説明

光学シートおよびそれを備えた液晶表示装置

【課題】耐割れ性および耐擦過性に優れ、打ち抜き機による穴あけ加工によってもシートが破損せず、かつ光学シートを単独で重ね合わせた場合であっても、保護シートを必要としない光学シートを提供する。
【解決手段】樹脂を押出成形により、少なくとも一方の面にレンズ形状を賦型した光学シートであって、前記樹脂が、樹脂全体に対して、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂を70重量%以上含んでなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形により成形される光学シートに関し、さらに詳細には、耐割れ性および耐擦過性に優れる、液晶表示装置等に用いられる集光機能を有する光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等のディスプレイには、その表面や面光源装置に種々の光学シートが積層されている。例えば、光源輝度を向上させるための集光シートや、輝度ムラを低減させて均一な画質とするための拡散シートや、ディスプレイの表面の傷を防ぐための表面保護シート等の光学シートが、表示装置の画面表面には配置されている。
【0003】
これら光学シートは、液晶表示装置の製造時に表示装置に組み込まれるものであるが、光学シートを製造してから表示装置等に組み込みまでの間、すなわち搬送や保管等において、光学シートの表裏面に傷つく場合がある。また、光学シートを表示装置に組み込む際に、搬送ベルトと光学シートとの摩擦により、光学シートの裏面に傷が付く場合がある。特に、光学シートとしての集光シートは、その表面に凹凸のレンズ形状が賦型されていること、さらには、通常、滑り性に劣るスチレン−アクリ系樹脂を使用していること等から、集光シートの表面に傷が付き易い。そのため、通常、集光シートを製造する際にはシートの表面に保護フィルムを貼着しておき、表示装置に集光シートを組み込む直前に、保護フィルムを剥がして集光シートを使用することが行われている。これら保護フィルムは、通常、人の手により集光シートから剥がされる。
【0004】
また、光学シートを液晶表示装置に組み込む前に、光学シートに穴あけ加工を必要とする場合がある。従来のスチレン−アクリ系樹脂からなる光学シートにおいては、打ち抜きにより穴あけ加工するとシートが割れたり破損する場合があるため、打ち抜き機を用いることができず、穴あけ加工の作業効率の改善が求められていた。さらに、光学シートを薄肉化するほど穴あけ加工による破損が生じやすくなるため、光学シートを薄肉化することが困難であった。
【0005】
近年、表示装置の大型画面化に伴い、集光シートも大面積化されている。そのため、保護フィルムの剥離作業が困難化してきている。また、集光シートが大面積化すると、保護シートを剥離する際の力も大きくなるため、剥離時に集光シートを破損してしまうことがあった。さらに、保護シートが集光シートのどちらの面に貼着されているかが判別しづらく、剥離作業に手間取ったり、また場合によっては、剥離の際に集光シートを傷つけてしまうことがあった。そのため、保護フィルムを貼着しなくても傷つきにくい集光シートへの希求があった。
【0006】
ところで、レンズシートのような凹凸のレンズ形状が賦型された光学シートと表面に凹凸のある拡散シートとを一体化した光学シートにおいて、拡散シート側の表面粗さを特定の値以下として摩擦係数を下げることにより、両者が擦り合わされて表面に傷付かないようにした光学シートが提案されている(特開2007−256802号公報:特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−256802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、今般、樹脂を押出成形によりその表面にレンズ形状を賦型した光学シートにおいて、樹脂として従来のスチレン樹脂やスチレン−アクリ系樹脂に、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂を一定量含有させることにより、耐割れ性および耐擦過性に優れ、打ち抜き機による穴あけ加工によってもシートが破損せず、かつ光学シートを単独で重ね合わせた場合であっても、保護シートを必要としない光学シートが得られる、との知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、耐割れ性および耐擦過性に優れ、打ち抜き機による穴あけ加工によってもシートが破損せず、かつ光学シートを単独で重ね合わせた場合であっても、保護シートを必要としない光学シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による光学シートは、樹脂を押出成形により、少なくとも一方の面にレンズ形状を賦型した光学シートであって、前記樹脂が、樹脂全体に対して、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂を70重量%以上含んでなることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の態様においては、前記光学シートのシャルビー衝撃値が3kJ/m以上であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の態様においては、前記光学シートの、25℃での曲げ弾性率が2000〜2700MPaであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の態様においては、光学シートの表面に、帯電防止剤が塗布されてなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の態様においては、光学シート表面の動摩擦係数が0.1以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の態様においては、前記光学シートの、荷重1.80MPaの条件における荷重たわみ温度が60℃以上であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の態様においては、前記光学シートの屈折率が1.56以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の別の態様においては、上記光学シートを備えた液晶表示装置も提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光学シートを、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂を70重量%以上含む樹脂を押出成形によりレンズ形状を賦型して成形することにより、打ち抜き機による穴あけ加工によってもシートが破損せず、かつ光学シートを単独で重ね合わせた場合であっても、保護シートを必要としない光学シートを実現できる。従来、押出成形により光学シートを製造する場合は、スチレン−アクリル系樹脂が一般的に用いられ、ポリエステル樹脂やポリアリレート樹脂が用いられることはなかった。その理由は、ポリエステル樹脂からなる光学シートを大画面の表示装置等に適用した場合に、光学シートの耐熱性が不十分であり、また、ポリアリレート樹脂の場合は、樹脂の融点が高く押出成形を行うのが困難であるとともに、加えて、ポリエステル樹脂やポリアリレート樹脂は、スチレン−アクリ系樹脂に比べてコストが高いからである。
本発明においては、光学シートの材料として、ポリエステル樹脂やポリアリレート樹脂を押出成形に適用することにより、耐割れ性および耐擦過性に優れる光学シートを実現したものである。
【0019】
特に、本発明においては、得られた光学シートのシャルビー衝撃値および/または曲げ弾性率を特定の範囲とすることにより、より優れた耐割れ性を有する光学シートとすることができる。その結果、光学シートを薄肉化できるとともに、薄肉化した場合であっても、打ち抜き機による穴あけ加工を行うことができる。また、シャルビー衝撃値および/または曲げ弾性率が上記の範囲にあれば、押出成形された光学シートを、従来のように一枚一枚を裁断することなくロール状に巻き取ることができるため、量産する際の製造コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による光学シートは、樹脂を押出成形することにより、すくなくとも一方の面にレンズ形状を賦型して製造される。押出成形には従来公知の方法を適用できる。例えば、熱可塑性樹脂をダイより押し出してシート状に成形した後、当該シートを、レンズ形状の反転型が表面に設けられた転写ローラーと、ニップロラーとで挟圧し、転写ローラー表面のレンズ形状を熱可塑性樹脂に転写することにより、一方の表面にレンズ形状が賦型された光学シートを製造できる。また、他の方法としては、熱可塑性樹脂を溶融押出成型機によりレンズ形状の反転型の金型内に押出して光学シートを形成することもできる。
【0021】
上記のような方法により製造される光学シートに用いられる熱可塑性樹脂として、本発明においては、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂を含む樹脂を用いる。樹脂全体に対するポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂の割合は、70重量%以上とする必要がある。ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂の割合を70重量%以上とすることにより、耐衝撃性および耐擦り傷性が向上する。その結果、光学シートを薄肉化した場合であっても、打ち抜き機等による穴あけ加工で光学シートを破損することが低減される。また、レンズ形状が表面に賦型された光学シートを重ね併せて保管または移送した場合であっても、光学シートに傷が発生することを抑制できるため、保護フィルムにより光学シート表面を保護する必要がない。樹脂全体に対するポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂の割合は、70重量%以上、好ましくは80重量%以上含有されていることが好ましい。
【0022】
特に、本発明の光学シートにおいては、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂を70重量%以上含むため、上記のように樹脂をダイより押し出してシート状に成形した後にレンズ形状を賦型して光学シートを製造する場合に、得られた光学シートをロール状に巻き取って保存することができる。スチレン−アクリル樹脂を用いて形成された光学シートは耐割れ性が低いため、ロール状に巻き取ることができず、いわゆる平積みの状態で保管・移送を行う必要があったが、本発明による光学シートにおいては、ロール状に巻き取って保管・移送を行うことができる。そのため、振動等により光学シートのレンズ面(表面)と裏面とが擦れて傷付くことが抑制される。そのため、従来のようにレンズ面に保護フィルムを貼着しなくても、光学シートへの傷つきが防止できる。
【0023】
上記のようなポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、市販されている樹脂を用いてもよく、例えば、イーストマンケミカル株式会社、ウインテックポリマー株式会社、帝人化成株式会社等から市販されている上記の樹脂を用いることができる。また、ポリアリレート樹脂としては、ユニチカ株式会社から市販されているUポリマー等を好適に使用できる。
【0024】
他の樹脂としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリレート−スチレン系樹脂、アクリレート−スチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これら樹脂と上記のポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂とを従来公知の方法により混合して溶融押し出し成形を行うことにより、本発明の光学シートを製造することができる。
【0025】
上記のような樹脂を用いて得られる光学シートは、そのシャルビー衝撃値が3kJ/m以上であることが好ましい。シャルビー衝撃値が上記範囲内であれば、光学シートを薄肉化した場合であっても、穴あけ加工等でシートが破損することを抑制できる。また、この範囲の光学シートを用いることにより、後記するように、光学シートを巻き取った状態で保存できる。なお、シャルビー衝撃値とは、JIS Z 2202の準拠した試験片を作製し、JIS Z 2242に準拠した試験方法により測定された値を意味する。例えば、シャルビー衝撃試験機(D型シャルビー衝撃試験機、株式会社安田精機製)を用いて測定することができる。
【0026】
また、本発明においては、光学シートの、25℃での曲げ弾性率が2000〜2700MPaであることが好ましい。曲げ弾性率を上記の範囲内とすることにより、光学シートを薄肉化した場合であってもシートの破損を抑制できる。例えば、厚み100μm程度の光学シートとした場合であっても、25℃での曲げ弾性率が2000〜2700MPaの範囲内であれば、打ち抜き機により穴あけ加工を施しても、光学シートが破損することがない。なお、曲げ弾性率とは、JIS K 7171に準拠した方法により測定した値を意味する。例えば、Auto Graph AGS−1KNG(島津製作所株式会社製)を用いて曲げ弾性率を測定することができる。
【0027】
本発明においては、光学シートの荷重たわみ温度が60℃以上であることが好ましい。ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂を含む樹脂を使用した場合、光学シートの耐割れ性や耐擦過性は向上するものの、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂の含有割合によっては、光学シートの耐熱性が不十分となり、レンズ形状を賦型する際や、光学シートを液晶表示装置に組み込んだ後に熱が加えられた場合に、光学シート自体が熱によりカールする場合がある。上記のように、荷重たわみ温度が60℃以上の光学シートとすることにより、カールの発生を抑制できる。荷重たわみ温度を60℃以上とするには、他の樹脂と混合するポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂の量を適宜調整したり、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂の種類によっても調整することができる。例えば、スチレン−アクリル共重合体樹脂とポリエステル樹脂とを重量基準で3:7の割合で含有する樹脂を用いて光学シートを形成した場合、荷重たわみ温度は、概ね70℃程度である。また、ポリアリレート樹脂のみからなる光学シートの荷重たわみ温度は70℃以上であり、ポリエステル樹脂のみからなる光学シートの荷重たわみ温度はもっとも高いものでも70℃が限度である。なお、荷重たわみ温度は、JIS K 7191に準拠した方法により測定することができる。例えば、熱変形試験機(HDT試験装置3M−2、東洋精機製作所株式会社製)を用いて荷重たわみ温度を測定することができる。
【0028】
本発明による光学シートは、その表面に帯電防止剤が塗布されていることが好ましい。帯電防止剤としては後記するように、好ましくは界面活性剤が用いられる。そして、このような帯電防止剤が塗布されていることにより、滑り性が付与されるとともに光学シートの表面抵抗が低減される。そのため、光学シートを重ね合わせた際の、レンズ形状が賦型されている面(表面)と反対の面(裏面)との摩擦係数が低減するとともに光学シート表面にごみ等が付着するのを抑制できる。その結果、光学シートどうしが擦り合わさって光学シートに傷が付くのを抑制でき、また、光学シートに付着したごみ等が擦られて光学シート表面に傷が付くのも抑制できる。さらに、滑り性が付与されるため、光学シートを搬送する際の搬送ベルトとの摩擦による傷も低減される。
【0029】
上記帯電防止剤としては、動的表面張力が30mN/m以下であるものを使用することが好ましく、より好ましくは25mN/m以下である。動的表面張力を30mN/m以下とすることにより、濡れ性が向上し帯電防止剤を均一に光学シート面に塗布できる。その結果、上記のように表面が所定の微細な凹凸形状を有する光学シートの表面全体を均一に斑なく0.1以下の動摩擦係数とすることができるため、帯電防止剤の付着斑(すなわち、帯電防止剤が付着していないあるいは付着が不十分な箇所)による傷の発生を防止できる。なお、帯電防止剤の表面張力は、例えば、表面張力測定器Sita60(英弘精機株式会社)を用いて測定することができる。
【0030】
帯電防止剤は、光学シートに対する接触角が50dyn以下のものを使用することが好ましく、より好ましくは40dyn以下である。接触角が50dyn以下の帯電防止剤を使用することにより、濡れ性が向上し帯電防止剤を均一に光学シート面に塗布できる。接触角が50dynを超えるような帯電防止剤を用いると、光学シートの表面に均一に塗布することが困難となる。接触角が50dyn以下の帯電防止剤を使用することにより、帯電防止剤の付着斑を低減でき、その結果、傷の発生を防止できる。なお、接触角は、θ/2法により測定された値を意味する。
【0031】
帯電防止剤を光学シート表面に塗布する場合、塗布方法としては、従来公知の方法を使用でき、例えば、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、押出コーター等を好適に使用できる。また、塗布液の乾燥方法としては、温風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等を使用でき、乾燥温度としては、20〜80℃が好ましく、乾燥時間は、乾燥温度にもよるが概ね0.5〜2分間である。
【0032】
上記のような帯電防止剤としては、リン酸エステル系、ポリエーテルポリアルコキシ系、アルキルフェノール系等の一般的な界面活性剤を好適に使用でき、これらのなかでもリン酸エステル系界面活性剤がより好ましい。
【0033】
本発明においては光学シート表面の動摩擦係数が0.1以下であることが好ましい。動摩擦係数を0.1以下とすることにより、滑り性が付与されるとともに光学シートの表面抵抗が低減される。そのため、光学シートを重ね合わせた際の、レンズ形状が賦型されている面(表面)と反対の面(裏面)との摩擦係数が低減するとともに光学シート表面にごみ等が付着するのを抑制できる。その結果、光学シートどうしが擦り合わさって光学シートに傷が付くのを抑制でき、また、光学シートに付着したごみ等が擦られて光学シート表面に傷が付くのも抑制できる。さらに、滑り性が付与されるため、光学シートを搬送する際の搬送ベルトとの摩擦による傷も低減される。例えば、上記のように光学シートの表面に帯電防止剤を塗布することにより動摩擦係数を0.1以下とすることができる。あるいは、光学シート中に拡散剤等を添加することによっても動摩擦係数を0.1以下とすることができる。この拡散剤の添加は、表面粗さを所望の範囲とするだけでなく、光学シートに傷が付いた場合であっても、傷を目立ちにくくするという効果を併せ持つものである。
【0034】
拡散剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを使用できる。例えば、有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、アクリル−スチレン樹脂粒子等を好適に使用できる。これらは一種単独で使用してもよく、二種以上を混合して用いてもよい。また、無機粒子としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、シリコン、アルミナ、シリカ等を好適に使用できる。これらは一種単独で使用してもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
拡散剤は、その平均粒子径が20〜40μmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が20μm未満であると、傷付き防止に効果がないばかりでなく、傷を目立ち難くすることが不十分となる。一方、平均粒子径が40μmを超えると、光の拡散が強くなり所望の光学特性が得られなくなる。なお、本明細書中、「平均粒子径」とは、粒径分布において重量比が50%にあたる粒径を意味する。
【0036】
拡散剤は、光学シートに対し、0.5〜5重量%含まれていることが好ましい。すなわち、光学シートを構成する樹脂100重量部に対し、拡散剤を0.5〜5重量部添加することが好ましい。拡散剤の添加量が0.5重量%未満であると光学シートの傷つき抑制効果が不十分となる場合がある。一方、拡散剤の添加量が5重量%を超えると、拡散剤が分散し難く塊となってしまうため、動摩擦係数が0.1を超える場合がある。また、その場合、光が拡散しすぎて集光レンズとして機能を阻害することにもなる。
【0037】
拡散剤は、光学シートの全体に均一に含有されていてもよいが、レンズ形状が賦型されていない側の面(裏面)にのみに拡散剤が含有されていることが好ましい。従来の光学シートの裏面は平滑であるため、光学シートを積層したり、搬送したりする際についた傷も目立ち易かったが、本発明のように、光学シートに拡散剤が含まれると、その表面には微小な凹凸が形成されるため平滑ではなくなり、その結果、傷がついても目立たなくなる。
【0038】
拡散剤を光学シート中に含有させる場合、熱可塑性樹脂と拡散剤とを混合したペレットを溶融押出機により混練してダイから押し出すことにより、拡散剤を含む光学シートを製造できる。光学シートの一方の面、好ましくは、レンズ形状が賦型されていない面側のみに拡散剤を添加する場合は、拡散剤を含まない熱可塑性樹脂と、拡散剤を含む熱可塑性樹脂とを、2層式溶融押出機に供給して、多層の光学シートとすることにより製造できる。
【0039】
本発明による光学シートは屈折率が1.56以上であることが好ましい。屈折率を1.56以上とするためには、用いる樹脂の配合量を適宜調整することにより行うことができる。例えば、ポリエステル樹脂およびポリアリレート樹脂の屈折率は、樹脂のグレードにもよるが、概ね1.56および1.60(1.58〜1.61)であるが、ポリメチルメタクリレート樹脂(n=1.50)、ポリカーボネート樹脂(n=1.60)、ポリスチレン樹脂(n=1.59)、メタクリレート−スチレン系樹脂(MS樹脂n=1.50〜1.58)、アクリレート−スチレン系樹脂(AS樹脂n=1.50〜1.58)、ポリプロピレン樹脂(n=1.49)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(n=1.56)、ポリ塩化ビニル樹脂(n=1.52)、熱可塑性エラストマー(n=1.52)等を混合して、屈折率が1.56以上となるように調整することができる。なお、光学シートの全光線透過率を維持する観点から、異なる樹脂を混合する場合には、屈折率の近いもの同士を混合することが好ましい。
【0040】
得られた光学シートは、厚さが好ましくは50〜500μmであり、その一方の面に、単位レンズが隣接して略全面に配列された形状を有する。光学シートとしては、レンチキュラーレンズやプリズムシート等が挙げられる。レンズ形状は特に制限されるものではなく、集光機能を有するものであればよく、例えば、ピッチ20〜200μm、レンズの高さ10〜150μm、レンズ凸部の頂角60〜120度であるレンズとすることができる。
【0041】
本発明による光学シートは、集光シートとして液晶表示装置等のディスプレイに好適に使用され、液晶表示装置の背面側、すなわちバックライト側の面に配置されて用いられる。
【実施例】
【0042】
実施例1
(1)光学シートの作製
ポリエステル樹脂ペレット(SI173、東洋紡績株式会社製)を用いて、押出成型機に投入し、240℃で樹脂を溶融させてレンズ形状の反転型の金型内に押出すことにより、一方の面にレンズ形状を賦型した光学シートを得た。ダイからの押出量を調整することにより光学シートの厚みを調整した。用いた樹脂の屈折率をKPR−2000(島津製作所株式会社製)により測定したところ1.57であった。
【0043】
(2)光学シートの評価
得られた光学シートから試験片を作製し、シャルビー衝撃試験機(D型衝撃試験機、株式会社安田精機)を用いてシャルビー衝撃値を測定した。
また、Auto Graph AGS−1KNG(島津製作所株式会社製)を用いて、25℃での曲げ弾性率を測定した。
また、熱変形試験機(HDT試験装置3M−2、東洋精機製作所株式会社製)を用い、荷重1.80MPaの条件にて荷重たわみ温度を測定した。
【0044】
次いで、得られた光学シートの耐割れ性評価を行った。光学シートを手で折り曲げることにより評価を行った。評価基準は以下の通りとした。
○:折り曲げても光学シートが割れない
△:光学シートは割れないが、ひびがはいる
×:光学シートが割れる
評価結果は表1に示される通りであった。なお、表中、PETとはポリステル樹脂を、PAとはポリアリレート樹脂を、PCとはポリカーボネート樹脂を、PBTとはポリブチレンテレフタレート樹脂を、ASとはアクリル−スチレン共重合体樹脂を、MA-Sとはメタクリル−スチレン共重合体樹脂を表す。
【0045】
また、得られた光学シートの巻き取り性についての評価を行った。巻き取り性は、直径が3インチの紙管に、3mの光学シートを巻き付けることにより評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:全てが巻き取れる
△:光学シートにひびがはいるか、あるいは光学シートに巻き後が残る
×:光学シートが割れてしまい巻けない
評価結果は表1に示される通りであった。
【0046】
また、光学シートの打ち抜き適性についての評価を行った。打ち抜き適性は、トムソン刀により光学シートを打ち抜くことにより評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:所定の大きさに打ち抜ける
△:所定の大きさに打ち抜けるが、光学シートにひびが入る
×:所定の大きさに打ち抜けないか、あるいは光学シートが割れる
評価結果は表1に示される通りであった。
【0047】
また、光学シートの耐擦過性についても評価を行った。光学シートの裏面をテーパー試験機(TABER ABRASION TESTER:東洋精機株式会社)を用いて、荷重250g、回転数1回の条件にて、擦過し、光学シート裏面の外観を目視にて評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:光学シートをあらゆる方向から観察しても、その表面に傷が認められない。
△:正面から光学シートを観察すると表面に薄い傷が認められるが、角度を変えて斜めから光学シートを観察すると傷が認められない。
×:角度を変えて斜めから光学シートを観察しても傷が認められる。
××:どの方向から観察しても光学シートの表面に傷が認められる。
評価結果は表1に示される通りであった。
【0048】
実施例2
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、ポリアリレート樹脂(U−8400、ユニチカ株式会社製)を300℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0049】
実施例3
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、ポリアリレート樹脂(U−8000、ユニチカ株式会社製)を250℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0050】
実施例4
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、ポリカーボネート樹脂(パンライトA−5300、帝人化成株式会社製)を300℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0051】
実施例5
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、ポリブチレンテレフタレート樹脂(FT−500、テクポリマー株式会社製)を250℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0052】
実施例6
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、ポリカーボネート樹脂(パンライトA−5300、帝人化成株式会社製)とポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−G、イーストマンケミカル株式会社製)とを重量基準で8:2の割合で混合したものを200℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0053】
実施例7
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−G、イーストマンケミカル株式会社製)を240℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0054】
実施例8
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、アクリル−スチレン共重合体樹脂(スタイラックASR−5000、旭化成株式会社製)とポリエステル樹脂(SI173、東洋紡績株式会社製)とを重量基準で3:7の割合で混合したものを230℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0055】
比較例1
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、アクリル−スチレン共重合体樹脂(スタイラックASR−5000、旭化成株式会社製)を230℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0056】
比較例2
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、アクリル−スチレン共重合体樹脂(セビアンN、ダイセル化学株式会社製)を230℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0057】
比較例3
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、メタクリル酸−スチレン共重合体樹脂(TX−ポリマー、電気化学株式会社製)を230℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0058】
比較例4
ポリエステル樹脂ペレットに代えて、アクリル−スチレン共重合体樹脂(スタイラックASR−5000、旭化成製)とポリエステル樹脂(SI173、東洋紡績製)とを重量比で9:1で混合したものを230℃で溶融させて押出成形した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0059】
比較例5
比較例4において、アクリル−スチレン共重合体樹脂とポリエステル樹脂との混合比率を35:65に代えた以外は、実施例8と同様にして光学シートを作製した。また、得られた光学シートについて、実施例1と同様にして各評価試験を行った。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を押出成形により、少なくとも一方の面にレンズ形状を賦型した光学シートであって、前記樹脂が、樹脂全体に対して、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂を70重量%以上含んでなることを特徴とする、光学シート。
【請求項2】
前記光学シートのシャルビー衝撃値が3kJ/m以上である、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記光学シートの、25℃での曲げ弾性率が2000〜2700MPaである、請求項1または2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記光学シートの、荷重1.80MPaの条件における荷重たわみ温度が60℃以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項5】
光学シートの表面に、帯電防止剤が塗布されてなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項6】
光学シート表面の動摩擦係数が0.1以下である、請求項1〜5いずれか一項に記載の光学シート。
【請求項7】
前記光学シートの屈折率が1.56以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学シートを備えた液晶表示装置。

【公開番号】特開2010−197801(P2010−197801A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43742(P2009−43742)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】