説明

光周波数ダブラおよびマルチキャリア発生器

【課題】 高調波成分を抽出することができる光周波数ダブラおよびマルチキャリア発生器を提供する。
【解決手段】 光周波数ダブラは、 光信号を2つに分岐する分岐部と、分岐部に接続された2本の半導体光導波路と、2本の半導体光導波路のそれぞれに対して同振幅で逆位相の変調信号を入力するための変調用電極と、2本の半導体光導波路から入力された光信号の偶数次高調波成分あるいは奇数次高調波成分の何れかを同相で合成して出力する合波部と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光周波数ダブラおよびマルチキャリア発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチキャリア光を発生させるマルチキャリア光源が開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、マルチキャリア光の各強度を均一化する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−180801号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Asymptotic formalism for ultraflat optical frequency comb generation using a Mach?Zehnder modulator, June 1, 2007 / Vol. 32, No. 11/ OPTICS LETTERS
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1または非特許文献1の技術では、得られるマルチキャリア光の周波数間隔は、変調信号の基本波と同じになる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、高調波成分を抽出することができる光周波数ダブラおよびマルチキャリア発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光周波数ダブラは、光信号を2つに分岐する分岐部と、前記分岐部に接続された2本の半導体光導波路と、前記2本の半導体光導波路のそれぞれに対して同振幅で逆位相の変調信号を入力するための変調用電極と、前記2本の半導体光導波路から入力された光信号の偶数次高調波成分あるいは奇数次高調波成分の何れかを同相で合成して出力する合波部と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る光周波数ダブラによれば、高調波成分を抽出することができる。
【0008】
前記分岐部は、2×2MMIであってもよい。前記合成部は、2×2MMIであり、前記出力は前記2×2MMIの何れか一方からなされてもよい。前記2本の半導体光導波路のそれぞれには、直流バイアスを印加するための位相調整用電極が設けられていてもよい。
【0009】
本発明に係るマルチキャリア発生器は、請求項1ないし4記載の光周波数ダブラと、前記光周波数ダブラからの出力光を分波する分波器を備えることを特徴とするものである。本発明に係るマルチキャリア発生器によれば、高調波成分を抽出することができる。
【0010】
前記マルチキャリア発生器は、前記光周波数ダブラの出力端と前記分波器との間に配置された非線形ファイバを備えていてもよい。前記マルチキャリア発生器は、前記非線形ファイバと前記光周波数ダブラとの間に配置された光増幅器と、前記光増幅器と前記光周波数ダブラとの間に配置された波長分散発生器と、を備えていてもよい。
【0011】
前記波長分散発生器は、正分散を有する光ファイバであってもよい。前記マルチキャリア発生器は、前記光周波数ダブラの入力端に接続された波長可変半導体レーザを備えていてもよい。前記光周波数ダブラは、前記2本の半導体光導波路上のそれぞれに設けられた位相調整用電極を備え、前記マルチキャリア発生器は、前記位相調整用電極に直流バイアスを印加するバイアス入力部を備えていてもよい。前記マルチキャリア発生器は、前記分波器の各出力光の強度を検出する検出部を備え、前記バイアス入力は、前記検出部の検出結果に応じて、前記変調用電極に印加する直流バイアスを変化させてもよい。前記マルチキャリア発生器は、前記光周波数ダブラに入力する前記変調信号を生成する駆動回路を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高調波成分を抽出することができる光周波数ダブラ装置およびマルチキャリア発生器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)はマッハツェンダ位相変調器の概略図であり、(b)は位相変化の逆バイアス依存性の一例を示す図であり、(c)はマッハツェンダ位相変調器の出力光を示す図であり、(d)は生成されるキャリアを示す図である。
【図2】(a)は実施例1に係る光周波数ダブラの上面模式図の例であり、(b)は(a)のA−A間の断面模式図の例であり、(c)は(a)のB−B間の断面模式図の例である。
【図3】(a)および(b)は光周波数ダブラの例を示す図である。
【図4】(a)〜(f)は光周波数ダブラのプッシュプッシュ動作の計算結果を示す図である。
【図5】光周波数ダブラを備えるマルチキャリア発生器の構成図である。
【図6】(a)〜(f)はマルチキャリア発生器の出力スペクトルのシミュレーション結果である。
【図7】(a)および(b)は出力チャープ特性のシミュレーション結果である。
【図8】マルチキャリア発生器の他の例である。
【図9】(a)〜(d)は分散発生器としてSSMFを用いた場合のパルス圧縮効果シミュレーション結果である。
【図10】(a)〜(d)は、マルチキャリアスペクトルを示す図である。
【図11】マルチキャリア発生器の全体構成を示す図である。
【図12】コントローラがDCバイアス制御回路をフィードバック制御する際に実行するフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(比較例)
まず、比較例として、半導体からなるマッハツェンダ位相変調器について説明する。図1(a)は、マッハツェンダ位相変調器の概略図である。図1(a)に示すように、比較例に係るマッハツェンダ位相変調器は、1×2MMI(Multi Mode Interferometer)を用いて入力光信号を2本の半導体光導波路(アーム)に分岐し、2×2MMIにおいて当該の2本のアームを通過した光を合波する。一方のアームにsin(ωt)の変調用電圧が印加され、他方のアームに−sin(ωt)の変調用電圧が印加されているとする。すなわち、2本のアームに、同振幅かつ互いに逆位相の変調用電圧が印加される。図1(a)の例では、マッハツェンダ位相変調器の長手方向を軸として、各光導波路が対称に形成されている。
【0015】
図1(b)は、InPに格子整合するAlGaInAs系MQWを半導体光導波路に用いた場合の、位相変化の逆バイアス依存性の一例を示す。図1(b)の例では、DCバイアスを−6Vとし、−4V〜−8Vの間で変調電圧が振幅している。図1(b)に示すように、半導体からなるマッハツェンダ位相変調器では、LN変調器と異なり、位相変化が電圧変化に対して非線形となる。この場合、図1(c)に示すように、単一周波数のトーン信号で光信号を変調した場合に、当該マッハツェンダ位相変調器の出力光に、基本波成分と高調波成分とが重畳されて現れる。
【0016】
このようなマッハツェンダ位相変調器を強度変調器として差動駆動する場合、2本のアーム間のDC位相差は両アームに同一のバイアス電圧を印加したときに出力の2つのポートから同レベルの光出力が現れるように調整されるのが一般的である。このように位相調整されたマッハツェンダ位相変調器をデジタル信号で差動駆動すると、光出力信号のアイパターンのクロスポイントは自動的に50%に調整される。
【0017】
しかしながら、このような動作条件では、周波数fのトーン信号で光信号を変調すると、図1(d)に示すように、生成するキャリアの周波数間隔はfとなる。例えば、Superchannelシステムにおいては25GHzを超えるキャリア間隔を要求される場合があるが、その場合、25GHz以上の高周波電気信号でマッハツェンダ変調器を変調する必要がある。これに対して、以下の実施例では、高調波成分を抽出することによって、変調電気信号に対して各キャリア光の周波数間隔を広くすることができる光周波数ダブラ、およびそれを備えるマルチキャリア発生器について説明する。
【実施例1】
【0018】
図2(a)は、実施例1に係る光周波数ダブラ10の上面模式図の例である。図2(a)に示すように、光周波数ダブラ10は、半導体基板上のメサ状の光導波路の経路を組み合わせて構成される。図2(b)は、図2(a)のA−A間の断面模式図の例であり、図2(c)は、図2(a)のB−B間の断面模式図の例である。
【0019】
図2(b)に示すように、光導波路は、半導体基板21上に形成されている。光導波路は、半導体基板21上において、下クラッド層22、コア23、上クラッド層24がこの順にメサ状に積層された構造を有している。半導体基板21の上面、光導波路の上面及び側面には、パッシベーション膜25及び絶縁膜26が順に積層されている。
【0020】
半導体基板21は、例えばInP等の半導体からなる。下クラッド層22および上クラッド層24は、例えばInP等の半導体からなる。コア23は、下クラッド層22および上クラッド層24よりもバンドギャップエネルギが小さい半導体からなり、例えばInPと格子整合するInGaAsP等からなる。これにより、コア23を通過する光が下クラッド層22および上クラッド層24によって閉じ込められる。パッシベーション膜25は、例えばInP等の半導体からなる。絶縁膜26は、例えばSiN等の絶縁体からなる。
【0021】
図2(a)に示すように、光周波数ダブラ10には、第1入力端11aに接続された第1入力光導波路12aが設けられ、第2入力端11bに接続された第2入力光導波路12bが設けられている。第1入力光導波路12aおよび第2入力光導波路12bは、2×2型の第1MMI(Multi Mode Interferometer)13aで合流し、第1光導波路14a及び第2光導波路14bに分岐する。以下、第1光導波路14aおよび第2光導波路14bをアームと称することがある。本実施例においては、第1MMI13aが、分岐部として機能する。
【0022】
光周波数ダブラ10の長手方向を対称軸とした場合に、第1光導波路14aは第1入力端11aと同じ側に配置され、第2光導波路14bは第2入力端11bと同じ側に配置されている。第1光導波路14aおよび第2光導波路14bは2×2型の第2MMI13bで合流し、第1出力端16aに接続された第1出力光導波路15aと、第2出力端16bに接続された第2出力光導波路15bと、に分岐する。本実施例においては、第2MMI13bが、合波部として機能する。光周波数ダブラ10の長手方向を対称軸とした場合に、第1出力端16aは第2光導波路14bと同じ側に配置され、第2出力端16bは第1光導波路14aと同じ側に配置されている。
【0023】
2×2型MMIでは、入力に対してバー側(まっすぐ進む側)とクロス側(斜めに進む側)とでπ/2の位相差が発生する。本実施例においては、分岐部および合波部の両方に2×2型MMIを設けることによって、第2出力端16bにおいては光出力が得られず、第1出力端16aにおいて全光出力が得られる。すなわち、本実施例においては、プッシュプッシュ型の光周波数ダブラが構成されている。なお、ここでいう全光出力とは、製造誤差の範囲での全光出力であるため、第2出力端16bにおいて若干の光が出力されていてもよい。
【0024】
第1光導波路14a及び第2光導波路14bの夫々には、位相調整用電極17および変調用電極18が設けられている。位相調整用電極17および変調用電極18は、互いに離間している。位相調整用電極17および変調用電極18の位置関係は特に限定されるものではないが、本実施例においては、位相調整用電極17は変調用電極18よりも光入力端側に配置されている。
【0025】
図2(c)に示すように、変調用電極18は、上クラッド層24上において、コンタクト層27を介して配置されている。コンタクト層27は、例えばInGaAs等の半導体からなる。なお、上クラッド層24とコンタクト層27との間には、パッシベーション膜25および絶縁膜26は設けられていない。また、位相調整用電極17も同様に上クラッド層24上にコンタクト層27を介して配置されている。位相調整用電極17および変調用電極18は、例えばAu等の金属からなる。
【0026】
図2(a)に戻り、各変調用電極18の一端には、第1光導波路14aおよび第2光導波路14b夫々を伝搬する光を変調させる変調用の電圧が駆動回路19から印加される。変調用の電圧にはDC(直流)バイアス電圧がかけられている。各変調用電極18の他端には、終端抵抗Rが接続されている。各変調用電極18に変調用の電圧が印加されると、第1光導波路14aおよび第2光導波路14bにおいてコア23の屈折率が変化し、第1光導波路14aおよび第2光導波路14bを通過する光の位相が変化する。
【0027】
図3(a)に示すように、駆動回路19は、第1光導波路14aに設けられた変調用電極18と第2光導波路14bに設けられた変調用電極18とに、同振幅かつ逆位相の変調信号を入力する。変調信号として、例えば、正弦波信号を用いることができる。第1光導波路14aおよび第2光導波路14bで付加される位相は、下記式(1)および下記式(2)で表される。これらの光信号は、第2MMI13bにおいて合波される。なお、下記式(1)のΦDC1は、第1光導波路14aにおける位相のDCシフト成分である。下記式(2)のΦDC2は、第2光導波路14bにおける位相のDCシフト成分である。第2MMI13bでは、基本波を含む奇数次成分が逆位相で相殺され、高調波(2倍波)を含む偶数次成分が同相で合成される。そして、第1出力光導波路15aでは、その合成結果が抽出される。
Φ1=a・sinωt+b・sinωt+c・sinωt+ΦDC1 (1)
Φ2=−a・sinωt+b・sinωt−c・sinωt+ΦDC2 (2)
【0028】
図3(b)に示すように、分岐部に1×2MMIを用いる場合には、第1光導波路14aおよび第2光導波路14bのいずれかにπ/2の位相差を生じさせるための位相シフタを設ける。具体的には、両光導波路の物理的な長さ、屈折率などを変更して光学的長さを調整することによって、位相シフタとしての機能が実現される。図3(b)の例では、第1光導波路14aにπ/2の位相シフタを設けることによって、2×2MMIと同様の位相差を生じさせることができる。
【0029】
なお、図3(a)および図3(b)の構成に限られるものではない。たとえば、合成部である第2MMI13bにおいて、奇数次高調波成分が同相で合成されるように構成することもできる。第1光導波路14aおよび第2光導波路14bが、無バイアスの状態で、第2MMI13bのいずれかの出力導波路において位相差ゼロまたは±nπ(nは自然数)の2つの光信号が合成されるように設定されていればよい。以上のような構成の光周波数ダブラを用いることによって、ミキサ等の回路を使用することなく、簡便な駆動回路を用いるだけで、広い周波数間隔のマルチキャリア光を得ることができる。
【0030】
図4(a)〜図4(f)は、光周波数ダブラ10のプッシュプッシュ動作の計算結果を示す図である。図4(a)、図4(c)および図4(e)に示すように、変調信号の振幅2Vppを固定とし、両アームへのDCバイアス電圧を−4V,−6V,−8Vとした。図4(b)、図4(d)、および図4(f)に示すように、いずれの場合においても、25GHzのトーン信号を用いた変調で50GHz間隔のキャリアが得られた。したがって、DCバイアス電圧に関わらず周波数ダブラ動作が得られている。
【0031】
また、図4(b)、図4(d)、および図4(f)に示すように、両アームへのDCバイアス電圧を変化させることによって、出力スペクトルの形状が変化していることがわかる。例えば、図4(f)の例では、各ピーク強度のばらつきが抑制され、各ピーク強度が平坦化されている。したがって、両アームへのDCバイアス電圧を変化させることによって、分波によって得られるマルチキャリア光の強度を平坦化させることができる。同様にして、変調振幅を変更することによって、スペクトル形状を調整することもできる。
【0032】
図5は、光周波数ダブラ10を備えるマルチキャリア発生器100の構成例である。図5に示すように、マルチキャリア発生器100は、光周波数ダブラ10、光源30、光増幅器40、非線形ファイバ50、および分波器60を備える。光源30は、特に限定されるものではないが、一例として波長可変レーザである。光源30からの出射光は、光周波数ダブラ10の第1入力端11aに入射される。
【0033】
光周波数ダブラ10の第1出力端16aから出力される高調波信号は、光増幅器40に入射される。光増幅器40は、特に限定されるものではないが、一例としてEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)である。光増幅器40で増幅された高調波信号は、非線形ファイバ50を介して分波器60に入射される。非線形ファイバ50は、特に限定されるものではないが、一例としてHNLF(Highly nonlinear fiber)である。高調波が非線形ファイバ50を通過することによって、キャリア発生帯域を拡大することができる。分波器60は、各周波数成分(各波長成分)を分離して出力する分波器である。分波器60は、特に限定されるものではないが、一例としてAWG(Arrayed Waveguide Grating)である。
【0034】
図6(a)〜図6(f)は、マルチキャリア発生器100の出力スペクトルのシミュレーション結果である。非線形ファイバ50の長さを500m、非線形ファイバ50の非線形係数γを25/km/Wとし、非線形ファイバ50への光入力レベルを+26dBmとした。
【0035】
図6(a)は、両アームへのDCバイアス電圧を−4Vとしたときの、光周波数ダブラ10の第1出力端16aから出力される光信号のスペクトルである。図6(b)は、両アームへのDCバイアス電圧を−4Vとしたときの、非線形ファイバ50を通った後の光信号のスペクトルである。図6(c)は、両アームへのDCバイアス電圧を−6Vとしたときの、光周波数ダブラ10の第1出力端16aから出力される光信号のスペクトルである。図6(d)は、両アームへのバイアス電圧を−6Vとしたときの、非線形ファイバ50を通った後の光信号のスペクトルである。図6(e)は、両アームへのバイアス電圧を−8Vとしたときの、光周波数ダブラ10の第1出力端16aから出力される光信号のスペクトルである。図6(f)は、両アームへのバイアス電圧を−8Vとしたときの、非線形ファイバ50を通った後の光信号のスペクトルである。
【0036】
図6(b)、図6(d)、および図6(f)に示すように、高調波が非線形ファイバ50を通過することによって、キャリア発生帯域を拡大することができる。また、図6(a)〜図6(f)に示すように、光周波数ダブラ10の各アームに印加するバイアス電圧を制御することによって、マルチキャリアの平坦性(各ピーク強度の均一性)が大きく変化している。特に、両アームへのバイアス電圧を−8Vとしたときに広帯域にわたって平坦な周波数特性が得られている。非線形ファイバ50のパラメータや非線形ファイバ50の光入力レベルを調整することによってキャリアレベルをある程度平坦化することは可能であるが、DCバイアス電圧や振幅による調整において、はるかに自由度が高いというメリットがある。
【0037】
電圧変化に対して位相変化が線形なLN変調器では差動駆動によって理想的な零チャープ特性が得られるのに対し、半導体の光周波数ダブラは、位相変化の非線形性により負チャープ特性が現出するという特徴を有している。図7(a)および図7(b)は、光導波路コア以外の領域が主としてInPからなる光周波数ダブラを使用した場合の出力チャープ特性のシミュレーション結果である。図7(a)および図7(b)に示すように、光周波数ダブラを差動駆動しているにも関わらず、半導体材料の持つ非線形性により、出力波形の立ち上がりで周波数が減少し、立下りで周波数が増大するという負チャープ特性が現れている。
【0038】
(変形例1)
このような光周波数ダブラの負チャープ特性を活用し、図8に示すようなマルチキャリア発生器100aが考えられる。マルチキャリア発生器100aが図5のマルチキャリア発生器100と異なる点は、光周波数ダブラ10と光増幅器40との間に、分散発生器70が設けられている点である。分散発生器70は、分散補償量が固定された固定分散補償器であってもよく、分散補償量が可変の可変分散補償器であってもよい。可変分散補償器としては、ファイバグレーティングなどを利用した公知のものを適用することができる。
【0039】
図8の例では、可変分散補償器の一例として、正分散を有するシングルモードファイバを分散発生器70として用いている。分散発生器70は、変調器出力に対するパルス圧縮回路として動作する。図9(a)〜図9(d)は、分散発生器70としてSSMF(Standard Single Mode Fiber:標準シングルモードファイバ)を用いた場合のパルス圧縮効果シミュレーション結果である。図9(a)〜図9(d)においては、SSMFの長さがそれぞれ、0km、0.8km、1.0km、1.3kmに設定されている。
【0040】
図9(a)〜図9(d)に示すように、半導体からなる光周波数ダブラは、負チャープ特性を有することから、正分散導波路を設けることによって、パルス圧縮現象が見られる。このようにパルス圧縮された光信号を非線形性ファイバに入力させると、図10(a)〜図10(d)に示すようなマルチキャリアスペクトルが得られる。この結果から明らかなように、分散発生器70の分散量を調整することによって、出力キャリアレベルの平坦度を調整することができる。
【0041】
(変形例2)
マルチキャリア発生器には、各部を制御するためのコントローラが設けられていてもよい。図11は、マルチキャリア発生器100bの全体構成を示す図である。図11に示すように、マルチキャリア発生器100bが図8のマルチキャリア発生器100aと異なる点は、コントローラ110、出力レベル制御回路120、分散制御回路130、DCバイアス制御回路140、キャリアレベルモニタ回路150、およびDCバイアス印加回路160が設けられている点である。
【0042】
コントローラ110は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)などを備える。コントローラ110は、ROMなどの不揮発性記憶装置に記憶されたプログラムをCPUが実行することによって、各部を制御する。図11の例では、コントローラ110は、光源30およびDCバイアス制御回路140を制御する。出力レベル制御回路120は、光増幅器40のゲインを制御することによって、マルチキャリア発生器100bの出力レベルを制御する。分散制御回路130は、分散発生器70の分散量を制御する。DCバイアス制御回路140は、DCバイアス印加回路160から変調用電極18に印加されるDCバイアスを制御する。キャリアレベルモニタ回路150は、分波器60における分波によって得られる各分波光の強度を検出する。
【0043】
図12は、コントローラ110がDCバイアス制御回路140をフィードバック制御する際に実行するフローチャートの一例である。図12に示すように、キャリアレベルモニタ回路150は、分波器60から出力される各分波光の強度を検出する(ステップS1)。次に、コントローラ110は、キャリアレベルモニタ回路150の検出結果に応じて、DCバイアス制御回路140を制御する(ステップS2)。それにより、DCバイアス制御回路140は、DCバイアス印加回路160から各変調用電極18に印加されるDCバイアスを制御する。その後、ステップS1が再度実行される。ステップS2においては、コントローラ110は、各分波光の光強度が均一化するようにDCバイアス制御回路140を制御する。
【0044】
なお、コントローラ110は、キャリアレベルモニタ回路150の検出結果に応じて、出力レベル制御回路120および分散制御回路130をフィードバック制御してもよい。また、出力レベル制御回路120、分散制御回路130およびDCバイアス制御回路140は、マルチキャリア発生器100bの起動時において、手動で制御されるものであってもよい。
【0045】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 光周波数ダブラ
11 入力端
12 入力光導波路
13 MMI
14 光導波路
15 出力光導波路
16 出力端
17 位相調整用電極
18 変調用電極
21 半導体基板
22 下クラッド層
23 コア
24 上クラッド層
25 パッシベーション膜
26 絶縁膜
27 コンタクト層
30 光源
40 光増幅器
50 非線形ファイバ
60 分波器
70 分散発生器
100 マルチキャリア発生器
110 コントローラ
120 出力レベル制御回路
130 分散制御回路
140 DCバイアス制御回路
150 キャリアレベルモニタ回路
160 DCバイアス印加回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を2つに分岐する分岐部と、
前記分岐部に接続された2本の半導体光導波路と、
前記2本の半導体光導波路のそれぞれに対して同振幅で逆位相の変調信号を入力するための変調用電極と、
前記2本の半導体光導波路から入力された光信号の偶数次高調波成分あるいは奇数次高調波成分の何れかを同相で合成して出力する合波部と、を備えることを特徴とする光周波数ダブラ。
【請求項2】
前記分岐部は、2×2MMIであることを特徴とする請求項1記載の光周波数ダブラ。
【請求項3】
前記合成部は、2×2MMIであり、前記出力は前記2×2MMIの何れか一方からなされることを特徴とする請求項1または2記載の光周波数ダブラ。
【請求項4】
前記2本の半導体光導波路のそれぞれには、直流バイアスを印加するための位相調整用電極が設けられてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光周波数ダブラ。
【請求項5】
請求項1ないし4記載の光周波数ダブラと、
前記光周波数ダブラからの出力光を分波する分波器を備えることを特徴とするマルチキャリア発生器。
【請求項6】
前記光周波数ダブラの出力端と前記分波器との間に配置された非線形ファイバを備えることを特徴とする請求項5記載のマルチキャリア発生器。
【請求項7】
前記非線形ファイバと前記光周波数ダブラとの間に配置された光増幅器と、
前記光増幅器と前記光周波数ダブラとの間に配置された波長分散発生器と、を備えることを特徴とする請求項6記載のマルチキャリア発生器。
【請求項8】
前記波長分散発生器は、正分散を有する光ファイバであることを特徴とする請求項7記載のマルチキャリア発生器。
【請求項9】
前記光周波数ダブラの入力端に接続された波長可変半導体レーザを備えることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のマルチキャリア発生器。
【請求項10】
前記分波器の各出力光の強度を検出する検出部を備え、
前記バイアス入力は、前記検出部の検出結果に応じて、前記変調用電極に印加する直流バイアスを変化させることを特徴とする請求項5記載のマルチキャリア発生器。
【請求項11】
前記光周波数ダブラに入力する前記変調信号を生成する駆動回路を備えることを特徴とする請求項5〜10のいずれかに記載のマルチキャリア発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−3268(P2013−3268A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132601(P2011−132601)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】