説明

光学コーティング

多孔質粒子を含むか、または多孔質前駆体粒子から形成される、光学コーティング。コーティングの平均厚さは75〜400nmの範囲内であり、コーティングの表面粗度は2〜300nmの範囲内である。このコーティングは、電磁スペクトルの可視部および近赤外部にわたる広帯域の反射防止特性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質粒子を含む、または多孔質粒子から得られた光学コーティングであって、好ましくは可視光を透過し、好ましくは反射防止特性を与え、必要に応じて他のさらなる機能性を与える、光学コーティングに関する。この光学コーティングは特に、限定されないが、太陽電池、ディスプレイ、発光ダイオードおよび太陽集光器の適用に適切である。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は主に、環境に曝露されるガラス基板で製造される。典型的に、ガラス(またはポリマー)シートは、各面で入射する太陽光の約4〜5%を反射し、そのエネルギーは電池に失われる。ガラスは、この光を2%未満に減少させる反射防止コーティング層でコーティングされ得る。図1は、基板2上の従来の単層反射防止(AR)コーティング1を概略的に示す。ARコーティング1の厚さはdである。ARコーティング1の前後面で反射する光が相殺的に干渉するように進む場合、反射率は減少する。これは、コーティング1の厚さが、コーティングの媒体中の入射光の波長の4分の1に等しい場合、(垂直入射について)達成される。すなわち、
【数1】

式中、λは真空下での光の波長であり、nはコーティングの屈折率である。これは、コーティング1の屈折率nが、基板2の屈折率n未満であると仮定しているので、コーティング1と基板2との間との間の界面において反射される光のπ位相変化が存在する。もちろん、厚さdは、コーティングにおける光の波長の4分の1の任意の奇数の倍数であり得る。完全な相殺的干渉に関して、2つの反射された波長の振幅は互いに等しくなければならない。これは、屈折率が、
【数2】

これを変形すると以下
【数3】

のように一致する場合に達成され得る。
【0003】
空気に関してn=1であり、ガラスに関してn=1.5であり、コーティングの理想的な屈折率はn=1.22と与えられる。
【0004】
ディスプレイへの適用において、ARコーティングが反射率を減少させるために使用される。この反射率は、ディスプレイの見易さを低下させる、すなわちグレアを減少させる。このようなコーティングの別の望まれる特性は、広視野角にわたる反射率の減少である。このような場合、ARコーティングは、主に、プラスチック基板に適用されるが、ガラスも使用されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のARコーティングに関する多くの問題が存在する。所望の低い屈折率を有する適切なコーティング材料を見つけることは困難である。コーティングは、通常、コストがかかる処理を必要とし、かつ、太陽集光器用のプラスチック窓などのガラス以外の基板と共に使用することが困難である、化学蒸着(CVD)または物理蒸着(PVD)などの技術により適用される。しかしながら、これらの部品に使用される典型的なポリマー材料の比較的不活性な界面化学的性質により、その後のコーティング層の接着が不十分になる場合がある。
【0006】
上記の分析により、最適な反射防止特性は、1つの特定の入射角についての1つの波長でのみ達成され、他の波長および入射角において、反射防止は悪化するので、太陽電池の効率またはディスプレイの可読性は減少することが示される。広帯域ARコーティングは、異なる屈折率の多層を用いることによって達成され得るが、これは、複雑性および製造コストを増加させ、太陽電池またはディスプレイをより高価にし、採算が合わなくなる。いわゆる「自浄作用(self−cleaning)」コーティングなどの太陽電池に存在することが望まれ得る他の機能的コーティングに加えてARコーティングを適用することに関する問題も存在し得る。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題の一部またはいずれかを少なくとも部分的に軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、多孔質粒子を含む光学コーティングであって、コーティングの平均厚さが75〜400nmの範囲内であり、コーティングの表面粗度が2〜300nmの範囲内である、光学コーティングを提供する。
【0009】
好ましくは、多孔質粒子は、メソ多孔質粒子および微細孔粒子のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、多孔質粒子は、ゼオライト粒子、シリカ粒子、およびアルミノケイ酸塩粒子のうちの少なくとも1つを含む。光学コーティングは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化アンモニウムを含む溶液などのアルカリまたは塩基溶液で上記のようにコーティングを処理することによって得られ得る。
【0010】
本発明の別の態様は、
10〜70nmの範囲内の最大寸法の混合物を有する多孔質粒子の混合物を提供する工程と、
粒子を基板に付与して、75〜400nmの範囲内の平均厚さを有する層を形成する工程と、
を含む、光学コーティングを生成する方法を提供する。
【0011】
本発明は、入射光の波長未満のスケールで種々の厚さのテクスチャード加工表面を提供することによってARコーティングの帯域通過を広げる。
【0012】
本明細書において、用語「光学」は、例えば、「光学コーティング」に使用されるが、この用語は、可視光のみを限定することを意図しない。必要な場合、本発明は、例えば、少なくとも紫外線(UV)および赤外線(IR)を含む、電磁スペクトルの他の部分に適用されてもよい。
【0013】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例示の目的のみのために記載する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、基板に設けられる従来の均一な厚さの単層ARコーティングの概略図である。
【図2】図2は、本発明を具現化する第1の実施例による光学コーティングの電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、本発明を具現化する第1の実施例によるARコーティングでコーティングされたホウケイ酸ガラス基板について(下側のプロット)、およびコーティングされていない基板について(上側のプロット)の入射光(nm)の波長に対する反射率(%)のグラフである。
【図4a】図4aは、平面図における、本発明を具現化する第2の実施例による光学コーティングの電子顕微鏡写真である。
【図4b】図4bは、断面図における、本発明を具現化する第2の実施例による光学コーティングの電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、本発明を具現化する第2の実施例によるARコーティングでコーティングされたホウケイ酸ガラス基板について(下側のプロット)、およびコーティングされていない基板について(上側のプロット)の入射光の波長(nm)に対する反射率(%)のグラフである。
【図6】図6は、断面図における、本発明を具現化する第3の実施例による光学コーティングの電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、本発明を具現化する第3の実施例によるARコーティングでコーティングされたガラス基板について(下側のプロット)、およびコーティングされていない基板について(上側のプロット)の入射光の波長(nm)に対する反射率(%)のグラフである。
【図8】図8は、本発明を具現化する第4の実施例によるARコーティングでコーティングコーティングされたガラス基板について(下側のプロット)、およびコーティングされていない基板について(上側のプロット)の入射光の波長(nm)に対する反射率(%)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
光学コーティングの好ましい実施形態は、反射防止コーティングにおける多孔質ナノ粒子の使用または反射防止コーティングを形成するための前駆体として多孔質ナノ粒子の使用に関する。その粒子は、開口または多孔質構造を有する。多孔質粒子は、反射防止コーティングとして使用される。なぜなら、その材料の多孔性が、屈折率を自然に減少させるからである(すなわち、屈折率は空気と粒子の材料の平均になるからである)。そのため、それらは、表面に適用され得、ガラスと空気との間の中間に近い屈折率を有するという要件を満たす。粒子は、メソ多孔質(2nmより大きい孔径を有する)であっても、微細孔性(2nm未満の孔径を有する)であってもよい。一般に、粒子は、最大寸法で100nm未満であり、10nm未満の孔径を有する規則正しい細孔構造を有する。
【0016】
多孔質粒子のための適切な材料としては、シリカまたはアルミノケイ酸塩材料(その例はゼオライトである)が挙げられる。多孔質粒子のための好ましい材料は、純粋なシリカまたは低レベルのアルミナを有するシリカに基づく。特定の例としては、100%シリカであり、P6/mmmの空間群を有するLTLゼオライト、またはLTAゼオライトが挙げられる。他の例は、それらの大きな孔径(例えば2〜10nmの範囲の孔径)のために、ゼオライトとして分類されていない、メソ多孔質材料である。好ましいメソ多孔質材料は純粋なシリカからなり、好ましい孔径は3nmである。適切な多孔質粒子は商業的に利用可能である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、多孔質シリカ粒子またはアルミノケイ酸塩粒子の混合物が、広域伝送帯域幅を有する反射防止コーティングを作製するために使用される。粒子は、ARコーティングについての帯域幅を改良するために、好ましくは10〜70nmの範囲に及ぶ、異なるサイズ(最大寸法)の混合物を含むが、40nmおよび50nm(または10〜70nmの範囲内の他の中間値)の粒子の混合物を含んでもよく、それらは、最終的な薄膜の粗度およびそれによる伝送帯域幅を低くするが、改良された耐摩耗性を有する。粒子は、ガラスまたはポリマーなどの基板上の層を作製するために使用され、それらの粒子は、75〜400nmの範囲の平均厚さ、2〜300nmの範囲の表面粗度および1.1〜1.4の範囲の屈折率を有する。厚さについてのより好ましい値は100〜200nmの範囲である。より好ましい表面粗度は、10〜150nm、最も好ましくは20〜80nmの範囲である。
【0018】
層は、噴霧、スピンコーティングまたはディップコーティングなどの湿式処理技術によって、多孔質粒子および結合材料の懸濁液を用いて基板上に形成される。結合剤は、コーティングに機械的強度を与え得る。結合剤の好ましい実施形態は、ケイ酸塩ベース、シリカ、シリコーンベース、シロキサンベースまたはアクリル酸塩ベースである。表面粗度は、開始粒子の寸法の範囲のために層の堆積時に自然発生的に形成する。粒子は、互いに結合され、好ましくはシラン化学物質を用いて、ロバスト構造において一緒に結合される。好ましい実施形態において、オルトケイ酸テトラエチルが、水、アルコールおよび酸とともに配合され、前処理工程において基板上にスピンコーティングされ、基板に粒子を結合する界面領域を提供する。光学層は、粒子を一緒に結合するために、任意選択に、0.1M KOH浴、0.1M NaOH浴または0.1M NHOH浴などのアルカリまたは塩基溶液を用いて、さらなる化学浴処理に供されてもよい。化学浴処理は、好ましくは、限定されないが、水ベースの溶液である。化学浴処理の後、薄膜の構造を変化させて、引っかき抵抗性を増加させる。このような層は、スペクトルの可視部全体にわたって(400〜700nmの範囲の波長)反射率を、従来のガラス基板で80%以上減少させる。
【0019】
表面処理の好ましい実施形態は、実施される表面修飾が化学官能基を、結合剤系を用いて共有結合またはイオン結合のいずれかで化学的に結合できる基板表面に導入する実施形態である。そのような官能基の選択は個々の当業者に公知である。適切な表面修飾技術としては、限定されないが、プラズマ、コロナまたは火炎処理あるいは表面と、有機ラジカル、カルベンまたはナイトレンなどの反応中間体との反応が挙げられる。
【実施例】
【0020】
実施例1:メソ多孔質シリカナノ粒子に基づく反射防止膜
本発明を具現化する、メソ多孔質シリカナノ粒子に基づいたARコーティング、およびそれを製造する方法の特定の例は以下の通りである。メソ多孔質シリカからなる粒子は、以下のように粒子懸濁液からホウケイ酸ガラス基板上で150nm層に形成する。100μlのメタノール中の0.75% w/vメソ多孔質シリカを、4000rpmで10秒間、ガラス基板上で回転させる。粒子は主に立方体または長方形であり、典型的に25〜50nmの範囲の最大寸法を有する異なるサイズの粒子の混合物を含む。白色光干渉法によって測定する場合、表面粗度は80nmである。干渉法に関するさらなる情報は、http://www.optics.arizona.edu/jcwyant/pdf/meeting_papers/whitelightinterferometry.pdfに見出され得る。図2は層の電子顕微鏡写真であり、図3は、コーティングされていないガラス基板(上側のプロット)と比較した、基板上の層(下側プロット)についてのスペクトルの可視域におけるほぼ垂直入射における反射率のグラフである。
【0021】
層での分光偏光解析法測定は、屈折率(500nmにおける)が1.10〜1.15の範囲内にあることを示す。
【0022】
実施例2:膜に対する前駆体としてメソ多孔質シリカナノ粒子から得た反射防止膜
25〜50nmのメソ多孔質シリカ粒子の膜を、2:40:1のTEOS:イソプロピルアルコール:0.1M HClのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)溶液で処理したガラス面上でスピンコートする。シリカ粒子をメタノール中の0.75%w/v粒子として懸濁し、100μlを4000rpmで回転させている基板の表面に流して膜を生成する。乾燥させた後、コーティングを、80℃にて24時間、0.1M KOH溶液に浸し、ASTM Standard Pencil Hardness Test D3363−05を5Hで通過した最終的な膜を生成する。図4aにおいて膜の平面図を示し、図4bにおいて断面を示す。反射率(下側のプロット)を図5に示し、550nmで最小が0.25%となり、コーティングされていない基板の反射率(上側のプロット)も比較のために図5に示す。KOH処理は、多孔質粒子を含む構造が、膜の最終構造に対する前駆体として作用することを示す、構造のかなりの変化を示す。
【0023】
実施例3.反射防止コーティングとしてのLTLナノゼオライト膜
粒子サイズ10〜70nmの1%w/v LTLゼオライトの溶液を、25%ゼオライト調合物、25%メタノールおよび50%イソプロピルアルコールとして配合する。この溶液を、60秒間1000rpmでガラス基板上にスピンダウンする。その膜を乾燥させ、スピニングプロセスを、5つの層が形成されるまで繰り返す。図6において断面で膜の構造を示し、透明なスライドガラスと比較して反射特性を図7に示す。
【0024】
実施例4.表面およびバルク結合剤材料を組み込んだメソ多孔質シリカナノ粒子から得た反射防止コーティング
メタノール中の1.4%w/vのメソ多孔質シリカの溶液を、粒子のソース(溶液A)として使用する。メソ多孔質シリカ粒子のサイズ範囲は20〜30nmである。100μlのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、2mlのイソプロパノール(IPA)および50μlの塩酸を含む結合剤溶液を調製する(溶液B)。ガラス基板を、60℃にて10分間アセトン、60℃にて10分間IPAで洗浄することによって調製し、次いで乾燥させる。基板の寸法は25mm×25mmである。反射防止コーティングを、スピンコーターを用いて調製する。基板を4200rpmで回転させ、270μlの溶液Bを、25秒間回転を継続している基板に堆積させる。この後、270μlの溶液Aを、4200rpmで25秒間回転させている基板に堆積させる。次いで、これらの2つの堆積工程を繰り返して、正確な光学および機械特性を有する最終的なコーティングを得る。ガラス基板と比較して反射特性を図8に示す。
【0025】
適用
光学コーティングの好ましい適用は、太陽光電池の上部のガラス窓である。太陽電池は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜シリコン、およびハイブリッド技術などの任意の適切な種類であってもよい。光学コーティングは、太陽光を収集し、太陽電池に方向付けるために使用される、太陽集光器として公知の他の光学部品に使用されてもよい。そのような部品のための適切なポリマー材料としては、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレン(PEN)などのポリエステル、および二軸配向されたポリプロピレン(BOPP)などのポリオレフィンが挙げられる。しかしながら、本発明を具現化する光学コーティングはまた、一般のディスプレイ、および例えば建物の温度管理のための一般の窓への適用に使用されてもよい。本発明を具現化する光学コーティングはまた、ガラスまたはプラスチック材料製かに関わらず、眼科用要素、例えば眼鏡レンズに利用されてもよい。
【0026】
光学コーティングを反射防止に優れたものとする同様の特性はまた、もちろん、コーティングが、発光適用、特に広帯域発光、例えばカラー表示、一般の照明、特に白色照明などにおいて良好な効果を達成するために利用され得ることを意味する。これらの場合、基板は、ガラスまたはプラスチック材料製、例えばポリカーボネートおよびポリメチルメタクリレート(PMMA)であってもよく、これらの材料はもちろん、太陽電池にも使用されてもよい。
【0027】
本発明のさらなる実施形態はまた、上記の外層に反射防止成分も含むナノ粒子および薄膜に基づいた多層コーティングを含む。光管理特性を組み合わせて一体化するこの能力は特有であり、ナノ粒子ベースのARコーティングの結果としてのみ利用可能である。このように、材料の特定の所望の光学特性を使用することができるが、現在までの太陽電池および他の窓におけるこれらの材料の使用を不可能にする材料の屈折率の変化の影響を最小化する。
【0028】
ここで、特定のさらなる実施形態を、利用される反射防止に加えて光学および/または生理化学的特性を参照して記載する。
【0029】
1.紫外線遮蔽
一部の種類の太陽電池、例えば色素増感太陽電池は、UV光がデバイス性能に対する有害作用に起因して遮られることを必要とする。使用される典型的な化合物としては、TiOおよびZnOが挙げられる。しかしながら、単に、TiO層(屈折率2.7)でガラス基板をコーティングするだけで、入射光下で窓の反射率を21%まで増加させることができる。従って、上記の反射防止コーティングのさらなる機能性が、電池効率を維持するのに使用される。
【0030】
2.入射光の下方変換
太陽電池において効果を減少させる主な発生源は、吸収型半導体の伝導帯内の電荷キャリアの熱化によって生成されるフォノンの結果として生じる。これは、半導体窓の上部に下方変換層を含むことによって減少され得る。これは、典型的に、UVから青、青から緑、UVから赤等に変換する。高周波光子から下方変換する任意の材料が有用である。それらの材料は、典型的に、YAG:Ce、YSiO:Ceまたは他の発光性酸化物などの蛍光体材料に基づく。これらの材料はガラスより高い屈折率を有するので、それらは、本発明による反射防止コーティングでコーティングされ得る。
【0031】
本発明の特定の実施形態は、上記のように電池からUV光を除去することを必要とする色素増感太陽電池に関する。しかしながら、太陽電池効率は、入射する太陽のUV光を、ほとんど損傷を受けない波長、特に400〜450nmの範囲の青色光に変換することによって増加され得る。これは、近紫外線(290〜400nm)の広帯域吸収を有する発光性材料を用い、小さいストークシフトにより400〜450nmの発光に変換することによって達成され得る。典型的に、材料としては、CaWOおよびYSiO:Ceが挙げられ、それらは近紫外線により励起される青色発光体である。上記のように、それらは、上記のARコーティングと共に使用される。
【0032】
3.疎水性自浄作用コーティング
太陽電池表面の有機物質およびダストによる汚染は、電池外部効率および高価な浄化制度(regime)の実施の著しい減少を引き起こす重要な問題である。疎水性表面は、電池表面から流れる雨水を改良する。これは、ダストおよび有機物質を捕捉し、窓の透過特性を保持する働きをする。反射防止に加えて、コーティングは表面に対する化学的修飾を含み、互いに共有結合する疎水性尾部成分および反応性頭部成分を含有する基の共有結合挿入により、表面を恒久的に疎水性にする。このような疎水性物質は、典型的に、限定されないが、芳香環、シリコーンワックス、有機構造中にフッ素原子を有しても有さなくてもよい種々の長さのアルキル鎖などの非極性またはフッ素化化合物である。適切な反応性頭部基としては、限定されないが、シラン、シラザン、ラジカル、カルベンおよびナイトレンが挙げられる。
【0033】
4.入射紫外線の量子切断
量子切断とは、入射光子が、発光性材料(必ずではないが、通常、希土類元素に基づく)によって吸収され、次いで100%より高い量子効率を生じる2つの光子を放出する現象を意味する。しかしながら、入射光子のエネルギーが、放出される光子のエネルギーの2倍以上でなければならないので、エネルギーは保存される。この現象の太陽電池への適用は明らかであり、半導体吸収体のバンドギャップより高いエネルギーを有する2つの光子に分かれる入射光子は、存在する量子切断層を用いて光子当たり2倍の電流を生じる。この層は、電池内の光を最大化するために反射防止層と合わされる。適切な量子切断システムは、1つ以上の希土類イオンと共に、TiOなどの大きなバンドギャップ半導体に基づき得る。
【0034】
5.赤外線反射
ARコーティングと共に赤外線反射層は、モジュールおよびコンセントレータ光起電システムの両方で電池内の伝熱を管理するために使用され得る。太陽電池内の発熱により、電子を散乱し、抵抗率を増加させるように作用する半導体内のフォノンを生じる。使用され得る適切なIR反射化合物としては、インジウムスズ酸化物、亜鉛アルミニウム酸化物、フッ素をドープしたスズ酸化物が挙げられるが、他のn型およびp型の大きなバンドギャップ半導体が使用されてもよい。
【0035】
6.光触媒反射防止コーティング
自浄作用ガラスはまた、表面状態を介して再結合し、有機物汚染を分解するフリーラジカルを生成する高い可能性を有する電子ホール対を生成するためにUV光子を吸収する、二酸化チタンの薄層でコーティングすることによって作製されてもよい。これは、もちろん、太陽電池について利点があるが、しかしながら、二酸化チタンの高い屈折率は、ガラスが20%以上の反射率を有することを意味する。さらなる複雑性は、二酸化チタンが、効果的であるように有機汚染物質と直接接触しなければならないということであるので、TiOをARコーティングで単にオーバーコートするだけではできない。有効なコーティングは、TiO粒子と混合される本明細書に記載される種類の多孔質ナノ粒子を用いて作製されることができ、ナノ粒子の多層が下に置かれ、TiO対多孔質粒子の比は、ガラス面から離れて移動するので、高くから低く変化する。従って、TiO対多孔質粒子の比の勾配が存在し、ガラス基板との界面において最大、上部(曝露)面において最小となる。これらの層は多孔性であるので、TiO粒子に接近することが維持されるが、屈折率は、コーティングにわたって高くから低くなり、これによって、反射防止となる。
【0036】
上記のさらなる機能層は、もちろん、多孔質粒子に基づいたARコーティングと共に互いに任意の組み合わせで使用されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シリカ粒子を含む光学コーティングであって、前記コーティングの平均厚さは75〜400nmの範囲内であり、前記コーティングの表面粗度は2〜300nmの範囲内である、光学コーティング。
【請求項2】
前記コーティングの屈折率は1.0〜1.4の範囲内である、請求項1に記載の光学コーティング。
【請求項3】
反射防止コーティングである、請求項1または2に記載の光学コーティング。
【請求項4】
450nm〜700nmの範囲の波長を有する入射光についての反射率は、2%未満、好ましくは1.5%未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学コーティング。
【請求項5】
前記コーティングの表面粗度は、10〜150nmの範囲内、および任意に20〜80nmの範囲内である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学コーティング。
【請求項6】
以下のさらなる層:紫外線遮断層、下方変換層、疎水性層、量子切断層、赤外反射層または光触媒層のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学コーティング。
【請求項7】
前記多孔質粒子は、1つの前記さらなる層の表面に提供される、請求項6に記載の光学コーティング。
【請求項8】
前記多孔質粒子は、少なくとも1つの前記さらなる層に組み込まれる、請求項6に記載の光学コーティング。
【請求項9】
前記多孔質粒子は、メソ多孔質シリカ粒子を含む、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の光学コーティング。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の光学コーティングを含む、太陽電池。
【請求項11】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の光学コーティングを含む、ディスプレイ。
【請求項12】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の光学コーティングを含む、照明部品。
【請求項13】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の光学コーティングを含む、眼科用要素。
【請求項14】
光学コーティングを生成する方法であって、
10〜70nmの範囲内の最大寸法の混合物を有する多孔質シリカ粒子の混合物を提供する工程と、
前記粒子を基板に付与して、75〜400nmの範囲内の平均厚さを有する層を形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
前記シリカ粒子の周囲に結合剤材料を添加する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結合剤は、ケイ酸塩ベース、シリカ、シリコーンベース、シロキサンベースまたはアクリル酸塩ベースのうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子を前記基板に化学結合するために前記基板を前処理する工程をさらに含む、請求項14〜16のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記多孔質粒子は、メソ多孔質シリカ粒子を含む、請求項14〜17のうちのいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−521014(P2012−521014A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500306(P2012−500306)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000490
【国際公開番号】WO2010/106326
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511168235)オックスフォード エナジー テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】