説明

光学フィルム、偏光板、及び液晶表示装置

【課題】温湿度の変化による光学補償能の変動が軽減された光学フィルム及び偏光板、ならびに温湿度による表示特性の変動が軽減された液晶表示装置を提供する。
【解決手段】透明支持体上に液晶性化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する光学フィルムであって、該透明支持体がポリプロピレン系樹脂を含有するフィルムからなることを特徴とする光学フィルム、及び該光学フィルムと、偏光膜とを有する偏光板である。また、液晶セルと、該偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、ならびにそれを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置の光学補償等に利用される光学フィルムとして、ポリマーフィルムからなる透明支持体上に、液晶組成物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムが種々提案されている(例えば、特許文献1)。透明支持体としては、主に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが使用されている。
ところで、携帯電話用やノートブック型パーソナルコンピュータ用等の用途では、液晶表示装置には小型化及び薄層化の要求がある。小型化及び薄型化した液晶表示装置では、長時間の使用により、バックライトの熱によって内部の温度が過度に上昇することがしばしばある。また、これらの用途の液晶表示装置は、屋内のみならず、屋外において、様々な使用環境で使用されるものである。また、車載用の液晶表示装置についても、過度に高温環境下に曝されることがある。従って、これらの用途の液晶表示装置には、環境湿度や温度の変化による表示特性の変動が小さいことが求められる。
【0003】
一方、所定の樹脂からなる位相差フィルムを偏光板と複合することが種々提案されているが(特許文献2)、液晶組成物からなる光学異方性層を有する従来の光学補償フィルムと同等又はそれ以上の光学補償能を示し、しかも温湿度の変化に依存したその光学補償能の変動が軽減された光学フィルムについては、未だ満足いく特性のものが提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2587398号報
【特許文献2】特開2007−316603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液晶組成物からなる光学異方性層を有する従来の光学フィルムと比較して、同等又はそれ以上の光学補償能を有するとともに、温湿度の変化による光学補償能の変動が軽減された光学フィルム、及び偏光板を提供することを課題とする。
また、本発明は、表示特性及び視野角特性が良好であり、しかも温湿度による表示特性の変動が軽減された液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 透明支持体上に液晶性化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する光学フィルムであって、該透明支持体がポリプロピレン系樹脂を含有するフィルムからなることを特徴とする光学フィルム。
[2] 前記透明支持体が易接着処理されていることを特徴とする[1]の光学フィルム。
[3] 前記透明支持体と前記光学異方性層との間に、接着層及び/又は配向膜を有することを特徴とする[1]又は[2]の光学フィルム。
[4] 前記光学異方性層が、ディスコティック液晶化合物の少なくとも1種を含有する液晶組成物から形成される層であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの光学フィルム。
[5] [1]〜[4]のいずれかの光学フィルムと、偏光膜とを少なくとも有することを特徴とする偏光板。
[6] 液晶セルと、[5]の偏光板とを有することを特徴とする液晶表示装置。
[7] 前記液晶セルが、TN方式又はOCB方式であることを特徴とする[6]の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の液晶組成物からなる光学異方性層を有する光学フィルムと比較して、同等又はそれ以上の光学補償能を有するとともに、温湿度の変化による光学補償能の変動が軽減された光学フィルム、及び偏光板を提供することができる。
また、本発明によれば、表示特性及び視野角特性が良好であり、しかも温湿度による表示特性の変動が軽減された液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[光学フィルム]
本発明は、透明支持体上に液晶性化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する光学フィルムであって、該透明支持体がポリプロピレン系樹脂を含有するフィルムからなることを特徴とする光学フィルムに関する。本発明では、透明支持体として、ポリプロピレン系樹脂を含有するフィルムを用いることで、従来、光学補償フィルムとして用いられていた同様の構成の光学フィルムと比較して、同等又はそれ以上の光学補償能を示すとともに、温湿度の変化による光学補償能の変動が従来と比較して軽減された光学フィルムを提供している。その結果、本発明の光学フィルムを光学補償フィルム(又は偏光板の保護フィルム)として有する液晶表示装置は、良好な表示特性及び視野角特性を示すとともに、温湿度による表示特性の変動が小さいという特徴がある。
【0009】
以下、本発明の光学フィルムの各部材について説明する。
(透明支持体)
本発明の光学フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を含有するフィルムからなる。該フィルムは、ポリプロピレン系樹脂の1種又は2種以上を主成分として含有しているのが好ましい。必要により、後述の添加剤を含有していてもよい。ポリプロピレン系樹脂を含有するフィルムを透明支持体として用いることで、温湿度の変化による光学補償能の変動を軽減することができ、さらに正面(表示面法線方向)コントラストを改善することができる。
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体から選択することができる。また、プロピレンとともに、プロピレンと共重合可能なモノマーとを共重合させて得られる共重合体から選択することができる。但し、プロピレンが主モノマーであるのが好ましく、共重合させるコモノマーはプロピレンよりも少量とし、例えば20質量%以下、好ましくは10質量%以下の割合で共重合させたものであるのが好ましい。下限値は特に制限されない(勿論0質量%であってもよい)が、コモノマーを共重合させたことが特性に影響されるためには、コモノマーは、1質量%以上は必要であろう。
【0010】
プロピレンに共重合されるコモノマーの例には、エチレン、炭素原子数4〜20のα−オレフィンが含まれる。また、前記α−オレフィンの具体例には、以下のものが含まれる。
1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(以上C4 );
1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン(以上C5 );
1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン(以上C6 );
1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン(以上C7 );
1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン
(以上C8 );
1−ノネン(C9 );1−デセン(C10);1−ウンデセン(C11);
1−ドデセン(C12);1−トリデセン(C13);1−テトラデセン(C14);
1−ペンタデセン(C15);1−ヘキサデセン(C16);1−ヘプタデセン(C17);
1−オクタデセン(C18);1−ノナデセン(C19)など。
【0011】
α−オレフィンの中で好ましいものは、炭素原子数4〜12のα−オレフィンであり、具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン;1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン;1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン;1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン;1−オクテン、5−メチル−1−ヘプテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−メチル−3−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン;1−ノネン;1−デセン;1−ウンデセン;1−ドデセンなどである。共重合性の観点からは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが好ましく、とりわけ1−ブテン及び1−ヘキセンがより好ましい。
【0012】
共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。好ましい共重合体として、プロピレン/エチレン共重合体やプロピレン/1−ブテン共重合体を挙げることができる。プロピレン/エチレン共重合体やプロピレン/1−ブテン共重合体において、エチレンユニットの含量や1−ブテンユニットの含量は、例えば、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法により赤外線(IR)スペクトル測定を行い、求めることができる。
【0013】
前記透明支持体用フィルムの透明度や加工性を改善するという観点からは、プロピレンを主モノマーとして、任意の不飽和炭化水素をランダム共重合させたランダム共重合体を用いるのが好ましい。中でもエチレンとの共重合体が好ましい。共重合体とする場合、プロピレン以外の不飽和炭化水素類は、その共重合割合を1〜10質量%程度にするのが有利であり、より好ましい共重合割合は3〜7質量%である。プロピレン以外の不飽和炭化水素類のユニットの量を前記範囲とすることで、樹脂の融点の低下により耐熱性を極端に低下させることなく、フィルムの加工性や透明性が改善されるので好ましい。なお、2種類以上のコモノマーとポリプロピレンとの共重合体とする場合には、その共重合体に含まれる全てのコモノマーに由来するユニットの合計含量が、前記範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂は、JIS K 7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレイト(MFR)が、0.1〜200g/10分であるのが好ましく、0.5〜50g/10分であるのがより好ましい。MFRがこの範囲にあるポリプロピレン系樹脂を用いることにより、押出機に大きな負荷をかけることなく均一なフィルム状物を得ることができる。
【0015】
前記ポリプロピレン系樹脂は、公知の重合用触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法や、プロピレンと他の共重合性コモノマーとを共重合する方法によって、製造することができる。公知の重合用触媒としては、例えば、マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒;マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第三成分とを組み合わせた触媒系;及びメタロセン系触媒;などが挙げられる。
【0016】
これら触媒系の中でもマグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを組み合わせたものが好ましい。前記有機アルミニウム化合物の例には、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物、テトラエチルジアルモキサンなどが含まれ;及び電子供与性化合物の例には、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランなどが含まれる。
【0017】
一方、マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分の例には、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報などに記載の触媒系が含まれ;またメタロセン系触媒の例には、特許第2587251号公報、特許第2627669号公報、特許第2668732号公報などに記載の触媒系が含まれる。
【0018】
前記ポリプロピレン系樹脂は、種々の方法で製造できる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法などによって、製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよい。本発明においては、耐熱性の点から、シンジオタクチックあるいはアイソタクチックのポリプロピレン系樹脂を用いるのが好ましい。
【0020】
本発明では、ポリプロピレン系樹脂を主原料として含有するフィルムを透明支持体として用いるのが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、フィルム中には、種々の添加剤から選択される1種以上を添加してもよい。添加剤の例には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などが含まれる。酸化防止剤には、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤などがあり、また、1分子中に例えば、フェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤も用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン系やヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系の如き紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線遮断剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドの如き高級脂肪酸アミド、ステアリン酸の如き高級脂肪酸及びその塩などが挙げられる。造核剤としては、例えば、ソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンの如き高分子系造核剤などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、球状あるいはそれに近い形状の微粒子が、無機系、有機系を問わず使用できる。これらの添加物は、複数種が併用されてもよい。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂は、任意の方法で製膜することができる(以下、製膜後のフィルムを「原反フィルム」という)。この原反フィルムは、透明で実質的に面内位相差のないものである。例えば、溶融樹脂からの押出成形法、有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延し、溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法などによって、面内位相差が実質的にないポリプロピレン系樹脂の原反フィルムを得ることができる。
【0022】
押出成形により原反フィルムを製造する方法の一例は、以下の通りである。ポリプロピレン系樹脂を、押出機中でスクリューの回転によって溶融混練し、Tダイからシート状に押出す。押出される溶融状シートの温度は、180〜300℃程度である。このときの溶融状シートの温度が180℃を下回ると、延展性が十分でなく、得られるフィルムの厚みが不均一になり、位相差ムラのあるフィルムとなる可能性がある。また、その温度が300℃を超えると、樹脂の劣化や分解が起こりやすく、シート中に気泡が生じたり、炭化物が含まれたりすることがある。押出機は、単軸押出機であっても2軸押出機であってもよい。例えば単軸押出機の場合は、スクリューの長さLと直径Dの比であるL/Dが24〜36程度、樹脂供給部におけるねじ溝の空間容積と樹脂計量部におけるねじ溝の空間容積との比(前者/後者)である圧縮比が 1.5〜4程度であって、フルフライトタイプ、バリアタイプ、さらにマドック型の混練部分を有するタイプなどのスクリューを用いることができる。ポリプロピレン系樹脂の劣化や分解を抑制し、均一に溶融混練するという観点からは、L/Dが28〜36で、圧縮比が2.5〜3.5であるバリアタイプのスクリューを用いることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂の劣化や分解を可及的に抑制するため、押出機内は、窒素雰囲気又は真空にすることが好ましい。さらに、ポリプロピレン系樹脂が劣化したり分解したりすることで生じる揮発ガスを取り除くため、押出機の先端に1mmφ以上5mmφ以下のオリフィスを設け、押出機先端部分の樹脂圧力を高めることも好ましい。オリフィスの押出機先端部分の樹脂圧力を高めるとは、先端での背圧を高めることを意味しており、これにより押出の安定性を向上させることができる。用いるオリフィスの直径は、より好ましくは2mmφ以上4mmφ以下である。
【0023】
押出に使用されるTダイは、樹脂の流路表面に微小な段差や傷のないものが好ましく、また、そのリップ部分は、溶融したポリプロピレン系樹脂との摩擦係数の小さい材料でめっき又はコーティングされ、さらにリップ先端が0.3mmφ以下に研磨されたシャープなエッジ形状のものが好ましい。摩擦係数の小さい材料としては、タングステンカーバイド系やフッ素系の特殊めっきなどが挙げられる。このようなTダイを用いることにより、目ヤニの発生を抑制でき、同時にダイラインを抑制できるので、外観の均一性に優れる樹脂フィルムが得られる。このTダイは、マニホールドがコートハンガー形状であって、かつ以下の条件(1)又は(2)を満たすことが好ましく、さらには条件(3)又は(4)を満たすことがより好ましい。
Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの厚み方向長さ>180mm …(1)
Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの厚み方向長さ>220mm …(2)
Tダイのリップ幅が1500mm未満のとき:Tダイの高さ方向長さ>250mm …(3)
Tダイのリップ幅が1500mm以上のとき:Tダイの高さ方向長さ>280mm …(4)
前記条件を満たすTダイを用いることにより、Tダイ内部での溶融状ポリプロピレン系樹脂の流れを整えることができ、かつ、リップ部分でも厚みムラを抑えながら押出すことができるため、より厚み精度に優れ、位相差のより均一な原反フィルムを得ることができる。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂の押出変動を抑制する観点から、押出機とTダイとの間にアダプターを介してギアポンプを取り付けることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂中にある異物を取り除くため、リーフディスクフィルターを取り付けることが好ましい。
【0025】
Tダイから押出された溶融状シートは、金属製冷却ロール(チルロール又はキャスティングロールともいう)と、その金属製冷却ロールの周方向に圧接して回転する弾性体を含むタッチロールとの間に、挟圧させて冷却固化することで、所望のフィルムを得ることができる。この際、タッチロールは、ゴムなどの弾性体がそのまま表面となっているものでもよいし、弾性体ロールの表面を金属スリーブからなる外筒で被覆したものでもよい。弾性体ロールの表面が金属スリーブからなる外筒で被覆されたタッチロールを用いる場合は通常、金属製冷却ロールとタッチロールの間に、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートを直接挟んで冷却する。一方、表面が弾性体となっているタッチロールを用いる場合は、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートとタッチロールの間に熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを介在させて挟圧することもできる。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートを、上記のような冷却ロールとタッチロールとで挟んで冷却固化させるにあたり、冷却ロールとタッチロールは、いずれもその表面温度を低くしておき、溶融状シートを急冷させてやる必要がある。具体的には、両ロールの表面温度が0℃以上30℃以下の範囲に調整される。これらの表面温度が30℃を超えると、溶融状シートの冷却固化に時間がかかるため、ポリプロピレン系樹脂中の結晶成分が成長してしまい、得られるフィルムは透明性に劣るものとなる。ロールの表面温度は、好ましくは30℃未満、さらに好ましくは25℃未満である。一方、ロールの表面温度が0℃を下回ると、金属製冷却ロールの表面に結露して水滴が付着し、フィルムの外観を悪化させる傾向が出てくる。
【0027】
使用する金属製冷却ロールは、その表面状態がポリプロピレン系樹脂フィルムの表面に転写されるため、その表面に凹凸がある場合には、得られるポリプロピレン系樹脂フィルムの厚み精度を低下させる可能性がある。そこで、金属製冷却ロールの表面は可能な限り鏡面状態であることが好ましい。具体的には、金属製冷却ロールの表面の粗度は、最大高さの標準数列で表して 0.3S以下であることが好ましく、さらには0.1S〜0.2Sであることがより好ましい。
【0028】
金属製冷却ロールとニップ部分を形成するタッチロールは、その弾性体における表面硬度が、JIS K 6301に規定されるスプリング式硬さ試験(A形)で測定される値として、65〜80であることが好ましく、さらには70〜80であることがより好ましい。このような表面硬度のゴムロールを用いることにより、溶融状シートにかかる線圧を均一に維持することが容易となり、かつ、金属製冷却ロールとタッチロールとの間に溶融状シートのバンク(樹脂溜り)を作ることなくフィルムに成形することが容易となる。
【0029】
溶融状シートを挟圧するときの圧力(線圧)は、金属製冷却ロールに対してタッチロールを押し付ける圧力により決まる。線圧は、50N/cm以上300N/cm以下とするのが好ましく、さらには100N/cm以上250N/cm以下とするのがより好ましい。線圧を前記範囲とすることにより、バンクを形成することなく、一定の線圧を維持しながらポリプロピレン系樹脂フィルムを製造することが容易となる。
【0030】
金属製冷却ロールとタッチロールの間で、ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートとともに熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを挟圧する場合、この二軸延伸フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂と強固に熱融着しない樹脂であればよく、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。これらの中でも、湿度や熱などによる寸法変化の少ないポリエステルが最も好ましい。この場合の二軸延伸フィルムの厚さは、通常5〜50μm程度であり、好ましくは10〜30μmである。
【0031】
この方法において、Tダイのリップから金属製冷却ロールとタッチロールとで挟圧されるまでの距離(エアギャップ)を200mm以下とすることが好ましく、さらには160mm以下とすることがより好ましい。Tダイから押出された溶融状シートは、リップからロールまでの間引き伸ばされて、配向が生じやすくなる。エアギャップを上記の如く短くすることで、配向のより小さいフィルムを得ることができる。エアギャップの下限値は、使用する金属製冷却ロールの径とタッチロールの径、及び使用するリップの先端形状により決定され、通常50mm以上である。
【0032】
この方法でポリプロピレン系樹脂フィルムを製造するときの加工速度は、溶融状シートを冷却固化するために必要な時間により決定される。使用する金属製冷却ロールの径が大きくなると、溶融状シートがその冷却ロールと接触している距離が長くなるため、より高速での製造が可能となる。具体的には、600mmφの金属製冷却ロールを用いる場合、加工速度は、最大で5〜20m/分程度となる。
【0033】
金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧された溶融状シートは、ロールとの接触により冷却固化する。そして、必要に応じて端部をスリットした後、巻取り機に巻き取られてフィルムとなる。この際、フィルムを使用するまでの間その表面を保護するために、その片面又は両面に別の熱可塑性樹脂からなる表面保護フィルムを貼り合わせた状態で巻き取ってもよい。ポリプロピレン系樹脂の溶融状シートを熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムとともに金属製冷却ロールとタッチロールとの間で挟圧した場合には、その二軸延伸フィルムを一方の表面保護フィルムとすることもできる。
【0034】
上記方法等により作製した原反フィルムは、そのまま透明支持体として用いることができる。また、以下の処理のいずれか、または2種以上を行った後に、透明支持体として用いることもできる。
《延伸処理》
原反フィルムの位相差を発現させるためには、延伸処理を施すことができる。二軸延伸により二軸方向の複屈折性を発現させたフィルムを透明支持体として用いることができる。延伸倍率は、縦方向及び横方向のうち、光軸を発現させる方向(延伸倍率が大きい方向であって、遅相軸となる方向)で1.1〜10倍程度、それと直交する方向(延伸倍率が小さい方向であって、進相軸となる方向)で1.1〜7倍程度の範囲から、必要とする位相差値に合わせて、適宜選択することができる。フィルムの横方向に光軸を発現させてもよいし、縦方向に光軸を発現させてもよい。
【0035】
TNモード液晶表示の光学補償に利用する光学フィルムの透明支持体としては、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が0〜100nmで、同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)が30〜120nmのフィルムを用いるのが好ましい。
OCBモード液晶表示の光学補償に利用する光学フィルムの透明支持体としては、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が30〜60nmで、同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)が150〜400nmのフィルムを用いることが好ましい。
VAモード液晶表示の光学補償に利用する光学フィルムの透明支持体としては、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が30〜60nmで、同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)が30〜250nmのフィルムを用いることが好ましい。
IPSモード液晶表示の光学補償に利用する光学フィルムの透明支持体としては、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が30〜70nmで、同波長の厚み方向のレターデーションRth(550)が70〜200nmのフィルムを用いることが好ましい。
【0036】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定するができる。
測定するフィルムのRe(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において各波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法により、厚み方向レターデーションRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(10)及び式(11)よりRthを算出することもできる。
【0037】
【数1】

式中、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
【0038】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
また、本明細書において、測定波長を特に付記しない場合は、波長550nmにおけるRe及びRthであるとする。
【0039】
《易接着処理》
前記透明支持体として用いるフィルムの表面には、その上に形成される光学異方性層、又は所望により形成される配向膜、との接着性を改善するために、易接着処理をするのが好ましい。この処理を施すことにより、高熱や高湿度に曝されても、透明支持体と光学異方性層等との剥がれなどが生じ難くなり、耐熱性が改善される。易接着処理としては、コロナ放電処理又は大気圧プラズマ処理が好ましい。コロナ放電処理も大別すると大気圧プラズマ処理に含まれるが、ここでは直接コロナ放電によるプラズマ領域に直接被処理体を曝すものをコロナ放電処理と呼称し、プラズマ領域と被処理体表面が離れているものを大気圧プラズマ処理と呼称する。コロナ処理は工業的な実用例が豊富で低コストである反面、処理体表面の物理的ダメージが大きいというデメリットがある。一方、大気圧プラズマ処理の実用例は比較的少なく、コストもコロナ処理よりは高い反面、処理体表面のダメージが小さく、比較的処理強度が高く設定可能というメリットがある。従って、使用するポリマーフィルムのダメージと処理後の接着性の改善レベルとの関係によって、両者の内で好ましい方の処理法を選択すればよい。
【0040】
これらの処理を施されたフィルムの処理面は、親水化する。親水化の目安として、処理面における水の接触角を利用してもよい。具体的には、処理面の水の接触角は55°以下であるのが好ましく、50°以下であるのがより好ましい。処理面の水の接触角が前記範囲であると、その上に形成される光学異方性層や配向膜との接着性が改善され、剥離等の不良が生じ難くなる。下限値については特に制限はないが、ポリマーフィルムを破損することがないように設定することが好ましい。なお、接触角の測定は、JIS R 3257(1999)に従って行なうことができる。コロナ放電処理及び大気圧プラズマ処理は、それぞれ、接触角が前記範囲となる様に、処理条件が決定される。変動させる処理条件としては、何れの処理法においても、印加電圧、周波数、雰囲気ガス種、処理時間等がある。
これらの処理の詳細については、高分子表面改質(近代編集社)P.88〜、高分子表面の基礎と応用(下)(化学同人)P.31〜、大気圧プラズマの原理・特徴と高分子フィルム・ガラス基板の表面改質技術(技術情報協会)等にそれぞれ記載があり、その内容を参照することができる。
【0041】
《除塵処理》
前記フィルムの表面、特にコロナ放電処理又は大気圧プラズマ処理を施された表面(以下、「処理面」という場合がある)は、その上に層を形成する前に、除塵処理するのが好ましい。除塵方法については特に制限されない。超音波を利用する超音波除塵が好ましい。超音波除塵については、特開平7−333613号公報等に詳細な記載があり、参照することができる。
また、後述する配向膜を形成する場合は、配向膜表面にラビング処理を施した後も、除塵処理を施すのが好ましい。
【0042】
《膨潤処理》
前記フィルム上に隣接して形成される層の塗布組成物中の塗布溶剤が前記フィルムをある程度膨潤させることで、両層の間の接着性を改善することも可能である。具体的には、前記フィルムを膨潤可能な溶剤と、膨潤させない溶剤を所定の比率で混合した溶媒にすることで塗布層の白化を起こさずに接着性を好ましく改良することができる。
【0043】
(光学異方性層)
本発明の光学フィルムは、液晶組成物からなる光学異方性層を有する。前記液晶組成物は、硬化性であるのが好ましい。前記液晶組成物は、少なくとも一種の液晶化合物を含有する。該液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物又はディスコティック液晶性化合物が好ましい。液晶組成物の調製に使用する液晶化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。低分子液晶化合物については、重合性基を有する液晶化合物から選択するのが好ましい。重合性基を有する液晶化合物を利用して光学異方性層を形成すると、該光学異方性層中において液晶性化合物は、その重合性基が重合した状態で、所定の配向状態に固定されているので、もはや液晶性を示さないであろう。一方、高分子液晶化合物を有する液晶化合物を利用して光学異方性層を形成する際、高分子液晶化合物を所定の配向状態とした後、該高分子のガラス転移点以下とすることで、硬化させて、その配向状態が固定されるであろう。
【0044】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。これらの棒状液晶性化合物の固定は、棒状液晶性化合物の末端構造に重合性基を導入(後述の円盤状液晶と同様)し、この重合・硬化反応を利用して行われている。具体例としては、重合性ネマチック棒状液晶化合物を紫外線硬化した例が特開2006−209073号公報に記載されている。また、上述の低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。高分子液晶性化合物は、以上のような低分子液晶性化合物に相当する側鎖を有するポリマーである。高分子液晶性化合物を用いた光学補償シートについては、特開平5−53016号公報等に記載がある。
【0045】
ディスコティック液晶性化合物については、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式(A)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0046】
(A) D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり;Pは重合性基であり;そして、nは4〜12の整数である。
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LP(又はPL)は、二価の連結基(L)と重合性基(P)との組み合わせを意味する。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
【化3】

【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

【0053】
【化7】

【0054】
【化8】

【0055】
【化9】

【0056】
また、特開2007−102205号公報、特開2006−76992号公報明細書中の段落番号[0052]、及び特開2007−2220号公報明細書中の段落番号[0040]〜[0063]に記載の化合物のような、3置換ベンゼン骨格からなる化合物は、液晶セル中の液晶化合物の複屈折波長分散により近い複屈折波長分散を有するため、好ましく用いることができる。特に好ましい骨格を以下に示す。
【0057】
【化10】

【0058】
式(A)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−及びS−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−及びO−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(P)に結合する。ALはアルキレン基又はアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
【0059】
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
【0060】
式(A)の重合性基(P)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(P)の例を以下に示す。
【0061】
【化11】

【0062】
【化12】

【0063】
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
重合性基(P)は、不飽和重合性基(P1、P2、P3、P7、P8、P15、P16、P17)又はエポキシ基(P6、P18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(P1、P7、P8、P15、P16、P17)であることが最も好ましい。
式(A)において、nは4〜12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとPの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0068】
前記液晶組成物中、液晶性化合物は組成物の全量(溶媒を含む場合は固形分)に対し、50質量%〜99.9質量%であるのが好ましく、70質量%〜99.9質量%がより好ましく、80質量%〜99.5質量%がよりさらに好ましい。
【0069】
上記の液晶性化合物と共に、液晶性組成物中には、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0070】
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましい。
【0071】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、フッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特願2003−295212号明細書中の段落番号[0069]〜[0126]記載の化合物が挙げられる。特に好ましい例として、 特開2005−292351号公報明細書中の段落番号[0054]から[0109]に記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマーが挙げられる。
【0072】
光学異方性層は、上記成分を含む液晶性組成物を、前記透明支持体用フィルムの表面、又は所望によりフィルム上に形成される配向膜の表面(好ましくは、ラビング処理面)上に塗布し、液晶相−固相転移温度以下で配向させ、その後、UV照射によって、重合反応を進行させて、液晶性化合物をその配向状態に固定することにより形成することができる。液晶組成物の塗布は、公知の方法(例、バーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。液晶相−固相転移温度としては70℃〜300℃が好ましく、特に70℃〜170℃が好ましい。液晶性化合物の重合反応としては、光重合反応が行われる。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましく、照射エネルギーは、20〜5000mJ/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよく、加熱条件に特に制限はないが、液晶性化合物の配向度を低下させないために、120℃程度以下であることがより好ましい。
【0073】
(配向膜)
重合性液晶を利用して、塗布により光学異方性層を形成する際には、配向膜を利用するのが好ましい。配向膜は、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)としては、例えば平均鹸化度70〜100%のものが好ましく、平均鹸化度80〜100%のものがより好ましく、平均鹸化度85〜98%のものがさらに好ましい。また、平均重合度の観点では、平均重合度100〜3000のPVAが好ましい。変性ポリビニルアルコール(変性PVA)の例には、共重合変性したもの(共重合による変性PVAの変性基の例には、COONa、Si(OX)3、N(CH33・Cl、C919COO、SO3Na、C1225等が含まれる)、連鎖移動により変性したもの(連鎖移動による変性PVAの変性基の例には、COONa、SH、アルキルチオ、C1225等が含まれる)、ブロック重合による変性をしたもの(ブロック重合による変性基の例には、COOH、CONH2、COOR、C65等が含まれる)等が含まれる。平均重合度の観点では、平均重合度100〜3000(より好ましくは300〜2400、さらに好ましくは1000〜1700)の変性PVAが好ましい。これらの中で、平均鹸化度80〜100%の未変性及び変性PVAが好ましく、平均鹸化度85〜98%の未変性及びアルキルチオ変性PVAがポリビニルアルコールである。
【0074】
また、前記光学異方性層は、一旦他のポリマーフィルム上に形成された光学異方性層を、転写することによって、前記透明支持体上に形成することもできる。この方法を利用して光学異方性層を形成すると、塗布層の形成で加熱が必要な場合でも、支持体の熱耐性を考慮する必要がない等の点で好ましい。この方法の一例は、以下の通りである。まず、液晶性ポリエステル類等の液晶性ポリマーを、有機溶媒に溶解して塗布液を調製する。該塗布液をポリエチレンテレフタレートフィルムのラビング処理面に塗布する。塗布層を100℃以上の温度まで加熱し、その後、冷却して液晶ポリマーを配向させるとともに、その配向状態を固定化して光学異方性層とする。次に、この光学異方性層の表面に、紫外線硬化性接着剤を塗布した後、透明支持体を接着剤層の上に積層し、紫外線を照射して該接着剤層を硬化させて、透明支持体と接着剤層とを接着する。その結果、ポリエチレンテレフタレートは、光学異方性層から容易に剥離し、透明支持体上に、接着層、及びさらにその上に光学異方性層を有する本発明の光学フィルムが得られる。この方法において、接着剤として紫外線硬化接着剤を利用すると、透明支持体との接着性が強くなるので好ましい。接着剤の例には、エポキシ系紫外線硬化型接着剤、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤、イソシアネート系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられる。
また、前記液晶性ポリマーの例には、異方性溶融相を形成することができる樹脂が含まれる。より具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸/ポリエチレンテレフタレート系液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸/6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸系液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸/4,4’−ジヒドロキシビフェニル/テレフタル酸/イソフタル酸系液晶ポリエステル等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
前記光学異方性層の厚さは、0.5〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることが更に好ましい。
【0076】
[偏光板]
本発明は、本発明の光学フィルムと、偏光膜とを少なくとも有する偏光板にも関する。
偏光膜と、本発明の光学フィルムとは、粘着剤又は接着剤を利用して貼合することができる。粘着剤又は接着剤としては、透明性に優れた材料であるのが好ましい。接着剤の例には、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤、イソシアネート系接着剤、ゴム系接着剤等が含まれる。粘着剤の例には、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、イソシアネート系、ゴム系等の粘着剤が含まれる。
なお、偏光膜と本発明の光学フィルムとの間に介在させる接着層は、薄いほうが好ましく、例えば、厚み10μm以下程度が好ましく、更に5μm以下程度がより好ましい。
【0077】
偏光膜には、例えば、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素にて染色し、延伸を行うことによって得られる偏光膜などが用いられる。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルムや環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等が用いられる。
【0078】
[液晶表示装置]
本発明の光学補償フィルム及び偏光板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。
【0079】
液晶表示装置は長時間の使用により、バックライトの熱によって内部の温度が上昇することがしばしばある。また、ノートブック型パーソナルコンピュータや携帯電話用の液晶表示装置は、屋内のみならず、屋外において使用されるものであり、また車載用の液晶表示装置も、過度に高温に曝されることがある。従って、これらの液晶表示装置には、環境湿度や温度の変化による表示特性の変動が小さいことが求められる。本発明の光学フィルムを有する液晶表示装置、特に、本発明の光学フィルムを偏光膜の保護フィルムとして利用している液晶表示装置は、温湿度の変化による表示特性の変動が小さいという特徴があり、種々の用途の液晶表示装置として有用である。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0081】
(透明支持体の作製)
製造例1:透明支持体(PP−0)の作製
エチレンユニットを約5質量%含むプロピレン/エチレンランダム共重合体(住友ノーブレンW151、住友化学(株)製)を、単軸溶融押出機にTダイを配置してなる溶融押出成形機にて230℃の溶融温度で押出成形を行い、原反フィルムを得た。その後、この原反フィルムの表裏面の双方にコロナ放電処理を施し、透明支持体(PP−0)として用いた。
製造例2:透明支持体(PP−1)の作製
エチレンユニットを約5質量%含むプロピレン/エチレンランダム共重合体(住友ノーブレンW151、住友化学(株)製)を、単軸溶融押出機にTダイを配置してなる溶融押出成形機にて230℃の溶融温度で押出成形を行い、原反フィルムを得た後に、延伸倍率1.5倍の縦延伸、延伸倍率1.5倍の横延伸の順で逐次二軸延伸し、Re=2nm、Rth=95nmの透明フィルムを得た。その後、この透明フィルム表裏面の双方にコロナ放電処理を施し、透明支持体(PP−1)として用いた。
【0082】
製造例3:透明支持体(PP−2)の作製
製造例1と同様にポリプロピレン原反フィルムを得た後に、延伸倍率1.2倍の縦延伸、延伸倍率2.5倍の横延伸の順で逐次二軸延伸し、Re=82nm、Rth=59nmの透明フィルムを得た。その後、この透明フィルムの表裏面双方にコロナ放電処理を施し、透明支持体(PP−2)として用いた。
【0083】
製造例4:透明支持体(PP−3)の作製
製造例1と同様にポリプロピレン原反フィルムを得た後に、延伸倍率1.8倍の縦延伸、延伸倍率2.7倍の横延伸の順で逐次二軸延伸し、Re=40nm、Rth=180nmの透明フィルムを得た。その後、この透明フィルムの表裏面の双方にコロナ放電処理を施し、透明支持体(PP−3)として用いた。
【0084】
製造例5:透明支持体(PP−4)の作製
製造例1と同様にポリプロピレン原反フィルムを得た後に、延伸倍率2.8倍の縦延伸、延伸倍率3.7倍の横延伸の順で逐次二軸延伸し、Re=47nm、Rth=300nmの透明フィルムを得た。その後、この透明フィルムの表裏面双方にコロナ放電処理を施し、透明支持体(PP−4)を得た。
【0085】
製造例6:透明支持体(PP−5)の作製
製造例1と同様にポリプロピレン原反フィルムを得た後に、延伸倍率1.6倍の縦延伸、延伸倍率2.5倍の横延伸の順で逐次二軸延伸し、Re=50nm、Rth=130nmの透明フィルムを得た。その後、この透明フィルムの表裏面双方にコロナ放電処理を施し、透明支持体(PP−5)として用いた。
【0086】
製造例7:透明支持体(PP−6)の作製
製造例1と同様にポリプロピレン原反フィルムを得た後に、延伸倍率1.1倍の縦延伸、延伸倍率2.0倍の横延伸の順で逐次二軸延伸し、Re=50nm、Rth=40nmの透明フィルムを得た。その後、この透明フィルムの表裏面双方にコロナ放電処理を施し、透明支持体(PP−6)として用いた。
【0087】
[実施例1]
(配向膜の作製)
製造例2で作製した支持体(PP−1)の片面に、下記の組成の配向膜形成用硬化性組成物を#14のワイヤーバーで24mL/m2のウエット塗布量で塗布して、100℃で2分間乾燥し、その後130℃で2.5分間加熱して、配向膜を形成した。配向膜の厚さは、1.0μmであった。
【0088】
配向膜形成用硬化性組成物:
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 40質量部
水 728質量部
メタノール 228質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 2質量部
クエン酸エステル(AS3、三共化学(株)) 0.69質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0089】
【化17】

【0090】
(光学異方性層の作製)
光学異方性層形成用液晶組成物1の調製:
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物1の塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 270.0質量部
下記構造の円盤状液晶性化合物1 10.0質量部
下記構造の円盤状液晶性化合物2 90.0質量部
下記構造式に示す空気界面配向制御剤1 1.0質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 3.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 1.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0091】
【化18】

【0092】
【化19】

【0093】
【化20】

【0094】
配向膜を形成したロール状態のフィルムを送り出し、その先に配置されたラビング装置によって搬送方向に沿って逆回転にラビングロールを回転させて配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物1の塗布液を#1.6のワイヤーバーで2.8mL/m2のウエット塗布量で塗布して、115℃で1.5分間乾燥して、配向させ、その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量200mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層1を形成した。その後、巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取り、光学フィルム1を得た。光学異方性層1の厚さは、0.9μmであり、Re=43nm、Rth=80nmであった。
【0095】
(偏光板1の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
市販のセルロースアセテートフィルムを1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記のように作製した光学フィルム1と、鹸化処理を行った市販のセルロースアセテートフィルムとを、前記偏光膜を挟んで、偏光膜の表裏面にそれぞれ貼り合せて偏光板1を得た。ここで、光学フィルム1については、光学異方性層1を外側にして貼り合わせた。市販のセルロースアセテートフィルムとしてはフジタックTF80UL(富士フイルム(株)製)を用いた。また、貼り合わせには、接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いた。
このとき、偏光膜及び偏光膜両側の保護膜はロール形態で作製されているため各ロールフィルムの長手方向が平行となっており連続的に貼り合わせた。従って光学フィルム1のロール長手方向と偏光子吸収軸とが平行な方向になった。
【0096】
(TNモード液晶表示装置1の作製)
TN型液晶セルを使用した22インチの液晶表示装置(ACER製 AL2216W)に設けられている一対の偏光板(上側偏光板、及び下側偏光板)を剥がし、代わりに作製した偏光板1を、光学異方性層1が液晶セル側となるように粘着剤SK−1478(綜研化学社製)を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けて、偏光板1を2枚有するTNモード液晶表示装置1を作製した。このとき、観察者側の偏光板(上側偏光板)の透過軸と、バックライト側の偏光板(下側偏光板)の透過軸とが直交するように各偏光板を配置した。
【0097】
(表示性能評価)
常温常湿(25℃60%RH)の部屋で1週間放置した前記液晶表示装置1を測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、パネル正面方向におけるコントラスト比(白表示時の透過率/黒表示時の透過率)、及び、左右/上下のコントラスト視野角(コントラスト10以上を維持する視野角)、及びパネル上方向における色味を測定し、上方向の最大青みv’を評価した。
【0098】
また作製した液晶表示装置1について、常温常湿の部屋で電源OFF状態で2時間以上放置した状態から電源ONにして5分以内に上下左右の辺の中央で、端部から1cm中心寄りの点での輝度を輝度計(TOPCON製BM−5)で測定し、その平均を求めたところ、0.3cd/cm2であった。さらに点灯後1時間経過した時点で同様の測定を行ったところ、0.5cd/cm2であった。これにより、温度変化による輝度変化は0.2cd/cm2であった。
【0099】
さらに作製した液晶表示装置1を電源OFF状態で25℃、10%RH下に72時間放置し、点灯後すぐに常温常湿で測定したパネル上方向の最大青みv’と同位置での色味測定を行ったところ、常温常湿に対し、Δv’=0.01であった。これにより、湿度変化による上方向最大青みv’の変化は0.01であった。
【0100】
(耐久性評価)
前記TNモード液晶表示装置1のパネルのみを取り出し、105℃、Dryの条件で240時間加熱処理を行ったが、パネルから偏光板が剥れる現象は観察されなかった。これらの結果を表2に示す。
【0101】
[実施例2]
透明支持体(PP−1)の作製において、表裏面のいずれにもコロナ放電処理を施さなかったこと以外は同様にして、透明支持体(PP−1)’を作製した。
実施例1と同様にして、その表面に配向膜、及び光学異方性層を形成し、光学フィルム2を作製した。この光学フィルム2を用いて、実施例1と同様にして、偏光板2、及びTNモード液晶表示装置2を作製し、同様に評価を行った。
【0102】
(耐久性評価)
TNモード液晶表示装置2のパネルのみを取り出し、105℃、Dryの条件で240時間加熱処理を行ったところ、上下左右の端部から5mmの範囲において、透明支持体(PP−1)と光学異方性層1との間に剥れが観察された。
これらの結果を下記表2に示す。
【0103】
[実施例3]
製造例2の透明支持体(PP−1)を作製し、実施例1と同様にして、その表面に配向膜を形成した。
(光学異方性層の作製)
光学異方性層形成用液晶組成物2の調製:
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物2の塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 102.00質量部
円盤状液晶性化合物1 41.01質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート
(V360、大阪有機化学(株)製) 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)
0.11質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)
0.33質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 1.35質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 0.45質量部
下記構造のフルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.23質量部
下記構造のフルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.03質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0104】
【化21】

【0105】
【化22】

【0106】
配向膜を形成したロール状態のフィルムを送り出し、その先に配置されたラビング装置によって搬送方向に沿って逆回転にラビングロールを回転させて配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物2の塗布液を#2.0のワイヤーバーで3.5mL/m2のウエット塗布量で塗布して、125℃で2分間乾燥して、配向させ、その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量200mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層2を形成した。巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取り、光学フィルム3を得た。光学異方性層2の厚さは、1.4μmであり、Re=45nm、Rth=78nmであった。
【0107】
作製した光学フィルム3を用いて、実施例1と同様に偏光板3、及びTNモード液晶表示装置3を作製し、評価を行った。これらの結果を下記表2に示す。
【0108】
[実施例4]
透明支持体(PP−1)の代わりに、透明支持体(PP−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして配向膜を作製した。
【0109】
(光学異方性層の作製)
光学異方性層形成用液晶組成物3の調製:
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物3の塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 270.0質量部
円盤状液晶性化合物1 10.0質量部
円盤状液晶性化合物2 90.0質量部
空気界面配向制御剤1 2.5質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 3.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 1.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0110】
配向膜を形成したロール状態のフィルムを送り出し、その先に配置されたラビング装置によって搬送方向に沿って逆回転にラビングロールを回転させて配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物3の塗布液を#1.8のワイヤーバーで3.1mL/m2のウエット塗布量で塗布して、115℃で1.5分間乾燥して、配向させ、その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量200mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層3を形成した。巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取り、光学フィルム4を得た。光学異方性層3の厚さは、1.0μmであり、Re=32nm、Rth=95nmであった。
【0111】
光学フィルム4を用いて、実施例1と同様にして、偏光板4、及びTNモード液晶表示装置4を作製し、評価を行った。その結果を下記表2に示す。
【0112】
[実施例5]
(液晶性ポリエステルの作製)
4−n−ヘプチル安息香酸10mmol、テレフタル酸95mmol、メチルヒドロキノンジアセテート50mmol、カテコールジアセテート50mmol、及び酢酸ナトリウム100mgを用いて窒素雰囲気下、270℃で12時間重合を行った。次に得られた反応生成物をテトラクロロエタンに溶解した後、メタノールで再沈澱を行って精製し、下記構造式の液晶性ポリエステルを得た。
【0113】
【化23】

【0114】
(光学異方性層4の作製)
前記液晶性ポリエステルの8質量%テトラクロロエタン溶液を調製し、ラビング処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に#10のワイヤーバーで17.3mL/m2のウエット塗布量で塗布して、250℃、30分熱処理した後に冷却して固定化し、光学異方性層4を得た。光学異方性層4の厚さは1.4μmであり、Re=45nm、Rth=80nmであった。
【0115】
(光学フィルム5の作製)
前記ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成した光学異方性層4の表面にバーコーターを用いて市販のエポキシ系紫外線硬化型樹脂を2μmの厚さで塗布し、さらにその上に製造例2で作製した透明支持体(PP−1)を積層した後に、紫外線を照射して接着剤を硬化させた。次にポリエチレンテレフタレートフィルムと液晶性ポリエステルからなるフィルムの界面にてポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離、除去し、光学フィルム5とした。
【0116】
作製した光学フィルム5を用いて、実施例1と同様にして、偏光板5、及びTNモード液晶表示装置5を作製し、評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0117】
[実施例6]
透明支持体(PP−1)の代わりに、透明支持体(PP−3)を用い、実施例1と同様にして配向膜を作製した。
【0118】
(光学異方性層の作製)
光学異方性層形成用液晶組成物5の調製:
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物5の塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 102.00質量部
円盤状液晶性化合物1 41.01質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート
(V360、大阪有機化学(株)製) 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.35質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 1.35質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 0.45質量部
フルオロ脂肪族基含有共重合体
(メガファックF780 大日本インキ(株)製) 0.10質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0119】
配向膜を形成したロール状態のフィルムを送り出し、その先に配置されたラビング装置によって搬送方向を0度としたときに、時計回りに45度方向に沿って逆回転にラビングロールを回転させて配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物5の塗布液を#2.0のワイヤーバーで3.5mL/m2のウエット塗布量で塗布して、125℃で2分間乾燥して、配向させ、その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量200mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層5を形成した。巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取り、光学フィルム6を得た。光学異方性層5の厚さは、1.4μmであり、Re=32nm、Rth=90nmであった。
作製した光学フィルム6を用いて、実施例1と同様にして、偏光板6を作製した。
【0120】
(OCBモード液晶表示装置6の作製)
OCBモード液晶セルの作製:
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、液晶セルの厚さを4.1μmに設定した。液晶セルの間隙にΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向したOCBモード液晶セルを作製した。
【0121】
OCBモード液晶表示装置の作製:
上記ベンド配向液晶セルと、上記で作製した一対の偏光板6をとを組み合わせて液晶表示装置を作製した。なお、ベンド配向液晶セルと、一対の偏光板との配置は、偏光板6の光学異方性層5とベンド配向液晶セルの基板が対面し、ベンド配向液晶セルのラビング方向とそれに対向する光学異方性層5のラビング方向とが反平行になるようにした。作製したベンド配向液晶セルを挟むように、それぞれ別の透明基板に、視認側、及びバックライト側に偏光板6をそれぞれ貼り付けた。このようにしてベンド配向液晶セルの大きさが20インチである液晶表示装置6を作製した。
作製したOCBモード液晶表示装置6について、実施例1と同様に評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0122】
[実施例7]
透明支持体(PP−1)の代わりに、透明支持体(PP−4)を用い、実施例1と同様にして、その表面に配向膜を作製した。
【0123】
実施例6と同様にして、配向膜上に光学異方性層5を形成し、光学フィルム7を作製し、これを用いて、偏光板7を作製した。
【0124】
液晶セルの厚さを7.2μmにした以外は実施例6と同様にして、OCB液晶セルを作製し、20インチのOCBモード液晶表示装置7を作製した。
前記OCBモード液晶表示装置7について実施例1と同様に評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0125】
[実施例8]
(配向膜の作製)
支持体(PP−5)の片面に、下記の組成の配向膜形成用硬化性組成物を#1.4のワイヤーバーで2.4mL/m2のウエット塗布量で塗布して、120℃で2分間乾燥して、配向膜を形成した。配向膜の厚さは、1.2μmであった。
【0126】
配向膜形成用硬化性組成物:
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 50質量部
垂直配向膜(JALS−204R、日本合成ゴム(株)製) 50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0127】
(光学異方性層の作製)
光学異方性層形成用液晶組成物6の調製:
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物6の塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 92.0質量部
下記構造の棒状液晶性化合物1 38.0質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 0.6質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 0.2質量部
下記構造の空気界面垂直配向剤 0.02質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0128】
【化24】

【0129】
【化25】

【0130】
光学異方性層形成用液晶組成物6を前記配向膜を形成したフィルムの配向膜側に、#3.6のワイヤーバーで塗布した。その後、100℃で2分間乾燥して配向させ、さらに80℃にフィルム温度を保った状態で、120W/cmのメタルハライドランプで照射量200mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層6を形成した。巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取り、光学フィルム8を得た。光学異方性層6の厚さは、1.8μmであり、Re=0nm、Rth=−180nmであった。
作製した光学フィルム8を用いて、実施例1と同様にして偏光板8を作製した。
【0131】
(偏光板9の作製)
透明支持体(PP−0)を用い、配向膜及び光学異方性層は形成せずに、実施例1と同様にして、偏光板9を作製した。
【0132】
(IPSモード液晶表示装置8の作製)
IPSモード液晶セルの作製:
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔dを3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
【0133】
前記で作製したIPSモード液晶セルの視認者側(上面側)に、透明支持体(PP−5)の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、(PP−5)の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ光学異方性層6が液晶セル側になるように偏光板8を貼り付けた。続いて、このIPSモード液晶セルのもう一方のバックライト側(下面側)に偏光板9の(PP−0)側が液晶セル側になるように、且つ偏光板8とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、IPSモード液晶表示装置8を作製した。
【0134】
作製したIPSモード液晶表示装置8について、実施例1と同様に評価を行った。その結果を下記表2に示す。
【0135】
[実施例9]
透明支持体(PP−1)の代わりに、透明支持体(PP−6)を用い、実施例1と同様にして、その表面に配向膜を作製した。
【0136】
(光学異方性層の作製)
光学異方性層形成用液晶組成物7の調製:
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物7の塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 62.0質量部
円盤状液晶性化合物1 32.6質量部
下記構造の添加剤 0.1質量部
(円盤状液晶性化合物の円盤面を5度以内に配向させるための添加剤)
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート
(V360、大阪有機化学(株)製) 3.2質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 1.1質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 0.4質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0137】
【化26】

【0138】
配向膜を形成したロール状態のフィルムを送り出し、配向膜上に上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物7の塗布液を#2.0のワイヤーバーで3.5mL/m2のウエット塗布量で塗布して、125℃で2分間乾燥して、配向させ、その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量200mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層7を形成した。巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取り、光学フィルム9を得た。光学異方性層7の厚さは、1.4μmであり、Re=0nm、Rth=110nmであった。
作製した光学フィルム9を用いて、実施例1と同様にして、偏光板10を作製した。
【0139】
(VAモード液晶表示装置9の作製)
VAモード液晶セルの作製:
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、記液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
【0140】
上記のVAモード液晶セルを使用した液晶表示装置の上側、下側偏光版に、偏光板10を、光学異方性層7が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置として、VAモード液晶表示装置9を作製した。
作製したVAモード液晶表示装置9について、実施例1と同様に評価を行った。その結果を下記表2に示す。
【0141】
[実施例10〜16]
支持体(PP−1)上に配向膜を作製する時に使用する変性ポリビニルアルコールを表3に示す組成の素材を使用すること以外は、実施例1と同様に偏光板を作製した。
【0142】
(耐久性評価(強制サーモ試験評価))
上記で作製した偏光板を用いて、実施例1と同様にTNモード液晶表示装置を作製した。次にTNモード液晶表示装置のパネルのみを取り出し、120℃、Dryの条件で960時間加熱処理を行い、パネル端部から偏光板が剥れている部分の長さを測定し、結果を表3にまとめた。
【0143】
[実施例17〜24]
製造例2の透明支持体(PP−1)を作製し、実施例1と同様にして、その表面に配向膜を形成した。
(光学異方性層の作製)
光学異方性層形成用液晶組成物17〜24の調製:
下記の組成の光学異方性層形成用液晶組成物17〜24の塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 270.0質量部
下記表4に示す円盤状液晶性化合物A 85.0質量部
下記表4に示す円盤状液晶性化合物B 15.0質量部
上記空気界面配向制御剤1 1.0質量部
光重合開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 3.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製 1.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0144】
配向膜を形成したロール状態のフィルムを送り出し、その先に配置されたラビング装置によって搬送方向に沿って逆回転にラビングロールを回転させて配向膜の表面をラビング処理し、続いてラビング処理面を超音波除塵した。除塵後に、ラビング処理面に、上記組成の光学異方性層形成用液晶組成物17〜24の各塗布液を#2.0のワイヤーバーで3.5mL/m2のウエット塗布量で塗布して、125℃で2分間乾燥して、配向させた。その後、80℃にフィルム温度を保った状態で120W/cmのメタルハライドランプで照射量200mJ/cm2のUV光を照射して、重合反応を進行させて、配向状態を固定して、光学異方性層17〜24をそれぞれ形成した。巻き取り部でロールフィルム状態に巻き取り、光学フィルム17〜24をそれぞれ作製した。
【0145】
作製した光学フィルム17〜24をそれぞれ用いて、実施例1と同様に偏光板17〜24、及びTNモード液晶表示装置17〜24をそれぞれ作製し、同様に評価した。結果を下記表5に示す。
【0146】
[比較例1]
(セルロースアセテートフィルムの作製:TAC−1)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢化度60.7〜61.1%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルフォスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0147】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤1を16質量部、メチレンクロライド92質量部及びメタノール8質量部を投入し、加熱しながら撹拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。セルロースアセテート溶液487.7質量部にレターデーション上昇剤溶液31質量部を混合し、充分に撹拌してドープを調製した。
【0148】
【化27】

【0149】
得られたドープを、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃になってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムを剥離し、140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフィルム(TAC−1)(厚さ:80μm)を作製した。作製したセルロースアセテートフィルム(TAC−1)の光学特性はRe=7nm、Rth=93nmであった。
【0150】
透明支持体(PP−1)の代わりに作製したセルロースアセテートフィルム(TAC−1)を用い、実施例1と同様にして、その表面に配向膜を形成し、さらに光学異方性層1を形成して、光学フィルム10を作製した。さらに、この光学フィルム10を用いて、実施例1と同様にして偏光板11を作製し、TNモード液晶表示装置10を作製し、評価を行った。
【0151】
(耐久性評価)
TNモード液晶表示装置10のパネルのみを取り出し、105℃、Dryの条件で240時間加熱処理を行ったところ、上下左右の端部から70mmの範囲において、セルロースアセテートフィルム(TAC−1)と光学異方性層1との間に剥がれが観察された。
以上の結果を下記表2に示す。
【0152】
[比較例2]
(セルロースアセテートフィルムの鹸化処理)
比較例1で作製したセルロースアセテートフィルム(TAC−1)を、2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥することで鹸化処理を行った。
【0153】
次いで、透明支持体(PP−1)の代わりにセルロースアセテートフィルム(TAC−1)を用いて、実施例1と同様にして、その表面に配向膜を形成し、さらにその上に光学異方性層1を作製して、光学フィルム11を得た。
この光学フィルム11を用いて、実施例1と同様に偏光板12、及びTNモード液晶表示装置11を作製し、同様に性能評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0154】
[比較例3]
(セルロースアセテートフィルムの作製:TAC−2)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルフォスフェート 7.8質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.9質量部
メチレンクロライド 300質量部
メタノール 45質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0155】
(レターデーション上昇剤溶液の調製)
別のミキシングタンクに、酢化度60.9%のセルロースアセテート(リンター)4質量部、下記一般式に示すレターデーション上昇剤2を25質量部、シリカ微粒子(平均粒子サイズ:20nm)0.5質量部、メチレンクロライド80質量部及びメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
【0156】
【化28】

【0157】
セルロースアセテート溶液470質量部に、レターデーション上昇剤溶液18.5質量部を混合し、十分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は3.5質量%であった。
その後、残留溶剤量が35質量%のフィルムをバンドから剥離した後、140℃の温度で、フィルムのテンターを用いて38%の延伸倍率で横延伸した後、クリップを外して130℃で45秒間乾燥させ、セルロースアセテートフィルム(TAC−2)を製造した。製造されたセルロースアセテートフィルム(TAC−2)の膜厚は88μmであり、Re=40nm、Rth=180nmであった。
【0158】
前記セルロースアセテートフィルム(TAC−2)を比較例2と同様に鹸化処理した後、実施例1と同様に、その表面に配向膜を作製、実施例6と同様に光学異方性層5を作製し、光学フィルム12を得た。さらに、この光学フィルムを用いて、実施例1と同様に偏光板13を作製し、OCBモード液晶表示装置12を作製し、性能評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0159】
上記実施例1〜9及び比較例1〜3で作製した液晶表示装置1〜12について、構成等を下記表1に示し、評価結果を下記表2に示す。また、下記表3には、実施例1及び実施例10〜16について、使用した配向膜用ポリビニルアルコール、及び強制サーモ試験評価結果を示し;下記表4には実施例17〜24で使用した円盤状液晶性化合物A及びBの種類、並びに下記表5には実施例17〜24の評価結果を示す。
【0160】
【表1】

【0161】
【表2】

*:「ムラの温度変化」とは、1時間点灯による内部温度の上昇の前後で測定した黒表示時の輝度(cd/cm2)の差(1時間点灯後の黒輝度−1時間点灯する前の黒輝度)である。
【0162】
【表3】

【0163】
表3中のa、b及びcは、以下の変性PVAの重合比(モル比)である。
【化29】

【0164】
【表4】

【0165】
【化30】

【0166】
【化31】

【0167】
【表5】

*:「ムラの温度変化」とは、1時間点灯による内部温度の上昇の前後で測定した黒表示時の輝度(cd/cm2)の差(1時間点灯後の黒輝度−1時間点灯する前の黒輝度)である。
【0168】
上記表2及び表5に示す結果から、本発明の実施例の光学フィルムを有するTNモード液晶表示装置は、従来の同様の構成の光学補償フィルムと同等の又はそれ以上の光学補償能を示すとともに、温度及び湿度の変化による光学補償能の変動が少なく、これを有するTN、OCB、IPS及びVAモードの液晶表示装置は、いずれの環境においても良好な表示特性を示すことが理解できる。
特に、透明支持体の表面にコロナ放電処理を施した実施例1、3〜9、並びに17〜24では、過酷な熱処理によっても剥がれ現象が起こらず、各部材間の接着性が高く、耐熱性にも優れていることが理解できる。
また、表3の結果から、同一鹸化度であれば、重合度が300の変性PVAを用いるよりも、重合度が1700の変性PVAを用いて配向膜を形成したほうが、より耐熱性が改善されることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に液晶性化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する光学フィルムであって、該透明支持体がポリプロピレン系樹脂を含有するフィルムからなることを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記透明支持体が易接着処理されていることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記透明支持体と前記光学異方性層との間に、接着層及び/又は配向膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記光学異方性層が、ディスコティック液晶化合物の少なくとも1種を含有する液晶組成物から形成される層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光膜とを少なくとも有することを特徴とする偏光板。
【請求項6】
液晶セルと、請求項5に記載の偏光板とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
前記液晶セルが、TN方式又はOCB方式であることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−265624(P2009−265624A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45085(P2009−45085)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】