説明

光学ガラスおよびその製造方法

【課題】より高いアッベ数を有し、かつ、より成形性に優れた光学ガラスを提供する。
【解決手段】 本発明の光学ガラスは、Al23の含有率が8wt%以上12wt%以下であり、BaOの含有率が0wt%以上6wt%以下であり、P25の含有率が35wt%以上50wt%以下であり、AlF3とBaF2とSrF2とCaF2とMgF2との合計の含有率が25wt%以上33wt%以下であり、LiFとNaFとKFとの合計の含有率が12wt%以上26wt%以下であり、Li2Oの含有率が0.3wt%以上2.0wt%以下であるように構成されたものである。これにより、より高いアッベ数を確保すると共に低融点化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弗リン酸塩を主な原料とする光学ガラスおよびその製造方法に係り、特に、低い温度でのプレス成形に適した光学ガラスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子により画像情報を取り込むデジタルカメラやカメラ付携帯電話が急速に普及しつつある。特に最近では、高画質を達成するために画素数の大きな撮像素子が開発され、それに伴い撮像レンズに対しても高い光学性能が求められてきている。その一方で、小型化の要求も強まっている。
【0003】
このような要求に応えるため、上記の撮像レンズとしては、高精度な寸法を有する金型によりプレス成形されたガラスのモールドレンズが採用されることが多い。このようなプレス成形によれば、研磨による成形に比べ、非球面を有する光学レンズや微小な寸法の光学レンズを容易かつ効率的に作製することができる。但し、プレス成形時においてガラス内に結晶が析出する現象(いわゆるプレス失透)が生じることもあった。このため、この問題を改良した弗リン酸塩系の光学ガラスが開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ところが、特許文献2に開示された光学ガラスは、例えば[0023]に記載されているように530℃程度の比較的高いガラス軟化点を有している。また特許文献1の光学ガラスについては、明細書中に明示されていないものの、800〜850℃における失透試験を実施していることから700〜750℃程度の高いガラス軟化点を有しているものと推定される。プレス成形はガラス軟化点以上の高温で行われるので、熱や応力などの物理的負荷を大きく受ける金型は高い耐久性が必要とされる。このため、金型として適用可能な材料としては、超硬合金やセラミックスなどの加工性に劣るものに実質的に限られてしまっていた。
【0005】
そこで、金型への物理的負荷を軽減すると共にガラスモールドレンズの生産効率を向上させるため、より低い融点(または軟化点)を示す光学ガラスの開発がなされている(例えば、特許文献3〜5参照)。
【特許文献1】特開平6−157068号公報
【特許文献2】特開2002−234753号公報
【特許文献3】特開2001−48574号公報
【特許文献4】特開2003−26439号公報
【特許文献5】特開2004−123448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3〜5に開示された光学ガラスではd線(587.6nm)に対するアッベ数νdが最大でも66.9であることから、これを用いた撮像レンズ系において小型化を図る際、特に軸上色収差の補正の面で不利である。このような背景から、より高いアッベ数を確保しつつ、より低いガラス軟化点を有する光学ガラスが望まれていた。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、より高いアッベ数を有し、かつ、より成形性に優れた光学ガラス、およびそのような光学ガラスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学ガラスは、酸化アルミニウム(Al23)の含有率を8重量(wt)%以上12wt%以下とし、酸化バリウム(BaO)の含有率を0wt%以上6wt%以下とし、リン酸(P25)の含有率を35wt%以上50wt%以下とし、フッ化アルミニウム(AlF3)とフッ化バリウム(BaF2)とフッ化ストロンチウム(SrF2)とフッ化カルシウム(CaF2)とフッ化マグネシウム(MgF2)との合計の含有率を25wt%以上33wt%以下とし、フッ化リチウム(LiF)とフッ化ナトリウム(NaF)とフッ化カリウム(KF)との合計の含有率を12wt%以上26wt%以下とし、酸化リチウム(Li2O)の含有率を0.3wt%以上2.0wt%以下としたものである。なお、BaOの含有率については0wt%をも含んでいる。すなわち、BaOは任意成分である。
【0009】
本発明の光学ガラスでは、Al23の含有率を全体の8wt%以上12wt%以下とし、BaOの含有率を全体の0wt%以上6wt%以下とし、P25の含有率を全体の35wt%以上50wt%以下としたので、構造上の安定性および溶解性が向上するうえ、融点が低下しつつ屈折率が向上する。さらに、AlF3、BaF2、SrF2、CaF2およびMgF2の合計の含有率を全体の25wt%以上33wt%以下としたので、屈折率の適正化、低融点化、およびアッベ数の向上がなされる。LiF、NaFおよびKFの合計の含有率を全体の12wt%以上26wt%以下としたので融点が低下する。Li2Oの含有率を全体の0.3wt%以上2.0wt%以下としたので溶解温度および屈伏点が低下する。よって、この光学ガラスは、より高いアッベ数を有し、かつ、より低い融点を有するものとなる。
【0010】
本発明の光学ガラスの製造方法は、メタリン酸アルミニウム(Al(PO33)の含有率が45wt%以上55wt%以下であり、メタリン酸バリウム(Ba(PO32)の含有率が12wt%以下であり、フッ化アルミニウム(AlF3)とフッ化バリウム(BaF2)とフッ化ストロンチウム(SrF2)とフッ化カルシウム(CaF2)とフッ化マグネシウム(MgF2)との合計の含有率が25wt%以上33wt%以下であり、フッ化リチウム(LiF)とフッ化ナトリウム(NaF)とフッ化カリウム(KF)との合計の含有率が12wt%以上26wt%以下であり、炭酸リチウム(Li2CO3)の含有率が1wt%以上5wt%以下である混合原料を用意し、この混合原料を加熱することにより溶融したのち、ガラス転移点以下の温度となるまで冷却するようにしたものである。なお、Ba(PO32の含有率については0wt%をも含む意である。すなわち、Ba(PO32は任意成分である。
【0011】
本発明の光学ガラスの製造方法では、混合原料において、Al(PO33の含有率を全体の45wt%以上55wt%以下としたので、構造上の安定性および溶解性が向上する。Ba(PO32の含有率を全体の12wt%以下としたので、融点が低下しつつ屈折率が向上する。AlF3、BaF2、SrF2、CaF2およびMgF2の合計の含有率を全体の25wt%以上33wt%以下としたので、屈折率の調整および低融点化が可能になる。LiF、NaFおよびKFの合計の含有率を全体の12wt%以上26wt%以下としたので、融点が低下する。さらに、このLi2CO3の含有率を全体の1wt%以上5wt%以下としたことにより、溶解温度および屈伏点が低下する。よって、より高いアッベ数を有し、かつ、より低い融点を有する光学ガラスが得られる。さらに、混合原料に含まれるLi2CO3が加熱溶融時に酸化リチウム(LiO2)と二酸化炭素(CO2)とに分解され、このCO2が、加熱溶融時の攪拌などに伴って溶融ガラスに混入した微小な気泡を効率よく取り込みながら気体として外部へ放出されることとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学ガラスによれば、Al23の含有率を8wt%以上12wt%以下とし、BaOの含有率を0wt%以上6wt%以下とし、P25の含有率を35wt%以上50wt%以下とし、AlF3とBaF2とSrF2とCaF2とMgF2との合計の含有率を25wt%以上33wt%以下とし、LiFとNaFとKFとの合計の含有率を12wt%以上26wt%以下とし、Li2Oの含有率を0.3wt%以上2.0wt%以下としたので、より高いアッベ数を確保すると共に低融点化を図ることができる。このような光学ガラスであれば、比較的低い温度における成形性が向上し、小型でありながら高い収差性能を有するモールドレンズの量産を容易に実現することができる。
【0013】
本発明の光学ガラスの製造方法によれば、Al(PO33の含有率が45wt%以上55wt%以下であり、Ba(PO32の含有率が12wt%以下であり、AlF3とBaF2とSrF2とCaF2とMgF2との合計の含有率が25wt%以上33wt%以下であり、LiFとNaFとKFとの合計の含有率が12wt%以上26wt%以下であり、Li2CO3の含有率が1wt%以上5wt%以下である混合原料を溶融するようにしたので、より高いアッベ数と共に低融点を有する光学ガラスを得ることができる。このようにして製造した光学ガラスであれば、比較的低い温度における成形性が向上し、小型でありながら高い収差性能を有するモールドレンズの量産を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の光学ガラスは、例えばデジタルスチルカメラや銀塩カメラ、あるいは携帯電話用のモジュールカメラなどに搭載される撮像レンズに好適なものである。
【0016】
この光学ガラスは、リン酸(P25)を主成分とし、これに所定の金属フッ化物が添加された、いわゆる弗リン酸塩系光学ガラスである。
【0017】
具体的には、P25のほか、酸化アルミニウム(Al23)、酸化バリウム(BaO)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、酸化リチウム(Li2O)といった成分を含んでいる。
【0018】
各成分の含有率については、Al23が8wt%以上12wt%以下であり、BaOの含有率が0wt%以上6wt%以下であり、P25の含有率が35wt%以上50wt%以下であり、AlF3、BaF2、SrF2、CaF2およびMgF2の合計の含有率が25wt%以上33wt%以下であり、LiF、NaFおよびKFの合計の含有率が12wt%以上26wt%以下であり、Li2Oの含有率が0.3wt%以上2.0wt%以下となっている。ここで、BaOについては含有率が0wt%であってもよい。
【0019】
25は、この光学ガラスを構成する必須成分である。P25の含有率が35wt%未満であると成形性が劣化し、ガラスの形成が困難となる。一方、P25の含有率が50wt%を上回るとガラスとしての構造上の安定性が劣化するうえ、液相温度が高くなってしまい溶解性が悪くなる。
【0020】
BaOは屈折率の調整に影響を及ぼすものである。BaOを添加することにより屈折率を高めることができるが、6wt%を上回ると融点が高くなってしまい加工性が劣化する。
【0021】
AlF3、BaF2、SrF2、CaF2、およびMgF2は、いずれも溶解温度および屈伏温度を低下させ、低融点化に大きく寄与するものである。さらに、アッベ数を向上させる働きも有している。これらの合計の含有率が25wt%未満であると上記の作用(低融点化およびアッベ数の向上)が十分に得られず、33wt%を上回ると屈折率が小さくなりすぎてしまう。特に、個々の成分の含有率については以下の範囲であることが望ましい。すなわち、AlF3の含有率が1wt%以上13wt%以下であり、BaF2の含有率が1wt%以上11wt%以下であり、SrF2の含有率が1wt%以上8wt%以下であり、CaF2の含有率が1wt%以上11wt%以下であり、MgF2の含有率が1wt%以上5wt%以下であることが望ましい。
【0022】
LiF、NaFおよびKFの1価アルカリ金属フッ化物群は、いずれも溶解温度および屈伏温度を低下させ、低融点化に大きく寄与するものである。これらの合計の含有率が12wt%未満であると上記の作用(低融点化)が十分に得られず、26wt%を上回ると屈折率が小さくなりすぎてしまう。特に、個々の成分の含有率については以下の範囲であることが望ましい。すなわち、LiFの含有率が1wt%以上16wt%以下であり、NaFの含有率が1wt%以上12wt%以下であり、KFの含有率が1wt%以上12wt%以下であることが望ましい。
【0023】
Li2Oは、屈折率を低下させることなく溶解温度および屈伏温度を低下させる作用を有している。Li2Oの含有率が2.0wt%を上回ると、光学ガラスとしての化学的安定性が失われる。一方、Li2Oの含有率が0.3wt%未満であると、溶解温度および屈伏温度を低下させる作用が十分に得られない。
【0024】
この光学ガラスは、例えば次のように製造することができる。すなわち、Al(PO33、Ba(PO32、AlF3、BaF2、SrF2、CaF2、MgF2、LiF、NaF、KFおよびLi2CO3の各原料粉末を所定の割合で混合して白金坩堝等に入れ、これを例えば600℃〜1100℃に設定された電気炉中に投入し30分から60分程度保持することにより溶融する。この際、必要に応じて攪拌することが望ましい。この原料粉末の混合割合については、Al(PO33の含有率が45%以上55wt%以下、Ba(PO32の含有率が12wt%以下、AlF3とBaF2とSrF2とCaF2とMgF2との合計の含有率が25wt%以上33wt%以下、LiFとNaFとKFとの合計の含有率が12wt%以上26wt%以下、Li2CO3の含有率が1wt%以上5wt%以下となるようにする。溶融清澄後、攪拌して均質化したのち、予め所定温度に加熱された鋳型に鋳込み、徐冷することにより所望の光学ガラスを得るようにする。なお、鋳型から取り出したのち、例えば2時間から4時間に亘って200℃〜300℃の温度下でアニーリングするようにしてもよい。
【0025】
さらに、この光学ガラスを用いてレンズを形成する場合には、次のように行う。まず、上記の光学ガラスを溶解して所定の形状および寸法を有するプリフォームを形成する。次に、所望の形状に高精度に加工された金型によってプリフォームを挟み込み、プレス成形を行う。この際、プリフォームの軟化点近傍まで金型およびプリフォームの双方を昇温したのち加圧を行い、その加圧状態を維持しながらガラス転移点以下まで降温する。成形されたレンズを金型から取り出したのち、必要に応じてアニーリングを行うなど所定の工程を経ることによりレンズの製造が完了する。
【0026】
このように、本実施の形態によれば、レンズを構成する光学ガラスが上記のような成分を所定量含むようにしたので、より高いアッベ数νd(例えば74以上)を確保しつつ、低融点化(例えば300℃以下)を達成することができる。このため、レンズをプレス成形によって製造する際、金型として超硬合金やセラミックスを使用する必要がなく、例えばステンレス鋼合金やニッケル合金等などの比較的加工性の良好な材料を用いることができる。よって、比較的複雑な非球面形状を有すると共に微小な寸法を有するレンズを、容易かつ高精度にプレス成形することができる。その上、光学ガラスのアッベ数が高いことから色収差の低減をも図ることができる。したがって、レンズは小型でありながら高い収差性能を発揮することができ、撮像レンズ全体のコンパクト化および高性能化に寄与することとなる。さらに、レンズを製造するにあたり、比較的低い温度においてプレス成形することができるので生産性も向上する。また、加熱溶融の際、混合原料に含まれるLi2CO3が酸化リチウム(LiO2)と二酸化炭素(CO2)とに分解され、このCO2が、攪拌などに伴って溶融ガラスに混入した微小な気泡を効率よく取り込みながら外部へ放出されるので、結果として気泡が十分に除去された光学ガラスを得ることができる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明における光学ガラスの具体的な実施例について説明する。
【0028】
図1および図2は、本発明の実施例としての光学ガラスを構成する混合原料の成分および含有率(wt%)を示したものである(実施例1〜23)。ここでは、便宜上、Al(PO33およびBa(PO32をI群とし、AlF3、BaF2、SrF2、CaF2およびMgF2をII群とし、LiF、NaFおよびKFをIII群とし、Li2CO3をIV群とした。図1および図2に示したように、各実施例では、いずれもAl(PO33が45wt%以上55wt%以下であり、Ba(PO32が0wt%以上12wt%以下であり、AlF3とBaF2とSrF2とCaF2とMgF2との合計(II群の小計)が25wt%以上33wt%以下であり、LiFとNaFとKFとの合計(III群の小計)が12wt%以上26wt%以下であり、Li2CO3(IV群)が1wt%以上5wt%以下となっている。また、図3には、本実施例に対する比較例としての光学ガラスを構成する混合原料の成分および含有率(wt%)を示す(比較例1〜4)。
【0029】
図4および図5は、図1および図2の混合原料をそれぞれ用いて形成された本実施例(実施例1〜23)の光学ガラスにおける組成を示したものである。ここでは、便宜上、P25、Al23およびBaOをV群とし、AlF3、BaF2、SrF2、CaF2およびMgF2をVI群とし、LiF、NaFおよびKFをVII群とし、Li2OをVIII群とした。図4および図5に示したように、各実施例では、P25の含有率が35wt%以上50wt%以下であり、Al23の含有率が8wt%以上12wt%以下であり、BaOの含有率が0wt%以上4.5wt%以下であり、AlF3とBaF2とSrF2とCaF2とMgF2との合計(VI群の小計)が25wt%以上33wt%以下であり、LiFとNaFとKFとの合計(VII群の小計)が12wt%以上26wt%以下であり、Li2O(VIII群)の含有率が0.3wt%以上2.0wt%以下となっている。また、図6には、比較例としての光学ガラスにおける組成を示す(比較例1〜4)。
【0030】
さらに、図7および図8において、実施例1〜23の光学ガラスにおける各種の特性値をそれぞれ示すと共に、図9において、比較例1〜4の光学ガラスにおける各種の特性値をそれぞれ示す。具体的には、実施例1〜23および比較例1〜4の各光学ガラスについて、d線(587.6nm)に対する屈折率ndおよびアッベ数νd、ならびにガラス転移点Tg(℃)およびガラス軟化点Ts(℃)をそれぞれ示す。なお、各実施例および各比較例の光学ガラスを製造するにあたっては、30分〜60分に亘って950℃に保持することにより溶融し、260℃で2〜4時間に亘ってアニーリングするようにした。
【0031】
図7および図8に示した各数値データから明らかなように、実施例1〜23では、アッベ数νdを74以上としつつ、ガラス転移点Tgを337℃以下とし、ガラス軟化点Tsを376℃以下とすることができた。
【0032】
これに対し、LiFとNaFとKFとの合計(III群の小計)が、例えば比較例1のように12wt%よりも低い11.0wt%である場合には、ガラス転移点Tgが390℃、ガラス軟化点Tsが432℃となり軟化特性が不十分であるうえ、アッベ数νdが71.5と低くなりすぎてしまう。一方、比較例2のようにLiFとNaFとKFとの合計(III群の小計)が26wt%よりも高い27.0wt%である場合には、屈折率ndが1.450よりも小さくなってしまい、レンズ材料としての用途が比較的限定されるので好ましくない。また、AlF3とBaF2とSrF2とCaF2とMgF2との合計(II群の小計)が例えば比較例3のように25wt%よりも低い24.0wt%である場合には、ガラス転移点Tgが382℃、ガラス軟化点Tsが422℃となり軟化特性が不十分であるうえ、アッベ数νdが71.0と低くなりすぎてしまう。一方、例えば比較例4のようにII群の小計が33wt%よりも高い34.0wt%である場合には屈折率ndが1.450よりも小さくなってしまうので、実用上、好ましくない。
【0033】
これらの結果から、本実施例の成分を有する光学ガラスは、アッベ数、屈折率およびガラス軟化点のバランスが非常に良好であり、実用性に優れたものであることがわかった。すなわち、本実施例の光学ガラスは、比較的低い温度においてプレス成形が可能であり、かつ、より高い収差性能を有するレンズの構成材料として好適なものであることが確認できた。
【0034】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、光学ガラスの成分は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の光学ガラスの混合原料における実施例としての成分および含有率のデータを示す第1の説明図である(実施例1〜12)。
【図2】本発明の光学ガラスの混合原料における実施例としての成分および含有率のデータを示す第2の説明図である(実施例13〜23)。
【図3】比較例としての光学ガラスの混合原料における成分および含有率のデータを示す説明図である(比較例1〜4)。
【図4】本発明の光学ガラスの実施例としての組成データを示す第1の説明図である(実施例1〜12)。
【図5】本発明の光学ガラスの実施例としての組成データを示す第2の説明図である(実施例13〜23)。
【図6】比較例としての光学ガラスにおける組成データを示す説明図である(比較例1〜4)。
【図7】実施例1〜12の光学ガラスの各特性値を示す説明図である。
【図8】実施例13〜23の光学ガラスの各特性値を示す説明図である。
【図9】比較例1〜4の光学ガラスの各特性値を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウム(Al23)の含有率が8重量%以上12重量%以下であり、
酸化バリウム(BaO)の含有率が0重量%以上6重量%以下であり、
リン酸(P25)の含有率が35重量%以上50重量%以下であり、
フッ化アルミニウム(AlF3)とフッ化バリウム(BaF2)とフッ化ストロンチウム(SrF2)とフッ化カルシウム(CaF2)とフッ化マグネシウム(MgF2)との合計の含有率が25重量%以上33重量%以下であり、
フッ化リチウム(LiF)とフッ化ナトリウム(NaF)とフッ化カリウム(KF)との合計の含有率が12重量%以上26重量%以下であり、
酸化リチウム(Li2O)の含有率が0.3重量%以上2.0重量%以下である
ことを特徴とする光学ガラス。
【請求項2】
メタリン酸アルミニウム(Al(PO33)の含有率が45重量%以上55重量%以下であり、メタリン酸バリウム(Ba(PO32)の含有率が12重量%以下であり、フッ化アルミニウム(AlF3)とフッ化バリウム(BaF2)とフッ化ストロンチウム(SrF2)とフッ化カルシウム(CaF2)とフッ化マグネシウム(MgF2)との合計の含有率が25重量%以上33重量%以下であり、フッ化リチウム(LiF)とフッ化ナトリウム(NaF)とフッ化カリウム(KF)との合計の含有率が12重量%以上26重量%以下であり、炭酸リチウム(Li2CO3)の含有率が1重量%以上5重量%以下である混合原料を加熱することにより溶融したのち、ガラス転移点以下の温度となるまで冷却する
ことを特徴とする光学ガラスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−131497(P2007−131497A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327424(P2005−327424)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】