説明

光学ガラス

【課題】屈折率が1.9以上で、アッベ数が19〜22の光学恒数を有し、しかも光透過特性に優れたリン酸塩系光学ガラスの提供。
【解決手段】酸化物基準のmol%で、酸化物基準のmol%で、P20.0−30.0B3.5−10.0SiO0−5.0BaO 0−5.0NaO 16.2−25.0KO 0−8.0 Bi 10.0−20.0TiO 3.0−15.0Nb 10.0−20.0WO 5.0−15.0ZnO 0−5.0を含有し、かつ、LiOを実質的に含まず、液相粘性(ηTL)が7dPa・s以上で、屈折率n:1.90以上、である光学ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率で、精密プレス成形が可能で、プリフォーム用ゴブ成形性に優れるリン酸塩系光学ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率、高分散領域の光学ガラスで、鉛非含有のものとしては、特許文献1、特許文献2などにリン酸塩をベースにした系が提案されてきたが、屈折率(n)が1.90を超える具体的な組成は提案されていない。
【0003】
屈折率(n)が1.90を超える高屈折率光学ガラスとして、リン酸塩をベースにした系が特許文献3に提案されている。特許文献3には、高屈折率で、低温軟化性、鉛非含有の3つを満たすリン酸塩系光学ガラスが提案されているが、プリフォーム用ゴブ成形性の点では、必ずしも充分満足できるものではない。
【0004】
プリフォーム用ゴブ成型とは、精密プレス成形用プリフォームの製造方法であり、溶融ガラスをノズル先端から流出し、所望の質量の溶融ガラス塊を分離し、金型上に窒素ガスにて浮上させながら受けて、全面火づくり面のガラス塊を製造する過程である。プリフォーム用ゴブ成型において、ガラスの粘性が7dPa・sより低いと、ノズルから流出、分離するガラス塊が小さくなり、レンズなど製品として必要なサイズを満たせなくなる。
【0005】
また、ガラスの粘性が7dPa・sより低いと、窒素ガスにて浮上させるときに、窒素ガスをガラス塊内部に取り込んでしまうことや表面形状がゆがんでしまい所望の形状が得られないなど、歩留まりが低下してしまう。ノズルのサイズや形状の工夫や金型の工夫など行うことにより、これらの欠点をある程度補うことは可能であるが、本質的にはガラスの液相温度を低くし、かつ、粘性を高くすることで、液相粘性を高くすることがもっとも重要である。ちなみに、液相粘性が高すぎる場合も、ノズルからの流出量が小さくなって生産性が落ちるなど問題となるが、通常、この領域のリン酸塩ガラスでは液相粘性が高くなりすぎるおそれは小さい。
【0006】
したがって、屈折率(n)が1.90以上の高屈折率で、精密プレス成形が可能で、プリフォーム用ゴブ成形性に優れたものは、いまだ提案されていない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−321245号公報
【特許文献2】特開2005−8518号公報
【特許文献3】特開2006−111499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、屈折率(n)が1.9以上で、アッベ数(ν)が19〜22である光学恒数を有し、ガラス転移点が低いため精密プレス成形しやすく、プリフォーム用ゴブ成形性に好適な液相粘性を有する光学ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
酸化物基準のmol%で、
20.0−30.0
3.5−10.0
SiO 0−5.0
BaO 0−5.0
NaO 16.2−25.0
O 0−8.0
Bi 10.0−20.0
TiO 3.0−15.0
Nb 10.0−20.0
WO 5.0−15.0
ZnO 0−5.0
を含有し、かつ、LiOを実質的に含まず、液相粘性(ηTL)が7dPa・s以上で、
屈折率n:1.90以上、である光学ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリン酸塩系の光学ガラス(以下、本ガラスという)は、P、B、NaO、Bi、TiO、NbおよびWOを必須成分とするため、屈折率n:1.9以上となり、好ましくはアッベ数ν:19〜22の光学特性が得られる。
【0011】
本ガラスによれば、LiOを実質的に含まず、LiOの代わりにNaOを適正量含むため、液相粘性が7dPa・s以上となりプリフォーム用ゴブ成形性に優れる。したがって、精密プレス用プリフォームの形状自由度が高くかつ効率的に生産できるため、レンズ等の光学素子の生産性を高めることができる。
【0012】
本ガラスによれば、ガラス転移温度(T)が500℃以下とできるため、金型表面に通常形成される保護膜や離型膜の劣化程度が軽減され、その結果、金型の耐久性が向上して、生産性が大きく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、屈折率が1.9以上で、プリフォーム用ゴブ成形性に優れ、かつ、精密プレス成形しやすいリン酸塩系光学ガラスの提供を目的に、リン酸塩系光学ガラスの液相粘性を高めるべく、種々検討した結果に基づくものである。
【0014】
検討の結果、P、B、NaO、Bi、TiO、NbおよびWOなどをバランスよく含有させ、LiOを実質的に含有しないことで、本目的を達成できることを見出したものである。
【0015】
本ガラスは、P、B、NaO、Bi、TiO、NbおよびWOを含むことを特徴とするものである。本ガラスの各成分範囲を設定した理由は、以下のとおりである。なお、本明細書では、以下、特に断りのない限り%はmol%を意味するものとする。また、化学組成は、酸化物基準とする。
【0016】
本ガラスにおいて、Pは必須の成分であり、ガラスを形成する主成分(ガラス形成酸化物)であると共に、ガラスの粘性を高める成分である。本ガラスにおいて、P含有量が少なすぎると、ガラスが不安定になると共にプリフォーム用ゴブ成形時の粘性が低くなるおそれがあるため、本ガラスではP含有量は20.0%以上である。P含有量が24.0%以上であると好ましく、P含有量が25.0%以上であるとより好ましい。一方、P含有量が多くなると屈折率が下がってしまうため、本ガラスではP含有量は、30.0%以下である。P含有量が28.0%以下であると好ましく、P含有量が27.0%以下であるとより好ましい。
【0017】
本ガラスにおいて、Bは、必須の成分であり、ガラスを形成する成分である。含有量が少なすぎるとガラスが不安定になると共にプリフォーム用ゴブ成形時の粘性が低くなるおそれがあるため、本ガラスのB含有量は3.5%以上である。B含有量が4.0%以上であると好ましく、B含有量が4.5%以上であるとさらに好ましい。一方、B含有量が多すぎると屈折率が低下するので、本ガラスでは、B含有量は10.0%以下である。B含有量が7.0%以下であると好ましく、B含有量が6.0%以下であるとさらに好ましい。
【0018】
本ガラスにおいて、SiOは、必須の成分ではないが、ガラスを形成する成分である。添加する場合は、ガラス転移点と屈折率の点から、SiO含有量を5.0%以下とするのが好ましい。SiO含有量を4.0%以下とするとさらに好ましい。SiO含有量を3.0%以下とすると特に好ましい。
【0019】
本ガラスにおいて、BaOは、必須の成分ではないが、ガラスを軟化させる成分である。添加する場合は、粘性と屈折率の点から、BaO含有量を5.0%以下とするのが好ましい。BaO含有量を4.0%以下とするとさらに好ましい。BaO含有量を3.0%以下とすると特に好ましい。
【0020】
本ガラスにおいて、NaOは必須の成分であり、ガラスを軟化させる成分であると同時に、また、ガラスを安定化させる成分の一つでもある。本ガラスにおいて、NaO含有量が少なすぎると、ガラスが不安定になるおそれがあるため、本ガラスではNaO含有量は16.2%以上である。NaO含有量が17.0%以上であると好ましく、NaO含有量が17.5%以上であるとより好ましい。NaO含有量が18.0%以上であると特に好ましい。一方、NaO含有量が多くなると屈折率が下がってしまうため、本ガラスではNaO含有量は、25.0%以下である。NaO含有量が23.0%以下であると好ましく、NaO含有量が20.0%以下であるとより好ましい。
【0021】
本ガラスにおいて、LiOを実質的に含有しない。実質的に含有しないとは、不可避的な不純物として含有することはあっても、積極的に添加しないとの意味で、本明細書では、含有量が0.1%以下であることをいう。本ガラスにおいては、LiOを実質的に含有しない代わりに適正量のNaOを含有するため、液相粘性が7dPa・s以上となりプリフォーム用ゴブ成形に最適な光学ガラスとなる。
【0022】
本ガラスにおいて、KOは必須の成分ではないが、ガラスを軟化させる成分である。本ガラスにおいて、KOを含有する場合、その含有量が少なすぎると、ガラス転移点が高くなるおそれがあるため、KO含有量は2.5%以上であると好ましい。KO含有量が3.0%以上であるとさらに好ましい。KO含有量が3.5%以上であると特に好ましい。
【0023】
一方、KO含有量が多くなると屈折率が下がると共にガラスが不安定になってしまうため、本ガラスではKO含有量は、8.0%以下であると好ましい。KO含有量が5.0%以下であるとさらに好ましく、KO含有量が4.0%以下であるとより好ましい。
【0024】
本ガラスにおいて、Biは必須の成分であり、ガラスを高屈折率化させると共にガラスを軟化させる効果がある。含有量が少なすぎると前記効果が不充分となるおそれがあることから、本ガラスのBi含有量は10.0%以上である。Bi含有量が14.0%以上であると好ましく、Bi含有量が15.0%以上であるとより好ましい。一方、Bi含有量が多くなると可視域の光透過特性が低下すると共に粘性が低下することから、本ガラスのBi含有量は20.0%以下である。Bi含有量が18.0%以下であると好ましく、Bi含有量が17.0%以下であるとより好ましい。
【0025】
本ガラスにおいて、TiOは必須の成分であり、ガラスを高屈折率化させる効果がある。含有量が少なすぎると前記効果が不充分となるおそれがあることから、本ガラスのTiO含有量は3.0%以上である。TiO含有量が4.0%以上であると好ましく、TiO含有量が5.0%以上であるとより好ましい。一方、TiO含有量が多くなると可視域の光透過特性が低下すると共にガラス転移点が高くなることから、本ガラスのTiO含有量は15.0%以下である。TiO含有量が12.0%以下であると好ましく、TiO含有量が10.0%以下であるとより好ましい。TiO含有量が8.0%以下であると特に好ましい。
【0026】
本ガラスにおいて、Nbは必須の成分であり、ガラスを高屈折率化させる効果がある。含有量が少なすぎると前記効果が不充分となるおそれがあることから、本ガラスのNb含有量は10.0%以上である。Nb含有量が13.0%以上であると好ましく、Nb含有量が14.0%以上であるとより好ましい。一方、Nb含有量が多くなると可視域の光透過特性が低下すると共にガラスが不安定になることから、本ガラスのNb含有量は20.0%以下である。Nb含有量が17.0%以下であると好ましく、Nb含有量が16.0%以下であるとより好ましい。
【0027】
本ガラスにおいて、WOは必須の成分であり、ガラスを高屈折率化させる効果がある。含有量が少なすぎると前記効果が不充分となるおそれがあることから、本ガラスのWO含有量は5.0%以上である。WO含有量が8.0%以上であると好ましく、WO含有量が9.0%以上であるとより好ましい。一方、WO含有量が多くなると可視域の光透過特性が低下すると共にガラスが不安定になることから、本ガラスのWO含有量は15.0%以下である。WO含有量が12.0%以下であると好ましく、WO含有量が11.0%以下であるとより好ましい。
【0028】
本ガラスにおいて、ZnOは、必須の成分ではないが、ガラスを軟化させる成分となるものである。添加する場合は、粘性と屈折率の点から、ZnO含有量を5%以下とするのが好ましい。ZnO含有量を3%以下とするとさらに好ましい。
【0029】
本ガラスにおいて、上記成分の合計が95%以上であると、諸特性のバランスが取れるため好ましい。上記成分の合計が98%以上であるとさらに好ましく、本ガラスが上記成分からなると特に好ましい。
【0030】
本ガラスにおいて、光学特性を調整するために、Al、GeO、Ga、ZrO、Gd、La、Y、Ta、TeO、MgO、CaO、SrOのいずれか1種以上を任意成分として添加できる。含有量が少ないと光学特性の調整効果がほとんど得られないことから、含有量としては、それぞれ単独で、含有量が0.1%以上であると好ましく、前記含有量が1.0%以上であるとより好ましく、前記含有量が2%以上であると特に好ましい。一方、前記各成分は、含有量が多くなるとガラスが不安定になったり、原料が比較的高価であるため、工業上はこれらの元素を極力含有量を抑えることが好ましい。したがって、それぞれ単独で5.0%以下とするのが好ましく、4.0%以下とするとより好ましく、3.0%以下とすると特に好ましい。
【0031】
また、本ガラスにおいては、PbO、F、Asを実質的に含有しない、すなわち、PbO、F、Asの含有量が0.05%未満であることが、成形温度の観点や環境面への影響等から好ましい。
【0032】
本ガラスにおいて、Sbは、必須の成分ではないがガラス溶融の際の清澄剤として添加できる。その含有量としては、1%以下が好ましく、0.5%以下であるとさらに好ましく、0.1%以下であると特に好ましい。本ガラスにおいて、を添加する場合の下限としては、0.01%以上であると好ましく、0.05%以上であるとさらに好ましく、0.1%以上であるとより好ましい。
【0033】
本ガラスの光学特性としては、屈折率(n)が1.90以上である。本ガラスの屈折率(n)が、1.91以上であると好ましく、本ガラスの屈折率(n)が、1.92以上であるとより好ましい。一方で、諸特性をバランスさせるためには、本ガラスの屈折率(n)を2.00以下とするのが好ましく、同様の理由で屈折率(n)を1.98以下とするのがさらに好ましく、屈折率(n)が1.96以下であるとより好ましい。
【0034】
また、本ガラスのアッベ数(ν)が22以下であると好ましく、本ガラスのアッベ数(ν)が21以下であるとさらに好ましい。一方、本ガラスのアッベ数(ν)を19未満とするのは難しいため、19以上とするのが好ましい。
【0035】
本ガラスのガラス転移点(T)としては、500℃以下であると成形温度を低くすることができ、金型表面に形成されている保護膜等の耐久性が向上するため好ましい。本ガラスのガラス転移点を495℃以下とするとさらに好ましく、ガラス転移点を490℃以下とするとより好ましい。
【0036】
本ガラスの屈伏点(At)としては、550℃以下であると成形温度を低くすることができ、金型表面に形成されている保護膜等の耐久性が向上するため好ましい。屈伏点が540℃以下であるとさらに好ましい。本ガラスの屈伏点が530℃以下であると特に好ましい。
【0037】
また、本ガラスの液相温度(T)としては、900℃以下であると、液相粘性が高くなり、プリフォーム用ゴブ成形性に優れるため好ましい。液相温度が890℃以下であるとより好ましく、本ガラスの液相温度が885℃以下であるとさらに好ましい。一方、液相温度(T)が700℃未満であるとガラスが得られなくなるおそれがあるため、液相温度(T)が700℃以上であると好ましい。
【0038】
本ガラスの液相粘性(ηTL)としては、7dPa・s以上である。本ガラスの液相粘性(ηTL)が10dPa・s以上であるとプリフォーム用ゴブ成型での形状自由度や歩留まりが向上するので好ましく、15dPa・s以上であるとよりに好ましく、20dPa・s以上とするとさらに好ましい。液相粘性を10dPa・s以上とし、かつ、液相温度を890℃以下とすると、プリフォーム用ゴブ成形性とプリフォームの精密プレス成形性とのバランスが取れていて、特に、好ましい。
【0039】
一方、本ガラスの液相粘性が高くなりすぎるとノズルからの溶融ガラスの流出量が少なくなり、生産性が低くなり好ましくない。したがって、液相粘性を100dPa・s以下とするのが好ましく、液相粘性が80dPa・s以下であるとさらに好ましい。
【0040】
本ガラスの製造法としては、特に制限されるものではなく、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の通常の光学ガラスで用いられる原料を秤量・混合し、白金ルツボ、金ルツボ、石英ルツボ、アルミナルツボ等通常光学ガラスで用いられるルツボに入れて、約850〜1100℃で2〜10時間溶融、清澄、撹拌後、400から500℃に予熱した金型に鋳込等した後、徐冷して製造できる。
【0041】
本ガラスを用いたプリフォーム用ゴブ成形の方法としては、溶融ガラスをノズル先端から流出し、所望の質量の溶融ガラス塊を分離し、金型上に窒素ガスにて浮上させながら受けて、全面火づくり面のガラス塊を製造する方法が一例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、本ガラスを光学素子に成形する方法としては、特に制限されるものではないが、本ガラスのガラス液相温度(T)をもとにして、プリフォーム用ゴブ成形により作製したプリフォームを、型表面に保護膜を形成した、高精度に加工された型(型材質としては、例えば、SiC質、超硬など)内にセットし、非酸化性雰囲気下で所定の圧力、時間プレスして所望の形状とする方法が一例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例等を説明する。例1が本発明の比較例であり、例2〜例10が本発明の実施例である。なお、例1は、特開2006−111499号公報に記載された実施例である例6である
[化学組成・試料作製法]
表1に示す化学組成(%)となるように原料を秤量した。各ガラスの原料は、Pの場合はHPO、BPO、BaP、LiPO、NaPO、KPOを、Bの場合はHBOまたはBPOを、BaOの場合はBaCOまたはBaPを、LiOの場合はLiCOまたはLiPOを、NaOの場合はNaCOまたはNaPOを、KOの場合はKCOまたはKPOを、SiO、Bi、Nb、WO、ZnOの場合は酸化物を、それぞれ使用した。秤量した原料を混合し、内容積約300ccの白金ルツボ内に入れて、約850〜1100℃で1〜3時間溶融、清澄、撹拌後、およそ400から5000℃に予熱した縦100mm×横50mmの長方形のモールドに鋳込み後、約0.5℃/分で徐冷してサンプルとした。
【0044】
[評価方法]
・屈折率(n)はヘリウムd線に対する屈折率であり、屈折率計(カルニュー光学工業社製、商品名:KRP−2)で測定した。屈折率の値は、小数点以下第5位まで測定し、小数点以下第5位を四捨五入して少数点以下第4位として記載した。
・アッベ数(ν)は、ν=(n−1)/(n−n)により算出し、小数点以下第2位を四捨五入して小数点以下第1位として記載した。ただし、n、nは、それぞれ水素F線およびC線に対する屈折率である。
・ガラス転移温度(T)および屈伏点(At)は、得られた各ガラスを棒状に加工し、熱分析装置(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:TMA4000SA)で熱膨張法により、昇温速度5℃/分で測定した。
・液相温度(T)は、白金皿にガラス試料約5gを入れ、それぞれ800℃から900℃まで10℃刻みにて1時間保持したものを自然放冷により冷却した後、結晶析出の有無を顕微鏡により観察して、結晶の認められない最低温度を液相温度とした。
・液相粘性(ηTL)回転円筒法により粘度を測定し、液相温度(L)での粘性とした。
・ガラスの溶解性等については、上記サンプル作製時に目視で観察した結果、例1〜例10については、溶解性に問題がないこと、得られたガラスサンプルには泡や脈理のないことを確認した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本ガラスは、屈折率1.90以上の光学ガラスであって、ガラス転移点が低いことから精密プレス成形に好適であり、しかも液相粘性が高いのでプリフォーム用ゴブ成形性に優れる。したがって、高屈折率、造特性の高い精密プレス成形用光学ガラスとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のmol%で、
20.0−30.0
3.5−10.0
SiO 0−5.0
BaO 0−5.0
NaO 16.2−25.0
O 0−8.0
Bi 10.0−20.0
TiO 3.0−15.0
Nb 10.0−20.0
WO 5.0−15.0
ZnO 0−5.0
を含有し、かつ、LiOを実質的に含まず、液相粘性(ηTL)が7dPa・s以上で、
屈折率n:1.90以上、である光学ガラス。
【請求項2】
NaOを17.0−23.0mol%含む請求項1記載の光学ガラス。
【請求項3】
前記成分の合計が95mol%以上である請求項1または2記載の光学ガラス。
【請求項4】
アッベ数ν:19〜22である請求項1、2または3記載の光学ガラス。
【請求項5】
液相温度(T)が900℃以下である請求項1〜4のいずれかに記載の光学ガラス。

【公開番号】特開2011−219278(P2011−219278A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214024(P2008−214024)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】