説明

光学ケーブル構成部品類

本発明は、曲げモジュラス、ノッチ入りアイゾット値、耐グリース性、および低収縮特性のバランスに優れた、高結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーの押出ブレンドから成形される、光ケーブル構成部品に関する。ポリプロピレンの結晶化度は重量パーセントより大きく、230℃におけるメルトフローは1から20グラム/10分である。組成物は、23℃における1パーセントセカントモジュラスが最低でも1600Mpaであり、ノッチ入りアイゾットが最低でも35J/mである押出物を生成する。組成物は、100℃で24時間後の収縮が2.0パーセントより小さい押出チューブを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーの押出ブレンドから製造される、バッファチューブ(buffer-tube)、コアチューブ(core-tube)またはスロッテッドコア光ファイバーケーブル構成部品に関する。従来の衝撃改質ポリプロピレン技術と比較すると、本発明の押出ブレンドは、曲げモジュラス、耐圧縮性、衝撃強度、耐グリース性、および低押出後収縮性に、顕著に最適化されたバランスを提供する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバー類は、高速で、長距離にわたり、効率的に情報を伝達する。これらのファイバー類は繊細であり、保護の必要がある。実際の用途では、光ファイバーケーブルは、ファイバー類を物理的な損傷、および/または、湿気への暴露のような有害環境条件から保護する。例えば、特定の保護部品類は、押出バッファーチューブ類、コアチューブ類およびスロッテッドコアメンバー類を含む。
【0003】
通常のルースバッファーチューブ(loose buffer tube)光ケーブルの構造の断面図を図1に示す。この光ケーブル1の構造においては、バッファーチューブ2は、軸方向にらせん回転するチューブを伴い、中心強度メンバー(central strength member)4を円周状に囲んで配置される。らせん状回転は、チューブまたは光ファイバー6を著しく伸ばすことなくケーブルを曲げることを可能とする。
【0004】
バッファーチューブの数を減らす必要がある場合は、ケーブルの外形を維持するために、発泡フィラーロッド(foamed filler rod)10を、1つ以上のバッファーチューブの場所を塞ぐ低コストのスペーサーとして用いることが可能である。ケーブルジャケット14は、一般的にはポリエチレンを主とする材料で製造される。
【0005】
バッファーチューブ類は、一般的にはファイバーの周囲を取り巻き空隙を無くす、炭化水素油を含む光ケーブル炭化水素系グリース8で充填される。このグリース(「ゲル」ともいう)は、光伝達性能にとって有害となる水分の浸透に対する遮蔽となる。
【0006】
グリースの炭化水素油類は、一般的には低分子量炭化水素油類であり、ポリマー性バッファチューブに吸収される恐れがある。吸収は、一般的には、曲げモジュラスおよび耐圧縮性のようなチューブの機械特性に悪影響を及ぼす。耐圧縮性の減少は、光ファイバーへ機械的ストレスがかかる傾向を増加させ、それにより信号減衰を高くすることを許し、壊損の可能性を増加させる。よって、一般的に「グリース適合性」といわれる鉱物油の吸収の最小値と共に、モジュラスおよび耐圧縮性を良好に保つことは、押出光学保護部品の製造に用いられるポリマー性材料の重要な性能特性である。
【0007】
また図1に示すように、水分膨張性高吸収性ポリマー類を含むヤーン類3またはコア被覆類11のような構成部品を用いて、ケーブルコア中の水分を遮断することが可能である。中心の強度メンバー上の水分遮断処理、または、敷設のために被覆を除去しやすくするリップコード(ripcord)類もまた、一般的である。他の変形としては、バッファチューブグリースをなくしたり、粉体類のような高吸収水分遮断成分を使用することがある。
【0008】
バッファチューブケーブルのその他の多くのデザインが可能である。設計要素の一部としては、中心強度および伸張メンバー(tensile member)の寸法およびそれらを構成する材料、バッファチューブの寸法および数、ならびに、金属アーマー(metallic armor)類の使用および被覆材料の多層化がある。
【0009】
「セントラルチューブ(central tube)」ともよばれる通常のコアチューブ(core tube)光ケーブルの断面図を図2に示す。光ファイバー22のバンドル24は、中心、管状コアチューブ28を有する光ケーブル20の中心付近に配置される。バンドルは充填材料26中に埋め込まれる。水分遮断テープ32は、コアチューブの表面にあるリップコード30を取り巻く。波形のコーティングされたスチール製円筒34がテープを取り囲み、バンドルを保護する。強度メンバー36はケーブルに強度と剛性を与える。一般的にポリエチレンを主とする材料で製造されたジャケット38は、全ての構成部品を取り囲む。このデザインにおいては、機械的な機能は、コアチューブ、ポリオレフィン被覆層、引張および圧縮強度メンバー、金属アーマー、コア被覆、水分遮断構成部品、および他の構成部品から構成される外装システムに組み込まれている。
【0010】
コアチューブは一般的に、ファイバーのバンドルを収容するため、または、光ファイバーを含むリボン状構成部品を用いるため、バッファチューブよりも直径が大きい。ファイバーを束ね、および識別するために、一般的に色識別された結合剤類を用いる。コアチューブは、光ファイバー構成部品を取り囲む水分遮断グリースまたは高吸収ポリマー要素を含むことが可能である。コアチューブ構成部品向けに最適化された材料特性は、多くの場合、バッファチューブ用途のものと類似する。
【0011】
一般的なスロッテッドコア(slotted-core)ケーブル構造の断面図を図3に示す。光ケーブル30は、ジャケット48およびスロッテッドコア32を含み、中心メンバー34を有する。中心メンバーはバックリング(buckling)を防ぎ、押出スロッテッドコア縦断面形状の軸方向収縮を制御する。被覆およびスロッテッドコアは、一般的にはポリオレフィンを主とする材料から製造される。
【0012】
スロッテッドコアは、光ファイバー38が配置されるスロット36を有する。フィラーロッド40がスロットの1つ以上を占めていてもよい。水分遮断層42は、1つ以上のリップコード44を有してもよく、スロッテッドコア32を取り囲む。誘電性の強度メンバー層46は、水分遮断層を取り囲む。
【0013】
光ケーブル構成部品は、高い耐圧縮性、良好なグリース適合性、適当な耐衝撃性能、および、良好な押出後収縮特性を有することが望ましい。したがって、光学保護構成部品は(1)良好な圧縮強度のためモジュラスが高く、(2)特にモジュラスおよび耐圧縮性の低減として決定される、光ケーブルグリースに対する耐薬品性が良好であり、(3)ノッチ入りアイゾットとして測定される耐衝撃性能が良好であり、および、(4)光信号伝達を促進する、押出後収縮特性が良好であるべきである。
【0014】
前述のように、曲げモジュラスおよび耐圧縮性のような保護構成部品の機械的特性に悪影響を及ぼすことにより、グリース適合性の低さが明らかになる恐れがある。
【0015】
押出後収縮に関しては、構成部品中の光ファイバー類は、しばしばファイバ余長(excess fiber length)またはEFLとよばれる過剰な緩みを示さないことが必要である。押出の最中に急速に発生する構成部品の収縮は、ファイバーに適度に張力がかかっているため、一般的はEFLには寄与しない。しかし、レオロジー性および結晶プロセスに起因してより低速に生じる構成部品の収縮は、構成部品中のファイバーにEFLを発生させる。
【0016】
構成部品の収縮の主要な機構は、(1)チューブ成形押出の最中に発生する、ポリマー性溶融物の粘弾性伸張からの歪み回復、(2)溶融チューブの固化に伴う材料の収縮、(3)ポリマーマトリックスの再結晶が継続することによって発生する固体状態アニール収縮であると考えられる。したがって、構成部品の材料は、粘弾性溶融歪みの緩和が速く、アニール収縮が最小であるべきである。
【0017】
この望ましい特性を達成するために、異なるポリマー性材料が試されてきた。例えば、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)が示す剛性は高く、光学グリース中でのコンディショニング後の物理特性の変化は極小であり、耐変形性(曲げモジュラスが>2,400MPa)があり、押出後収縮により生じるファイバ余長が短い。しかし、PBTは、ポリオレフィンを主とするコンパウンド類と比較すると、体積あたりの費用では比較的高価である。
【0018】
PBTと比較したとき、一般的に、従来のポリオレフィン類が示す光学グリースへの暴露後の効果は大きい。ポリオレフィン素材類に共通して、一般的に結晶化度はグリース適合性(grease compativility)を改良する。
【0019】
高密度ポリエチレン(「HDPE」)はPBTよりもモジュラスが小さく、耐圧縮性が低く、そして、押出後収縮のレベルが高いため、高レベルのファイバ余長を回避するため、特別な加工上の注意が必要である。米国特許第5,574,816号および第5,761,362号は、造核衝撃改質ポリプロピレンポリマー類(「IMPP」)の光バッファチューブ類への使用を記載する。
【0020】
造核剤類および低分子量はそれぞれ、当初の結晶性を最大化し、それに続くアニール収縮を最小化すると考えられる。米国特許第3,367,926号は、造核剤類がポリマー類の結晶化度を有利に増大させると同時に、一般的にはモジュラスも増加させることを記載する。
【0021】
しかしHDPEは、IMPPと比較してより良好なレベルの光学グリース適合性を提供する。HDPEと同様に、特にグリースへの暴露後には、IMPPはPBTより相当に低いモジュラスおよび耐圧縮性を有する。
【0022】
IMPPへのゲル吸収を最小化するために、光ファイバーケーブル製造者はしばしば、高価なゲル充填組成物類を使用する。高価なゲルとIMPPとを組み合わせるとコストがより高いため、IMPP自体の当初のコストが低いメリットをなくす。
【0023】
よって、HDPEおよびIMPP(当初)のコストはPBTより低いにもかかわらず、バッファチューブ用途の全ての範囲にわたるPBTの代替は制限されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、高結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーのブレンドから製造される押出光ケーブル保護構成部品類(extruded optical cable protective components)を提供することであり、前記構成部品は剛性、耐衝撃強靱性、および耐グリース性に望ましいバランスを有する。本発明の他の目的は、前記の押出光ケーブル保護構成部品類を含む、柔軟な光ファイバーケーブルを提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、得られる押出物が、光ケーブル保護構成部品類に適切な1パーセントセカントモジュラスおよびノッチ入りアイゾット値を有する、高結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーの押出ブレンドを提供することである。
本明細書によって、本発明の他の目的は、容易に当業者に明白となる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、曲げモジュラス、ノッチ入りアイゾット値、耐グリース性、および低収縮特性のバランスに優れた、高結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーの押出ブレンドから成形される、光ケーブル構成部品に関する。ポリプロピレンの結晶化度は56重量パーセントより大きく、230℃におけるメルトフローは1から20グラム/10分である。
【0027】
組成物は、23℃における1パーセントセカントモジュラスが最低でも1600Mpaであり、ノッチ入りアイゾットが最低でも35J/mである押出物を生成する。組成物は、100℃で24時間後の収縮が2.0パーセントより小さい押出チューブを生成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーの押出ブレンドを含む、押出光ケーブル保護構成部品である。結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーは、押出組成物の23℃における1パーセントセカントモジュラスが最低でも約1600MPaであり、23℃におけるノッチ入りアイゾット値が最低でも約35J/mとなるような有効量で存在する。結晶性ポリプロピレンの結晶化度は約56重量パーセントより大きく、230℃におけるメルトフローは1から20グラム/10分である。押出性ブレンドはまた、100℃で24時間後の収縮が2.0パーセントより小さい押出チューブを生成する。
【0029】
高結晶性ポリプロピレンは、アイソタクチックホモポリマーポリプロピレンまたはシンジオタクチックホモポリマーポリプロピレンのどちらでもよい。高結晶性ポリプロピレンは、ポリマーの結晶化度を最大とするために、アイソタクチックホモポリマーポリプロピレンが好適である。
【0030】
本発明で用いられるポリプロピレンは、文献公知であり、既知の技術により製造可能である。一般的には、ポリプロピレンはチーグラー・ナッタ触媒類またはメタロセン触媒類で製造可能である。"Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology" (2001)は、これらの触媒類、および高結晶性ポリプロピレン類を製造するそれらに対応する反応器プロセスを記載する。
【0031】
ポリプロピレンの結晶化度は、示差走査熱分析(DSC)で測定する。この測定では、プロピレンポリマーの少量のサンプルを、アルミニウム製のDSCパンに封入する。このサンプルを、25センチメートル/分で窒素パージされ、約−100℃に冷却されたDSCセル内に入れる。10℃/分で225℃までサンプルを加熱して、標準的な熱履歴をサンプルへ与える。次にサンプルを約−100℃に再冷却し、10℃/分で225℃まで再加熱する。2度目の走査で観察される溶融熱(ΔHobserved)を記録する。測定された溶融熱は、ポリプロピレンサンプルの重量を基準として、重量パーセントで表される結晶化度に関し、以下の式による。
【0032】
結晶化度パーセント = (ΔHobserved/ΔHアイソタクチックpp)×100
(式中、アイソタクチックポリプロピレンの溶融熱(ΔHアイソタクチックpp)は、165ジュール/グラム(J/g)であり、B. Wunderlich, Macromolecular Physics, Volume 3, Crystal Melting, Academic Press, New York, 1960, 48頁に記載されている。)
【0033】
本発明の好適な態様においては、高結晶性ポリプロピレンの結晶化度は65パーセントより大きく、より好適には70パーセントより大きく、最も好適には73パーセントより大きい。2002年10月7日に出願された米国特許仮出願シリアル番号第60/416,632号は、本発明に有用な高結晶性ポリプロピレンの例を開示する。
【0034】
高結晶性ポリプロピレンのメルトフローレートは、1から20グラム/10分の間である。好適には、メルトフローは1から12の間であり、より好適には2から9の間であり、さらにより好適には2から8の間であり、最も好適には3から6の間である。メルトフローレートはASTM方法D 1238−01試験法に従い230℃で測定する。
【0035】
本明細書に記載の押出モールディングおよび試験条件においては、好適な組成物が示す押出後収縮は、100℃における24時間後で約2.0パーセントより小さい。
【0036】
好適には、結晶性ポリプロピレンは、60から97重量部の量でブレンド中に存在する。
【0037】
本発明の高結晶性ポリプロピレンと共に、造核剤を用いることが可能である。好適な造核剤類の例としては、旭電化工業より市販のADK NA−11およびADK NA−21が挙げられる。造核剤類の他の例としては、米国特許第3,367,926号および第5,574,816号に記載の造核剤類が挙げられる。当業者は、他の有用な造核剤類を、容易に特定可能である。造核剤類は、一般的に、少なくとも500ppm、好適には少なくとも650ppm、および、より好適には少なくとも750ppmの量で、高結晶性ポリプロピレン中に含まれる。
【0038】
本明細書中で用いる「衝撃改質ポリマー」は、広範囲のポリマー類を含む。衝撃改質ポリマーによって、破損することなく機械的エネルギーを吸収し、それによって光ファイバーケーブル用途に充分な衝撃強靱性を与える、高結晶性ポリプロピレンを主成分とする配合を得ることができる。衝撃改質ポリマー類の例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー類、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー類、アクリロニトリル−ブタジエンゴム類、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー類、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートターポリマー類、エチレン/スチレンインターポリマー類、密度が0.925g/ccより低いエチレン/α−オレフィンインターポリマー類、エチレン/不飽和エステルコポリマー類、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー類(EPDM)、および、例えばエチレン−プロピレンゴム類のようなポリプロピレンコポリマーエラストマー類、ならびにこれらの混合物類が挙げられる。
【0039】
エチレン/不飽和エステルコポリマー類の例は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンアクリル酸メチル(EMA)、およびエチレンアクリル酸(EAA)である。プロピレンコポリマーエラストマー類のさらなる例は、"Polypropylene Handbook: Polymerization, Characterization, Properties, Applications" 3〜14頁、113〜176頁(E. Moore, Jr. ed. , 1996)に記載されている。
【0040】
好適には、衝撃改質ポリマーは天然または合成ゴムである。
【0041】
本明細書において用いるエチレン/α−オレフィンインターポリマー類は、エチレンと2から12の炭素原子を有するα−オレフィン類とのインターポリマー類である。本発明で有用なエチレン/α−オレフィンインターポリマー類には、低密度および超低密度エチレンポリマー類が含まれる。高結晶性プロピレンポリマー類と低密度エチレン/α−オレフィンインターポリマー類とのブレンドは、一般的なポリプロピレン技術では真似できない、高い曲げモジュラスおよび適切な強靱性の独自の組み合わせを提供する。
【0042】
好適には、エチレン/α−オレフィンインターポリマー類の密度は、約0.90グラム/立方センチメートルである。
【0043】
エチレン/1−オクテンおよび/またはエチレン/ブテンコポリマー類のような、直鎖状エチレン/α−オレフィンポリマー類、および実質的に直鎖状のエチレン/α−オレフィンポリマー類もまた、本発明に有用である。曲げモジュラスの減少を最小に留めながら、ブレンドに強靱性を与えることができるため、エチレン/1−オクテンコポリマー類が好適である。好適なコポリマーの例は、190℃におけるメルトインデックス(I2)が1.0g/10分であり、密度が0.877g/mlであるエチレン/1−オクテンコポリマーのAffinity EP 8100であり、The Dow Chemical Companyより入手可能である。
【0044】
エチレン/α−オレフィンポリマーが実質的に直鎖状のポリエチレンである場合は、この語句は、短鎖分枝分布が狭く、均一なコモノマー組込を特徴とする、短鎖分枝だけではなく長鎖分枝を含む、均一に分枝した(homogeneously branched)エチレンポリマー類(インターポリマー類およびホモポリマー類)をさす。長鎖分枝はポリマーの主鎖と同様の構造であり、短鎖分枝より長い。実質的に直鎖状のα−オレフィンインターポリマー類は、炭素1000個あたり0.01から3の長鎖分枝を有する。本発明で用いる、好適な実質的に直鎖状のポリマー類は、炭素1000個あたり0.01の長鎖分枝から、炭素1000個あたり1の長鎖分枝を有し、より好適には、炭素1000個あたり0.05の長鎖分枝から、炭素1000個あたり1の長鎖分枝を有する。これらのポリマー類はエラストマー類であり、これは、与えられる応力に対応して、その配列を変化させ、空間中で伸張することができるポリマー鎖である。
【0045】
衝撃改質ポリマーは、熱可塑性であるか、または当業者に公知の手段により架橋されたものであってもよい。衝撃改質ポリマーを架橋すると、炭化水素油類の吸収(absorption of hydrocarbon oils)、および、それによって生じるモジュラスおよび耐圧縮特性の損失を低減することが可能である。
【0046】
好適な衝撃改質ポリマー類は、耐衝撃性能および押出表面平滑性を改良する。その上、好適な衝撃改質ポリマー類は、押出後収縮特性またはモジュラス/圧縮特性に対して、有意な程度の悪影響を及ぼさない。また、好適な衝撃改質ポリマー類を結晶性ポリプロピレンに目標量含むと、ケーブルグリース適合性を良好にする。
【0047】
また、好適には、衝撃改質ポリマー類は、炭化水素油吸収に対する感受性が低い。高結晶性および/または極性の構成物質を主材料として、衝撃改質ポリマー類を用いると、一般的に光ケーブルグリースに含まれる低分子量種(low molecular weight species)、典型的には炭化水素油類の拡散および吸収を低減することが可能である。
【0048】
好適には、衝撃改質ポリマーはブレンド中に3から40重量部の量で存在する。
【0049】
性能増強(performance boosting)添加助剤(co-additive)類は、衝撃改質ポリマー類の特性を促進する場合がある。適切な添加助剤類としては、高結晶性ポリプロピレン相と衝撃改質ポリマー相の界面結合性を改良することによりポリマーブレンドの耐衝撃性能を強化することが可能な、化学的またはポリマー性のカップリングまたは相溶化剤類が挙げられる。
【0050】
アクリル酸グラフト化および/または無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンのようなカップリング剤類の使用は文献公知であり、たとえばそのような情報は、H. G. Karian, "Handbook of Polypropylene and Propylene Composites, "、39〜80頁 (1999)に見つけることができる。
【0051】
加えて、高結晶性ポリプロピレンと衝撃改質ポリマーの押出ブレンド類の中に、第3成分として炭化水素油を含むことが有利な場合がある。この追加成分は、一般的に光ファイバーケーブルグリース中に含まれる望ましくない低分子量種のその後の拡散および吸収を低減し、それによって耐衝撃性能とゲル適合性のバランスを改良する場合がある。
【0052】
好適には、押出ブレンド類中に存在する炭化水素油の量は、0.2重量パーセントから10重量パーセントである。より好適には、炭化水素油は0.3重量パーセントから3.0重量パーセントの間である。
【0053】
より高分子量の炭化水素油類が、低分子量の炭化水素油類より好適である。好適には、ASTM D−445に基づき測定された炭化水素油の粘度は、約400センチストロークより大きい。好適には、、ASTM D−1250に基づき測定された炭化水素油の比重は、0.86から0.90である。また好適には、ASTM D−92に基づき測定された炭化水素油の引火点は、約300℃より高い。また好適には、ASTM D−97に基づき測定された炭化水素油の流動点は、約−10℃より高い。また好適には、ASTM D−611に基づき測定された炭化水素油のアニリン点は、80℃から300℃の間である。
【0054】
ブレンドは、グラスファイバー類または様々な無機フィラー類のような、粒子状のフィラーを含むことが可能で、前記フィラーにはナノコンポジット類が含まれる。フィラー類、特に高アスペクト比(長さ/厚み)を与える、伸張されたまたはプレートリット(platelet)形状の粒子は、モジュラスおよび押出後収縮特性を改良する場合がある。
【0055】
本組成物は、押出加工助剤類、顔料類、酸化防止剤類、他の安定剤類、カップリング剤類、界面活性剤類、架橋剤類、および、可塑剤類のような、他の添加剤類および改質剤類を含むことが可能である。本組成物は、追加の樹脂成分を含むことが可能である。
【0056】
第2の実施態様においては、本発明は、本明細書に記載の高結晶性ポリプロピレン/衝撃改質ポリマーブレンドから製造された少なくとも1つの押出光学保護構成部品と、少なくとも1つの光ファイバー伝送媒体を含む、光ファイバーケーブル類に関する。
【0057】
さらに他の実施態様においては、本発明は、本明細書に記載の高結晶性ポリプロピレン/衝撃改質ポリマーのブレンドを押し出して、押出光学保護構成部品を製造する方法に関する。
【0058】
本発明の光ファイバーケーブルは、一般的には、一連の連続する製造工程により製造される。最初の工程で、光伝送ファイバー類が加工される。機械的な保護のために、ファイバー類にポリマー性コーティングをすることが可能である。これらのファイバー類は、バンドルまたはリボンケーブル形態に寄り合わすことが可能であり、または、ケーブル加工に直接組み込むことが可能である。
【0059】
光学保護構成部品は、押出加工プロセスを用いて製造する。一般的には、単軸スクリュー可塑化押出機が、圧力下で溶融し混合したポリマーを、ワイヤアンドケーブル用クロスヘッドへ吐出する。クロスヘッドは、溶融物の流れの向きを押出機から直角に変えて、その流れを溶融構成部品へと成型する。
【0060】
バッファおよびコアチューブにおいては、1つ以上の光ファイバーまたはファイバー構造体とグリースをクロスヘッドの背面に供給して、溶融チューブ内に入れてクロスヘッドから排出し、それを次に水槽システム中で冷却し固化する。この構成部品は、最終的には完成品の構成部品として巻き取りリールに収集される。
【0061】
2つ以上の素材層を含んで構成される構成部品を製造するためには、一般的には、個別の可塑化押出機で溶融組成物を多層クロスヘッドに供給し、そこで所望の多層構造を形成する。
【0062】
スロッテッドコアメンバーおよび他のプロファイル押出構成部品は、一般的には、適当な成型ダイを組み込んだ同様のプロファイル押出プロセスで押し出し、続いて光ファイバー部品と組み合わせて、完成品のケーブルに加工する。
【0063】
EFLを制御するために、テンショニングシステム(tensioning system)を用いて、ファイバー構成部品をチューブ加工プロセスに供給する。加えて、構成部品の素材の選択、チューブ押出およびクロスヘッド機器、ならびに、加工条件を最適化し、光ファイバー構成部品内の過度な弛みによって押出後収縮が生じない完成構成部品を提供する。
【0064】
押出光学保護構成部品類を中心構成部品類、アーマー類、被服類のような他の構成部品とともに、引き続き1つ以上の工程で加工し、完成品としてのケーブル構造体を製造する。これは一般的には、押出機/クロスヘッドを用いて構成部品を組み立て、次にポリマー性の被覆を被せるために加工する、ケーブルラインにおけるプロセスを含む。
【0065】
しかし、本発明の精神および範囲から離れることなく、当業者はこの製造プロセスの変形をすることが可能であることが理解されるべきである。
【実施例】
【0066】
以下は、本発明を説明する非限定的な実施例である。
【0067】
実施例1〜3は本発明を説明し、エラストマー性改質組成物を含む高結晶性ポリプロピレンの例を示す。比較実施例4は、工業的に現行製品に用いられてきたPBT材料を説明する。比較実施例5は、工業的に現行製品に用いられてきた一般的な従来の衝撃改質PP技術を説明する。
【0068】
収縮は、24時間、100℃に供した押出ワイヤサンプルで測定し、試験する。押出サンプルの表面平滑性は、ミツトヨSurftestプロフィロメータによって測定する。1パーセントセカントモジュラスはASTM試験Dー790に従って測定する。ノッチ入りアイゾットはASTM試験D−256に従って測定する。一般的にノッチ入りアイゾット試験は、固定され、通常はノッチを入れられた試験片に、120フィートポンド(163ジュール)のエネルギーで、毎秒11.5フィート(3.5メートル)の速度で振り子を衝突させる衝撃性試験である。衝突後の振り子の振り上がり高さが、吸収されたエネルギーを表し、衝撃強度を示す。
【0069】
実施例1〜3の高結晶性ポリプロピレンは、以下のように製造する。
【0070】
実施例1
プロピレンホモポリマーを、単一、連続バルク相(凝縮プロピレン)撹拌タンク反応器で製造する。Toho−JCとして市販され、東邦チタニウム株式会社から購入可能な、チタニウム触媒活性金属種が塩化マグネシウム担体に担持されたチーグラー・ナッタ触媒を、Witcoから購入したケイドール(Kaydol)白色鉱物油に、38重量パーセントで懸濁し、撹拌されている触媒供給タンクに貯蔵する。懸濁された触媒を、容量の約2/3の液体プロピレンを満たした、公称25,000ガロンの連続、撹拌タンク反応器に直接注入する。
【0071】
反応器の望ましい温度は65〜68℃であり、プロピレン蒸気を独立式の熱交換機で凝縮し、液体流を凝縮されないフラクションと共に反応器に戻して制御する。Degussa-Huelsから市販の、外部アルコキシシランドナー(external alkoxysilane donor)、[(CH24CH]2Si(OMe)2を、ASTM方法D 790−00で測定したキシレン抽出フラクションを1パーセントより低くするために必要な量、連続的に反応器に供給する。液体プロピレン中の外部ドナーの目標濃度は、固体換算で150ppmである。非希釈のアルミニウムアルキル共触媒(通常TEALとよばれるトリエチルアルミニウム、AlEt3)をプロピレン供給流に添加し、液体プロピレン中のTEAL濃度が、液体プロピレン中で150ppmの目標値となるよう調節する。
【0072】
ポリプロピレン重合は、40〜42重量パーセントの反応器ポリマー固形物で行う。連鎖剤、水素を連続的に反応器に供給し、ASTM D1238−01で測定したMFRが4.5のポリプロピレンポリマーを製造する。反応器排出流を直列の3つの容器中で脱気し、ポリプロピレン粉体生成物から、液体プロピレンおよびプロセス軽質分を分離する。
【0073】
脱気した粉体を4000ポンドバッチ中のリボンブレンダ/加熱器に送る。
【0074】
コポリマー最終生成物は、リボンブレンダーに、メルトインデックス(I2)が0.75〜1.25g/10分、密度が約0.877g/ml、および、I2/I10比率が約7.6のエチレン/1−オクテンポリエチレンコポリマーである市販ゴムのAffinity(商標)EP8100を9重量パーセント導入して製造する。Affinity EP8100はThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0075】
他の添加剤類もまた、リボンブレンダーに導入する。1500ppmの造核剤/透明添加剤または薬剤のADK NA−11は、複合有機燐金属塩であり、Amfine Chemical Corpから市販されている。溶融加工プロセスのための良好な安定性、および長期エージング性能を与えるために必要な、ステアリン酸カルシウムまたはDHT−4Aハイドロタルサイトのような酸スカベンジャ、および、ヒンダードフェノール類および亜リン酸エステル類のような酸化防止剤類を含む安定化添加剤類もまた組成物に加える。
【0076】
リボンブレンダで混合した後に、組成物をコンパウンド(溶融/混合)およびペレット化のため、単軸スクリュー押出機に供給する。
【0077】
バッファチューブ材料の耐圧縮性をモデル化するために、材料をそれぞれ14ゲージの銅製導線上に押し出し試験片を作成した。ワイヤサンプルの外径は約3.3mm(0.13インチ)であり、肉厚は0.76mm(0.03インチ)であった。続いて銅導体を引き抜いて、銅導体を試験片から除去した。
【0078】
続いて、試験片を、空気循環オーブン中で状態を調節したケーブルグリース(ゲル)に浸漬して、85℃で45日間の業界標準を用いてエージングした。グリース浸漬エージング後に試験片をグリースから除去し、乾燥したティッシュで表面を拭き取り、室温(約23℃)まで冷却した。
【0079】
次に、クロスヘッド速度25mm/分のインストロン試験器を用いて、ワイヤーサンプルの1パーセントセカントモジュラスを試験した。試験片をインストロン試験器で把持する前に、引き抜いた14ゲージ銅製導体(直径約1.5mm)をワイヤサンプルの各末端に挿入し、把持する能力を改良した。各材料について、5つのサンプルの平均を報告した。
【0080】
実施例2
リボンブレンダを通じて、組成物にAffinity EP8100衝撃改質剤を17パーセント添加した以外は、実施例1と同等にサンプルを製造した。
【0081】
実施例3
リボンブレンダを通じて、組成物にAffinity EP8100衝撃改質剤を15.6パーセント、および、タルクを8.0パーセント添加した以外は、実施例1と同等にサンプルを製造した。
【0082】
比較実施例4
PBT材料であり、光バッファチューブ製造向けにTiconaから市販されているCelanex 2001を用いた。
【0083】
比較実施例5
IMPP材料であり、光バッファチューブ製造向けにBP-Amocoから市販されているAcutuf 3240を用いた。
試験結果を表Iおよび図4に示す。図4中では、本発明に関するデータは三角形(Δ)で、従来のポリプロピレンは菱形()で、そしてPBTは四角形()でプロットされる。
【0084】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、ルースバッファチューブ(loose buffer tube)光ファイバーケーブルの横断面図を示す。
【図2】図2は、コアチューブ光ファイバーケーブルの一部を切り落とした図を示す。
【図3】図3は、スロッテッドコア光ファイバーケーブルの横断面図を示す。
【図4】図4は、1パーセントセカントモジュラス対ノッチ入りアイゾット値の比較プロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)結晶化度が約56重量パーセントより大きく、230℃におけるメルトフローが1から20グラム/10分の結晶性ポリプロピレン、および、
(b)衝撃改質ポリマー、
の押出ブレンドを含む、押出光ケーブル保護構成部品であり、
前記結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーが、1パーセントセカントモジュラスが23℃において最低でも約1,600Mpaであり、ノッチ入りアイゾットが23℃において最低でも約35J/mである前記押出構成部品を与えるために有効な量存在する、押出光ケーブル保護構成部品。
【請求項2】
前記押出ブレンドが炭化水素油をさらに含み、これによって以後生ずる炭化水素油吸収を減少させてゲル適合性能を改良する、請求項1の押出光学保護構成部品。
【請求項3】
前記衝撃改質ポリマーが極性基を有し、これによって炭化水素油の吸収が低減され、改良されたゲル適合性能を与える、請求項1または2の押出光学保護構成部品。
【請求項4】
前記押出部品が、100℃における24時間後の収縮が約2.0パーセントより小さいチューブである、請求項1または2の押出光学保護構成部品。
【請求項5】
(a)(i)結晶化度が56重量パーセントより大きく、および、230℃におけるメルトフローが1から20グラム/10分の結晶性ポリプロピレン、および、
(ii)衝撃改質ポリマー、
の押出ブレンドを含む、押出光ケーブル保護構成部品であり、
前記結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーが、1パーセントセカントモジュラスが23℃において最低でも約1,600Mpaであり、ノッチ入りアイゾットが23℃において最低でも約35J/mである前記押出構成部品を与えるために有効な量存在する、押出光ケーブル保護構成部品、ならびに、
(b)少なくとも1つの光ファイバー伝送媒体、を含む、光ファイバーケーブル。
【請求項6】
(a)(i)結晶化度が約56重量パーセントより大きく、230℃におけるメルトフローが1から20グラム/10分の結晶性ポリプロピレン、および、
(ii)衝撃改質ポリマー、
のブレンドを押し出すことを含む、押出光学保護構成部品の製造方法であり、
前記結晶性ポリプロピレンおよび衝撃改質ポリマーが、1パーセントセカントモジュラスが23℃において最低でも約1,600Mpaであり、ノッチ入りアイゾットが23℃において最低でも約35J/mである前記押出構成部品を与えるために有効な量存在する、押出光学保護構成部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−502455(P2006−502455A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501103(P2005−501103)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/031708
【国際公開番号】WO2004/034115
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】