説明

光学シート、表示装置、及び光学シートの製造方法

【課題】より簡易な構成で正面輝度とコントラスを両立して向上させることが可能な光学シートを提供する。
【解決手段】隣接する層との界面で外光の少なくとも一部を全反射して偏向可能とする偏向部14、及び偏向部の基材となる基材部13を有する偏向層12と、隣接する層であり、偏向部より低い屈折率である低屈折率層と、を備え、偏向部は、低屈折率層側に向けて突出する透光性を有する部材である単位光学要素14aを複数具備するとともに、複数の単位光学要素は基材部の面に沿って並列して配置され、偏向層及び低屈折率層の少なくとも一方には、可視光の波長領域の少なくとも一部を吸収することが可能な波長フィルタ手段が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像光や外光を適切に透過・吸収し、観察者に質の高い映像を提供する光学シート、表示装置、及び当該光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と記載することがある。)を用いたプラズマテレビ等の表示装置では、PDPよりも観察者側に光学シートが配置されている。この光学シートは、観察者に質の高い映像を提供する機能を有している。
【0003】
映像の質にはさまざまな要素があるが、その中に正面輝度及びコントラストがある。正面輝度は画面から正面方向へ出射される映像光の明るさを意味する。正面輝度が低ければ観察者は暗い画面との印象を受けるため、質の良い映像光とはいえず、表示装置として一定以上の正面輝度を確保する必要がある。一方、コントラストは映像において明るい部分と暗い部分との明暗の比を意味する。コントラストが高い場合には、物の輪郭等が明確に表現され、いわゆるメリハリのある映像となる。逆にコントラストが低い場合には、全体的に同じ明るさとなる傾向となるため、物の輪郭がぼやけてメリハリがない映像となる。従って、質の良い映像光を得る観点からは、コントラストについても一定以上の高さを確保することが必要である。
【0004】
従来において、コントラストを向上させるために、光学シートの1つの層としてNDフィルタ層、調色フィルタ層、若しくはネオン光吸収層、又はこれらを組み合わせた層を含ませることがあった。これらNDフィルタ層、調色調整フィルタ層、ネオン光吸収層は、いずれも光量を減少させることができる性質を有する層である。そのなかでも、光量を減少させるに際し、光の波長に関係なく光量を減少させることができる層がNDフィルタ(Neutral Density Filter)層である。一方、所定の範囲の波長の光量を減衰させることができる層が調色調整フィルタ層、及びネオン光吸収層である。以下これらを総称して波長フィルタ層と記載する。また、このような機能を「波長フィルタ機能」と記載することもある。
【0005】
このような波長フィルタ層を備える表示装置が例えば特許文献1に開示され、これは、粘着剤に波長フィルタ機能を有するというものである。外光は光学シートへの入射により波長フィルタ層(粘着剤層)を一度透過し、その後、表示装置のいずれかの部位で反射して観察者側に出射される際にもう一度波長フィルタ層(粘着剤層)を透過する。これにより少なくとも2回、波長フィルタ層を透過する際に外光が吸収され、外光が多く吸収されてコントラストを向上させることができる。一方、映像光は映像源から観察者側に出射される際に一度波長フィルタ層を透過するのみである。従って、波長フィルタ層を設けることにより、映像光の輝度低下に比べてコントラストの向上を大きく確保することができ、ある程度において、正面輝度及びコントラストの確保は可能であった。
【0006】
一方、特許文献2、特許文献3には、正面輝度及びコントラストを向上させることができる光学シートが開示されている。これには基材層の一方の面に所定の間隔で形成された光透過部(プリズム部)と、該光透過部(プリズム部)間に配置された楔形の光吸収部と、を備える構成が表れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開公報 WO 2008/038729
【特許文献2】特開2009−080153号公報
【特許文献3】特開2009−080193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のような波長フィルタ層によって高いコントラストを得るためには透過率を低くする必要があり、その分映像光の輝度の低下が大きくなった。そして当該映像光の輝度を高くするために映像源そのものの出力を高くして明るくするという手法をとる必要があり、消費電力の増大を招いていた。
【0009】
一方、特許文献2、特許文献3のような構成の光学シートは、正面輝度とコントラストを両立して向上させることができるが、構造が複雑であった。このような微小でかつ高精度な構造では工程や品質管理に手間がかかり、コストを低く抑えることに困難があった。
【0010】
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、より簡易な構成で正面輝度とコントラストを両立して向上させることが可能な光学シート、及び表示装置を提供する。また、このような光学シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明について説明する。
【0012】
請求項1に記載の発明は、表示装置に備えられて映像源より観察者側に配置され、映像源からの映像光を制御して観察者側に出射することが可能な複数の層を有する光学シートであって、隣接する層との界面で外光の少なくとも一部を全反射して偏向可能とする偏向部、及び偏向部の基材となる基材部を有する偏向層と、前記隣接する層であり、偏向部より低い屈折率である低屈折率層と、を備え、偏向部は、低屈折率層側に向けて突出する透光性を有する部材である単位光学要素を複数具備するとともに、複数の単位光学要素は基材部の面に沿って並列して配置され、偏向層及び低屈折率層の少なくとも一方には、可視光の波長領域の少なくとも一部を吸収することが可能な波長フィルタ手段が含まれている、光学シートである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学シートにおいて、単位光学要素は、断面において基材部の面の法線に対して傾斜する少なくとも2つの面を具備するものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学シートにおいて、低屈折率層には粘着剤が含有されているものである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シートにおいて、偏向部と低屈折率層との屈折率差が0.05以上である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学シートにおいて、偏向層のうち、低屈折率層が積層された側の面とは反対側の面には電磁波遮蔽層及びハードコート層の少なくとも一方が配置されるものである。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学シートにおいて、偏向層の基材部のうち、偏向部が配置された側とは反対側の面には電磁波遮蔽機能を有する導電体メッシュ層が形成されているものである。
【0018】
請求項7に記載の発明は、映像源と、該映像源の観察者側に配置された請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学シートと、を備え、低屈折率層が偏向層よりも映像源側となるように配置される表示装置である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学シートを製造する方法であって、偏向層の単位光学要素の形状に対応した表面形状を有する金型ロールと、ニップロールとの間に偏向層の基材部となる基材を挿入し、基材と金型ロールとの間に偏向部を構成する組成物を充填するとともに、該組成物に紫外線を照射して組成物を硬化させて偏向部を形成する工程を含む光学シートの製造方法である。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学シートを製造する方法であって、偏向層の断面形状に対応する孔を有する金型に、加熱により溶融した偏向層を構成する組成物を加圧して圧入し、金型の孔から流出した組成物を冷却して偏向層を形成する工程を含む光学シートの製造方法である。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項3に記載の光学シートを製造する方法であって、粘着剤を含む低屈折率層を構成する組成物を剥離シートに塗布し、その後、組成物を偏向層に積層する工程を含む光学シートの製造方法である。
【0022】
請求項11に記載の発明は、請求項3に記載の光学シートを製造する方法であって、粘着剤を含む低屈折率層を構成する組成物を直接に偏向層に塗布する工程を含む光学シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光学シート及び表示装置によれば、より簡易な構成で正面輝度とコントラストを両立して向上させることが可能となる。
また、本発明の光学シートの製造方法によれば、上記した光学シートをさらにより簡易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第一実施形態にかかる光学シートの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図2】図1に示した光学シートの一部を拡大して示した図である。
【図3】第二実施形態にかかる光学シートの断面の一部を拡大して示した図で、図2に相当する図である。
【図4】第三実施形態にかかる光学シートの断面の一部を拡大して示した図で、図2に相当する図である。
【図5】第一実施形態にかかる光学シートを備える表示装置を模式的に示した分解斜視図である。
【図6】映像源ユニットの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図7】光路例を説明する図である。
【図8】第一実施形態にかかる光学シートを備える表示装置の他の例を説明する図である。
【図9】第二実施形態にかかる光学シートを備える表示装置を説明する図である。
【図10】第三実施形態にかかる光学シートを備える表示装置を模式的に示した分解斜視図である。
【図11】映像源ユニットの断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
【図12】光路例を説明する図である。
【図13】実施例における評価の条件を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明は当該実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1は第一実施形態にかかる光学シート10の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図1では、見易さのため繰り返しとなる符号は一部省略することがある(以降に示す各図において同じ。)。図2には、図1のうち粘着剤層11及び偏向層12の一部を拡大した図を示した。
【0027】
光学シート10は、波長フィルタ機能を有する低屈折率層を兼ねる粘着剤層11、偏向層12、電磁波遮蔽層15、及びハードコート層16を備えている。以下に各層について説明する。
【0028】
粘着剤層11は、後で詳しく説明する偏向層12と組み合わせられる低屈折率層としての機能と、光学シート10をPDPやガラス層等の他の層へ適切に粘着させる機能と、所望の波長の光を減衰して透過させる波長フィルタ機能と、を兼ね備える層である。
本実施形態では、粘着剤層11にこれら複数の機能を具備する構成とした。ただし、後で他の実施形態等により説明するように、必ずしもこれら複数の機能を1つにまとめて1つの層にする必要はない。これらの機能がそれぞれ別の層により構成されていてもよく、また一部の機能が別の層に含まれるものあってもよい。
しかしながら、このように粘着剤層11に上記した複数の機能を具備することにより、効率良く層構成をより簡易にすることができる利点があるので、かかる観点から本実施形態では粘着機能を有する層に、上記した他の機能も具備させることとした。
【0029】
そのため、粘着剤層11は、粘着剤と、該粘着剤に含有される光吸収手段を含んでいる。光吸収手段は、所望の波長領域の光を吸収することのできる1種以上の光吸収剤や光吸収色素等の光吸収作用を有する波長フィルタ機能を奏する手段である。
【0030】
粘着剤は光学シート10をPDPやガラスパネル等の他の部材に光学シート10を粘着固定する物質である。粘着剤として用いられる材料は特に限定されることはないが、表示装置に組み込まれる光学シートに用いられる粘着剤として広く使用され、光学特性、安定性、積層し易さ等を有するとともに安価に入手可能な材料を用いることが好ましい。
これには例えばアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物を組み合わせた粘着剤を挙げることができる。
【0031】
また、粘着剤層11に用いられる粘着剤は、粘着剤層11が、後述するように偏向層12のうち偏向部14の単位光学要素14aよりも低い屈折率となるように構成される。
【0032】
光吸収手段は、所望の波長領域の光を吸収することのできる物質であり、その材料としては、減衰させるべき波長の光を吸収することのできる公知のものを用いることができる。1種類の光吸収手段で全ての波長領域の可視光を減衰させることができるとは限らないので、減衰させることのできる光の波長領域を適切に網羅するため、複数種類の光吸収手段を適用してもよい。以下に光吸収手段の例を挙げる。
【0033】
波長550nm以上640nm以下の光を吸収することができる光吸収手段として、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系の色素等を挙げることができる。これによれば、この波長領域の光を吸収して減衰させることが可能となる。
ここで、この波長領域はPDPから放射されるネオン光、すなわちネオン原子の発光スペクトル帯域を含むので、当該光吸収手段を含めれば、いわゆるネオン線吸収機能も具備するものとなる。
【0034】
その他、可視領域である380nm以上780nm以下の範囲内のいずれかに最大吸収波長を有する光吸収手段は公知のものを用いることができる。これには例えば特開2000−275432号公報、特開2001−188121号公報、特開2001−350013号公報、特開2002−131530号公報等に記載の手段を挙げることができる。さらにこの他にも、黄色光、赤色光、青色光等の可視光を吸収するアントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の手段を挙げることもできる。
ここで、このような光吸収手段を含めれば、PDPからの発光の色純度や色再現範囲、電源OFF時のディスプレイ色等の改善も併せて行うことができ、いわゆる色調調整機能も具備するものとなる。
【0035】
また、光吸収手段として光吸収性の着色粒子を用いてもよい。これには例えばカーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等がある。
【0036】
すなわち、粘着剤層11は、粘着剤を構成する組成物中に光吸収手段を混濁させることにより製造することができる。
【0037】
偏向層12は、外光を偏向して粘着剤層11に外光を入射させる機能を有している。偏向層12は、図1、図2に良く表れているように、基材部13及び偏向部14を具備し、偏向部14には複数の単位光学要素14aが設けられている。
【0038】
基材部13は、透光性を有するとともに、偏向部14の基材となる部位であり、偏向部14の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材部13を形成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
【0039】
偏向部14は、透光性を有する複数の単位光学要素14aを備えてなる部位である。各単位光学要素14aは、粘着剤層11側に向けて凸となるように突出して形成されている。本実施形態では断面が略三角形である部位を有し、その斜辺を形成する第一面14b、及び第二面14cを具備している。そして単位光学要素14aは、図1に表れた断面を有して紙面奥/手前方向に延びるように形成され、該延びる方向に直交する方向に並列されている。
【0040】
具体的には、図2に示したように、第一面14bが光学シート10の観察者側シート面法線となす角をθ、第二面14cが光学シート10の観察者側シート面法線となす角をθとしたとき、θ≧θであることが好ましい。本実施形態ではθ>θである。
【0041】
θ、θの大きさは特に限定されるものではないが、θは20度より大きく65度以下であることが好ましく、より好ましくは、30度以上50度以下である。
θが20度以下であると、偏向層の形状がより鋸刃状となり、金型製作が困難になること、及び、光吸収層を積層する際の製造上の困難が生じやすくなる。一方、θが65度より大きいと、後述するように全反射させることができる外光が少なくなり、効率よく外光を吸収することができなくなる虞がある。
【0042】
θについては、0度≦θ≦θであることが好ましい。これは一般に天井側からの外光の方が、床側からの外光より多いため、第二面14cから光を効率よく粘着剤層11に光を通すためθはθ以下であることが好ましいことによる。また製造の困難の観点からθは0度以上であることが好ましい。
【0043】
単位光学要素14aのピッチは10μm以上200μm以下であることが好ましい。ピッチが10μmより小さいと製造の困難がある。一方、ピッチが200μmより大きくなるとモアレ干渉縞が発生しやすくなり、使用する材料が増加する傾向にある。
【0044】
ここで偏向部14は基材部13と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。ただし屈折率差があるとこの界面で光が偏向されてしまうので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差がないことが好ましい。同じ材料の場合には、偏向部14と基材部13とを一体に形成することもできる。また、偏向部14と基材部13とが異なる材料である場合、及び同じ材料である場合であっても、基材部13と偏向部14が別に形成され、なんらかの手段により積層されてもよい。
偏向層12の形成方法の例は後で説明する。
【0045】
偏向部14を形成する材料は特に限定されることはないが、具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
【0046】
ただし、偏向部14のうち単位光学要素14aは上記した粘着剤層11よりも高い屈折率を有している。これにより単位光学要素14aと粘着剤層11との界面において外光の一部を全反射させて偏向することができる。詳しくは後で説明する。
当該屈折率の差は特に限定されるものでないが、0.05以上であることが好ましい。
【0047】
図1に戻って電磁波遮蔽層15について説明する。電磁波遮蔽層15は、PDP等から発生した電磁波を遮蔽する機能を有するものである。電磁波遮蔽層としては、従来公知の各種形態のものを適用可能であり、後で例示する導電体メッシュ層の他、銀、ITO(酸化錫インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)等の透明な連続体(メッシュ開口部非形成の)薄膜を用いることも可能である。ただし、透明性と電磁波遮蔽性を両立させる観点からは、金属等の導電体メッシュ層が好ましい。
【0048】
本実施形態では、電磁波遮蔽層15は図1に示すように、上記した偏向層12の基材部13を基材とし、ここに積層された導電体メッシュ層15aを具備して構成されている。
通常、公知の電磁波遮蔽層は、透明基材とその面上に積層された導電体メッシュ層とを有する構造が一般的である。これに対して本実施形態では偏向層12の基材部13が電磁波遮蔽層の透明基材の機能をも兼ねている。従って、本実施形態によれば、層構成を簡素化することができる。
ただし、従来の電磁波遮蔽層のように別に設けられた透明基材上の導電体メッシュ層を積層した公知の電磁波遮蔽層の形態を適用することを妨げるものではなく、このような電磁波遮蔽層を偏向層12に積層してもよい。
【0049】
導電体メッシュ層15aは、導電性を有することで電磁波遮蔽機能を発揮する層であり、メッシュを構成する線状の部材(ライン)自体は不透明性だが、このラインがメッシュ状(微細な格子状)となっていることにより開口部が形成されて光を透過できる。
【0050】
メッシュの形状は特に限定されることはないが、開口部の形状が正方形である例が代表的である。その他例えば、三角形、四角形、多角形、円形、楕円形等でもよい。
メッシュのライン幅はメッシュの非視認性の観点から100μm以下、より好ましくは50μm以下である。ただし、電磁波遮蔽機能の確保、破断防止の観点から5μm以上とするのが良い。
メッシュの開口部の幅は100μm以上、より好ましくは150μm以上である。但し、電磁波遮蔽機能の確保の観点から最大3000μmが好ましい。
また、ラインの幅と間口部の幅との関係は光透過性の観点、及びハードコート層を形成するに際して開口部内に気泡が残留し難い観点から、開口率が60%以上となるようにするのが好ましく、電磁波遮蔽機能の確保の観点から97%以下となるようにするのが好ましい。なお、開口部が正方形の場合には、開口率=[(間口部の幅)/(ラインのピッチ)]×100%で定義される。
導電体メッシュ層15aの厚みは、電磁波遮蔽機能の観点から1μm以上20μm以下が好ましいが、薄膜とする点、画像の視認性、ハードコート層形成時における気泡混入の観点、工程が短く歩留りが良い点、等から、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下である。
【0051】
このような導電体メッシュ層15aは公知の方法により形成することができる。例えば、偏向層12の基材部13に導電インキをメッシュパターン状に印刷し、形成された導電インキ層上に金属メッキする方法を挙げることができる。
【0052】
また導電体メッシュ層15aには公知の導電体メッシュ層のように、黒化層や防錆層を設けてもよい。
黒化層は外光吸収、画像の視認性向上、コントラスト向上等を目的に設けることができる。このような黒化層は可視光領域に亘って光吸収性を有する物質を付与する等により設けることができる。
防錆層は、錆を防止し、黒化層の脱落や変形を防止することを目的に設けられる。防錆層としては、例えば、ニッケル、亜鉛、及び/又は銅の酸化物、若しくはクロメート処理層を適用できる。
【0053】
次にハードコート層16について説明する。ハードコート層16は、表面保護層やHC層とも呼ばれることがあり、光学シート10の観察者側表面を保護する機能を有する層である。ハードコート層16は透明な樹脂層として形成することができ、ハードコート層16は擦り傷、表面汚染に対する耐性の観点から、硬化性樹脂が硬化してなる樹脂硬化層として形成することが好ましい。
具体的には電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能に応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系などが挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマーモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー乃至は(メタ)アクリル酸エステルプレポリマーなどからなる。さらに3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
【0054】
また、ハードコート層16には、耐汚染性向上の観点から、シリコーン系化合物、フッ素系化合物などを添加してもよい。
【0055】
以上説明した各部材を備える光学シート10は例えば次のように製造することができる。
【0056】
偏向層12は金型ロールを用いる方法や熱溶融押し出しによる方法により形成することができる。
金型ロールによる方法では、円筒状であるロールの外周面に偏向層の単位光学要素14aを転写可能な凹凸が設けられた金型ロールを準備する。そして金型ロールとこれに対向するように配置されたニップロールとの間に、基材部13となる基材を挿入する。このとき、基材と金型ロールとの間に偏向部14を構成する組成物を供給しながら金型ロール及びニップロールを回転させる。これにより金型ロールの表面に形成された凹凸の凹部内に偏向部14を構成する組成物が充填され、該組成物が金型ロールの凹凸の表面形状に沿ったものとなる。
【0057】
ここで、偏向部14を構成する組成物としては、上記したものが好ましいが、さらに具体的には次の通りである。すなわち、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)を配合した光硬化型樹脂組成物を用いることができる。
【0058】
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
【0059】
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0060】
また、上記光重合開始剤(I1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、偏向部14の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
【0061】
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
金型ロールと基材との間に挟まれ、ここに充填された偏向部を構成する組成物に対し、基材側から光照射装置により光を照射する。これにより、偏向部を構成する組成物を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロールにより金型ロールから基材部及び成形された偏向部を離型する。
【0063】
一方、熱溶融押し出しについては次の通りである。すなわち、偏向層の厚さ方向断面形状に対応する孔形状を有する押し出し用金型を準備する。そして熱により溶融した偏向層を構成する組成物を押し出し機を用いて加圧し、押し出し用金型の孔を通過させ、これを冷却することにより断面形状が偏向層の形状である長いシートを得ることができる。
【0064】
以上のように形成した偏向層に粘着剤層を積層する。積層する方法は特に限定されることはないが、剥離シートの一方の面に粘着剤層を形成する組成物を積層させ、これを偏向層に被せるように積層する方法や、粘着剤層を構成する組成物を直接に偏向層に塗工する方法を挙げることができる。
【0065】
電磁波遮蔽層15は上記したように、偏向層12の基材部13の面のうち偏向部14とは反対側の面に導電体メッシュ層15aを積層すればよい。
【0066】
ハードコート層16は、形成された導電体メッシュ層15a上から硬化前の上記したようなハードコート用組成物を塗布し、その後にこの組成物を硬化させることにより形成することが可能である。
【0067】
このような製造方法によれば、光学シートを効率よく製造することができる。
【0068】
光学シート10には上記した各層の他にも、他の機能を有する層を粘着剤等により積層してもよい。他の層として例えば近赤外線吸収層、紫外線吸収層、反射防止層、及び防眩層を挙げることができる。以下に各層について説明する。
【0069】
近赤外線吸収層は、PDPが発光するキセノンガス放電に起因して生じる近赤外線を吸収する機能を有する。近赤外線吸収層には公知の近赤外線吸収剤を有する市販フィルムを用いたり、近赤外線吸収色素を粘着層や樹脂層へ含有させた組成物を成膜したり、若しくはこれを透明基材又は他の機能性フィルタ上に塗布し、必要に応じ乾燥、硬化処理等を経て形成したものを用いることができる。
【0070】
近赤外線吸収色素としては、PDPが発光するキセノンガス放電に起因して生じる近赤外線領域、即ち、800nm以上1100nm以下の波長領域を吸収するものを用いる。該波長領域の近赤外線の透過率が20%以下が好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
また、同時に近赤外線吸収層は、可視光領域、即ち、380nm以上780nm以下の波長領域で、十分な透過率を有することが望ましい。
【0071】
紫外線吸収層は、粘着剤を含む層、樹脂を含む層、基材層等の透明である有機材料の黄変等の劣化と、近赤外吸収色素やネオン吸収色素、調色色素等の着色材料の劣化を防止するために設けられる層であり、紫外線を吸収する機能を有している。従って粘着剤層よりも観察側に配置されることが好ましい。紫外線吸収層としては公知のものを用いることができる。
【0072】
反射防止層は、表示装置表面での外光の鏡面反射による背景の映り込み、画像の白化、及びコントラスト低下を低減するための層である。反射防止層は、屈折率の高い材料と屈折率の低い材料を交互に積層し、最表面が低屈折率である層となるように多層化し、各層界面での反射光を干渉によって相殺する。これにより、表面の反射を抑え、良好な反射防止効果を得ることができる。この反射防止層は、通常、MgF、SiOに代表される低屈折率材料と、TiO、ZrO等の高屈折率材料とを交互に蒸着等により成膜する気相法等によって形成される。また、反射防止層に紫外線遮蔽機能をもたらす観点から、反射防止層中に紫外線吸収剤を含有させても良い。
【0073】
防眩層は、磨りガラスのように光を散乱又は拡散させて外光による背景像をぼかす層である。そのために、防眩層は光の入射面を粗面化した構成を備えている。粗面化のための処理には、サンドブラスト法やエンボス法等により基体表面を直接、微細凹凸を形成して粗面化する方法、シリカ等の無機フィラー、樹脂粒子等の有機フィラーを含有させた塗膜により粗面を形成する方法、及び基体表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法等を挙げることができる。
【0074】
図3は第二実施形態にかかる光学シート20のうち、その一部を拡大した図であり、図2に相当する図である。光学シート20は、低屈折率層を兼ねる粘着剤層21、波長フィルタ機能を備える偏向層22、電磁波遮蔽層15、及びハードコート層16を備えている。ここで光学シート20のうち粘着剤層21及び偏向層22以外は、第一実施形態にかかる光学シート10と共通する。従ってここでは粘着剤層21及び偏向層22について説明し、他は説明を省略する。
【0075】
粘着剤層21は、偏向層22と組み合わせられる低屈折率層としての機能と、光学シート10をPDPやガラス層等の他の層へ適切に粘着させる機能と、を兼ね備える層である。すなわち、本実施形態では粘着剤層21がこれら2つの機能を有するものとした。
【0076】
そのため、粘着剤層21は、偏向層22の単位光学要素24aよりも屈折率が低くなるように粘着剤を含んで構成されている。具体的な粘着剤は上記第一実施形態に含まれる粘着剤層11の粘着剤と同様のものを用いることができる。従ってここでは説明を省略する。
【0077】
偏向層22は、外光を偏向する機能、及び所望の波長の光を減衰して透過させる波長フィルタ機能を兼ね備えている。すなわち、本実施形態では波長フィルタ機能は偏向層22が具備している。
偏向層22は、図3からわかるように基材部23及び偏向部24を具備し、偏向部24には複数の単位光学要素24aが設けられている。
【0078】
基材部23は、波長フィルタ機能を有するとともに、偏向部24を形成する基材となる部位であり、偏向部24の変形を防止できるように支持する。
かかる観点から、基材部23は、主部となる材料に対して、光吸収手段を含有させることにより形成される。
【0079】
基材部23の主部を構成する材料は特に限定されるものではないが、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
【0080】
基材部23の主部に含める光吸収手段は、上記第一実施形態の光学シート10の粘着剤層11に含めることのできる光吸収手段を適用することが可能である。従ってここでは説明を省略する。
【0081】
偏向部24は、透光性を有する複数の単位光学要素24aを備えてなる部位である。各単位光学要素24aは、粘着剤層21側に向けて凸となるように突出するように形成されている。本実施形態では断面が略三角形である部位を有し、その斜辺を形成する第一面24b、及び第二面24cを具備している。そして単位光学要素24aは、図3に表れた断面を有して紙面奥/手前方向に延びるように形成され、該延びる方向に直交する方向に並列されている。
【0082】
具体的には、図3に示したように、第一面24bが光学シート20の観察者側シート面法線となす角をθ、第二面24cが光学シート20の観察者側シート面法線となす角をθとしたとき、θ≧θであることが好ましい。本実施形態ではθ>θである。
【0083】
θ、θの大きさは特に限定されるものではないが、θは20度より大きく、65度以下であることが好ましく、より好ましくは、30度以上50度以下である。
θが20度以下であると、偏向層の形状がより鋸刃状となり、金型製作が困難になること、及び、光吸収層を積層する際の製造上の困難が生じやすくなる。一方、θが65度より大きくなると、後述するように全反射させることができる外光が少なくなり、効率よく外光を吸収することができなくなる虞がある。
【0084】
θについては、0度≦θ≦θであることが好ましい。これは一般に天井側からの外光の方が、床側からの外光より多いため、第二面24cから光を効率よく粘着剤層11に光を通すためθはθ以下であることが好ましいことによる。また製造の困難の観点からθは0度以上であることが好ましい。
【0085】
単位光学要素24aのピッチは10μm以上200μm以下であることが好ましい。ピッチが10μmより小さいと製造の困難がある。一方、ピッチが200μmより大きくなるとモアレ干渉縞の発生しやすくなり、使用する材料が増加する傾向にある。
【0086】
ここで偏向部24は基材部23と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。ただし屈折率差があるとこの界面で光が偏向されてしまうので同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差がないことが好ましい。同じ材料の場合には、偏向部24と基材部23とを一体に形成することもできる。また、偏向部24と基材部23とが異なる材料である場合、及び同じ材料である場合であっても、基材部23と偏向部24が別に形成され、なんらかの手段により積層されてもよい。
【0087】
偏向部24には、基材部23に含有したと同様に光吸収手段を含ませても良いし、含ませなくてもよい。
【0088】
偏向部24を構成する材料は特に限定されることはないが、具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。そして必要に応じて、これらの材料中に上記光吸収手段を含ませることができる。
【0089】
ただし、偏向部24のうち単位光学要素24aは上記した粘着剤層21よりも高い屈折率を有している。これにより単位光学要素24aと粘着剤層21との界面において外光の一部を全反射させて偏向することができる。詳しくは後で説明する。
当該屈折率の差は特に限定されるものでないが、0.05以上であることが好ましい。
【0090】
図4は第三実施形態にかかる光学シート30のうち、その一部を拡大した図であり、図2に相当する図である。光学シート30は、波長フィルタ機能を有する低屈折率層を兼ねる粘着剤層31、偏向層32、電磁波遮蔽層15、及びハードコート層16を備えている。ここで光学シート30のうち粘着剤層31及び偏向層32以外は、第一実施形態にかかる光学シート10と共通する。従ってここでは粘着剤層31及び偏向層32について説明し、他は説明を省略する。
【0091】
粘着剤層31は、偏向層32と組み合わせられる低屈折率層としての機能と、光学シート30をPDPやガラス層等の他の層へ適切に粘着させる機能と、所望の波長の光を減衰して透過させる波長フィルタ機能と、を兼ね備える層である。
【0092】
粘着剤層31が具備する機能は上記した粘着剤層11と共通し、粘着剤層31は、偏向層32の単位光学要素34aの形状が単位光学要素14aと相違することに起因して形状が粘着剤層11と異なるのみである。
従って、粘着剤層31を構成する材料自体は粘着剤層11と同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0093】
偏向層32は、外光を偏向して粘着剤層31に光を入射させる機能を備えている。偏向層32は、図4からわかるように基材部33及び偏向部34を具備し、偏向部34には複数の単位光学要素34aが設けられている。
【0094】
基材部33は、上記した第一実施形態の光学シート10に含まれる基材部13と共通し、ここでは説明を省略する。
【0095】
偏向部34は、透光性を有する複数の単位光学要素34aを備えてなる部位である。各単位光学要素34aは、粘着剤層31側に向けて凸となるように突出するように形成されている。本実施形態では断面が略三角形である部位を有し、その斜辺を形成する第一面34b、及び第二面34cを具備している。そして単位光学要素34aは、図4に表れた断面を有して紙面奥/手前方向に延びるように形成され、該延びる方向に直交する方向に並列されている。
【0096】
具体的に本実施形態では、図4に示したように、第一面34bが光学シート30の観察者側シート面法線となす角をθ、第二面34cが光学シート30の観察者側シート面法線となす角をθとしたとき、θ=θである。
【0097】
θ、θの大きさは特に限定されるものではないが、20度より大きく65度以下であることが好ましく、より好ましくは、30度以上50度以下である。θ、θが20度以下であると、偏向層の形状がより鋸刃状となり、金型製作が困難になること、及び、光吸収層を積層する際の製造上の困難が生じやすくなる。一方、θ、θが65度より大きくなると、後述するように全反射させることができる外光が少なくなり、効率よく外光を吸収することができなくなる虞がある。
【0098】
単位光学要素34aのピッチは10μm以上200μm以下であることが好ましい。ピッチが10μmより小さいと製造の困難がある。一方、ピッチが200μmより大きくなるとモアレ干渉縞が発生しやすくなり、使用する材料が増加する傾向にある。
【0099】
ここで偏向部34は基材部33と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。ただし屈折率差があるとこの界面で光が偏向されてしまうので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差がないことが好ましい。同じ材料の場合には、偏向部34と基材部33とを一体に形成することもできる。また、偏向部34と基材部33とが異なる材料である場合、及び同じ材料である場合であっても、基材部33と偏向部34が別に形成され、なんらかの手段により積層されてもよい。
【0100】
偏向部34を構成する材料は特に限定されることはないが、具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
【0101】
ただし、偏向部34のうち単位光学要素34aは上記した粘着剤層31よりも高い屈折率を有している。これにより単位光学要素34aと粘着剤層31との界面において外光の一部を全反射させて偏向することができる。詳しくは後で説明する。
当該屈折率の差は特に限定されるものでないが、0.05以上であることが好ましい。
【0102】
以上説明した各実施形態の光学シートでは、いずれも、偏向層に隣接して偏向層より低い屈折率を有する層として粘着剤を含む層(粘着剤層)を説明した。しかしながら、偏向層の単位光学要素側に隣接する層は必ずしも粘着剤を含む層である必要はなく、単位光学要素よりも低い屈折率である材料により構成された層であってもよい。このような低屈折率層を構成する材料は特に限定されるものではなく、例えば上記した基材部や偏向層を構成する組成物から選択することが可能である。
【0103】
また、上記各実施形態の光学シートでは、単位光学要素が断面において三角形であったが、本発明の効果を奏する限りにおいてこれに限定されるものではなく、例えば台形やその他多角形、曲面を有する形状であってもよい。
【0104】
図5は映像源ユニット4を具備する表示装置1を模式的に示した分解斜視図である。ここで、映像源ユニット4には光学シート10が備えられている。図5では紙面右上が観察者側、紙面左下が背面側である。図5からわかるように、表示装置1は、前面側筐体2と背面側筐体3とにより形成される筐体の内側に、映像源ユニット4が配置されている。本実施形態の表示装置1はプラズマテレビであり、映像源ユニット4はプラズマディスプレイパネルユニット4(PDPユニット4)である。表示装置1には、映像源ユニット4の他にもその筐体内に表示装置に備えられるべき公知の各装置が具備される。これには例えば、各種電気回路や冷却手段等を挙げることができる。
【0105】
図6は図5に表した映像源ユニット4の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図6は、図5にVI−VIで示した線に沿った断面で、紙面右が観察者側である。
映像源ユニット4は、PDP5及び該PDP5に積層された光学シート10を備えている。図6からわかるように映像源ユニット4では、粘着剤層11がPDP5側に向けられ、該粘着剤層11により光学シート10がPDP5に直接積層されている。
PDP5は、公知のPDPを用いることができる。図6からわかるように本実施形態では、偏向部14の第一面14bが上、第二面14cが下となるように配置されている。従って単位光学要素14aは水平方向を長手方向とし、垂直方向に並列されている。
【0106】
光学シート10を備えるこのような表示装置1における映像光及び外光の光路について説明する。図7には、粘着剤層11及び偏向層12の一部を拡大した図を示し、この部分における光路例L1〜L3を矢印で示した。ただし、当該光路は説明のために概念的に表したものであり、屈折の程度等を厳密に示したものではない。以下他の形態における光路例も同様である。
【0107】
映像光L1は、PDP5から出射して粘着剤層11に入射する。粘着剤層11では上記したように可視光の波長領域の光の少なくとも一部が減衰され、偏向層12との界面に達する。そして該界面を透過して偏向層12に入射し、該偏向層12から出射する。ここで、粘着剤層11は単位光学要素14aより低い屈折率を有しているので、映像光L1は単位光学要素14aと粘着剤層11との界面では全反射することなく粘着剤層11を透過する。従って映像光L1の粘着剤層11の透過距離は比較的短く抑えられ、その減衰の程度も低く抑えられる。
【0108】
一方、外光L2は表示装置1の斜め上方から、粘着剤層11に向けて偏向層12内を進み、その界面に達する。この場合、外光L2は高い屈折率を有する単位光学要素14a側から低い屈折率を有する粘着剤層11側への界面に侵入するので、第一面14bにおいて全反射する。これにより外光L2は粘着剤層11の厚さ方向に直交する方向に近付けられるように偏向される。偏向した外光L2は、第二面14cと粘着剤層11との界面に達するが、その侵入角が全反射のための臨界角より小さいので、外光L2は第二面14cを透過して粘着剤層11に侵入する。 このように偏向して粘着剤層11に入射した外光L2は、図7からもわかるように、粘着剤層11の厚さ方向に直交する方向に近付けられているので、より長く粘着剤層11内を進ませることができる。従って、粘着剤層11に含まれた光吸収手段により吸収される機会が多く、減衰される程度も大きい。
【0109】
ここで、本実施形態では、第一面14bのθと第二面14cのθとの間にθ>θなる関係があり(図2参照)、第一面14bが上、第二面14cが下となるように配置されている。従って、本実施形態では、部屋の電灯等のように表示装置の斜め上方から表示装置1に入射する外光を最も効果的に減衰させることができる。
【0110】
また、偏向層12に入射して直接第二面14cに達し、全反射することなく粘着剤層11に入射した外光L3であっても、少なくとも粘着剤層11の厚さ方向の距離は粘着剤層11内を透過する。従ってある程度の減衰がなされる。
【0111】
従って、このように偏向層12を具備することにより、従来の波長フィルタ層に比べて、映像光の透過の程度を維持しつつ、外光の吸収性能を向上させることができる。すなわち、正面輝度を維持しつつもコントラストを向上することが可能である。
一方、光学シート10は、上記した特許文献2、特許文献3のように複雑な構造でなく、その製造も容易であるから簡易に低コストで光学シートを提供することができる。
すなわち、簡易及び低コストでありつつ、光学的特性のよい光学シート、及び該光学シートを備える表示装置とすることが可能である。
【0112】
図8は、光学シート10を有する他の例にかかる表示装置を説明する図であり、図7に相当する図である。当該他の例にかかる表示装置は、偏向層12を表示装置1に対して上下方向を逆に配置した点で表示装置1と異なる。すなわち、単位光学要素14aの第一面14bが下、第二面14cが上となる。他の点については表示装置1と共通である。
【0113】
光学シート10を備える他の例にかかる表示装置における映像光及び外光の光路について説明する。映像光L11は、PDP5から出射して粘着剤層11に入射する。粘着剤層11では上記したように可視光の波長領域の光の少なくとも一部が減衰され、偏向層12との界面に達する。そして該界面を透過して偏向層12に入射し、該偏向層12から出射する。ここで、粘着剤層11は単位光学要素14aより低い屈折率を有しているので、映像光L1は単位光学要素14aと粘着剤層11との界面では全反射することなく粘着剤層11を透過する。従って映像光L11の粘着剤層11の透過距離は比較的短く抑えられ、その減衰の程度も低く抑えられる。
【0114】
一方、外光L12は表示装置の斜め下方から、粘着剤層11に向けて偏向層12内を進み、その界面に達する。この場合、外光L12は高い屈折率を有する単位光学要素14a側から低い屈折率を有する粘着剤層11側への界面に侵入するので、第一面14bにおいて全反射する。これにより外光L12は粘着剤層11の厚さ方向に直交する方向に近付けられるように偏向される。偏向した外光L12は、第二面14cと粘着剤層11との界面に達するが、その侵入角が全反射のための臨界角より小さいので、外光L12は第二面14cを透過して粘着剤層11に侵入する。 このように偏向して粘着剤層11に入射した外光L12は、図8からもわかるように、粘着剤層11の厚さ方向に直交する方向に近付けられているので、より長く粘着剤層11内を進ませることができる。従って、粘着剤層11に含まれた光吸収手段により吸収される機会が多く、減衰される程度も大きい。
【0115】
ここで、本例では、第一面14bのθと第二面14cのθとの間にθ>θなる関係があり(図2参照)、第一面14bが下、第二面14cが上となるように配置されている。従って、本例では、床面からの反射光等のように表示装置の斜め下方から表示装置に入射する外光を最も効果的に減衰させることができる。
【0116】
また、偏向層12に入射して直接第二面14cに達し、全反射することなく粘着剤層11に入射した外光L13であっても、少なくとも粘着剤層11の厚さ方向の距離は粘着剤層11内を透過する。従ってある程度の減衰がなされる。
【0117】
従って、このように偏向層12を具備することにより、従来の波長フィルタ層に比べて、映像光の透過の程度を維持しつつ、外光の吸収性能を向上させることができる。すなわち、正面輝度を維持しつつもコントラストを向上することが可能である。
一方、光学シート10は、上記した特許文献2、特許文献3のように複雑な構造でなく、その製造も容易であるから簡易に低コストで光学シートを提供することができる。
すなわち、簡易及び低コストでありつつ、光学的特性のよい光学シート、及び該光学シートを備える表示装置とすることが可能である。
【0118】
図9は、光学シート20を有する表示装置を説明する図であり、図7に相当する図である。光学シート20が配置されたこと以外は表示装置1と共通する。
【0119】
光学シート20を備える表示装置における映像光及び外光の光路について説明する。映像光L21は、PDP5から出射して粘着剤層21に入射し、粘着剤層21を透過して偏向層22との界面に達する。そして該界面を透過して偏向層22に入射し、該偏向層22から出射する。その際、偏向層22では上記したように可視光の波長領域の光の少なくとも一部が減衰される。このとき、映像光L21は偏向層22内を直進するので、その透過距離は比較的短く抑えられ、減衰の程度も低く抑えられる。
【0120】
一方、外光L22は表示装置の斜め上方から偏向層22内に侵入し、粘着剤層21との界面に達する。この場合、外光L22は高い屈折率を有する単位光学要素24a側から低い屈折率を有する粘着剤層21側への界面に侵入するので、第一面24bにおいて全反射する。これにより外光L22は偏向層22の厚さ方向に直交する方向に近付けられるように偏向される。偏向した外光L22は、再び偏向層22内を進む。
このように偏向して偏向層22内を進む外光L22は、図9からもわかるように、最初に偏向層22を厚さ方向に横切ることに加え、第一面24bで全反射した後にも偏向層22内を進行することになり、より長く偏向層22内を進ませることができる。従って、外光L22は偏向層22に含まれた光吸収手段により吸収される機会が多く、減衰される程度も大きい。
【0121】
ここで、本例では、第一面24bのθと第二面24cのθとの間にθ>θなる関係があり(図3参照)、第一面24bが上、第二面24cが下となるように配置されている。従って、本例では、部屋の電灯等のように表示装置の斜め上方から表示装置に入射する外光を最も効果的に減衰させることができる。
【0122】
また、偏向層22に第一面24bで全反射し、第二面24cに達し、全反射することなく粘着剤層21に抜ける外光L23であっても、少なくとも偏向層22の厚さ方向の距離は該偏向層22内を透過する。従ってある程度の減衰がなされる。
【0123】
従って、このように偏向層22を具備することにより、従来の波長フィルタ層に比べて、映像光の透過の程度を維持しつつ、外光の吸収性能を向上させることができる。すなわち、正面輝度を維持しつつもコントラストを向上することが可能である。
一方、光学シート20は、上記した特許文献2、特許文献3のように複雑な構造でなく、その製造も容易であるから簡易に低コストで光学シートを提供することができる。
すなわち、簡易及び低コストでありつつ、光学的特性のよい光学シート、及び該光学シートを備える表示装置とすることが可能である。
【0124】
また、表示装置1に含まれる光学シート10のかわりに光学シート30を用いた表示装置も同様の効果を奏するものとなる。光学シート30では、図4からわかるようにθ=θであるから、上方からの外光及び下方からの外光を同じようにバランスよく減衰させることができる。
【0125】
図10は映像源ユニット104を具備する表示装置101を模式的に示した分解斜視図である。ここで、映像源ユニット104には光学シート30が備えられている。図10では紙面右上が観察者側、紙面左下が背面側である。図10からわかるように、表示装置101は、前面側筐体102と背面側筐体103とにより形成される筐体の内側に、映像源ユニット104が配置されている。本実施形態の表示装置101はプラズマテレビであり、映像源ユニット104はプラズマディスプレイパネルユニット104(PDPユニット104)である。表示装置101には、映像源ユニット104の他にもその筐体内に表示装置に備えられるべき公知の各装置が具備される。これには例えば、各種電気回路や冷却手段等を挙げることができる。
【0126】
図11は図10に表した映像源ユニット104の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図11は、図10にXI−XIで示した線に沿った断面で、紙面右が観察者側である。
映像源ユニット104は、PDP5及び該PDP5に積層された光学シート30を備えている。図11からわかるように映像源ユニット104では、粘着剤層31がPDP5側に向けられ、該粘着剤層31により光学シート30がPDP5に直接積層されている。
PDP5は、公知のPDPを用いることができる。図11からわかるように本実施形態では、偏向部34の第一面34bが側方、第二面34cが反対側の側方となるように配置されている。従って単位光学要素34aは垂直方向を長手方向とし、水平方向に並列されている。
【0127】
光学シート30を備えるこのような表示装置101における映像光及び外光の光路について説明する。図12には、粘着剤層31及び偏向層32の一部を拡大した図を示し、この部分における光路例L31〜L34を矢印で示した。
【0128】
映像光L31は、PDP5から出射して粘着剤層31に入射する。粘着剤層31では上記したように可視光の波長領域の光の少なくとも一部が減衰され、偏向層32との界面に達する。そして該界面を透過して偏向層32に入射し、該偏向層32から出射する。ここで、粘着剤層31は単位光学要素34aより低い屈折率を有しているので、映像光L31は単位光学要素34aと粘着剤層31との界面では全反射することなく粘着剤層31を透過する。従って映像光L31の粘着剤層31の透過距離は比較的短く抑えられ、その減衰の程度も低く抑えられる。
【0129】
一方、外光L32、L33は表示装置101の左右側方のそれぞれから、粘着剤層31に向けて偏向層32内を進み、その界面に達する。この場合、外光L32、L33は高い屈折率を有する単位光学要素34a側から低い屈折率を有する粘着剤層31側への界面に侵入するので、外光L32は第一面34b、外光L33は第二面34cでそれぞれ全反射する。これにより外光L32、L33は粘着剤層31の厚さ方向に直交する方向に近付けられるように偏向される。偏向した外光L32、L33は、外光L32が第二面34cと粘着剤層31との界面に達し、L33が第一面34bと粘着剤層31との界面に達するが、その侵入角が全反射のための臨界角より小さいので、いずれも界面を透過して粘着剤層31に侵入する。 このように偏向して粘着剤層31に入射した外光L32、L33は、図12からもわかるように、粘着剤層31の厚さ方向に直交する方向に近付けられているので、より長く粘着剤層31内を進ませることができる。従って、粘着剤層31に含まれた光吸収手段により吸収される機会が多く、減衰される程度も大きい。
【0130】
ここで、本実施形態では、第一面34bのθと第二面34cのθとが同じ角度とされ、(図4参照)、第一面34b、第二面34cが左右のそれぞれを向くように配置されている。従って、本実施形態では、上下左右からの外光をバランスよく減衰させることができる。
【0131】
また、偏向層32に入射して全反射することなく粘着剤層31に入射した外光L34であっても、少なくとも粘着剤層31の厚さ方向の距離は粘着剤層31内を透過する。従ってある程度の減衰がなされる。
【0132】
従って、このように偏向層32を具備することにより、従来の波長フィルタ層に比べて、映像光の透過の程度を維持しつつ、外光の吸収性能を向上させることができる。すなわち、正面輝度を維持しつつもコントラストを向上することが可能である。
一方、光学シート30は、上記した特許文献2、特許文献3のように複雑な構造でなく、その製造も容易であるから簡易に低コストで光学シートを提供することができる。
すなわち、簡易及び低コストでありつつ、光学的特性のよい光学シート、及び該光学シートを備える表示装置とすることが可能である。
【実施例】
【0133】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
【0134】
<実施例1>
実施例1では、次のように光学シートを作製した。
【0135】
(1)金型ロールの作製
偏向層の作製に供される金型ロールを作製した。金型ロールは、円柱状であり、銅メッキが施され、当該銅メッキ部分をバイト(切削工具)により切削して偏向部の単位光学要素に対応する溝を形成する。バイトとしてはダイヤモンドバイトを用いた。バイトはすくい面から見たときにその先端が2つの斜辺とこれが交わる1つの頂点を有する形状であり、一方の斜面角度がロールの円柱状の半径方向に対して0度、他方の斜辺角度が46.0度とした。
このようなダイヤモンドバイトを用いて、ロール軸方向の溝間ピッチは20μmとして金型ロールの銅メッキ層の外周を切削して溝を形成したところ、ピッチ20μm、深さ19.3μm、斜面角度がロール半径方向に対して0度、及び、46.0度の溝が形成された。この切削したロールにクロムメッキを施した。
【0136】
(2)偏向部を構成する組成物の調整
光硬化性プレポリマー(P1)としてビスフェノールA−プロピレンオキシド2モル付加物を13.0質量部、キシリレンジイソシアネートを8.0質量部、及びウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)を0.01質量部混合し、80℃で6時間反応させる。その後2−ヒドロキシエチルアクリレート2.0部を加え、80℃で3時間反応させウレタンアクリレート系オリゴマーを得る。
このようにして得られた光硬化性プレポリマー(P1)を23.0質量部、光硬化性モノマー(M1)としての9,9’−ビス(4−ヒドロキシエチル)フルオレンエチレンオキシド変性ジアクリレートを22.0質量部、フェノキシエチルアクリレート55.0を質量部、金型離型剤(S1)としてのトリデカノールのリン酸エステル[モノエステル:ジエステル=モル比1:1]を0.05質量部、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキーシシクロヘキシルーフェニルーケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)を2.0質量部混合し、均一化して組成物を得た。
これらの光硬化性プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)、金型離型剤(S1)、光重合開始剤(I1)を混合し、均一化して偏向部を構成する組成物を得た。
この偏向部を形成する組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(アタゴ)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、屈折率は1.58であった。
【0137】
(3)偏向層の形成
上記(1)で作製した金型ロールと、ニップロールと、の間に、基材部となる基材として、易接着PETフィルム(東洋紡績株式会社製、A4300、厚さ100μm)を挿入して搬送した。この基材の搬送に合わせ、上記(2)で得られた偏向部を構成する組成物を基材上に供給装置から供給し、金型ロール及びニップロール間の押圧力により、基材と金型ロールとの間に偏向部を構成する組成物を充填した。その後、基材側から高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して偏向部を構成する組成物を硬化させて、偏向部を形成した。その後、剥離ロールにより、金型ロールから偏向部を離型し、偏向部を含む厚さが140μmである偏向層を作製した。
従って図2のθが46.0度、θが0度であり、ピッチが20μm、高さが19.3μmの単位光学要素を有する偏向層となった。
【0138】
(4)波長フィルタ機能を具備する粘着剤組成物の調整
アクリル系粘着剤(感圧性粘着剤「オリバイン」BPS6271:商品名、固形分27%、東洋インキ製造(株)製)99.7質量部、および硬化剤(BXX5627:商品名、東洋インキ製造(株)製)0.3質量部に、近赤外線吸収剤として、フタロシアニン系化合物(IR12:商品名、日本触媒(株)製)0.05質量部、フタロシアニン系化合物(IR14:商品名、日本触媒(株)製)0.02質量部、及びジインモニウム系化合物(IRG−068:商品名、日本触媒(株)製)0.03質量部を配合した。さらに、ネオン光吸収化合物(TAP2:商品名、山田化学(株))を0.01質量部配合した。これに加え、紫外線吸収材として、CyasorbUV24(サイテック社製)を4.0質量部、光安定剤として、TINUVINN144(チバスぺシャルティケミカル製)を2.0質量部、調色色素として、KAYASET(日本化薬(株)製)を0.07質量部、及び、層状粘土鉱物として、クニピアD36(クニミネ工業(株)製)を0.05質量部配合し、混合物を得た。この混合物を十分攪拌させて波長フィルタ機能を具備する粘着剤組成物を作製した。
なお、この粘着剤組成物について、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.49であった。
【0139】
(5)波長フィルタ機能を有する粘着剤層の形成
(4)で作製した波長フィルタ機能を具備する粘着剤組成物を(3)で作製した偏向層の偏向部の単位光学要素間に形成される溝の底部から厚さ45.0μmとなるように塗布する。その後、100℃、2分間乾燥させ塗膜を形成し、この塗膜上に38μmの軽剥離性離型フィルム(東洋紡績社製、E7005)をラミネートした。
【0140】
以上により、実施例1としての偏向層及び粘着剤層を有する光学シートを得た。
【0141】
<実施例2>
実施例2では、実施例1の「波長フィルタ機能を具備する粘着剤組成物の調整」に対して、調色色素の量を0.07質量部から0.06質量部に変更して、波長フィルタ機能を具備する粘着剤組成物を得た。他は実施例1と共通である。
【0142】
<実施例3>
実施例3では、単位光学要素の第一面、第二面の角度がいずれも28.3度、すなわち、図4で表した形状においてθ=θ=28.3度の光学シートを作製した。他の条件は実施例1と同じである。
【0143】
<実施例4>
実施例4は、単位光学要素の形状は実施例3と同じとし、その他は実施例2と同じとした。
【0144】
<比較例1>
比較例1では、実施例1の「波長フィルタ機能を具備する粘着剤組成物の調整」に対して、調色色素の量を0.07質量部から0.10質量部に変更して、波長フィルタ機能を具備する粘着剤組成物を得た。
この粘着剤組成物を厚さ38μmの中剥離性離型フィルム(東洋紡績社製、E7007)上に厚さ25μmになるように塗布した。その後、100℃、2分間乾燥させ塗膜を形成し、この塗膜上に38μmの軽剥離性離型フィルム(東洋紡績社製、E7005)をラミネートし、厚さが均一な着色粘着層を作製した。
【0145】
<評価>
評価は、プラズマテレビ(パナソニック株式会社製 VIERA TH−P50G2)に貼合されている光学フィルターを剥離した後、上記実施例、比較例の光学シートを貼合し、図13に示した環境でおこなった。図13は、試験を行った空間を側面から見た図で、紙面左右方向を空間の幅方向、紙面上下方向を空間の高さ方向、紙面奥/手前方向を空間の奥行き方向とする。すなわち、幅12m、高さ3m、奥行き10mの空間の天井部に図13に示したように蛍光灯を配置した。なお、空間の床、壁面天井いずれも白色としている。また、空間の奥行き方向には、該奥行き方向に蛍光灯を並列した。プラズマテレビは、空間の幅方向一端側で、奥行き方向中央の床に載置した。
照度計(ミノルタ(T−1H))をその受光面が観察者側正面を向くようにプラズマテレビ画面中央の観察者側に設置し、照度計の値が600ルクスとなる蛍光灯環境下にて、正面白輝度、正面黒輝度を測定した。輝度計(ミノルタ(LS−110))を画面中心から0度方向2mの距離に設置した。
正面白輝度は、パターンジェネレーター(KENWOOD CG−935N)のWHITEモードで全白画面を表示させて測定した。一方、正面黒輝度は、同じパターンジェネレーターを用いて、CROSS HATCHモードで格子パターンを表示させ、黒部分を測定した。
そして比較例1の正面白輝度、及び正面黒輝度をそれぞれ100とした時に実施例1〜実施例4の正面白輝度、正面黒輝度を表した。従って正面白輝度が高いほど正面輝度が向上し、正面黒輝度が低い程コントラストが高くなることを意味する。
ここで、実施例1、2は単位光学要素の長手方向は水平方向とし、第一面を上、第二面を下となる向きで配置した。実施例3、4は単位光学要素の長手方向を垂直方向とした。
【0146】
<評価結果>
結果を表1に示す。
【0147】
【表1】

【0148】
実施例1では、比較例1に対して正面白輝度を低下させることなく、正面黒輝度を低下させることができた。実施例2、実施例4では、比較例1に対して正面黒輝度の上昇を抑えて、正面白輝度を向上させることができた。実施例3では、比較例1に対して正面白輝度を向上させつつ、正面黒輝度も低下させることができた。
【0149】
また、実施例1〜実施例4で作製した光学シートは比較例1で説明したシートよりも製造工程は複雑になるが、特許文献2、特許文献3に開示された光学シートと比べると簡易的に製造することができる。従って、簡易的にコストが上昇することを抑えつつも比較例1のような光学シートよりも高い性能を得ることができる。
【符号の説明】
【0150】
1 プラズマテレビ(表示装置)
4 プラズマディスプレイパネル(PDP・映像源)
10 光学シート
11 粘着剤層
12 偏向層
13 基材部
14 偏向部
14a 単位光学要素
14b 第一面
14b 第二面
15 電磁波遮蔽層
16 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に備えられて映像源より観察者側に配置され、前記映像源からの映像光を制御して前記観察者側に出射することが可能な複数の層を有する光学シートであって、
隣接する層との界面で外光の少なくとも一部を全反射して偏向可能とする偏向部、及び前記偏向部の基材となる基材部を有する偏向層と、
前記隣接する層であり、前記偏向部より低い屈折率である低屈折率層と、を備え、
前記偏向部は、前記低屈折率層側に向けて突出する透光性を有する部材である単位光学要素を複数具備するとともに、前記複数の単位光学要素は前記基材部の面に沿って並列して配置され、
前記偏向層及び前記低屈折率層の少なくとも一方には、可視光の波長領域の少なくとも一部を吸収することが可能な波長フィルタ手段が含まれている、
光学シート。
【請求項2】
前記単位光学要素は、断面において前記基材部の面の法線に対して傾斜する少なくとも2つの面を具備する請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記低屈折率層には粘着剤が含有されている請求項1又は2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記偏向部と前記低屈折率層との屈折率差が0.05以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項5】
前記偏向層のうち、前記低屈折率層が積層された側の面とは反対側の面には電磁波遮蔽層及びハードコート層の少なくとも一方が配置される請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項6】
前記偏向層の前記基材部のうち、前記偏向部が配置された側とは反対側の面には電磁波遮蔽機能を有する導電体メッシュ層が形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項7】
映像源と、該映像源の観察者側に配置された請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学シートと、を備え、
前記低屈折率層が前記偏向層よりも映像源側となるように配置される、
表示装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学シートを製造する方法であって、
前記偏向層の前記単位光学要素の形状に対応した表面形状を有する金型ロールと、ニップロールとの間に前記偏向層の前記基材部となる基材を挿入し、
前記基材と前記金型ロールとの間に前記偏向部を構成する組成物を充填するとともに、該組成物に紫外線を照射して前記組成物を硬化させて前記偏向部を形成する工程を含む光学シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学シートを製造する方法であって、
前記偏向層の断面形状に対応する孔を有する金型に、加熱により溶融した前記偏向層を構成する組成物を加圧して圧入し、前記金型の孔から流出した前記組成物を冷却して前記偏向層を形成する工程を含む光学シートの製造方法。
【請求項10】
請求項3に記載の光学シートを製造する方法であって、
前記粘着剤を含む低屈折率層を構成する組成物を剥離シートに塗布し、その後、前記組成物を前記偏向層に積層する工程を含む光学シートの製造方法。
【請求項11】
請求項3に記載の光学シートを製造する方法であって、
前記粘着剤を含む低屈折率層を構成する組成物を直接に前記偏向層に塗布する工程を含む光学シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−150356(P2012−150356A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10160(P2011−10160)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】