説明

光学デバイスユニット、検出装置及び検出方法

【課題】 対象となる生体(人間や動物など)や環境雰囲気から流体試料を簡易にかつ確実に採取できる光学デバイスユニット、検出装置及び検出方法を提供すること。
【解決手段】 光学デバイスユニット60は、導入口14Aと導出口14Bとを有し、流体試料が導入される試料導入部10と、試料導入部の少なくとも一部に設けられ光を透過する光透過部11と、試料導入部内に配置され、光透過部を介して入射する光を受けて流体試料を反映した光を発する光学デバイス50と、試料導入部10の導入口14Aを開閉する第1シャッター20Aと、試料導入部10の導出口14Bを開閉する第2シャッター20Bと、導出口14Bを介して試料導入部10内を負圧にする負圧発生部30と、有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイスユニット、検出装置及び検出方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療診断や農水産物・食品などの検出などに用いられるセンサーの需要が増大しており、小型で高速にセンシング可能なセンサー技術の開発が求められている。このような要求に応えるために、電気化学的な手法をはじめ様々なタイプのセンサーが検討されている。これらの中で、集積化が可能であり、低コスト、さらに測定環境を選ばないといった理由から、表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)を用いたセンサーに対する関心が高まっている。
【0003】
ここで、表面プラズモンとは、表面固有の境界条件により光とカップリングを起こす電子波の振動モードである。表面プラズモンを励起する方法としては、金属表面に回折格子を刻み、光とプラズモンを結合させる方法やエバネッセント波を利用する方法がある。例えば、SPRを利用したセンサーとしては、全反射型プリズムと、そのプリズムの表面に形成された試料に接触する金属膜と、を具備して構成されるものがある。このような構成により、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無など、試料分子の吸着の有無を検出している。
【0004】
ところで、金属表面に伝播型の表面プラズモンが存在する一方、金属微粒子には局在型の表面プラズモンが存在する。局在型の表面プラズモン、つまり、表面の微細構造上に局在する表面プラズモンが励起された際には、著しく増強された電場が誘起されることが知られている。
【0005】
さらに、金属微粒子や金属ナノ構造を用いた局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)によって形成される増強電場にラマン散乱光が照射されると表面増強ラマン散乱(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)現象によってラマン散乱光が増強されることが知られており、高感度のセンサー(検出装置)が提案されている(特許文献1,2)。この原理を用いることで、各種の微量な物質を検出することが可能になる。
【0006】
検出対象の例として、大気中に含まれる微量な物質を検出することや、人間の呼気中に含まれる微量な物質を検出することで、その物質と相関のある病気の危険度診断をするなどの提案がなされている。後者の例として、特許文献1では、一定濃度のアルコールを摂取した後に呼気中のアセトアルデヒド濃度の経時変化を測定し、アセトアルデヒド濃度を急激な上昇がある場合に扁平上皮癌の発生危険度を判定している。この例では、呼気を採取する方法として、サンプルバッグに呼気を直接吹く込む方法が示されている。物質を検出する原理は異なっているが、生体から気体試料を採取する点では共通の課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3714671号公報
【特許文献2】特開2000−356587号公報
【特許文献3】特開2005−214855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3では、気体試料を採取した後に速やかに物質を検出することは困難である。特許文献3では、生体(人間)の皮膚や粘膜などの表面から放出される気体試料を採取する器具が示されている。この場合、気体試料を皮膚表面から採取した後、検出装置又は分析装置へ入れて検出又は分析するという操作が必要になる。従って、多くの人の皮膚ガスを順次採取して検出又は分析するには、気体採取器具を再度パージガスなどでリフレッシュしてから使用することになるため、時間を要するという課題があった。
【0009】
さらに、これらの一連の操作は手動であるため、そもそも時間を要するという課題もあった。これらの事情は、皮膚ガスの場合だけではなく、生体の呼気ガスや大気中のガスでも事情は同じである。このことは、気体試料を採取する場合に使用されるサンプリングバッグを用いる場合でも同様である。採取した気体試料をシリンジなどでサンプルバッグから抜き取り、ガスクロマトグラフのような検出装置に送り込む操作を行ってから物質を検出することになるからである。
【0010】
本発明の幾つかの態様は、対象となる生体(人間や動物など)や環境雰囲気から流体試料を簡易にかつ確実に採取できる光学デバイスユニット、検出装置及び検出方法を提供することができる。
【0011】
本発明の他の幾つかの態様は、検出時に光学デバイスに悪影響を与える外光を排除してS/Nを向上させながらも、流体試料を効率よく採取できる光学デバイスユニット、検出装置及び検出方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の一態様は、
導入口と導出口とを有し、流体試料が導入される試料導入部と、
前記試料導入部の少なくとも一部に設けられ光を透過する光透過部と、
前記試料導入部内に配置され、前記光透過部を介して入射する光を受けて前記流体試料を反映した光を発する光学デバイスと、
前記試料導入部の前記導入口を開閉する第1シャッターと、
前記試料導入部の前記導出口を開閉する第2シャッターと、
前記導出口を介して前記試料導入部内を負圧にする負圧発生部と、
を有する光学デバイスユニットに関する。
【0013】
本発明の一態様では、第1シャッター及び第2シャッターを開放して、流体試料を試料導入部内に導入する第1状態と、第1シャッター及び第2シャッターを閉鎖して、流体試料を試料導入部内に閉じ込めた第2状態とを実現することができる。第2の状態にて、光透過部を介して光を入射して検出を実施すれば、試料導入部内に閉じ込められた流体試料は排出されずに検出に寄与させることができる。また、検出時に試料導入部内に外光が取り込まれることを低減し、S/Nを向上できる。なお、試料導入部内に配置される光学デバイスとは、光学デバイスの一面が、試料流体と接することができるように、試料導入部の流体導入空間に臨んで配置されるものも含む。
【0014】
(2)本発明の一態様では、一端に外気と連通する供給口を有し、他端が前記導入口と連通する試料供給流路と、一端に外気と連通する排出口を有し、他端が前記導出口と連通する試料排出流路と、さらに有し、前記試料供給流路は、前記供給口から直進する外光を遮光する壁部を含み、前記試料排出流路は、前記排出口から直進する外光を遮光する壁部を含むことができる。
【0015】
こうすると、試料供給流路及び試料排出流路が外光の遮光機能を有するので、可動部である第1,第2シャッターでの遮光性を低くすることができる。
【0016】
(3)本発明の一態様では、前記光学デバイスは、1〜1000nmの凸部を有する金属ナノ構造を備えることができる。こうすると、金属ナノ構造の凸部の周囲に増強電場が形成され、流体試料を反映した光の信号強度が増強電場で増強される。
【0017】
(4)本発明の一態様では、前記第1シャッターが前記導入口を開放する時の第1開口面積を、前記第2シャッターが前記導出口を開放する時の第2開口面積よりも小さくする機構を有することができる。
【0018】
こうすると、開口面積が小さい導入口付近での気体流速を速くすることができる。上述した第1,第2開口面積の関係は、第2シャッターを全開状態として、導入口の開口面積を導出口の開口面積よりも小さくすることで成立させることができる。この他、第1シャッターを部分開放するなど、第1,第2シャッターの駆動制御により上述の関係を成立させても良い。なお、上述した第1,第2開口面積の関係を実現する手段としては、例えば、第1シャッターを駆動する第1駆動ギアへの第1駆動伝達系に対して減速ギアを設け、第2シャッターを駆動する第2駆動ギアへの第2駆動伝達系に対しては減速ギアを設けず、あるいは増速ギアを設けて、駆動ギアの回転によるシャッター移動量において第2シャッターのほうが大きくなるような機構とすることができる。
【0019】
(5)本発明の一態様では、前記試料導入部は円周内壁を有し、前記導出口は、平面視にて、前記円周内壁の中心と前記導入口とを結ぶ線上から外れた位置に配置することができる。
【0020】
こうすると、導入口から直ちに導出口に向かう気体は少なく、円周内周に沿って気体の旋回流が生ずる。これにより、導入された試料が光学デバイスと接触する機会が増大される。
【0021】
(6)本発明の一態様では、前記試料供給流路及び前記試料排出流路は、前記円周内壁の一つの接線方向と平行な方向に沿って互いに同じ向きに延びる部分を、少なくとも前記試料導入部との連結端側に有することができる。
【0022】
こうすると、導入口及び導出口付近の気体は接線方向と平行に流れるので、上述の旋回流がより発生し易くなる。
【0023】
(7)本発明の一態様では、前記流体試料を反映した光はラマン散乱光とすることができる。ラマン散乱光は検出対象の物質を反映した信号の一例であり、流体試料中にて検出対象の物質の有無を判定できる。
【0024】
(8)本発明の他の態様は、
上述した(1)〜(7)のいずれかの光学デバイスユニットと、
前記光源と、
前記光学デバイスからの前記試料を反映した光を検出する光検出部とを含む検出装置に関する。
【0025】
本発明の他の態様では、第1,第2シャッターを開放して試料導入部内に流体試料を取り込む第1状態の後に、第1,第2シャッターを閉鎖して流体試料を試料導入部に閉じ込めた第2状態を作り出すことができ、第2状態にて流体試料を閉じ込めたまま遮光性を高くして検出することができる。
【0026】
(9)本発明のさらに他の態様は、
光学デバイスユニットと、前記光学デバイスユニットに向けて光を発する光源と、前記光学デバイスユニットからの光を検出する光検出部とを有し、
前記光学デバイスユニットが、
導入口と導出口とを有し、流体試料が導入される試料導入部と、
前記試料導入部の少なくとも一部に設けられ光を透過する光透過部と、
前記試料導入部内に配置され、前記光透過部を介して入射される光を受けて前記流体試料を反映した光を発する光学デバイスと、
前記試料導入部の前記導入口を開閉する第1シャッターと、
前記試料導入部の前記導出口を開閉する第2シャッターと、
前記導出口を介して前記試料導入部内を負圧にする負圧発生部と、
を有する検出装置での検出方法であって、
前記負圧発生部を駆動し、前記第1シャッター及び前記第2シャッターを開放して、前記流体試料を前記試料導入部内に導入する第1工程と、
前記第1シャッター及び前記第2シャッターを閉鎖して、前記流体試料を前記試料導入部内に閉じ込めた状態にて、前記光源から光を発して検出する第2工程と、
を有する検出方法に関する。
【0027】
本発明のさらに他の態様によれば、第2工程では流体試料を試料導入部内に閉じ込めた状態で検出することができる。第1工程で検出しようとすると、流体試料は試料導入部内に導入される一方で排出され続ける。よって、流体試料中の検出対象が特に吸着力の弱い物質では、効率が悪い。第2工程では試料導入部内から流体試料が漏れない状態を確保できるので、導入された流体試料を有効活用できる。また、第1,第2シャッターを閉じたとしても、シャッター閉鎖直前に移動していた流体試料は、シャッター閉鎖後も慣性力で浮遊するので、光学デバイス上の金属膜や金属微粒子等の金属ナノ構造との接触機会は確保される。さらに、第2工程では外光の遮光効果が高まるので、S/Nが向上して検出精度が高まる。加えて、第2工程での検出前には必ず第1工程が実施され、検出前の第1工程により光学デバイスをクリーンアップすることも可能となる。
【0028】
(10)本発明のさらに他の態様では、前記第1工程では、前記第1シャッターが前記導入口を開放する時の第1開口面積を、前記第2シャッターが前記導出口を開放する時の第2開口面積よりも小さくすることができる。上述した通り、開口面積が小さい導入口付近での流速を速くすることができる。
【0029】
(11)本発明のさらに他の態様では、前記第1工程では、前記第1シャッターよりも早く前記第2シャッターの開放を開始することができる。
【0030】
こうすると、第1工程前に試料導入部内を予備排気することができる。
【0031】
(12)本発明のさらに他の態様では、前記第1工程では、前記負圧発生部を連続駆動中に、前記第1シャッター及び前記第2シャッターを複数回に亘って断続的に開閉することができる。
【0032】
第1工程に試料を吸引すると、流体的な流れが層流(レイノルズ数が小さく、乱れが少ない流れ)になるが、断続的に吸引すると流体の流れが一旦止まるため、乱れが生じて攪拌させる効果をもたらすと考えられる。流体試料中の検出対象物質が不均一に含まれている場合には、流体採取方法として有効な方法と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1(A)〜図1(C)は、シャッターの閉鎖状態、部分開放状態及び開放状態を示す図である。
【図2】歯車駆動のシャッターを有する試料導入部の概略平面図である。
【図3】磁石駆動のシャッターを有する試料導入部の概略平面図である。
【図4】検出方法を示すタイミングチャートである。
【図5】他の検出方法を示すタイミングチャートである。
【図6】図6(A)〜図6(D)は、表面増強ラマン光の検出原理の説明図である。
【図7】検出装置の全体を示す説明図である。
【図8】検出装置の制御系ブロック図である。
【図9】図9(A)〜図9(C)は、ラマンスペクトルのピーク抽出を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0035】
1.シャッター付の試料導入部を備えた光学デバイスユニット及び検出方法の概要
1.1.シャッター付の試料導入部を備えた光学デバイスユニット
図1(A)〜図1(C)は、本発明の実施形態にかかる光学デバイスユニットに設けられる試料導入部10のシャッターの開閉状態を模式的に説明した図である。図1(A)はシャッター閉鎖状態を、図1(B)はシャッターの部分開放状態を、図1(C)はシャッターの開放状態をそれぞれ示している。図2は、2つのシャッターを備えた試料導入部10の概略構成を示す平面図である。本実施形態では、流体試料は例えば人体の呼気や大気等であり、検出対象の物質は流体試料中の特定気体分子(試料分子)とすることができるが、これに限定されない。
【0036】
図1(A)〜図1(C)及び図2において、試料導入部10は、流体試料が導入される空間部を有する中空箱型を呈している。図1(A)〜図1(C)は試料導入部10の一側面を示しているが、図1(B)及び図1(C)に示すように、試料導入部10の例えば側壁12には開口14が形成されている。試料導入部10の側壁12には少なくとも2つの開口14が形成されている。試料導入側の開口14を導入口14Aと称し、試料導出側の開口14を導出口14Bと称する。
【0037】
2つの開口14を開閉する2つのシャッター20が設けられている。導入口14Aを開閉するシャッター20を第1シャッター20Aと称し、導出口14Bを開閉するシャッター20を第2シャッター20Bと称する。図2では、第1,第2シャッター20A,20Bは、試料導入部10の側壁12に沿って移動可能に設けられている。
【0038】
図2に示すように、導出口14Bを介して試料導入部10内を負圧にする負圧発生部であるファン30が設けられている。負圧発生部30は、ファンに限らず、チューブポンプ、ダイアフラム式ポンプ等のポンプなど、試料導入部10にて負圧を発生させて流体試料を吸引できるものであれば良い。よって、ファン30が駆動され、かつ、第1,第2シャッター20A,20Bが開放されていれば(図1(B)または図1(C)の状態)、導入口14Aを介して、人体の呼気や大気等の流体試料が試料導入部10内に吸引されて導入される。
【0039】
ここで、本実施形態に係る光学デバイスユニットには、試料導入部10内に配置され、光源からの光を受けて流体試料を反映した光を発する光学デバイス50(後述する図6(D)参照)が設けられる。この光学デバイス50は、流体試料を吸着する金属膜や金属ナノ粒子を有する金属ナノ構造を、試料導入部10の流体導入空間に臨んで配置することができる。上述の通りにして試料導入部10内に流体試料が吸引導入されれば、金属膜や金属微粒子に試料分子を含む流体試料を吸着させることができる。試料分子が吸着された光学デバイス50に光を照射することで、その光とプラズモンを結合させる方法やエバネッセント波を利用するなどして、検出対象物質である試料分子を検出することができる。
【0040】
ここで、試料分子等の「吸着」という現象は、試料分子が光学デバイス50の金属ナノ粒子に衝突する衝突分子の数(分圧)が支配的である現象であり、物理吸着及び化学吸着の一方又は双方を含む。吸着エネルギーは試料分子の運動エネルギーに依存し、ある値を乗り越えると衝突して「吸着」現象を呈し、吸着には外力は不要である。また、光学デバイス50に流体試料を吸引することとは、換言すると、その内部に光学デバイス50を配置した流路に吸引流を生じさせることで、流体試料を光学デバイス50に接触させることである。
【0041】
そして、本実施形態の光学デバイスユニットでは、第1シャッター20A及び第2シャッター20Bを開放して、流体試料を試料導入部10内に導入する第1状態と、第1シャッター20A及び第2シャッター20Bを閉鎖して、流体試料を試料導入部10内に閉じ込めた第2状態とを実現することができる。第2の状態にて、光源より光を発して検出を実施すれば、試料導入部10内に閉じ込められた流体試料は排出されずに検出に寄与させることができる。また、検出時に試料導入部10内に外光が取り込まれることを低減できる。
【0042】
図2に示すように、試料導入部10には、試料供給流路40Aと試料排出流路40Bを設けることができる。試料供給流路40Aは、一端に外気と連通する供給口41Aを有し、他端が導入口14Aと連通している。試料排出流路40Bは、一端に外気と連通する排出口41Bを有し、他端が導出口14Bと連通している。
【0043】
本実施形態では、図2に示すように、試料導入部10の側壁12は円周壁であり、側壁12と対向する円周内壁16を有している。導入口14A及び導出口14Bは、側壁12と円周内壁16とを貫通している。
【0044】
ここで、導出口14Bは、平面視にて、円周内壁16の中心Pと導入口14Aとを結ぶ線L上から外れた位置に配置されることが好ましい。こうすると、導入口14Aから直ちに導出口14Bに向かう流体試料は少なく、円周内周16に沿うC方向にむかう流体試料の旋回流が生ずる。これにより、導入された流体試料が光学デバイス50の金属膜または金属微粒子等と接触する機会が増大される。
【0045】
図2に示すように、試料供給流路40A及び試料排出流路40Bは、円周内壁16の一つの接線方向と平行な方向に沿って互いに同じ向きに延びる部分を、少なくとも試料導入部10との連結端側に有することができる。こうすると、導入口14A及び導出口14B付近の流体試料は接線方向と平行に流れるので、上述の旋回流がより発生し易くなる。
【0046】
また、第1シャッター20Aが導入口14Aを開放する時の第1開口面積を、第2シャッター20Bが導出口を開放する時の第2開口面積よりも小さくすることができる。こうすると、導入口14A側の流路が絞られるので、流体試料の導入流速を速くすることができる。それにより、上述した旋回流がより発生し易くなる等の利点がある。
【0047】
なお、上述した第1,第2開口面積の関係は、第1,第2シャッター20A,20Bを図1(C)の通り全開状態として、導入口14Aの開口面積を導出口14Bの開口面積よりも小さくしておくことで成立させることができる。この他、第1シャッター20Aを図1(B)に示すように部分開放するなど、第1,第2シャッター20A,20Bの駆動制御により上述の関係を成立させても良い。
【0048】
1.2.シャッターの駆動方式
図2には、第1,第2シャッター20A,20Bの駆動方式の一例が示されている。第1,第2シャッター20A,20Bは、第1,第2弾性体(バネ)21A,21Bにより図示A,B方向(シャッター閉鎖方向)に付勢されている。第1,第2シャッター20A,20Bには第1,第2ラック22A,22Bが固定されている。これら第1,第2ラック22A,22Bに第1,第2のシャッター駆動歯車23A,23が噛合している。第1,第2シャッター駆動歯車23A,23Bを駆動することで、第1,第2シャッター20A,20Bは第1,第2弾性体21A,21Bの付勢力に抗して開放される。第1,第2シャッター駆動歯車への駆動力を解除すれば、第1,第2シャッター20A,20Bは第1,第2弾性体21A,21Bにより閉鎖駆動される。
【0049】
なお、第1,第2シャッター20A,20Bは側壁12に沿って移動できるが、両者の間隙は狭く、流体試料や光を十分に遮断できる構造や材質となっている。また、第1,第2シャッター20A,20Bはそれぞれ独立に開閉が可能であることが望ましいが、両者が同時に開閉する機構でもよい。
【0050】
図3には、図2の剛体である第1,第2シャッター20A,20Bに代えて、弾性体ないしは柔軟材からなる第1,第2シャッター24A,24Bが、導入口14A,導出口14Bを開閉可能に配置されている。第1,第2シャッター24A,24Bは一端が側壁12に設けられた固定端25A,25Bであり、自由端である他端に第1,第2永久磁石26A,26Bが固定されている。
【0051】
閉鎖状態にある第1,第2シャッター24A,24Bの第1,第2永久磁石25A,25Bと対向して、第1,第2電磁石27A,27Bが側壁12に固定されている。通常は、第1,第2シャッター24A,24Bに取り付けられた第1,第2永久磁石26A,26Bが第1,第2電磁石27A,27Bの磁極に吸引されて、第1,第2シャッター24A,24B閉状態を維持している。第1,第2電磁石27A,27Bを所定の通電方向に通人して駆動すると、第1,第2永久磁石26A,26Bを反発させる力を作用させると、第1,第2シャッター24A,24Bは図示D,E方向に開放される。この場合も、第1,第2シャッター24A,24Bと側壁12との隙間は狭く、流体試料や光を十分に遮断できる構造や材質となっている。また、また、第1,第2シャッター24A,24Bはそれぞれ独立に開閉が可能であることが望ましいが、両者が同時に開閉する機構でもよい。
【0052】
1.3.検出方法
1.3.1.検出方法の概要
上述したシャッター付の試料導入部を用いる本実施形態に係る検出方法を、図2の例を用いて説明する。図3の例でも、シャッター駆動方式が異なるだけで、図2と同様に実施できる。
【0053】
この検出方法では、ファン30を駆動し、第1シャッター20A及び第2シャッター20Bを開放して、流体試料を試料導入部10に導入する第1工程に加えて、次の第2工程を設けることができる。第2工程では、第1シャッター20A及び第2シャッター20Bを閉鎖して、流体試料を試料導入部10内に閉じ込めた状態にて、光源から光を発して検出する。
【0054】
第1工程では、試料導入部10に導入口14Aを介して流体試料が導入される一方で、導出口14Bを介して流体試料が導出されている。そのため、吸引流速に従って移動する流体試料の吸着が効率的とは言えない。そこで、第2工程では流体試料を試料導入部10内に閉じ込めた状態で、検出するようにしている。第1,第2シャッターを閉じたとしても、シャッター閉鎖直前に移動していた流体試料は、シャッター閉鎖後も慣性力で浮遊するので、光学デバイス50上の金属膜や金属微粒子との接触機会は確保される。なにより、試料導入部10から流体試料が漏れない状態を確保できるので導入された流体試料を有効活用できる。
【0055】
第2工程の他の利点として、外光の遮光効果が高まることである。光学デバイス50から発せられる光以外の外光は、S/Nを悪化させて検出精度の劣化の要因となりうるので、検出時の遮光は検出精度の向上につながる。
【0056】
さらに加えて、第2状態での検出前には必ず第1工程が実施されるので、検出前の第1工程により光学デバイスをクリーンアップすることも可能となる。そりにより、繰り返し検出しても、毎回フレッシュな流体試料に基づいて検出を実施することが可能となる。
【0057】
1.3.2.検出方法の具体例1
図4及び図5は、本実施形態の検出方法を示すイミングチャートである。先ず、図4の検出方法を説明する。
【0058】
先ず、ファン20を動作させる。次に、導出口14B側の第2シャッター20Bを動作させてシャッターBを開口させる。次に第1,第2シャッター20A,20Bを開放して第1工程を実施する。その際、導出口14B側の第2シャッター20Bを第1シャッター20Aよりも先に開放開始することが好ましい。こうすると、第1工程前に試料導入部10内を予備排気することができる。予備排気により、試料導入部10内にあった流体試料が排出され、試料導入部10内がクリーンアップされる。
【0059】
第1,第2シャッター20A,20Bが共に開放状態となると、供給口41A、試料供給流路40A及び導入口14Aを介して、流体試料が試料導入部10内に導入される第1工程が開始される。このとき、図2に示すように試料導入部10内では図示C方向に旋回流が生ずる。特に、第1シャッター20Aを図1(B)の部分開放状態とし、第2シャッター20Bを図1(C)の全開状態とすると、流速が速くなって旋回流が強まる。これらにより、試料導入部10内の試料分子を含む流体試料が光学デバイス50と接触する機会が増大し、検出感度が高まる。
【0060】
その後、第1,第2シャッター20A,20Bを閉鎖して、第1工程を終了させ、第2工程を開始する。このとき、図4に示すように、第1シャッター20Aよりも第2シャッター20Bを遅れて閉鎖駆動することができる。こうすると、旋回流の維持に役立つ。ただし、第1工程の終期で、第1シャッター20Aが閉鎖状態で第2シャッター20Bが開放状態である期間が長いと、第1工程の終期で試料導入部10内に導入された流体試料が排出されてしまうので、注意を要する。逆に、第1工程の終期では第2シャッター20Bを先に閉鎖しても、第1シャッター20Aが開放されている間に慣性力で流体試料が試料導入部10内に導入され、試料濃度を高められる可能性がある。
【0061】
第1,第2シャッター20A,20Bが共に閉鎖されると、流体試料は試料導入部10内に閉じ込められ、慣性力で旋回流が維持される。それにより、光学デバイス50の金属膜又は金属微粒子に試料分子を含む流体試料が吸着される機会を増大できる。また、第1,第2シャッター20A,20Bの閉鎖により、試料導入部10は外光から遮光された状態となる。
【0062】
次に、図4に示すように光源をONさせ、光学デバイス50へ例えば直線偏光のレーザー光を照射する。それにより、光とプラズモンと結合させ、あるいはエバネッセント波を利用して、光学デバイス50が試料分子を含む流体試料を反映した光を発することができる。それにより、その検出対象の試料分子に特有のスペクトルが得られ、試料分子の検出が完了する。
【0063】
図4では、検出終了後に第3工程を実施して、次の検出に備えている。第3工程では、一連の流路に残留する試料分子を含む流体試料除外するために、再度ファン30を動作させ、第1,第2シャッター20A,20Bを開放している。
【0064】
1.3.3.検出方法の具体例2
図5には、他の検出方法が示されている。図5の方法は、図4のように第1工程にて連続的に流体試料を吸引するのではなく、複数の第1工程を断続的に実施して流体試料を吸引する例である。人間を含む動物が臭いを嗅ぐ時に、「クンクン」という断続的な動作と同じように、流体試料を吸引する。
【0065】
図4のように連続的に吸引する場合には、流体的な流れが層流(レイノルズ数が小さく、乱れが少ない流れ)になるが、図5のように断続的に吸引すると流体の流れが一旦止まるため、乱れが生じて攪拌させる効果をもたらすと考えられる。流体試料中の試料分子が不均一に含まれている場合には、流体採取方法として有効な方法と考えられる。
【0066】
2.試料の検出原理
図6(A)、図6(B)、図6(C)及び図6(D)は、ラマン散乱光の検出原理の説明図を示す。図6(A)はラマン分光について説明され、試料分子1を含む流体試料に入射光(振動数ν)が照射されると、一般に、入射光の多くは、レイリー散乱光として散乱され、レイリー散乱光の振動数ν又は波長は変化しない。入射光の一部は、ラマン散乱光として散乱され、ラマン散乱光の振動数(ν−ν’及びν+ν’)又は波長は、試料分子1の振動数ν’(分子振動)が反映される。入射光の一部は、試料分子1を振動させてエネルギーを失うが、試料分子1の振動エネルギーがラマン散乱光の振動エネルギー又は光エネルギーに付加されることもある。このような振動数のシフト(ν’)をラマンシフトと呼ぶ。
【0067】
図6(B)には、試料分子1が例えばアセトアルデヒド分子である場合のラマンスペクトルが示されている。言い換えれば、図6(B)に示すラマンスペクトルを分析することで、例えばアセトアルデヒド分子を特定することができる。しかしながら、試料分子1が微量である場合、ラマン散乱光は、一般に微弱であり、試料分子1を検出又は特定することは困難である。そこで、増強電場を提供し、ラマン散乱光を増強電場によって増強することが好ましい。なお、図6(B)のラマンスペクトルは、ラマンシフトを波数で表している。
【0068】
図6(C)の例では、金属微粒子(金属ナノ粒子)53に入射光(照射光)を照射した時に形成される増強電場54について説明される。入射光の波長よりも小さな金属微粒子(金属ナノ粒子)53に対して入射光を照射する場合、入射光の電場は、金属微粒子53の表面に存在する自由電子に作用し、共鳴を引き起こす。これにより、自由電子による電気双極子が金属微粒子53内に励起され、金属微粒子53の近傍に入射光の電場よりも強い増強電場54が形成される。この現象は、入射光の波長よりも小さな金属微粒子53に特有の現象である。
【0069】
図6(D)は、光学デバイス50に入射光を照射した時に表面増強ラマン散乱(SERS: Surface Enhanced Raman Scattering)について説明している。光学デバイス50は、例えば基板51を有し、基板51の凸部52に金属微粒子53を形成する。複数の凸部52上の構造として、複数の凸部52には、例えばAuまたはAg等の金属ナノ粒子(金属微粒子)53が例えば蒸着、スパッタ等により形成される。結果として、光学デバイス50は、1〜1000nmの凸部を有する金属ナノ構造を有することができる。1〜1000nmの凸部を有する金属ナノ構造とは、基板51の上面を当該サイズの凸部構造(基板材で)を持つように加工する他に、基板上に当該サイズの金属微粒子を蒸着・スパッタ等で固着させる、または、基板上にアイランド構造を有する金属膜を形成する等の方法でも形成できる。
【0070】
このような光学デバイス50に入射光を照射することで、金属微粒子53間に増強電場54を形成することができる。これは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)とも呼ばれる。この現象は、入射光の波長よりも小さな1〜1000nmの凸部を有する金属ナノ粒子53の電気伝導体に特有の現象である。
【0071】
増強電場54に試料分子1が入り込むと、その試料分子1によるラマン散乱光は増強電場54で増強されて、ラマン散乱光の信号強度は、強くなる。このような表面増強ラマン散乱では、試料分子1が微量であっても、検出感度を高めることができる。
【0072】
図6(D)の例では、光学デバイス50の表側(金属微粒子53側)から入射光が照射されているが、デバイス50の裏側(基板51側)から入射光を照射してもよい。
【0073】
2.検出装置の全体構成
図7は、本実施形態の検出装置の具体的な構成例を示す。図7に示される検出装置200は、図2に示す第1,第2シャッター20A,20B(図7では省略)や歯車23A,23B等を備えた試料導入部10、ファン30、試料供給流路40A及び試料排出流路40B、光学デバイス50等を備えた光学デバイスユニット60を有する。光学デバイス50には、試料導入部10の少なくとも一部に設けられ光を透過する光透過部11を介して光が入射される。検出装置200の筐体70は、ヒンジ部72により開閉可能なセンサーカバー71を備える。光学デバイスユニット60は、センサーカバー71内にて、筐体70に対して着脱自在に配置される。光学デバイスユニット60が装着/非装着状態は、センサー73により検出できる。なお、試料供給流路40Aの供給口41Aには、除塵フィルター42が設けられる。
【0074】
試料供給流路40A及び試料排出流路40Bは、試料導入部10の円周内壁16(図2及び図3)の接線方向と平行に水平に延び、そこから上方に延び、さらに水平に延びている。よって、試料供給流路40Aは、供給口41Aから直進する外光を遮光する壁部43Aを含み、試料排出流路40Bは、排出口41Bから直進する外光を遮光する壁部43Bを有する。これにより、外光が試料導入部10内に入射し難い構造となっている。
【0075】
なお、流体試料を吸引及び排出する経路形状については、外部からの光がセンサーに入らないように、かつ、流体試料に対する流体抵抗が小さくなるように、夫々考慮されたものなっている。外光が光学デバイス50に入らないようにすることで、ラマン散乱光以外の雑音となる光が入らず、信号のS/N比が向上する。流路形状と共に、流路を形成する材料も、光を反射し難いような材料、色、表面形状を選択することが必要となる。また、流体試料に対する流体抵抗が小さくなるようにすることで、この装置の近傍の流体試料を多く収集でき、高感度な検出が可能になる。流路の形状は、できるだけ角部をなくし滑らかな形状にすることで、角部での滞留がなくなる。また、負圧発生部30としては、流路抵抗に応じた静圧、風量のファンやポンプを選択することも必要である。
【0076】
筐体70内には、光源80、光学系90と、光検出部100と、信号処理・制御部110と、電力供給部120とが設けられている。筐体70内にはさらに、光学デバイスユニット60内の第1,第2駆動歯車23A,23Bに駆動力を付与して第1,第2シャッター20A,20B(図2及び図3)を駆動するシャッター駆動部130,131を有する。
【0077】
図7において、光源80は例えばレーザーであり、小型化の観点から好ましくは垂直共振型面発光レーザーを用いることができるが、これに限定ざれない。
【0078】
光源80からの光は、光学系90を構成するコリメーターレンズ91により平行光にされる。コリメーターレンズ91の下流に偏光制御素子を設け、直線偏光に変換しても良い。ただし、光源80として例えば面発光レーザーを採用し、直線偏光を有する光を発光可能であれば、偏光制御素子を省略することができる。
【0079】
コリメーターレンズ91により平行光された光は、ハーフミラー(ダイクロイックミラー)92により光学デバイス50の方向に導かれ、対物レンズ93で集光され、光学デバイス50に入射する。光学デバイス50からのレイリー散乱光及びラマン散乱光は、対物レンズ93を通過し、ハーフミラー92によって光検出部100の方向に導かれる。
【0080】
光学デバイス50からのレイリー散乱光及びラマン散乱光は、集光レンズ94で集光されて、光検出部100に入力される。光検出部100では先ず、光フィルター101に到達する。光フィルター101(例えばノッチフィルター)によりラマン散乱光が取り出される。このラマン散乱光は、さらに分光器102を介して受光素子103にて受光される。分光器102は、例えばファブリペロー共振を利用したエタロン等で形成されて通過波長帯域を可変とすることができる。分光器102を通過する光の波長は、信号処理・制御回路110により制御(選択)することができる。受光素子103によって、試料分子1に特有のラマンスペクトルが得られ、得られたラマンスペクトルと予め保持するデータと照合することで、試料分子1を特定することができる。
【0081】
電力供給部120は、電源接続部121からの電力を、光源80、光検出部100、信号処理・制御部110及びファン30等に供給する。電力供給部120は、例えば2次電池で構成することができ、1次電池、ACアダプター等で構成してもよい。通信接続部111は信号処理・制御部110と接続され、信号処理・制御部110に対してデータや制御信号等を媒介する。
【0082】
図7の例では、信号処理・制御部110は、図7に示される光源80以外の光検出部100、ファン30等への命令を送ることができる。さらに、信号処理・制御部110は、ラマンスペクトルによる分光分析を実行することができ、信号処理・制御部110は、試料分子1を特定することができる。なお、信号処理・制御部110は、ラマン散乱光による検出結果、ラマンスペクトルによる分光分析結果等を例えば通信接続部111に接続される外部機器(図示せず)に送信することができる。
【0083】
図8は、図7の検出装置200の制御系ブロック図である。図8に示されるように、検出装置200は、例えばインターフェース140、表示部150及び操作部160等をさらに含むことができる。また、図7に示される信号処理・制御部110は、図8に示すように制御部としての例えばCPU(Central Processing Unit)112、RAM(Random Access Memory)113、ROM(Read Only Memory)114等を有することができる。さらに、検出装置200は、図7に示す各部を駆動する光源ドライバー80A、分光器ドライバー102A、受光回路103A、ファンドライバー30A、第1,第2シャッタードライバー130A,131A等を含むことができる。
【0084】
3.分光分析
図9(A)、図9(B)、図9(C)は、ラマンスペクトルのピーク抽出の概要説明図を示す。図9(A)は、ある物質に励起レーザーを照射した時に検出されるラマンスペクトルを示し、ラマンシフトを波数で表している。図9(A)の例では、第1のピーク(883cm−1)と第2のピーク(1453cm−1)が特徴的と考えられる。得られたラマンスペクトルと予め保持するデータ(第1のピークのラマンシフト及び光強度、第2のピークのラマンシフト及び光強度等)と照合することで、流体試料中の検出対象物質を特定することができる。
【0085】
図9(B)は、解像度が粗い(40cm−1)分光器102で受光素子103が第2のピークの周辺のスペクトルを検出した時の信号強度(白丸)を示す。図9(C)は、解像度が細かい(10cm−1)分光器102で受光素子103が第2のピークの周辺のスペクトルを検出した時の信号強度(白丸)を示す。10cm−1程度で解像度が細かい場合には、第2のピークのラマンシフト(黒丸)を正確に特定し易くなる。
【0086】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また光学デバイス、検出装置、分析装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 試料分子、10 試料導入部、11 光透過部、12 側壁、14 開口、14A 導入口、14B 導出口、16 内周壁、20A,20B 第1,第2シャッター、30 吸引駆動部(ファン)、40A 試料供給流路、40B 試料排出流路、41A 供給口、41B 排出口、43A,43B 壁部、50 光学デバイス、51 基板、52 凸部、53 金属微粒子、54 増強電場、60 光学デバイスユニット、70 筐体、71 センサーカバー、72 ヒンジ部、73 センサー、80 光源、90 光学系、100 光検出部、110 信号処理・制御部、120 電力供給部、130,131 シャッター駆動部、200 検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口と導出口とを有し、流体試料が導入される試料導入部と、
前記試料導入部の少なくとも一部に設けられ光を透過する光透過部と、
前記試料導入部内に配置され、前記光透過部を介して入射する光を受けて前記流体試料を反映した光を発する光学デバイスと、
前記試料導入部の前記導入口を開閉する第1シャッターと、
前記試料導入部の前記導出口を開閉する第2シャッターと、
前記導出口を介して前記試料導入部内を負圧にする負圧発生部と、
を有することを特徴とする光学デバイスユニット。
【請求項2】
請求項1において、
一端に外気と連通する供給口を有し、他端が前記導入口と連通する試料供給流路と、
一端に外気と連通する排出口を有し、他端が前記導出口と連通する試料排出流路と、
をさらに有し、
前記試料供給流路は、前記供給口から直進する外光を遮光する壁部を含み、
前記試料排出流路は、前記排出口から直進する外光を遮光する壁部を含むことを特徴とする光学デバイスユニット。
【請求項3】
請求項2において、
前記光学デバイスは、1〜1000nmの凸部を有する金属ナノ構造を備えること特徴とする光学デバイスユニット。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記第1シャッターが前記導入口を開放する時の第1開口面積を、前記第2シャッターが前記導出口を開放する時の第2開口面積よりも小さくする機構を有することを特徴とする光学デバイスユニット。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、
前記試料導入部は円周内壁を有し、
前記導出口は、平面視にて、前記円周内壁の中心と前記導入口とを結ぶ線上から外れた位置に配置されることを特徴とする光学デバイスユニット。
【請求項6】
請求項5において、
前記試料供給流路及び前記試料排出流路は、前記円周内壁の一つの接線方向と平行な方向に沿って互いに同じ向きに延びる部分を、少なくとも前記試料導入部との連結端側に有することを特徴とする光学デバイスユニット。
【請求項7】
請求項6において、
前記流体試料を反映した光はラマン散乱光であることを特徴とする光学デバイスユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか記載の光学デバイスユニットと、
前記光源と、
前記光学デバイスからの前記流体試料を反映した光を検出する光検出部とを含むことを特徴とする検出装置。
【請求項9】
光学デバイスユニットと、前記光学デバイスユニットに向けて光を発する光源と、前記光学デバイスユニットからの光を検出する光検出部とを有し、
前記光学デバイスユニットが、
導入口と導出口とを有し、流体試料が導入される試料導入部と、
前記試料導入部の少なくとも一部に設けられ光を透過する光透過部と、
前記試料導入部内に配置され、前記光透過部を介して入射する光を受けて前記流体試料を反映した光を発する光学デバイスと、
前記試料導入部の前記導入口を開閉する第1シャッターと、
前記試料導入部の前記導出口を開閉する第2シャッターと、
前記導出口を介して前記試料導入部内を負圧にする負圧発生部と、
を有する検出装置での検出方法であって、
前記負圧発生部を駆動し、前記第1シャッター及び前記第2シャッターを開放して、前記流体試料を前記試料導入部に導入する第1工程と、
その後に、前記第1シャッター及び前記第2シャッターを閉鎖して、前記流体試料を前記試料導入部内に閉じ込めた状態にて、前記光源から光を発して検出する第2工程と、
を有することを特徴とする検出方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記第1工程では、前記第1シャッターが前記導入口を開放する時の第1開口面積を、前記第2シャッターが前記導出口を開放する時の第2開口面積よりも小さくすることを特徴とする検出方法。
【請求項11】
請求項9または10において、
前記第2工程では、前記第1シャッターよりも早く前記第2シャッターの開放を開始することを特徴とする検出方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかにおいて、
前記第1工程では、前記負圧発生部を連続駆動中に、前記第1シャッター及び前記第2シャッターを複数回に亘って断続的に開閉することを特徴とする検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220433(P2012−220433A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88914(P2011−88914)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】