説明

光学フィルム、偏光板及び画像表示装置

【課題】光学特性と紫外線吸収性能に優れ、かつ紫外線吸収剤がブリードアウトせず外観にも優れる光学フィルムを提供することにある。また、これを用いた高性能の偏光板及び画像表示装置を提供することにある。
【解決手段】(A)プロピレン単独重合体からなるホモポリプロピレン樹脂、(B)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体1、及び(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2を含んでなるホモポリプロピレン樹脂混合物で構成され、該ホモポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS K7210に準拠した、230℃、21.18N荷重の条件における測定値)が、10g/10分以上であり、該(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2が2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールであり、該(B)及び(C)の合計含有量が0.08〜5.5質量%であり、かつ該(B)及び(C)の合計量に対する該(C)の含有割合が8〜60質量%である光学フィルム、ならびにこれを用いた偏光板及び表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置で使用される光学部材、より詳しくは紫外線吸収性能を備え、光学特性に優れた光学フィルムに関する。また、本発明は、偏光子の少なくとも片面に上記光学フィルムが設けられた偏光板、及び該偏光板を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムとは、透明性が要求される産業資材用フィルムのことであり、例えば、飛散防止フィルムや紫外線防止フィルムなどの窓用フィルム、偏光子保護フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルムなどのディスプレイ用フィルムや、キズ・汚れ防止のために鋼板や意匠建材などに用いられる表面保護フィルムなどの産業資材用フィルム、などが挙げられる。これらの光学フィルムのうち、液晶セルを含む液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、あるいはタッチパネルなどの画像表示装置の発達に伴い、これらの画像表示装置に用いられる光学フィルムが注目されている。光学フィルムには、光学補償用に設けられる位相差フィルムや偏光子保護用に用いられる光学フィルムなどがある。この位相差フィルムとしては、プロピレンを延伸して製造する位相差フィルムなどが知られている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
偏光板は、特定の振動方向をもつ光のみを透過させ、その他の光を遮蔽する機能を有する光学部材であり、上記のような画像表示装置に広く使用されている。このような偏光板としては、偏光子の片面又は両面に偏光子保護用の光学フィルムが設けられた構成をもつものが一般に使用されている。このうち偏光子は、特定の振動方向をもつ光のみを透過させる機能を有するものであり、ヨウ素や二色性染料などで染色した一軸延伸型のポリビニルアルコール(以下、「PVA」と称することがある。)系フィルムが多く使用され、最近では塗布型のフィルムも使用されているが、一般に薄く強度面で弱いという問題がある。
【0004】
また、偏光板に用いられる偏光子は、該偏光子が有機材料により構成される部材であるため、紫外線によって劣化されやすいという問題がある。偏光子を構成する有機材料(樹脂)の劣化は、波長280〜400nmの紫外線の照射により生じることが一般的であり、この領域における紫外線光を偏光子に届く前に吸収する(遮断する)ことにより、偏光子の劣化、あるいは液晶の劣化を防止することが可能となる。
紫外線は、その波長が短くなるほど光学フィルムに対する傷害性は強くなるが、オゾン層や大気中の酸素などが波長の短い太陽光線を吸収するため、波長280nm以下の紫外線は地上に到達する量が少ない。一方、上記したようにポリプロピレン樹脂の劣化は、波長280〜400nmの領域の紫外線の照射によるものが大半である。そこで、ポリプロピレン樹脂の劣化を防止するためには、当該範囲の光線を吸収する紫外線吸収剤によって、当該範囲の光線を吸収することが必要となる。そのため、偏光子の表面に設ける偏光子保護用光学フィルムは、紫外線吸収性能を備えることによって、偏光子、偏光板の内側の液晶セル、位相差板、及びディスプレイ内部の各粘着剤層を紫外線から保護する機能が要求される。また、偏光子保護フィルムも高温や紫外線光の照射により劣化する可能性があるため、該偏光子保護フィルム自体の劣化を防止する観点から、それ自体に紫外線吸収性能を付与することが必要となる。
【0005】
特にバックライトに蛍光管を用いた液晶表示装置においては、該装置に用いる保護膜に紫外線吸収性能を付与することが必須となる。バックライトに蛍光管を用いた液晶表示装置は、液晶セルをはさんで二枚の偏光子を備え、該偏光子はその両側に保護膜を設ける構造とすることが一般的である。ここで、偏光板にバックライトの蛍光管から光が直接照射されるため、バックライトに近い方に設けられる偏光板に用いる保護膜には、紫外線吸収性能を付与することが必須となっている。よって、バックライト側偏光板の偏光子にはバックライト側に紫外線吸収機能を付与した偏光子保護膜を貼りあわせることが一般的である。バックライト側偏光板の偏光子保護膜としては、紫外線吸収剤を添加したポリエチレンテレフタレートフィルム(特許文献3参照)、(メタ)アクリル系樹脂フィルム(特許文献4参照)、環状オレフィン系重合体とビニル系重合体とを含有する樹脂フィルム(特許文献5参照)などが知られている。しかし、これらの樹脂フィルムは高価であり、より安価な材料が求められている。
【0006】
そこで、防湿性を備え、かつ低コストな偏光子保護用光学フィルムとして、ポリプロピレン樹脂を用いた偏光子保護用光学フィルムが提案されている(特許文献6及び7参照)。しかし、一般にポリプロピレン樹脂自体が高温や直射日光により劣化されやすい傾向があるため、偏光子保護用光学フィルムにポリプロピレン樹脂を用いた場合は、該ポリプロピレン樹脂に紫外線吸収性能を付与することが必要となる。
紫外線吸収性能を付与するために一般的に用いられる紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、あるいはニッケル錯塩系化合物などの多種多様のものを挙げることができる。また、プロピレン系樹脂に上記のような紫外線吸収剤を添加した例も知られている(特許文献8参照)。しかし、紫外線吸収剤をポリプロピレン樹脂に混合させて偏光子保護用光学フィルムを作製すると、多くの紫外線吸収剤が、ポリプロピレン樹脂の良好な透明度、ヘーズ、あるいは面内位相差などの光学特性を低下させてしまう。この紫外線吸収剤の使用による光学特性の低下は、他の用途では許容される程度の光学特性の低下であっても、偏光子保護用光学フィルムの用途は高い光学特性が要求されているため、大きな問題となる。また、多量に添加しなければ紫外線吸収性能を発揮させることができない紫外線吸収剤や、少量添加しただけでフィルム成形加工時に紫外線吸収剤がフィルム表面に析出する現象(ブリードアウト)が発生して加工適性や製品品質を損ねてしまう紫外線吸収剤も多い。さらに、二種類以上の紫外線吸収剤を併用するようなときには、その配合量や配合比、あるいは組み合わせる紫外線吸収剤の種類によって、ブリードアウトが発生する場合が多いといった問題もある。そのため、樹脂に添加した際にブリードするかしないか、すなわちブリード性能の観点から、紫外線吸収剤の種類や組み合わせだけでなく、その配合量や配合比を選定する必要がある。
【0007】
本発明者らは、先の発明において、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系フェノールを用いたポリプロピレン樹脂が、該吸収剤のブリードアウトが少なく偏光子保護用光学フィルムに好適であることを見出した(特許文献9参照)。メタロセン触媒により合成されたポリプロピレン系樹脂は、ヘーズが小さく透明性に優れ、可視光線透過率が高く、複屈折が小さいなどの光学特性に優れるという点で良好である。
ところで、光学フィルムの紫外線吸収性能について、一般に波長380nmにおいて光線透過率が10%以下であることが望ましいとされており(「KONICA TECHNICAL REPORT」,vol.16,(2003),p.76)、波長370〜400nmの領域においても十分な紫外線吸収性能を有する光学フィルムの開発が望まれている。しかしながら、上記の特許文献9で開示される、紫外線吸収剤を添加したポリプロピレン樹脂で形成される光学フィルムは、紫外線領域の中でも波長370nm以下の領域においては良好な紫外線吸収性能を満たすものの、紫外線領域の波長370〜400nmの領域においては、より厳しい環境下あるいは基準下においては紫外線吸収性能が十分ではない場合があった。より具体的には、特許文献4や5で使用される紫外線吸収剤、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノールでは、波長370〜400nmの領域では、十分な紫外線吸収性能が得られない。さらにこの場合、波長370〜400nmの領域で紫外線吸収性能を高めるために紫外線吸収剤の添加量を増やすと、該吸収剤がブリードアウトし、フィルムの透明性や加工適性を損ねてしまうという場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/108562号パンフレット
【特許文献2】特開2007−286615号公報
【特許文献3】特開2009−169393号公報
【特許文献4】特開2007−17555号公報
【特許文献5】特開2006−188555号公報
【特許文献6】特開2008−146023号公報
【特許文献7】特開2007−334295号公報
【特許文献8】特開2007−45070号公報
【特許文献9】国際公開第2009/51188号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情によりなされたものであり、本発明の課題は、光学特性と紫外線吸収性能に優れ、かつ紫外線吸収剤がブリードアウトせず外観にも優れる光学フィルムを提供することにある。また、これを用いた高性能の偏光板及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定のメルトフローレートのホモプロピレン樹脂に対して、二種の紫外線吸収剤を特定の配合比で用いることにより、その課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
【0011】
1.((A)プロピレン単独重合体からなるホモポリプロピレン樹脂、(B)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体1、及び(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2を含んでなるホモポリプロピレン樹脂混合物で構成され、該ホモポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS K7210に準拠した、230℃、21.18N荷重の条件における測定値)が、10g/10分以上であり、該(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2が2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールであり、該(B)及び(C)の合計含有量が0.08〜5.5質量%であり、かつ該(B)及び(C)の合計量に対する該(C)の含有割合が8〜60質量%である光学フィルム。
2.(B)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体1が、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール及び2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾールから選ばれる少なくとも一種である上記1に記載の光学フィルム。
3.波長380nmにおける光線透過率が、10%以下である上記1又は2に記載の光学フィルム。
4.偏光子保護に用いられる上記1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
5.偏光子の少なくとも片面に、上記4に記載の光学フィルムを設けてなる偏光板。
6.上記5に記載の偏光板が使用されていることを特徴とする画像表示装置。
7.偏光子が液晶表示装置に用いられ、該偏光子のバックライト側の片面に、上記4に記載の光学フィルムが設けられ、該バックライトが蛍光管であることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学特性と紫外線吸収性能に優れ、かつ紫外線吸収剤がブリードアウトせず外観にも優れる光学フィルムを得ることができる。すなわち、上記(A)ホモポリプロピレン樹脂に対して紫外線吸収剤である上記(B)及び(C)を所定の比率で用いた場合、これら紫外線吸収剤がホモポリプロピレン樹脂の有する透明度、ヘーズ、あるいは面内位相差などの良好な光学特性を阻害せず、かつ優れた紫外線吸収性能が得られることが分かった。
また、本発明の光学フィルムは偏光子保護用として特に好適であり、該光学フィルムを用いることで、高性能の偏光板及び画像表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の偏光板の構成例を示す図である。
【図2】本発明の偏光板を用いた液晶表示装置の構成例を示す図である。
【図3】実施例1及び比較例1の光線透過率を示すグラフである。
【図4】実施例7及び8ならびに比較例8の光線透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、プロピレン単独重合体からなるホモポリプロピレン樹脂、及び所定のベンゾトリアゾール系化合物の混合物(以下、単に「紫外線吸収剤混合物」と称することがある。)を含むホモポリプロピレン樹脂混合物を成形加工してなるものである。より具体的には、(A)プロピレン単独重合体からなるホモポリプロピレン樹脂(以下、ホモポリプロピレン樹脂(A)と称することがある。)、(B)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体1(以下、紫外線吸収剤(B)と称することがある。)、及び(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2(以下、紫外線吸収剤(C)と称することがある。)を含んでなるホモポリプロピレン樹脂混合物で構成され、該(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2が2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールであり、該(B)及び(C)の合計含有量が0.08〜5.5質量%であり、かつ該(B)及び(C)の合計量に対する該(C)の含有割合が8〜60質量%である光学フィルムである。
以下に、本発明の光学フィルムについて、詳細に説明する。
【0015】
≪(A)プロピレン単独重合体からなるホモポリプロピレン樹脂≫
本発明で用いられるホモポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレン単独重合体からなるものである。プロピレン単独重合体は、一種でもよいし、後述するメルトフローレートや融点などの物性が異なる複数種を組み合わせたものであってもよい。
【0016】
ホモポリプロピレン樹脂(A)は、メルトフローレート(MFR)が、10g/10分以上であることを要する。MFRが10g/10分未満であると、面内位相差が大きくなり、複屈折が小さい光学フィルムを得ることができない。また、ホモポリプロピレン樹脂(A)のMFRは、10〜40g/10分が好ましく、より好ましくは10〜20g/分である。MFRが上位範囲内であれば、未延伸フィルム製膜時にひずみが発生しにくいので、複屈折が小さい光学フィルムを得ることができる。また、光学フィルムとして十分な強度が得られ、後加工を容易に行うことができる。さらに、MFR調整剤などの添加剤の添加量をおさえることができるので、物性に悪影響を与えることがないからである。ここで、混合物のMFRの調整は、例えば有機過酸化物などの一般的なMFR調整剤などによって行うことができる。
なお、MFRの値は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定した値である。
【0017】
本発明で用いられるホモポリプロピレン樹脂(A)は、より優れた光学特性を得る観点から、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などの公知の重合触媒を用いて重合されるものであることが好ましい。また、より低コストで光学フィルムを得る観点から、重合触媒としてはチーグラー・ナッタ触媒が好ましい。チーグラー・ナッタ触媒を用いたホモプロピレン樹脂の生産は確立しており入手が容易であり、コストも低いからである。
【0018】
チーグラー・ナッタ触媒としては、例えば、マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分などからなるTi−Mg系触媒;マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物などの第3成分とを組み合わせた触媒系などを挙げることができる。
マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報などに記載された触媒系が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物及びテトラエチルジアルモキサンなどを挙げることができる。
電子供与性化合物としては、好ましくはシクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0019】
メタロセン触媒としては例えば、特許第2587251号公報、特許第2627669号公報、あるいは特許第2668732号公報に記載された触媒系などが好ましく挙げられる。
【0020】
ホモポリプロピレン樹脂(A)は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶剤重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマー中で行う気相重合法などにより重合して得ることができる。好ましい製造方法は、塊状重合法または気相重合法である。これらの重合法は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。
【0021】
(ホモプロピレン樹脂(A)の物性)
本発明で用いられるホモプロピレン樹脂(A)は、その融点(Tm)が120〜170℃であることが好ましい。融点(Tm)が上記範囲内であれば、光学フィルムの耐熱性が向上し、偏光板のような耐熱を要する用途への使用が可能となるので好ましい。ここで融点は、示差走査型熱量計(DSC)によって測定された融解曲線において最高強度のピークが現われている温度で評価され、ホモプロピレン樹脂(A)のプレスフィルム10mgを、窒素雰囲気下、230℃で5分間熱処理後、降温速度10℃/分で30℃まで冷却して30℃において5分間保温し、さらに30℃から230℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の融解ピーク温度として求めた値である。
【0022】
ホモプロピレン樹脂(A)は、光学的に等方性が高い光学フィルムを得るために、下記の樹脂選定試験により測定された面内位相差が20nm以下のものが好ましい。
(樹脂選定試験)ペレット状のサンプルを熱プレス成形して、大きさ10cm角・厚さ100μmのフィルムを作製する。上記熱プレス成形では、樹脂を220℃で5分間予熱後、3分間かけて100kgf/cm2まで昇圧し、100kgf/cm2で2分間保圧し、その後、30℃で30kgf/cm2の圧力で5分間冷却する。このようにして作製したフィルムの面内位相差を求めることで、複屈折の小さいホモプロピレン樹脂(A)を選定することができる。なお、面内位相差は、位相差測定機を用いて、波長589.3nm、入射角0度の条件で測定する。
【0023】
ホモプロピレン樹脂(A)の分子量分布の幅は、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比(分散度)で評価することができ、Mw/Mn=1〜20であることが好ましい。
なお、Mn及びMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて、溶媒に140℃のo−ジクロロベンゼンを用い、標準サンプルにポリスチレンを用いた条件で測定する。
【0024】
≪紫外線吸収剤混合物≫
本発明で用いられるホモポリプロピレン樹脂混合物は、(B)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体1及び(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2を含むものであり、該(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2(紫外線吸収剤(C))を下記一般式(1)で示される2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(CAS番号:3896−11−5)とするものである。
【0025】
【化1】

【0026】
本発明で用いられるホモポリプロピレン樹脂混合物は、上記一般式(1)で示される2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体を含むことで、波長370〜400nmの領域において紫外線吸収性能が向上する効果が得られる。特に、上記一般式(1)で示される誘導体において、ベンゾトリアゾール骨格を形成するベンゼン環がハロゲン原子で置換された構造を有すると、波長370〜400nmの領域において紫外線吸収性能の向上効果が高い。
【0027】
また、紫外線吸収剤(B)は、紫外線吸収剤(C)と異なる2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体であり、ベンゾトリアゾール骨格にフェノールが結合した構造を有する2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体であれば、特に制限はないが、(i)下記一般式(2)〜(5)に示される誘導体のように、tert−アルキル基などの三級炭素を有する官能基を有するもの、(ii)下記一般式(6)に示される誘導体のような、炭素数が1〜10程度のオキシアルキル基を有するもの、(iii)下記一般式(7)に示される誘導体のような、それ自体も紫外線吸収性能を有する官能基を有するもの、(iv)下記一般式(5)に示される誘導体のような、連結基を介した二量体あるいは三量体、(v)上記一般式(1)で示される誘導体のような、ベンゾトリアゾール骨格を形成するベンゼン環がハロゲン原子で置換されている、あるいはアルキル基などの炭化水素基で置換されているもの、といった構造を有する紫外線吸収剤が、280〜400nmの波長範囲、とりわけ370〜400nmの波長範囲において紫外線吸収性能の向上効果が高く、好ましく挙げられる。
【0028】
より具体的には、下記一般式(2)で示される誘導体は2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール(CAS番号:3147−75−9)であり、下記一般式(3)で示される誘導体は2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール(CAS番号:25973−55−1)であり、下記一般式(4)で示される誘導体は2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール(CAS番号:70321−86−7)であり、下記一般式(5)で示される誘導体は2,2’−メチレンビス[3−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]ビス(ベンゾトリアゾール)(CAS番号:103597−45−1)であり、下記一般式(6)で示される誘導体は2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール(CAS番号:3147−77−1)であり、下記一般式(7)で示される誘導体は2−[2−ヒドロキシ−3−[(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(CAS番号:59129−18−9)である。これらのなかでも、下記一般式(2)で示される2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、及び下記一般式(3)で示される2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
光エネルギーである紫外線は、波長400nm以下の電磁波であり、偏光子や液晶セルの紫外線による劣化を抑制するためには、特に波長280〜400nmの領域における紫外線を、偏光子保護膜により遮断する必要がある。本発明で用いられる紫外線吸収剤(B)及び紫外線吸収剤(C)はいずれも優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であるが、紫外線吸収剤(C)はブリードアウトしやすく、フィルムの透明性や加工適性を損ねてしまう場合があり、紫外線吸収剤(B)は波長370〜400nmの領域における紫外線吸収性能が十分ではない場合があった。本発明では、これらの紫外線吸収剤を所定の割合で使用することにより、波長370〜400nmの領域における優れた紫外線吸収性能が得られると同時に、優れたブリードアウトの抑制効果が得られることが見出された。
【0031】
(紫外線吸収剤(C)の含有割合)
本発明において、紫外線吸収剤(C)の含有割合は、紫外線吸収剤(B)及び(C)の合計量に対して8〜60質量%であることを要する。紫外線吸収剤(C)の含有割合が上記範囲を超えると、光学フィルムの作製時にブリードアウトが発生し、フィルムの透明性や加工適性が損なわれてしまう。一方、紫外線吸収剤(C)の含有量が上記範囲よりも少ないと、波長280〜400nmの領域、とりわけ波長370〜400nmの領域における紫外線吸収性能が損なわれてしまう。このような観点から、紫外線吸収剤(C)の含有割合は、20〜60質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
【0032】
(紫外線吸収剤(B)及び(C)の合計含有量)
本発明において、ホモポリプロピレン樹脂混合物中の紫外線吸収剤(B)及び(C)の合計含有量の下限は、混合物に対して0.08質量%以上であることを要する。また、良好な紫外線吸収性能を得る観点から、0.3質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがさらに好ましい。
一方、ホモポリプロピレン樹脂混合物中の紫外線吸収剤(B)及び(C)の合計含有量の上限は、フィルム成膜加工時における紫外線吸収剤のブリードアウトを防ぐ観点から、混合物に対して5.5質量%以下であることを要する。また、コストの観点から、その含有量は混合物に対して1.5質量%以下であることが好ましく、1.2質量%以下がより好ましい。
上記より、高品質の光学フィルムを得るために、ホモポリプロピレン樹脂混合物中の紫外線吸収剤(B)及び(C)の合計含有量は、0.08〜5.5質量%であることを要し、0.3〜1.5質量%が好ましく、よりに好ましくは、0.4〜1.2質量%である。
【0033】
≪その他の成分≫
本発明において、所望に応じて各種の添加剤や添加樹脂を、ホモポリプロピレン樹脂混合物の任意成分として添加することができる。
例えば、フィルムの所望物性に応じて、位相差フィルムとして必要な複屈折や透明性を損なわない範囲で、各種オレフィン樹脂を添加樹脂として配合することができ、また、耐候性改善剤、光安定剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などを添加することができる。
【0034】
≪光学フィルム≫
本発明の光学フィルムは、上記したホモポリプロピレン樹脂混合物で構成される光学フィルムである。光学フィルムの原料としてホモポリプロピレン樹脂を使用した場合、ランダムプロピレン共重合体からなるポリプロピレン樹脂を使用した場合と比較して、通常の製膜方法では面内位相差が大きくなる傾向があるが、製膜時の速度・冷却条件及びホモプロピレン樹脂の物性を調整することにより光学フィルムの面内位相差を低く押えることができる。
【0035】
本発明において、下記の規定に基づく結晶状態定数Xは2.0以下であることが好ましい。結晶状態定数Xが2.0以下であると、光学フィルムの面内位相差が低くなり、光学的均一性が高くなるため、好ましい。
結晶状態定数Xは、回折角(2θ)が10〜30度の範囲で広角X線回折測定を行った場合に得られる回折プロファイルのピーク強度値の比によって、下記の式により求めるものとする。
X=Y/Z
上記式において、Yは回折角2θが15度のピーク強度値であり、Zは回折角2θが21度のピーク強度値である。なお、上記のピーク強度値は、80μm厚の光学フィルムに対してX線回折装置を用いてX線回折測定を行って得られた値である。X線回折装置としては、例えば『SmartLab』((株)リガク製)などを使用することができる。
【0036】
本発明の光学フィルムの厚さは、35〜160μmの範囲が好ましく、60〜120μmがより好ましい。
同じ吸光度の紫外線吸収剤をフィルムに用いた場合、該フィルムの紫外線吸収性能は、下記の数式で示されるランベルトベールの法則により、フィルムの厚みに比例することが知られている。
−log(I/IO)=ε×c×d
ここで、IOは入射光の強度、Iは透過光の強度、−log(I/IO)は吸光度、εは光係数、cは物質の濃度、dは吸収物質の厚みである。この式から分かるように、光学フィルムの厚さが上記範囲内であれば優れた紫外線吸収性能が得られ、かつ透明性の低下を招くことがないので、好ましい。また、厚さが35μm以上であると、光学フィルムとしての強度を確保することができる。厚さが160μm以下であると、十分な可とう性が得られ、軽量であることからハンドリングが容易であり、かつコスト的にも有利である。
【0037】
本発明の光学フィルムの曲げ弾性率は、700MPa以上であることが好ましい。曲げ弾性率が上記範囲内であると、フィルム状態で取り扱う際の十分な剛性が得られ、後加工を容易に行うことができ、偏光板の保護シートとして機能させるために十分な耐擦過性が得られるからである。さらには、本発明の光学フィルムの曲げ弾性率は、900MPa以上であることがより好ましい。900MPa以上とすれば、Tダイ押出し成形で製造した場合に、面内位相差を安定させることができるからである。ここで、曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定されるものとする。
【0038】
光学フィルムの曲げ弾性率の調整方法としては、特に制限はなく、以下のような方法により調整することができる。例えば、ポリプロピレン本来の特性(結晶化度、平均分子量など)で選択する方法、樹脂に無機質あるいは有機質の充填剤から選ばれた充填剤を添加する方法、架橋剤などを添加する方法、弾性率の異なる2種類以上の樹脂を混合する方法、硬化性樹脂の可塑剤組成分を選択する方法などを用いて、あるいはこれらの方法を適宜複数組み合わせて用いる方法などが挙げられる。
【0039】
光学フィルムの引張強度は、20MPa以上であることが好ましい。20MPa以上であると、偏光子光子保護用フィルムの成形加工に際して、該光学フィルムを接着剤層を介して偏光子にロール・ツウ・ロールの方法で貼り合わせる時に、配向がかからず、位相差のばらつきが発生しにくいので、偏光板の性能を良好なものにできるからである。ここで、本発明において、引張強度は、ASTM D638(Type4条件)に準拠して測定されるものとする。
【0040】
本発明の光学フィルムには、偏光子と接する面に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理などの表面処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、及びこれらを併用する方法が好ましい。
【0041】
また、光学フィルムの表面には、機能層を積層して、各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0042】
≪光学フィルムの製造方法≫
本発明の光学フィルムは、上記したホモポリプロピレン樹脂(A)、紫外線吸収剤(B)及び(C)と、所望に応じて各種の添加剤や添加樹脂とを混合し、加熱溶融させた後、押出しコーティング成形法、キャスト法、Tダイ押出し成形法、水冷方式インフレーション法、空冷方式インフレーション法、射出成形法などの各種成形法で、フィルム形状に成形加工して、製造することができる。本発明においては、偏光子上に設けられる光学フィルムが配向しないことが好ましいため、延伸のかからない未延伸のTダイ押出し成形法、あるいはインフレーション法が好ましい。
加工時の加熱温度は、通常160〜250℃の範囲であり、好ましくは190〜250℃である。加熱温度が上記範囲内であれば、より性能安定性に優れる光学フィルムを得ることができる。
このようにして得られた本発明の光学フィルムは、光学特性と紫外線吸収性能に優れ、かつ紫外線吸収剤がブリードアウトせず外観にも優れるので、偏光子保護用光学フィルムとして特に好適に用いられる。
【0043】
[偏光板]
本発明の光学フィルムは、偏光子保護用光学フィルムとして、偏光子の少なくとも片面に設けて用いることができる。偏光子に光学フィルムを設ける方法としては、偏光子の上に偏光子保護用光学フィルムを直接成形して設ける方法や、偏光子保護用光学フィルムを先に作製しておき、その後、接着剤層を介して偏光子に貼り合わせる方法が挙げられ、いずれの方法であってもよい。
図1に、本発明の偏光板の構成例を示す。図1において、2は偏光子であり、その片面
側に接着剤層(図示しない。)を介して、本発明の光学フィルム1が設けられ、全体として偏光板3を構成している。そして、本発明の偏光板は、液晶表示装置に用いられ、後述するバックライト側の片面に本発明の光学フィルムが設けられるという構成を有するものである。
【0044】
≪偏光子≫
偏光板で用いる偏光子としては、特定の振動方向をもつ光のみを透過する機能を有する偏光子であればいかなるものでもよく、一般的にはPVA系偏光子が好ましく用いられる。
PVA系偏光子としては、例えばPVA系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸したものが挙げられる。これらのなかでもPVA系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適に用いられる。これら偏光子の厚さは特に制限されず、一般的に、1〜100μm程度である。
【0045】
偏光子を構成する樹脂として好適に用いられるPVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。
PVA系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。このPVA系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。PVA系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000、好ましくは1,500〜10,000の範囲である。
【0046】
≪偏光板の製造方法≫
偏光板は、例えば、上述のようなPVA系フィルムを一軸延伸する工程、PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及びこれらの工程が施されて二色性色素が吸着配向された一軸延伸PVA系フィルムに、本発明の光学フィルムを偏光子保護用光学フィルムとして貼り付ける工程を経て、製造される。
【0047】
偏光子保護用光学フィルムの貼り付けは、偏光子保護用フィルムか偏光子のいずれかの側又は両側に接着剤を塗布して設けた接着剤層により行うことができる。接着剤層の形成には、公知のPVA系接着剤を用いることが好ましい。
上記接着剤層は、偏光子保護用フィルム又は偏光子のいずれかの側または両側に、接着剤を塗布することにより形成する。接着剤層の厚みは、乾燥後の厚みで厚くなりすぎると偏光子保護用フィルムの接着性の点で好ましくないことから、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
【0048】
また、偏光子保護用フィルムを偏光子と接着させるに際し、偏光子保護用フィルムの偏光子と接する面に接着性向上のためにコロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理などの表面処理やアンカー層を形成する方法などの易接着処理を施すことができる。なかでもコロナ処理、アンカー層を形成する方法、及びこれらを併用する方法が好ましい。
【0049】
次いで、上記のようにして易接着処理を行った面に接着剤層を形成し、前記接着剤層を介して、偏光子と偏光子保護用フィルムとを貼り合せる。
偏光子と偏光子保護用フィルムとの貼り合わせは、ロールラミネーターなどにより行うことができる。なお、加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
【0050】
(その他)
本発明の光学フィルムが偏光子の一方の面に形成された偏光板には、必要に応じて偏光子の他方の面に、本発明の光学フィルムを形成することもできるし、その他の樹脂からなるフィルムを形成することもできる。その他の樹脂からなるフィルムとしては、例えばセルロース系フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、マレイミド系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルムなどが挙げられる。なかでもトリアセチルセルロースなどのセルロース系フィルムは水蒸気透過度が高いため水抜けが良いことが知られており、また、本発明のホモポリプロピレン樹脂を用いた光学フィルムの水蒸気透過度は低く水を通しにくいため、他方の面にセルロース系フィルムを貼りあわせると、偏光板製造時の乾燥工程での水の除去が容易となるため望ましい。なお、上記その他の樹脂からなるフィルムは特定の位相差を持つ位相差フィルムであってもよい。
【0051】
偏光板は、表面性、耐傷付き性を向上させるため、あるいは必要に応じて反射防止や低反射処理などの公知の防眩機能を付与するために、偏光子保護フィルムに対して少なくとも一層以上のハードコート層あるいは反射防止層を有する積層体とすることが好ましい。この場合、偏光子保護フィルムに対するハードコート層や反射防止層の積層の順は問わない。
前記積層体は、偏光子保護フィルムにハードコート層や反射防止層を設けて作製することができる。当該ハードコート層及び反射防止層としては、例えば紫外線硬化型アクリルウレタン、紫外線硬化型エポキシアクリレート、紫外線硬化型(ポリ)エステルアクリレート、紫外線硬化型オキセタンなどの紫外線硬化型樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系ハードコート剤などよりなるハードコート層が挙げられ、透明性、耐傷付き性、耐薬品性の点から、紫外線硬化型樹脂よりなるものであることが好ましい。これらのハードコート層及び反射防止層は、一種類以上で用いることができる。
ハードコート層及び反射防止層の厚みは、0.1〜100μmが好ましく、特に好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜20μmである。また、ハードコート層あるいは反射防止層の間にプライマー処理をすることもできる。
また、当該積層体は、偏光子保護フィルムにハードコートフィルムや反射防止フィルムを積層して作製することもできる。該ハードコートフィルムや反射防止フィルムは、例えば紫外線吸収剤を含まないポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、前記ハードコート層や反射防止層を設けて作製することができる。
【0052】
[画像表示装置]
本発明の光学フィルムを用いた偏光板は、表示用の各種装置に好ましく使用することができる。画像表示装置としては、偏光板を使用するものであれば、種類の限定はなく、例えば液晶セルを含む液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネルなどが挙げられ、なかでも本発明の光学フィルムの特長をいかす観点からは、該光学フィルムを用いた偏光板は、液晶表示装置に用いることが好ましい。また、液晶ディスプレイの場合、画像表示装置は、一般に、液晶セル、光学フィルム、及び必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては、上記した偏光板を使用する点を除いて、画像表示装置の構成には特に限定はない。例えば、液晶セルの片側又は両側に偏光板を配置した画像表示装置や、照明システムとしてバックライト又は反射板を用いたものなどの適宜な画像表示装置が例示される。また、液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。なお、画像表示装置を構成するに際しては、例えば、拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
下記に、液晶セルを含む液晶表示装置の例を説明する。
【0053】
≪液晶セルを含む液晶表示装置≫
本発明の画像表示装置の例として、図2に本発明の偏光板を含む液晶表示装置の構成例を示す。図2において、8は液晶セルを示す。この液晶セル8は、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型などや、ツイストネマチック型、スーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型などのものが例示される。この液晶セル8の一方の面に、粘着剤層(図示せず)及び位相差板15を介して上偏光板7(液晶セルに対してパネル上面側の偏光板)が積層され、液晶セル8のもう一方の面に下偏光板12(液晶セルに対してバックライト側の偏光板)が積層されている。そして、上偏光板7は、中心に偏光子5を有し、該偏光子5の両面に偏光子保護膜4及び6が積層され、下偏光板12は、中心に偏光子10を有し、該偏光子10の両面に偏光子保護膜9及び11が積層されている。また、図2に示す構成例では、上偏光板のパネル上面側に設けられる偏光子保護膜4の上にさらに反射防止層(または反射防止フィルム)14が設けられている。
【0054】
本発明の光学フィルムは、偏光子保護膜4、6、9及び11のいずれに使用することができるが、偏光子保護膜4及び11として用いることが好ましい。偏光子保護膜4として使用すると、太陽光及び外光(液晶表示装置の外側からの光)の紫外線を遮断することができ、偏光子保護膜11として使用すると、バックライトからの紫外線を遮断することができるからである。また、本発明の光学フィルムは、その性能を十分にいかす観点から、バックライトに蛍光管が用いられる液晶表示装置に用いられることが好ましい。蛍光管は紫外線を多く発するため、本発明の光学フィルムの優れた紫外線吸収性能が有効となる。
【0055】
上偏光板7あるいは下偏光板12と液晶セル8との積層に際しては、上偏光板7、下偏光板12あるいは液晶セル6に予め粘着剤層を設けておくこともできる。ここで用いられる粘着剤としては特に限定されず、例えばアクリル系粘着剤が、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れているので好ましく挙げられる。
前記粘着剤には、光学的透明性、適度な濡れ性、凝集性、接着性などの粘着特性、耐候性、耐熱性などに優れることが求められる。さらに吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差などによる光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる画像表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着剤層が求められる。
【0056】
偏光板への上記粘着剤の塗工は、例えば、トルエンや酢酸エチルなどの適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒に、ベースポリマー又はその組成物を溶解又は分散させた10〜40質量%程度の粘着剤溶液を調製し、それをグラビアコート、バーコート、ロールコートなどの塗工方式や流延方式などの適宜な展開方式で偏光板上に直接塗工する方法、あるいはこの方法に準じ離型性ベースフィルム上に粘着剤層を形成してそれを偏光板に移着する方法などが挙げられる。
【0057】
粘着剤層は、異なる組成又は種類などのものの重畳層として偏光板の片面側又は両面側に設けることもできる。また、両面側に設ける場合、偏光板の表裏において、粘着剤が同一組成である必要はなく、また同一の厚さである必要もない。異なる組成、異なる厚さの粘着剤層とすることもできる。
また、粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1μm〜500μmであり、5μm〜200μmが好ましく、特に10μm〜100μmが好ましい。
【0058】
粘着剤層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止などを目的に、プラスチックフィルムなどの適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系などの適宜な剥離剤でコート処理した離型性フィルムが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着剤層に接触することを防止できる。
【実施例】
【0059】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)紫外線吸収性能の評価
分光光度計((株)島津製作所製「UV−2400(型番)」,JIS K0115準拠品)を用いて、波長280nm、330nm、370nm、375nm、380nm、385nm、390nm、395nm、及び400nmの条件で、光学フィルムの光線透過率を測定した。光線透過率が小さいほど、各波長での紫外線吸収性能が高い。
(2−1)波長380nmにおける紫外線吸収性能の評価
上記(1)において測定した波長380nmにおける光線透過率について、紫外線吸収性能として以下の基準により評価した。
◎ :紫外線光線透過率が10%以下である
○ :紫外線光線透過率が10%超40%以下である
× :紫外線光線透過率が40%超である
(2−2)波長370〜400nmにおける紫外線吸収性能の向上効果の評価
波長370〜400nmにおける紫外線吸収性能の向上効果について、上記(1)において測定した光線透過率により下記の紫外線吸収性能指数の計算によって得られる指数を用いて、以下の基準により評価した。
○ :波長370〜400nmの範囲において、紫外線吸収性能指数が90以下である
× :波長370〜400nmの範囲において、紫外線吸収性能指数が90を超える場合がある
(紫外線吸収性能指数の計算)
実施例1〜6及び比較例2〜7については、比較例1の光線透過率を100として、下記(i)式により、紫外線吸収性能指数を算出した。また、実施例7〜11及び比較例9〜11については、比較例8の光線透過率を100として、下記(ii)式により、紫外線吸収性能指数を算出した。当該指数が小さい程、基準とする比較例1及び8で得られる光学フィルム(従来品相当)と比べて紫外線吸収性能が良好である。具体的には、指数が90以下であれば優れた紫外線吸収性能の向上効果が認められると判断した。
(i)紫外線吸収性能指数=(実施例1〜6及び比較例2〜7の紫外線光線透過率/比較例1の紫外線光線透過率)×100
(ii)紫外線吸収性能指数=(実施例7〜11及び比較例9〜11の紫外線光線透過率/比較例8の紫外線光線透過率)×100
(3)面内位相差の評価
面内位相差を、波長589.3mm、入射角0度で位相差測定器(「KOBRA−WR(型番)」,王子計測機器(株)製)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
○ :面内位相差が20%未満
× :面内位相差が20%以上
(4)ヘーズの評価
JIS K7105に準拠して、実施例及び比較例で得られた光学フィルムのヘーズを測定し、下記の基準で評価した。
○ :ヘーズが10%未満
× :ヘーズが10%以上
(5)可視光透過率の評価
分光光度計((株)島津製作所製「UV−2400(型番)」,JIS K0115準拠品)を用いて、波長550nm及び750nmの条件で、光学フィルムの光線透過率を測定し、下記の基準で評価した。
○ :光線透過率が80%以上
× :光線透過率が80%未満
(6)外観の評価(ブリードアウト)
作製した光学フィルムを条件1:温度80℃・相対湿度10〜40%の条件(ドライ条件)、条件2:温度60℃・相対湿度90%の環境下に、1000時間放置した。条件1及び2による放置後の光学フィルムの外観(紫外線吸収剤のブリードアウトの有無)について、下記の基準で目視評価した。
○ :ブリードによる白化などの外観不良は確認されなかった
△ :ブリードによる白化などの外観不良が若干確認されたものの実用上問題なかった
× :著しいブリードによる白化などの外観不良が確認された
【0060】
(実施例1)
ホモポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製「ノバテック(登録商標)MA3U」,MFR:15g/10分,曲げ弾性率:1700MPa,融点:160℃,重合触媒:チーグラー・ナッタ触媒、以下「PP−A」と表記する。)を99.5質量部に、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール(BASFジャパン(株)製「TINUVIN329(商品名)」。以下、「UV−B1」と表記する。)0.25質量部及び2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASFジャパン(株)製「TINUVIN326(商品名)」。以下、「UV−C」と表記する。)0.25質量部を加えて混合して得られたホモポリプロピレン樹脂混合物を加熱溶融させた。加工温度200℃、引取りロール温度50℃の条件で、該樹脂混合物をフィルム厚み80μmでTダイ単層押し出し成形することにより、光学フィルムを得た。
【0061】
(実施例2)
実施例1において、PP−Aを99質量部、UV−B1及びUV−Cを各々0.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0062】
(実施例3)
実施例1において、PP−Aを99質量部、UV−B1を0.9質量部、UV−Cを0.1質量部とした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0063】
(実施例4)
実施例1において、PP−Aを99質量部、UV−B1及びUV−Cを各々0.5質量部とし、光学フィルムの厚みを40μmとした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0064】
(実施例5)
実施例1において、PP−Aを99.5質量部、UV−B1及びUV−Cを各々0.25質量部とし、光学フィルムの厚みを150μmとした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0065】
(実施例6)
実施例1において、PP−Aをホモポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製「ノバテック(登録商標)MA3」,MFR:11g/10分,曲げ弾性率:1500MPa,融点:160℃,重合触媒:チーグラー・ナッタ触媒、以下、「PP−B」と表記する。)とした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0066】
(比較例1)
実施例1において、PP−Aを99.5質量部とし、UV−B1を0.5質量部とし、UV−Cを用いなかった以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0067】
(比較例2)
実施例1において、PP−Aを99質量部、UV−B1を1質量部とし、UV−Cを用いなかった以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0068】
(比較例3)
実施例1において、PP−Aを99質量部とし、UV−Cを1質量部とし、UV−B1を用いなかった以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0069】
(比較例4)
実施例1において、PP−Aを99質量部、UV−B1を0.95質量部とし、UV−Cを0.05質量部とした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0070】
(比較例5)
実施例1において、PP−Aを99質量部、UV−B1を0.2質量部とし、UV−Cを0.8質量部とした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0071】
(比較例6)
実施例1において、PP−Aをホモポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製「ノバテック(登録商標)FL6510G」,MFR:3g/10分,曲げ弾性率:2900MPa,融点:160℃,重合触媒:チーグラー・ナッタ触媒、以下、「PP−C」と表記する。)とした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0072】
(比較例7)
実施例1において、PP−Aをホモポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製「J−700GP(商品名)」,MFR:8g/10分,曲げ弾性率:1400MPa,融点:163℃,重合触媒:チーグラー・ナッタ触媒、以下、「PP−D」と表記する。)とした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0073】
(実施例7)
実施例1において、UV−B1を2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASFジャパン(株)製「TINUVIN328(商品名)」。以下、「UV−B2」と表記する。)とした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0074】
(実施例8)
実施例7において、PP−Aを99質量部、UV−B2及びUV−Cを各々0.5質量部とした以外は、実施例7と同様にして光学フィルムを得た。
【0075】
(実施例9)
実施例7において、PP−Aを99質量部、UV−B2を0.9質量部とし、UV−Cを0.1質量部とした以外は、実施例7と同様にして光学フィルムを得た。
【0076】
(実施例10)
実施例7において、PP−Aを99質量部、UV−B2及びUV−Cを各々0.5質量部とし、光学フィルムの厚みを40μmとした以外は、実施例7と同様にして光学フィルムを得た。
【0077】
(実施例11)
実施例7において、PP−Aを99.5質量部、UV−B2及びUV−Cを各々0.25質量部とし、光学フィルムの厚みを150μmとした以外は、実施例7と同様にして光学フィルムを得た。
【0078】
(比較例8)
実施例7において、PP−Aを99.5質量部、UV−B2を0.5質量部とし、UV−Cを用いなかった以外は、実施例7と同様にして光学フィルムを得た。
【0079】
(比較例9)
実施例7において、PP−Aを99質量部、UV−B2を1質量部とし、UV−Cを用いなかった以外は、実施例7と同様にして光学フィルムを得た。
【0080】
(比較例10)
実施例7において、PP−Aを99質量部、UV−B2を0.95質量部とし、UV−Cを0.05質量部とした以外は、実施例7と同様にして光学フィルムを得た。
【0081】
(比較例11)
実施例7において、PP−Aを99質量部、UV−B2を0.2質量部とし、UV−Cを0.8質量部とした以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0082】
第1−1表及び第2−1表に、実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた光学フィルムの評価結果を示し、第1−2表及び第2−2表に、実施例7〜11及び比較例8〜11で得られた光学フィルムの各波長における光線透過率、紫外線吸収性能指数及び380nmでの紫外線吸収性能の評価結果を示した。また、第1−3表に実施例1〜11及び比較例1〜11で得られた光学フィルムの波長370〜400nmにおける紫外線吸収性能の向上効果の評価結果を示した。
実施例1〜11の偏光子保護用光学フィルムは、ホモポリプロピレン樹脂(A)に所定の割合で紫外線吸収剤(B)及び(C)を混合したホモポリプロピレン樹脂混合物を用いることで、優れた紫外線吸収性能に加えて、ヘーズの評価、透明性の評価及び外観の評価においても優れた性能を示した。また、紫外線吸収剤(B)としてUV−B2(2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール)を用いた実施例7〜11の偏光子保護用光学フィルムは、総じて紫外線吸収剤(B)としてUV−B1(2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール)を用いた実施例1〜6の光学フィルムに比べて、外観評価の点で優れている、すなわち紫外線吸収剤が光学フィルムからブリードアウトしにくい傾向を有することが確認された。
【0083】
比較例1、2、4及び8〜10では、波長370〜400nmの範囲において、紫外線吸収性能指数が90を超えることがあり、当該波長範囲における紫外線吸収性能の向上効果は認められなかった。
UV−B1(紫外線吸収剤(B))を用いずUV−C(紫外線吸収剤(C))を単独で用いた比較例3、UV−B1(紫外線吸収剤(B))の含有量が少ない比較例5、UV−B2(紫外線吸収剤(B))の含有量が少ない比較例11では、ブリードアウトによる白化などの外観不良が顕著であった。
また、ホモポリプロピレン樹脂のMFRが15の実施例1及びMFRが11の実施例6と、MFRが3の比較例6及びMFRが8の比較例7とを対比すると、実施例の面内位相差の方が小さく、複屈折が小さい光学特性に優れた光学フィルムであることが確認された。
【0084】
実施例6及び比較例7で得られた光学フィルム(いずれも厚さ80μm)について、X線回折装置(「SmartLab」,(株)リガク製)を用いて回折角2θが15度のピーク強度値Y及び回折角2θが21度のピーク強度値Zを測定し、結晶状態定数Xを算出したところ、各々1.4及び2.4であった。この結果により、結晶状態定数Xが2.0以下であることが好ましいことが確認された。
また、グラフ1は実施例1及び比較例1の光学フィルムの光線透過率を示すものであり、グラフ2は実施例7及び8ならびに比較例8の光学フィルムの光線透過率を示すものである。グラフ1及び2の結果から、紫外線吸収剤(B)及び(C)を組み合わせることにより、特に波長370〜400nmの領域における紫外線吸収性能の向上効果が確認された。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

*1,実測値(nm)/評価
*2,実測値(%)/評価
【0089】
【表5】

*1,実測値(nm)/評価
*2,実測値(%)/評価
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の光学フィルムは、光学特性と紫外線吸収性能に優れ、かつ紫外線吸収剤がブリードアウトせず外観にも優れているので、偏光子保護用光学シートとして特に好適である。本発明の光学フィルムと偏光子とを組み合わせて得られる偏光板は、液晶セルを含む液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、タッチパネルといった画像表示装置に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1:偏光子保護用光学フィルム
2:偏光子
3:偏光板
4:上偏光板の偏光子保護膜(パネル上面側)
5:上偏光板の偏光子
6:上偏光板の偏光子保護膜(液晶セル側)
7:上偏光板
8:液晶セル
9:下偏光板の偏光子保護膜(パネル上面側)
10:下偏光板の偏光子
11:下偏光板の偏光子保護膜(液晶セル側)
12:下偏光板
13:バックライト部
14:反射防止層(または反射防止フィルム)
15:位相差板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)プロピレン単独重合体からなるホモポリプロピレン樹脂、(B)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体1、及び(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2を含んでなるホモポリプロピレン樹脂混合物で構成され、該ホモポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS K7210に準拠した、230℃、21.18N荷重の条件における測定値)が、10g/10分以上であり、該(C)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体2が2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールであり、該(B)及び(C)の合計含有量が0.08〜5.5質量%であり、かつ該(B)及び(C)の合計量に対する該(C)の含有割合が8〜60質量%である光学フィルム。
【請求項2】
(B)2−(ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体1が、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール及び2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾールから選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
波長380nmにおける光線透過率が、10%以下である請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
偏光子保護用フィルムに用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
偏光子の少なくとも片面に、請求項4に記載の光学フィルムを設けてなる偏光板。
【請求項6】
請求項5に記載の偏光板が使用されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
偏光子が液晶表示装置に用いられ、該偏光子のバックライト側の片面に、請求項4に記載の光学フィルムが設けられ、該バックライトが蛍光管であることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−137546(P2012−137546A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288487(P2010−288487)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】