説明

光回路と回路素子およびそれらを形成する方法

【解決手段】 光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路および回路素子が、基板上に配置されたプラズモニック粒子および/または非プラズモニック粒子から作製され、前記プラズモニック粒子および/または非プラズモニック粒子は、適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法をそれぞれ有する。このような粒子は、抵抗と、コンデンサと、インダクタと、これらの素子の組み合わせから作製された回路とを形成するよう、種々のプラズモニック材料および/または非プラズモニック材料でできた種々の形状およびサイズで基板上に堆積させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、出願日2004年6月18日の米国仮特許出願第60/581,016号(参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする)に基づく利益を主張するものである。
【0002】
連邦政府の資金援助を受けた研究開発の記載
本明細書に記載された本発明は、米国国防総省国防高等研究事業局(Defense Advanced Research Projects Agency:DARPA)助成金第HR0011−04−P−0042号および米国空軍科学研究局(Air Force Office of Scientific Research:AFOSR)助成金第F49PRE−03−1−0438号の資金により一部もたらされたものであり、米国政府は本発明において一定の権利を有しうる。
【0003】
本発明は、プラズモニックナノ構造および非プラズモニックナノ構造を使ったIR(赤外線)および可視領域で作用する回路および回路素子と、それらを形成する方法とに関する。
【背景技術】
【0004】
従来の回路は、低い周波数領域、すなわちRF以下の周波数範囲で動作することが知られている。従来の回路は、明確に識別された周知の回路素子を有している。このような回路素子には動作波長よりはるかに小さいものも含まれるため、結果としてこのような小サイズの限界でマクスウェル方程式を「近似」した回路理論が応用されている。
【0005】
ここで指摘すべきことは、RF以下の周波数で従来使用されている回路構成の成分概念を単にスケーリングしても遠赤外線以上の周波数には適用できないことである。RF以下の周波数における従来の回路は、集中素子および金属ワイヤーに沿って循環する伝導電流に依存している。しかしながら、赤外線および光の周波数サイズでは、導電性の金属材料は非常に異なる挙動を呈するため、金属材料をこの周波数まで単純にスケールダウンすることはできない。
【0006】
このため、光(可視光)および赤外線領域で機能する回路および回路素子はいまだに必要とされている。さらに、例えば生物回路、ナノ光学装置、光情報ストレージ、バイオフォトニクス装置、分子シグナリング装置といった光回路および光回路素子を利用した製品も必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの態様は、光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路素子を含んでいる。これらの回路素子は、基板上に配置されたプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子を有し、当該プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子は、適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法をそれぞれ有する。
【0008】
本発明は、他の態様において、光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路を含み、このような回路は、複数のプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子を堆積させた基板を有する。また、隣接しあった前記粒子のペアは、光または赤外線の周波数のエネルギー適用時に当該粒子が光結合できるよう、十分小さい距離で互いから分離されている。
【0009】
並列共振回路は、光または赤外線の周波数で機能するようになっている本発明の回路を使って提供され、プラズモニック材料で形成された第1の部分および非プラズモニック材料で形成された第2の部分を有した3次元融合粒子を有する。前記融合粒子は、前記第1の部分および前記第2の部分の間に形成された界面を有し、この界面は、適用される光または赤外線の周波数により生成される光場に平行である。当業者であれば、光場が電磁場の一種であること、またこれらの用語が、本発明の実施形態を説明する上でしばしば同義的に使用されることが理解されるであろう。例えば本明細書で説明するように、可能性として2若しくはそれ以上の粒子は「結合」し、より具体的には「光結合」し、あるいは「光結合」により接続されうる。通常、IR領域および可視領域(特に可視領域)において、電磁場は具体的に「光場」として認識されるものである。
【0010】
直列共振回路も、光または赤外線の周波数で機能するようになっている本発明の回路を使って提供され、この直列共振回路も、プラズモニック材料で形成された第1の部分および非プラズモニック材料で形成された第2の部分を有した3次元融合粒子を有する。前記融合粒子は、前記第1の部分および前記第2の部分の間に形成された界面を有し、この界面は、適用される光または赤外線の周波数により生成される光場に垂直である。
【0011】
本発明によると、光または赤外線の周波数で機能するようになっているナノスケール回路を提供でき、このような回路は、プラズモニック材料または非プラズモニック材料から成る複数のナノ粒子を含む。前記複数のナノ粒子は、隣接した当該ナノ粒子が光結合用に十分近接しあうよう基板上に堆積させてある。前記ナノスケール回路は、前記複数のナノ粒子の各々の特性に基づき所定の回路機能を果たすよう設計されている。例えば、この所定の回路機能は、右手系伝送線路機能または左手系伝送線路機能でありうる。
【0012】
本発明の他の態様は、光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路素子を形成する方法を含み、この方法は、適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法をそれぞれ有するプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子の少なくとも一方を、基板に堆積させる工程と、光または赤外線の周波数において、プラズモニック粒子にインダクタとして機能させ、かつ非プラズモニック粒子にコンデンサ(キャパシタ)として機能させるよう、前記光または赤外線の周波数のエネルギーを適用する工程とを有する。他の特定の態様は、光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路を作製する方法を含み、この方法は、回路素子を形成する工程と、追加粒子が光結合できるよう、当該追加粒子を十分小さい距離だけ離間してさらに前記基板上に堆積させる工程とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1〜5を参照して本発明を詳しく説明する。当業者であれば、これらの図に関する本明細書の説明が例示目的のみのものであり、添付の請求項により決定される本発明の範囲を限定するよう意図されたものでは一切ないことが理解できるであろう。
【0014】
定義
本明細書における用語「を有する」、「を含む」、またはこれらのいかなる類似表現も、非排他的な包含を意図したものである。例えば、要素リストを有する工程、方法、物品、または装置は、必ずしも記載された要素だけに限定されず、明示的に記載されなかった他の要素、または前記工程、方法、物品、または装置に固有の他の要素も含みうる。さらに、明示的に別段の断りがない限り、「または」は包含的ORであり、排他的ORではない。例えば、条件「AまたはB」は次のいずれかにより満たされる。Aが真でBは偽、Aが偽でBは真、およびAもBも真。
【0015】
本明細書では、本発明の要素および構成要素を記述する際、不定冠詞「a」および「an」を使用している。これは単に便宜上の措置で、本発明の全体的な感覚をつかむためのものである。この記述は1つまたは少なくとも1つを包含すると理解すべきであり、単数表記であっても、明らかに別段の文意がない限りは複数の場合が含まれる。
【0016】
本発明の粒子サイズを説明する場合の接頭辞「ナノ」は、全般的にナノメートル(10−9m)範囲のサイズを指すが、本明細書における「ナノ」は、適用される光信号または赤外線信号の波長より粒子サイズが実質的に小さい限り、ナノ範囲より大きいミクロン(10−6m)範囲のサイズも含む。
【0017】
本明細書における用語「光または赤外線の周波数で機能するようになっている」は、マイクロ波領域など、より低い周波数で動作する導電性モデルの回路または回路素子と同様な特性を有する回路または回路素子を指して使われる。また用語「光回路」または「光回路素子」は、光または赤外線の周波数で機能するようになっているこれらの回路または回路素子と同じものを指して使われる。
【0018】
本明細書における用語「適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい」は、真空中および材料中での動作波長よりはるかに小さいサイズを有する光学回路素子を形成する粒子を指して使われる。例えば、粒子が球体である実施形態では、
【0019】
【数1】

【0020】
および
【0021】
【数2】

【0022】
で(ここで、λは約380nm〜約10μm)、これは一般に光およびIRの範囲内と理解される。
【0023】
本明細書における用語「プラズモニック」、「プラズモニック粒子」、または「プラズモニック材料」は、実数部が負の誘電率εを有する金属材料、好ましくは貴金属を指して使用する。この結果、光信号とプラズモニック粒子が相互作用して表面プラズモン共鳴(共振)が起こり、これによりプラズモニック粒子が実効インダクタンスを呈する。一般に、AgやAuなど貴金属のプラズマ周波数は可視または紫外線(UV)の領域になり、このためこれらの金属は光周波数でプラズモニック材料として振る舞う(誘電率の実数部が負になる)ことが知られている。当業者であれば、可視領域の金より銀の方が低損失であることが理解されるであろう。結果として、光信号とプラズモニックナノ粒子の相互作用には表面プラズモン共鳴が伴う(例えば、C.F.BohrenおよびD.R.Huffman、「Absorption and Scattering of Light by Small Particles」(Wiley、New York、1983)、B.Lamprecht,et al.、Appl.Phys.Lett.、79、51(2001)を参照)。
【0024】
用語「実効インダクタンス」とは、導電回路、例えばマイクロ波周波数で動作可能な回路の場で理解されるインダクタのインダクタンスと同様な特性を指す。
【0025】
本明細書における用語「非プラズモニック」、「非プラズモニック粒子」、または「非プラズモニック材料」は、実数部が正の誘電率εを有する非金属材料、例えばAuSや、SiOなどの酸化物を指して使用する。このような粒子では、光信号とプラズモニック粒子が相互作用しても表面プラズモン共鳴は起こらず、結果的に非プラズモニック粒子が実効容量を呈する。用語「実効容量」は、導電回路、例えばマイクロ波周波数で動作可能な回路の場で理解されるコンデンサの容量と同様な特性を指す。
【0026】
光回路に使われる用語「実効抵抗」または「抵抗」は、導電回路、例えばマイクロ波周波数で動作可能な回路の場で理解される抵抗と同様な特性を指す。プラズモニック粒子も非プラズモニック粒子も、虚数部が正の誘電率、すなわち実効抵抗を呈する誘電率を有しうる。
【0027】
用語「異なる別の粒子[若しくは異なる別のプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子]と光結合できるよう、当該粒子に近接して」は、隣接しあった2つの粒子間の光結合を可能にする距離を指す。この距離は、適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さいことが好ましい。隣接しあった粒子は、互いに融合することにより界面を形成することもある。上限として10μmの遠赤外線信号を考慮すると、約1ミクロンサイズの粒子が考えられる。本明細書における用語「光結合」または「結合」は、1つの粒子が隣接する粒子に及ぼす場の影響力の現象を指して使われる。すなわち、粒子間の相互作用は互いに従属しあう場の源として呈されうる。その一例として、各従属電流源の値は図2の隣接しあった一対の球形粒子と見ることができ、これは他のナノスフェアにわたる電位差の観点から明示的に導出できる。
【0028】
本明細書における用語「界面」は、1粒子の2つの部分の間の2次元交点、または2粒子の融合を指して使われる。粒子が球体である例の場合、界面は平面になる。
【0029】
例示的な実施形態
本発明は、光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路素子に関する。これらの回路素子は、基板上に配置されたプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子を有し、当該プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子は、適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法をそれぞれ有する。前記プラズモニック粒子は、光および赤外線の周波数の照射時、実数部が負の誘電率を有することが好ましい。これらのプラズモニック粒子は、金属材料、好ましくは貴金属、より好ましくは銀または金から形成される。また、これらのプラズモニック粒子は、光および赤外線の周波数の照射時、虚数部が正の誘電率を有する。他方、前記非プラズモニック粒子は、非金属材料、好ましくはAuS、またはSiOなどの酸化物から形成される。また、これらの非プラズモニック粒子は、光および赤外線の周波数の適用時、実数部が正の誘電率を有することが好ましい。
【0030】
プラズモニック粒子により生じるインダクタンスなど、前記プラズモニックまたは非プラズモニック粒子から形成されるこの回路素子の特徴は、当該プラズモニックまたは非プラズモニック粒子を表すサイズ、形状、および材料により決定される。例えば、ある種の光インダクタが望ましい場合は、プラズモニック粒子の形成に貴金属を選択できる。さらに、望ましい回路素子特性がわかっている場合、前記プラズモニック粒子の形状およびサイズは、本明細書で提供する式により決定できる。また光または赤外線の光源の波長は、望ましい粒子に選択したサイズ、形状、および材料に対し、適宜選択される。
【0031】
さらに異なる別の例において、ある種の光コンデンサが望ましい場合は、前記非プラズモニック粒子の形成に、AuS、またはSiOなどの酸化物といった非金属材料を選択できる。次いで、望ましい光容量を達成するための計算結果を使って前記サイズおよび形状、また使用する光源の波長を決定することができる。選択された光または赤外線の光源の適用時、前記プラズモニック粒子は共鳴を呈し、また前記非プラズモニック粒子は共鳴を呈さないことが好ましい。
【0032】
さらに、本発明のプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子は、前記光または赤外線の周波数の光源の適用時、電気回路抵抗と同様に機能できる。前記プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子の抵抗機能は、当該粒子の誘電率の正の虚数部に起因しうる。双方のタイプの粒子を形成する材料は不動態化した材料で、抵抗は不動態化した材料でもある。当業者であれば、誘電率の虚数部の符号は関連する科学分野で使用されている規則に依存することが理解されるであろう。例えば物理分野では、不動態化した材料の誘電率は正の虚数部を有するが、電気工学分野では、同じ材料の誘電率が負の虚数部を伴って記述される。本明細書で採用する記述は、物理分野の規則に従っている。
【0033】
本発明は、光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路も含み、この回路は、複数のプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子を堆積させた基板から成る。これらの堆積粒子は、前記プラズモニック粒子または前記非プラズモニック粒子である。また、隣接しあった前記粒子のペアは、光または赤外線の周波数のエネルギー適用時に当該粒子が光結合できるよう、十分小さい距離で互いから分離されている。一部の実施形態では、隣接しあった一対の粒子は、互いに融合されることにより、その間に界面を形成する。この界面は実質的に平面状であることが好ましい。
【0034】
本発明の一部の態様では、光または赤外線の周波数で機能するようになっている並列共振回路が提供され、この並列共振回路は、プラズモニック材料でできた第1の部分と、非プラズモニック材料でできた第2の部分とから成る3次元融合粒子から成り、光または赤外線の周波数により生じる光場は、前記第1の部分および前記第2の部分の間に形成される界面に平行である。前記3次元融合粒子は、楕円形の断面を有することが好ましく、球体であることがより好ましい。前記3次元融合粒子が球体である場合、前記界面は赤道であり、前記第1の部分は第1の半球で、前記第2の部分は第2の半球である。
【0035】
光または赤外線の周波数で機能するようになっている直列共振回路も提供され、この直列共振回路は、プラズモニック材料でできた第1の部分と、非プラズモニック材料でできた第2の部分を有する3次元融合粒子を有し、光または赤外線の周波数により生じる光場は、前記第1の部分および前記第2の部分の間に形成される界面に垂直である。前記3次元融合粒子は、楕円形の断面を有することが好ましく、球体であることがより好ましい。前記3次元融合粒子が球体である場合、前記界面は赤道であり、前記第1の部分は第1の半球で、前記第2の部分は第2の半球である。
【0036】
本発明の一部の実施形態において、前記複数の粒子は、前記複数のナノ粒子の各々の特性に基づき所定の回路機能を果たすよう設計されている。一部の実施形態は、所定の回路機能すなわち右手系伝送線路の機能を有し、別の一部の実施形態は、所定の回路機能すなわち左手系伝送線路の機能を有する。
【0037】
本発明の他の態様は、光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路素子を形成する方法を含み、この方法は、適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法をそれぞれ有する前記プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子の少なくとも一方を、基板に堆積させる工程と、光または赤外線の周波数において、前記プラズモニック粒子にインダクタとして機能させ、かつ前記非プラズモニック粒子にコンデンサ(キャパシタ)として機能させるよう、前記光または赤外線の周波数のエネルギーを適用する工程とを有する。
【0038】
他の特定の態様において、本発明は、上記のように光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路を作製する方法を含み、この方法は、回路素子を形成する工程と、追加粒子が光結合できるよう、当該追加粒子を十分小さい距離だけ離間してさらに前記基板上に堆積させる工程とを有する。一部の実施形態において、光結合した前記粒子は融合しあうことにより、その粒子間に界面を形成する。
【0039】
以下のナノスフェアは、例示目的のためだけに使用されている。この3次元形状は、光および赤外線の周波数における光エネルギーへの前記ナノ粒子の応答を決定する上で全体的な数学計算を簡略化するなどのため選択されたものである。当業者であれば、いかなる3次元形状のナノ粒子の特性を決定するにも以下の計算を適合できるため、すなわちいかなる構造のナノ粒子であっても光および赤外線の範囲の波長に応答するため、上記の特定3次元構造の使用は本発明を限定するよう意図したものではない。
【0040】
半径Rのナノスフェアは、一般に複素数である誘電関数ε(ω)を伴う均質な材料から作製することができる。この球体は、真空および材料内での動作波長よりはるかに小さく、すなわち
【0041】
【数3】

【0042】
かつ
【0043】
【数4】

【0044】
とできる。入射電磁波E0は、単色励起e−iωt下でこの球体を照らす。当該粒子がこの波長より小さいため、この球体近傍の散乱電磁場と、この球体内部の合計場とは、周知の時間調和、準静的アプローチを使って非常に良好な近似値で得られる。これにより、この球体内外の場について、それぞれ以下の近似表現が導かれる(J.D.Jackson、Classical Electrodynamics(John Wiley&Sons、New York、1999)などを参照)。
【0045】
【数5】

【0046】
【数6】

【0047】
ここで、
【数7】

【0048】
は外部領域の誘電率、
【0049】
【数8】

【0050】
は球体中心から観測点までの位置ベクトル、そして
【0051】
【数9】

【0052】
である。この球体表面の各点において、変位電流−iωDの法線成分は連続的であるため、次が示唆される。
【0053】
【数10】

【0054】
ここで、
【0055】
【数11】

【0056】
はこの球体表面に垂直な外方へ向いた局所的な単位ベクトルである。この方程式において、Eres≡Eint−Eは、入射場が合計内部場から減算される場合の、ナノスフェア内部の残留場を表す。
【0057】
半径Rのナノスフェアを図1に例示する。図1では、光領域でナノコンデンサおよびナノ抵抗の機能を提供するものとして、ε>0の非プラズモニック球体1を示している。また図1では、光領域でナノインダクタおよびナノ抵抗の機能を提供するものとして、ε<0のプラズモニック球体2も示している。入射電場3は、この粒子に作用している状態で黒い実線矢印で示されている。各ナノスフェアにより生じた周辺双極子電場4は、灰色の矢印を伴った細い力線として見られる。
【0058】
E0は、図1で黒い矢印により示した入射電場3のように配向できる。式(3)を上半球表面について積分すると、式(3)の各関連項について「合計」変位電流が得られる。
【0059】
【数12】

【0060】
式(4)に含まれる3つの項は、それぞれの機能に基づき、「印加変位電流源」(impressed displacement current source)Iimp5、「ナノスフェア内の変位電流循環」(displacement current circulating in the nanosphere)Isph6、および「周辺(双極子)場の変位電流」(displacement current of the fringe (dipolar) field)Ifringe7とそれぞれ命名されている。これらは、すべてこのナノスフェア表面上の、励起により誘導された分極電荷に関係している。変位電流の各項間の上記の関係は、図1に示したように、並列回路10のノードにおける分流として解釈することができる。実際、上記で定義されるこのような電流は、式(4)で表されるキルヒホッフの電流法則に従う。この準静的近似では
【0061】
【数13】

【0062】
が局所的にゼロに近づくため、キルヒホッフの電圧法則も満たされる。
【0063】
図1に示した「ナノスフェア」の等価インピーダンスおよび回路の「周辺」分岐は、この球体の上半球表面と下半球表面との間の(Eresによる)「平均」電位差の比として計算できる。
【0064】
【数14】

【0065】
また、実効電流は式(4)で評価される。従って次を得る。
【0066】
【数15】

【0067】
式(6)から、図1に示した回路の2つの並列素子は、ナノスフェアの誘電率の符号に従い、互いに異なる挙動をしうることが明らかにわかる。以下、2つの場合を考慮する。
【0068】
ナノコンデンサとしての非金属(非プラズモニック)球体
この場合、εの実数部が正数であるため式(6)のZsphは容量性となり、同時に誘電率の虚数部に関係した抵抗部分も有する。外部領域の誘電率は正であると仮定されるため、外部周辺のインピーダンスは常に容量性となる。これにより、光波長と比べて小さい非プラズモニックナノスフェアに等価なナノ回路は、図1の左下のように示すことができる。ここで、等価回路素子は、当該ナノスフェアのパラメータにより次のように表せる。
【0069】
【数16】

【0070】
容量性素子は2つあるため、この場合共振は起こらない。これは光波および非プラズモニックナノスフェアの相互作用に関する共鳴の不在と一貫した事実である。
【0071】
ナノインダクタとしての金属(プラズモニック)球体
この場合、球体は可視またはIRの領域におけるプラズモニック材料(例えばAgやAuなどの貴金属)で作製でき、結果的にこれらの周波数帯域におけるこの材料の誘電率の実数部は負の値となる。したがって、このナノスフェアの等価インピーダンス(式(6))は「負の容量性」となり、Re[ε]<0である与えられた任意の周波数において、等価容量は「負」になることが示唆される。これは、A.K.Sarychev、D.A.Genov、A.Wei、およびV.M.Shalaev、Proceedings of SPIE、Complex Mediums IV、81(2003);G.V.Eleftheriades、A.K.Iyer、およびP.C.Kremer、IEEE Trans.Microwave Theory Tech、50、2702(2002);およびN.Engheta、N.Bliznyuk、A.Alu、A.Salandrino、Dig.USNC−URSI National Radio Science Meeting、Monterey、CA、276(2004)で説明されているように、正の実効「インダクタンス」として解釈できる。したがって、光波がプラズモニックナノスフェアと相互作用する場合の等価回路は、図1の右下のように表せる。
【0072】
プラズモニック材料で形成された球体の等価回路素子は、次のように計算できる。
【0073】
【数17】

【0074】
この場合、前記周辺コンデンサに並列したインダクタがあるため、この回路は共振を呈する。この共振は、A.K.Sarychev、D.A.Genov、A.Wei、およびV.M.Shalaev、Proceedings of SPIE、Complex Mediums IV、81(2003)で言及されているように、光波および金属ナノ粒子の相互作用に応答したプラズモニック共鳴に対応する。この回路の共振条件Lsphsph=ω−2にナノスフェアRe[ε]=−2εに関する周知のプラズモン共鳴条件が必要なことは検証しうる(C.F.Bohren、およびD.R.Huffman、Absorption and Scattering of Light by Small Particles(Wiley、New York、1983))。
【0075】
これにより、光(または赤外線)信号により励起されたナノスフェアは、この球体が非プラズモニック材料またはプラズモニック材料でそれぞれ作成されている場合、光周波数で「ナノコンデンサ」または「ナノインダクタ」として―導電回路で対応する各回路素子と同様に―効果的に振る舞いうる。材料誘電率の虚数部により等価ナノ抵抗が提供可能で、これらの抵抗は、誘電率に何らかの非ゼロ虚数部を有する限り、プラズモニック粒子であっても非プラズモニック粒子であってもよい。インダクタが通常「巻いたワイヤー(コイル)」の形態になる、より低周波数領域におけるインダクタの従来設計とは異なり、光および赤外線の領域で動作する本インダクタは、プラズモニック材料から成る単純構造で作製される。換言すると、光波長よりはるかに小さい寸法でワイヤーを巻く代わり、ここでは天然貴金属のプラズモニック特性が実効インダクタンスを提供し、その値は、ナノ構造のサイズ、形状、および材料含有量を適切に選択することで設計が可能である。これらパラメータを修正すると、望ましい実効インダクタンスの達成につながる。
【0076】
以上で説明した光および赤外線の領域の回路素子は、回路の小型化に新しい可能性をもたらす。RF以下の周波数における従来の回路は、集中素子および金属ワイヤーに沿って循環する伝導電流に依存し、赤外線および光の周波数まで単純にスケールダウンすることはできない。これらの高周波では、導電性の金属材料が著しく異なる挙動を示すためである。ただし、光ナノ回路の基本素子としてプラズモニックナノ粒子および非プラズモニックナノ粒子を導入すると、その光ナノ回路内において事実上「変位」電流が同様に「循環」できるため、光周波数でも同様な機能を提供できるようになる。本質的には、光周波数で動作する3つの基本回路素子すなわちナノインダクタ、ナノコンデンサ、およびナノ抵抗を有することができ、これらは光波長でより複雑な回路をする際に設計の構成単位を形成する。
【0077】
与えられた任意の波長および特定材料について、これらの光学回路素子の値は前記粒子のサイズおよび形状に直接依存し、例えばナノスフェアの場合はその半径から計算が行われる。ただし、設計に高い柔軟性(自由度)が望まれる場合、望ましい結果を達成するため操作できる3つの軸に対応して幾何学的パラメータが3つある場合は、インダクタンスであっても、容量であっても、抵抗であって、楕円形のナノ粒子など異なる構造のナノ粒子を使用することができる。
【0078】
2つ以上のナノ粒子を有する本発明の態様、例えば半径R1およびR2、誘電率ε1およびε2で一定の距離dだけ離間された2つのナノスフェアの場合、場の分布を電磁解析すると、ここで考慮する準静的限界では、これらの構成は、それぞれが1つの球体を表す「結合された」ナノ回路15として効果的に処理できることが示される。図2は、隣接しあった2つのナノスフェア間の光波相互作用を使って光領域で結合されたナノスケール回路を例示したものである。図の各回路には、所与のナノスフェアの容量性インピーダンスまたは誘導性インピーダンスと、周辺場に関係した容量性インピーダンスと、この球体への印加場を表す電流源とが含まれる。さらに、各回路は、1つの球体に隣接した他粒子の場の影響を表す従属電流源16も必要とする。すなわち、これら粒子間の相互作用は、このような従属電流源16により定義される。図2における各従属電流源の値は、上記の式と同様、他のナノスフェアにわたる電位差の観点から明示的に導出しうる。
【0079】
これらのナノ粒子で並列または直列の回路素子を形成するには、それらを2つ(以上)非常に近接させ、照射電場に対し特定の配向で並置する必要がある。図3の上段は2つの融合粒子20を示しており、これらは強固に対にされた、誘電率の異なる2つの半円筒から成るナノ粒子である。数学計算を簡略化するため、無損失の円筒を考慮する。電場照射時のこの融合構造の周囲の電位分布からは、複合回路素子としてのこの融合構造の挙動について有用な情報が得られる。図3の中段は、この構造内外の準静的電位分布および等電位面21を示したものである。これらの等電位面21は、実線で描かれている。この電位分布および等電位面21は、2通りの電場を示しており、誘電率εおよび−εを有する2つの半円筒間の平面状界面に対し、一方は平行(左側)で、他方は垂直(右側)である(これら半円筒の直径は動作波長よりはるかに小さいと仮定されているため、ここでは電位分布の評価に近似時間調和準静的解析が行われ、より高次の項は考慮しなくともよい)。図3の中段左側で融合円筒付近にある前記等電位面21は、当該融合円筒の外面に垂直になっており、この面での合計電場の法線成分がゼロになることを示唆している。しかし、実際にはこの円筒表面の頂部および底部の間に一定の電位差が存在する。この融合構造は、その外部からわかるように、周辺コンデンサに「並列」した並列共振LC回路(共振時、無限インピーダンスを有するため電流は正味ゼロになる)とみなすことができる。
【0080】
同様に、図3中段右側の融合半円筒は2つの半円筒間の境界面に垂直な外部電場を有しており、外部から見た場合、「直列」共振LC回路とみなすことができる。しかし、この場合図の中段右側からわかるように、前記等電位面21は前記融合円筒の表面と平行になるため、この構造の表面における電位差は事実上ゼロとなるが、変位電流はこの表面を出入りすることが示唆される。これらの例の共振動作は、(絶対値は等しいが)逆符号の誘電率を2つの半円筒として組み合わせた特定の選択によるものである。ただし異なるペアの場合は、組み合わせと、外部励起との配向に応じ、共振しない直列素子または並列素子として振る舞うことが考えられる。さらに、同様に組み合わせた他のナノ構造でも、類似した並列構成および直列構成に至りうる。
【0081】
図の下段は、外部から見たこの融合構造を表す並列素子および直列素子を例示した等価回路を示している。前記並列共振LC回路22は図3の回路図に示している(材料を無損失と仮定しているため等価抵抗は不在だが、追加は容易である)。前記直列共振LC回路23も、図3の回路図に図示している。
【0082】
図4は、3次元のプラズモニック材料または非プラズモニック材料いずれかの複数部分で形成されたナノスケール回路または光回路の2つの異なる実施形態を例示したものである。第1の実施形態である、矩形セグメント化した光回路28は、プラズモニックセグメント30および非プラズモニックセグメント31の矩形ブロックとして図4に示している。第2の実施形態は、閉回路である同様なナノスケール回路、すなわち閉じたナノループ光回路29を有し、図4のプラズモニックセグメント30および非プラズモニックセグメント31の弧状ブロックを有して示されている。この矩形セグメント化した光回路28が(近接場走査型光学顕微鏡(near−field scanning optical microscope:NSOM)などの)光信号の局所電場により励起されると、前記プラズモニック「ブロック」30および前記非プラズモニック「ブロック」31は、(回路図の簡略化のため図示していない一部のナノ抵抗とともに)ナノインダクタ32およびナノコンデンサ33としてそれぞれ作用するため、この構造は、図4に示したより複雑な回路34として動作する。このようなナノスケールの複雑な回路34は、実際、プラズモニックナノバーコードおよびプラズモニックデータ格納システムとして振る舞う。ナノループ光回路29がある時点でNSOMにより励起されるとこのループに沿った変位電流は等価なインダクタおよびコンデンサにより形成された回路内の電流として振る舞うことが推測される。また、光回路は分子などの生物素子とインターフェース連結でき、これら生物素子は回路内で前記プラズモニック素子30または非プラズモニック素子31の代わりになり、光または赤外線光に対するこの光回路の全体的な応答に寄与する。生物素子がその回路に与える効果を求めることにより、その特定の生物素子に関する情報を決定することができる。
【0083】
光回路の一部の例では、光ナノ伝送線路を形成するため、光周波数におけるナノインダクタおよびナノコンデンサが適切に構成される。図5の上段は、分布(または集中)インダクタ素子および分布(または集中)コンデンサ素子を使った従来のLH伝送線路40およびRH伝送線路41を回路図として示したものである。図5の中段はナノスケールの複雑な回路を例示したもので、この回路は、左手系(left−handed:LH)ナノスケール伝送線路42または右手系(right−handed:RH)ナノスケール伝送線路43の伝送形態で、ナノインダクタおよびナノコンデンサとしてそれぞれ機能するプラズモニックナノ構造および非プラズモニックナノ構造を有する。この構成に直列ナノインダクタおよび分路ナノコンデンサが伴うと、優勢な遇モードの場合、光周波数における従来の(別称、右手系(RH))伝送線路43がもたらされる。ただし、前記分路ナノインダクタおよび直列ナノコンデンサを使うと、負指数の(すなわち左手系(LH))伝送線路42を光領域で合成することができる。これは、G.V.Eleftheriades、A.K.Iyer、およびP.C.Kremer、IEEE Trans.Microwave Theory Tech、50、2702(2002)およびL.Liuら、J.Appl.Phys.、92、5560(2002)でのマイクロ波に関する説明と同様である。これは、光周波数におけるサブ波長を重視した興味深い効果につながりうる。平面状のRH構造およびLH構造は、アプローチこそ異なるが、G.Shvets、Phys.Rev.B.67、035109(2003)で提案されている平面状構造と一貫性がある。前記ナノ粒子間の距離は、隣接しあったナノ粒子間の距離がゼロで、本質的に融合したナノ粒子の層を形成するほぼ均一な層が存在する程度まで狭めることができる。これは結果的に、前方および後方への伝搬特性を伴う交互積層構造を形成したプラズモニック層および非プラズモニック層となる。図5の下段は、代表的なLHナノスケール伝送線路44と、それに対応したRHナノスケール伝送線路45とを示したものである。
【0084】
実施例
以下の例は、本発明の態様の実施形態をより詳しく例示するため提供するものである。これらの例は例示的なものであって、本発明を限定するよう意図したものではない。
【実施例1】
【0085】
ナノインダクタ光学回路素子
銀を使って半径R=30nmを有する球体形状の3次元粒子を形成する。波長λ=633nmにおいて、銀の誘電率はεAg=(−19+i0.53)εになることが知られている(P.B.Johnson、およびR.W.Christy、Phys.Rev.B、6、4370(1972)を参照)。式(8)から、この粒子は、波長λ=633nmを有する光の照射時、ナノインダクタLsph=7.12フェムトHを呈することが決定される。
【実施例2】
【0086】
ナノコンデンサ光学回路素子
AuSを使って半径R=30nmを有する球体形状の3次元粒子を形成する。波長λ=633nmにおいて、銀の誘電率は
【0087】
【数18】

【0088】
になる。波長λ=633nmを有する光の照射時、この球体が呈するナノコンデンサはCsph=4.53アトFと決定される。
【実施例3】
【0089】
左手系ナノスケール伝送線路
左手系(LH)ナノスケール伝送線路の形態のナノ回路は、まず非プラズモニックナノ粒子の第1の均一な層を基板に堆積させて形成する。隣接しあった非プラズモニックナノ粒子同士は、光結合が可能な十分小さい距離だけ分離する。この分離距離は、この層全体にわたり保つ。次いで、前記非プラズモニックナノ粒子の第1の均一な層上に、プラズモニックナノ粒子の均一な層を構成する。前記第1の均一な層と同様、隣接しあったプラズモニックナノ粒子同士は、光結合を可能にする十分小さな距離だけ分離する。また、この分離距離は、この層全体にわたり保つ。この均一なプラズモニックナノ粒子の層の上に、非プラズモニックナノ粒子の異なる別の均一な層を堆積させる。この層の特性は、前記第1の均一な層の特性と同様なものである。これらの交互の層が分路ナノインダクタおよび直列ナノコンデンサを生成し、これにより光領域で作用する負指数の(すなわち左手系(LH))伝送線路を形成する。
【実施例4】
【0090】
右手系ナノスケール伝送線路
右手系(RH)ナノスケール伝送線路の形態のナノ回路は、まずプラズモニックナノ粒子の第1の均一な層を基板に堆積させて形成する。隣接しあったプラズモニックナノ粒子同士は、光結合を可能にする十分小さな距離だけ分離する。この分離距離は、この層全体にわたり保つ。次いで、前記プラズモニックナノ粒子の第1の均一な層上に、非プラズモニックナノ粒子の均一な層を構成する。前記第1の均一な層と同様、隣接しあった非プラズモニックナノ粒子同士は、光結合を可能にする十分小さな距離だけ分離する。また、この分離距離は、この層全体にわたり保つ。この均一な非プラズモニックナノ粒子の層の上に、プラズモニックナノ粒子の異なる別の均一な層を堆積させる。この層の特性は、前記第1の均一な層の特性と同様なものである。これらの交互の層が直列ナノインダクタおよび分路ナノコンデンサを生成し、これにより光領域で作用する従来の(別称、右手系(RH))伝送線路を形成する。
【0091】
特に別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての科学技術用語は、本発明が帰属する分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で説明した方法および材料と類似した、または等価なものは、本発明の実施または試験に使用しうるが、以下では適切な方法および材料について説明する。この明細書で触れる刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、すべて参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。何らかの競合が生じた場合は、本明細書(定義を含む)が最優先となる。また、材料、方法、および例は例示的なものであり限定を意図したものではない。
【0092】
また当業者であれば、本発明には、本発明の範囲内で他に多くの変更(修正)形態が可能であることが理解されるであろう。例えば、ナノ粒子はプラズモニック材料および非プラズモニック材料の組み合わせを有することが可能である。ただし、これは複数セグメントのプラズモニック材料および非プラズモニック材料を伴ったナノ粒子を有することと同様である。このようなナノ粒子は、インダクタおよびコンデンサの組み合わせとして機能できる。このため、本発明の範囲は、上記の好適な実施形態にではなく、添付の特許請求の範囲にのみ限定されるよう意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0093】
本発明は、添付の図面を参照することで、以下の発明に関する詳細な説明から明確に理解されるであろう。
【図1】図1は、光波と個々のナノスフェアとの相互作用を利用した、光(または赤外線)領域における基本的なナノスケール回路を例示したものである。
【図2】図2は、隣接しあった2つのナノスフェア間の光波相互作用を使って光領域で結合されたナノスケール回路を例示したものである。
【図3】図3は、並列および直列双方のナノ素子を例示したものである。
【図4】図4は、考えられる2つのバージョンのナノ回路を例示したものである。
【図5】図5は、右手系(right−handed:RH)および左手系(left−handed:LH)のナノ伝送線路の形態のナノ回路を例示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路素子であって、
適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法をそれぞれ有する、基板上に配置されたプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子
を有する回路素子。
【請求項2】
請求項1記載の回路素子において、前記プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子は、光または赤外線の周波数のエネルギー適用時に異なる別のプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子と光結合できるよう、前記異なる別のプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子に近接して基板上に配置されるものである。
【請求項3】
請求項2記載の回路素子において、前記プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子、または前記異なる別のプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子は、互いに融合することにより、双方間に界面を形成する。
【請求項4】
請求項3記載の回路素子において、前記界面は実質的に平面状である。
【請求項5】
請求項1記載の回路素子において、前記プラズモニック粒子は、実数部が負の誘電率を有するものである。
【請求項6】
請求項1記載の回路素子において、前記非プラズモニック粒子は、実数部が正の誘電率を有するものである。
【請求項7】
請求項1記載の回路素子において、前記プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子の挙動は、RFまたはマイクロ波の周波数範囲における電気回路素子の挙動を表す関数と同様、光または赤外線の周波数範囲における関数で表される。
【請求項8】
請求項7記載の回路素子において、前記関数は、前記プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子のサイズ、形状、または前記プラズモニック粒子若しくは非プラズモニック粒子を形成する材料により決定されるものである。
【請求項9】
請求項1記載の回路素子において、前記プラズモニック粒子は、光または赤外線の周波数範囲においてインダクタとして機能するものである。
【請求項10】
請求項9記載の回路素子において、前記プラズモニック粒子は貴金属から成る。
【請求項11】
請求項10記載の回路素子において、前記貴金属は銀または金である。
【請求項12】
請求項10記載の回路素子において、前記貴金属は銀である。
【請求項13】
請求項10記載の回路素子において、前記プラズモニック粒子は、光または赤外線の周波数のエネルギー適用時に共鳴(共振)を呈するものである。
【請求項14】
請求項1記載の回路素子において、前記非プラズモニック粒子は、光または赤外線の周波数範囲においてコンデンサ(キャパシタ)として機能するものである。
【請求項15】
請求項14記載の回路素子において、前記非プラズモニック粒子は非金属材料から成る。
【請求項16】
請求項15記載の回路素子において、前記非金属材料はSiOである。
【請求項17】
請求項14記載の回路素子において、前記非プラズモニック粒子は、光または赤外線の周波数のエネルギー適用時に共鳴を呈さないものである。
【請求項18】
請求項1記載の回路素子において、前記プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子は、光または赤外線の周波数範囲において抵抗として機能するものである。
【請求項19】
請求項18記載の回路素子において、前記プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子は、虚数部が正の誘電率を有するものである。
【請求項20】
光または赤外線の周波数範囲で機能するようになっているインダクタであって、
適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法を有する、基板上に配置されたプラズモニック粒子
を有するインダクタ。
【請求項21】
請求項20記載のインダクタにおいて、前記プラズモニック粒子は貴金属から成るものである。
【請求項22】
請求項21記載のインダクタにおいて、前記貴金属は銀または金である。
【請求項23】
請求項20記載のインダクタにおいて、前記プラズモニック粒子は、光または赤外線の周波数のエネルギー適用時に共鳴を呈するものである。
【請求項24】
光または赤外線の周波数範囲で機能するようになっているコンデンサであって、
適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法を有する、基板上に配置された非プラズモニック粒子
を有するコンデンサ。
【請求項25】
請求項24記載のコンデンサにおいて、前記非プラズモニック粒子は非金属材料から成る。
【請求項26】
請求項24記載のコンデンサにおいて、前記非プラズモニック粒子は、光または赤外線の周波数のエネルギー適用時に共鳴を呈さない。
【請求項27】
光または赤外線の周波数範囲で機能するようになっている抵抗であって、
適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法をそれぞれ有する、基板上に配置されたプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子
を有する抵抗。
【請求項28】
請求項27記載の抵抗において、前記プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子は、虚数部が正の誘電率を有するものである。
【請求項29】
光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路であって、
プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子である複数の粒子を堆積させた基板
を有し、
前記粒子は、適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法をそれぞれ有し、隣接しあった前記粒子のペアは、光または赤外線の周波数のエネルギー適用時に前記粒子が光結合できるよう、十分小さい距離で互いから分離されているものである、
回路。
【請求項30】
請求項29記載の回路において、前記隣接しあった前記粒子のペアは、双方間の界面を形成するよう互いに融合するものである。
【請求項31】
請求項30記載の回路において、前記界面は実質的に平面状である。
【請求項32】
光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路素子を形成する方法であって、
適用される光信号または赤外線信号の波長より実質的に小さい寸法をそれぞれ有するプラズモニック粒子または非プラズモニック粒子を、基板に堆積させる工程と、
光または赤外線の周波数において、プラズモニック粒子をインダクタとして機能させ、かつ非プラズモニック粒子をコンデンサとして機能させるよう、前記光または赤外線の周波数のエネルギーを適用する工程と
を有する方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記エネルギーを適用する工程により、プラズモニック粒子または非プラズモニック粒子は、光または赤外線の周波数で抵抗として機能するものである。
【請求項34】
光または赤外線の周波数で機能するようになっている回路を作製する方法であって、
請求項30記載の方法に従って回路素子を形成する工程と、
追加粒子が光結合できるよう、当該追加粒子を十分小さい距離だけ離間してさらに前記基板上に堆積させる工程と
を有する方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法において、前記距離は1μm未満である。
【請求項36】
請求項34記載の方法において、光結合した前記粒子は融合して当該粒子間に界面を形成するものである。
【請求項37】
光または赤外線の周波数で機能するようになっている並列共振回路であって、
プラズモニック材料の第1の部分および非プラズモニック材料の第2の部分から成る3次元融合粒子
を有し、
光または赤外線の周波数により生成された光場が、前記第1の部分および前記第2の部分の間に形成された界面と平行な方向に適用されるものである
並列共振回路。
【請求項38】
請求項37記載の並列共振回路において、前記3次元融合粒子は楕円形の断面を有するものである。
【請求項39】
請求項37記載の並列共振回路において、前記3次元融合粒子は球体である。
【請求項40】
請求項39記載の並列共振回路において、前記界面は赤道であり、前記第1の部分は第1の半球で、前記第2の部分は第2の半球である。
【請求項41】
光または赤外線の周波数で機能するようになっている直列共振回路であって、
プラズモニック材料の第1の部分および非プラズモニック材料の第2の部分から成る3次元融合粒子
を有し、
光または赤外線の周波数により生成された光場が、前記第1の部分および前記第2の部分の間に形成された界面に垂直な方向に適用されるものである、
直列共振回路。
【請求項42】
請求項41記載の直列共振回路において、前記3次元融合粒子は楕円形の断面を有するものである。
【請求項43】
請求項41記載の直列共振回路において、前記3次元融合粒子は球体である。
【請求項44】
請求項43記載の直列共振回路において、前記界面は赤道であり、前記第1の部分は第1の半球で、前記第2の部分は第2の半球である。
【請求項45】
光または赤外線の周波数で機能するようになっているナノスケール回路であって、
プラズモニック材料または非プラズモニック材料から成る複数のナノ粒子であって、隣接する当該ナノ粒子が光結合用に十分近接しあうよう基板上に堆積させた複数のナノ粒子
を有し、
前記ナノ粒子は、前記複数のナノ粒子の各々の特性に基づき所定の回路機能を果たすよう設計されているものである、
ナノスケール回路。
【請求項46】
請求項45記載のナノスケール回路において、前記所定の回路機能は、右手系伝送線路機能である。
【請求項47】
請求項45記載のナノスケール回路において、前記所定の回路機能は、左手系伝送線路機能である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−503776(P2008−503776A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516820(P2007−516820)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/021785
【国際公開番号】WO2006/091215
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】