説明

光学デバイス欠陥検査方法及び光学デバイス欠陥検査装置

【課題】
曲率の違いや光学デバイスの位置に影響されない高速かつ安価な光学デバイス欠陥検査方法及び光学デバイス欠陥検査装置を提供すること。
【解決手段】
撮像手段3の焦点を被検査レンズ2に合わせ、撮像手段3により撮像される被検査レンズ2画像内のドットパターン8の濃度差が無くなる位置まで光源5を被検査レンズ2より移動させ、濃度差の無い画像内に生じる画像の歪み11により被検査レンズ2の欠陥を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学デバイスの欠陥部分を検出する光学デバイス欠陥検査方法及び光学デバイス欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の光学機器は様々な電子部品やレンズ等の光学デバイスにより構成される。光学デバイスとしてのレンズは、入射した光がレンズの各部で正しく屈折して進行するように精度良く加工されている必要があり、製造過程において表面の凹凸や内部組成の不良による光学歪みの有無が検査される。従来このような検査においては、基準となる参照レンズと検査が行われる被検査レンズとに同等の条件で光を透過させ、それぞれの光束を重ね合わせて干渉させることにより生じる干渉縞から欠陥の有無を検出する干渉式レンズ検査装置及び方法が用いられていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、このような検査装置及び方法では、被検査レンズの曲率に合わせた参照レンズを必要とするため、多品種生産においては生産するレンズの種類が変わる毎に参照レンズを用意する必要がある。更に、それぞれのレンズを正確に位置決めする必要があるため設定に時間がかかり、干渉縞の正常部と欠陥部との見え方の差を認識するには熟練を要していた。
【0004】
このような問題に対応するため、干渉縞を用いずに光学デバイスを検査する方法として、光源装置の白黒パターンの濃淡が無くなるまで撮像手段のピントをずらして光学デバイスの欠陥の有無を検出する欠陥検出方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、光源装置に備えられた遮光部材に焦点が合わせられたレンズを撮像手段で撮像することにより光学デバイスの欠陥の有無を検出する欠陥検出装置も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2002−357505号公報
【特許文献2】特開平8−220021号公報
【特許文献3】特開平9−61291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載されるような発明は、連続した板状光学デバイスの検査用であって、レンズのような大きな曲率を有する光学デバイスでは位置による見え方が異なるため、特許文献2に記載されるような発明ではレンズの検査には適さない。
【0007】
また、特許文献3に記載されるような発明では、被検査レンズの位置を精度良く合わせなければならず、多品種かつ大量に検査が必要な場合には再調整に時間がかかり非常に効率の悪いものであった。
【0008】
本発明はこのような問題に対して成されたものであり、光学デバイスの欠陥を容易に検出し、曲率の違いや光学デバイスの位置に影響されない高速かつ安価な光学デバイス欠陥検査方法及び光学デバイス欠陥検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、遮光部と透光部とにより形成されるパターンを備えた光源装置より前記パターンを透過させて光学デバイスの一方の面へ光を照射し、前記光学デバイスの光が照射される面の反対側の面より前記光学デバイスを撮像手段で撮像することにより前記光学デバイスの欠陥を検査する光学デバイス欠陥検査方法において、前記撮像手段の焦点を前記光学デバイスに合わせ、該撮像手段により撮像される前記光学デバイスの画像内の前記遮光部と前記透光部との濃度差が無くなる位置まで前記光源装置を移動させ、濃度差の無い前記画像内に生じる該画像の歪みにより該光学デバイスの欠陥を検出することを特徴としている。
【0010】
また、本発明は前記発明において、前記光学デバイスは単一の非球面凸レンズであること、前記パターンはドットパターンであることも特徴としている。
【0011】
更に、本発明は前記発明において、前記撮像手段は前記光学デバイスに焦点を合わせた後、該光学デバイスの軸方向又は軸方向に対して直交する方向であって該光学デバイスの近傍に焦点位置を移動させてから該光学デバイスを撮像することも特徴としている。
【0012】
本発明によれば、光学デバイスとしての単一の非球面凸レンズの表面の凹凸や内部組成の不良による光学歪みの有無を検査する光学デバイス欠陥検査装置は、光学デバイスを一方から撮像するCCDカメラ等の撮像手段と、遮光部と透光部とにより形成されたドットパターンからなるパターン備え撮像手段が光学デバイスを撮像する面の反対側の面からパターンを透過させて光学デバイスへ光を照射する光源装置と、撮像手段と光源装置との間に位置し複数の光学デバイスを載置して移動可能に設けられたトレイと、光源装置を移動させる移動手段と、撮像手段により撮像された画像を表示する表示手段が設けられた制御手段と、を備えている。
【0013】
このような光学デバイス欠陥検査装置により光学デバイスの検査を行う際には、まず撮像手段の焦点を光学デバイスに合わせる。続いて、撮像手段により撮像されて表示手段に表示された光学デバイスの画像内のパターンによる遮光部と透光部との濃度差が無くなり、全体に均一な濃淡となる位置まで光源装置を光学デバイスより遠ざけるまたは近づける方向に移動させる。このように光源装置を移動させた状態で画像内に歪みが生じているかを確認し、歪みが生じている場合は歪み部分に欠陥が生じていると認識される。
【0014】
これにより、撮像手段、光学デバイス、光源装置がそれぞれ粗い位置決めであって、光学デバイスの曲率が異なっても検査領域全体に遮光部と透光部との濃度差が無い全体に均一な灰色状態が即座に作られ、欠陥を容易に検出し、高速かつ安価な光学デバイス欠陥検査が可能となる。
【0015】
また、本発明においては、撮像手段は光学デバイスに焦点を合わせた後、光学デバイスの軸方向又は軸方向に対して直交する方向であって光学デバイスの近傍に焦点位置を移動させてから光学デバイスを撮像するので、欠陥部分が見え難い場合であっても撮像手段の焦点がより見えやすい位置に移動するので欠陥の検出が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、光学デバイス欠陥検査方法及び光学デバイス欠陥検査装置によれば、遮光部と透光部とにより形成されるパターンを備えた光源装置を光学デバイスから所定の位置まで移動させた状態で一方の面へパターンを透過させて光を照射すると共に、光が照射された面とは反対側の面から光学デバイスを撮像することより光学デバイスの欠陥を検出するので、欠陥を容易に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下添付図面に従って本発明に係る光学デバイス欠陥検査方法及び光学デバイス欠陥検査装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0018】
まず、本発明に係わる光学デバイス欠陥検査装置の構成を説明する。図1は欠陥検査装置の構成を示した斜視図、図2は光学デバイスを撮像して検査を行う様子を模式的に示した側面図である。
【0019】
欠陥検査装置1は、図1に示すように、カメラ等に使用される光学デバイスである非球面凸レンズの被検査レンズ2を一方から撮像する撮像手段3と、移動手段4によりZ方向に移動可能な光源装置5と、撮像手段3と光源装置5との間に設けられ複数の被検査レンズ2を載置して不図示の移動手段によりX及びY方向に移動するトレイ6を備えている。
【0020】
更に欠陥検査装置1には、撮像手段3により撮像された画像を表示する表示手段を備え、移動手段4等の欠陥検査装置1の各部を制御する制御手段7が備えられている。
【0021】
撮像手段3はCCD等を使用したカメラであって、不図示の支持部材により支持されてトレイ6に載置された被検査レンズ2のいずれか1つを上方から撮像する。撮像手段3により撮像された画像は制御手段7に備えられた表示手段であるモニター7Aに表示される。撮像手段3より制御手段7へ送られてモニター7Aに表示された画像は、目視により確認されるか、または制御手段7に記憶され既知の様々な画像処理手法により画像処理される。
【0022】
光源装置5は、遮光部と透光部とにより形成されるパターンであるドットパターン8を備え、撮像手段3が被検査レンズ2を撮像する面の反対側の面から被検査レンズ2へドットパターン8を透過させて光を照射する。光源装置5はボールネジやモータ等の既知の移動機構により構成される移動手段4によりトレイ6が移動するX及びY方向と直行するZ方向に移動可能に設けられている。
【0023】
このような構成の欠陥検査装置1により被検査レンズ2を検査する際には、まず図2のように撮像手段3の焦点が被検査レンズ2に合わせられる。撮像手段3の焦点が合わせられた後、撮像手段3により撮像される画像内の被検査レンズ2に写るドットパターン8の遮光部と透光部との濃度差が無くなり全体に均一な濃淡の画像となる位置まで光源装置5を被検査レンズ2より遠ざけるまたは近づける方向に移動させる。この均一な濃淡の画像となった被検査レンズ2内に生じる画像の歪みより被検査レンズ2の欠陥が検出される。
【0024】
これにより、被検査レンズ2、撮像手段3、光源装置5がそれぞれ粗い位置決めであって、被検査レンズ2の曲率が異なっても被検査レンズ2全体に遮光部と透光部との濃度差が無い全体に均一な灰色状態の画像が即座に作られ、欠陥を容易に検出し、高速かつ安価な光学デバイス欠陥検査が可能となる。
【0025】
なお被検査レンズ2の品種により、撮像手段3の焦点位置が被検査レンズ2に合わせられたままでは欠陥による画像の歪みが見え難い場合、撮像手段3の焦点を被検査レンズ2へ合わせた後、被検査レンズ2の軸方向であるZ方向又は軸方向に対して直交するX、Y方向の近傍へ撮像手段3の焦点位置を移動させてから被検査レンズ2を撮像して欠陥検査を行っても良い。これにより、欠陥部分が見え難い場合であっても撮像手段3の焦点がより見えやすい位置に移動するので欠陥の検出が容易になる。
【0026】
次に、本発明に係わる光学デバイス欠陥検査方法について説明する。図3は光学デバイスに焦点を合わせた後に光学デバイスを撮像手段で撮像した画像を示した図、図4は図3の位置より光源装置を移動させた際に光学デバイスを撮像手段で撮像した画像を示した図、図5は欠陥のある光学デバイスを撮像した画像の一例を示した図である。
【0027】
図1に示す欠陥検査装置1により光学デバイスである被検査レンズ2の欠陥の検査を行う際には、まず図2に示されるように、トレイ6がXY方向に移動してトレイ6上に載置された複数の被検査レンズ2のうちの一つを撮像手段3の下に位置づける。撮像手段3は、被検査レンズ2が直下に位置づけられた後に被検査レンズ2の中心付近に焦点を合わせて撮像の準備を行う。
【0028】
このとき、撮像手段3は被検査レンズ2の品種に合わせ、焦点位置を被検査レンズ2の軸方向であるZ方向又は軸方向に対して直交するX、Y方向の近傍へ移動させてから被検査レンズ2の撮像を行うようにしてもよい。
【0029】
撮像手段3による被検査レンズ2の撮像準備が出来た後、欠陥検査装置1は移動手段4により光源装置5をZ方向に移動させて被検査レンズ2より遠ざけるまたは近づけてドットパターン8を被検査レンズ2の焦点位置から離す。これにより、撮像手段3により撮像される画像は、図3に示す画像10Aように被検査レンズ2に写るドットパターン8の遮光部8Aと透光部8Bとの濃度差が確認できる画像から、図4に示す画像10Bのように被検査レンズ2に写る遮光部8Aと透光部8Bとが重なり濃度差が無くなった全体に均一な濃淡の画像に変化する。
【0030】
このとき、被検査レンズ2に欠陥が生じている場合には入射した光が正しく屈折して進行しない為、例えば図5に示す画像10Cように、欠陥が生じている場所に歪み11が生じる。これにより、歪み11が生じている場所に欠陥が生じていると認識され、被検査レンズ2、撮像手段3、光源装置5がそれぞれ粗い位置決めであっても欠陥を容易に検出することが可能となる。
【0031】
歪み11の確認は、制御手段7のモニター7Aに表示された撮像手段3による画像を目視で確認するか、または画像を制御手段7に記憶した後に各種の画像処理手法により解析することで歪み11を認識してもよい。1つの被検査レンズ2の欠陥の有無が確認された後、トレイ6が不図示の移動手段によりX,Y方向へ移動して新たな被検査レンズ2が撮像手段3の下に位置づけられる。
【0032】
以上説明したように、本発明の光学デバイス欠陥検査方法及び光学デバイス欠陥検査装置によれば、遮光部と透光部を有する光源装置を光学デバイスから所定の位置まで移動させた状態で一方の面へ光を照射すると共に、光が照射された面とは反対側の面から光学デバイスを撮像することより光学デバイスの欠陥を検出するので、撮像手段、光学デバイス、光源装置がそれぞれ粗い位置決めであって、光学デバイスの曲率が異なっても検査領域全体に遮光部と透光部との濃度差が無い全体に均一な灰色状態が即座に作られ、欠陥を容易に検出し、高速かつ安価な光学デバイス欠陥検査が可能となる。
【0033】
なお、本実施の形態では光源装置5に備えられた遮光部と透光部とにより形成されるドットパターン8は、検査を行う光学デバイスの種類によりドットのサイズ、ピッチ、形状、配列等を変更してもよい。ドットパターン8の変更方法としては、光源装置5にドッドの表示手段を備えるか、光源装置5に設けられたドットパターンが形成された部材を交換する形態のいずれでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係わる欠陥検査装置の構成を示した斜視図。
【図2】光学デバイスを撮像して検査を行う様子を模式的に示した側面図。
【図3】光学デバイスに焦点を合わせた後に光学デバイスを撮像手段で撮像した画像を示した図。
【図4】図3の位置から光源装置を移動させた際に光学デバイスを撮像手段で撮像した画像を示した図。
【図5】欠陥のある光学デバイスを撮像した画像の一例を示した図。
【符号の説明】
【0035】
1…欠陥検査装置,2…被検査レンズ(光学デバイス),3…撮像手段,4…移動手段,5…光源装置,6…トレイ,7…制御手段,7A…モニター(表示手段),8…ドットパターン(パターン),8A…遮光部,8B・・・透光部,10A、10B、10C…画像,11…歪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光部と透光部とにより形成されるパターンを備えた光源装置より前記パターンを透過させて光学デバイスの一方の面へ光を照射し、前記光学デバイスの光が照射される面の反対側の面より前記光学デバイスを撮像手段で撮像することにより前記光学デバイスの欠陥を検査する光学デバイス欠陥検査方法において、
前記撮像手段の焦点を前記光学デバイスに合わせ、該撮像手段により撮像される前記光学デバイスの画像内の前記遮光部と前記透光部との濃度差が無くなる位置まで前記光源装置を移動させ、濃度差の無い前記画像内に生じる該画像の歪みにより該光学デバイスの欠陥を検出することを特徴とする光学デバイス欠陥検査方法。
【請求項2】
前記光学デバイスは単一の非球面凸レンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学デバイス欠陥検査方法。
【請求項3】
前記パターンはドットパターンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学デバイス欠陥検査方法。
【請求項4】
前記撮像手段は前記光学デバイスに焦点を合わせた後、該光学デバイスの軸方向又は軸方向に対して直交する方向であって該光学デバイスの近傍に焦点位置を移動させてから該光学デバイスを撮像することを特徴とする請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の光学デバイス欠陥検査方法。
【請求項5】
光学デバイスを一方から撮像する撮像手段と、
遮光部と透光部とにより形成されるパターンを備え、前記撮像手段が前記光学デバイスを撮像する面の反対側の面から前記パターンを透過させて該光学デバイスへ光を照射する光源装置と、
前記撮像手段と前記光源装置との間に位置し、前記光学デバイスが載置されるトレイと、
前記光源装置を移動させる移動手段と、
前記撮像手段により撮像された画像を表示する表示手段が設けられた制御手段と、を備え、
前記光学デバイスに焦点を合わせた前記撮像手段より撮像され、前記表示手段に表示された該光学デバイスの画像内の前記遮光部と前記透光部との濃度差が無くなる位置まで前記光源装置を移動させ、濃度差の無い前記画像内に生じる該画像の歪みにより該光学デバイスの欠陥を検出する光学デバイス欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−229221(P2009−229221A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74398(P2008−74398)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】