説明

光学ガラス

【課題】透明性が高く、高屈折率高分散性を有する光学素子を作成するため高屈折率付与成分を添加しても、なお失透を抑制できる光学ガラスを提供する。
【解決手段】 屈折率が1.83以上でアッベ数が26以下であり、酸化物基準で必須成分としてSiO、TiO、Nb、NaOを含有し、酸化物基準の質量%で(TiO+Nb)/(NaO+KO)が3.0〜4.0の範囲である光学ガラス。 800℃で10分間保温し、その後冷却した際に、20〜100μmの径を有する失透箇所が1cmあたり15個以下であり、かつ100μm以上の径を有する失透箇所を有さない前記光学ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率高分散を有する光学ガラスに関する。特に、高屈折率高分散で、かつ着色が抑制され、耐失透性にも優れる光学ガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学機器のデジタル化や高精細化が進み、デジタルカメラやビデオカメラなどに使用されるレンズ等の光学素子の需要が急速に高まり、その中でも、特に光学設計上の観点から高屈折率高分散ガラスの需要は増える一方である。これまで高屈折高分散、すなわち屈折率が1.8以上でアッベ数が30以下であるような高屈折率高分散性光学ガラスは、多数の文献により開示されている。
【0003】
特許文献1にはPbOを必須成分として高屈折高分散性を有することが特徴であるSiO−TiO−Nb−BaO−PbO−NaO系光学ガラスが開示されている。特許文献2にはPbOを非含有として高屈折高分散性を有することが特徴であるSiO−P−TiO−BaO−RO系光学ガラスが開示されている。特許文献3にはPbO、As、F成分を非含有として、Nbを高含有することにより高屈折高分散性を有することが特徴であるSiO−TiO− Nb−BaO−NaO系光学ガラスが開示されている。特許文献4にはPbO、As、F成分を非含有として、TiOを高含有することにより高屈折高分散性を有することが特徴であるSiO−TiO−Nb−BaO−NaO系光学ガラスが開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の光学ガラスはPbOを含有しているため、環境対策上の問題がある。また、特許文献2に記載の光学ガラスはNbなどの高屈折率付与成分の含有量が少ないため、高屈折高分散を維持しにくいという問題がある。
【0005】
また特許文献3及び4に記載の光学ガラスはTiOまたはNbなどの高屈折率付与成分を大量に含有しており、比較的高屈折高分散のガラスを得やすいが、ガラスの安定性、特にプレス時の失透性が悪くなりやすいなどの問題がある。
【特許文献1】特開昭60−5037号公報
【特許文献2】特開昭59−8637号公報
【特許文献3】特開2001−342035号公報
【特許文献4】特開2004−155639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、高屈折率高分散ガラスにおいて着色性を悪化させる原因となっている成分は、屈折率を上げるために導入されるTiO及びNb成分であるが、着色度を改良するためにTiO及びNb成分の含有量を減少させようとすると高屈折高分散を維持するのが困難となり、これら両特性を両立させることは極めて困難であった。
【0007】
さらに、TiO成分及びNb成分の含有量を大きくすると、ガラス形成成分の種類によって、リヒートプレス時に失透を生じやすいという欠点がある。光学ガラスを溶融し、板状ガラスに成形し、切断等の冷間加工をしたガラス塊から光学素子を作製する際には、当該ガラス塊をリヒートプレスする必要があり、特に、SiOをガラス形成の主成分とするガラスでは、屈折率を上げるためにTiO及びNbの含有量を大きくする手法が用いられるが、TiO及びNbを多量に含むSi系ガラスは800℃程度の加熱により、失透が生じやすいことが分かっている。従って、透明性が高く、高屈折率高分散性を有する光学素子を作成するため高屈折率付与成分を添加しても、なお失透を抑制できるガラス組成が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、SiO−TiO−Nb−NaO系ガラスにおいて、高屈折率高分散性を実現するためにTiO、Nbを比較的多量に含有させつつ、これら2成分合計含有量とアルカリ金属酸化物の含有量との比を、所定の範囲内に限定することにより、着色性及び耐失透性を悪化させることなく、所望光学恒数を有する光学ガラスを生産できることを、今般見出した。
【0009】
本発明の第1の構成は、屈折率が1.83以上でアッベ数が26以下であり、酸化物基準で必須成分としてSiO、TiO、Nb、NaOを含有し、酸化物基準の質量%で(TiO+Nb)/(NaO+KO)が3.0〜4.0の範囲である光学ガラスである。
【0010】
本発明の第2の構成は、800℃で10分間保温し、その後冷却した際に、20〜100μmの径を有する失透箇所が1cmあたり15個以下であり、かつ100μm以上の径を有する失透箇所を有さない前記構成1の光学ガラスである。
【0011】
本発明の第3の構成は、酸化物基準の質量%で、Nbに対するTiOの含有量の割合が1.2〜2.0の範囲内であり、日本光学硝子工業会規格JOGIS02−2003「光学ガラスの着色度の測定方法」により測定して、分光透過率70%を示す波長が450nm以下である前記構成1及び2の光学ガラスである。
【0012】
本発明の第4の構成は、酸化物基準の質量%で、
SiO:21.0〜30.0、
TiO:24.0〜40.0、
Nb:15.5〜30.0及び
NaO:10.0〜23.0、
並びに
ZrO:0〜9.0及び/又は
BaO:0〜25及び/又は
O:0〜23.0及び/又は
Sb:0〜1.0
の成分を含有し、(TiO+Nb)/(NaO+KO)が3.50〜3.85の範囲である前記構成1〜3の光学ガラスである。
【0013】
本発明の第5の構成は、酸化物基準の質量%で、
TiO:25.0〜40.0、
Nb:16.0〜30.0及び
BaO:2.0〜25.0
であり、(TiO+Nb)/(NaO)が3.50〜3.85の範囲である前記構成1〜4の光学ガラスである。
【0014】
本発明の第6の構成は、酸化物基準の質量%で
:0〜3.0及び/又は
Al:0〜4.0及び/又は
MgO:0〜5.0及び/又は
CaO:0〜5.0及び/又は
SrO:0〜5.0及び/又は
ZnO:0〜5.0及び/又は
LiO:0〜5.0及び/又は
Ta:0〜10.0及び/又は
WO:0〜10.0
の成分をさらに含有する前記構成1〜5の光学ガラスである。
【0015】
本発明の第7の構成は、酸化物基準の質量%でSb、SnO及びSnOの合計含有量が0〜1%含有する前記構成1〜6の光学ガラスである。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明によれば、着色性及び耐失透性を悪化させることなく、所望光学恒数を有する光学ガラスを生産できる。
【0017】
以下、本発明の光学ガラスの成分について説明する。なお特に断りのない場合、各成分の含有量は酸化物基準の質量%を意味するものとする。なお、本明細書中において「酸化物基準」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、硝酸塩等が溶融時にすべて分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の質量の総和を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0018】
SiO成分は本発明のガラスにおける主要なガラス形成成分であり、必須に含有する。しかしその量が少なすぎるとガラスの安定性、化学的耐久性が悪くなりやすく、また多すぎるとガラスの溶融性が悪化するうえ、高屈折率を得にくくなる。従って、好ましくは21%、より好ましくは23%、最も好ましくは24%を下限とし、好ましくは30%、より好ましくは28%、最も好ましくは27%を上限として含有する。
【0019】
TiO成分はガラスの屈折率、分散及び化学的耐久性を高める効果があり、必須に含有する。しかし、その量が少なすぎると所望の効果が得にくくなり、多すぎると耐失透性が低下し結晶化しやすくなり、さらに着色性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは24%、より好ましくは25%、最も好ましくは26%を下限とし、好ましくは40%、より好ましくは30%、最も好ましくは27%を上限として含有できる。
【0020】
Nb成分はガラスの屈折率、分散を高める効果があり、必須に含有する。しかし、その量が少なすぎると所望の効果を得にくくなり、多すぎると耐失透性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは15.5%、より好ましくは16%、最も好ましくは17%を下限とし、好ましくは30%、より好ましくは25%、最も好ましくは18%を上限として含有できる。
【0021】
Nb成分及びTiO成分はガラスの安定性維持、高屈折率付与及び着色抑制のために、所定の比にて含有することが好ましい。TiO成分の量に比べNbの量が多すぎると、アッベ数が大きくなりやすく、要求される高分散性が実現しにくくなる。TiO成分の量に比べNbの量が少なすぎると、着色が大きくなり透明性が悪くなりやすいので、光学ガラスとして使用することが困難になりやすい。従って、Nb成分に対するTiO成分の含有量の割合、すなわちTiO2/Nb2O5の値の下限は好ましくは1.2、より好ましくは1.25、最も好ましくは1.3であり、その上限は好ましくは2.0、より好ましくは1.95、最も好ましくは1.90である。
【0022】
NaO成分はガラスの溶融性を高めるとともに、ガラスを安定化させる効果があり、必須に含有する。しかし、その量が少なすぎると所望の効果が得にくくなり、多すぎると屈折率を低下させすぎ、所望の光学恒数が得にくくなる。従って、好ましくは10%、より好ましくは10.5%、最も好ましくは11%を下限とし、好ましくは23%、より好ましくは15%、最も好ましくは13%を上限として含有できる。
【0023】
ZrO成分はガラスの化学的耐久性を向上させ、屈折率を高め得る任意成分であるが、その量が多すぎると耐失透性が低下しやすくなる。従って好ましくは9%、より好ましくは2%、最も好ましくは1%を上限として含有する。
【0024】
BaO成分はガラス溶融の際、ガラスの溶融性を促進し、均質なガラスを得る効果がある重要な成分である。しかし、その量が多すぎると耐失透性や化学的耐久性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは25%、より好ましくは20%、最も好ましくは19%を上限として含有できる。また、本成分は必ずしも含有しなくともよいが、上記効果を発揮させるためには、好ましくは2%、より好ましくは10%、最も好ましくは16%を下限として含有することが好ましい。
【0025】
O成分はNaO成分と同様にガラスの溶融性を向上させ、ガラスを安定化させる効果を有する任意成分である。しかし、その量が多すぎると屈折率を低下させ、所望の光学恒数が得にくくなる。従って好ましくは23%、より好ましくは15%、最も好ましくは13%を上限として含有できる。
【0026】
本発明の光学ガラスにおいては、高屈折率高分散性を維持しつつ、着色性及び耐失透性を悪化させないようにするために、NaO及びKO成分の合計含有量に対するNb及びTiO成分の合計含有量の割合、すなわち(Nb+TiO)/(NaO+KO)の値を所定の範囲に調整することが好ましい。この範囲内に当該成分を調整することにより、他の物性を損なうことなく、Nb及びTiO成分を比較的多量に含有させることが可能となる。一方、この値が大きすぎると、ガラスの着色が大きく、耐失透性が悪くなりやすい。他方、この値が小さすぎると屈折率が低くなりやすく、所望の光学恒数を有する光学ガラスが得にくくなる。従って好ましくは4.0、より好ましくは3.85、最も好ましくは3.8を上限とし、好ましくは3.0、より好ましくは3.5、最も好ましくは3.55を下限として含有する。
【0027】
また、リヒートプレス時の耐失透性はTiO及びNb成分の合計含有量とNaO成分との比に大きく依存する。従って、(TiO+Nb)/NaO比を所定の範囲とすることで、TiO、Nb成分を大量に含有させても着色しにくく、かつ、リヒートプレス時の耐失透性が特に良好な光学ガラスを製造できる。従って、前記(TiO+Nb)/NaO比の下限は、好ましくは3.50、より好ましくは3.55、最も好ましくは3.60であり、その上限は3.85、より好ましくは3.83、最も好ましくは3.80とする。
【0028】
成分はガラスの溶融性を向上させる効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると屈折率を低下させ、所望の光学恒数を有数する光学ガラスが得にくくなる。従って好ましくは3%、より好ましくは2%、最も好ましくは1%を上限として含有する。
【0029】
Al成分はガラスの化学的耐久性と耐失透性向上させる効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると溶融性や屈折率を低下させやすくなる。従って好ましくは4%、より好ましくは2%、最も好ましくは1%を上限として含有する。
【0030】
MgO成分はガラスの化学的耐久性を向上させる効果が任意成分であるが、その量が多すぎると溶融時の安定性を低下させやすくなる。従って好ましくは5%、より好ましくは2%、最も好ましくは1%を上限として含有する。
【0031】
CaO及びSrO成分は、BaO成分と同様にガラスの溶融性を促進し、均質なガラスを得る効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなる。従ってCaO及びSrO成分の含有量は、それぞれ好ましくは5%、より好ましくは4%、最も好ましくは3%を上限とし、両成分の合計量も好ましくは5%、より好ましくは4%、最も好ましくは3%を上限として含有できる。
【0032】
ZnO成分はガラスの化学的耐久性を向上させる効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると溶融時の安定性を低下させやすくなる。従って好ましくは5%、より好ましくは2%、最も好ましくは1%を上限として含有する。
【0033】
LiO成分はガラスの溶融性を向上させる効果がある任意成分であるが、その量が多すぎるとガラスの安定性を低下させやすくなる。従って好ましくは5%、より好ましくは3%、最も好ましくは1%を上限として含有する。
【0034】
Ta成分は屈折率を高める効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなり、ガラスを安定して作製することが困難になりやすくなる。従って好ましくは10%、より好ましくは5%、最も好ましくは2%を上限として含有する。
【0035】
WO成分は屈折率を高める効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなり、ガラスを安定して作製することが困難になりやすくなる。従って好ましくは10%、より好ましくは5%、最も好ましくは2%を上限として含有する。
【0036】
また清澄剤としてSb、SnO及び/又はSnO成分を好ましくは1%、より好ましくは0.5%最も好ましくは0.3%を上限として含有する。Sb、SnO及びSnO各々の含有量も上限を1%として含有する。
【0037】
鉛化合物は、精密プレス成形時に金型と融着しやすい成分であるという問題並びにガラスの製造のみならず、研磨等のガラスの冷間加工及びガラスの廃棄に至るまで、環境対策上の措置が必要となり、環境負荷が大きい成分であるという問題があるため、本発明の光学ガラスに含有させるべきではない。
【0038】
F成分は、溶融ガラスからガラス塊を作る際に脈理を発生しやすくするため、本発明の光学ガラスに含有させるべきではない。
【0039】
As、カドミウム及びトリウム成分は、共に、環境に有害な影響を与え、環境負荷の非常に大きい成分であるため、本発明の光学ガラスに含有させるべきではない。
【0040】
さらに本発明の光学ガラスにおいては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Eu、Nd、Sm、Tb、Dy、Er等の着色成分は、含有しないことが好ましい。ただし、ここでいう含有しないとは、不純物として混入される場合を除き、人為的に含有させないことを意味する。
【0041】
次に、本発明の光学ガラスの物性について説明する。
本発明の光学ガラスは、光学設計上のニーズにより、特に高屈折率高分散特性を有するものが所望である。特に屈折率は1.83以上、より好ましくは1.831以上、最も好ましくは1.832以上である。またアッベ数は好ましくは26、より好ましくは25、最も好ましくは24を上限とする。
【0042】
本発明の光学ガラスは、その成形品をレンズ等の光学素子として使用するものであるため、光線透過率が高いほうが好ましい。具体的には、反射損失を含む分光透過率曲線から算出して、光線透過率が70%以上になる最短波長(λ70)が450nmであることが好ましく、440nmであることがより好ましく、430nmであることが最も好ましい。ここで上記λ70の値は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02−2003「光学ガラス の着色度の測定方法」に基づき、その反射損失を含む分光透過率曲線を作成し、算出する。
【0043】
本発明の光学ガラスは、耐失透性、特にリヒートプレス時の耐失透性に優れていることが好ましい。耐失透性の評価は、SiO−TiO系高屈折率高分散光学ガラスにおいて一般的に使用されている成形温度、具体的には800℃で10分間保持することにより、リヒートプレス時の熱履歴を再現し、その際に生じる単位体積あたりの失透箇所の個数で評価することとした。ここで当該試験において、失透箇所の個数をもって耐失透性の指標としたのは、失透箇所の数と実際のリヒートプレス工程における失透傾向とは、一定の相関関係があることが経験的に知られているからである。
【0044】
また、上記検査によりカウントされる失透箇所の大きさは、その径が20〜100μmのものに限ることとし、100μmを超える径を有する失透箇所は一箇所でも存在していれば本発明の光学ガラスからは除く(不合格とする)ものとする。ここで下限を20μmとしたのは、20μmを下回るような小さな失透箇所があっても光学ガラスとしては、実用上、特段の不利益が生じないからであり、上限を100μmとしたのは、径が100μmを超えるような失透箇所が存在すると、光線透過性が著しく減少し、光学ガラスとして使用するのが困難になるからである。従って、その径が20〜100μmの範囲内の失透箇所を好ましくは、1cmのガラス試料中に15個以下、より好ましくは12個以下、最も好ましくは10個以下含有され、径が100μmを超えるような失透箇所が存在しないことが好ましい。
【0045】
なお、本明細書中において、失透箇所の「径」とは、ガラス試料を観察した際に当該失透下箇所を略楕円形と見た場合の最大径を意味する。また失透箇所の形状が楕円と大きく異なる場合は、当該形状を含むことができる円のうち最も小さいものの直径を、失透箇所の径と仮定することとする。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
本発明の光学ガラスにかかる実施例(No.1〜2)の組成および比較例(No.A)の組成を、これらのガラスの屈折率(nd)、アッベ数(νd)、λ70(nm)の測定結果、及び失透試験(1cm3中の失透箇所(個))の結果とともに表1に示す。表中の各成分の含有率は全て酸化物基準の質量%で表記する。
【0048】
表1に示した酸化物基準の組成になるように、本発明の実施例のガラス及び比較例のガラスを、酸化物、炭酸塩、水酸化物等の原料をガラスが400g得られるように調合し、十分混合した後、Pt製の坩堝に入れ、1100〜1300℃の電気抵抗炉中にて3〜10時間溶融、清澄、撹拌し均質化した後、金属製の型枠中にキャストし、75℃/hrの冷却速度にて徐冷して得た。
【0049】
得られたガラスについて、日本光学硝子工業会の定めるJOGIS01−2003「光学ガラスの屈折率の測定法」に沿って、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)を徐冷降温速度−25℃/hにして得られた光学ガラスについて測定した。また失透箇所の数は、まず15mm×15mm×30mmのガラス試料を800℃にて10min熱処理し、その後10mm×10mm×10mmのガラス試料を切り出し、内部の失透箇所の数を測定した。失透箇所は倍率50倍の顕微鏡にて、その径が20〜100μmである失透箇所をカウントした。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1〜4は、(TiO+Nb)/(NaO+KO)比を所定の範囲に収めることにより、TiO、Nbを多量に含有しても失透することなく、着色を抑制したプレス成形品を作製することができた。比較例Aは、屈折率は所望の値を実現したものの、着色性及び耐失透性が悪く光学ガラスとして使用できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が1.83以上でアッベ数が26以下であり、酸化物基準で必須成分としてSiO、TiO、Nb、NaOを含有し、酸化物基準の質量%で(TiO+Nb)/(NaO+KO)が3.0〜4.0の範囲である光学ガラス。
【請求項2】
800℃で10分間保温し、その後冷却した際に、20〜100μmの径を有する失透箇所が1cmあたり15個以下であり、かつ100μm以上の径を有する失透箇所を有さない請求項1の光学ガラス。
【請求項3】
酸化物基準の質量%で、Nbに対するTiOの含有量の割合が1.2〜2.0の範囲内であり、日本光学硝子工業会規格JOGIS02−2003「光学ガラスの着色度の測定方法」により測定して、分光透過率70%を示す波長が450nm以下である請求項1又は2の光学ガラス。
【請求項4】
酸化物基準の質量%で、
SiO:21.0〜30.0、
TiO:24.0〜40.0、
Nb:15.5〜30.0及び
NaO:10.0〜23.0、
並びに
ZrO:0〜9.0及び/又は
BaO:0〜25及び/又は
O:0〜23.0及び/又は
Sb:0〜1.0
の成分を含有し、(TiO+Nb)/(NaO+KO)が3.50〜3.85の範囲である請求項1〜3のいずれかの光学ガラス。
【請求項5】
酸化物基準の質量%で、
TiO:25.0〜40.0、
Nb:16.0〜30.0及び
BaO:2.0〜25.0
であり、(TiO+Nb)/(NaO)が3.50〜3.85の範囲である請求項1〜4のいずれかの光学ガラス。
【請求項6】
酸化物基準の質量%で
:0〜3.0及び/又は
Al:0〜4.0及び/又は
MgO:0〜5.0及び/又は
CaO:0〜5.0及び/又は
SrO:0〜5.0及び/又は
ZnO:0〜5.0及び/又は
LiO:0〜5.0及び/又は
Ta:0〜10.0及び/又は
WO:0〜10.0
の成分をさらに含有する請求項1〜5のいずれかの光学ガラス。
【請求項7】
酸化物基準の質量%でSb、SnO及びSnOの合計含有量が0〜1%含有する請求項1〜6のいずれかの光学ガラス。

【公開番号】特開2008−266028(P2008−266028A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106799(P2007−106799)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】