鏡筒1000の左側から入射する包括画角以上の光束や前記レンズ表面での反射によって発生する迷光はレンズ鏡筒1000の内面に入射して不要光となる。当該入射光束は、基材1005の内表面に設けられた微細な反射防止構造体1006によって効率良く吸収されるので、ゴーストやフレアの発生を防止することができる。したがって、例えば、レンズ鏡筒1000をデジタルスチルカメラやビデオカメラなどの撮像光学系の鏡筒や、投写型表示装置の投写レンズの鏡筒に用いた場合、コントラストの良好な光学像の形成を実現することが可能となる。
【0074】
上記のように、本実施形態のレンズ鏡筒は、上記第9の実施形態のレンズ鏡筒900の場合と同様の効果(光の吸収効率の向上)を有すると共に、シート状部材1007を貼付するだけで、容易に目的の鏡筒の内面に反射防止構造体を形成することができる。
【0075】
なお、本実施形態においては、シート状部材1007の材料として、アクリル樹脂等の透明材料が用いられているが、必ずしも透明材料に限定されるものではなく、染料や顔料によって黒色に着色された黒色材料を用いてもよい。シート状部材1007の材料として黒色材料を用いることにより、光の吸収効率のさらなる向上を図ることができる。また、透明材料としては、アクリル樹脂の他にポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等を用いることもできる。
【0076】
また、本実施形態においては、黒色材料からなるシート状部材1007は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得ることができる。また、シート状部材1007は、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0077】
また、本実施形態においても、上記第1の実施形態の場合と同様に、円錐形状がピッチの1倍以上の高さを持つ反射防止構造体が形成されているが、円錐形状がピッチの3倍以上の高さを持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。
【0078】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、反射を低減すべき光として可視光が用いられているが、可視光の他に、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、凸部は当該ピッチの1倍以上あるいは3場合以上の高さを有するのが望ましい。
【0079】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、黒色材料からなる基材1005が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られているが、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0080】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、反射防止構造体1006として、構造単位が円錐形状の反射防止構造体を例に挙げて説明しているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、構造単位が正六角錐形状や、四角錐形状などの角錐形状であってもよい。また、反射防止構造体の構造単位の形状は必ずしも錐体に限定されるものではなく、円柱体や角柱体であっても、先端が丸くなっているものであってもよい。反射防止構造体1006は、少なくとも、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成されていればよい。
【0081】
また、本実施形態においては、反射防止構造体1006として、構造単位が円錐形状の凸部からなる構造体を示したが、これに限られない。例えば、平面に円錐形状の凹部がアレイ状に形成されている反射防止構造体を形成してもよい。
【0082】
(第11の実施形態)
図18は本発明の第11の実施形態におけるレンズ鏡筒を示す概略断面図、図19は本発明の第11の実施形態におけるレンズ鏡筒の内面側に挿入されるシートを拡大して示した概略斜視図である。図18に示すように、本実施形態のレンズ鏡筒1100は、レンズ鏡筒本体としての基材1105の内面側に挿入され、その表面に反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成された微細な反射防止構造体1106を有する黒色材料からなるシート状部材1107を備えている。
【0083】
シート状部材1107は、ハンドリングが容易で、かつ、充分な機械的強度が得られる10μm以上の厚みを有している。シート状部材1107の表面には、反射防止構造体1106として、ピッチ0.15μm、高さ0.15μmの円錐形状を構造単位とする反射防止構造体が形成されている(図19参照)。
【0084】
シート状部材1107の製造方法の一例を説明する。例えば、石英ガラス基板などに電子線描画などの方法でパターンを描画してドライエッチング等の加工をし、予め高精度の反射防止構造体1106と同一の形状に精密加工されたマスター型を形成しておく。このマスター型を用いて、加熱軟化したアクリル樹脂材料をプレス成形することにより、アクリル樹脂からなる反射防止構造体成形用型を作成する。このとき、シート状部材1107は、ハンドリングが容易で、かつ、充分な機械的強度が得られる10μm以上(シート状部材1107の厚み+0.15μm)の厚みがあることが望ましい。
【0085】
上記のように、本実施形態のレンズ鏡筒1100は、レンズ鏡筒本体としての基材1105の内面側に、微細な反射防止構造体1106を有するシート状部材1107を適当な大きさに裁断した後、挿入することによって構成されているので、上記第9及び第10の実施形態のレンズ鏡筒900及び1000の場合と同様の効果を有すると共に、シートを挿入するだけで、さらに容易に目的のレンズ鏡筒内面に光吸収特性を付与することができる。
【0086】
図18に示すように、上記のような構成からなるレンズ鏡筒1100の内部には、レンズ901、902、903が光軸904上に同軸に配置されている。レンズ鏡筒1100の左側から入射する包括画角以上の光束や前記レンズ表面での反射によって発生する迷光はレンズ鏡筒1100の内面に入射するが、当該入射光束は、レンズ鏡筒1100内に挿入されたシート状部材1107の表面に形成された微細な反射防止構造体1106によって効率良く吸収される。
【0087】
なお、本実施形態においては、シート状部材1107の材料として、アクリル樹脂等の透明材料が用いられているが、必ずしも透明材料に限定されるものではなく、染料や顔料によって黒色に着色された黒色材料を用いてもよい。シート状部材1107の材料として黒色材料を用いることにより、光の吸収効率のさらなる向上を図ることができる。また、透明材料としては、アクリル樹脂の他にポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等を用いることもできる。
【0088】
また、本実施形態においても、上記第1の実施形態の場合と同様に、円錐形状がピッチの1倍以上の高さを持つ反射防止構造体が形成されているが、円錐形状がピッチの3倍以上の高さを持つ反射防止構造体とすることにより、光の吸収効率をさらに高めることができる。
【0089】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、反射を低減すべき光として可視光が用いられているが、可視光の他に、紫外光(紫外帯域波長:70nm〜400nm)、近赤外光(近赤外帯域波長:700nm〜2μm)、及び遠赤外光(遠赤外帯域波長:2μm〜13μm)を用いることもでき、この場合にも、反射防止構造体は、それぞれの波長よりも小さいピッチで形成される。この場合においても、凸部は当該ピッチの1倍以上あるいは3場合以上の高さを有するのが望ましい。
【0090】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、黒色材料からなる基材1105が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の基材中にシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜることによって得られる黒色染料(例えば、有本化学工業株式会社のPlast Black 8950や8970)等の染料を含有させることによって得られているが、例えば、カーボンブラック等の顔料を含有させることによって得ることもできる。
【0091】
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と同様に、反射防止構造体1106として、構造単位が円錐形状の反射防止構造体を例に挙げて説明しているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、構造単位が正六角錐形状や、四角錐形状などの角錐形状であってもよい。また、反射防止構造体の構造単位の形状は必ずしも錐体に限定されるものではなく、円柱体や角柱体であっても、先端が丸くなっているものであってもよい。反射防止構造体1106は、少なくとも、反射を低減すべき光の波長よりも小さいピッチで形成されていればよい。
【0092】
また、本実施形態においては、反射防止構造体1106として、構造単位が円錐形状の凸部からなる構造体を示したが、これに限られない。例えば、平面に円錐形状の凹部がアレイ状に形成されている反射防止構造体を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の光吸収部材は、フロントプロジェクタやリアプロジェクタ等の投写型表示装置およびそれらを複数備えたマルチビジョンシステム、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置、光ピックアップ装置、光ファイバー通信システム等、不要光の除去が必要なすべての光学機器に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施形態における光吸収部材を示す概略断面図
【図2】本発明の第1の実施形態における光吸収部材を拡大して示した概略斜視図
【図3】本発明の第1の実施形態における光吸収部材の他の例を示す概略断面図
【図4】本発明の第1の実施形態における光吸収部材の反射防止構造体の他の例を示す概略斜視図
【図5】本発明の第2の実施形態における光吸収部材を示す概略断面図
【図6】本発明の第2の実施形態における光吸収部材を拡大して示した概略斜視図
【図7】本発明の第2の実施形態における光吸収部材の他の例を示す概略断面図
【図8】本発明の第3の実施形態における光吸収装置を示す概略図
【図9】本発明の第4の実施形態における照明プリズム装置を示す概略断面図
【図10】本発明の第4の実施形態における照明プリズム装置の他の例を示す概略断面図
【図11】本発明の第5の実施形態における投写型表示装置を示す概略構成図
【図12A】本発明の第6の実施形態における投写型表示装置を示す概略構成図
【図12B】本発明の第6の実施形態における投写型表示装置に備えられたカラーホイールを示す正面図
【図13】本発明の第7の実施形態におけるリアプロジェクタを示す概略構成図
【図14】本発明の第8の実施形態におけるマルチビジョンシステムを示す概略構成図
【図15】本発明の第9の実施形態におけるレンズ鏡筒を示す概略断面図
【図16】本発明の第9の実施形態におけるレンズ鏡筒の製造方法を示す概略斜視図
【図17】本発明の第10の実施形態におけるレンズ鏡筒を示す概略断面図
【図18】本発明の第11の実施形態におけるレンズ鏡筒を示す概略断面図
【図19】本発明の第11の実施形態におけるレンズ鏡筒の内面側に挿入されるシートを拡大して示した概略斜視図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射を低減すべき光を吸収可能な材料からなる基材と、
構造単位を含む反射防止構造体とを備え、
前記構造単位が、前記光の波長よりも小さいピッチでアレイ状に配列されてなる、光吸収部材。
【請求項2】
前記反射防止構造体が、前記基材の一部として形成されている、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項3】
前記反射防止構造体が、前記基材に貼付されたシート状部材に形成されている、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項4】
前記シート状部材が、前記光を透過可能な材料からなる、請求項3に記載の光吸収部材。
【請求項5】
前記シート状部材が、前記光を吸収可能な材料からなる、請求項3に記載の光吸収部材。
【請求項6】
前記シート状部材と前記基材との屈折率の差が、0.2以下である、請求項3に記載の光吸収部材。
【請求項7】
前記シート状部材と前記基材との屈折率の差が、0.1以下である、請求項3に記載の光吸収部材。
【請求項8】
前記基材が、内部に冷媒が封入された空間を有する、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項9】
前記構造単位が、ピッチの1倍以上の高さを有する形状である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項10】
前記構造単位が、ピッチの3倍以上の高さを有する形状である、請求項9に記載の光吸収部材。
【請求項11】
前記構造単位の底面形状が、略円形、略矩形及び略正六角形からなる群より選ばれた形状である、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項12】
前記基材が、染料を含有した材料からなる、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項13】
前記基材が、顔料を含有した材料からなる、請求項1に記載の光吸収部材。
【請求項14】
前記光が、紫外光、可視光、近赤外光及び遠赤外光からなる群より選ばれる、請求項1に記載の光吸収部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−528021(P2007−528021A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529348(P2006−529348)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/JP2005/004741
【国際公開番号】WO2005/088355
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】